説明

赤外線センサモジュール

【課題】周囲環境の温度変化やIC素子の発熱による検出精度の低下を抑制できる赤外線センサモジュールを提供する。
【解決手段】熱型赤外線センサ100と温度補償素子101とは同一構造であり、IC素子102は、熱型赤外線センサ100の出力信号と温度補償素子101の出力信号とを差動増幅する。パッケージ103内に、パッケージ103の外部から内部へ入射した第1の赤外線、IC素子102の発熱に起因してIC素子102から放射された第2の赤外線、およびパッケージ蓋105から放射された第3の赤外線が温度補償素子101へ到達するのを阻止する赤外線遮断構造部106を有し、赤外線遮断構造部106は、赤外線遮断構造部106の内側の第1の空間K1と赤外線遮蔽構造部106の外側の第2の空間K2とを連通させる連通部165が設けられてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却の必要がない熱型赤外線センサと熱型赤外線センサの出力信号を信号処理するIC素子とがパッケージに収納された赤外線センサモジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、図28に示すように、熱型赤外線センサ100’と当該熱型赤外線センサ100’の出力信号を信号処理するIC素子102’とがパッケージ103’に収納された赤外線センサモジュールが提案されている(文献公知発明に係るものではない)。パッケージ103’は、熱型赤外線センサ100’およびIC素子102’が横並びで実装されるパッケージ本体104’と、熱型赤外線センサ100’での検知対象の赤外線を透過する機能を有しパッケージ本体104’との間に熱型赤外線センサ100’およびIC素子102’を囲む形でパッケージ本体104’に気密的に接合されたパッケージ蓋105’とで構成されている。ここにおいて、パッケージ蓋105’は、パッケージ本体104’の上記一表面側に覆着されるメタルキャップ152’と、メタルキャップ152’の開口窓152a’を閉塞する赤外線透過部材154’とで構成してある。
【0003】
上述の熱型赤外線センサ100’は、感温素子であるサーモパイル(図示せず)を備えた熱型赤外線検出部3’がシリコン基板1a’の一表面側に形成されてシリコン基板1a’に支持されている。また、熱型赤外線センサ100’は、シリコン基板1a’において熱型赤外線検出部3’の一部の直下に空洞部11’が形成されている。また、熱型赤外線センサ100’は、サーモパイルの温接点T1が、熱型赤外線検出部3’において空洞部11’に重なる領域に形成され、冷接点T2が熱型赤外線検出部3’において空洞部11’に重ならない領域に形成されている。
【0004】
また、従来から、図29に示すように、赤外線検出用の第1の赤外線検出素子201と、温度補償用の第2の赤外線検出素子202とをそれぞれダイボンドしたプリント基板213,213を、容器内に配置してある赤外線検出器が提案されている(特許文献1)。ここにおいて、容器は、筒形のキャップ210とキャップ210の開口部を塞ぐように溶接などにより取り付けられるステム211とで構成されており、キャップ210の底部の入射窓を赤外線透過フィルタにより閉塞してある。また、ステム211には、ピン212が貫通して固定されており、ピン212をプリント基板213,213の貫通孔に差し込んで導電ペースト217により接着固定してある。
【0005】
特許文献1には、赤外線吸収用の感温部205を、サーミスタ、熱電対、サーモパイル、焦電体などに信号取り出し用の電極が形成された構成とすることが記載されている。
【0006】
また、特許文献1には、低コストで周囲温度変化による検出精度の低下を抑制することを目的とし、赤外線検出用の第1の赤外線検出素子201が実装されたプリント基板213を温度補償用の第2の赤外線検出素子202が実装されたプリント基板213の上側に配置することが記載されている。また、特許文献1には、赤外線検出用の第1の赤外線検出素子201と、温度補償用の第2の赤外線検出素子202とを同一構造とすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−132857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図28に示した構成の赤外線センサモジュールでは、小型化や耐ノイズ性の向上のためにパッケージ103’の小型化が望まれている。しかしながら、図28に示した構成の赤外線センサモジュールでは、熱型赤外線センサ100’の出力信号(出力電圧)に、IC素子102’の発熱や周囲環境の温度変化などの熱ノイズに起因したオフセット電圧を含んでしまい、検知エリア内の物体の絶対温度を正確に検知することができない。
【0009】
ここにおいて、IC素子102’やパッケージ蓋105’からパッケージ本体104’を通る経路で熱型赤外線センサ100’のシリコン基板1a’へ伝わる熱F1,F2は、主に冷接点T2の温度を上昇させるので、マイナスのオフセット電圧を発生させる要因となる。すなわち、図30(a)に示すように、温接点T1の温度上昇値をU1、冷接点T2の温度上昇値をU2とすると、U2>U1となる。
【0010】
これに対して、パッケージ蓋105’やIC素子102’からのパッケージ103’内の媒体を介した熱伝導や熱輻射により熱型赤外線センサ100’へ伝わる熱F3は、主に温接点T1の温度を上昇させるので、プラスのオフセット電圧を発生させる要因となる。
【0011】
したがって、パッケージ103’やIC素子102’からのパッケージ本体104’を介した熱伝導の影響が大きい場合には、マイナスのオフセット電圧が発生し、媒体を介した熱伝導や熱輻射の影響が大きい場合には、オフセット電圧が発生する。すなわち、図30(b)に示すように、温接点T1の温度上昇値をU1、冷接点T2の温度上昇値をU2とすると、U2<U1となる。
【0012】
また、図29に示した赤外線検出器では、容器の外部から赤外線透過フィルタ215を通して容器内へ入射する赤外線が、第1の赤外線検出素子201には入射するものの、第2の赤外線検出素子202に対してはプリント基板213によって遮蔽されて妨げられるから、温度補償用の第2の赤外線検出素子202が、容器の外部から赤外線透過フィルタ215を通して容器内へ入射する赤外線の影響を受けることを防止できる。
【0013】
しかしながら、特許文献1には、第1の赤外線検出素子201および第2の赤外線検出素子202の出力信号を信号処理するIC素子について記載されておらず、IC素子を第1の赤外線検出素子201および第2の赤外線検出素子202と同じ容器内に設けることについて何ら記載されていない。
【0014】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、周囲環境の温度変化やIC素子の発熱による検出精度の低下を抑制できる赤外線センサモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1の発明は、第1のサーモパイルを有する第1の熱型赤外線検出部が第1の支持基板の一表面側に形成された熱型赤外線センサと、前記熱型赤外線センサの出力信号を温度補償するためのものであり第2のサーモパイルを有する第2の熱型赤外線検出部が第2の支持基板の一表面側に形成された温度補償素子と、前記熱型赤外線センサの出力信号と前記温度補償素子の出力信号との差分を信号処理するIC素子と、前記熱型赤外線センサおよび前記温度補償素子および前記IC素子が収納されたパッケージとを備え、前記第1の熱型赤外線検出部と前記第2の熱型赤外線検出部とが同一構造であるとともに、前記第1の支持基板と前記第2の支持基板とが同一構造であり、前記パッケージが、前記熱型赤外線センサおよび前記温度補償素子および前記IC素子が実装されたパッケージ本体と、前記熱型赤外線センサでの検知対象の赤外線である第1の赤外線を透過する機能を有し前記パッケージ本体との間に前記熱型赤外線センサおよび前記温度補償素子および前記IC素子を囲む形で前記パッケージ本体に気密的に接合されたパッケージ蓋とで構成され、前記パッケージ内に、前記パッケージの外部から前記パッケージの内部へ入射した前記第1の赤外線、前記IC素子の発熱に起因して前記IC素子から放射された第2の赤外線、および前記パッケージ蓋から放射された第3の赤外線が前記温度補償素子へ到達するのを阻止する赤外線遮断構造部を有し、前記赤外線遮断構造部は、前記赤外線遮断構造部の内側の第1の空間と前記赤外線遮蔽構造部の外側の第2の空間とを連通させる連通部が設けられてなることを特徴とする。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記赤外線遮断構造部は、前記パッケージ本体とは別体であり、前記パッケージ本体に接合されてなることを特徴とする。
【0017】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明において、前記赤外線遮断構造部は、前記温度補償素子との対向面側に、前記各赤外線の散乱を防止する散乱防止膜が形成されてなることを特徴とする。
【0018】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3の発明において、前記温度補償素子は、前記第2の熱型赤外線検出部を前記第2の支持基板よりも前記パッケージ本体における実装面に近くなるように前記パッケージ本体に実装されてなることを特徴とする。
【0019】
請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記温度補償素子における前記第2の支持基板の前記一表面とは反対の他表面側に、赤外線反射膜を設けてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、周囲環境の温度変化やIC素子の発熱による検出精度の低下を抑制できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態1の赤外線センサモジュールに関し、(a)は概略断面図、(b)は熱型赤外線センサの要部概略断面図、(c)は温度補償素子の要部概略断面図である。
【図2】同上の赤外線センサモジュールの要部概略平面図である。
【図3】同上の赤外線センサモジュールの要部を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略正面図、(c)は概略側面図である。
【図4】同上における熱型赤外線センサの平面レイアウト図である。
【図5】同上における熱型赤外線センサの画素部の平面レイアウト図である。
【図6】同上における熱型赤外線センサの画素部の平面レイアウト図である。
【図7】同上における熱型赤外線センサの画素部の要部を示し、(a)は平面レイアウト図、(b)は(a)のD−D’断面に対応する概略断面図である。
【図8】同上における熱型赤外線センサの画素部の要部の平面レイアウト図である。
【図9】同上における熱型赤外線センサの画素部の要部の平面レイアウト図である。
【図10】同上における熱型赤外線センサの画素部の要部を示し、(a)は平面レイアウト図、(b)は(a)のD−D’断面に対応する概略断面図である。
【図11】同上における熱型赤外線センサの冷接点を含む要部を示し、(a)は平面レイアウト図、(b)は概略断面図である。
【図12】同上における熱型赤外線センサの温接点を含む要部を示し、(a)は平面レイアウト図、(b)は概略断面図である。
【図13】同上における熱型赤外線センサの画素部の要部の概略断面図である。
