説明

負荷変調通信制御装置

【課題】不感帯領域を少なく抑えることができる負荷変調通信制御装置を提供する。
【解決手段】通常状態のときは、受信アンプ20i,20qの利得を高い初期値に設定して広い通信エリアを確保しておく。受信エラー監視部24は、I相信号又はQ相信号が存在するもののビット判定が失敗したことを確認すると、負荷変調信号を受信できているが、受信強度が強すぎると判断する。このとき、レジスタ設定部25は、レジスタ22を書き換えることにより、可変式の受信アンプ20i,20qの利得を下げて、受信の信号判定における負荷変調信号の振幅を低くする。そして、通信再実行部26は、受信アンプ利得が低い状態において通信を再実行し、負荷変調通信を成立させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷変調によって通信を行う負荷変調通信制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線通信技術として、RFID(Radio Frequency IDentification)を用いた通信システム(RFIDシステム)が周知である(特許文献1,2等参照)。RFIDシステムは、電磁界や電波等を用いた近距離(通信距離:数cm〜10数cm)の無線通信によって、リーダライタ及び通信端末の2者が双方向にて情報をやり取りする通信システムの一種であって、車両や流通など種々の分野に広く普及している。
【0003】
このRFIDシステムでは、通信エリア内で局所的に通信できない場所、いわゆる不感帯を少なく抑えることがニーズとしてある。不感帯の発生原因は、通信端末からの応答としてリーダライタが取得する負荷変調信号の振幅が「0」になってしまう領域が存在し、このときリーダライタで応答を確認することができなくなるためと考えられる。そこで、特許文献1は、リーダライタにおける受信信号をI相信号及びQ相信号に分離し、振幅のみならず位相も確認することで、不感帯をなくすことができると提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−250900号公報
【特許文献2】特開2009−239842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種のリーダライタにおいては、遠方に位置する通信端末とでも通信が成立するように、微弱な受信信号を増幅できるよう、受信回路の定数や受信アンプの利得を設定している。しかし、リーダライタの設計によっては、通信エリア内の所定地点で受信強度が大きくなり過ぎ、増幅された負荷変調信号が想定を上回ることが確認された。こうなると、負荷変調信号がリーダライタ内の判定回路でレンジオーバーしてエラーになる現象、つまり不感帯が生じてしまう問題があった。
【0006】
本発明の目的は、不感帯領域を少なく抑えることができる負荷変調通信制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記問題点を解決するために、本発明では、通信端末と双方向により通信し、自身が送信する搬送波信号に前記通信端末の応答信号が重畳した負荷変調信号を読み取ることにより、前記通信端末からの信号を受信する負荷変調通信制御装置において、受信強度に関係するパラメータと、前記通信端末と通信の通信状態を監視する通信状態監視手段と、前記通信状態監視手段の監視結果を基に前記パラメータを切り換えて受信強度を変化させることにより、前記負荷変調信号の振幅を調整して、通信成立を確保する調整手段とを備えたことを要旨とする。
【0008】
本発明の構成によれば、負荷変調通信制御装置において通信端末との通信状態が監視され、その監視結果を基にパラメータが切り換えられる。このように、パラメータが切り換えられると、負荷変調通信制御装置の受信強度が切り換えられ、結果、負荷変調通信制御装置が受信信号として取り込む負荷変調信号の振幅が好適な値に調整される。これにより、ある距離において、元は通信成立しない状況となっていても、負荷変調信号の振幅が信号判定可能な所定範囲内に収まる状態に切り換えられることにより、受信信号を正常に所得することが可能となる。よって、負荷変調通信において不感帯領域を少なく抑えることが可能となる。
【0009】
本発明では、前記調整手段は、前記負荷変調信号の強度が信号判定に必要な大きさを有しているにもかかわらず復調ができない状況下のとき、受信エラーと認識し、前記パラメータの調整を実行することを要旨とする。この構成によれば、負荷変調信号の強度が信号判定に必要な大きさを有しているにもかかわらず復調ができるかどうかを確認することにより、通信が不感帯領域にあるか否かを判定する。このため、簡素な判定方式によって、通信が不感帯領域にあるか否かを判定することが可能となる。
【0010】
本発明では、前記負荷変調信号の強度が信号判定に必要な大きさを有しているにもかかわらず復調ができない状況は、当該負荷変調信号が受信判定の最大振幅を超えて飽和した状態に起因することを要旨とする。この構成によれば、負荷変調信号の飽和を要因として、ある距離において元は通信が不感帯となってしまっていても、パラメータの切り換えによって、通信成立する状態に調整される。このため、負荷変調信号の飽和に起因する不感帯領域を少なく抑えることが可能となる。
【0011】
