説明

赤外線ガス分析計

【課題】試料ガスが低濃度の場合にも高精度の測定が可能な赤外線ガス分析計の提供。
【解決手段】本発明は、赤外線光源1からの赤外光の光路上に配置され試料ガスが流通される試料セル3と、試料セル3を透過した赤外光の光路上に配置される赤外線検出器4と、を備える。赤外線検出器4は、受光室41、42、圧力センサ43、および光学フィルタ44、45を備える。受光室41、42のそれぞれには、被検出成分ガスの赤外線吸収波長と少なくとも一部が重なる赤外線吸収波長を有するガスが封入されている。圧力センサ43は、受光室41と受光室42とにおける赤外光の吸収量の差を検出する。光学フィルタ44、45は、受光室41、42に封入されているガスの赤外線吸収帯のうちの予め定めた異なる一部をそれぞれ反射する。また、光学フィルタ44、45は、受光室41よりも後段側の位置にそれぞれ配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学工場や製鉄所のガス濃度に関するプロセスモニター、ボイラーや燃焼炉の燃焼ガス分析、大気汚染の監視、自動車排気ガスの測定などに使用され、ガス分子固有の赤外線吸収効果を利用して試料ガス中の特定成分の濃度を測定する赤外線ガス分析計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の赤外線ガス分析計としては、光路に沿って直列に配置された前後の受光室間での赤外光吸収量の差を検出するニューマチック型の検出器を備えたものが知られている。
この赤外線ガス分析計は、例えば図6に示すように、赤外線光源1、光チョッパ2、試料セル3、および赤外線検出器8を備えている。赤外線検出器8は、前後2つの受光室81、82と、圧力センサ83とを備えている。
【0003】
光源1から発せられた赤外光は、光チョッパ2により断続光となり試料ガスが流通する試料セル3内に入射する。試料セル3内に入射した赤外光は測定対象である試料ガスを透過し、赤外線検出器8に入射する。赤外線検出器8での赤外光の吸収量は、試料セル3内に存在する試料ガス(測定対象)成分の濃度に応じて変化するので、赤外線検出器8はその変化を検出して濃度信号S1として出力する。
【0004】
従来の赤外線検出器8では、試料ガス中の被検出成分による赤外線吸収を利用するので、試料ガス中に被検出成分と同一の赤外線吸収領域または一部が重なった赤外線吸収領域を持つ成分(干渉成分)が共存する場合には、干渉成分の濃度が被検出成分の測定誤差になる。
その干渉成分の影響を低減するために、例えば特許文献1では、前後の受光室での干渉成分による吸収の光路内に配置した遮光板により比率調整を行い、その影響を低減する方法が提案されている。また、この提案の他に、ガスフィルタによる干渉成分の波長帯の吸収、光学フィルタなどによる透過波長帯の限定、検出器の前後の光路長比の最適化による低減などの各種の方法が提案されている。
【0005】
さらに、1つの光学系で試料ガスに含まれる2以上の成分を測定する赤外線ガス分析計が知られている(特許文献2参照)。
この赤外線ガス分析計は、図7に示すように、赤外線光源1、光チョッパ2、試料セル3、赤外線検出器D1〜D3、および光学フィルタF1〜F3を備えている。
検出器D1〜D3は、それぞれ赤外光の光路に沿った2つの受光室91、92を備え、両受光室91、92での赤外光吸収量の差を、両受光室91、92間に設けらた圧力センサ93により検出する。
【0006】
検出器D1〜D3は、試料セル3に流通する試料ガス中の3成分(NO、CO、SO)を測定できるように、検出器D1にはNOが、検出器D2にはCOが、検出器D3にはSOがそれぞれ適当な濃度で充填されている。そして、検出器D1〜D3のそれぞれは、封入ガスの赤外線吸収波長に感度を有する赤外線センサとなっている。
試料セル3に流通する試料ガスに含まれるそれぞれのガス成分の濃度に応じて、検出器D1〜D3に封入されているガスに吸収されるエネルギーが変化し、圧力センサ93を通して取り出された信号から試料ガス中の濃度に換算する。
【0007】
光学フィルタF1〜F3は、干渉成分による妨害を除去するものであり、検出器D1〜D3の後段にそれぞれ配置されている。
また、特許文献2には、図7に示す赤外線ガス分析計の構成を基本にし、図7の検出器D1〜D3の構成を、図8(A)または図8(B)に示す検出器に置き換えたものが記載されている。
