説明

超音波モータ用の仮止め治具、ケースユニットおよび超音波モータの予圧調整方法

【課題】設置後の予圧調整の必要をなくし格段に作業性を向上できる超音波モータ用の仮止め治具およびケースユニットを提供する。
【解決手段】仮止め治具100は、被駆動体に当接される超音波モータ200に用いられ、駆動子210を一体に保持する内部ケース230に対して、押圧力を与える外部ケース240に着脱可能であり、外部ケース240に固着されたとき、押圧力に対抗して内部ケース230を外部ケース240に仮止め可能である。したがって、仮止めの際に内部ケース230にかかる予圧を確定させておき、超音波モータ200を所定位置に設置し、仮止めを外すことで容易に駆動子210を被駆動体に当接させることができる。その結果、超音波モータ200の設置後に予圧調整を行う必要がなくなり格段に作業性が向上する。また、超音波モータ200の設置前に駆動子210の脱落を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波モータ用の仮止め治具、ケースユニットおよび超音波モータの予圧調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、矩形板状の圧電素子を駆動させる超音波モータが知られており、スライダやステージ等を駆動させる駆動機構に用いられている。そのような超音波モータでは圧電素子がケースに保持された構造を有している。図8は、従来の超音波モータ800を示す斜視図である。図8に示すように、従来の超音波モータ800は、圧電素子810を把持する内ケース830が外ケース840に収容されている。
【0003】
そのような超音波モータについて、L1B2モードで駆動される矩形板状の圧電アクチュエータを保持するアクチュエータケースについても提案がなされている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1記載のアクチュエータケースでは、第1ケース部が圧電アクチュエータを直接に把持しており、第2ケース部は、第1ケース部を嵌挿保持している。そして、円柱形状で第1ケース部の側壁部に取り付けられたコマを具備し、予圧により第1ケース部の側壁部を圧電アクチュエータに押し付け、圧電アクチュエータは側壁部を介して外壁部を押圧している。このときコマの側面が外壁部と接触することで、圧電アクチュエータの厚さ方向でのぶれを抑制している。上記の機構では、圧電素子の被駆動体との当接側とは逆の側からバネにより予圧が掛けられている。
【0004】
また、超音波モータの予圧機構についても開発がなされている(たとえば、特許文献2参照)。特許文献2記載の超音波モータは、ロータと、このロータの外周面に多数個配置するとともに、2個の超音波振動子を直交配置した駆動子と、この駆動子をロータの外周面に押し付ける予圧手段と、2個の超音波振動子4に接続される位相の異なる交流電源とを具備している。そして、製造が容易な小さな超音波振動子を複数個配置して、大きなトルクを発生させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−187756号公報
【特許文献2】特開2000−152671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような予圧機構では、スライダのような被駆動体に圧電素子を当接させた後、バネ調整用のネジを締めたり緩めたりすることで予圧を調整するか、直接の押し付けにより予圧を調整するしかなく、それらの作業は困難かつ煩雑である。特に、あらかじめケースから出ている圧電素子を押し付け、バネを押し縮めながら超音波モータを設置するのは、困難である。また、圧電アクチュエータの取り付け前の搬送時等にケースが外に飛び出すこともあり、取り扱いが不便である。このように圧電アクチュエータの設置には困難が伴う。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、設置後の予圧調整の必要をなくし格段に作業性を向上できる超音波モータ用の仮止め治具、ケースユニットおよび超音波モータの予圧調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記の目的を達成するため、本発明の仮止め治具は、被駆動体に当接される超音波モータに用いられ、駆動子を一体に保持する内部ケースに対して、押圧力を与える外部ケースに着脱可能であり、前記外部ケースに固着されたとき、前記押圧力に対抗して前記内部ケースを前記外部ケースに仮止め可能であることを特徴としている。
【0009】