本発明では、前記通信端末から受信した受信信号をI相及びQ相に分離し、I相信号又はQ相信号の少なくともいずれか一方の信号を基に前記受信信号を取り込む受信手段を備え、前記通信状態監視手段は、前記I相信号又は前記Q相信号の少なくとも一方の強度が、信号判定に必要な大きさを有しているにもかかわらず復調ができないと判断したとき、受信エラーと認識し、前記調整手段に前記パラメータの調整を実行させることを要旨とする。この構成によれば、I相信号やQ相信号を確認して通信状態を判定するので、通信成立の可否を精度よく判定することが可能となる。
【0012】
本発明では、前記調整手段は、通常状態のとき、前記パラメータを初期値に設定しておくことにより、受信強度を高く設定しておき、前記通信端末との通信が成立しないとき、前記パラメータを他の値に変化させることにより、受信強度を低くすることを要旨とする。この構成によれば、通常状態のときは、負荷変調通信制御装置の受信感度を高めに設定しておくことにより、広い通信エリアを確保しておき、通信が不感帯領域にあるときは、受信感度を低めに切り換えて、不感帯領域でも通信を可能とする。このため、広い通信エリアの確保と不感帯の発生防止とを、両立することが可能となる。
【0013】
本発明では、前記調整手段による前記パラメータの切り換え後、通信を再実行させる通信再実行手段を備えたことを要旨とする。この構成によれば、パラメータの切り換え後、通信が再実行されるので、この再通信にて通信端末との通信を自動で成立させることが可能となる。
【0014】
本発明では、前記パラメータは、受信信号を増幅する可変式の受信アンプであり、前記調整手段は、前記可変式の受信アンプの利得を切り換えることにより、前記負荷変調信号の振幅を低下させることを要旨とする。この構成によれば、可変式の受信アンプの利得を調整するという簡素な処理によって、負荷変調信号の振幅を低下させることが可能となる。
【0015】
本発明では、前記パラメータは、前記通信端末からの信号を受信する受信部に設けられた受信電圧を調整する可変式の抵抗であり、前記調整手段は、前記可変式の抵抗の値を変化させることにより、前記負荷変調信号の振幅を低下させることを要旨とする。この構成によれば、受信部に設けた可変式の抵抗を調整するという簡素な処理によって、負荷変調信号の振幅を低下させることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、負荷変調通信において不感帯領域を少なく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態のRFIDシステムの構成図。
【図2】負荷変調通信の通信方式を説明する概念図。
【図3】受信アンプ利得及び通信距離の組み合わせとその通信成否との関係を示す表。
【図4】受信アンプ利得が初期値で通信距離が0〜20,34〜43mmのときのI相信号及びQ相信号の波形図。
【図5】受信アンプ利得が初期値で通信距離が22〜32mmのときのI相信号及びQ相信号の波形図。
【図6】受信アンプ利得が低い値に切り換えられ、通信距離が22〜32mmのときのI相信号及びQ相信号の波形図。
【図7】(a)はキャリア信号及び負荷変調信号の電圧−通信距離の変化特性を示す波形図、(b)はキャリア信号及び負荷変調信号の振幅比−通信距離の変化特性を示す波形図、(c)はアンテナインピーダンスの動きを示すスミスチャート。
【図8】第2実施形態のRFIDシステムの構成図。
【図9】(a)はキャリア信号及び負荷変調信号の電圧−通信距離の変化特性を示す波形図、(b)はキャリア信号及び負荷変調信号の振幅比−通信距離の変化特性を示す波形図、(c)はアンテナインピーダンスの動きを示すスミスチャート。
【図10】第3実施形態のRFIDシステムの構成図。
【図11】受信アンプ利得及び通信距離の組み合わせとその通信成否との関係を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した負荷変調通信制御装置の第1実施形態を図1〜図7に従って説明する。
【0019】
図1に示すように、車両には、キー照合を無線通信により行う電子キーシステムとして、通信距離が近距離(通信距離:数cm〜10cm程度)のRFID(Radio Frequency IDentification)システム1が搭載されている。本例のRFIDシステム1は、通信電波に磁界(磁界結合)を用いた電磁誘導方式であって、通信周波数が13.56MHzとなっている。また、RFIDシステム1の通信規格としては、例えばNFC(Near Field Communication)が使用されている。
【0020】
RFIDシステム1には、RFIDシステム1の通信マスタとなる電波送受信可能なリーダライタ2と、近距離によりリーダライタ2と双方向通信する通信端末3とが設けられている。本例のRFIDシステム1は、電池レスの通信端末3がリーダライタ2からの電波を電源にして動くパッシブ型、通信端末3が電池を有するものの通信起動がパッシブ型をとるセミアクティブ型のいずれでもよい。
【0021】