【図14】同上における熱型赤外線センサの画素部の要部の概略断面図である。
【図15】同上における熱型赤外線センサの要部説明図である。
【図16】同上における熱型赤外線センサの等価回路図である。
【図17】同上における熱型赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図18】同上における熱型赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図19】同上における熱型赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図20】同上における熱型赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図21】同上の赤外線センサモジュールの説明図である。
【図22】同上の赤外線センサモジュールの説明図である。
【図23】同上の赤外線センサモジュールの要部の他の構成例を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略正面図、(c)は概略側面図である。
【図24】同上の赤外線センサモジュールの要部の他の構成例を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略正面図、(c)は概略側面図である。
【図25】同上の赤外線センサモジュールの要部の他の構成例を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略正面図、(c)は概略側面図である。
【図26】実施形態2の赤外線センサモジュールの概略断面図である。
【図27】実施形態3の赤外線センサモジュールに関し、(a)は概略断面図、(b)は熱型赤外線センサの要部概略断面図、(c)は温度補償素子の要部概略断面図である。
【図28】従来例の赤外線センサモジュールの概略断面図である。
【図29】従来例の赤外線検出器の概略断面図である。
【図30】従来例の赤外線センサモジュールの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施形態1)
以下、本実施形態の赤外線センサモジュールについて図1〜図22を参照しながら説明する。
【0023】
本実施形態の赤外線センサモジュールは、熱型赤外線センサ100と、熱型赤外線センサ100の出力信号を温度補償するための温度補償素子101と、熱型赤外線センサ100の出力信号と温度補償素子101の出力信号との差分を信号処理するIC素子102と、赤外線センサ100および温度補償素子101およびIC素子102が収納されたパッケージ103とを備えている。
【0024】
熱型赤外線センサ100は、図1(b)に示すように、サーモパイル(第1のサーモパイルとも称する)30aを有する熱型赤外線検出部(第1の熱型赤外線検出部とも称する)3がシリコン基板(第1の支持基板とも称する)1aの一表面側に形成されている。これに対し、温度補償素子101は、図1(c)に示すように、サーモパイル(第2のサーモパイルとも称する)30aを有する熱型赤外線検出部(第2の熱型赤外線検出部とも称する)3がシリコン基板(第2の支持基板とも称する)1aの一表面側に形成されている。ここにおいて、第1の熱型赤外線検出部3と第2の熱型赤外線検出部3とを同一構造とするとともに、第1の支持基板1aと第2の支持基板1aとを同一構造としてある。要するに、本実施形態では、温度補償素子101として熱型赤外線センサ100と同じ構造のものを用いている。
【0025】
パッケージ103は、熱型赤外線センサ100および温度補償素子101およびIC素子102が実装されたパッケージ本体104と、パッケージ本体104との間に熱型赤外線センサ100および温度補償素子101およびIC素子102を囲む形でパッケージ本体104に気密的に接合されたパッケージ蓋105とで構成されている。
【0026】
パッケージ本体104は、IC素子102と熱型赤外線センサ100と温度補償素子101とが横並びで実装されている。一方、パッケージ蓋105は、熱型赤外線センサ100での検知対象の赤外線である第1の赤外線を透過する機能および導電性を有している。
【0027】
パッケージ蓋105は、パッケージ本体104の上記一表面側に覆着されたメタルキャップ152と、メタルキャップ152において熱型赤外線センサ100に対応する部位に形成された開口窓152aを閉塞するレンズ153とで構成されている。ここにおいて、レンズ153が、第1の赤外線を透過する機能を有するとともに、熱型赤外線センサ100へ第1の赤外線を収束する機能を有している。
【0028】
また、赤外線センサモジュール3は、パッケージ103内に、パッケージ103の外部からパッケージ3の内部へ入射した第1の赤外線、IC素子102の発熱に起因してIC素子102から放射された第2の赤外線、およびパッケージ蓋105から放射された第3の赤外線が温度補償素子101へ到達するのを阻止する赤外線遮断構造部106を有している。また、赤外線遮断構造部106は、赤外線遮断構造部106の内側の第1の空間K1と赤外線遮蔽構造部106の外側の第2の空間K2とを連通させる連通部165が設けられている。
【0029】
以下、各構成要素についてさらに説明する。
【0030】
熱型赤外線センサ100は、赤外線アレイセンサであって、熱型赤外線検出部3と画素選択用スイッチング素子であるMOSトランジスタ4とを有する複数の画素部2(図4参照)がベース基板1の一表面側においてアレイ状(ここでは、2次元アレイ状)に配列されている。ここで、ベース基板1は、シリコン基板1aを用いて形成されている。本実施形態では、1つのベース基板1の上記一表面側にm×n個(図4および図16に示した例では、8×8個)の画素部2が形成されているが、画素部2の数や配列は特に限定するものではない。また、本実施形態では、熱型赤外線検出部3の感温部30が、複数個(ここでは、6個)のサーモパイル30a(図5参照)を直列接続することにより構成されており、図16では、熱型赤外線検出部3における感温部30の等価回路を、当該感温部30の熱起電力に対応する電圧源Vsで表してある。
【0031】
また、熱型赤外線センサ100は、図5、図7および図16に示すように、各列の複数の熱型赤外線検出部3の感温部30の一端が上述のMOSトランジスタ4を介して各列ごとに共通接続された複数の垂直読み出し線7と、各行の熱型赤外線検出部3の感温部30に対応するMOSトランジスタ4のゲート電極46が各行ごとに共通接続された複数の水平信号線6と、各列のMOSトランジスタ4のp形ウェル領域41が各列ごとに共通接続された複数のグラウンド線8と、各グラウンド線8が共通接続された共通グラウンド線9と、各列の複数個の熱型赤外線検出部3の感温部30の他端が各列ごとに共通接続された複数の基準バイアス線5とを備えており、全ての熱型赤外線検出部3の感温部30の出力を時系列的に読み出すことができるようになっている。要するに、熱型赤外線センサ100は、ベース基板1の上記一表面側に熱型赤外線検出部3と当該熱型赤外線検出部3に並設され当該熱型赤外線検出部3の出力を読み出すためのMOSトランジスタ4とを有する複数の画素部2が形成されている。
【0032】
MOSトランジスタ4は、ゲート電極46が水平信号線6に接続され、ソース電極48が感温部30を介して基準バイアス線5に接続され、各基準バイアス線5が共通基準バイアス線5aに共通接続され、ドレイン電極47が垂直読み出し線7に接続されている。また、熱型赤外線センサ100は、各水平信号線6それぞれが各別の画素選択用パッドVselに電気的に接続され、各垂直読み出し線7それぞれが各別の出力用パッドVoutに電気的に接続され、共通グラウンド線9がグラウンド用パッドGndに電気的に接続され、共通基準バイアス線5aが基準バイアス用パッドVrefと電気的に接続され、シリコン基板1aが基板用パッドVddに電気的に接続されている。
【0033】
しかして、各MOSトランジスタ4が順次、オン状態になるように各画素選択用パッドVselの電位を制御することで各画素部2の出力電圧を順次読み出すことができる。例えば、基準バイアス用パッドVrefの電位を1.65、グラウンド用パッドGndの電位を0V、基板用パッドVddの電位を5Vとしておき、画素選択用パッドVselの電位を5Vとすれば、MOSトランジスタ4がオンとなり、出力用パッドVoutから画素部2の出力電圧(1.65V+感温部30の出力電圧)が読み出され、画素選択用パッドVselの電位を0Vとすれば、MOSトランジスタ4がオフとなり、出力用パッドVoutから画素部2の出力電圧は読み出されない。なお、図4では、画素選択用パッドVsel、基準バイアス用パッドVref、グラウンド用パッドGnd、出力用パッドVoutなどを区別せずに、全て、パッド80として図示してある。
【0034】
以下、熱型赤外線検出部3およびMOSトランジスタ4それぞれの構造について説明する。なお、本実施形態では、上述のシリコン基板1aとして、導電形がn形で上記一表面が(100)面の単結晶シリコン基板を用いている。
【0035】
熱型赤外線検出部3は、シリコン基板1aの上記一表面側の各画素部2それぞれにおける熱型赤外線検出部3の形成用領域A1に形成されている。一方、MOSトランジスタ4は、シリコン基板1aの上記一表面側の各画素部2それぞれにおけるMOSトランジスタ4の形成用領域A2に形成されている。
【0036】
ところで、各画素部2は、赤外線を吸収する赤外線吸収部33(図1(b)、図5および図7(b)参照)を備えている。各画素部2では、シリコン基板1aに、赤外線吸収部33を当該シリコン基板1aから熱絶縁するための空洞部(掘込部)11が形成されており、シリコン基板1aの上記一表面側で平面視において空洞部11の内周線の内側に赤外線吸収部33を有し空洞部11を覆う薄膜構造部3aが形成されている。また、各画素部2では、薄膜構造部3aが複数の線状のスリット13により空洞部11の内周方向に沿って並設されそれぞれ熱型赤外線検出部3において空洞部11を囲む部位(平面視で空洞部11を囲む部位)から内方へ延長された複数(図5に示した例では、6つ)の小さな薄膜構造部(以下、小薄膜構造部と称する)3aaに分離され、各小薄膜構造部3aaごとにサーモパイル30aが設けられるとともに、各サーモパイル30aごとに出力を取り出す場合に比べて温度変化に対する出力変化が大きくなるように全てのサーモパイル30aが直列接続されており、隣接する小薄膜構造部3aa,3aa同士を連結する連結片3cが形成されている。以下では、赤外線吸収部33のうち各小薄膜構造部3aaそれぞれに対応して分割された各部位を分割赤外線吸収部33aと称する。
【0037】
本実施形態では、薄膜構造部3aに形成された複数のサーモパイル30aの全て、上述の例では、6つ全てのサーモパイル30aを直列接続した接続関係としてあるが、接続関係は、これに限らない。例えば、それぞれ3個のサーモパイル30aの直列回路を並列接続するようにしてもよく、この場合には、6つ全てのサーモパイル30aが並列接続されている場合や各サーモパイル30aごとに出力を取り出す場合に比べて感度を高めることができ、また、6つ全てのサーモパイル30aが直列接続されている場合に比べて、感温部30の電気抵抗を低くできて熱雑音が低減されるから、S/N比が向上する。ここにおいて、薄膜構造部3aにおける小薄膜構造部3aaの数に等しいサーモパイル30aの数は4以上の偶数であればよく、半数のサーモパイル30aを直列接続し、その直列回路を並列接続した接続関係とすれば、同様に感度を高めることができるとともにS/N比を向上できる。
【0038】
