超音波モータ
【課題】リニア型の超音波モータにおいて、振動速度の波形を矩形波に近づけることができ、ひいては摺動部の磨耗を低減することができる、超音波モータを提供する。
【解決手段】超音波モータは、1次モードの縦振動と2次モードの屈曲振動とを縮退させ、両振動の間に位相差を持たせることにより楕円振動を形成する振動子1と、振動子1に固定された駆動子2に押圧接触し、振動子1に楕円振動が形成されたときに振動子1に対して一軸方向に相対移動する可動体3とを含み、振動子1は、縦振動の振動方向の長さとして異なる複数の長さを有するように段差が設けられる。
【解決手段】超音波モータは、1次モードの縦振動と2次モードの屈曲振動とを縮退させ、両振動の間に位相差を持たせることにより楕円振動を形成する振動子1と、振動子1に固定された駆動子2に押圧接触し、振動子1に楕円振動が形成されたときに振動子1に対して一軸方向に相対移動する可動体3とを含み、振動子1は、縦振動の振動方向の長さとして異なる複数の長さを有するように段差が設けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波モータの摺動部の摩耗を低減する方法として各種の方法がある。
例えば非特許文献1には、回転型の超音波モータにおいて、摺動面でのステータの振動速度とスライダの回転速度との速度差を極力無くすことにより摺動面での滑りを減らし、その結果、磨耗が減る、というものが記載されている。
【0003】
超音波モータは、ステータ(又は振動子)に楕円振動を形成し、その楕円振動が形成されたステータにスライダ(又は可動体)を接触させることにより、スライダを移動させる、ということは公知である。図12(a) は、その楕円振動の周速度における、スライダの移動方向成分の速度ベクトルを模式的に示す図である。なお、同図(a) では、その速度ベクトルを、横方向矢印として模式的に示している。同図(b) は、その速度ベクトルの大きさの時間的変化をグラフ化したものを示す図である。同図(b) に示したように、その時間的変化V1は、実線に示したように正弦波となる。一方、スライダの速度の時間的変化V2は、V1のように正弦波状に変化することはなく、点線に示したようにほぼ一定の速度になる。同図(b) において両者を比較すると、実線で示されるV1と点線で示されるV2との交点以外は速度差が生じていることがわかる。これはすなわち、ステータとスライダとの間に、速度差に起因する滑りが発生していることを意味している。滑りが発生すると接触部分の磨耗が増えることは日常の経験からわかっているので、滑りの発生を極力減らすことができれば磨耗を減らすことができると考えられる。そこで、非特許文献1では、滑りを発生し難くして磨耗を減らすための一つの方法として、楕円振動の周速度における、スライダの移動方向成分の速度ベクトルの大きさ(以下、これを「振動速度」という)の時間的変化を正弦波から矩形波にすることが考案されている。同図(c) は、このときの矩形波を示す図である。なお、同図(c) では、矩形波にされた振動速度の時間的変化をV3として示している。
【0004】
矩形波は、フーリエ級数に分解すると次式(1)のように表されることが知られている。
【0005】
【数1】
ここで、v(t)は矩形波、v0は矩形波の振幅である。
【0006】
この式(1)から、振動速度の時間的変化を矩形波にするためには、その振動速度の振動に、(2n+1)倍の周波数で且つ振動速度の振幅が1/(2n+1)倍になるような振動を加算すればよいことがわかる。
【0007】
非特許文献1では、これを実現するために、3次モードの捩り振動が1次モードの捩り振動に対して略3倍の周波数で且つ振動速度の振幅が略1/3倍になるように、ステータを構成している。これにより、摺動部の磨耗を減らす、というものである。
【0008】
一方、本出願人が出願した特許文献1には、縦振動(1次モードの縦振動)と屈曲振動(2次モードの屈曲振動)とを用いて楕円振動を形成するリニア型の超音波モータが提案されている。この超音波モータに対しても、非特許文献1に記載の超音波モータの場合と同様に、移動テーブルの移動方向の振動、即ち1次モードの縦振動に、奇数倍の周波数の高調波を付加させて振動速度の波形を矩形波に近づければ、磨耗を低減する効果が期待できるはずである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−136318号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Takaaki ISHII, Hisanori TAKAHASHI, Kentaro NAKAMURA and Sadayuki UEHA A Low-Wear Driving Method of Ultrasonic Motors Jpn.J.Appl.Phys.Vol.38(1999)pp.3338-3341 Part 1,No.5B,May 1999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載の超音波モータにおいて、縦振動における1次モードと3次モードとの間での共振周波数の比は、FEM(Finite Element Method)による計算及び実測の結果、およそ1:2.7〜1:2.8になっていた。上述のように振動速度の波形を矩形波に近づけるためには、この比を1:3にする必要があることから、この結果では、縦振動の3次モードの共振周波数が若干低くなっていることになる。また、縦振動における1次モードと5次モードとの間での共振周波数の比についても、同様の計算及び実測の結果をみると、1:5よりも若干ずれていた。このように、縦振動における1次モードとn次モード(但しnは3以上の奇数)との間での共振周波数の比はちょうど1:nにはならず若干ずれている。従って、このままだと、振動速度の波形を矩形波に近づけることは困難であり、ひいては摺動部の摩耗低減という効果を得ることも困難となる。
【0012】
本発明は、上記実情に鑑み、リニア型の超音波モータにおいて、振動速度の波形を矩形波に近づけることができ、ひいては摺動部の磨耗を低減することができる、超音波モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様に係る超音波モータは、1次モードの縦振動と2次モードの屈曲振動とを縮退させ、両振動の間に位相差を持たせることにより楕円振動を形成する振動子と、前記振動子に固定された駆動子に押圧接触し、前記振動子に前記楕円振動が形成されたときに前記振動子に対して一軸方向に相対移動する可動体と、を含み、前記振動子は、前記縦振動の振動方向の長さとして異なる複数の長さを有するように、段差が設けられる、ことを特徴とする。
【0014】
本発明の第2の態様に係る超音波モータは、上記第1の態様において、前記段差は、前記振動子における前記縦振動の振動方向の長さの中心を通り且つ前記縦振動の振動方向に垂直な面について面対称に設けられる、ことを特徴とする。
【0015】
本発明の第3の態様に係る超音波モータは、上記第1又は2の態様において、前記異なる複数の長さは、第1の長さと1つ以上の長さとからなり、前記1つ以上の長さの各々は、当該長さに係るn次モード(nは3以上の奇数)の縦振動の共振周波数が、前記第1の長さに係る1次モードの縦振動の共振周波数に対して略n倍になる、という長さである、ことを特徴とする。
【0016】
本発明の第4の態様に係る超音波モータは、上記第3の態様において、前記1つ以上の長さは第2の長さを含み、前記第2の長さに係る3次モードの縦振動の共振周波数が、前記第1の長さに係る1次モードの縦振動の共振周波数に対して略3倍になる、ことを特徴とする。
【0017】
本発明の第5の態様に係る超音波モータは、上記第3又は4の態様において、前記振動子において、前記第1の長さに係る1次モードの縦振動と前記1つ以上の長さの各々に係るn次モードの縦振動との間の共通の節の位置に、電気機械エネルギー変換素子の電極が配置される、ことを特徴とする。
【0018】
本発明の第6の態様に係る超音波モータは、上記第3乃至5の何れか一つの態様において、前記第1の長さに係る1次モードの縦振動と前記1つ以上の長さの各々に係るn次モードの縦振動との間の振動速度の位相差は、前記第1の長さに係る1次モードの縦振動の振動速度をv1sin(ωt)とし、前記1つ以上の長さの各々について、当該長さに係るn次モードの縦振動の振動速度をvsin(nωt+φ)としたときに、前記1つ以上の長さの各々についてφ≒0となる、ことを特徴とする。
【0019】
本発明の第7の態様に係る超音波モータは、上記第3乃至6の何れか一つの態様において、前記第1の長さに係る1次モードの縦振動の振動速度の振幅と前記1つ以上の長さの各々に係るn次モードの縦振動の振動速度の振幅は、前記第1の長さに係る1次モードの縦振動の振動速度をv1sin(ωt)とし、前記1つ以上の長さの各々について、当該長さに係るn次モードの縦振動の振動速度をvsin(nωt+φ)としたときに、前記1つ以上の長さの各々についてv≒v1/nとなる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、リニア型の超音波モータにおいて、振動速度の波形を矩形波に近づけることができるので、摺動部の磨耗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例1に係る超音波モータの構成例を模式的に示す図である。
【図2】(a),(b) は、振動子の積層構造を説明する図である。
【図3】(a),(b) は、振動子に設けられている段差を説明する図である。
【図4】長さL1に係る縦1次モードの共振振動と長さL2に係る縦3次モードの共振振動を示す図である。
【図5】縦モードを発生させたときの節と腹の位置関係を示す図である。
【図6】(a) は振動速度波形の一例を示す図、(b) は振動変位波形の一例を示す図である。
