説明

走行車両

【課題】走行クローラを回転させながらの洗浄作業の容易化を図る。
【解決手段】走行車体(1)の下部に備えた左右の走行クローラ(2)を該走行車体(1)に対して昇降駆動可能に装備する走行車両において、左右の走行クローラ(2,2)を乗り上げて載置状態で支持する載置台(9)と、走行クローラ(2)の前側位置と後側位置とにおいて該左右の走行クローラ(2)の左右両外側方に配置され、左右の走行クローラ(2,2)を前記載置台(9)から上方に持ち上げた状態で走行車体(1)を接地支持するリフトスタンド(10)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、走行クローラを備えた走行車両に関し、コンバイン等に利用される。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1には、走行クローラを機体に対して昇降駆動可能に設けたコンバインにおいて、走行クローラを最下降位置に操作した後に、機体の下部にスタンドを挿入し、この状態で走行クローラを上昇操作することにより機体の下部にスタンドを接当させて、走行クローラをスタンドにより持ち上げ支持するようにした構成の機体スタンド支持装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平7−18266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来構成のスタンドは、左右の走行クローラ間に設置するものであるため、走行クローラを回転させながら洗浄する場合などには、機体が左右に揺れて、安定した支持が得られない問題があり、また、スタンド設置時には左右クローラ間の狭い空間内に挿入しなけらばならず、作業が困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の発明は、走行車体(1)の下部に備えた左右の走行クローラ(2)を該走行車体(1)に対して昇降駆動可能に装備する走行車両において、左右の走行クローラ(2,2)を乗り上げて載置状態で支持する載置台(9)と、走行クローラ(2)の前側位置と後側位置とにおいて該左右の走行クローラ(2)の左右両外側方に配置され、左右の走行クローラ(2,2)を前記載置台(9)から上方に持ち上げた状態で走行車体(1)を接地支持するリフトスタンド(10)を備えたことを特徴とする走行車両とする。
【0006】
車両の推進により左右の走行クローラ(2,2)を載置台(9)上に乗り上げる。車高下げ状態から車高上げ状態にして走行車体(1)側に装備したリフトスタンド(10)を起立姿勢にセットする。そして、この車高上げ状態から車体を下げ操作すると、走行クローラ(2,2)が載置台(9)から上方に離間し、リフトスタンド(10)が走行クローラ(2,2)を持ち上げた状態で走行車体(1)の全重量を支持することになる。この状態で、例えば、走行クローラ(2,2)を洗浄したい場合には、載置台(9)を外側に取り出し、走行クローラ(2,2)を回転させながら水を噴射して洗浄することができる。
【0007】
リフトスタンド(10)は、走行クローラ(2,2)の前後端よりも前側と後側に配置しているので、載置台(9)の左右外側方への取り出しが容易であり、また、リフトスタンド(10)は、走行クローラ(2,2)よりも左右両外側方に配置しているので、走行車体(1)の全重量を安定良く支持でき、走行クローラ洗浄時に走行クローラ(2,2)を回転させても、振動による走行車体(1)の左右の揺れを防ぐことができる。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記リフトスタンド(10)を走行車体(1)側に装備し、該リフトスタンド(10)を起立姿勢と収納姿勢とに切替自在な構成としたことを特徴とする請求項1記載の走行車両とする。
【0009】