本例のRFIDシステム1は、負荷変調によってリーダライタ2と通信端末3とが通信する。図2に、負荷変調通信の通信概念を示す。同図に示すように、まずリーダライタ2からキャリア信号Scrが送信される。キャリア信号Scrには、無変調の搬送波信号Shsと、通信端末3への問合せデータである送信信号(質問コマンド)Strとが交互に含まれる。通信端末3は、搬送波信号Shsを電源に起動し、送信信号Strを読み取る。そして、通信端末3は、送信信号Strに対する応答を返信する際、内部の負荷をオン/オフすることにより、リーダライタ2から見たインピーダンスを変化させて電圧変化を生じさせ、これを応答信号Srsとしてリーダライタ2に取得させる。
【0022】
このとき、図2の破線で示すように、応答信号Srsがリーダライタ2の送信電波電流に重畳され、これがリーダライタ2において負荷変調信号Sfhとして現れる。よって、リーダライタ2は、この負荷変調信号Sfhを読み取ることにより、通信端末3からの応答信号Srsを受信する。
【0023】
図1に示すように、リーダライタ2には、リーダライタ2の動作を統括制御する制御ECU(Electronic Control Unit)4が設けられている。制御ECU4には、例えば専用のIC(Integrated Circuit)からなる通信回路5が接続されている。
【0024】
リーダライタ2には、電波を送受信するアンテナ6が設けられ、アンテナ6がマッチング回路7及びフィルタ回路8を介して通信回路5に接続されている。アンテナ6は、例えば1つのインダクタンスLthから構成されるとともに、両端がマッチング回路7に接続されている。
【0025】
マッチング回路7は、アンテナ6のインピーダンスを整合する回路であって、対称配置された一対のC回路9a,9bを備える。第1C回路9a及び第2C回路9bは、ともに2つのキャパシタンスC1,C2を有し、キャパシタンスC1がフィルタ回路8に接続され、キャパシタンスC1,C2の中点P1がインダクタンスLthに接続されている。
【0026】
フィルタ回路8は、送信電波から13.56MHz以外の電波をカットする回路であって、対称配置された一対のLC回路10a,10bを備える。LC回路10a,10bは、ともにインダクタンスL0及びキャパシタンスC0を有する。第1LC回路10aは、インダクタンスL0が通信回路5の第1送信端子TX1に接続され、インダクタンスL0及びキャパシタンスC0の中点P2が第1C回路9aのキャパシタンスC1に接続され、キャパシタンスC0が通信回路5のグランド端子TVSSとキャパシタンスC2,C2の中点P3とに接続されている。第2LC回路10bは、インダクタンスL0が通信回路5の第2送信端子TX2に接続され、インダクタンスL0及びキャパシタンスC0の中点P2が第2C回路9bのキャパシタンスC1に接続され、キャパシタンスC0がグランド端子TVSS及び中点P3に接続されている。
【0027】
通信回路5は、電波送信の際、第1送信端子TX1及び第2送信端子TX2からフィルタ回路8に交互にパルス信号を供給する。そして、このパルス信号がフィルタ回路8にてフィルタリングされるとともに、マッチング回路7にてインピーダンスが整合された後、アンテナ6から13.56MHzの交流電波として送信される。
【0028】
リーダライタ2には、リーダライタ2において電波を受信する受信部11が設けられている。受信部11は、受信信号の電圧を分圧出力する分圧抵抗回路12と、2つのキャパシタンスCrx,Cvnとから構成されている。分圧抵抗回路12は、2つの抵抗R1,R2の直列回路からなる。抵抗R1,R2は、中点P4が通信回路5の受信端子RXに接続されている。このため、受信端子RXは、抵抗R1,R2で分圧された受信電圧を受信信号をとして取り込む。中点P4と抵抗R2との間には、キャパシタンスCrxが接続されている。受信部11は、抵抗R1とキャパシタンスCvnとの中点P5が通信回路5の基準電圧端子Vbsに接続されている。基準電圧端子Vbsは、受信部11で電波受信する際に必要な基準電圧を受信部11に供給する。
【0029】
通信回路5には、受信部11で受信した電波を読み取る受信回路13が設けられている。本例の受信回路13は、受信電波をI相(振幅成分)とQ相(位相成分)とに分離し、振幅及び位相の両方を確認することで受信電波を読み取る方式をとる。なお、受信回路13が受信手段に相当する。
【0030】
受信回路13には、受信電波からI相成分を取り出して符号化するI相処理回路14と、受信電波からQ相成分を取り出して符号化するQ相処理回路15と、I相処理回路14及びQ相処理回路15の出力を基に受信可否を判定する受信判定部16とが設けられている。受信回路13には、受信電波と略同一の周波数を有する搬送波を生成する局部発振器17と、局部発振器17から出力された搬送波の位相を90度(π/2)ずらす移相器18とが設けられている。なお、受信判定部16が通信状態監視手段を構成する。
【0031】
I相処理回路14は、受信電波と搬送波とをミキシングしてベースバンド信号を生成するミキサ19iと、ベースバンド信号を増幅する受信アンプ(増幅器)20iと、増幅信号を符号化するデコーダ21iとが設けられている。Q相処理回路15も、I相処理回路14と同様に、ミキサ19q、受信アンプ20q及びデコーダ21qが設けられている。なお、受信アンプ20i,20qがパラメータを構成する。
【0032】
