超音波探傷方式球自動検査方法及び装置
【課題】
球表面及び球内部全域の欠陥を容易且つ確実に検出し、製品の信頼性を高めると共に、作業性の向上を図る。
【解決手段】
液中で検査対象球31を子午線状に回転させて、該検査対象球の中心を向いた位置に配置された垂直波法用超音波探触子36から検査対象球31に超音波を送信し、球の内部を伝播し、反射されて戻る超音波を受信して電気変換し、波形信号のレベルにより該球の表面から0.4mm以上の内部の欠陥の有無を判定すると同時に、該検査対象球31の中心線から該球の球径の20〜23%外れた位置に中心線が配置された表面波法用超音波探触子37から検査対象球に超音波を送信し、球表面及び球表面近傍を伝播して反射されて戻る超音波を受信して電気変換した波形信号のレベルにより該球の表面から0.4mm以内の表面欠陥と内部欠陥の有無を判定することを同時に行なって球体の背内規を同時に高速で検査する。
球表面及び球内部全域の欠陥を容易且つ確実に検出し、製品の信頼性を高めると共に、作業性の向上を図る。
【解決手段】
液中で検査対象球31を子午線状に回転させて、該検査対象球の中心を向いた位置に配置された垂直波法用超音波探触子36から検査対象球31に超音波を送信し、球の内部を伝播し、反射されて戻る超音波を受信して電気変換し、波形信号のレベルにより該球の表面から0.4mm以上の内部の欠陥の有無を判定すると同時に、該検査対象球31の中心線から該球の球径の20〜23%外れた位置に中心線が配置された表面波法用超音波探触子37から検査対象球に超音波を送信し、球表面及び球表面近傍を伝播して反射されて戻る超音波を受信して電気変換した波形信号のレベルにより該球の表面から0.4mm以内の表面欠陥と内部欠陥の有無を判定することを同時に行なって球体の背内規を同時に高速で検査する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軸受、ボールねじ、リニアガイド、等速ジョイント、ボール弁及び光学レンズ等に使用される鋼球並びにセラミックス球やガラス球等の加工時に発生する球表面欠陥、球内部に発生する材料欠陥(鋼では酸化物系介在物、セラミックス球では金属系介在物、ポアや焼結助剤の偏析など)など、欠陥の有無を超音波を利用して検出する超音波探傷方式球自動検査方法ならびに該方法を実施する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼球の外観検査装置では、従来、図11に示すように検査対象球101に光源102のフィラメントから光を当て、球からの反射光を受光素子103で受けて受光量の変化を電気変換し、電圧もしくは電流の変化に変換して判定部104においてその電気信号の変化量によって欠陥の有無の判定を行なう光学検査方法が知られている。(例えば特許文献1参照)。内部欠陥検査に関しては渦電流探傷やX線を使った検査方法も知られている。
【0003】
しかし、上述のような光学検査方法の場合、一般的な軸受に使用される表面が鏡面状に仕上がっている鋼球では、表面に存在する材料製造時に発生した欠陥や球への加工時に発生した欠陥に関しては検出は可能であるが、例えば材料製造時に発生した酸化物系介在物などの欠陥の場合は球の表面に現われず、球の内部に存在することが多い。その場合、光学検査方法では球の内部を検査することは原理的に不可能である。これら球内部に存在する材料製造時に発生した酸化物系介在物等の欠陥は軸受等で球を使用する場合に軸受寿命への多大な影響が懸念される。そのため通常、渦電流探傷やX線を使った検査手法も考えられるが、渦電流探傷の場合、表面のみならず表面近傍の欠陥の検出も可能であるが、その検出条件として欠陥が表面に露出し開口していることが必要であり、表面に露出していない完全に内部に存在する微小欠陥の検出は困難である。またX線を使った検査手法では、一般に球を製造する場合はロット単位にて加工しており、そのロット個数は数万個から数十万個にもなり、検査タクトも無視できず、手動検査を行なえば多大な人件費及び処理時間を要するといった問題があった。一方、軸受用転動体の転動面表面及び表面近傍に存在する微小欠陥を迅速に検出できるものとして超音波を利用した方法ならびに装置も提案されている。(例えば特許文献2参照)
この方法または装置は超音波伝達媒体中に軸受用転動体及び超音波探触子を配置し、転動体にポンプ等の噴射手段によって回転自在に保持して前記探触子より超音波を送信し、反射してくる超音波エコーにより欠陥を検出する方法であり、転動体の表面及び表面から2mm以内の表面近傍に存在する微小欠陥を検出することが可能であると開示されている。