【図7】(a),(b),(c),(d),(e),(f),(g) は、他の形状により構成された段差の変形例を示す図である。
【図8】(a),(b) は、他の形状により構成された振動子の変形例を示す図である。
【図9】本発明の実施例2に係る超音波モータの構成例を模式的に示す図である。
【図10】(a),(b) は、振動子に設けられている段差を説明する図である。
【図11】振動速度波形の一例を示す図である。
【図12】(a) は楕円振動の周速度におけるスライダの移動方向成分の速度ベクトルを模式的に示す図、(b) は速度ベクトルの大きさの時間的変化をグラフ化したものを示す図、(c) は楕円振動の周速度におけるスライダの移動方向成分の速度ベクトルの大きさの時間的変化が正弦波から矩形波にされたものを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明の実施例1に係る超音波モータの構成例を模式的に示す図である。
同図に示したように、本実施例に係る超音波モータは、振動子1、振動子1に接着固定された駆動子2、及び、可動体3を含む、リニア型の超音波モータである。
【0024】
振動子1は、1次モードの縦振動と2次モードの屈曲振動とを縮退させ、両振動の間に位相差を持たせることにより、楕円振動を形成するものである。可動体3は、振動子1に接着固定された駆動子2に押圧接触し、振動子1に楕円振動が形成されたときに振動子1に対して一軸方向(同図の両矢印に示す左右方向)に相対移動するものである。
【0025】
振動子1は、材質をPZT(チタン酸ジルコニウム酸鉛)とする圧電体(電気機械エネルギー変換素子の一例)を含み、積層構造を有する。
図2(a),(b) は、振動子1の積層構造を説明する図である。
【0026】
振動子1の積層構造は、同図(a) に示した3種類の単層素子4、5、6を、同図(b) に示した積層順(単層素子4、6、5、6を繰り返す積層順)に積層して一体焼結することにより得られる。
【0027】
ここで、単層素子4は、圧電体の一表面に5つの電極4a、4b、4c、4d、4eを有する。単層素子5は、圧電体の一表面に5つの電極5a、5b、5c、5d、5eを有する。単層素子6は、圧電体の一表面に1つの電極6aを有する。
【0028】
また、これらの単層素子4、5、6を積層する際には、隣接して積層される単層素子間において、一方の単層素子の電極が設けられている面と、他方の単層素子の電極が設けられていない面とが重ね合わせられるようにして積層される。
【0029】
なお、同図(b) では、説明の便宜のために、7つの単層素子を積層した構造を示しているが、実際には、それよりも多くの単層素子を積層した構造となる。
そして、このような積層構造の振動子1において、電極6aを負極として、電極4a、4b、4c、4d、5a、5b、5c、5dに正電圧を印加したときに、電極4a、4d、5a、5dの各電極に対応する圧電体部分が圧電横効果により面積が広がる方向に歪むように分極されると共に、電極4b、4c、5b、5cの各電極に対応する圧電体部分が圧電横効果により面積が狭まる方向に歪むように分極される、ように分極処理を行う。また、電極6aを負極として、電極4e、5eに正電圧を印加したときに、電極4e、5eに対応する圧電体部分が圧電横効果により面積が広がる方向に歪むように分極される、ように分極処理を行う。
【0030】
その後、同図(b) に示したように電気的な結線を行い、各単層素子の各電極を、屈曲振動用電極、グランド電極、又は縦振動用電極として用いるようにする。
また、振動子1は、縦振動の振動方向の長さとして異なる複数の長さを有するように、段差が設けられている。
【0031】
図3(a),(b) は、その段差を説明する図である。
同図(a) は、図2(b) に示した振動子1を模式的に示す図であり、振動子1の斜視図でもある。なお、以下の説明では、振動子1の左右方向と言ったときには図3(a) に示したX軸方向を指し、振動子1の厚さ方向と言ったときには同図(a) に示したY軸方向を指し、振動子1の高さ方向と言ったときには同図(a) に示したZ軸方向を指すものとする。
【0032】
同図(b) は、振動子1を同図(a) のY軸方向に沿って見たときの図である。
同図(b) に示したように、本実施例では、振動子1における縦振動の振動方向の長さ(振動子1の左右方向の長さ)として、異なる2つの長さL1、L2(L1>L2)を有するように、振動子1の左右側面に段差が設けられている。なお、この段差は、振動子1における縦振動の振動方向の長さの中心を通り且つその縦振動の振動方向に垂直な面について面対称に設けられたものでもある。また、この段差は、左右方向の長さをL1とする直方体の四隅を切り欠いたときに得られるようなものでもある。ここで、長さL1は第1の長さの一例であり、長さL2は第2の長さの一例である。
【0033】
このような構成を有する振動子1において、グランド電極6aと屈曲振動用電極4a、4b、4c、4d、5a、5b、5c、5dとの間に交番電圧を印加すると、振動子1は圧電横効果により2次モードの屈曲振動をする。また、グランド電極6aと縦振動用電極4e、5eとの間に交番電圧を印加すると、振動子1は同様に圧電横効果により縦振動をする。ここで、その縦振動について、より詳しく説明する。
【0034】
なお、以下の説明では、縦振動におけるn次振動モードを単に縦n次モードと言い、縦共振振動における振動モードを単に縦共振モードと言い、縦振動における振動モードを単に縦モードと言い、n次振動モードの縦振動を縦n次モード振動と言う。また、屈曲振動におけるn次振動モードを単に屈曲n次モードと言い、n次振動モードの屈曲振動を屈曲n次モード振動と言う。
【0035】
上述のとおり、振動子1は縦振動の振動方向の長さとして2つの長さL1、L2を有することから、長さL1に係る縦共振モードが存在し、縦1次モード、縦2次モード、縦3次モード等の振動モードが存在する。長さL2についても同様に、長さL2に係る縦共振モードが存在し、縦1次モード、縦2次モード、縦3次モード等の振動モードが存在する。長さL1に係る縦モードと長さL2に係る縦モードとは互いに独立なので、同じ次数の振動モードであっても共振周波数は異なる。そこで、2つの長さL1、L2を適当に選べば、長さL1に係る縦1次モードの共振周波数と長さL2に係る縦3次モードの共振周波数との比を1:3(限りなく1:3に近い略1:3も含む)にすることができる。長さL1に係る縦1次モードの共振振動と長さL2に係る縦3次モードの共振振動を、図4に示す。
【0036】
一般に、圧電素子に交番電圧を印加して振動モードを発生させるときには、振動変位の節の位置を歪ませると振動生成効率が良く振動モードを発生させるが、振動変位の腹の位置を歪ませると振動生成効率が悪く振動モードをほとんど発生させない。縦モードを発生させたときの節と腹の位置関係は、図5に示すように、縦1次モードと縦3次モード等の奇数次の縦モードでは中心位置が節の位置になっており、縦2次モード等の偶数次の縦モードでは中心位置が腹の位置になっている。図2(a),(b) に示した縦振動用電極4e、5eとグランド電極6aとの間に交番電圧を印加して振動子1に縦振動を生成させるとき、ちょうど縦振動用電極4e、5eが縦1次モード、縦3次モード等の奇数次の縦モードの節の位置にあたり、縦2次モード等の偶数次の縦モードの腹の位置にあたる。このことから、奇数次の縦モードのみが生成され、偶数次の縦モードはほとんど生成されない。また、印加する交番電圧の周波数スペクトルに含まれない共振周波数をもつ縦共振モードもほとんど生成されない。
【0037】
なお、上述のとおり、縦振動用電極4e、5eが縦1次モード、縦3次モード等の奇数次の縦モードの節の位置にあたることから、長さL1に係る縦1次モード振動と長さL2に係る縦3次モード振動との間の共通の節の位置に、電気機械エネルギー変換素子の縦振動用電極である電極4e、5eが配置されている、ということになる。
【0038】
このようなことから、本実施例に係る超音波モータでは、長さL1に係る縦1次モード振動の共振周波数と長さL2に係る縦3次モード振動の共振周波数との比が1:3(限りなく1:3に近い略1:3も含む)になるように、振動子1の2つの長さL1、L2が決定されている。これにより、図2(a),(b) に示した縦振動用電極4e、5eとグランド電極6aとの間に、長さL1に係る縦1次モード振動の共振周波数f0とその3倍の共振周波数3f0のスペクトルをもつ交番電圧を印加すると、長さL1に係る縦1次モードの共振振動と長さL2に係る縦3次モードの共振振動とを生成することができる。
【0039】
また、印加する交番電圧のスペクトルの周波数f0と3f0との間の振幅の比を調整すると、長さL1に係る縦1次モードの振動速度の振幅と長さL2に係る縦3次モードの振動速度の振幅との比を3:1(限りなく3:1に近い略3:1も含む)にすることができる。この場合、長さL1に係る縦1次モードの振動速度の振幅と長さL2に係る縦3次モードの振動速度の振幅は、長さL1に係る縦1次モードの振動速度をv1sin(ωt)とし、長さL2に係る縦3次モードの振動速度をv2sin(3ωt+φ)としたときに、v2≒v1/3となる。
【0040】
さらに、印加する交番電圧のスペクトルの周波数f0と3f0との間の位相差を調整すると、長さL1に係る縦1次モードの振動速度と長さL2に係る縦3次モードの振動速度との間の位相差をゼロ(限りなくゼロに近い略ゼロも含む)にすることができる。この場合、長さL1に係る縦1次モード振動と長さL2に係る縦3次モード振動との間の振動速度の位相差は、長さL1に係る縦1次モードの振動速度をv1sin(ωt)とし、長さL2に係る縦3次モードの振動速度をv2sin(3ωt+φ)としたときに、φ≒0となる。
【0041】
また、振動子1において、上述のようにして決定した長さL1、L2以外の、高さ方向の長さや厚み方向の長さ等の形状については、その長さL1、L2を保ったままで、屈曲2次モードの共振周波数が長さL1に係る縦1次モードの共振周波数f0と一致するように、決定されている。