受信部11が電波受信した際、I相処理回路14は、局部発振器17から入力した搬送波と受信電波とをミキサ19iにてミキシングすることによりI相ベースバンド信号を生成し、これを受信アンプ20iで増幅した後、デコーダ21iに通すことにより、振幅変調成分としてI相信号(検出符号)を生成する。また、受信部11が電波受信した際、Q相処理回路15は、局部発振器17から移相器18を介して入力した90度位相がずれた搬送波と受信電波とをミキサ19qにてミキシングすることによりQ相ベースバンド信号を生成し、これを受信アンプ20qで増幅した後、デコーダ21qに通すことにより、位相変調成分としてQ相信号(検出符号)を生成する。
【0033】
受信判定部16は、I相処理回路14から入力するI相信号と、Q相処理回路15から入力するQ相信号とを基に、受信可否を判定する。受信判定部16は、I相信号及びQ相信号の両方でエラーチェック(ビットエラーの有無)を確認し、受信エラーがない方を選択することにより受信電波を取得する。受信判定部16は、I相信号やQ相信号を取得した際、I相信号やQ相信号(負荷変調信号Sfh)の振幅が、信号判定における振幅の最大許容値であるレンジE(図4に図示)の範囲内に収まっていれば、これら信号を正常に取得することが可能である。
【0034】
本例のリーダライタ2には、I相信号及びQ相信号の両方で受信エラー(読み取りエラー)となった際、リーダライタ2の受信強度(受信レベル)を切り換えることにより、受信エラーを解消する受信強度可変機能が設けられている。本例の受信強度可変機能は、受信エラーとなった際、受信回路13に内蔵された受信アンプ20i,20qの利得を下げることにより、リーダライタ2の受信強度を調整して、負荷変調信号Sfhを受信判定部16の信号判定用のレンジE内に収めるようにする。なお、信号判定用のレンジEが受信判定の最大振幅に相当する。
【0035】
ここで、図3に、通信回路5の受信端子RXにおける各利得(以降、受信アンプ利得RxGainと示す)のそれぞれの通信距離での通信成否の試験結果を示す。なお、同図では、通信が成功した場合に「○」と記し、通信が失敗の場合に「×」と記す。同図に示されるように、受信アンプ利得RxGainが高めの利得(38dBや43dB)のときに通信が失敗していても、利得を低く(33dB)にすれば、通信失敗していた距離でも通信が成立することが分かる。よって、仮に受信エラーとなってしまっても、受信アンプ利得RxGainを下げれば、通信が成立する状態になるので、本例では、この原理を使用して通信の不感帯領域を極力減らすようにする。
【0036】
本例の場合、I相の受信アンプ20iとQ相の受信アンプ20qは、ともに利得を切り換えることが可能な可変式である。また、通信回路5には、I相の受信アンプ20iの利得やQ相の受信アンプ20qの利得を設定するレジスタ22が設けられている。よって、I相の受信アンプ20iやQ相の受信アンプ20qは、レジスタ22の値に準じた利得に設定される。
【0037】
通信回路5には、受信判定部16の判定結果を基に受信エラーの有無を監視する受信エラー監視部24が設けられている。受信エラー監視部24は、I相信号やQ相信号が所定の受信強度をとっていてこれら信号が存在するにもかかわらず、信号を正常に復調できないことを確認すると、このときの電波受信を受信エラーと判定する。本例の受信エラー監視部24は、I相信号やQ相信号が存在するにもかかわらず受信信号のビット判定に失敗(ビットエラー)すると、受信エラーを認識し、受信強度が強すぎると判定する。なお、受信エラー監視部24が通信状態監視手段を構成する。
【0038】
通信回路5には、受信エラーの際、レジスタ22の値を書き換えることにより受信アンプ利得RxGainを下げるレジスタ設定部25が設けられている。レジスタ設定部25は、受信エラーの際、受信アンプ利得RxGainを所定の低い値に下げることにより、受信信号の振幅を低くして、受信信号が受信判定部16のレンジE内に収まるようにする。本例の場合、通常状態時、受信アンプ利得RxGainを高い値に設定しておき、受信エラーが判定された際、受信アンプ利得RxGainを低い値にして、負荷変調信号Sfhの振幅を低くする。これは、通常状態時、受信アンプ利得RxGainを高い値とすることで広い通信エリアを確保しておき、受信エラーが発生した際に、負荷変調信号Sfhの振幅を下げて不感帯領域を解消するためである。なお、レジスタ設定部25が調整手段を構成する。
【0039】
通信回路5には、レジスタ22を書き換えて受信アンプ利得RxGainを下げた後、通信端末3との通信を再実行させる通信再実行部26が設けられている。通信再実行部26は、レジスタ22を書き換えて利得を下げた後、リーダライタ2に通信端末3との双方向通信を、受信アンプ利得RxGainが低い値で再実行させる。受信アンプ利得RxGainを下げるべく書き換えられたレジスタ22は、通信を再実行させた後、元の初期値に戻される。なお、通信再実行部26が通信再実行手段に相当する。
【0040】
次に、本例のRFIDシステム1の動作を、図4〜図7を用いて説明する。
通常状態時、レジスタ設定部25は、レジスタ22を初期値に設定することにより、受信アンプ利得RxGainを初期値(例えば、38dB)に設定する。よって、通常状態では、受信アンプ利得RxGainが高めに設定されるので、通信距離が広く設定される。このため、通信端末3が遠い位置にあっても、リーダライタ2との通信を確立させることが可能となる。
【0041】