ここで、画素部2では、小薄膜構造部3aaごとに、熱型赤外線検出部3において空洞部11を囲む部位と分割赤外線吸収部33aとを連結する2つの平面視短冊状のブリッジ部3bb,3bbが空洞部11の内周方向に離間して形成されており、当該2つのブリッジ部3bb,3bbと分割赤外線吸収部33aとを空間的に分離し空洞部11に連通する平面視コ字状のスリット14が形成されている。ここにおいて、熱型赤外線検出部3のうち平面視において薄膜構造部3aを囲む部位は矩形枠状の形状となっている。なお、ブリッジ部3bbは、赤外線吸収部33および熱型赤外線検出部3において空洞部11を囲む部位それぞれとの連結部位以外の部分が上述の各スリット13,14により分割赤外線吸収部33aおよび熱型赤外線検出部3において空洞部11を囲む部位と空間的に分離されている。ここで、小薄膜構造部3aaの熱型赤外線検出部3において空洞部11を囲む部位からの延長方向の寸法を93μm、小薄膜構造部3aaの延長方向に直交する幅方向の寸法を75μm、各ブリッジ部3bbの幅寸法を23μm、各スリット13,14の幅を5μmに設定してあるが、これらの値は一例であって特に限定するものではない。
【0039】
上述の薄膜構造部3aは、シリコン基板1aの上記一表面側に形成されたシリコン酸化膜1bと、当該シリコン酸化膜1b上に形成されたシリコン窒化膜32と、当該シリコン窒化膜32上に形成された感温部30と、シリコン窒化膜32の表面側で感温部30を覆うように形成されたBPSG膜からなる層間絶縁膜50と、層間絶縁膜50上に形成されたPSG膜と当該PSG膜上に形成されたNSG膜との積層膜からなるパッシベーション膜60との積層構造部をパターニングすることにより形成されている。
【0040】
本実施形態では、シリコン窒化膜32のうち薄膜構造部3aのブリッジ部3bb,3bb以外の部位が上述の赤外線吸収部33を構成し、シリコン基板1aとシリコン酸化膜1bとシリコン窒化膜32と層間絶縁膜50とパッシベーション膜60とでベース基板1を構成している。また、本実施形態では、層間絶縁膜50とパッシベーション膜60との積層膜が、熱型赤外線検出部3の形成用領域A1とMOSトランジスタ4の形成用領域A2とに跨って形成されているが、熱型赤外線検出部3の形成用領域A1に形成された部分が赤外線吸収膜70(図7(b)参照)を兼ねている。ここで、赤外線吸収膜70の屈折率をn、検出対象の赤外線の中心波長をλとするとき、赤外線吸収膜70の厚さt2をλ/4nに設定するようにしているので、検出対象の波長(例えば、8〜12μm)の赤外線の吸収効率を高めることができ、高感度化を図れる。例えば、n=1.4、λ=10μmの場合には、t2≒1.8μmとすればよい。なお、本実施形態では、層間絶縁膜50の膜厚を0.8μm、パッシベーション膜60の膜厚を1μm(PSG膜の膜厚を0.5μm、NSG膜の膜厚を0.5μm)としてある。また、赤外線吸収膜70は、上述の構成に限らず、例えば、シリコン窒化膜により構成してもよい。
【0041】
また、各画素部2では、空洞部11の内周形状が矩形状であり、連結片3cは、平面視十字状に形成されており、小薄膜構造部3aaの延長方向に交差する斜め方向において隣接する小薄膜構造部3aa,3aa同士、小薄膜構造部3aaの延長方向において隣接する小薄膜構造部3aa,3aa同士、小薄膜構造部3aaの延長方向に直交する方向において隣接する小薄膜構造部3aa,3aa同士を連結している。
【0042】
サーモパイル30aは、シリコン窒化膜32上に形成され小薄膜構造部3aaとベース基板1とに跨って形成された細長のn形ポリシリコン層(第1の熱電要素)34と細長のp形ポリシリコン層(第2の熱電要素)35との一端部同士を分割赤外線吸収部33aの赤外線入射面側で金属材料(例えば、Al−Siなど)からなる第1の接続金属部36により電気的に接続した複数個(図5に示した例では、9個)の熱電対を有しており、ベース基板1の上記一表面側で互いに隣り合う熱電対のn形ポリシリコン層34の他端部とp形ポリシリコン層35の他端部とが金属材料(例えば、Al−Siなど)からなる第2の接続金属部37により接合され電気的に接続されている。ここで、サーモパイル30aは、n形ポリシリコン層34の上記一端部とp形ポリシリコン層35の上記一端部と第1の接続金属部36とで分割赤外線吸収部33a側の温接点T1を構成し、n形ポリシリコン層34の上記他端部とp形ポリシリコン層35の上記他端部と第2の接続金属部37とでベース基板1側の冷接点T2を構成している。要するに、サーモパイル30aの各温接点T1は、熱型赤外線検出部3において空洞部11に重なる領域に形成され、各冷接点T2は、熱型赤外線検出部3において空洞部11に重ならない領域に形成されている。なお、本実施形態における熱型赤外線センサ100では、サーモパイル30aの各n形ポリシリコン層34および各p形ポリシリコン層35それぞれにおいて、上述のブリッジ部3bb,3bbに形成されている部位およびベース基板1のシリコン窒化膜32上に形成されている部位でも赤外線を吸収することができる。
【0043】
また、熱型赤外線センサ100は、空洞部11の形状が、四角錘状であり、平面視における中央部の方が周部に比べて深さ寸法が大きくなっているので、薄膜構造部3aの中央部に温接点T1が集まるように各画素部2におけるサーモパイル30aの平面レイアウトを設計してある。すなわち、図5の上下方向における真ん中の2つの小薄膜構造部3aaでは、図5および図8に示すように、3つの小薄膜構造部3aaの並設方向に沿って温接点T1を並べて配置してあるのに対し、当該上下方向における上側の2つの小薄膜構造部3aaでは、図5および図9に示すように、3つの小薄膜構造部3aaの並設方向において真ん中の小薄膜構造部3aaに近い側に温接点T1を集中して配置してあり、当該上下方向における下側の2つの小薄膜構造部3aaでは、図5に示すように、3つの小薄膜構造部3aaの並設方向において真ん中の小薄膜構造部3aaに近い側に温接点T1を集中して配置してある。しかして、本実施形態における赤外線センサAでは、図5の上下方向における上側、下側の小薄膜構造部3aaの複数の温接点T1の配置が、真ん中の小薄膜構造部3aaの複数の温接点T1の配置と同じである場合に比べて、温接点T1の温度変化を大きくできるので、感度を向上できる。なお、本実施形態では、空洞部11の最深部の深さを所定深さdp(図7(b)参照)とするとき、所定深さdpを200μmに設定してあるが、この値は一例であり、特に限定するものではない。
【0044】
また、小薄膜構造部3aaは、シリコン窒化膜32の赤外線入射面側においてサーモパイル30aを形成していない領域に、小薄膜構造部3aaの反りを抑制するとともに赤外線を吸収するn形ポリシリコン層からなる赤外線吸収層39(図5、図7および図13参照)が形成されている。また、隣接する小薄膜構造部3aa,3aa同士を連結する連結片3cには、当該連結片3cを補強するn形ポリシリコン層からなる補強層39b(図10参照)が設けられている。ここで、補強層39bは、赤外線吸収層39と連続一体に形成されている。しかして、熱型赤外線センサ100では、連結片3cが補強層39bにより補強されているので、使用中の外部の温度変化や衝撃に起因して発生する応力による破損を防止でき、また、製造時の破損を低減でき、製造歩留まりの向上を図れる。なお、本実施形態では、図10に示す連結片3cの長さ寸法L1を24μm、幅寸法L2を5μm、補強層39bの幅寸法L3を1μmに設定してあるが、これらの数値は一例であり、特に限定するものではない。ただし、本実施形態のようにベース基板1がシリコン基板1aを用いて形成され、補強層39bがn形ポリシリコン層により形成される場合には、空洞部11の形成時に補強層39bがエッチングされるのを防止するために、補強層39bの幅寸法は、連結片3cの幅寸法よりも小さく設定し、平面視において補強層39bの両側縁が連結片3cの両側縁よりも内側に位置する必要がある。
【0045】
また、本実施形態における熱型赤外線センサ100は、図10および図15(b)に示すように、連結片3cの両側縁と小薄膜構造部3aaの側縁との間にそれぞれ面取り部3d,3dが形成され、十字状の連結片3cの略直交する側縁間にも面取り部3eが形成されている。しかして、熱型赤外線センサ100では、図15(a)に示すように面取り部が形成されていない場合に比べて、連結片3cと小薄膜構造部3aaとの連結部位での応力集中を緩和でき、製造時に発生する残留応力を低減できるとともに製造時の破損を低減でき、製造歩留まりの向上を図れる。また、使用中の外部の温度変化や衝撃に起因して発生する応力による破損を防止できる。なお、図10に示した例では、各面取り部3d,3eをR(アール)が3μmのR面取り部としてあるが、R面取り部に限らず、例えば、C面取り部としてもよい。
【0046】
また、熱型赤外線センサ100は、通電されることにより発生するジュール熱により温接点T1を温める自己診断用のヒータ部(故障診断用の配線)139を備えている。ここにおいて、ヒータ部139は、熱型赤外線検出部3においてシリコン基板1aの空洞部11に重なる領域でサーモパイル30aと重ならないように配置されている。ここで、熱型赤外線検出部3は、全ての小薄膜構造部3aaに跨ってヒータ部139が形成されている。
【0047】
具体的には、熱型赤外線センサ100は、各画素部2に、熱型赤外線検出部3において空洞部11を囲む部位と、一方のブリッジ部3bbと、分割赤外線吸収部33aと、他方のブリッジ部3bbと、熱型赤外線検出部3において空洞部11を囲む部位とに跨るように引き回されたヒータ部139を設けて、全てのヒータ部139を直列接続してある。
【0048】
しかして、本実施形態における熱型赤外線センサ100は、製造途中での検査時や使用時において、m×n個のヒータ部139の直列回路への通電の有無によって、ブリッジ部3bbの折れやヒータ部139の断線などを検出することができる。また、熱型赤外線センサ100では、上述の検査時や使用時において、m×n個のヒータ部139の直列回路へ通電して各感温部30の出力を検出することにより、感温部30の断線の有無や感度のばらつき(感温部30の出力のばらつき)などを検知することが可能となる。ここにおいて、感度のばらつきに関しては、画素部2ごとの感度のばらつきを検知することが可能であり、例えば、薄膜構造部3aの反りや薄膜構造部3aのシリコン基板1aへのスティッキングなどに起因した感度のばらつきを検知することが可能となる。ここで、本実施形態における熱型赤外線センサ100では、平面視において、ヒータ部139を複数の温接点T1の群の付近において折り返され蛇行した形状としてある。したがって、ヒータ部139へ通電することにより発生するジュール熱によって、各温接点T1を効率良く温めることができる。上述のヒータ部139は、n形ポリシリコン層34およびp形ポリシリコン層35と同一平面上に同一厚さで形成されている。
【0049】
上述の赤外線吸収層39、補強層39bおよびヒータ部139は、第1の熱電要素であるn形ポリシリコン層34と同じn形不純物(例えば、リンなど)を同じ不純物濃度(例えば、1018〜1020cm−3)で含んでおり、n形ポリシリコン層34と同時に形成されている。また、p形ポリシリコン層35のp形不純物として例えばボロンを採用すればよく、不純物濃度を例えば1018〜1020cm−3程度の範囲で適宜設定すればよい。本実施形態では、n形ポリシリコン層34およびp形ポリシリコン層35それぞれの不純物濃度が1018〜1020cm−3であり、熱電対の抵抗値を低減でき、S/N比の向上を図れる。なお、赤外線吸収層39、補強層39bおよびヒータ部139は、n形ポリシリコン層34と同じn形不純物を同じ不純物濃度でドーピングしてあるが、これに限らず、例えば、第2の熱電要素であるp形ポリシリコン層35と同じ不純物を同じ不純物濃度でドーピングするようにしてもよい。