【0042】
このような構成の振動子1において、縦振動用電極4e、5eとグランド電極6aとの間、及び、屈曲振動用電極4a、4b、4c、4d、5a、5b、5c、5dとグランド電極6aとの間に、それぞれ周波数f0の異なる図示しない電圧源を接続して交番電圧を印加し、その2つの電圧源により印加される交番電圧の間に位相差を持たせるように調整すると、縦1次モード振動と屈曲2次モード振動とが合成され、駆動子2が固定された位置の振動変位が楕円になる振動が形成される。そして、このときの駆動子2に接する可動体3が移動する。ここで、更に、縦振動用電極4e、5eに接続されている電圧源の交番電圧に3f0の周波数成分を合成して印加するようにすると、縦3次モード振動が更に形成される。また、このときの周波数f0と3f0との間のスペクトル成分の振幅及び位相差を上述のように適当に調整すると、縦振動の振動速度の波形を矩形波に近づけることができる。すなわち、その周波数f0と3f0との間のスペクトル成分の振幅を、長さL1に係る縦1次モードの振動速度の振幅と長さL2に係る縦3次モードの振動速度の振幅との比が3:1になるように調整すると共に、その周波数f0と3f0との間のスペクトル成分の位相差を、長さL1に係る縦1次モードの振動速度と長さL2に係る縦3次モードの振動速度との間の位相差がゼロになるように調整すると、縦振動の振動速度の波形を矩形波に近づけることができる。このときの振動速度の波形と振動変位の波形との一例を、図6(a),(b) に示す。なお、矩形波に近づけるのは振動速度であり、振動変位の波形は振動速度の波形を積分した形状になるので、同図(a) に示したように振動速度の波形が矩形波に近づくと、同図(b) に示したように振動変位の波形は三角波に近づくことになる。
【0043】
以上、本実施例に係る超音波モータによれば、縦1次モード振動と縦3次モード振動との間での共振周波数の比が1:3になるように構成することできる。これにより、縦1次モード振動と縦3次モード振動とを同時に生成して振動速度の振幅と位相を調整することによって振動速度波形を矩形波に近づけることができる。このように振動速度波形を矩形波に近づけることによって、摺動面(駆動子2と可動体3との接触面)での滑りが減り、その結果、摺動面の磨耗を減らすことができる。
【0044】
なお、本実施例に係る超音波モータは、次のような変形が可能である。
例えば、振動子1に設けられる段差は、図3(a) 等に示した形状に限らず、他の形状により構成することも可能である。図7(a),(b),(c),(d),(e),(f),(g) は、他の形状により構成された段差の変形例を示す図である。但し、何れの例における段差も、振動子における縦振動の振動方向の長さとして異なる2つの長さL1、L2を有するように設けられたものであり、その2つの長さL1、L2は、長さL1に係る縦1次モード振動の共振周波数と長さL2に係る縦3次モード振動の共振周波数との比が1:3(限りなく1:3に近い略1:3も含む)になるように決定されたものである。また、何れの例における段差も、振動子における縦振動の振動方向の長さの中心を通り且つその縦振動の振動方向に垂直な面について面対称に設けられたものである。同図(a) に示した振動子に設けられた段差は、図3(a) 等に示した段差に対して凹凸関係が逆になった段差の例である。図7(b) に示した振動子に設けられた段差は、直方体とする振動子における、高さ方向に平行な角部分を切り欠いたときに得られるような段差の例である。同図(c) に示した振動子に設けられた段差は、同図(b) に示した段差に対して凹凸関係が逆になった段差の例である。同図(d) に示した振動子に設けられた段差は、直方体とする振動子における、高さ方向に平行な角部分と厚み方向に平行な角部分とを切り欠いたときに得られるような段差の例である。同図(e) に示した振動子に設けられた段差は、同図(d) に示した段差に対して凹凸関係が逆になった段差の例である。同図(f) に示した振動子に設けられた段差は、振動子1の左右側面に、高さ方向に平行な段差が複数設けられた例である。同図(g) に示した振動子に設けられた段差は、同図(f) に示した段差に対して凹凸関係が逆になった段差の例である。なお、同図(f),(g) に示した段差は、左右方向の長さをL1とする直方体の単層素子と、左右方向の長さをL2とする直方体の単層素子とを積層することによって得ることもできる。このような他の形状により構成された段差によっても、上述の図3(a) 等に示した段差の場合と同様の効果を得ることができる。
【0045】
また、例えば、振動子1も、図3(a) 等に示した形状に限らず、他の形状により構成することも可能である。図8(a),(b) は、他の形状により構成された振動子1の変形例を示す図である。同図(a) に示した振動子は、円柱体とする振動子において、その左右側面における外周部分を切り欠いたときに得られるような段差が設けられた例である。同図(b) に示した振動子は、同図(a) に示した振動子に対して段差の凹凸関係が逆になった振動子の例である。但し、何れの例における段差も、振動子における縦振動の振動方向の長さとして異なる2つの長さL1、L2を有するように設けられたものであり、その2つの長さL1、L2は、長さL1に係る縦1次モード振動の共振周波数と長さL2に係る縦3次モード振動の共振周波数との比が1:3(限りなく1:3に近い略1:3も含む)になるように決定されたものである。また、何れの例における段差も、振動子における縦振動の振動方向の長さの中心を通り且つその縦振動の振動方向に垂直な面について面対称に設けられたものである。このような他の形状により構成された振動子によっても、上述の図3(a) 等に示した振動子1の場合と同様の効果を得ることができる。
【実施例2】
【0046】
本発明の実施例2に係る超音波モータは、実施例1に係る超音波モータに対して、振動子の形状のみが異なり、その他の構成は同じである。そのため、本実施例の説明では、実施例1に係る超音波モータと同一の構成要素については同一の符号を付している。
【0047】
図9は、本実施例に係る超音波モータの構成例を模式的に示す図である。
同図に示したように、本実施例に係る超音波モータの振動子11は、実施例1に係る超音波モータの振動子1に設けられた段差とは異なる形状の段差を有する。すなわち、実施例1に係る振動子1では縦振動の振動方向の長さとして異なる2つの長さL1、L2を有するように段差(いわゆる一段の段差)が設けられていたのに対し、本実施例に係る振動子11では縦振動の振動方向の長さとして異なる3つの長さを有するように段差(いわゆる二段の段差)が設けられている。
【0048】
図10(a),(b) は、振動子11に設けられている段差を説明する図である。
同図(a) は、振動子11の斜視図である。なお、本実施例においても実施例1と同様に、振動子11の左右方向と言ったときには同図(a) に示したX軸方向を指し、振動子11の厚さ方向と言ったときには同図(a) に示したY軸方向を指し、振動子11の高さ方向と言ったときには同図(a) に示したZ軸方向を指すものとする。
【0049】
同図(b) は、振動子11を同図(a) のY軸方向に沿って見たときの図である。
同図(b) に示したように、本実施例では、振動子11における縦振動の振動方向の長さ(振動子11の左右方向の長さ)として、異なる3つの長さL3、L4、L5(L3>L4>L5)を有するように、振動子11の左右側面に段差が設けられている。なお、この段差は、振動子11における縦振動の振動方向の長さの中心を通り且つその縦振動の振動方向に垂直な面について面対称に設けられたものでもある。また、その3つの長さL3、L4、L5において、長さL3は第1の長さの一例であり、長さL4は第2の長さの一例である。
【0050】
ここで、その3つの長さL3、L4、L5は、長さL3に係る縦1次モード振動の共振周波数と、長さL4に係る縦3次モード振動の共振周波数と、長さL5に係る縦5次モード振動の共振周波数との比が1:3:5(限りなく1:3:5に近い略1:3:5も含む)になるように、決定されたものである。従って、長さL3に係る縦1次モード振動の共振周波数をf0とすると、長さL4に係る縦3次モード振動の共振周波数は3f0、長さL5に係る縦5次モード振動の共振周波数は5f0となる。
【0051】
また、このようにして決定された長さL3、L4、L5以外の、振動子11における高さ方向の長さや厚み方向の長さ等の形状は、その長さL3、L4、L5を保ったままで、屈曲2次モードの共振周波数が長さL3に係る縦1次モードの共振周波数f0と一致するように、決定されたものである。
【0052】
なお、振動子11は、実施例1に係る超音波モータの振動子1に対して形状は異なるが構造は同じである。従って、各電極の位置関係も当然ながら振動子1と同じであり、長さL3に係る縦1次モード振動と、長さL4に係る縦3次モード振動と、長さL5に係る縦5次モード振動との間の共通の節の位置に、電気機械エネルギー変換素子の縦振動用電極である電極4e、5eが配置されている、ということになる。
【0053】
このような構成の振動子11において、縦振動用電極4e、5eとグランド電極6aとの間、及び、屈曲振動用電極4a、4b、4c、4d、5a、5b、5c、5dとグランド電極6aとの間に、それぞれ周波数f0の異なる図示しない電圧源を接続して交番電圧を印加し、その2つの電圧源により印加される交番電圧の間に位相差を持たせるように調整すると、縦1次モード振動と屈曲2次モード振動とが合成され、駆動子2が固定された位置の振動変位が楕円になる振動が形成される。そして、このときの駆動子2に接する可動体3が移動する。ここで、更に、縦振動用電極4e、5eに接続されている電圧源の交番電圧に3f0と5f0の周波数成分を合成して印加するようにすると、縦3次モード振動と縦5次モード振動が更に形成される。このときの周波数f0と3f0と5f0との間のスペクトル成分の振幅を、長さL3に係る縦1次モードの振動速度の振幅と長さL4に係る縦3次モードの振動速度の振幅と長さL5に係る縦5次モードの振動速度の振幅との比が5:3:1(限りなく5:3:1に近い略5:3:1も含む)になるように調整すると共に、周波数f0と3f0と5f0との間のスペクトル成分の位相差を、長さL3に係る縦1次モードの振動速度と長さL4に係る縦3次モードの振動速度と長さL5に係る縦5次モードの振動速度との間の位相差がゼロ(限りなくゼロに近い略ゼロも含む)になるように調整すると、図11に示すように、縦振動の振動速度の波形を、より矩形波に近づけることができる。