このとき、リーダライタ2と通信端末3との通信距離が例えば0〜20[mm]や34〜42[mm]であれば、図4に示すように、I相信号における負荷変調信号Sfhの振幅は、受信判定部16のレンジEのピーク値Vmxに収まる状態(飽和していない状態)となる。即ち、負荷変調信号Sfhとキャリア信号Scr(搬送信号Shs)との比が飽和していない状態となる。よって、I相信号が受信エラーではなく、正常に取得される。なお、図4の例のように、Q相信号における負荷変調信号Sfhの振幅も飽和していない場合には、Q相信号も受信エラーせず、正常に取得される。なお、判定種類によっては、I相及びQ相のいずれかで正常受信できればよいという方式もあるので、Q相信号を受信できるか否かは、実際のところどちらでもよい。このように、受信アンプ利得RxGainが初期値をとる状況下で、通信距離が0〜20[mm]、34〜42[mm]にあれば、通信は問題なく成立する。
【0042】
一方、図5に示すように、受信アンプ利得RxGainが初期値をとる状況下で、リーダライタ2と通信端末3との通信距離が22〜32[mm]の場合、I相信号における負荷変調信号Sfhの振幅は、受信判定部16のレンジEのピーク値Vmxをレンジオーバーする状態(飽和する状態)となる。また、送信信号Strの後に、負荷変調信号Sfhが現れない箇所も生じる。よって、I相信号を正常に受信することができず、受信エラーとなる。また、Q相信号における負荷変調信号Sfhも、振幅が飽和することがある。このとき、Q相信号も正常に受信することができず、受信エラーとなる。
【0043】
このとき、受信エラー監視部24は、I相信号やQ相信号が存在するにもかかわらず、ビットエラーの判定にて受信エラーを認識することから、負荷変調信号Sfhを受信できているが、受信強度が高すぎると判断する。よって、受信エラー監視部24は、レジスタ設定部25にレジスタ書換要求を出力する。レジスタ設定部25は、受信エラー監視部24からレジスタ書換要求を受信すると、この要求により、レジスタ22を書き換えて、受信アンプ20i,20qの利得(受信アンプ利得RxGain)を低い値(例えば、33dB)に下げる。そして、受信アンプ利得RxGainを下げた後、通信再実行部26が通信を再実行させる。
【0044】
これにより、図6に示すように、通信距離が22〜32[mm]であっても、受信アンプ利得RxGainを下げれば、I相信号及びQ相信号の両方とも、負荷変調信号Sfhの振幅が、レンジE内に収まる状態、つまり飽和していない状態の受信となる。このため、I相信号及びQ相信号が受信エラーせず、正常に取得される。よって、通信端末3が仮に不感帯領域に位置していても、レジスタ22の切り換えにより受信アンプ利得RxGainを下げて通信を再実行させることにより、通信を成立させることが可能となる。
【0045】
受信アンプ利得RxGainが初期値のとき、ある通信距離(本例では、22〜32[mm]の範囲)に不感帯領域が発生するのは、本例のリーダライタ2がマッチング回路7でインピーダンス調整を行って、リーダライタ2の通信距離を確保していることが一要因であると推定される。マッチング回路7でのインピーダンス調整では、低い電圧で通信距離を確保するために、ダンプ抵抗でQ値(Quality factor)を低く抑えるのではなく、マッチング回路7においてインピーダンスを調整する。
【0046】
マッチング回路7による調整方式の場合、図7(a)に示すように、キャリア信号Scrの電圧(振幅のピーク電圧)と負荷変調信号Sfhの電圧(振幅のピーク電圧)は、通信距離が短くなるに連れて高くなっていく変化をとる。これは、図7(c)に示すように、アンテナインピーダンス(通信回路5から見たアンテナ6のインピーダンス)Z0が、通信距離が短くなるに連れて、通信回路5の内部インピーダンスに近づいていくからである。
【0047】
また、図7(b)に示すように、キャリア信号Scrの振幅と負荷変調信号Sfhの振幅との比率は、通信距離が22〜32[mm]の範囲のときに大きくなる傾向をとる。これは、マッチング回路7による調整方式の場合、アンテナ6のQ値が高いままであるので、キャリア信号Scrや負荷変調信号Sfhの電圧の変化量が、200〜900[mVpp]と大きいことが要因であると推測される。よって、キャリア信号Scrと負荷変調信号Sfhとの電圧差が大きくなる通信距離の範囲が生じ、これが不感帯領域となって現れてしまうことになる。
【0048】
そこで、本例の場合、I相信号やQ相信号の強度が受信判定するのに充分に大きいにもかかわらずビット判定に失敗した場合には、レジスタ22を切り換えて受信アンプ利得RxGainを下げ、通信が再実行される。このため、マッチング回路7によってインピーダンス調整する本例のリーダライタ2の場合、通常状態では通信が成立しない不感帯領域に通信端末3が位置しても、受信アンプ利得RxGainを低くし、この状態で通信を再実行させるので、通信を問題なく成立させることが可能となる。
【0049】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)I相信号やQ相信号の強度が受信判定するのに充分に大きいにもかかわらずビット判定に失敗した場合、レジスタ22を切り換えることにより受信アンプ利得RxGainを下げ、アンテナ6の受信感度を下げた状態で通信を再実行させる。これにより、通常状態では不感帯となっていた領域でも通信を成立させることができる。よって、負荷変調通信において不感帯領域を少なく抑えることができる。
【0050】