【0050】
ところで、本実施形態では、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39、補強層39bおよびヒータ部139の屈折率をn、検知対象(検出対象)の赤外線である第1の赤外線の中心波長をλとするとき、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39、補強層39bおよびヒータ部139それぞれの厚さt1をλ/4nに設定するようにしているので、検知対象の波長(例えば、8〜12μm)の赤外線の吸収効率を高めることができ、高感度化を図れる。例えば、n=3.6、λ=10μmの場合には、t1≒0.69μmとすればよい。
【0051】
また、本実施形態では、n形ポリシリコン層24、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39、補強層39bおよびヒータ部139それぞれの不純物濃度が1018〜1020cm−3であるので、赤外線の吸収率を高くしつつ赤外線の反射を抑制することができて、感温部30の出力のS/N比を高めることができる。また、赤外線吸収層39、補強層39bおよびヒータ部139をn形ポリシリコン層34と同一工程で形成できるから、低コスト化を図れる。
【0052】
ここで、感温部30の第1の接続金属部36と第2の接続金属部37とは、シリコン基板1aの上記一表面側において上述の層間絶縁膜50により絶縁分離されている(図11および図12参照)。すなわち、温接点T1側の第1の接続金属部36は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50a,50aを通して両ポリシリコン層34,35の上記各一端部と電気的に接続され、冷接点T2側の第2の接続金属部37は、層間絶縁膜50に形成されたコンタクトホール50a,50aを通して両ポリシリコン層34,35の上記各他端部と電気的に接続されている。
【0053】
また、MOSトランジスタ4は、上述のように、シリコン基板1aの上記一表面側における各画素部2それぞれにおけるMOSトランジスタ4の形成用領域A2に形成されている。ここで、MOSトランジスタ4は、図7および図14に示すように、シリコン基板1aの上記一表面側にp形ウェル領域41が形成され、p形ウェル領域41内に、n形ドレイン領域43とn形ソース領域44とが離間して形成されている。また、p形ウェル領域41内には、n形ドレイン領域43とn形ソース領域44とを囲むp++形チャネルストッパ領域42が形成されている。また、p形ウェル領域41においてn形ドレイン領域43とn形ソース領域44との間に位置する部位の上には、シリコン酸化膜(熱酸化膜)からなるゲート絶縁膜45を介してn形ポリシリコン層からなるゲート電極46が形成されている。また、n形ドレイン領域43上には金属材料(例えば、Al−Siなど)からなるドレイン電極47が形成され、n形ソース領域44上には金属材料(例えば、Al−Siなど)からなるソース電極48が形成されている。ここで、ゲート電極46、ドレイン電極47およびソース電極48は、上述の層間絶縁膜50により絶縁分離されている。すなわち、ドレイン電極47は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50dを通してn形ドレイン領域43と電気的に接続され、ソース電極48は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50eを通してn形ソース領域44と電気的に接続されている。
【0054】
ところで、熱型赤外線センサ100の各画素部2では、MOSトランジスタ4のソース電極48と感温部30の一端とが電気的に接続され、感温部30の他端が基準バイアス線5に電気的に接続されている。また、各画素部2では、MOSトランジスタ4のドレイン電極47が垂直読み出し線7と電気的に接続され、ゲート電極46が当該ゲート電極46と連続一体に形成されたn形ポリシリコン配線からなる水平信号線6と電気的に接続されている。また、各画素部2では、MOSトランジスタ4のp++形チャネルストッパ領域42上に金属材料(例えば、Al−Siなど)からなるグラウンド用電極49が形成されており、当該グラウンド用電極49が、当該p++形チャネルストッパ領域42をn形ドレイン領域43およびn形ソース領域44よりも低電位にバイアスして素子分離するための共通グラウンド線8と電気的に接続されている。なお、グラウンド用電極49は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50fを通してp++形チャネルストッパ領域42と電気的に接続されている。
【0055】
以上説明した熱型赤外線センサ100によれば、通電されることにより発生するジュール熱によって温接点T1を温める自己診断用のヒータ部139を備えているので、ヒータ部139へ通電してサーモパイル30aの出力を測定することにより、サーモパイル30aの断線などの故障の有無を判断することが可能となって、信頼性の向上を図れ、しかも、ヒータ部139は、熱型赤外線検出部3において支持基板であるシリコン基板1aの空洞部11に重なる領域でサーモパイル30aと重ならないように配置されているので、ヒータ部139によるサーモパイル30aの温接点T1の熱容量の増大を防止でき、感度および応答速度の向上を図れる。
【0056】
ここで、熱型赤外線センサ100は、使用時において自己診断を行わない通常時において、ヒータ部139も外部からの赤外線を吸収するので、複数の温接点T1の温度の均一化を図れ、感度の向上を図れる。なお、熱型赤外線センサ100では、赤外線吸収層39および補強層39bも外部からの赤外線を吸収するので、複数の温接点T1の温度の均一化を図れ、感度の向上を図れる。また、熱型赤外線センサ100の使用時の自己診断は、IC素子102に設けられた自己診断回路(図示せず)により定期的に行われるが、必ずしも定期的に行う必要はない。
【0057】
また、熱型赤外線センサ100は、薄膜構造部3aが、複数の線状のスリット13を設けることによって、空洞部11の内周方向に沿って並設されそれぞれ熱型赤外線検出部3において空洞部11を囲む部位から内方へ延長された複数の小薄膜構造部3aaに分離され、各小薄膜構造部3aaごとにサーモパイル30aの温接点T1が設けられるとともに、各サーモパイル30aごとに出力を取り出す場合に比べて温度変化に対する出力変化が大きくなる接続関係で全てのサーモパイル30aが電気的に接続されているので、応答速度および感度の向上を図れ、しかも、全ての小薄膜構造部3aaに跨ってヒータ部139が形成されているので、熱型赤外線検出部3の全てのサーモパイル30aを一括して自己診断することが可能となる。また、熱型赤外線センサ100では、隣接する小薄膜構造部3aa,3aa同士を連結する連結片3cが形成されていることにより、各小薄膜構造部3aaの反りを低減でき、構造安定性の向上を図れ、感度が安定する。
【0058】
また、熱型赤外線センサ100は、n形ポリシリコン層34とp形ポリシリコン層35と赤外線吸収層39と補強層39bとヒータ部139とが同一の厚さに設定されているので、小薄膜構造部3aaの応力バランスの均一性が向上し、小薄膜構造部3aaの反りを抑制することができ、製品ごとの感度のばらつきや、画素部2ごとの感度のばらつきを低減できる。
【0059】
また、熱型赤外線センサ100は、ヒータ部139が、第1の熱電要素であるn形ポリシリコン層34もしくは第2の熱電要素であるp形ポリシリコン層35と同じ材料により形成されているので、ヒータ部139を第1の熱電要素もしくは第2の熱電要素と同時に形成することが可能となり、製造プロセスの簡略化による低コスト化を図れる。
【0060】
また、熱型赤外線センサ100は、赤外線吸収部33およびヒータ部139を備えた複数の画素部2が、支持基板であるシリコン基板1aの上記一表面側でアレイ状に設けられているので、製造時や使用時の自己診断に際して各画素部2それぞれのヒータ部139に通電することにより、各画素部2それぞれの感温部30の感度のばらつきを把握することが可能となる。
【0061】
また、熱型赤外線センサ100は、各画素部2ごとに感温部30の出力を読み出すためのMOSトランジスタ4を有しているので、出力用パッドVout(図16参照)の数を少なくでき、小型化および低コスト化を図れる。
【0062】
以下、熱型赤外線センサ100の製造方法について図17〜図20を参照しながら簡説明する。
【0063】
まず、シリコン基板1aの上記一表面側に第1の所定膜厚(例えば、0.3μm)の第1のシリコン酸化膜31と第2の所定膜厚(例えば、0.1μm)のシリコン窒化膜32との積層膜からなる絶縁層を形成する絶縁層形成工程を行い、その後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して、当該絶縁層のうち熱型赤外線検出部3の形成用領域A1に対応する部分の一部を残してMOSトランジスタ4の形成用領域A2に対応する部分をエッチング除去する絶縁層パターニング工程を行うことによって、図17(a)に示す構造を得る。ここにおいて、シリコン酸化膜31は、シリコン基板1aを所定温度(例えば、1100℃)で熱酸化することにより形成し、シリコン窒化膜32は、LPCVD法により形成している。
【0064】
上述の絶縁層パターニング工程の後、シリコン基板1aの上記一表面側にp形ウェル領域41を形成するウェル領域形成工程を行い、続いて、シリコン基板1aの上記一表面側におけるp形ウェル領域41内にp++形チャネルストッパ領域42を形成するチャネルストッパ領域形成工程を行うことによって、図17(b)に示す構造を得る。ここで、ウェル領域形成工程では、シリコン基板1aの上記一表面側の露出部位を所定温度で熱酸化することにより、第2のシリコン酸化膜(熱酸化膜)51を選択的に形成し、その後、p形ウェル領域41を形成するためのマスクを利用したフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用してシリコン酸化膜51をパターニングし、続いて、p形不純物(例えば、ボロンなど)のイオン注入を行ってから、ドライブインを行うことにより、p形ウェル領域41を形成する。また、チャネルストッパ領域形成工程では、シリコン基板1aの上記一表面側を所定温度で熱酸化することにより、第3のシリコン酸化膜(熱酸化膜)52を選択的に形成し、その後、p++形チャネルストッパ領域42を形成するためのマスクを利用したフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して第3のシリコン酸化膜52をパターニングし、続いて、p形不純物(例えば、ボロンなど)のイオン注入を行ってから、ドライブインを行うことにより、p++形チャネルストッパ領域42を形成する。なお、第1のシリコン酸化膜31と第2のシリコン酸化膜51と第3のシリコン酸化膜52とで、シリコン基板1aの上記一表面側のシリコン酸化膜1bを構成している。
【0065】