【0054】
なお、この場合、長さL3に係る縦1次モードの振動速度の振幅と、長さL4に係る縦3次モードの振動速度の振幅と、長さL5に係る縦3次モードの振動速度の振幅は、長さL3に係る縦1次モードの振動速度をv3sin(ωt)とし、長さL4に係る縦3次モードの振動速度をv4sin(3ωt+φ4)とし、長さL5に係る縦5次モードの振動速度をv5sin(5ωt+φ5)としたときに、v4≒v3/3、v5≒v3/5となる。
【0055】
また、長さL3に係る縦1次モード振動と、長さL4に係る縦3次モード振動と、長さL5に係る縦5次モード振動との間の振動速度の位相差は、長さL3に係る縦1次モードの振動速度をv3sin(ωt)とし、長さL4に係る縦3次モードの振動速度をv4sin(3ωt+φ4)とし、長さL5に係る縦5次モードの振動速度をv5sin(5ωt+φ5)としたときに、φ4≒0、φ5≒0となる。
【0056】
以上、本実施例に係る超音波モータによれば、縦1次モード振動と縦3次モード振動と縦5次モード振動との間での共振周波数の比が1:3:5になるように構成することできる。これにより、縦1次モード振動と縦3次モード振動と縦5次モード振動とを同時に生成して振動速度の振幅と位相を調整することによって、振動速度波形を、より矩形波に近づけることができる。このように、振動速度波形を、より矩形波に近づけることによって、摺動面(駆動子2と可動体3との接触面)での滑りが、より減少し、その結果、摺動面の磨耗を、より減らすことができる。
【0057】
なお、本実施例に係る超音波モータは、次のような変形が可能である。
例えば、振動子11に設けられる段差は、図10(a) 等に示した形状に限らず、他の形状により構成することも可能である。例えば、図示はしないが、図10(a) 等に示した段差に対して凹凸関係が逆になった段差とすることも可能である。但し、この場合も、その段差は、振動子における縦振動の振動方向の長さとして異なる3つの長さL3、L4、L5を有するように設けられたものであり、その3つの長さL3、L4、L5は、長さL3に係る縦1次モード振動の共振周波数と長さL4に係る縦3次モード振動の共振周波数と長さL5に係る縦5次モード振動の共振周波数との比が1:3:5(限りなく1:3:5に近い略1:3:5も含む)になるように決定されたものであるとする。また、その段差は、振動子における縦振動の振動方向の長さの中心を通り且つその縦振動の振動方向に垂直な面について面対称に設けられたものであるとする。このような他の形状により構成された段差によっても、上述の図10(a) 等に示した段差の場合と同様の効果を得ることができる。
【0058】
また、例えば、振動子11も、図10(a) 等に示した形状に限らず、他の形状により構成することも可能である。例えば、図示はしないが、円柱体とする振動子において、その左右側面の外周部分を二段階に切り欠いたときに得られるような段差が設けられた振動子とすることも可能である。但し、この場合の段差も、振動子における縦振動の振動方向の長さとして異なる3つの長さL3、L4、L5を有するように設けられたものであり、その3つの長さL3、L4、L5は、長さL3に係る縦1次モード振動の共振周波数と長さL4に係る縦3次モード振動の共振周波数と長さL5に係る縦5次モード振動の共振周波数との比が1:3:5(限りなく1:3:5に近い略1:3:5も含む)になるように決定されたものであるとする。また、その段差は、振動子における縦振動の振動方向の長さの中心を通り且つその縦振動の振動方向に垂直な面について面対称に設けられたものであるとする。このような他の形状により構成された振動子によっても、上述の図10(a) 等に示した振動子11の場合と同様の効果を得ることができる。
【0059】
以上、実施例1及び2に係る超音波モータについて説明したが、振動子に設けられる段差は、実施例1及び2で説明したような段差、すなわち振動子における縦振動の振動方向の長さとして2つ又は3つの長さを有するように設けられた段差に限らず、その長さとして4つ以上の長さを有するように設けられた段差とすることも可能である。但し、この場合、その4つ以上の長さは第1の長さと3つ以上の長さとからなり、その3つ以上の長さの各々は、当該長さに係るn次モード(nは3以上の奇数)の縦振動の共振周波数が、第1の長さに係る1次モードの縦振動の共振周波数に対して略n倍になる、という長さとする。ここで、その3つ以上の長さは第2の長さを含み、その第2の長さに係る3次モードの縦振動の共振周波数が、第1の長さに係る1次モードの縦振動の共振周波数に対して略3倍になる、とすることもできる。また、段差は、振動子における縦振動の振動方向の長さの中心を通り且つ縦振動の振動方向に垂直な面について面対称に設けられるものとする。さらに、振動子において、第1の長さに係る1次モードの縦振動と3つ以上の長さの各々に係るn次モード(nは3以上の奇数)の縦振動との間の共通の節の位置に、電気機械エネルギー変換素子の電極が配置されるものとする。また、第1の長さに係る1次モードの縦振動と3つ以上の長さの各々に係るn次モード(nは3以上の奇数)の縦振動との間の振動速度の位相差は、第1の長さに係る1次モードの縦振動の振動速度をv1sin(ωt)とし、3つ以上の長さの各々について、当該長さに係るn次モードの縦振動の振動速度をvsin(nωt+φ)としたときに、3つ以上の長さの各々についてφ≒0となる、とする。さらに、第1の長さに係る1次モードの縦振動の振動速度の振幅と3つ以上の長さの各々に係るn次モード(nは3以上の奇数)の縦振動の振動速度の振幅は、第1の長さに係る1次モードの縦振動の振動速度をv1sin(ωt)とし、3つ以上の長さの各々について、当該長さに係るn次モードの縦振動の振動速度をvsin(nωt+φ)としたときに、3つ以上の長さの各々についてv≒v1/nとなる、とする。このような構成によっても、上述の実施例1及び2に係る超音波モータの場合と同様の効果を得ることができる。
【0060】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は、上述した各実施例に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良・変更が可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 振動子
2 駆動子
3 可動体
4 単層素子
4a、4b、4c、4d、4e 電極
5 単層素子
5a、5b、5c、5d、5e 電極
6 単層素子
6a 電極
11 振動子
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波モータの摺動部の摩耗を低減する方法として各種の方法がある。
例えば非特許文献1には、回転型の超音波モータにおいて、摺動面でのステータの振動速度とスライダの回転速度との速度差を極力無くすことにより摺動面での滑りを減らし、その結果、磨耗が減る、というものが記載されている。
【0003】
超音波モータは、ステータ(又は振動子)に楕円振動を形成し、その楕円振動が形成されたステータにスライダ(又は可動体)を接触させることにより、スライダを移動させる、ということは公知である。図12(a) は、その楕円振動の周速度における、スライダの移動方向成分の速度ベクトルを模式的に示す図である。なお、同図(a) では、その速度ベクトルを、横方向矢印として模式的に示している。同図(b) は、その速度ベクトルの大きさの時間的変化をグラフ化したものを示す図である。同図(b) に示したように、その時間的変化V1は、実線に示したように正弦波となる。一方、スライダの速度の時間的変化V2は、V1のように正弦波状に変化することはなく、点線に示したようにほぼ一定の速度になる。同図(b) において両者を比較すると、実線で示されるV1と点線で示されるV2との交点以外は速度差が生じていることがわかる。これはすなわち、ステータとスライダとの間に、速度差に起因する滑りが発生していることを意味している。滑りが発生すると接触部分の磨耗が増えることは日常の経験からわかっているので、滑りの発生を極力減らすことができれば磨耗を減らすことができると考えられる。そこで、非特許文献1では、滑りを発生し難くして磨耗を減らすための一つの方法として、楕円振動の周速度における、スライダの移動方向成分の速度ベクトルの大きさ(以下、これを「振動速度」という)の時間的変化を正弦波から矩形波にすることが考案されている。同図(c) は、このときの矩形波を示す図である。なお、同図(c) では、矩形波にされた振動速度の時間的変化をV3として示している。
【0004】
矩形波は、フーリエ級数に分解すると次式(1)のように表されることが知られている。
【0005】
【数1】
ここで、v(t)は矩形波、v0は矩形波の振幅である。
【0006】
この式(1)から、振動速度の時間的変化を矩形波にするためには、その振動速度の振動に、(2n+1)倍の周波数で且つ振動速度の振幅が1/(2n+1)倍になるような振動を加算すればよいことがわかる。
【0007】
非特許文献1では、これを実現するために、3次モードの捩り振動が1次モードの捩り振動に対して略3倍の周波数で且つ振動速度の振幅が略1/3倍になるように、ステータを構成している。これにより、摺動部の磨耗を減らす、というものである。