このように本発明の仮止め治具は、押圧力に対抗して内部ケースを外部ケースに仮止めすることができる。したがって、仮止めの際に内部ケースにかかる予圧を確定させておき、超音波モータを所定位置に設置し、仮止めを外すことで容易に駆動子を被駆動体に当接させることができる。その結果、超音波モータの設置後に予圧調整を行う必要がなくなり格段に作業性が向上する。また、超音波モータの設置前の搬送時等において駆動子の脱落を防止することができる。
【0010】
(2)また、本発明の仮止め治具は、貫通孔を有し、前記外部ケースに着脱可能な本体部と、前記貫通孔に挿通可能な柱状体と、を備え、前記本体部が前記外部ケースに固着され、前記柱状体が前記貫通孔に挿通されることで、前記柱状体が、前記内部ケースに当接し、前記押圧力に対抗して前記内部ケースが前記外部ケースに仮止めされることを特徴としている。
【0011】
このように、本発明の仮止め治具は、外部ケースに固着された本体部において、柱状体が貫通孔に挿通されることで、内部ケースを外部ケースに仮止めすることができる。これにより、柱状体の挿通および抜出しにより容易に内部ケースを外部ケースに仮止めすることができる。
【0012】
(3)また、本発明の仮止め治具は、前記本体部が、前記貫通孔を2箇所以上有し、前記柱状体は、2本以上が同時に用いられることを特徴としている。2箇所の貫通孔に2本の柱状体を挿通することにより、外部ケースからかかる押圧力をバランスよく制限し、内部ケースを仮止めすることができる。その結果、内部ケースの姿勢が崩れず、予圧調整が容易となる。
【0013】
(4)また、本発明のケースユニットは、上記の仮止め治具と、前記内部ケースおよび前記外部ケースと、を備え、前記仮止め治具により前記内部ケースを前記外部ケースに仮止めすることを特徴としている。これにより、外部ケースは仮止め治具を固着させて、仮止め治具による内部ケースの仮止めを可能にする。その結果、外部ケース設置の作業性が向上する。
【0014】
(5)また、本発明のケースユニットは、前記駆動子の被駆動体に当接する摺動チップの近傍を除き、当接面を覆うカバーを更に備えることを特徴としている。このように当接面を覆うカバーにより超音波モータの外観がシンプルとなり、駆動子のケースからの飛び出しも防止することができる。
【0015】
(6)また、本発明の予圧調整方法は、外部ケース内に設置され、前記外部ケースから押圧力を与えられた内部ケースに、駆動子を保持させるステップと、前記内部ケースを前記外部ケースに仮止めする仮止め治具を、前記外部ケースに固着するステップと、前記内部ケースへの前記外部ケースからの押圧力を調整し、前記外部ケースに対して前記内部ケースを仮止めするステップとを含むことを特徴としている。
【0016】
これにより、仮止めの際に内部ケースにかかる予圧を確定させておき、超音波モータを所定位置に設置し、仮止めを外すことで容易に圧電素子を被駆動体に当接させることができる。その結果、超音波モータの設置後に予圧調整を行う必要がなくなり格段に作業性が向上する。また、超音波モータの設置前の搬送時等において駆動子の脱落を防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、設置後の予圧調整の必要をなくし格段に作業性を向上できる。また、外部ケースの設置前の搬送時等において圧電素子の脱落を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】仮止め治具および超音波モータの斜視図である。
【図1B】仮止め治具および超音波モータの斜視図である。
【図2A】仮止めされている超音波モータを示す平面図である。
【図2B】仮止めされている超音波モータを示す正面図である。
【図2C】仮止めされている超音波モータを示す側面図である。
【図3A】カバーを取り外した超音波モータの斜視図である。
【図3B】カバーを取り外した超音波モータおよび仮止め治具を示す斜視図である。
【図4】超音波モータの主面に平行な面による断面図である。
【図5】超音波モータの主面に平行な面による断面図である。
【図6A】駆動子の平面図である。
【図6B】駆動子の平面図である。
【図6C】駆動子の平面図である。
【図7A】駆動子を動作させるための電気的構成を示す図である。
【図7B】駆動子を動作させるための電気的構成を示す図である。
【図8】従来の超音波モータを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。また、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0020】
図1Aおよび図1Bは、仮止め治具100および超音波モータ200の斜視図である。図1Aは、仮止め治具100を超音波モータ200から外している状態、図1Bは、仮止め治具100を超音波モータ200に取り付け、仮止めしている状態を示している。