【0004】
また、一般的な超音波方式による検出装置として、球体ではないが、液中に被検査物を水没させた状態で超音波送信部より超音波を送信し、該送信部より送信された超音波の反射波を受光して検査を行なうことも知られている。(例えば特許文献3参照)
【特許文献1】特開2002−277226号公報
【特許文献2】特公平5−84865号公報
【特許文献3】特開2007−47056号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記超音波を利用した球体の検査においても球の表面や球表面から2mm以内の表面近傍の欠陥の検出は可能であるとしても、2mmよりも内部の検査については殆ど言及されておらず、そのため球径によっては球内部に存在する材料製造時に発生した介在物などの欠陥の検出は充分とは言えず、軸受等で使用する場合に軸受寿命への多大な影響を免れなかった。また、セラミック球の製造工程において空孔や、金属異物が内部深くに存在した場合には製品としての寿命への影響を免れなかった。特にポンプ等の噴射手段によって検査対象球を回転させることは液の管理及び制御が難しく、確実に検査対象球が子午線状に回転しているかの保証はなかった。
【0006】
本発明は上述の如き実状に鑑み、これに対処し、軸受等への影響を及ぼす球表面欠陥は勿論、球内部全域の探傷も同時に行い、いかなる球径においても確実に内部欠陥を検出する超音波方式を見出すことにより光学検査に比し球表面及び球内部全域の欠陥を容易かつ確実に検出して製品の信頼性を高めると共に、球の洗浄装置ならびに検査結果により良品,不良品を振り分ける装置等の結合を容易として作業性の向上をはかり、大量の球を高速に自動で検査し処理することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、上記目的に適合する本発明の特徴は、液中で回転装置により検査対象球を子午線状に回転させて、該検査対象球の中心を向いた位置に配置された垂直波法用超音波探触子から検査対象球に超音波を送信し、検査対象球の内部を伝播し反射源により反射されて戻る超音波を受信し、戻った超音波を電気変換し、波形信号を得て該信号のレベルにより該検査対象球の表面から0.4mm以上の内部の欠陥の有無を判定することと同時に、該検査対象球の中心線から該検査対象球の球径の20〜23%オフセットした(外れた)位置に中心線が配置された表面波法用超音波探触子から検査対象球に超音波を送信し、検査対象球の球表面及び球表面近傍を伝播し反射源により超音波が反射されて戻る超音波を受信し、戻った超音波を電気変換し、波形信号を得て該信号のレベルにより該検査対象球の表面から0.4mm以内の表面欠陥と内部欠陥の有無を判定することを同時に行なうことで球体の全域を同時に高速に検査する超音波探傷方式自動検査方法にある。
【0008】
請求項2は上記検査に先立ち検査対象球を洗浄し、清浄度を向上させることを特徴とする。請求項3は上記検査方法を終了した球の処理であり、検査終了後、排出されて来た球を自動的に良品と不良品に振り分けると共に、新規な検査対象球を検査部に投入することを特徴とする。
【0009】
請求項4は上記検査方法を実施する検査装置であり、液中に浸漬されたドライブローラー,サポートローラー及び偏心ハスバギヤを取り付けたコントロールローラーよりなり、コントロールローラーの回転により検査対象球にひねりを与え子午線状に回転させ保持する装置と、該装置により液中で支持された検査対象球の中心を向いて液中の所定の位置に配置された垂直波法用超音波探触子1と検査対象球の中心線からオフセットした(外れた)位置の液中の所定の位置に配置された表面波法用超音波探触子から同時に発信した夫々の超音波が検査対象球の表面近傍及び内部で反射されて戻ってきた超音波を夫々同時に受信し電気変換して夫々の信号を同時に処理する信号処理部と、前記超音波探触子を浸漬した液を浄化する液中浄化装置からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の超音波探傷方式球自動検査方法を利用することにより、球の表面及び球内部の全域における有害な微小欠陥を安定して検出することが可能となり、特に検査対象球を回転装置により順次、子午線状に球全表面を走査することと相俟って球全表面はもとよりその内部全域の自動検査がより確実に行なわれ、製品の寿命信頼性を従前の方式に比し向上すると共に、手動検査に比し人件費,処理時間を大幅に縮減し、作業性をも向上することができる。また、不良球をX線調査やマイクロスキャン等で更に内部調査を実施し、不良内容を把握することでサプライヤーに改善の要求を行なうことが可能となり、素球の品質向上にも繋がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、引き続き本発明の具体的実施形態について説明する。図1は本発明を実施するための検査装置の1態様を示す全体概要図であり、図2は本発明の要部をなす検査装置の要部を示す概要図である。