【0008】
図8(A)に示す検出器は、受光室91と受光室92との間に、光学フィルタFを配置したものである。図8(B)に示す検出器は、図7に示す受光室92をガスが流通するように接続される受光室92aと受光室92bとに分割し、この受光室92aと受光室92bとの間に、光学フィルタFを配置したものである。
このように、特許文献2に係る検出器では、試料ガス中に含まれる干渉成分の影響を低減するために、ガスフィルタによる干渉成分の波長帯を吸収し、光学フィルタなどにより透過波長帯を限定する方法を採用する。
【0009】
しかし、試料ガス中に2以上の干渉ガス成分が存在する場合、または試料ガスが低濃度の場合には、上記の従来の手法では、試料ガス中に含まれる干渉成分の影響を低減しきれない場合が多く、測定誤差を生じることになる。
この影響を低減する方法として、特許文献3に記載の方法が知られている。この方法は、検出器に封入されるガス中に干渉成分を添加し、2つの前後の受光室にそれぞれの干渉の影響が相殺される比率で封入することにより、その影響を除去するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭63−225148号公報
【特許文献2】特開2004−61207号公報
【特許文献3】特開平7−218434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献3に記載の方法は、試料ガス中に2成分以上の干渉ガスがある場合に、その干渉成分の影響を低減する方法としては有効である。しかし、前後の受光室において異なる濃度のガスを封入するので、前後の受光室のガスの膨張差によるマスフローを検出する方式の検出器には適用できない。
そこで、本発明は、上記の課題に着目してなされたものであり、フローセンサ方式の検出器に適用できる上に、試料ガスが低濃度の場合にも高精度の測定が可能な赤外線ガス分析計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような構成からなる。
本発明は、光源からの赤外光の光路上に配置され試料ガスが流通される試料セルと、前記試料セルを透過した前記赤外光の光路上に配置される赤外線検出器と、を備え、前記赤外線検出器は、被検出成分ガスの赤外線吸収波長と少なくとも一部が重なる赤外線吸収波長を有するガスが封入され、光路に沿って前記試料セル側から順に配置される第1の受光室および第2の受光室と、前記第1の受光室と前記第2の受光室とにおける赤外光の吸収量の差を検出するセンサと、前記第1の受光室および前記第2の受光室に封入されているガスの赤外線吸収帯の全部をそれぞれ反射し、または前記赤外線吸収帯のうち予め定めた異なる一部をそれぞれ反射する第1の光学フィルタおよび第2の光学フィルタと、を備え、前記第1の光学フィルタおよび第2の光学フィルタのそれぞれは、前記第1の受光室よりも後段側の位置に配置されている。
【0013】
本発明では、前記第1の受光室と前記第2の受光室のそれぞれは単一の空間からなり、前記第1の光学フィルタおよび前記第2の光学フィルタは、前記第2の受光室の後段、または前記第1の受光室と前記第2の受光室との間に配置されている
【0014】
また、本発明では、前記第1の光学フィルタは単一の空間からなり、前記第2の受光室は、ガスが流通できるように接続され、かつ、前記光路上に順に配置される第3の受光室と第4の受光室とからなり、前記第1の光学フィルタおよび前記第2の光学フィルタは、前記第1の受光室と前記第3の受光室との間および前記第3の受光室と前記第4の受光室との間に配置され、前記第3の受光室と前記第4の受光室との間にそれぞれ配置され、または前記第3の受光室と前記第4の受光室との間、および前記第4受光室の後段に配置されている。
そして、本発明では、前記第1の光学フィルタおよび前記第2の光学フィルタは、前記光路と交差する方向に移動するように構成し、挿入量を調整するようになっている。
【発明の効果】
【0015】
このような構成の本発明では、第1の受光室と第2の受光室において、封入されているガス中の干渉ガス成分の赤外線の吸収量を等しくすることが可能となる。