走行クローラ(2,2)を持ち上げ支持する場合には、リフトスタンド(10)を下方に降ろして起立姿勢にて接地支持させ、リフトスタンド(10)が不用の場合は、上方に持ち上げて収納しておくことができる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、リフトスタンド(10)は、走行クローラ(2,2)よりも前側と後側に配置しているので、載置台(9)の左右外側方への取り出しが容易で、走行クローラ(2,2)の着脱も外側から容易にできる。しかも、リフトスタンド(10)は左右の走行クローラ(2,2)の外側に配置するので、走行車体(1)を安定良く支持することができ、走行クローラ(2,2)を回転させながらの洗浄が容易にできる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、リフトスタンド(10)の使用、不使用時の切り替えが簡単にでき、特に、使用時には、収納位置から下方に降ろしてセットするだけの操作でよく、作業を能率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)(b)(c)(d)は車体リフトアップの操作手順を示す走行車両の側面図
【図2】(イ)(ロ)(ハ)は走行車両の背面図
【図3】走行フレームとリフトスタンドとの関係構成例を示す平面図
【図4】図3とは別実施態様の平面図
【図5】リフトスタンド取り外し状態を示す平面図
【図6】リフトスタンドの側面図
【図7】同上正面図
【図8】ジャッキアップ手段を備えたリフトスタンドの側面図
【図9】同上要部の正面図
【図10】リフトスタンドのスタンド収納状態を示す側面図
【図11】リフトスタンドの側面図
【図12】同上要部の正面図
【図13】コンバインの側面図
【図14】リフトスタンドの別実施例の側面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
走行車体1の下部に左右一対の走行クローラ2,2を備えた走行車両において、走行クローラ2,2は、図1に示すように、揺動リンク3,3、操作アーム4,4、連結ロッド5、昇降シリンダ6などの昇降駆動機構を介して、揺動リンク3,3を上下に揺動操作することにより、車体1に対して昇降駆動可能に構成してあり、左右走行クローラの車体に対する車高(高さ)調節により、車体の地面に対する左右傾斜が調節できるようになっている。
【0014】
走行車体1側には、走行クローラ2,2の位置よりも前側位置と後側位置で、且つ、走行クローラ2,2の左右両外側方に位置してリフトスタンド10を起伏可能に装着支持している。
【0015】
リフトスタンド10は、下端に接地具11を有し、上端にスタンド長手方向と直交するL型のスタンド軸12を設けた構成であり、そして、図3に示す実施例では、走行フレーム7の左右サイドフレームパイプ7L,7Rに直交する中空のフロントフレームパイプ7Fとリヤフレームパイプ7Bとに前記スタンド軸12を挿入して起立姿勢と収納姿勢とに切替固定自在に軸装した構成になっており、これら4本のリフトスタンド10によって機体を4点で持ち上げ支持する構成としている。これにより、各リフトスタンド10にかかる荷重は走行フレーム7のサイドフレーム、フロントフレーム及びリヤフレームによって直接支持する構成であるため、強度の高い安定したスタンド支持構成を得ることができる。
【0016】
リフトスタンド10の起立姿勢では、ロックピン13を、スタンド側ロックプレート14と車体側ロックプレート15とに設けられたロック穴に挿通することによってロックし(図6、図7)、収納姿勢では、ロックピン13を車体側ロックプレー15から抜き外した後、リフトスタンド10を持ち上げてロックピン13を車体側ロックプレート15の前記とは別のロック穴に差し込んで収納状態でロック保持するように構成している。
【0017】
走行車体1をリフトアップする時には、走行クローラ2,2を所定の高さ位置に乗り上げるための載置台9が用意される。載置台9はクローラが乗り上がり易いように台形状に形成されたものである。
【0018】
上記構成により、走行車体1をリフトアップする時には、次のような手順で行うことができる。つまり、まず、車両の推進により、適所に敷設された載置台9の上に走行クローラ2,2を乗り上げる(図1(a))。次に車高下げ状態から車高を上げ状態にして走行車体1側に装備したリフトスタンド10をスタンド起立姿勢にセットする(図1(b)、図2(ロ))。そして、この車高上げ状態から車体下げ側へ操作すると、走行クローラ2,2が載置台9から上方に離間し、リフトスタンド10が走行クローラ持ち上げ状態で走行車体1の重量を支持する(図1(c)、図2(ハ))。そして、載置台9を引抜き用ロープ9a(図1(c))でもって後側外方に引き抜くか、ハンドリング用ハンドル9b(図1(c))でもって左右横外側方に引き出し、走行クローラ2,2を回転させながらこの走行クローラ2,2の洗浄を行うことができる(図1(d))。