【0008】
一方、本出願人が出願した特許文献1には、縦振動(1次モードの縦振動)と屈曲振動(2次モードの屈曲振動)とを用いて楕円振動を形成するリニア型の超音波モータが提案されている。この超音波モータに対しても、非特許文献1に記載の超音波モータの場合と同様に、移動テーブルの移動方向の振動、即ち1次モードの縦振動に、奇数倍の周波数の高調波を付加させて振動速度の波形を矩形波に近づければ、磨耗を低減する効果が期待できるはずである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−136318号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Takaaki ISHII, Hisanori TAKAHASHI, Kentaro NAKAMURA and Sadayuki UEHA A Low-Wear Driving Method of Ultrasonic Motors Jpn.J.Appl.Phys.Vol.38(1999)pp.3338-3341 Part 1,No.5B,May 1999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載の超音波モータにおいて、縦振動における1次モードと3次モードとの間での共振周波数の比は、FEM(Finite Element Method)による計算及び実測の結果、およそ1:2.7〜1:2.8になっていた。上述のように振動速度の波形を矩形波に近づけるためには、この比を1:3にする必要があることから、この結果では、縦振動の3次モードの共振周波数が若干低くなっていることになる。また、縦振動における1次モードと5次モードとの間での共振周波数の比についても、同様の計算及び実測の結果をみると、1:5よりも若干ずれていた。このように、縦振動における1次モードとn次モード(但しnは3以上の奇数)との間での共振周波数の比はちょうど1:nにはならず若干ずれている。従って、このままだと、振動速度の波形を矩形波に近づけることは困難であり、ひいては摺動部の摩耗低減という効果を得ることも困難となる。
【0012】
本発明は、上記実情に鑑み、リニア型の超音波モータにおいて、振動速度の波形を矩形波に近づけることができ、ひいては摺動部の磨耗を低減することができる、超音波モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様に係る超音波モータは、1次モードの縦振動と2次モードの屈曲振動とを縮退させ、両振動の間に位相差を持たせることにより楕円振動を形成する振動子と、前記振動子に固定された駆動子に押圧接触し、前記振動子に前記楕円振動が形成されたときに前記振動子に対して一軸方向に相対移動する可動体と、を含み、前記振動子は、前記縦振動の振動方向の長さとして異なる複数の長さを有するように、段差が設けられる、ことを特徴とする。
【0014】
本発明の第2の態様に係る超音波モータは、上記第1の態様において、前記段差は、前記振動子における前記縦振動の振動方向の長さの中心を通り且つ前記縦振動の振動方向に垂直な面について面対称に設けられる、ことを特徴とする。
【0015】
本発明の第3の態様に係る超音波モータは、上記第1又は2の態様において、前記異なる複数の長さは、第1の長さと1つ以上の長さとからなり、前記1つ以上の長さの各々は、当該長さに係るn次モード(nは3以上の奇数)の縦振動の共振周波数が、前記第1の長さに係る1次モードの縦振動の共振周波数に対して略n倍になる、という長さである、ことを特徴とする。
【0016】
本発明の第4の態様に係る超音波モータは、上記第3の態様において、前記1つ以上の長さは第2の長さを含み、前記第2の長さに係る3次モードの縦振動の共振周波数が、前記第1の長さに係る1次モードの縦振動の共振周波数に対して略3倍になる、ことを特徴とする。
【0017】
本発明の第5の態様に係る超音波モータは、上記第3又は4の態様において、前記振動子において、前記第1の長さに係る1次モードの縦振動と前記1つ以上の長さの各々に係るn次モードの縦振動との間の共通の節の位置に、電気機械エネルギー変換素子の電極が配置される、ことを特徴とする。
【0018】
本発明の第6の態様に係る超音波モータは、上記第3乃至5の何れか一つの態様において、前記第1の長さに係る1次モードの縦振動と前記1つ以上の長さの各々に係るn次モードの縦振動との間の振動速度の位相差は、前記第1の長さに係る1次モードの縦振動の振動速度をv1sin(ωt)とし、前記1つ以上の長さの各々について、当該長さに係るn次モードの縦振動の振動速度をvsin(nωt+φ)としたときに、前記1つ以上の長さの各々についてφ≒0となる、ことを特徴とする。
【0019】
本発明の第7の態様に係る超音波モータは、上記第3乃至6の何れか一つの態様において、前記第1の長さに係る1次モードの縦振動の振動速度の振幅と前記1つ以上の長さの各々に係るn次モードの縦振動の振動速度の振幅は、前記第1の長さに係る1次モードの縦振動の振動速度をv1sin(ωt)とし、前記1つ以上の長さの各々について、当該長さに係るn次モードの縦振動の振動速度をvsin(nωt+φ)としたときに、前記1つ以上の長さの各々についてv≒v1/nとなる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、リニア型の超音波モータにおいて、振動速度の波形を矩形波に近づけることができるので、摺動部の磨耗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例1に係る超音波モータの構成例を模式的に示す図である。
【図2】(a),(b) は、振動子の積層構造を説明する図である。
【図3】(a),(b) は、振動子に設けられている段差を説明する図である。
【図4】長さL1に係る縦1次モードの共振振動と長さL2に係る縦3次モードの共振振動を示す図である。
【図5】縦モードを発生させたときの節と腹の位置関係を示す図である。
【図6】(a) は振動速度波形の一例を示す図、(b) は振動変位波形の一例を示す図である。
【図7】(a),(b),(c),(d),(e),(f),(g) は、他の形状により構成された段差の変形例を示す図である。
【図8】(a),(b) は、他の形状により構成された振動子の変形例を示す図である。
【図9】本発明の実施例2に係る超音波モータの構成例を模式的に示す図である。
【図10】(a),(b) は、振動子に設けられている段差を説明する図である。
【図11】振動速度波形の一例を示す図である。
【図12】(a) は楕円振動の周速度におけるスライダの移動方向成分の速度ベクトルを模式的に示す図、(b) は速度ベクトルの大きさの時間的変化をグラフ化したものを示す図、(c) は楕円振動の周速度におけるスライダの移動方向成分の速度ベクトルの大きさの時間的変化が正弦波から矩形波にされたものを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明の実施例1に係る超音波モータの構成例を模式的に示す図である。
同図に示したように、本実施例に係る超音波モータは、振動子1、振動子1に接着固定された駆動子2、及び、可動体3を含む、リニア型の超音波モータである。
【0024】
振動子1は、1次モードの縦振動と2次モードの屈曲振動とを縮退させ、両振動の間に位相差を持たせることにより、楕円振動を形成するものである。可動体3は、振動子1に接着固定された駆動子2に押圧接触し、振動子1に楕円振動が形成されたときに振動子1に対して一軸方向(同図の両矢印に示す左右方向)に相対移動するものである。
【0025】
振動子1は、材質をPZT(チタン酸ジルコニウム酸鉛)とする圧電体(電気機械エネルギー変換素子の一例)を含み、積層構造を有する。
図2(a),(b) は、振動子1の積層構造を説明する図である。
【0026】
振動子1の積層構造は、同図(a) に示した3種類の単層素子4、5、6を、同図(b) に示した積層順(単層素子4、6、5、6を繰り返す積層順)に積層して一体焼結することにより得られる。
【0027】
ここで、単層素子4は、圧電体の一表面に5つの電極4a、4b、4c、4d、4eを有する。単層素子5は、圧電体の一表面に5つの電極5a、5b、5c、5d、5eを有する。単層素子6は、圧電体の一表面に1つの電極6aを有する。
【0028】
また、これらの単層素子4、5、6を積層する際には、隣接して積層される単層素子間において、一方の単層素子の電極が設けられている面と、他方の単層素子の電極が設けられていない面とが重ね合わせられるようにして積層される。
【0029】
なお、同図(b) では、説明の便宜のために、7つの単層素子を積層した構造を示しているが、実際には、それよりも多くの単層素子を積層した構造となる。
そして、このような積層構造の振動子1において、電極6aを負極として、電極4a、4b、4c、4d、5a、5b、5c、5dに正電圧を印加したときに、電極4a、4d、5a、5dの各電極に対応する圧電体部分が圧電横効果により面積が広がる方向に歪むように分極されると共に、電極4b、4c、5b、5cの各電極に対応する圧電体部分が圧電横効果により面積が狭まる方向に歪むように分極される、ように分極処理を行う。また、電極6aを負極として、電極4e、5eに正電圧を印加したときに、電極4e、5eに対応する圧電体部分が圧電横効果により面積が広がる方向に歪むように分極される、ように分極処理を行う。
【0030】
その後、同図(b) に示したように電気的な結線を行い、各単層素子の各電極を、屈曲振動用電極、グランド電極、又は縦振動用電極として用いるようにする。
また、振動子1は、縦振動の振動方向の長さとして異なる複数の長さを有するように、段差が設けられている。
【0031】