このため、本発明によれば、第1の受光室と第2の受光室内における干渉ガス成分による赤外線の吸収に基づくガスの膨張量差をなくすことができ、干渉ガス成分による測定誤差の影響を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の赤外線ガス分析計の第1実施形態の正面の概略断面図である。
【図2】ガスの赤外線の波長に対する吸光度を示すとともに、第1実施形態に適用される光学フィルタの特性(透過率)を示す図である。
【図3】第1実施形態の変形例の要部の正面の概略断面図である。
【図4】本発明の赤外線ガス分析計の第2実施形態の正面の概略断面図である。
【図5】第2実施形態の第1および第2変形例のそれぞれの要部の正面の概略断面図である。
【図6】従来の赤外線ガス分析計の正面の概略断面図である。
【図7】従来の他の赤外線ガス分析計の正面の概略断面図である。
【図8】図7の赤外線ガス分析計の第1および第2変形例のそれぞれの要部の正面の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の赤外線ガス分析計の第1実施形態の正面の概略断面図である。
この第1実施形態に係る赤外線ガス分析計は、図1に示すように、赤外線光源1と、光チョッパ2と、試料セル3と、赤外線検出器4とを備え、試料ガスが試料セル3内を流通するようになっている。
【0018】
赤外線光源1は、赤外線を放射する。光チョッパ2は、赤外線光源1と試料セル3との間に配置されている。また、光チョッパ2は、モータ5により回転し、赤外線光源1からの赤外光を断続して試料セル3に導くようになっている。
試料セル3は、赤外線光源1からの赤外光の光路6上に配置され、その内部を試料ガスが流通するようになっている。赤外線検出器4は、試料セル3を透過した赤外光の光路6上に配置されている。
【0019】
赤外線検出器4は、図1に示すように、受光室41と、受光室42と、圧力センサ43と、光学フィルタ44と、光学フィルタ45と、を備えている。
受光室41と受光室42とは、光路6に沿って試料セル3側から順に配置されている。そして、受光室41、42のそれぞれは、単一の空間を形成している。
また、受光室41、42のそれぞれには、被検出成分ガスの他に、試料セル3内に存在する試料ガス中の被検出成分ガスの干渉成分の影響を排除するために、その被検出成分の赤外線吸収波長と少なくとも一部が重なる赤外線吸収波長を有するガスが封入(充填)されている。
【0020】
ここで、例えば、赤外線検出器4がNOを測定する場合には、受光室41、42のそれぞれには、NOと、そのNOの赤外線吸収波長と一部が重なる赤外線吸収波長を有するガスが封入されている。
圧力センサ43は、受光室41と受光室42との間に配置され、受光室41と受光室42とにおける赤外光の吸収量の差に応じた圧力差を検出し、その検出信号S2を出力するようになっている。圧力センサ43は、コンデンサマイクやフローセンサなどである。
【0021】
光学フィルタ44、45は、赤外線に対して異なる透過特性を有し、受光室41、42に封入されているガスの赤外線吸収帯のうち、予め定めた異なる一部の吸収帯をそれぞれ反射するようになっている。また、光学フィルタ44、45のそれぞれは、光路6と交差する方向に移動できるように構成し、受光室41、42間における挿入量を調整できるようになっている。
【0022】
次に、図1の光学フィルタ44、45の具体的な特性について、図2を参照して説明する。
図2は、赤外線の波長が4〜7〔μm〕の範囲におけるガスの赤外線の吸光度の一例を示す。
このような赤外線の吸光度の下で、赤外線検出器4が試料ガス中のNOを測定する場合には、CO、HOが干渉ガス(干渉成分)となり、その測定の誤差となる。
【0023】
すなわち、赤外線検出器4でNOを測定する場合には、NOの吸収波長帯がCOやHOの吸収波長帯と重なる部分があるので、試料ガス中のCOやHOに対して若干の感度を有し、NOの濃度測定の誤差となる。
そこで、光学フィルタ44は、図2に示すように、NOの測定波長帯(検出波長帯)である5〔μm〕付近の赤外線(赤外光)を透過し、HOの吸収波長帯である5.5〜7〔μm〕付近の赤外線を透過しないフィルタとする。
【0024】
また、光学フィルタ45は、図2に示すように、NOの測定波長帯(検出波長帯)である5〔μm〕付近の赤外線を透過し、COの吸収波長帯である4.3〔μm〕付近の赤外線を透過しないフィルタとする。