(2)通信可否の判定は、負荷変調信号Sfhの強度が受信判定するのに充分に大きいか否かを確認しつつ、これがビット判定可能か否かによって行う。このため、簡単な判定方法によって、通信が不感帯領域にあるか否かを判定することができる。
【0051】
(3)負荷変調信号Sfhの飽和を要因として、ある距離(38dB:22〜32[mm]、43dB:20〜36[mm])のとき、通常状態では通信が不感帯となってしまっていても、受信アンプ利得RxGainを低くすることによって、通信成立する状態に切り換えることができる。このため、負荷変調信号Sfhの飽和に起因する不感帯領域を少なく抑えることができる。
【0052】
(4)リーダライタ2における受信信号をI相信号とQ送信号とに分離し、これら信号のうち読み取れる方の信号で受信信号を取得するので、通信成立性を確保することができる。また、通信可否の判定は、単に受信信号を見るのではなく、振幅と位相とにそれぞれ分けたI相信号やQ相信号を確認して通信状態を判定するので、通信成立の可否を精度よく判定することができる。
【0053】
(5)通常状態のときは、受信アンプ利得RxGainを高い初期値に設定して広い通信エリアを確保し、この状態で通信端末3が不感帯領域にあるときは、受信アンプ利得RxGainを低くして、通常状態では不感帯領域であった距離を通信可能な領域に切り換える。このため、通常時は広い通信エリアを確保しておき、通信が不感帯となったときのみ、受信アンプ利得RxGainを調整するので、広い通信エリアの確保と不感帯の発生防止とを、両立することができる。
【0054】
(6)通信が不感帯の際、受信アンプ利得RxGainを下げた後、通信が再実行されるので、この再通信にてリーダライタ2と通信端末3との通信を自動で成立させることができる。
【0055】
(7)不感帯の解消は、可変式の受信アンプ20i,20qの利得を調整することによって行うので、受信アンプ利得RxGainを調整するという簡素な処理によって、負荷変調通信の成立性を確保することができる。
【0056】
(8)マッチング回路7によってインピーダンス調整する本例のリーダライタ2の場合、実験結果から判明したように、通信範囲において所定ポイントに不感帯が発生してしまう。そこで、本例の場合は、通信が不感帯となっている際、受信アンプ利得RxGainを下げて通信成立するように調整するので、本例のタイプのリーダライタ2を用いても、通信成立性を確保することができる。
【0057】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図8及び図9に従って説明する。本例は、リーダライタ2のインピーダンス調整方式が第1実施形態と異なっており、他の基本的な構成は第1実施形態と同様である。よって、第1実施形態と同一部分は同一符号を付して詳しい説明を省略し、異なる部分についてのみ詳述する。
【0058】
図8に示すように、本例のリーダライタ2の場合、アンテナ6のインダクタンスLthの両側には、アンテナ6のQ値を低く抑えるためのダンプ抵抗31,31が接続されている。本例の場合、ダンプ抵抗31,31を設けるとともに、通信回路5の出力インピーダンスを高くすることにより、アンテナ6側とマッチング回路7側とのインピーダンスを調整する。ところで、Q値は、(2πfL)/Rの式によって算出されるので、ダンプ抵抗31を大きくすれば、Q値を低く抑えられることが分かる。よって、ダンプ抵抗31によってQ値を低く抑えることにより、変調波形のなまりが防止され、ビットの判定性が確保される。
【0059】
ダンプ抵抗31によるインピーダンス調整方式の場合、図9(a)に示すように、キャリア信号Scrの電圧(振幅のピーク電圧)と負荷変調信号Sfhの電圧(振幅のピーク電圧)は、通信距離が短くなるに連れて低くなっていく変化をとる。これは、リーダライタ2のインピーダンスを、通信端末3がない状態でインピーダンスマッチングするように調整しているため、遠い距離で電流が流れやすくなるのに対し、通信端末3がリーダライタ2に近づくと、図9(c)に示すように、リーダライタ2のアンテナインピーダンス(通信回路5から見たアンテナ6のインピーダンス)Z0が小さくなるため、通信回路5側とのマッチングがとれなくなり、電流が流れ難くなるためである。
【0060】
また、図9(b)に示すように、キャリア信号Scrの振幅と負荷変調信号Sfhの振幅との比率は、通信距離が変化しても、さほど変わらない傾向をとることが分かる。これは、アンテナ6のQ値をダンプ抵抗31,31によって低く抑えているので、キャリア信号Scrや負荷変調信号Sfhの電圧の変化量が、400〜80[mVpp]と小さく済むことが要因であると推測される。よって、キャリア信号Scrと負荷変調信号Sfhと振幅の比が、通信距離が変化しても大きく変わらず、結果、通信距離の範囲内では不感帯領域が発生しないと考えられる。
【0061】
しかし、ダンプ抵抗31によるインピーダンス調整方式であっても完全に不感帯領域が発生しない訳ではなく、例えば通信距離が最小値付近で不感帯が発生することもあることが実験により分かった。このため、本例の場合、通信距離が最小値付近の際、受信エラーが検出されるので、レジスタ22の切り換えにて受信アンプ利得RxGainが下げられ、この低い利得にて通信が再実行される。よって、通信距離が最小値付近や最大値付近で受信エラーが発生しても、利得を下げた後の再通信によって、通信端末3との通信を確立させることが可能となる。