図3(a),(b) は、その段差を説明する図である。
同図(a) は、図2(b) に示した振動子1を模式的に示す図であり、振動子1の斜視図でもある。なお、以下の説明では、振動子1の左右方向と言ったときには図3(a) に示したX軸方向を指し、振動子1の厚さ方向と言ったときには同図(a) に示したY軸方向を指し、振動子1の高さ方向と言ったときには同図(a) に示したZ軸方向を指すものとする。
【0032】
同図(b) は、振動子1を同図(a) のY軸方向に沿って見たときの図である。
同図(b) に示したように、本実施例では、振動子1における縦振動の振動方向の長さ(振動子1の左右方向の長さ)として、異なる2つの長さL1、L2(L1>L2)を有するように、振動子1の左右側面に段差が設けられている。なお、この段差は、振動子1における縦振動の振動方向の長さの中心を通り且つその縦振動の振動方向に垂直な面について面対称に設けられたものでもある。また、この段差は、左右方向の長さをL1とする直方体の四隅を切り欠いたときに得られるようなものでもある。ここで、長さL1は第1の長さの一例であり、長さL2は第2の長さの一例である。
【0033】
このような構成を有する振動子1において、グランド電極6aと屈曲振動用電極4a、4b、4c、4d、5a、5b、5c、5dとの間に交番電圧を印加すると、振動子1は圧電横効果により2次モードの屈曲振動をする。また、グランド電極6aと縦振動用電極4e、5eとの間に交番電圧を印加すると、振動子1は同様に圧電横効果により縦振動をする。ここで、その縦振動について、より詳しく説明する。
【0034】
なお、以下の説明では、縦振動におけるn次振動モードを単に縦n次モードと言い、縦共振振動における振動モードを単に縦共振モードと言い、縦振動における振動モードを単に縦モードと言い、n次振動モードの縦振動を縦n次モード振動と言う。また、屈曲振動におけるn次振動モードを単に屈曲n次モードと言い、n次振動モードの屈曲振動を屈曲n次モード振動と言う。
【0035】
上述のとおり、振動子1は縦振動の振動方向の長さとして2つの長さL1、L2を有することから、長さL1に係る縦共振モードが存在し、縦1次モード、縦2次モード、縦3次モード等の振動モードが存在する。長さL2についても同様に、長さL2に係る縦共振モードが存在し、縦1次モード、縦2次モード、縦3次モード等の振動モードが存在する。長さL1に係る縦モードと長さL2に係る縦モードとは互いに独立なので、同じ次数の振動モードであっても共振周波数は異なる。そこで、2つの長さL1、L2を適当に選べば、長さL1に係る縦1次モードの共振周波数と長さL2に係る縦3次モードの共振周波数との比を1:3(限りなく1:3に近い略1:3も含む)にすることができる。長さL1に係る縦1次モードの共振振動と長さL2に係る縦3次モードの共振振動を、図4に示す。
【0036】
一般に、圧電素子に交番電圧を印加して振動モードを発生させるときには、振動変位の節の位置を歪ませると振動生成効率が良く振動モードを発生させるが、振動変位の腹の位置を歪ませると振動生成効率が悪く振動モードをほとんど発生させない。縦モードを発生させたときの節と腹の位置関係は、図5に示すように、縦1次モードと縦3次モード等の奇数次の縦モードでは中心位置が節の位置になっており、縦2次モード等の偶数次の縦モードでは中心位置が腹の位置になっている。図2(a),(b) に示した縦振動用電極4e、5eとグランド電極6aとの間に交番電圧を印加して振動子1に縦振動を生成させるとき、ちょうど縦振動用電極4e、5eが縦1次モード、縦3次モード等の奇数次の縦モードの節の位置にあたり、縦2次モード等の偶数次の縦モードの腹の位置にあたる。このことから、奇数次の縦モードのみが生成され、偶数次の縦モードはほとんど生成されない。また、印加する交番電圧の周波数スペクトルに含まれない共振周波数をもつ縦共振モードもほとんど生成されない。
【0037】
なお、上述のとおり、縦振動用電極4e、5eが縦1次モード、縦3次モード等の奇数次の縦モードの節の位置にあたることから、長さL1に係る縦1次モード振動と長さL2に係る縦3次モード振動との間の共通の節の位置に、電気機械エネルギー変換素子の縦振動用電極である電極4e、5eが配置されている、ということになる。
【0038】
このようなことから、本実施例に係る超音波モータでは、長さL1に係る縦1次モード振動の共振周波数と長さL2に係る縦3次モード振動の共振周波数との比が1:3(限りなく1:3に近い略1:3も含む)になるように、振動子1の2つの長さL1、L2が決定されている。これにより、図2(a),(b) に示した縦振動用電極4e、5eとグランド電極6aとの間に、長さL1に係る縦1次モード振動の共振周波数f0とその3倍の共振周波数3f0のスペクトルをもつ交番電圧を印加すると、長さL1に係る縦1次モードの共振振動と長さL2に係る縦3次モードの共振振動とを生成することができる。
【0039】
また、印加する交番電圧のスペクトルの周波数f0と3f0との間の振幅の比を調整すると、長さL1に係る縦1次モードの振動速度の振幅と長さL2に係る縦3次モードの振動速度の振幅との比を3:1(限りなく3:1に近い略3:1も含む)にすることができる。この場合、長さL1に係る縦1次モードの振動速度の振幅と長さL2に係る縦3次モードの振動速度の振幅は、長さL1に係る縦1次モードの振動速度をv1sin(ωt)とし、長さL2に係る縦3次モードの振動速度をv2sin(3ωt+φ)としたときに、v2≒v1/3となる。
【0040】
さらに、印加する交番電圧のスペクトルの周波数f0と3f0との間の位相差を調整すると、長さL1に係る縦1次モードの振動速度と長さL2に係る縦3次モードの振動速度との間の位相差をゼロ(限りなくゼロに近い略ゼロも含む)にすることができる。この場合、長さL1に係る縦1次モード振動と長さL2に係る縦3次モード振動との間の振動速度の位相差は、長さL1に係る縦1次モードの振動速度をv1sin(ωt)とし、長さL2に係る縦3次モードの振動速度をv2sin(3ωt+φ)としたときに、φ≒0となる。
【0041】
また、振動子1において、上述のようにして決定した長さL1、L2以外の、高さ方向の長さや厚み方向の長さ等の形状については、その長さL1、L2を保ったままで、屈曲2次モードの共振周波数が長さL1に係る縦1次モードの共振周波数f0と一致するように、決定されている。
【0042】
このような構成の振動子1において、縦振動用電極4e、5eとグランド電極6aとの間、及び、屈曲振動用電極4a、4b、4c、4d、5a、5b、5c、5dとグランド電極6aとの間に、それぞれ周波数f0の異なる図示しない電圧源を接続して交番電圧を印加し、その2つの電圧源により印加される交番電圧の間に位相差を持たせるように調整すると、縦1次モード振動と屈曲2次モード振動とが合成され、駆動子2が固定された位置の振動変位が楕円になる振動が形成される。そして、このときの駆動子2に接する可動体3が移動する。ここで、更に、縦振動用電極4e、5eに接続されている電圧源の交番電圧に3f0の周波数成分を合成して印加するようにすると、縦3次モード振動が更に形成される。また、このときの周波数f0と3f0との間のスペクトル成分の振幅及び位相差を上述のように適当に調整すると、縦振動の振動速度の波形を矩形波に近づけることができる。すなわち、その周波数f0と3f0との間のスペクトル成分の振幅を、長さL1に係る縦1次モードの振動速度の振幅と長さL2に係る縦3次モードの振動速度の振幅との比が3:1になるように調整すると共に、その周波数f0と3f0との間のスペクトル成分の位相差を、長さL1に係る縦1次モードの振動速度と長さL2に係る縦3次モードの振動速度との間の位相差がゼロになるように調整すると、縦振動の振動速度の波形を矩形波に近づけることができる。このときの振動速度の波形と振動変位の波形との一例を、図6(a),(b) に示す。なお、矩形波に近づけるのは振動速度であり、振動変位の波形は振動速度の波形を積分した形状になるので、同図(a) に示したように振動速度の波形が矩形波に近づくと、同図(b) に示したように振動変位の波形は三角波に近づくことになる。
【0043】
以上、本実施例に係る超音波モータによれば、縦1次モード振動と縦3次モード振動との間での共振周波数の比が1:3になるように構成することできる。これにより、縦1次モード振動と縦3次モード振動とを同時に生成して振動速度の振幅と位相を調整することによって振動速度波形を矩形波に近づけることができる。このように振動速度波形を矩形波に近づけることによって、摺動面(駆動子2と可動体3との接触面)での滑りが減り、その結果、摺動面の磨耗を減らすことができる。
【0044】
なお、本実施例に係る超音波モータは、次のような変形が可能である。
例えば、振動子1に設けられる段差は、図3(a) 等に示した形状に限らず、他の形状により構成することも可能である。図7(a),(b),(c),(d),(e),(f),(g) は、他の形状により構成された段差の変形例を示す図である。但し、何れの例における段差も、振動子における縦振動の振動方向の長さとして異なる2つの長さL1、L2を有するように設けられたものであり、その2つの長さL1、L2は、長さL1に係る縦1次モード振動の共振周波数と長さL2に係る縦3次モード振動の共振周波数との比が1:3(限りなく1:3に近い略1:3も含む)になるように決定されたものである。また、何れの例における段差も、振動子における縦振動の振動方向の長さの中心を通り且つその縦振動の振動方向に垂直な面について面対称に設けられたものである。同図(a) に示した振動子に設けられた段差は、図3(a) 等に示した段差に対して凹凸関係が逆になった段差の例である。図7(b) に示した振動子に設けられた段差は、直方体とする振動子における、高さ方向に平行な角部分を切り欠いたときに得られるような段差の例である。同図(c) に示した振動子に設けられた段差は、同図(b) に示した段差に対して凹凸関係が逆になった段差の例である。同図(d) に示した振動子に設けられた段差は、直方体とする振動子における、高さ方向に平行な角部分と厚み方向に平行な角部分とを切り欠いたときに得られるような段差の例である。同図(e) に示した振動子に設けられた段差は、同図(d) に示した段差に対して凹凸関係が逆になった段差の例である。同図(f) に示した振動子に設けられた段差は、振動子1の左右側面に、高さ方向に平行な段差が複数設けられた例である。同図(g) に示した振動子に設けられた段差は、同図(f) に示した段差に対して凹凸関係が逆になった段差の例である。なお、同図(f),(g) に示した段差は、左右方向の長さをL1とする直方体の単層素子と、左右方向の長さをL2とする直方体の単層素子とを積層することによって得ることもできる。このような他の形状により構成された段差によっても、上述の図3(a) 等に示した段差の場合と同様の効果を得ることができる。