【0021】
また、図2A〜図2Cは、それぞれ仮止め治具100により仮止めされている超音波モータ200の平面図、正面図および側面図を示している。図2A中の矢印2B、図2B中の矢印2Cは、それぞれの方向から見た図面が図2B、図2Cに対応することを示している。
【0022】
(仮止め治具)
仮止め治具100は、本体部110および柱状体120を備えている。本体部110は、板状に形成されており、長手方向に両端側にそれぞれ一対の切欠き113、着脱用のネジ止め孔115および柱状体挿通用の貫通孔116を有している。切欠き113は、外部ケース240に固着させたときに、カバー250に当たらないよう両端の隅に形成されている。
【0023】
本体部110は、外部ケース240に着脱可能である。着脱用のネジ止め孔115は、本体部110を外部ケース240に固着させる際にネジ止めにより固着するための孔である。なお、着脱手段は、所定位置に固着できるものであれば、ネジ止めに限定されない。本体部110が外部ケース240に対して所定位置に固着されることで、外部ケース240と内部ケース230との相対位置が決まり、仮止め時に予圧を確定することができる。その結果、予圧調整の作業が容易になる。なお、仮止めを外した後に本体部110を外部ケース240から外すため、仮止め機構により超音波モータ200が嵩張ることはない。
【0024】
柱状体挿通用の貫通孔116は、本体部110を外部ケース240に固着させた状態で、柱状体120を挿通させるための孔である。したがって、孔の大きさはほぼ柱状体120の外径程度であり、柱状体120の挿通および抜き出しが容易で、かつ柱状体120の位置がずれない程度にフィットする大きさであることが好ましい。また、柱状体120により内部ケース230を安定的に固定するためには、本体部110は、貫通孔116を2箇所以上有していることが好ましい。そして、2本以上の柱状体120が同時に用いられることで、外部ケース240からの押圧力に対してバランスをとりやすくなる。
【0025】
このようにして、仮止め治具100は外部ケース240に固着されたとき、押圧力に対抗して内部ケース230を外部ケース240に仮止めできる。したがって、仮止めの際に内部ケース230にかかる予圧を確定させておき、超音波モータ200を所定位置に設置し、仮止めを外すことで容易に圧電素子を被駆動体に当接させることができる。その結果、超音波モータ200の設置後に予圧調整を行う必要がなくなり格段に作業性が向上する。また、超音波モータ200の設置前の搬送時等において駆動子210の脱落を防止することができる。
【0026】
柱状体120は、ボルト形状に形成されており、頭部125および柱体部126を有している。柱状体120は、強度等を考慮すると金属製であることが好ましいが、樹脂製であってもよい。柱体部126が外部ケース240の貫通孔116に挿通され、内部ケース230の当接面231に当接することで外部ケース240に対して内部ケース230を固定することができる。このように、仮止め治具100は、外部ケース240に固着された本体部110において、柱状体120が貫通孔116に挿通されることで、内部ケース230を外部ケース240に仮止めすることができる。これにより、柱状体120の挿通および抜出しにより容易に内部ケース230を外部ケース240に仮止めすることができる。
【0027】
柱体部126は、円柱形状であることが好ましいが、角柱であってもよい。また、柱状体120の挿通および抜き出しを容易にするため、リベットのように柱体部126にネジ山が切られていない形状が好ましいが、柱体部126および貫通孔116に互いに係合するネジ山が切られていてもよい。
【0028】
頭部125は、貫通孔116に挿通された柱状体120を止める。柱状体120には頭部125は必須でなく、柱状体120は、頭部125のないピン形状であってもよい。ただし、頭部125があった方が、柱状体120が十分に挿通しているか否かが分かり易く、挿通したときに外部ケース240を損傷し難い。
【0029】
(超音波モータ)
超音波モータ200は、駆動子210、内部ケース230、外部ケース240およびカバー250を有している。駆動子210は、チタン酸ジルコン酸鉛系セラミックス等の材料で構成された矩形の圧電素子であり、その厚さ方向に分極されている。駆動電極212、213および共通電極は、例えば、圧電体に銀ペーストを塗布し、焼成することによって形成される。摺動チップ215には、アルミナや窒化珪素、炭化珪素等の耐摩耗性に優れる材料が好適に用いられ、これらは接着力の強いエポキシ樹脂接着剤等を用いて圧電素子に固定されている。駆動子210は、交流電圧の印加によりL1F1モードで駆動し、主面に平行な面内の方向に楕円運動する。また、駆動子210は、摺動チップ215を有し、この摺動チップ215を介してスライダ等の被駆動体300に当接することで被駆動体300を駆動する。駆動子210の詳細については後述する。