なお、赤外線検出器4でNOを測定する場合には、HOの吸収波長帯をカットするフィルタ44の代わりに、製作費用が廉価なサファイヤフィルタを使用しても良い。
【0025】
次に、第1実施形態の動作例について、図1および図2を参照して説明する。
赤外線光源1から放射される赤外光は、光チョッパ2により断続光となり試料ガスが流通する試料セル3内に入射する。試料セル3内に入射した赤外光は測定対象である試料ガスを透過し、赤外線検出器4に入射する。
赤外線検出器4は、NOを測定する場合には、例えば、図2に示すような特性を有する光学フィルタ44、45を備えている。
【0026】
図2によれば、光学フィルタ44は、NOの測定波長帯付近の赤外線を透過し、HOの吸収波長帯付近の赤外線を透過しない。一方、光学フィルタ45は、NOの測定波長帯付近の赤外線を透過し、COの吸収波長帯付近の赤外線を透過しない。そして、光学フィルタ44、45は、光路6と交差する方向に移動でき、かつ、受光室41、42間における挿入量を調整できるようになっている。
【0027】
また、受光室41、42のそれぞれには、被検出成分ガス(NO)の他に、被検出成分ガスの干渉成分の影響を排除するために、その被検出成分ガスの赤外線吸収波長と少なくとも一部が重なる赤外線吸収波長を有するガスが封入されている。
このため、光学フィルタ44、45の各挿入量を調整すれば、受光室41、42に封入される各ガスが吸収する、HOの吸収波長帯付近の赤外線とCOの吸収波長帯付近の赤外線との各吸収量を調整することができる。したがって、受光室41と受光室42とは、光学フィルタ44、45の挿入量を調整することにより、干渉ガス成分の赤外線の吸収量を等しくすることができる。
【0028】
以上のように、第1実施形態の赤外線検出器4では、上記のように、受光室41、42と、光学フィルタ44、45と、を備えるようにした。このため、受光室41、42のそれぞれは、光学フィルタ44、45の各挿入量を調整することで、干渉ガス成分の赤外線の吸収量を等しくすることができる。
したがって、第1実施形態によれば、受光室41、42内における干渉ガス成分による赤外線の吸収に基づくガスの膨張量差をなくすことができ、干渉ガス成分による測定誤差の影響を低減することができる。
【0029】
(第1実施形態の変形例)
この変形例は、図1に示す第1実施形態の構成を基本にし、図1の赤外線検出器4を図3の赤外線検出器4aに置き換えたものである。
赤外線検出器4aは、赤外線検出器4と同様に、受光室41、42と、圧力センサ43と、光学フィルタ44、45と、を備えるが、光学フィルタ44、45を受光室42の後段側に配置した点が異なる。光学フィルタ44、45のそれぞれは、受光室42の後段側において光路6と交差する方向に移動でき、かつ、受光室42の後段における挿入量を個別に調整できるようになっている。
【0030】
この変形例によれば、第1実施形態の場合と同様に、光学フィルタ44、45の各挿入量を調整すれば、受光室41、42に封入される各ガスが吸収する、HOの吸収波長帯付近の赤外線とCOの吸収波長帯付近の赤外線との各吸収量を調整することができる。したがって、受光室41と受光室42とは、光学フィルタ44、45の挿入量を調整することにより、干渉ガス成分の赤外線の吸収量を等しくすることができる。
なお、この変形例の場合には、図3の光学フィルタ44、45に代えて、光沢研磨されたアルミ板などの光反射板を使用するようにしても良い。このように光反射板に代えた場合には、全ての赤外線波長を反射することになり、検出波長帯の赤外線、および干渉成分の赤外線を反射することになる。
【0031】
(第2実施形態)
図4は、本発明の赤外線ガス分析計の第2実施形態の正面の概略断面図である。
この第2実施形態に係る赤外線ガス分析計は、図4に示すように、赤外線光源1と、光チョッパ2と、試料セル3と、赤外線検出器4bとを備え、試料ガスが試料セル3内を流通するようになっている。
すなわち、この第2実施形態は、図1に示す第1実施形態の構成を基本にし、図1の赤外線検出器4を図4の赤外線検出器4bに置き換えたものである。このため、以下の説明では、同一の構成要素には同一符号を付し、その構成が異なる点について説明する。
【0032】