上述のチャネルストッパ領域形成工程の後、p形ウェル領域41におけるn形ドレイン領域43およびn形ソース領域44それぞれの形成予定領域にn形不純物(例えば、リンなど)のイオン注入を行ってからドライブを行うことによりn形ドレイン領域43およびn形ソース領域44を形成するソース・ドレイン形成工程を行う。当該ソース・ドレイン形成工程の後、シリコン基板1aの上記一表面側に熱酸化により所定膜厚(例えば、600Å)のシリコン酸化膜(熱酸化膜)からなるゲート絶縁膜45を形成するゲート絶縁膜形成工程を行う。続いて、シリコン基板1aの上記一表面側の全面にゲート電極46、水平信号線6(図5参照)、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39、補強層39bおよびヒータ部139の基礎となる所定膜厚(例えば、0.69μm)のノンドープポリシリコン層をLPCVD法により形成するポリシリコン層形成工程を行う。その後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して上記ノンドープポリシリコン層のうちゲート電極46、水平信号線6、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39、補強層39bおよびヒータ部139それぞれに対応する部分が残るようにパターニングするポリシリコン層パターニング工程を行う。続いて、上記ノンドープポリシリコン層のうちp形ポリシリコン層35に対応する部分にp形不純物(例えば、ボロンなど)のイオン注入を行ってからドライブを行うことによりp形ポリシリコン層35を形成するp形ポリシリコン層形成工程を行う。その後、上記ノンドープポリシリコン層のうちn形ポリシリコン層34、赤外線吸収層39、補強層39b、ヒータ部139、ゲート電極46および水平信号線6に対応する部分にn形不純物(例えば、リンなど)のイオン注入を行ってからドライブを行うことによりn形ポリシリコン層34、赤外線吸収層39、補強層39b、ヒータ部139、ゲート電極46および水平信号線6を形成するn形ポリシリコン層形成工程を行うことによって、図18(a)に示す構造を得る。なお、p形ポリシリコン層形成工程とn形ポリシリコン層形成工程との順序は逆でもよい。
【0066】
上述のp形ポリシリコン層形成工程およびn形ポリシリコン層形成工程が終了した後、シリコン基板1aの上記一表面側に層間絶縁膜50を形成する層間絶縁膜形成工程を行う。続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して、層間絶縁膜50に上記各コンタクトホール50a,50a,50a,50a,50d,50e,50f(図11、図12および図14参照)を形成するコンタクトホール形成工程を行うことによって、図18(b)に示す構造を得る。ここで、層間絶縁膜形成工程では、シリコン基板1aの上記一表面側に所定膜厚(例えば、0.8μm)のBPSG膜をCVD法により堆積させてから、所定温度(例えば、800℃)でリフローすることにより平坦化された層間絶縁膜50を形成する。
【0067】
上述のコンタクトホール形成工程の後、シリコン基板1aの上記一表面側の全面に第1の接続金属部36、第2の接続金属部37、ドレイン電極47、ソース電極48、基準バイアス線5、垂直読み出し線7、グラウンド線8、共通グラウンド線9および各パッドVout,Vsel,Vref,Vdd,Gndなど(図16参照)の基礎となる所定膜厚(例えば、2μm)の金属膜(例えば、Al−Si膜)をスパッタ法などにより形成する金属膜形成工程を行う。続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して金属膜をパターニングすることで第1の接続金属部36、第2の接続金属部37、ドレイン電極47、ソース電極48、基準バイアス線5、垂直読み出し線7、グラウンド線8、共通グラウンド線9および各パッドVout,Vsel,Vref,Vdd,Gndなどを形成する金属膜パターニング工程を行うことによって、図19(a)に示す構造を得る。なお、金属膜パターニング工程におけるエッチングはRIEにより行っている。また、この金属膜パターニング工程を行うことにより、温接点T1および冷接点T2が形成される。
【0068】
上述の金属膜パターニング工程の後、シリコン基板1aの上記一表面側(つまり、層間絶縁膜50の表面側)に所定膜厚(例えば、0.5μm)のPSG膜と所定膜厚(例えば、0.5μm)のNSG膜との積層膜からなるパッシベーション膜60をCVD法により形成するパッシベーション膜形成工程を行うことによって、図19(b)に示す構造を得る。なお、パッシベーション膜60は、PSG膜とNSG膜との積層膜に限らず、例えば、シリコン窒化膜でもよい。
【0069】
上述のパッシベーション膜形成工程の後、シリコン酸化膜31とシリコン窒化膜32との積層膜からなる熱絶縁層と、当該熱絶縁層上に形成された感温部30と、熱絶縁層の表面側で感温部30を覆うように形成された層間絶縁膜50と、層間絶縁膜50上に形成されたパッシベーション膜60との積層構造部をパターニングすることにより上述の小薄膜構造部3aaを形成する積層構造部パターニング工程を行うことによって、図20(a)に示す構造を得る。なお、積層構造部パターニング工程において、上述の各スリット13,14を形成している。
【0070】
上述の積層構造部パターニング工程の後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して、各パッドVout,Vsel,Vref,Vdd,Gndを露出させるパッド用開口部(図示せず)を形成するパッド用開口部形成工程を行う。続いて、上述の各スリット13,14をエッチャント導入孔としてアルカリ系溶液を導入してシリコン基板1aを異方性エッチングすることによりシリコン基板1aに空洞部11を形成する空洞部形成工程を行うことによって、図20(b)に示す構造の画素部2が2次元アレイ状に配列された熱型赤外線センサ100を得る。ここで、パッド用開口部形成工程におけるエッチングは、RIEにより行っている。また、空洞部形成工程では、アルカリ系溶液として、Siが溶解されたTMAH水溶液(TMAHの11.5%水溶液)を用い、液温を所定温度(例えば、85℃)に設定しているが、アルカリ系溶液はTMAH水溶液に限らず、KOH水溶液やEDP水溶液などを用いてもよい。本実施形態では、アルカリ系溶液としてSiを溶解させたTMAH水溶液を用いるので、シリコン基板1aの上記一表面側にAl膜(AlにSiを添加したAl−Si膜を含む)が露出している場合でもAl膜の浸食を防止することができる。また、KOH水溶液を用いる場合に比べて、SiOに対するエッチング選択比を大きくできる。
【0071】
なお、空洞部形成工程が終了するまでの全工程はウェハレベルで行うので、空洞部形成工程が終了した後、個々の赤外線センサAに分離する分離工程を行えばよい。また、上述の説明から分かるように、MOSトランジスタ4の製造方法に関してみれば、周知の一般的なMOSトランジスタの製造方法を採用しており、熱酸化による熱酸化膜の形成、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術による熱酸化膜のパターニング、不純物のイオン注入、ドライブイン(不純物の拡散)の基本工程を繰り返すことにより、p形ウェル領域41、p++形チャネルストッパ領域42、n形ドレイン領域43とn形ソース領域44を形成している。
【0072】
上述の熱型赤外線センサ100では、シリコン基板1aとして上記一表面が(100)面の単結晶シリコン基板を用いて、エッチング速度の結晶面方位依存性を利用した異方性エッチングにより形成する空洞部11を四角錘状の形状としてあるが、四角錘状の形状に限らず、四角錘台状の形状でもよい。また、シリコン基板1aの上記一表面の面方位は特に限定するものではなく、例えば、シリコン基板1aとして上記一表面が(110)面の単結晶シリコン基板を用いてもよい。
【0073】
ところで、上述の熱型赤外線センサ100は、各画素部2にMOSトランジスタ4を設けてあるが、MOSトランジスタ4は必ずしも設ける必要はない。また、熱型赤外線センサ100は、必ずしも画素部2をアレイ状に備えた赤外線アレイセンサである必要はなく、少なくとも1つのサーモパイル30aを備えたものであればよい。
【0074】
また、上述の温度補償素子101は、熱型赤外線センサ100と同じ構造であればよいから、熱型赤外線センサ100と同じものを用いることができる。言い換えれば、熱型赤外線センサ100を温度補償素子101として流用することができる。したがって、低コスト化を図れるとともに、熱型赤外線センサ100と温度補償素子101との熱特性(熱抵抗、熱コンダクタンス、熱容量など)を揃えることができる。
【0075】
IC素子102は、ASIC(:Application Specific IC)であり、シリコン基板を用いて形成されている。また、IC素子102としてベアチップを用いている。しかして、本実施形態では、IC素子102がベアチップをパッケージングしたものである場合に比べて、パッケージ103の小型化を図れる。
【0076】
IC素子102の回路構成は、熱型赤外線センサ100の種類などに応じて適宜設計すればよく、例えば、熱型赤外線センサ100が上述の赤外線アレイセンサの場合には、熱型赤外線センサ100および温度補償素子101を制御する制御回路、熱型赤外線センサ100の出力信号と温度補償素子101の出力信号との差分を増幅する差動増幅回路、熱型赤外線センサ100の複数の出力用のパッド80に電気的に接続された複数の第1の入力用のパッドの出力電圧を択一的に上記差動増幅回路に入力する第1のマルチプレクサ、温度補償素子101の複数の出力用のパッド80に電気的に接続された複数の第2の入力用のパッドの出力電圧を択一的に上記差動増幅回路に入力する第2のマルチプレクサ、上述の自己診断回路などを備えた回路構成とすれば、赤外線画像を得ることができる。また、熱型赤外線センサ100が上述の赤外線アレイセンサの場合には、上述の自己診断回路を備えていることが好ましく、熱型赤外線センサ100だけでなく、温度補償素子101についても、自己診断回路により自己診断させるようにしてもよい。
【0077】
上述の赤外線センサモジュールは、パッケージ本体4とパッケージ蓋5とキャップ材6とで構成されるパッケージ3の内部の空間(気密空間)を、ドライ窒素雰囲気としてあるが、これに限らず、例えば、真空雰囲気としてもよい。
【0078】
パッケージ本体104は、絶縁材料からなる基体104aに金属材料からなる配線パターン(図示せず)および電磁シールド層(図示せず)が形成されており、電磁シールド層により電磁シールド機能を有している。一方、パッケージ蓋105は、レンズ153が導電性を有するとともに、レンズ153がメタルキャップ152に導電性材料により接合されており、導電性を有している。そして、パッケージ蓋105は、パッケージ本体104の電磁シールド層と電気的に接続されている。しかして、本実施形態では、パッケージ本体104の電磁シールド層とパッケージ蓋105とを同電位とすることができる。その結果、パッケージ103は、熱型赤外線センサ100と温度補償素子101とIC素子102と上記配線パターンと後述のボンディングワイヤ(図示せず)と含んで構成されるセンサ回路(図示せず)への外来の電磁ノイズを防止する電磁シールド機能を有している。
【0079】
パッケージ本体104は、熱型赤外線センサ100および温度補償素子101およびIC素子102が一表面側に実装される平板状のセラミック基板により構成してある。要するに、パッケージ本体104は、基体104aが絶縁材料であるセラミックスにより形成されており、配線パターンのうち基体104aの一表面側に形成された部位に、熱型赤外線センサ100および温度補償素子101およびIC素子102それぞれのパッド(図示せず)が、ボンディングワイヤを介して適宜接続されている。なお、赤外線センサモジュールにおいて、熱型赤外線センサ100および温度補償素子101とIC素子102とは、ボンディングワイヤなどを介して電気的に接続されている。各ボンディングワイヤとしては、Alワイヤに比べて耐腐食性の高いAuワイヤを用いることが好ましい。