【0012】
本発明検査を実施する検査装置は、図1に示す如く検査対象球を供給する供給装置1、供給した検査対象球を検査前に洗浄する自動ブラシ洗浄装置からなる洗浄装置2、液中に浸漬された回転機構を具えた検査部3を順次配設し、検査部3の液を浄化するための液中浄化装置4及び検査終了後の球を受けるための受け箱5、供給装置1、洗浄装置2に洗浄液を送液するポンプユニット6を組み合わせることによって全体が構成されているが、後述する検査部3での検査方式を除いては、この配置構成は先に本出願人の出願に係る特開2002−277226号公報に詳述されているので詳細な説明は省略し、以下においては本発明の特徴とする検査部の構成についてのみ図2に基づいて説明することとする。
【0013】
図2は本発明の要部をなす検査部の構成の1例であり、図において31は検査対象球を示し、該球31は液中に浸漬配置されたドライブローラー32とサポートローラー33とコントロールローラー34によって所定の位置に保持されている。コントロールローラー34には偏心ハスバギヤ35が取り付けられており、ドライブローラー32を回転させることで、検査対象球31は回転し、それによりコントロールローラー32とサポートローラー33とコントロールローラー34によって取り付けられている偏心ハスバギヤ35により検査対象球31は回転し、それによりコントロールローラー34も回転するが、このとき上記コントロールローラー34に取り付けられている偏心ハスバギヤ35により検査対象球31にはひねりが与えられ、検査対象球31は子午線状に回転する仕組みになっている。
【0014】
図中、36,37は本発明超音波方式検査において重要な要素をなす垂直波法用と表面波法用の各超音波探触子であり、垂直波法用超音波探触子36は前記一連の回転装置により子午線状に回転している検査対象球31の中心を向くように設置して液中で所定の位置に配置されていて子午線状に回転している検査対象球31の球表面に垂直に超音波を送信するようになっている。垂直波法用超音波探触子36から送信された上記超音波は対向する検査対象球31に直進し検査対象球31の表面にて正反射して垂直波法用超音波探触子36に戻る超音波、検査対象球31の表面で球内部に入射、伝播する超音波に分けられる。球内部に材料製作時についた欠陥がある場合は、検査対象球31の球内部を伝播する超音波にて欠陥部分で超音波が反射され、同じ経路を辿って、超音波探触子に戻ることになる。ここで検査対象球31の表面近傍内部に例えば材料製作時についた欠陥がある場合は、検査対象球31の表面で反射するエコーの影響で検査不能となる場合がある。その場合は後述の表面波法用超音波探触子37で探傷可能となる。
【0015】
表面波法用超音波探触子37は前記一連の回転装置により子午線状に回転している検査対象球31の中心線から検査対象球31の球径の20〜23%オフセットした液中の位置に中心線が配置されていて子午線状に回転している検査対象球31の球表面に超音波を送信するようになっている。
【0016】
表面波法用超音波探触子37から送信された上記超音波は検査対象球31に直進し検査対象球31の表面にて正反射して表面波法用超音波探触子37に戻る超音波、検査対象球31の表面に沿って球表面を伝播する超音波、検査対象球31の表面で球表面近傍に伝播する超音波に分けられる。そして球表面に球加工製作時に付いた欠陥がある場合、または球表面近傍に材料製作時に付いた欠陥がある場合は、検査対象球31の表面に沿って球表面を伝播する超音波または球表面近傍に伝播する超音波にて欠陥部分で超音波が反射され、同じ経路を辿って、超音波探触子に戻ることになる。ここで検査対象球31内部に材料製作時に付いた材料キズがある場合は表面波法用超音波探触子37から送信された超音波が内部まで伝播しないため、探傷不能となるが、その場合は前述の垂直波法用超音波探触子36で探傷可能となる。そして、戻ったこれらの超音波は変換器40で電気変換されて波形となって信号が得られ、その信号のレベルを判定することで表面欠陥、内部欠陥の有無を判定することができる。
【0017】