【0019】
リフトスタンド10の構成例において、図4に示す実施例では、フロントフレーム7Fの左側、リヤフレーム7Bの左右側は、リフトスタンド10のスタンド軸12を左右横方向から挿入して3点で機体を支持する構成とし、右側前方のリフトスタンド10は、右サイドフレーム7Rにスタンド軸12を前後方向に挿入した構成とし、これと合わせて4点で走行車体1を支持する構成としている。右前のスタンド軸12は前後方向に平行であり、他の3点のスタンド軸12は左右横方向に平行しているので、リフトスタンド作用時、リフトスタンド10がそれぞれの軸芯を回動中心として、前後方向と左右方向に回動するのを、それぞれの回動を規制し合い機体が左右前後に揺れるのを防止することができる。なお、各リフトスタンド10…は、図5に示すように、各々単独でフレームパイプに対して抜き差しできるように構成しているが、前側及び後側の左右のリフトスタンド10を一体的に構成してフレームパイプに対して着脱可能に構成することもできる。
【0020】
また、上記リフトスタンド10は、上下に2分割し、上部スタンド10aに対して下部スタンド10bが上下に伸縮するようスライド移動可能に構成し、床面に合わせた上下調節が行えるようにしている。なお、調節後は係止ピン17によって固定する構成としている。
【0021】
下部スタンド10b下端の接地具11は、アジャスタ18によって上下の微調整が行えるように構成している(図6、図7)。
上部スタンド10aには、図8、図9に示すように、上方にジャッキアップできるジャッキアッププレート19を設け、ジャッキ20の操作によって床面に合わせた上下調節が行えるようにしている。
【0022】
図4に示す左前方、左後方、右後方のリフトスタンド10(LF),10(LB),10(RB)は、フロントフレームパイプ7F、リヤフレームパイプ7Bに挿入したスタンド軸12を中心として機体後方に回動させ、左右のサイドフレーム7L,7Rの外側でこれに近接して平行に収納(図10参照)し、右前方のリフトスタンド10(RF)は、右サイドフレーム7Rに挿入したスタンド軸12を回動中心として機体内側に回動させて収納(図11、図12参照)するように構成している。
【0023】
なお、左前方、左後方のリフトスタンド10(LF),10(LB)は、左側の唐箕カバー(図示省略)の内側に配置して外側に露出しない構成であり、右後方のリフトスタンド10(RB)は、グレンタンク25のタンクカバー26(図13)の内側に配置している。また、右前方のリフトスタンド10(RB)は、運転席27前方の操作ボックス28を装着支持する操作フレーム29(図11、図12、図13)の下方に収納できる配置構成になっており、操作フレームの下方空間部を有効利用した構成である。
【0024】
図14に示す実施例は、リフトスタンド10の下端に接地具11に代わる移動用転輪22を設けて、泥の落ちた洗浄箇所より他の場所へ自由に移動できるように構成している。なお、洗浄時には機体が移動しないように転輪22の転がり防止用ストッパ23を設けた構成としている。
【符号の説明】
【0025】
1 走行車体
2 走行クローラ
9 載置台
10 リフトスタンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(1)の下部に備えた左右の走行クローラ(2)を該走行車体(1)に対して昇降駆動可能に装備する走行車両において、左右の走行クローラ(2,2)を乗り上げて載置状態で支持する載置台(9)と、走行クローラ(2)の前側位置と後側位置とにおいて該左右の走行クローラ(2)の左右両外側方に配置され、左右の走行クローラ(2,2)を前記載置台(9)から上方に持ち上げた状態で走行車体(1)を接地支持するリフトスタンド(10)を備えたことを特徴とする走行車両。
【請求項2】
前記リフトスタンド(10)を走行車体(1)側に装備し、該リフトスタンド(10)を起立姿勢と収納姿勢とに切替自在な構成としたことを特徴とする請求項1記載の走行車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−56991(P2011−56991A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206106(P2009−206106)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】