【0045】
また、例えば、振動子1も、図3(a) 等に示した形状に限らず、他の形状により構成することも可能である。図8(a),(b) は、他の形状により構成された振動子1の変形例を示す図である。同図(a) に示した振動子は、円柱体とする振動子において、その左右側面における外周部分を切り欠いたときに得られるような段差が設けられた例である。同図(b) に示した振動子は、同図(a) に示した振動子に対して段差の凹凸関係が逆になった振動子の例である。但し、何れの例における段差も、振動子における縦振動の振動方向の長さとして異なる2つの長さL1、L2を有するように設けられたものであり、その2つの長さL1、L2は、長さL1に係る縦1次モード振動の共振周波数と長さL2に係る縦3次モード振動の共振周波数との比が1:3(限りなく1:3に近い略1:3も含む)になるように決定されたものである。また、何れの例における段差も、振動子における縦振動の振動方向の長さの中心を通り且つその縦振動の振動方向に垂直な面について面対称に設けられたものである。このような他の形状により構成された振動子によっても、上述の図3(a) 等に示した振動子1の場合と同様の効果を得ることができる。
【実施例2】
【0046】
本発明の実施例2に係る超音波モータは、実施例1に係る超音波モータに対して、振動子の形状のみが異なり、その他の構成は同じである。そのため、本実施例の説明では、実施例1に係る超音波モータと同一の構成要素については同一の符号を付している。
【0047】
図9は、本実施例に係る超音波モータの構成例を模式的に示す図である。
同図に示したように、本実施例に係る超音波モータの振動子11は、実施例1に係る超音波モータの振動子1に設けられた段差とは異なる形状の段差を有する。すなわち、実施例1に係る振動子1では縦振動の振動方向の長さとして異なる2つの長さL1、L2を有するように段差(いわゆる一段の段差)が設けられていたのに対し、本実施例に係る振動子11では縦振動の振動方向の長さとして異なる3つの長さを有するように段差(いわゆる二段の段差)が設けられている。
【0048】
図10(a),(b) は、振動子11に設けられている段差を説明する図である。
同図(a) は、振動子11の斜視図である。なお、本実施例においても実施例1と同様に、振動子11の左右方向と言ったときには同図(a) に示したX軸方向を指し、振動子11の厚さ方向と言ったときには同図(a) に示したY軸方向を指し、振動子11の高さ方向と言ったときには同図(a) に示したZ軸方向を指すものとする。
【0049】
同図(b) は、振動子11を同図(a) のY軸方向に沿って見たときの図である。
同図(b) に示したように、本実施例では、振動子11における縦振動の振動方向の長さ(振動子11の左右方向の長さ)として、異なる3つの長さL3、L4、L5(L3>L4>L5)を有するように、振動子11の左右側面に段差が設けられている。なお、この段差は、振動子11における縦振動の振動方向の長さの中心を通り且つその縦振動の振動方向に垂直な面について面対称に設けられたものでもある。また、その3つの長さL3、L4、L5において、長さL3は第1の長さの一例であり、長さL4は第2の長さの一例である。
【0050】
ここで、その3つの長さL3、L4、L5は、長さL3に係る縦1次モード振動の共振周波数と、長さL4に係る縦3次モード振動の共振周波数と、長さL5に係る縦5次モード振動の共振周波数との比が1:3:5(限りなく1:3:5に近い略1:3:5も含む)になるように、決定されたものである。従って、長さL3に係る縦1次モード振動の共振周波数をf0とすると、長さL4に係る縦3次モード振動の共振周波数は3f0、長さL5に係る縦5次モード振動の共振周波数は5f0となる。
【0051】
また、このようにして決定された長さL3、L4、L5以外の、振動子11における高さ方向の長さや厚み方向の長さ等の形状は、その長さL3、L4、L5を保ったままで、屈曲2次モードの共振周波数が長さL3に係る縦1次モードの共振周波数f0と一致するように、決定されたものである。
【0052】
なお、振動子11は、実施例1に係る超音波モータの振動子1に対して形状は異なるが構造は同じである。従って、各電極の位置関係も当然ながら振動子1と同じであり、長さL3に係る縦1次モード振動と、長さL4に係る縦3次モード振動と、長さL5に係る縦5次モード振動との間の共通の節の位置に、電気機械エネルギー変換素子の縦振動用電極である電極4e、5eが配置されている、ということになる。
【0053】
このような構成の振動子11において、縦振動用電極4e、5eとグランド電極6aとの間、及び、屈曲振動用電極4a、4b、4c、4d、5a、5b、5c、5dとグランド電極6aとの間に、それぞれ周波数f0の異なる図示しない電圧源を接続して交番電圧を印加し、その2つの電圧源により印加される交番電圧の間に位相差を持たせるように調整すると、縦1次モード振動と屈曲2次モード振動とが合成され、駆動子2が固定された位置の振動変位が楕円になる振動が形成される。そして、このときの駆動子2に接する可動体3が移動する。ここで、更に、縦振動用電極4e、5eに接続されている電圧源の交番電圧に3f0と5f0の周波数成分を合成して印加するようにすると、縦3次モード振動と縦5次モード振動が更に形成される。このときの周波数f0と3f0と5f0との間のスペクトル成分の振幅を、長さL3に係る縦1次モードの振動速度の振幅と長さL4に係る縦3次モードの振動速度の振幅と長さL5に係る縦5次モードの振動速度の振幅との比が5:3:1(限りなく5:3:1に近い略5:3:1も含む)になるように調整すると共に、周波数f0と3f0と5f0との間のスペクトル成分の位相差を、長さL3に係る縦1次モードの振動速度と長さL4に係る縦3次モードの振動速度と長さL5に係る縦5次モードの振動速度との間の位相差がゼロ(限りなくゼロに近い略ゼロも含む)になるように調整すると、図11に示すように、縦振動の振動速度の波形を、より矩形波に近づけることができる。
【0054】
なお、この場合、長さL3に係る縦1次モードの振動速度の振幅と、長さL4に係る縦3次モードの振動速度の振幅と、長さL5に係る縦3次モードの振動速度の振幅は、長さL3に係る縦1次モードの振動速度をv3sin(ωt)とし、長さL4に係る縦3次モードの振動速度をv4sin(3ωt+φ4)とし、長さL5に係る縦5次モードの振動速度をv5sin(5ωt+φ5)としたときに、v4≒v3/3、v5≒v3/5となる。
【0055】
また、長さL3に係る縦1次モード振動と、長さL4に係る縦3次モード振動と、長さL5に係る縦5次モード振動との間の振動速度の位相差は、長さL3に係る縦1次モードの振動速度をv3sin(ωt)とし、長さL4に係る縦3次モードの振動速度をv4sin(3ωt+φ4)とし、長さL5に係る縦5次モードの振動速度をv5sin(5ωt+φ5)としたときに、φ4≒0、φ5≒0となる。
【0056】
以上、本実施例に係る超音波モータによれば、縦1次モード振動と縦3次モード振動と縦5次モード振動との間での共振周波数の比が1:3:5になるように構成することできる。これにより、縦1次モード振動と縦3次モード振動と縦5次モード振動とを同時に生成して振動速度の振幅と位相を調整することによって、振動速度波形を、より矩形波に近づけることができる。このように、振動速度波形を、より矩形波に近づけることによって、摺動面(駆動子2と可動体3との接触面)での滑りが、より減少し、その結果、摺動面の磨耗を、より減らすことができる。
【0057】
なお、本実施例に係る超音波モータは、次のような変形が可能である。
例えば、振動子11に設けられる段差は、図10(a) 等に示した形状に限らず、他の形状により構成することも可能である。例えば、図示はしないが、図10(a) 等に示した段差に対して凹凸関係が逆になった段差とすることも可能である。但し、この場合も、その段差は、振動子における縦振動の振動方向の長さとして異なる3つの長さL3、L4、L5を有するように設けられたものであり、その3つの長さL3、L4、L5は、長さL3に係る縦1次モード振動の共振周波数と長さL4に係る縦3次モード振動の共振周波数と長さL5に係る縦5次モード振動の共振周波数との比が1:3:5(限りなく1:3:5に近い略1:3:5も含む)になるように決定されたものであるとする。また、その段差は、振動子における縦振動の振動方向の長さの中心を通り且つその縦振動の振動方向に垂直な面について面対称に設けられたものであるとする。このような他の形状により構成された段差によっても、上述の図10(a) 等に示した段差の場合と同様の効果を得ることができる。
【0058】