なお、検査完了後、球を保持しているサポートローラー33が稼働し、球が上記検査部から排出されるが、排出された部分には良品,不良品を振り分ける判別ゲート38が設置されており、検査結果によりこの判別ゲート38が作動し、自動的に良品,不良品に振り分けられる。一方、球が排出されると同時に整流フィンガー39が上下動により待機している次の球41が1個だけ検査部へ投入され、この繰り返しにより連続的に検査が可能になっている。
【0018】
ここで、上記使用する垂直波法用超音波探触子36としては、検査対象球の球径・材質にもよるが、例えば球径10〜20mm前後の鋼球を検査するには、周波数10〜30MHz 、エレメント径3〜6mm程度が検査能力的に好ましい。セラミックス球を検査する際には、周波数50〜100MHz、エレメント径3〜6mm程度が検査能力的に好ましい。また、表面波法用超音波探触子37としては、検査対象球の球径・材質にもよるが、例えば球径10〜20mm前後の鋼球を検査するには、周波数10〜30MHz、エレメント径3〜6mm程度が検査能力的に好ましい。セラミックス球を検査する際には、周波数20〜50MHz、エレメント径3〜6mm程度が検査能力的に好ましい。また、超音波探触子を取り付けている治具は上下左右前後に容易に調整可能な構造となっており、超音波を球の任意の箇所に送信することができるようになっている。
【0019】
なお、回転装置及び超音波探触子を浸漬している液は、液中浄化装置によって浄化され、液中の塵やゴミなどの微小物及び気泡が除去されており、それら塵やゴミなどの微小物及び気泡による擬似欠陥信号による歩留まりの悪化を防ぎ検査精度の向上を図っている。また、ここで使用される液としては、油だけでなく水も使用可能であるが、機械の発錆を考慮し本発明では油を使用している。次に上記検査の実施例について説明する。
【実施例】
【0020】
上記装置を使用し、球径17.5mmの球をドライブローラー,サポートローラー,コントロールローラーの回転により子午線状に回転させて垂直波法用超音波探触子により球表面に垂直に超音波を送信した。この送信した超音波が球表面,球内部に伝播して戻ってきた超音波を受信し、変換器で波形信号によって確認したところ、正常な部分については図3(イ)に示すような波形が認められたが、欠陥と判定された球を垂直波法用超音波探傷にて確認したところ、図3(ロ)に示すような欠陥と思われる信号が確認された。ここで表面エコー51は垂直波法用超音波にて球表面から反射した超音波で、底面エコー52は球の底から反射した超音波で、欠陥エコー53は球の内部の欠陥で反射された超音波である。そこで欠陥と思われる信号が確認された球を顕微鏡で球表面を確認したところ、球表面には欠陥が確認されなかった。そこで、球表面から数μmづつ削りながらその都度、顕微鏡にて確認した結果、深さ400μmの位置に図7のような300μmの酸化物系介在物の欠陥が確認された。
【0021】
また、表面波法用超音波探触子により検査対象球に超音波を送信し、検査対象球の球表面及び表面近傍内部を伝播し反射源により超音波が反射されて戻る超音波を受信し、戻った超音波を電気変換で波形信号によって確認したところ、正常な部分については図4(イ)に示すような波形が認められたが、欠陥と判定された球を表面波法超音波探傷にて確認したところ、図4(ロ)に示すような欠陥と思われる信号が確認された。ここで、表面エコー54は表面波法超音波にて球表面から反射した超音波で、欠陥エコー55は球の表面近傍の欠陥で反射された超音波である。そこで欠陥と思われる信号が確認された球を顕微鏡で球表面を確認したところ、表面には欠陥が確認されなかった。そこで、球表面から数μmづつ削りながらその都度、顕微鏡にて確認した結果、深さ400μmの位置に図8のような300μmの酸化物系介在物の欠陥が確認された。
【0022】
また、垂直波法用超音波探触子により球表面に垂直に超音波を送信した超音波が球表面,内部に伝播して戻って来た超音波を受信し、変換器で波形信号によって確認したところ、図5(イ)に示すような欠陥と思われる信号が確認された。ここで表面エコー56は垂直波法用超音波にて球表面から反射した超音波で、底面エコー57は球の底から反射した超音波で、欠陥エコー58は球の内部の欠陥で反射された超音波である。そこで欠陥と思われる信号が確認された球を表面波法用超音波探触子により検査対象球に超音波を送信し、検査対象球の球表面及び表面近傍内部を伝播し反射源により超音波が反射されて戻る超音波を受信し、戻った超音波を電気変換で波形信号によって確認したところ、図5(ロ)に示すような信号が確認され、欠陥と判定されなかった。ここで、表面エコー59は表面波法用超音波にて球表面から反射した超音波である。そこで、球表面から数μmづつ削りながらその都度、顕微鏡にて確認した結果、深さ50.4mmの位置内に図9のような400μmの金属異物の欠陥が確認された。