【0080】
本実施形態では、パッケージ本体104の絶縁材料としてセラミックスを採用しているので、上記絶縁材料としてエポキシ樹脂などの有機材料を採用する場合に比べて、パッケージ本体104の耐湿性および耐熱性を向上させることができる。ここで、絶縁材料のセラミックスとして、アルミナを採用すれば、窒化アルミニウムや炭化珪素などを採用する場合に比べて、上記絶縁材料の熱伝導率が小さく、IC素子102やパッケージ103の外部からの熱に起因した熱型赤外線センサ100の温度上昇を抑制できる。
【0081】
また、パッケージ本体104は、上述の配線パターンの一部により構成される外部接続電極(図示せず)が、基体104aの他表面と側面とに跨って形成されている。しかして、本実施形態の赤外線センサモジュールでは、回路基板などへの2次実装後において、回路基板などとの接合部の外観検査を容易に行うことができる。
【0082】
また、熱型赤外線センサ100および温度補償素子101は、パッケージ本体104に対して、第1のダイボンド剤(例えば、シリコーン樹脂など)からなる複数の接合部115を介して実装されている。また、IC素子102は、パッケージ本体104に対して、第2のダイボンド剤(例えば、シリコーン樹脂など)からなる接合部125を介して実装されている。各ダイボンド剤としては、低融点ガラスやエポキシ系樹脂やシリコーン系樹脂などの絶縁性接着剤、半田(鉛フリー半田、Au−Sn半田など)や銀ペーストなどの導電性接着剤を用いればよい。また、各ダイボンド剤を用いずに、例えば、常温接合法や、Au−Sn共晶もしくはAu−Si共晶を利用した共晶接合法などにより接合してもよい。
【0083】
上述の熱型赤外線センサ100および温度補償素子101は、複数の接合部115を介してパッケージ本体104に実装してあるので、熱型赤外線センサ100および温度補償素子101それぞれの裏面の全体が接合部115を介してパッケージ本体104に接合される場合に比べて、熱型赤外線センサ100および温度補償素子101それぞれとパッケージ本体104との間の空間116,117が断熱部として機能することと、接合部115の断面積の低減とにより、パッケージ本体104から熱型赤外線センサ100および温度補償素子101へ熱が伝達しにくくなる。
【0084】
この接合部115の数は、特に限定するものではないが、熱型赤外線センサ100および温度補償素子101の外周形状が矩形状(正方形状ないし長方形状)の場合には、例えば、3つが好ましく、この場合には、熱型赤外線センサ100および温度補償素子101それぞれの外周形状に基づいて規定した仮想三角形の3つの頂点に対応する3箇所に設けることにより、パッケージ本体104への実装時などの温度変化に起因したパッケージ本体104の変形が熱型赤外線センサ100および温度補償素子101の傾きとして伝わるから、熱型赤外線センサ100および温度補償素子101が変形するのを抑制することができ、熱型赤外線センサ100および温度補償素子101に生じる応力を低減することが可能となる。なお、本実施形態では、熱型赤外線センサ100の外周形状が例えば正方形状の場合、熱型赤外線センサ100の外周の1辺の両端の2箇所と、当該1辺に平行な辺の1箇所(ここでは、中央部)との3箇所に頂点を有する仮想三角形を規定しているが、仮想三角形の頂点の位置は、熱型赤外線センサ100の外周形状、熱型赤外線センサ100のパッドへのワイヤボンディング時の接合信頼性(言い換えれば、熱型赤外線センサ100のパッドの位置)を考慮して規定することが好ましい。接合部115には、熱型赤外線センサ100とパッケージ本体104との距離を規定するスペーサを混入させてもよく、このようなスペーサを混入させておけば、赤外線センサモジュールの製品間での熱型赤外線センサ100とパッケージ本体104との間の熱絶縁性能のばらつきを低減可能となる。温度補償素子101とパッケージ本体104とを接合する接合部115の数や配置については、熱型赤外線センサ100と同じである。ただし、熱型赤外線センサ100および温度補償素子101の両方とも、裏面全体を、接合部115を介してパッケージ本体104に接合してもよい。
【0085】
また、IC素子102は、外周形状が矩形状(正方形状ないし長方形状)であり、裏面全体が接合部125を介してパッケージ本体104に接合されている。
【0086】
パッケージ蓋105は、パッケージ本体104側の一面が開放された箱状に形成され熱型赤外線センサ100に対応する部位に開口窓152aが形成されたメタルキャップ152と、メタルキャップ152の開口窓152aを閉塞する形でメタルキャップ152に接合されたレンズ153とで構成されており、メタルキャップ152の上記一面がパッケージ本体104により閉塞される形でパッケージ本体104に気密的に接合されている。ここで、パッケージ本体104の上記一表面の周部には、パッケージ本体104の外周形状に沿った枠状の金属パターン147(図1(a)参照)が全周に亘って形成されており、パッケージ蓋105とパッケージ本体104の金属パターン147とは、シーム溶接(抵抗溶接法)により金属接合されており、気密性および電磁シールド効果を高めることができる。なお、パッケージ蓋105のメタルキャップ152は、コバールにより形成されており、Niめっきが施されている。また、パッケージ本体104の金属パターン147は、コバールにより形成され、Niのめっきが施され、さらにAuのめっきが施されている。
【0087】
パッケージ蓋105とパッケージ本体104の金属パターン147との接合方法は、シーム溶接に限らず、他の溶接(例えば、スポット溶接)や、導電性樹脂により接合してもよい。ここで、導電性樹脂として異方導電性接着剤を用いれば、樹脂(バインダー)中に分散された導電粒子の含有量が少なく、接合時に加熱・加圧を行うことでパッケージ蓋105とパッケージ本体104との接合部の厚みを薄くできるので、外部からパッケージ103内へ水分やガス(例えば、水蒸気、酸素など)が侵入するのを抑制できる。また、導電性樹脂として、酸化バリウム、酸化カルシウムなどの乾燥剤を混入させたものを用いてもよい。
【0088】
なお、パッケージ本体104およびパッケージ蓋105の外周形状は矩形状としてあるが、矩形状に限らず、例えば、円形状でもよい。また、パッケージ蓋105のメタルキャップ152は、パッケージ本体104側の端縁から全周に亘って外方に延設された鍔部152bを備えており、鍔部152bが全周に亘ってパッケージ本体104と接合されている。
【0089】
レンズ153は、平凸型の非球面レンズであり、熱型赤外線センサ100の受光効率(上述の第1の赤外線の受光効率)の向上による高感度化を図れるとともに、熱型赤外線センサ100の検知エリアをレンズ153により設定することが可能となる。レンズ153は、所望のレンズ形状に応じて半導体基板(ここでは、シリコン基板)との接触パターンを設計した陽極を半導体基板の一表面側に半導体基板との接触がオーミック接触となるように形成した後に半導体基板の構成元素の酸化物をエッチング除去する溶液からなる電解液中で半導体基板の他表面側を陽極酸化することで除去部位となる多孔質部を形成してから当該多孔質部を除去することにより形成された半導体レンズ(ここでは、シリコンレンズ)により構成されている。しかして、レンズ153は、導電性を有している。なお、この種の陽極酸化技術を応用した半導体レンズの製造方法については、例えば、特許第3897055号公報、特許第3897056号公報などに開示されているので、説明を省略する。
【0090】
本実施形態では、熱型赤外線センサ100の検知エリアを上述の半導体レンズからなるレンズ153により設定することができ、また、レンズ153として、球面レンズよりも短焦点で且つ開口径が大きく収差が小さな半導体レンズを採用することができるから、短焦点化により、パッケージ103の薄型化を図れる。本実施形態の赤外線センサモジュールは、熱型赤外線センサ100の検知対象の赤外線である第1の赤外線として、人体から放射される10μm付近の波長帯(8μm〜13μm)の赤外線を想定しており、レンズ153の材料として、ZnSやGaAsなどに比べて環境負荷が少なく且つ、Geに比べて低コスト化が可能であり、しかも、ZnSに比べて波長分散が小さなSiを採用している。
【0091】
また、レンズ153は、メタルキャップ152における開口部152aの周部に導電性接着剤(例えば、鉛フリー半田、銀ペーストなど)からなる接合部158により固着されている。上述のように、接合部158の材料として導電性接着剤を採用することにより、レンズ153が、接合部158およびメタルキャップ152を介してパッケージ本体104の電磁シールド層に電気的に接続されるので、電磁ノイズに対するシールド性を高めることができ、外来の電磁ノイズに起因したS/N比の低下を防止することができる。
【0092】
上述のレンズ153には、熱型赤外線センサ100での検知対象の赤外線の波長を含む所望の波長域の赤外線を透過し当該波長域以外の赤外線を反射する光学多層膜(多層干渉フィルタ膜)からなるフィルタ部(図示せず)を設けることが好ましい。このようなフィルタ部を設けることにより、所望の波長域以外の不要な波長域の赤外線や可視光をフィルタ部によりカットすることが可能となり、太陽光などによるノイズの発生を抑制することができ、高感度化を図れる。
【0093】
ここにおいて、本実施形態では、上述のようにIC素子102としてベアチップを採用しているので、パッケージ蓋105が可視光をカットする機能を有するように、メタルキャップ152およびレンズ153およびフィルタ部の材料を適宜選択することにより、可視光に起因したIC素子102の起電力による誤動作を防止することができる。ただし、ベアチップからなるIC素子102における少なくともパッケージ蓋105側の表面に外部からの光を遮光する樹脂部(図示せず)を設けるようにすれば、IC素子102がベアチップをパッケージングしたものである場合に比べてパッケージ103の小型化を図りつつ、可視光に起因したIC素子102の起電力による誤動作を防止することができる。
【0094】
また、本実施形態では、パッケージ本体104が平板状に形成されているので、パッケージ本体104への熱型赤外線センサ100およびIC素子102の実装が容易になるとともに、パッケージ本体104の低コスト化が可能となる。また、パッケージ本体104が平板状に形成されているので、パッケージ本体104を、一面が開放された箱状の形状として、多層セラミック基板により構成し、パッケージ本体104の内底面に熱型赤外線センサ100を実装する場合に比べて、パッケージ本体104の上記一表面側に配置される熱型赤外線センサ100とレンズ153との間の距離の精度を高めることができ、より一層の高感度化を図れる。なお、以下では、パッケージ本体104において、熱型赤外線センサ100を実装する領域を第1の領域140、温度補償素子101を実装する領域を第2の領域141、IC素子102を実装する領域を第3の領域142と称する。
【0095】
赤外線遮断構造部106は、パッケージ本体104とは別体であり、パッケージ本体104に接合されている。
【0096】