赤外線検出器4bは、図4に示すように、受光室41と、ガスが流通できるように接続された受光室42aおよび受光室42bと、圧力センサ43と、2つの光学フィルタ44、45と、を備える。
圧力センサ43は、受光室41と受光室42a、42bとの間に配置され、受光室41と受光室42a、42bとにおける赤外光の吸収量の差に応じた圧力差を検出し、その検出信号S2を出力するようになっている。
【0033】
光学フィルタ44は、受光室41と受光室42aとの間に配置されている。また、光学フィルタ44は、光路6と交差する方向に移動できるように構成し、受光室41、42a間における挿入量を調整できるようになっている。
光学フィルタ45は、受光室42aと受光室42bとの間に配置されている。また、光学フィルタ45は、光路6と交差する方向に移動できるように構成し、受光室42a、42b間における挿入量を調整できるようになっている。
【0034】
次に、第2実施形態の動作例について、図4を参照して説明する。
赤外線光源1から放射される赤外光は、光チョッパ2により断続光となり試料ガスが流通する試料セル3内に入射する。試料セル3内に入射した赤外光は測定対象である試料ガスを透過し、赤外線検出器4bに入射する。
赤外線検出器4bは、NOを測定する場合には、例えば、図2に示すような特性を有する光学フィルタ44、45を備えている。
【0035】
図2によれば、光学フィルタ44は、NOの測定波長帯付近の赤外線を透過し、HOの吸収波長帯付近の赤外線を透過しない。一方、光学フィルタ45は、NOの測定波長帯付近の赤外線を透過し、COの吸収波長帯付近の赤外線を透過しない。
光学フィルタ44は、光路6と交差する方向に移動でき、かつ、受光室41、42a間における挿入量を調整できるようになっている。また、光学フィルタ45は、光路6と交差する方向に移動でき、かつ、受光室42a、42b間における挿入量を調整できるようになっている。
【0036】
さらに、受光室41、42a、42bのそれぞれには、被検出成分ガス(NO)の他に、被検出成分ガスの干渉成分の影響を排除するために、その被検出成分ガスの赤外線吸収波長と少なくとも一部が重なる赤外線吸収波長を有するガスが封入されている。
このため、光学フィルタ44、45の各挿入量を調整すれば、受光室41、42a、42bに封入される各ガスが吸収する、HOの吸収波長帯付近の赤外線とCOの吸収波長帯付近の赤外線との各吸収量を調整することができる。
したがって、受光室41と受光室42a、42bとは、光学フィルタ44、45の挿入量を調整することにより、干渉ガス成分の赤外線の吸収量を等しくすることができる。
【0037】
以上のように、第1実施形態の赤外線検出器4では、上記のように、受光室41、42a、42bと、光学フィルタ44、45と、を備えるようにした。このため、受光室41と受光室42a、42bとは、光学フィルタ44、45の挿入量を別個に調整することで、干渉ガス成分の赤外線の吸収量を等しくすることができる。
したがって、第2実施形態によれば、受光室41内と受光室42a、42b内における干渉ガス成分による赤外線の吸収に基づくガスの膨張量差をなくすことができ、干渉ガス成分による測定誤差の影響を低減することができる。
【0038】
(第2実施形態の変形例)
(1)第1変形例
この第1変形例は、図4に示す第2実施形態の構成を基本にし、図4の赤外線検出器4bを図5(A)の赤外線検出器4cに置き換えたものである。
赤外線検出器4cは、赤外線検出器4bと同様に、受光室41と、受光室42a、42bと、圧力センサ43と、光学フィルタ44、45と、を備えるが、光学フィルタ44、45を受光室42aと受光室42bの間に配置した点が異なる。光学フィルタ44、45のそれぞれは、光路6と交差する方向に移動でき、かつ、受光室42aと受光室42bとの間における挿入量を個別に調整できるようになっている。
【0039】
この第1変形例によれば、第2実施形態の場合と同様に、光学フィルタ44、45の各挿入量を調整すれば、受光室41、42a、42bに封入される各ガスが吸収する、HOの吸収波長帯付近の赤外線とCOの吸収波長帯付近の赤外線との各吸収量を調整することができる。したがって、受光室41と受光室42a、42bとは、光学フィルタ44、45の挿入量を調整することにより、干渉ガス成分の赤外線の吸収量を等しくすることができる。
【0040】
(2)第2変形例