【0030】
内部ケース230は、駆動子210を一体に保持する。内部ケース230は、凹形状に形成されており、所定箇所で駆動子210を挟み固定することで把持している。内部ケース230は駆動子210に直接接触するため、比較的柔らかい材質で形成されていることが好ましく、また駆動子210とともに運動するため、軽い材質で形成されていることが好ましい。
【0031】
また、内部ケース230は、駆動子210の温度上昇および駆動子210からの熱伝導による内部ケース230自体の温度上昇に耐える材料により形成されていることが好ましく、超音波モータ200の振動に対して耐久性のある樹脂材料が好適に用いられる。具体的には、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等のエンジニアリングプラスチックが好適に用いられる。
【0032】
外部ケース240は、板状で一端に開口部を有する中空に形成されており、駆動子210を内部ケース230ごと収容する。外部ケース240には、アルミニウムやステンレス等の金属材料あるいは樹脂材料が好適に用いられる。外部ケース240は、内部にコイルバネ235を有しており、コイルバネ235は内部ケース230を被駆動体300側に押圧している。また、外部ケース240は、ネジ止め孔241を有しており、ネジ止めにより仮止め治具100の本体部110を着脱可能にしている。本体部110が外部ケース240に固着され、仮止めがなされたときには仮止め治具100により内部ケース230への押圧力が制限される。その結果、外部ケース240に対して内部ケース230が固定される。また、外部ケース240は、カバー250の爪を嵌め込むための切れ目245を有している。外部ケース240の内部の構成については後述する。
【0033】
カバー250は、外部ケース240の開口部を覆うことにより、駆動子210の当接面を覆う。カバーにより超音波モータ200の外観がシンプルとなり、素子の飛び出しも防止することができる。ただし、被駆動体300に当接する摺動チップ215の近傍には窓253が設けられており、駆動子210の摺動チップ215の動作が妨げられない。カバー250は、外部ケース240の被駆動体300側に嵌合するように断面コ字に形成されており、外部ケース240の切れ目に嵌め込み可能なように245端部に爪255を有している。カバー250を設けることで、仮止めがされていない場合でも駆動子210の脱落が防止される。
【0034】
図3Aは、カバー250を取り外した超音波モータ200の斜視図である。このように、カバー250の無い超音波モータ200であっても、仮止め治具100を用いて仮止めし予圧調整することができる。図3Aに示すように、内部ケース230は、当接面231において柱状体120と当接する。そして、柱状体120により押圧力に対抗して内部ケース230を外部ケース240に対して固定することができる。図3Bは、カバー250を取り外した超音波モータ200と、これに対して内部ケース230を固定している仮止め治具100とを示す斜視図である。図3Bに示すように、柱状体120が、駆動子210と外部ケース240との隙間において内部ケース230の当接面231に当接している。このようにして、柱状体120が、内部ケース230の押圧力に対抗することで内部ケース230が外部ケース240に仮止めされる。なお、駆動子210は脆く、壊れやすいため、直接、柱状体120に触れないことが望ましい。
【0035】
なお、仮止め治具100、内部ケース230および外部ケース240は、ケースユニットを構成する。このように仮止め治具を伴うケースユニットとして、あるいは超音波モータユニットとして取引可能である。
【0036】
(予圧調整方法および超音波モータの設置方法)
次に、仮止め治具100を用いた予圧調整方法および超音波モータ200の設置方法を説明する。あらかじめ、外部ケース240から被駆動体300の方向に押圧力が与えられている内部ケース230を外部ケース240内に収容しておく。
【0037】
まず、駆動子210を内部ケース230に収容し把持、固定する。次に、仮止め治具100の本体部110を、ネジ止めにより外部ケース240に固着する。そして、内部ケース230への外部ケース240からの予圧を調整しつつ仮止めする。そして、予圧調整した超音波モータ200を被駆動体300に対する所定の位置に設置する。そして、仮止めを外すことで、予圧が解放され、駆動子210の摺動チップ215が被駆動体300に当たる。そして、本体部110を外部ケース240から取り外す。このようにして、予圧調整および超音波モータ200の設置を行う。