上述の赤外線遮断構造部106は、図1(a)および図3に示すように、温度補償素子101の前方(パッケージ本体104における第2の領域141とは反対側)に位置する前壁部161と、温度補償素子101の側方に位置する側壁部162と、側壁部162の後端部から側方に延設されパッケージ本体104に接合される取付部163とを備えている。ここで、赤外線遮断構造部106は、平面視矩形状の前壁部161の外周の1辺のみから側壁部162が延設されており、取付部163が、パッケージ本体104における第1の領域140と第1の領域141との間の領域で、パッケージ本体104に接合されている。ここで、赤外線遮断構造部106は、例えば、接着剤(例えば、エポキシ樹脂など)により、パッケージ本体104に接合すればよい。なお、本実施形態では、前壁部161と温度補償素子101との間に、第1の空間K1が形成されるように、側壁部162の高さ寸法を設定してある。
【0097】
ここにおいて、赤外線遮断構造部106の前壁部161の全周から側壁部162が延設され側壁部162の後端部の全周に亘って取付部163が延設されている場合には、赤外線遮断構造部106とパッケージ本体104との間の第1の空間K1が気密空間となるが、本実施形態では、前壁部161の4辺のうちの1辺のみから側壁部162が延設されているので、第1の空間K1と第2の空間K2とを連通させることができる。要するに、赤外線遮断構造部106は、温度補償素子101を全周に亘って囲まないように側壁部162を形成することで、第1の空間K1と第2の空間K2とを連通させる連通部165を設けてある。
【0098】
本実施形態では、赤外線遮断構造部106が、パッケージ本体104とは別体であり、赤外線遮断構造部106の材料として、ステンレス鋼を採用しているが、これに限らず、例えば、Al、Cu、黒色のプラスチックなどを採用してもよい。しかして、赤外線遮断構造部106をパッケージ本体104とは別体としてあることにより、赤外線遮断構造106をパッケージ本体104に一体成形する場合に比べて、赤外線遮断構造部106の材料および形状の自由度が高くなるとともに、パッケージ本体104への温度補償素子101の実装が容易になる。
【0099】
赤外線遮断構造部106は、温度補償素子101との対向面側に、各赤外線を吸収することで各赤外線の散乱を防止する散乱防止膜107が形成されている。なお、本実施形態における赤外線遮断構造部106は、前壁部161および側壁部162それぞれにおいて温度補償素子101に対向する面の略全面に亘って散乱防止膜107を形成してある。
【0100】
上述の散乱防止膜107は、赤外線吸収膜により構成すればよい。ここで、本実施形態では、第1の赤外線の波長として、人体から放射される8μm〜13μmの波長帯の赤外線を想定しており、散乱防止膜107の材料としてSiOを採用しているが、散乱防止膜107の材料は、SiOに限らず、例えば、Si、SiON、セラミック(例えば、Al、AlN、SiCなど)などの非金属(絶縁性材料)や、NiCr、グラファイト、グラファイトライクカーボンなどの反射率の低い金属(導電性材料)や、金属酸化物(例えば、Ti、Mo、Ni、Alなどの金属酸化物)などを採用してもよく、散乱防止膜107として上述の絶縁性材料や金属を採用した場合には、散乱防止膜107の耐熱性が高くて信頼性が高い。なお、散乱防止膜107の材料として金属酸化物を採用する場合には、例えば、金属酸化物膜をスパッタ法やCVD法などにより成膜するようにしてもよいし、Ti、Mo、Ni、Alなどの金属材料からなる金属膜を成膜した後で当該金属膜の少なくとも一部(例えば、当該金属膜の表面側の部分)を酸化することにより金属酸化物膜を形成するようにしてもよい。
【0101】
ここで、上述の図28の赤外線センサモジュールにおいて、熱型赤外線センサ100’、IC素子102’の代わりに、本実施形態における熱型赤外線センサ100、IC素子102を配置し、IC素子102と熱型赤外線センサ100との距離を0.5mm、熱型赤外線センサ100のチップサイズを3mm□、厚みを525μmと、パッケージ本体4の絶縁材料をアルミナ(熱伝導率:29W/m・K)、メタルキャップ152の材料をコバール(熱伝導率:16.7W/m・K)、IC素子102および熱型赤外線センサ100それぞれの裏面全体をパッケージ本体104にダイボンドするダイボンド剤をエポキシ樹脂として、Siの熱伝導率を168W/m・Kとし、物体Obを黒体として、IC素子102の表面の温度を種々変化させた場合について、温度測定対象の物体Obの温度と熱型赤外線センサ100の出力電圧との関係を、有限要素法により、シミュレーションした結果を図21に示す。なお、図21において、y1、y2、y3、y4は、それぞれ、IC素子102の表面の温度を、−20℃、20℃、60℃、100℃とした場合のシミュレーション結果を示したものであり、各2次方程式は、物体の温度をx、出力電圧をyとしたときに得られたものであり、上から順に、y1、y2、y3、y4の曲線に対応している。
【0102】
図21から、IC素子102の温度が変化することにより、熱型赤外線センサ100の出力電圧が変化することが分かる。
【0103】
ここにおいて、図22に示すように、検知対象(温度測定対象)の物体Obから放射される赤外線をIRとして、熱型赤外線センサ100のある第1の空間K1の雰囲気および温度補償素子101のある第2の空間K2の雰囲気を両方ともNガス雰囲気とし、物体Obの温度変化をΔT1〔℃〕、パッケージ3内の雰囲気の温度変化をΔT2〔℃〕、熱型赤外線センサ100における第1の支持基板1aおよび温度補償素子101における第2の支持基板1aの温度変化をΔT3〔℃〕とし、熱型赤外線センサ100および温度補償素子101それぞれについて、赤外線IRに対する感度〔V/℃〕をs11,s12、第2の空間K2および第1の空間K1それぞれの雰囲気の温度変化に対する感度〔V/℃〕をs12,s22、支持基板1a,1aの温度変化に対する感度〔V/℃〕をs13,s23とし、熱型赤外線センサ100および温度補償素子101それぞれの出力信号である出力電圧〔V〕をs1,s2とすれば、出力電圧s1,s2は、
1=s11・ΔT1+s12・ΔT2+s13・ΔT3
2=s21・ΔT1+s22・ΔT2+s23・ΔT3
で表すことができる。したがって、熱型赤外線センサ100の出力信号と温度補償素子101の出力信号との差分電圧〔V〕をs0とすれば、
0=s1−s2
=(s11・ΔT1+s12・ΔT2+s13・ΔT3)−(s21・ΔT1+s22・ΔT2+s23・ΔT3
となる。
【0104】
また、物体Obと温度補償素子101との間に赤外線遮断構造部106を設けることにより、温度補償素子101の赤外線IRに対する感度s21がゼロになると仮定すれば、
=(s11・ΔT1+s12・ΔT2+s13・ΔT3)−(s22・ΔT2+s23・ΔT3
となる。要するに、赤外線遮断構造部106を設けることにより、温度補償素子101は、雰囲気の温度変化および第2の支持基板1aの温度変化のみに感度があり、赤外線IRに対して感度がないとみなすことができる。
【0105】
ここで、熱型赤外線センサ100と温度補償素子101とが同一構造であるから、s12=s22、s13=s23であるとすれば、
0=s11・ΔT1
となる。要するに、周囲温度変化による熱型赤外線センサ100および温度補償素子101の出力電圧のオフセットを相殺することができるとともに、支持基板1a,1aの温度変化による熱型赤外線センサ100および温度補償素子101の出力電圧のオフセットを相殺することができ、熱型赤外線センサ100の赤外線IRに対する感度s11とΔT1との積が出力電圧s0となる。
【0106】
本実施形態の赤外線センサモジュールでは、IC素子102において、熱型赤外線センサ100および温度補償素子101それぞれの画素部2のマトリクスに関して同じ位置の画素部2の出力を同時に読み込むようにしてあり、温度補償素子101の各熱型赤外線検出部3それぞれが、温度補償用のリファレンスの熱型赤外線検出部3を構成している。
【0107】
以上説明した本実施形態の赤外線センサモジュールでは、熱型赤外線センサ100の第1の熱型赤外線検出部3と温度補償素子101の第2の熱型赤外線検出部3とが同一構造であるとともに、熱型赤外線センサの第1の支持基板1aと温度補償素子101の第2の支持基板1aとが同一構造であり、パッケージ3内に、パッケージ3の外部からパッケージ3の内部へ入射した第1の赤外線、IC素子102の発熱に起因してIC素子102から放射された第2の赤外線、およびパッケージ蓋105から放射された第3の赤外線が温度補償素子101へ到達するのを阻止する赤外線遮断構造部106を有し、赤外線遮断構造部106に、赤外線遮断構造部106の内側の第1の空間K1と赤外線遮蔽構造部106の外側の第2の空間K2とを連通させる連通部165が設けられているので、周囲環境の温度変化やIC素子102の発熱による検出精度の低下を抑制でき、例えば、物体Obの温度を測定するような場合に、温度の測定精度の向上を図れる。また、本実施形態の赤外線センサモジュールでは、温度補償素子101・IC素子102間の距離が熱型赤外線センサ100・IC素子102間の距離と等しく、温度補償素子101・パッケージ蓋105間の距離が熱型赤外線センサ100・パッケージ蓋105間の距離と等しくなるように、温度補償素子101、熱型赤外線センサ100、温度補償素子102のレイアウトを設計すれば、検出精度のより一層の向上を図ることが可能となる。
【0108】
また、本実施形態の赤外線センサモジュールでは、赤外線遮断構造部106における温度補償素子101との対向面側に、各赤外線の散乱を防止する散乱防止膜107が形成されているので、各赤外線が温度補償素子101に更に到達しにくくなり、検出精度の向上を図れる。なお、図1(a)中の一点鎖線は、レンズ153から出射した赤外線の散乱による進行経路の一例を示している。
【0109】
ところで、赤外線遮断構造部106の形状は、図1(a)および図3に示した形状に限らず、例えば、図23〜図25に示すような形状でもよい。
【0110】
図23に示した形状の赤外線遮断構造部106は、前壁部161の互いに平行な2辺から側壁部162が延設されており、2つの側壁部162それぞれの後端部から取付部163が延設されているので、図3の構造に比べて、パッケージ本体104に対する赤外線遮断構造部106の占有面積は大きくなるものの、パッケージ本体104に対して、より安定して接合することができ、前壁部161が温度補償素子101の表面に対して傾くのを防止することが可能となる。また、図23の構造では、図3の構造に比べて、温度補償素子101へ到達する赤外線の量を、より低減できる。
【0111】
また、図24に示した形状の赤外線遮断構造部106は、前壁部161の4辺それぞれから側壁部162が延設されており、IC素子102に最も近い側壁部162のみ取付部163を延設し、他の側壁部162の前壁部161からの延長距離を短くすることで連通部165を設けてある点が相違する。また、図24の構造では、延長距離の短い側壁部162についても、後端縁を含む平面が温度補償素子101の表面を含む平面よりもパッケージ本体104に近くなるように側壁部162の延長距離を設定してある。しかして、図3や図23の構造に比べて、温度補償素子101の表面に到達する赤外線の量を低減できる。
【0112】
また、図25に示した形状の赤外線遮断構造部106は、図24の構造において、互いに対向する2つの側壁部162それぞれの後端部から取付部163が延設されているので、図24の構造に比べて、パッケージ本体104に対する赤外線遮断構造部106の占有面積は大きくなるものの、パッケージ本体104に対して、より安定して接合することができ、前壁部161が温度補償素子101の表面に対して傾くのを防止することが可能となる。