この第2変形例は、図4に示す第2実施形態の構成を基本にし、図4の赤外線検出器4bを図5(B)の赤外線検出器4dに置き換えたものである。
赤外線検出器4dは、赤外線検出器4bと同様に、受光室41と、受光室42a、42bと、圧力センサ43と、光学フィルタ44、45と、を備える。しかし、光学フィルタ45を受光室42aと受光室42bとの間に配置し、光学フィルタ44を受光室42bの後段側に配置した点が異なる。
【0041】
光学フィルタ45は、光路6と交差する方向に移動でき、かつ、受光室42aと受光室42bとの間における挿入量を調整できるようになっている。また、光学フィルタ44は、受光室42bの後段側において光路6と交差する方向に移動でき、かつ、受光室42bの後段における挿入量を調整できるようになっている。
【0042】
この第2変形例によれば、第2実施形態の場合と同様に、光学フィルタ44、45の各挿入量を調整すれば、受光室41、42a、42bに封入される各ガスが吸収する、HOの吸収波長帯付近の赤外線とCOの吸収波長帯付近の赤外線との各吸収量を調整することができる。したがって、受光室41と受光室42a、42bとは、光学フィルタ44、45の挿入量を調整することにより、干渉ガス成分の赤外線の吸収量を等しくすることができる。
【符号の説明】
【0043】
1…赤外線光源、2…光チョッパ、3…試料セル、4、4a〜4d…赤外線検出器、5…モータ、6…光路、41、42、42a、42b…受光室、43…圧力センサ、44、45…光学フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの赤外光の光路上に配置され試料ガスが流通される試料セルと、
前記試料セルを透過した前記赤外光の光路上に配置される赤外線検出器と、を備え、
前記赤外線検出器は、
被検出成分ガスの赤外線吸収波長と少なくとも一部が重なる赤外線吸収波長を有するガスが封入され、光路に沿って前記試料セル側から順に配置される第1の受光室および第2の受光室と、
前記第1の受光室と前記第2の受光室とにおける赤外光の吸収量の差を検出するセンサと、
前記第1の受光室および前記第2の受光室に封入されているガスの赤外線吸収帯の全部をそれぞれ反射し、または前記赤外線吸収帯のうち予め定めた異なる一部をそれぞれ反射する第1の光学フィルタおよび第2の光学フィルタと、を備え、
前記第1の光学フィルタおよび第2の光学フィルタのそれぞれは、前記第1の受光室よりも後段側の位置に配置されていることを特徴とする赤外線ガス分析計。
【請求項2】
前記第1の受光室と前記第2の受光室のそれぞれは単一の空間からなり、
前記第1の光学フィルタおよび前記第2の光学フィルタは、前記第2の受光室の後段、または前記第1の受光室と前記第2の受光室との間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の赤外線ガス分析計。
【請求項3】
前記第1の光学フィルタは単一の空間からなり、
前記第2の受光室は、ガスが流通できるように接続され、かつ、前記光路上に順に配置される第3の受光室と第4の受光室とからなり、
前記第1の光学フィルタおよび前記第2の光学フィルタは、
前記第1の受光室と前記第3の受光室との間および前記第3の受光室と前記第4の受光室との間に配置され、
前記第3の受光室と前記第4の受光室との間にそれぞれ配置され、
または前記第3の受光室と前記第4の受光室との間、および前記第4受光室の後段に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の赤外線ガス分析計。
【請求項4】
前記第1の光学フィルタおよび前記第2の光学フィルタは、前記光路と交差する方向に移動するように構成し、挿入量を調整するようになっていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちの何れか1項に記載の赤外線ガス分析計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−96889(P2013−96889A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240991(P2011−240991)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】