【0038】
(内部構造)
次に、外部ケース240の内部構造を説明する。図4および図5は、超音波モータ200の主面に平行な面による断面図である。図4は、駆動子210および内部ケース230の表面が現れる厚さ位置での断面を示している。図5は、駆動子210および内部ケース230も切断される厚さ位置での断面を示している。図4および図5は、仮止め治具100により内部ケース230を仮止めされ、所定箇所に設置された超音波モータ200を示している。
【0039】
超音波モータ200は、スライド自在に配置された被駆動体300に当接され、超音波モータ200の駆動により被駆動体300はスライドされる。駆動子210には圧電素子が用いられる。駆動子210は、一方の主面に設けられた2つの駆動電極212、213と、他方の主面に設けられた共通電極(図示せず)とを有している。駆動電極212、213は、駆動子210の主面を同一形状の長方形で2分割して形成される各領域にそれぞれ独立して設けられている。そして、駆動電極212、213の短辺側に位置する側面の一方(外部ケース240の開口側)には、被駆動体300に当接する摺動チップ215が設けられている。
【0040】
内部ケース230は、駆動子210の側面の一部を把持するための爪部232を有している。爪部232は駆動子210の変形の対称性を考慮し、駆動子210の各側面の中心を把持する位置に設けることが好ましい。なお、「把持」とは、対象物を厚み方向に挟み込んで保持することをいう。但し、挟み込んだ状態において、その接触面を接着剤で接着することを除外するものではない。一対のコイルバネ235は、駆動子210の主面に平行な面内において内部ケース230を被駆動体300への当接方向へ押圧している。一方、一対のコイルバネ233は、駆動子210の主面に平行な面内において上記の当接方向に直交する方向に内部ケース230を押圧している。
【0041】
外部ケース240は、内部ケース230との間に、コマ234(円柱部材)、一対のコイルバネ233および235を備えている。なお、コイルバネは、押圧力を与えるものであれば、その他の弾性体であってもよい。外部ケース240は、一方が開口した中空の形状を有し、その内腔の底面および一方の側面にコイルバネを有している。超音波モータ200の摺動チップ215が露出するように外部ケースの開口面を覆うカバーを設けてもよい。外部ケース240は、たとえばリニアスライド装置を構成するフレーム等に固定し、被駆動体300の位置に応じた一定の位置に設置することができる。
【0042】
コイルバネ233、235は、外部ケース240の本体と内部ケース230との間に配設される。内部ケース230の外側壁および外底壁にはそれぞれ、コイルバネ233および235を配置するための凹部が形成されている。また、外部ケース240の内側壁および内底壁にもコイルバネ233および235を配置するための凹部が形成されている。コイルバネ233および235は、爪部232からの距離が等しい位置に配置されていることが好ましく、これにより、爪部232が駆動子210を安定して把持して、内部ケース230を介して駆動子210を押圧することができる。
【0043】
仮止め治具100を用いれば、摺動チップ215を被駆動体300に押しあてる力を調整する予圧調整が容易である。したがって、コイルバネ235の伸縮を調節するための調節ネジ等は必要ではないが、後で微調整が可能なように外底壁部に設けておいてもよい。
【0044】
コマ234は、その中心軸が駆動子210の主面と直交するように、内部ケース230のコイルバネ233の配設側の反対側に配設される。コマ234には、ステンレス、真鍮、アルミニウム、鋳鉄等の金属材料や、樹脂材料またはセラミックスが好適に用いられる。コマ234は、内部ケース230の側壁部から曲面の一部が露出している。内部ケース230にはコマ234を回転自在に保持することができるように、凹状切り欠きが形成されている。
【0045】
駆動子210は、被駆動体300への当接方向に変形するために、内部ケース230の側壁には2個のコマ234が当接方向に並べて配設されており、これにより駆動子210を安定して保持することができる。また、被駆動体300への当接方向にはコマ234は回転できるために、駆動子210の当接方向への変位は妨げられない。なお、内部ケース230が樹脂製であること等により、内部ケース230が外部ケース240に対して滑る状態であれば、コマ234は必要ない。
【0046】
(駆動子)