【0062】
本実施形態の構成によれば、第1実施形態に記載の(1)〜(7)に加え、以下の効果を得ることができる。
(9)ダンプ抵抗31によるインピーダンス調整方式の場合に、通信に不感帯領域が発生したとしても、この不感帯領域を通信可能な領域に切り換えることができる。
【0063】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態を図10及び図11に従って説明する。本例は、受信エラー時における負荷変調信号Sfhの振幅を、受信部11の抵抗値を切り換えることにより行う点が第1実施形態と異なっている。よって、本例も第1実施形態と異なる部分についてのみ詳述する。
【0064】
図10に示すように、通信回路5の外部に設けられた抵抗R2は、抵抗値を自由に切り換え可能な可変式となっている。また、通信回路5には、受信エラーの際、抵抗R2の値を調整して分圧抵抗回路12の値を切り換える抵抗値設定部35が設けられている。本例の抵抗値設定部35は、受信エラーの際、抵抗R2の値を増加させることにより、負荷変調信号Sfhの振幅を下げるようにする。また、抵抗値設定部35は、通常状態時、抵抗R2を初期値に設定して通信範囲を広くとっておき、受信エラーの際、抵抗R2を増加させて受信強度を低くする。なお、抵抗値設定部35が調整手段を構成し、抵抗R2がパラメータを構成する。
【0065】
通常状態時、抵抗値設定部35は、抵抗R2を初期値に設定することにより、分圧抵抗回路12(即ち、抵抗R2)を初期値に設定する。ここで、受信端子RXの電圧(受信電圧Vrx)は、{R1/(R1+R2)}×Vp2により求まる(なお、Vp2は中点P2における電圧)。よって、R2を小さくすれば、受信電圧Vrxが大きくなる。即ち、受信信号を大きくすることができるので、遠くの信号を判別することが可能となる。このため、通信端末3が遠い位置にあっても、リーダライタ2との通信を確立させることが可能となる。
【0066】
一方、受信エラー監視部24は、I送信号又はQ相信号の強度が受信判定するのに充分に大きいにもかかわらず受信信号のビット判定に失敗した場合、負荷変調信号Sfhを受信できてはいるものの、受信強度が強すぎると判断する。よって、抵抗値設定部35は、抵抗R2を高い値に切り換え、負荷変調信号Sfhの振幅を低くする。そして、通信再実行部26は、抵抗R2が高い値に切り換えられた後、通信を再実行する。このため、負荷変調信号Sfhが飽和しなくなるので、問題なく受信信号を取得することが可能となる。
【0067】
図11に、抵抗R2の各値のそれぞれの通信距離での通信成否の試験結果を示す。同図に示されるように、抵抗R2の値が低い値(例えば2kΩ)のときに通信が失敗していても、抵抗値を高い値(例えば2.7や3.3kΩ)にすれば、通信失敗していた距離でも通信が成立することが分かる。よって、通常状態時、仮に受信エラーとなってしまっても、抵抗R2を増加させれば、通信が成立する状態になるので、本例の場合も不感帯領域を減少させることが可能となる。
【0068】
本実施形態の構成によれば、各実施形態に記載の(1)〜(6),(8),(9)に加え、以下の効果を得ることができる。
(10)不感帯の解消は、受信部11の可変抵抗R2を調整することによって行うので、抵抗値を調整するという簡素な処理によって、負荷変調通信の成立性を確保することができる。
【0069】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・各実施形態において、負荷変調信号Sfhの振幅を下げて通信を再実行した際、通信が未だ成立しない場合は、負荷変調信号Sfhの振幅を更に下げて再通信し、この処理を通信が成立するまで繰り返し行ってもよい。
【0070】
・各実施形態において、通信可否の判定は、I相信号やQ相信号を確認してビット判定できるか否かを判定する方式に限定されない。要は、受信部11にて負荷変調信号Sfhの強度が受信判定に充分な大きさを有しているにもかかわらず正常に復調できないことを確認することができれば、他の方式に変更してもよい。
【0071】
・各実施形態において、受信回路13は、受信信号をI相とQ相とに分離して信号判定する形式に限定されず、例えば受信信号をI相とQ相とに分離せず、受信信号をそのまま判定する形式でもよい。
【0072】
・各実施形態において、通信が不感帯となってしまう要因は、負荷変調信号Sfhの飽和に限定されず、他の事象を要因としてもよい。
・各実施形態において、通信端末3は、例えば携帯電話、電子キー、ICカードなど、種々の端末が使用可能である。
【0073】
・第1実施形態において、レジスタ22は、1つを2つの受信アンプ20i,20qで共用することに限定されず、それぞれ個別に設けてもよい。
・各実施形態において、パラメータは、受信アンプ利得RxGainや可変抵抗R2に限定されず、負荷変調信号Sfhの振幅を変えることできるものであれば何でもよい。
【0074】
・各実施形態において、リーダライタ2は、通常状態時、パラメータ(受信アンプ利得RxGain、抵抗R2)が初期値をとり、不感帯領域にあるときにのみ、パラメータ(受信アンプ利得RxGain、抵抗R2)を切り換える方式をとることに限定されない。例えば、通信状態を逐次監視し、パラメータ(受信アンプ利得RxGain、抵抗R2)を、その時々の通信状態に応じた値に適宜設定するものでもよい。
【0075】