また、例えば、振動子11も、図10(a) 等に示した形状に限らず、他の形状により構成することも可能である。例えば、図示はしないが、円柱体とする振動子において、その左右側面の外周部分を二段階に切り欠いたときに得られるような段差が設けられた振動子とすることも可能である。但し、この場合の段差も、振動子における縦振動の振動方向の長さとして異なる3つの長さL3、L4、L5を有するように設けられたものであり、その3つの長さL3、L4、L5は、長さL3に係る縦1次モード振動の共振周波数と長さL4に係る縦3次モード振動の共振周波数と長さL5に係る縦5次モード振動の共振周波数との比が1:3:5(限りなく1:3:5に近い略1:3:5も含む)になるように決定されたものであるとする。また、その段差は、振動子における縦振動の振動方向の長さの中心を通り且つその縦振動の振動方向に垂直な面について面対称に設けられたものであるとする。このような他の形状により構成された振動子によっても、上述の図10(a) 等に示した振動子11の場合と同様の効果を得ることができる。
【0059】
以上、実施例1及び2に係る超音波モータについて説明したが、振動子に設けられる段差は、実施例1及び2で説明したような段差、すなわち振動子における縦振動の振動方向の長さとして2つ又は3つの長さを有するように設けられた段差に限らず、その長さとして4つ以上の長さを有するように設けられた段差とすることも可能である。但し、この場合、その4つ以上の長さは第1の長さと3つ以上の長さとからなり、その3つ以上の長さの各々は、当該長さに係るn次モード(nは3以上の奇数)の縦振動の共振周波数が、第1の長さに係る1次モードの縦振動の共振周波数に対して略n倍になる、という長さとする。ここで、その3つ以上の長さは第2の長さを含み、その第2の長さに係る3次モードの縦振動の共振周波数が、第1の長さに係る1次モードの縦振動の共振周波数に対して略3倍になる、とすることもできる。また、段差は、振動子における縦振動の振動方向の長さの中心を通り且つ縦振動の振動方向に垂直な面について面対称に設けられるものとする。さらに、振動子において、第1の長さに係る1次モードの縦振動と3つ以上の長さの各々に係るn次モード(nは3以上の奇数)の縦振動との間の共通の節の位置に、電気機械エネルギー変換素子の電極が配置されるものとする。また、第1の長さに係る1次モードの縦振動と3つ以上の長さの各々に係るn次モード(nは3以上の奇数)の縦振動との間の振動速度の位相差は、第1の長さに係る1次モードの縦振動の振動速度をv1sin(ωt)とし、3つ以上の長さの各々について、当該長さに係るn次モードの縦振動の振動速度をvsin(nωt+φ)としたときに、3つ以上の長さの各々についてφ≒0となる、とする。さらに、第1の長さに係る1次モードの縦振動の振動速度の振幅と3つ以上の長さの各々に係るn次モード(nは3以上の奇数)の縦振動の振動速度の振幅は、第1の長さに係る1次モードの縦振動の振動速度をv1sin(ωt)とし、3つ以上の長さの各々について、当該長さに係るn次モードの縦振動の振動速度をvsin(nωt+φ)としたときに、3つ以上の長さの各々についてv≒v1/nとなる、とする。このような構成によっても、上述の実施例1及び2に係る超音波モータの場合と同様の効果を得ることができる。
【0060】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は、上述した各実施例に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良・変更が可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 振動子
2 駆動子
3 可動体
4 単層素子
4a、4b、4c、4d、4e 電極
5 単層素子
5a、5b、5c、5d、5e 電極
6 単層素子
6a 電極
11 振動子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次モードの縦振動と2次モードの屈曲振動とを縮退させ、両振動の間に位相差を持たせることにより楕円振動を形成する振動子と、
前記振動子に固定された駆動子に押圧接触し、前記振動子に前記楕円振動が形成されたときに前記振動子に対して一軸方向に相対移動する可動体と、
を含み、
前記振動子は、前記縦振動の振動方向の長さとして異なる複数の長さを有するように、段差が設けられる、
ことを特徴とする超音波モータ。
【請求項2】
前記段差は、前記振動子における前記縦振動の振動方向の長さの中心を通り且つ前記縦振動の振動方向に垂直な面について面対称に設けられる、
ことを特徴とする請求項1記載の超音波モータ。
【請求項3】
前記異なる複数の長さは、第1の長さと1つ以上の長さとからなり、
前記1つ以上の長さの各々は、当該長さに係るn次モード(nは3以上の奇数)の縦振動の共振周波数が、前記第1の長さに係る1次モードの縦振動の共振周波数に対して略n倍になる、という長さである、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波モータ。
【請求項4】
前記1つ以上の長さは第2の長さを含み、
前記第2の長さに係る3次モードの縦振動の共振周波数が、前記第1の長さに係る1次モードの縦振動の共振周波数に対して略3倍になる、
ことを特徴とする請求項3記載の超音波モータ。
【請求項5】
前記振動子において、前記第1の長さに係る1次モードの縦振動と前記1つ以上の長さの各々に係るn次モードの縦振動との間の共通の節の位置に、電気機械エネルギー変換素子の電極が配置される、
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の超音波モータ。
【請求項6】
前記第1の長さに係る1次モードの縦振動と前記1つ以上の長さの各々に係るn次モードの縦振動との間の振動速度の位相差は、前記第1の長さに係る1次モードの縦振動の振動速度をv1sin(ωt)とし、前記1つ以上の長さの各々について、当該長さに係るn次モードの縦振動の振動速度をvsin(nωt+φ)としたときに、前記1つ以上の長さの各々についてφ≒0となる、
ことを特徴とする請求項3乃至5の何れか一項に記載の超音波モータ。
【請求項7】
前記第1の長さに係る1次モードの縦振動の振動速度の振幅と前記1つ以上の長さの各々に係るn次モードの縦振動の振動速度の振幅は、前記第1の長さに係る1次モードの縦振動の振動速度をv1sin(ωt)とし、前記1つ以上の長さの各々について、当該長さに係るn次モードの縦振動の振動速度をvsin(nωt+φ)としたときに、前記1つ以上の長さの各々についてv≒v1/nとなる、
ことを特徴とする請求項3乃至6の何れか一項に記載の超音波モータ。
【請求項1】
1次モードの縦振動と2次モードの屈曲振動とを縮退させ、両振動の間に位相差を持たせることにより楕円振動を形成する振動子と、
前記振動子に固定された駆動子に押圧接触し、前記振動子に前記楕円振動が形成されたときに前記振動子に対して一軸方向に相対移動する可動体と、
を含み、
前記振動子は、前記縦振動の振動方向の長さとして異なる複数の長さを有するように、段差が設けられる、
ことを特徴とする超音波モータ。
【請求項2】
前記段差は、前記振動子における前記縦振動の振動方向の長さの中心を通り且つ前記縦振動の振動方向に垂直な面について面対称に設けられる、
ことを特徴とする請求項1記載の超音波モータ。
【請求項3】
前記異なる複数の長さは、第1の長さと1つ以上の長さとからなり、
前記1つ以上の長さの各々は、当該長さに係るn次モード(nは3以上の奇数)の縦振動の共振周波数が、前記第1の長さに係る1次モードの縦振動の共振周波数に対して略n倍になる、という長さである、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波モータ。
【請求項4】
前記1つ以上の長さは第2の長さを含み、
前記第2の長さに係る3次モードの縦振動の共振周波数が、前記第1の長さに係る1次モードの縦振動の共振周波数に対して略3倍になる、
ことを特徴とする請求項3記載の超音波モータ。
【請求項5】
前記振動子において、前記第1の長さに係る1次モードの縦振動と前記1つ以上の長さの各々に係るn次モードの縦振動との間の共通の節の位置に、電気機械エネルギー変換素子の電極が配置される、
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の超音波モータ。
【請求項6】
前記第1の長さに係る1次モードの縦振動と前記1つ以上の長さの各々に係るn次モードの縦振動との間の振動速度の位相差は、前記第1の長さに係る1次モードの縦振動の振動速度をv1sin(ωt)とし、前記1つ以上の長さの各々について、当該長さに係るn次モードの縦振動の振動速度をvsin(nωt+φ)としたときに、前記1つ以上の長さの各々についてφ≒0となる、
ことを特徴とする請求項3乃至5の何れか一項に記載の超音波モータ。
【請求項7】
前記第1の長さに係る1次モードの縦振動の振動速度の振幅と前記1つ以上の長さの各々に係るn次モードの縦振動の振動速度の振幅は、前記第1の長さに係る1次モードの縦振動の振動速度をv1sin(ωt)とし、前記1つ以上の長さの各々について、当該長さに係るn次モードの縦振動の振動速度をvsin(nωt+φ)としたときに、前記1つ以上の長さの各々についてv≒v1/nとなる、
ことを特徴とする請求項3乃至6の何れか一項に記載の超音波モータ。
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1】
【図2】
【図9】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1】
【図2】
【図9】
【公開番号】特開2012−23895(P2012−23895A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160742(P2010−160742)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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