次に、駆動子210の駆動について説明する。図6A〜図6Cは、駆動子210の平面図である。駆動子210は、L1F1モードで主面に平行な面内で楕円運動する。図6Bに示すように、駆動子210が第一次縦振動モードで振動する際の伸縮方向は、図6B中、矢印Aの方向と平行である。また、図6Cに示すように、駆動子210が第一次屈曲振動モードで振動する際の方向(剪断方向)は、図6Bに示す矢印Aと平行であるが、図6Cに示すように、駆動子210の両端で方向が互いに逆となる。図6Bに示す第一次縦振動モードと図6Cに示す第一次屈曲振動モードとが合成(縮退)することによって、摺動チップ215は楕円運動をし、駆動力が生ずる。
【0047】
図7Aおよび図7Bは、駆動子210を動作させるための電気的構成を示す図である。図7Aに示すように、駆動子210は、矩形の圧電基板の一方の主面を2分割するように、駆動電極212、213が設けられている。他方の主面は接地されている。2つの駆動電極212、213は、互いに絶縁された状態で個別に設けられる。駆動子210の駆動回路は、2つの交流電圧源401および402によって構成される。交流電圧源401は、電極212にVsinωtの電圧を印加し、交流電圧源402は、電極213にVcosωtの電圧を印加する。
【0048】
このように、駆動子210の電極401および402に対して位相がπ/2ずれた電圧VsinωtおよびVcosωtが印加されると、駆動子210には、図6Aおよび図6Bに示すように、長手方向に伸縮する第一次縦振動モードの振動と、幅方向(剪断方向)で屈曲する第一次屈曲振動モードの振動とが発生する。そして、第一次縦振動モードの共振周波数と、第一次屈曲振動モードの共振周波数とが等しいときに、両振動モードが合成(縮退)され、駆動子210のチップには楕円振動が発生する。このような駆動子210に対しては、弾性体等により予圧をかけておくことが必要となり、そのために予圧調整が必要となる。
【符号の説明】
【0049】
100 仮止め治具
110 本体部
113 切欠き
115 ネジ止め孔
116 貫通孔
120 柱状体
125 頭部
126 柱体部
200 超音波モータ
210 駆動子
212、213 駆動電極
215 摺動チップ
230 内部ケース
231 当接面
232 爪部
233、235 コイルバネ
234 コマ
240 外部ケース
241 ネジ止め孔
245 切れ目
250 カバー
253 窓
255 爪
300 被駆動体
401、402 交流電圧源
800 超音波モータ
810 圧電素子
830 内ケース
840 外ケース



【特許請求の範囲】
【請求項1】
被駆動体に当接される超音波モータに用いられ、
駆動子を一体に保持する内部ケースに対して、押圧力を与える外部ケースに着脱可能であり、
前記外部ケースに固着されたとき、前記押圧力に対抗して前記内部ケースを前記外部ケースに仮止め可能であることを特徴とする超音波モータ用の仮止め治具。
【請求項2】
貫通孔を有し、前記外部ケースに着脱可能な本体部と、
前記貫通孔に挿通可能な柱状体と、を備え、
前記本体部が前記外部ケースに固着され、前記柱状体が前記貫通孔に挿通されることで、前記柱状体が、前記内部ケースに当接し、前記押圧力に対抗して前記内部ケースが前記外部ケースに仮止めされることを特徴とする請求項1記載の超音波モータ用の仮止め治具。
【請求項3】
前記本体部は、前記貫通孔を2箇所以上有し、
前記柱状体は、2本以上が同時に用いられることを特徴とする請求項2記載の超音波モータ用の仮止め治具。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の仮止め治具と、
前記内部ケースおよび前記外部ケースと、を備え、
前記仮止め治具により前記内部ケースを前記外部ケースに仮止めすることを特徴とする超音波モータ用のケースユニット。
【請求項5】
前記駆動子の被駆動体に当接する摺動チップの近傍を除き、当接面を覆うカバーを更に備えることを特徴とする請求項4記載の超音波モータ用のケースユニット。
【請求項6】
外部ケース内に設置され、前記外部ケースから押圧力を与えられた内部ケースに、駆動子を保持させるステップと、
前記内部ケースを前記外部ケースに仮止めする仮止め治具を、前記外部ケースに固着するステップと、
前記内部ケースへの前記外部ケースからの押圧力を調整し、前記外部ケースに対して前記内部ケースを仮止めするステップとを含むことを特徴とする超音波モータの予圧調整方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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