・各実施形態において、RFIDシステム1は、磁界型で周波数が13.56MHzのシステムに限定されない。例えば、RFIDシステム1は、13.56MHz以外の周波数を採用してもよい。
・各実施形態において、RFIDシステム1は、車両に搭載されることに限定されず、他の機器や装置に適用可能である。
【0076】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(イ)請求項1〜8のいずれかにおいて、ダンプ抵抗を用いるのではなく、アンテナに接続されたマッチング回路のインピーダンスを調整することにより、変調信号のビット波形を確保する。
【0077】
(ロ)請求項1〜8のいずれかにおいて、アンテナに接続されたダンプ抵抗によってQ値を調整することにより、変調信号のビット波形を確保する。
【符号の説明】
【0078】
3…通信端末、11…受信部、13…受信手段としての受信回路、16…通信状態監視手段を構成する受信判定部、20i,20q…パラメータを構成する可変式の受信アンプ、24…通信状態監視手段を構成する受信エラー監視部、25…調整手段を構成するレジスタ設定部、26…通信再実行手段としての通信再実行部、35…調整手段を構成する抵抗値調整部、Shs…搬送波信号、Srs…応答信号、Sfh…負荷変調信号、R2…パラメータを構成する抵抗、E…受信判定の最大振幅に相当する受信判定用レンジ、RxGain…受信アンプ利得、Vrx…受信電圧。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信端末と双方向により通信し、自身が送信する搬送波信号に前記通信端末の応答信号が重畳した負荷変調信号を読み取ることにより、前記通信端末からの信号を受信する負荷変調通信制御装置において、
受信強度に関係するパラメータと、
前記通信端末と通信の通信状態を監視する通信状態監視手段と、
前記通信状態監視手段の監視結果を基に前記パラメータを切り換えて受信強度を変化させることにより、前記負荷変調信号の振幅を調整して、通信成立を確保する調整手段と
を備えたことを特徴とする負荷変調通信制御装置。
【請求項2】
前記調整手段は、前記負荷変調信号の強度が信号判定に必要な大きさを有しているにもかかわらず復調ができない状況下のとき、受信エラーと認識し、前記パラメータの調整を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の負荷変調通信制御装置。
【請求項3】
前記負荷変調信号の強度が信号判定に必要な大きさを有しているにもかかわらず復調ができない状況は、当該負荷変調信号が受信判定の最大振幅を超えて飽和した状態に起因する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の負荷変調通信制御装置。
【請求項4】
前記通信端末から受信した受信信号をI相及びQ相に分離し、I相信号又はQ相信号の少なくともいずれか一方の信号を基に前記受信信号を取り込む受信手段を備え、
前記通信状態監視手段は、前記I相信号又は前記Q相信号の少なくとも一方の強度が、信号判定に必要な大きさを有しているにもかかわらず復調ができないと判断したとき、受信エラーと認識し、前記調整手段に前記パラメータの調整を実行させる
ことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の負荷変調通信制御装置。
【請求項5】
前記調整手段は、通常状態のとき、前記パラメータを初期値に設定しておくことにより、受信強度を高く設定しておき、前記通信端末との通信が成立しないとき、前記パラメータを他の値に変化させることにより、受信強度を低くする
ことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の負荷変調通信制御装置。
【請求項6】
前記調整手段による前記パラメータの切り換え後、通信を再実行させる通信再実行手段を備えた
ことを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の負荷変調通信制御装置。
【請求項7】
前記パラメータは、受信信号を増幅する可変式の受信アンプであり、前記調整手段は、前記可変式の受信アンプの利得を切り換えることにより、前記負荷変調信号の振幅を低下させる
ことを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか一項に記載の負荷変調通信制御装置。
【請求項8】
前記パラメータは、前記通信端末からの信号を受信する受信部に設けられた受信電圧を調整する可変式の抵抗であり、前記調整手段は、前記可変式の抵抗の値を変化させることにより、前記負荷変調信号の振幅を低下させる
ことを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか一項に記載の負荷変調通信制御装置。

【図1】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−62605(P2013−62605A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198567(P2011−198567)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】