【0113】
(実施形態2)
本実施形態の赤外線センサモジュールの基本構成は実施形態1と略同じであり、図26に示すように、パッケージ本体104において、熱型赤外線センサ100を実装する第1の領域140および温度補償素子101を実装する第2の領域141に比べて、IC素子102を実装する第3の領域142の厚みを薄くしてある点などが相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0114】
ところで、パッケージ本体104の第3の領域142は、基体104aの上記一表面に凹部104bを設けることにより、第1の領域140および第2の領域141よりも厚みを薄くしてある。また、パッケージ本体104は、基体104aに金属材料(例えば、Cuなど)からなる電磁シールド層144が埋設されているが、第3の領域142では、電磁シールド層144が露出している。
【0115】
また、パッケージ本体104の第3の領域142では、金属材料(例えば、Cuなど)からなる複数のビア(サーマルビア)145が基体104aの厚み方向に貫設されており、各ビア145が電磁シールド層144と接して熱結合されている。
【0116】
ここで、IC素子102は、第3の領域142において電磁シールド層144に接合部125を介して実装されている。しかして、IC素子102で発生した熱を電磁シールド層144におけるIC素子102の直下の部位およびビア145を通してパッケージ103の外側へ効率良く放熱させることが可能となる。本実施形態では、電磁シールド層144のうち第3の領域142に形成された部位が、IC素子102が実装され熱結合される金属部を構成し、各ビア145が、第1の領域140および第2の領域141を避けて形成されてパッケージ103の外側に一部が露出する放熱部を構成している。要するに、金属部は、第1の領域140および第2の領域141を避けて形成されてパッケージ103の外側に一部が露出する放熱部と熱結合されている。
【0117】
パッケージ本体104は、上述の配線パターンのうち熱型赤外線センサ100および温度補償素子101およびIC素子102それぞれのグランド用のパッド(図示せず)が接続される部位を、電磁シールド層144に電気的に接続しておくことにより、熱型赤外線センサ100および温度補償素子101およびIC素子102などにより構成されるセンサ回路への外来の電磁ノイズの影響を低減でき、外来の電磁ノイズに起因したS/N比の低下を抑制することができる。なお、赤外線センサモジュールを回路基板などに2次実装する場合には、ビア145を回路基板などのグランドパターンと電気的に接続することで、上述のセンサ回路への外来の電磁ノイズの影響を低減でき、外来の電磁ノイズに起因したS/N比の低下を抑制することができる。
【0118】
以上説明した本実施形態の赤外線センサモジュールでは、実施形態1と同様に、熱型赤外線センサ100の第1の熱型赤外線検出部3と温度補償素子101の第2の熱型赤外線検出部3とが同一構造であるとともに、熱型赤外線センサの第1の支持基板1aと温度補償素子101の第2の支持基板1aとが同一構造であり、パッケージ3内に、パッケージ3の外部からパッケージ3の内部へ入射した第1の赤外線、IC素子102の発熱に起因してIC素子102から放射された第2の赤外線、およびパッケージ蓋105から放射された第3の赤外線が温度補償素子101へ到達するのを阻止する赤外線遮断構造部106を有し、赤外線遮断構造部106に、赤外線遮断構造部106の内側の第1の空間K1と赤外線遮蔽構造部106の外側の第2の空間K2とを連通させる連通部165が設けられているので、周囲環境の温度変化やIC素子102の発熱による検出精度の低下を抑制でき、例えば、物体Obの温度を測定するような場合に、温度の測定精度の向上を図れる。
【0119】
また、本実施形態の赤外線センサモジュールでは、パッケージ本体104において、熱型赤外線センサ100を実装する第1の領域140および温度補償素子101を実装する第2の領域141に比べて、IC素子102を実装する第3の領域142の厚みよりも薄くしてある。しかして、IC素子102で発生した熱がパッケージ本体104を通る経路で熱型赤外線センサ100および温度補償素子101に伝熱されにくくなり、IC素子102の発熱が熱型赤外線センサ100および温度補償素子101に与える影響を低減でき、IC素子102の発熱に起因した感度の低下を抑制することが可能となる。
【0120】
また、本実施形態の赤外線センサモジュールでは、パッケージ本体104の第3の領域142に、IC素子102が実装され熱結合される金属部(電磁シールド層44の一部により構成される)を備え、金属部が、第1の領域140および第2の領域141を避けて形成されてパッケージ103の外側に一部が露出する放熱部であるビア145と熱結合されているので、IC素子102で発生した熱が金属部および放熱部を通して効率的に放熱されることとなり、第1の領域140および第2の領域141側への伝熱が抑制されるから、IC素子102の発熱が熱型赤外線センサ100に与える影響を更に低減できる。
【0121】
また、本実施形態の赤外線センサモジュールでは、熱型赤外線センサ100および温度補償素子101それぞれが、複数の接合部115を介してパッケージ本体104に実装されているので、熱型赤外線センサ100および温度補償素子101とパッケージ本体104との間の空間116,117が断熱部として機能することと、接合部15の断面積の低減とにより、パッケージ本体104から熱型赤外線センサ100および温度補償素子101へ熱が伝達しにくくなり、パッケージ103の外部からの熱やIC素子102からの熱が、パッケージ本体104を通して熱型赤外線センサ100および温度補償素子101へ伝達されにくくなる。
【0122】
上述のパッケージ本体104は、電磁シールド板を内蔵したプリント配線板により構成してもよく、第3の領域142で電磁シールド板の一面を露出させ当該電磁シールド板にIC素子102を実装するようにしてもよい。この場合には、当該プリント配線板により構成されるパッケージ本体104の周部とパッケージ蓋105とを、例えば、酸化バリウム、酸化カルシウムなどの乾燥剤を混入させた導電性樹脂や、導電性を有するBステージのエポキシ樹脂などからなる接合部により気密的に接合すればよい。
【0123】
(実施形態3)
本実施形態の赤外線センサモジュールの基本構成は実施形態1と略同じであり、図27に示すように、温度補償素子101が、当該温度補償素子101の第2の熱型赤外線検出部3を第2の支持基板1aよりもパッケージ本体104における実装面(第2の領域141の表面)に近くなるようにパッケージ本体104に実装されている点などが相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0124】
温度補償素子101は、複数のバンプ118を介して実装してあり、温度補償素子101とパッケージ本体104との間の空間117が第1の空間K1と連通し、第1の空間K1が赤外線遮断構造部106の連通部165により第2の空間K2と連通している。
【0125】
また、温度補償素子101におけるシリコン基板(第2の支持基板)1aの上記一表面とは反対の他表面側に、赤外線反射膜107を設けてある。なお、赤外線反射膜107の材料としては、Alを採用しているが、Alに限らず、薄膜形成時に光沢があり凹凸を小さくできる材料であればよい。特に、赤外線の反射率が0.8よりも高いAl、Au、Ag、Rt、Ni、Mo、W、Cr、Cu、Fe、Ti、Ta、黄銅、Nb、Coなどの金属材料や、これらの金属材料を主成分とする材料を採用することが好ましい。また、赤外線反射膜107としては、誘電体膜や、誘電体多層膜を採用してもよい。
【0126】
本実施形態の赤外線センサモジュールでは、実施形態1,2に比べて、温度補償素子101の表面に到達する赤外線の量を低減でき、検出精度のより一層の向上を図ることが可能となる。
【0127】
なお、本実施形態の赤外線センサモジュールにおけるパッケージ本体104を実施形態2と同様の構成としてもよい。
【符号の説明】
【0128】
1a シリコン基板(支持基板)
3 熱型赤外線検出部
11 空洞部
30a サーモパイル
100 熱型赤外線センサ
101 温度補償素子
102 IC素子
103 パッケージ
104 パッケージ本体
105 パッケージ蓋
106 赤外線遮断構造部
107 散乱防止膜
108 赤外線反射膜
165 連通部
K1 第1の空間
K2 第2の空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のサーモパイルを有する第1の熱型赤外線検出部が第1の支持基板の一表面側に形成された熱型赤外線センサと、前記熱型赤外線センサの出力信号を温度補償するためのものであり第2のサーモパイルを有する第2の熱型赤外線検出部が第2の支持基板の一表面側に形成された温度補償素子と、前記熱型赤外線センサの出力信号と前記温度補償素子の出力信号との差分を信号処理するIC素子と、前記熱型赤外線センサおよび前記温度補償素子および前記IC素子が収納されたパッケージとを備え、前記第1の熱型赤外線検出部と前記第2の熱型赤外線検出部とが同一構造であるとともに、前記第1の支持基板と前記第2の支持基板とが同一構造であり、前記パッケージが、前記熱型赤外線センサおよび前記温度補償素子および前記IC素子が実装されたパッケージ本体と、前記熱型赤外線センサでの検知対象の赤外線である第1の赤外線を透過する機能を有し前記パッケージ本体との間に前記熱型赤外線センサおよび前記温度補償素子および前記IC素子を囲む形で前記パッケージ本体に気密的に接合されたパッケージ蓋とで構成され、前記パッケージ内に、前記パッケージの外部から前記パッケージの内部へ入射した前記第1の赤外線、前記IC素子の発熱に起因して前記IC素子から放射された第2の赤外線、および前記パッケージ蓋から放射された第3の赤外線が前記温度補償素子へ到達するのを阻止する赤外線遮断構造部を有し、前記赤外線遮断構造部は、前記赤外線遮断構造部の内側の第1の空間と前記赤外線遮蔽構造部の外側の第2の空間とを連通させる連通部が設けられてなることを特徴とする赤外線センサモジュール。
【請求項2】
前記赤外線遮断構造部は、前記パッケージ本体とは別体であり、前記パッケージ本体に接合されてなることを特徴とする請求項1記載の赤外線センサモジュール。
【請求項3】
前記赤外線遮断構造部は、前記温度補償素子との対向面側に、前記各赤外線の散乱を防止する散乱防止膜が形成されてなることを特徴とする請求項1または請求項2記載の赤外線センサモジュール。
【請求項4】
前記温度補償素子は、前記第2の熱型赤外線検出部を前記第2の支持基板よりも前記パッケージ本体における実装面に近くなるように前記パッケージ本体に実装されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の赤外線センサモジュール。
【請求項5】
前記温度補償素子における前記第2の支持基板の前記一表面とは反対の他表面側に、赤外線反射膜を設けてなることを特徴とする請求項4記載の赤外線センサモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2011−203226(P2011−203226A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73619(P2010−73619)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】