【0023】
また、表面波法用超音波探触子により検査対象球に超音波を送信し、検査対象球の球表面及び表面近傍内部を伝播し反射源により超音波が反射されて戻る超音波を受信し、戻った超音波を電気変換で波形信号によって確認したところ、図6(イ)に示すような欠陥と思われる信号が確認された。ここで、表面エコー60は表面波法超音波にて球表面から反射した超音波で、欠陥エコー61は球の表面の欠陥で反射された超音波である。そこで欠陥と思われる信号が確認された球を垂直波法用超音波探触子により検査対象球に垂直に超音波を送信し、検査対象球の球内部を伝播し反射源により超音波が反射されて戻る超音波を受信し、戻った超音波を電気変換で波形信号によって確認したところ、図6(ロ)に示すような信号が確認され、欠陥と判定されなかった。ここで表面エコー62は垂直波法超音波にて球表面から反射した超音波で、底面エコー63は球の底から反射した超音波である。
【0024】
そこで、図6(イ)に示すような欠陥と思われる信号が確認された球を顕微鏡で球表面を確認したところ、図10のような球表面に加工工程でついたと思われる大きさφ0.1mmの欠陥が確認された。また、図3(イ)の如く欠陥と思われる信号が見られなかった球についても同様に球表面の確認及び球表面から数μmづつ削りながらその都度、顕微鏡について確認したが欠陥は確認されなかった。従って以上の本発明の超音波探傷検査により球全表面及び球内部の自動検査が可能であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明を実施する検査装置の1態様を示す全体概要図である。
【図2】本発明検査装置における要部をなす検査部を示す概要図である。
【図3】垂直波法用超音波探触子により球表面に垂直に送信し、球表面球内部に伝播し、戻ってきた超音波を受信した際の波形信号であり、(イ)は正常な場合、(ロ)は欠陥のある場合を示す。
【図4】表面波法用超音波探触子により球に送信し、球表面及び表面近傍内部を伝播し戻ってきた超音波を受信した際の波形信号であり、(イ)は欠陥がない正常な場合、(ロ)は欠陥のある場合を示す。
【図5】垂直波法用超音波探触子により球表面に垂直に送信し、球表面,球内部に伝播して戻ってきた超音波を受信した際の波形信号であり、(イ)は欠陥のある場合、(ロ)は(イ)の欠陥球を表面波法用超音波探触子より送信し、球表面及び球表面近傍内部を伝播し、戻って来た超音波を受信した際の波形信号で、欠陥がない場合を示す。
【図6】表面波法用超音波探触子により球に超音波を送信し、球表面及び表面近傍内部を伝播し戻ってきた波形信号であり、(イ)は欠陥がある場合、(ロ)は(イ)の欠陥球を垂直波法用超音波探触子により送信し、内部を伝播し戻って来た超音波を受信した際の波形信号で、正常な場合である。
【図7】前記図3の欠陥部の顕微鏡写真である。
【図8】前記図4の欠陥部の顕微鏡写真である。
【図9】前記図5の欠陥部の顕微鏡写真である。
【図10】前記図6の欠陥部の顕微鏡写真である。
【図11】従来の光学検査方法を実施する装置の概要図である。
【符号の説明】
【0026】
31:検査対象球
32:ドライブローラー
33:サポートローラー
34: コントロールローラー
35:偏心ハスバギヤ
36:垂直波法用超音波探触子
37:表面波法用超音波探触子
38:判別ゲート
39:整流フィンガー
40:変換器
41:待機球
【技術分野】
【0001】
本発明は軸受、ボールねじ、リニアガイド、等速ジョイント、ボール弁及び光学レンズ等に使用される鋼球並びにセラミックス球やガラス球等の加工時に発生する球表面欠陥、球内部に発生する材料欠陥(鋼では酸化物系介在物、セラミックス球では金属系介在物、ポアや焼結助剤の偏析など)など、欠陥の有無を超音波を利用して検出する超音波探傷方式球自動検査方法ならびに該方法を実施する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼球の外観検査装置では、従来、図11に示すように検査対象球101に光源102のフィラメントから光を当て、球からの反射光を受光素子103で受けて受光量の変化を電気変換し、電圧もしくは電流の変化に変換して判定部104においてその電気信号の変化量によって欠陥の有無の判定を行なう光学検査方法が知られている。(例えば特許文献1参照)。内部欠陥検査に関しては渦電流探傷やX線を使った検査方法も知られている。
【0003】
しかし、上述のような光学検査方法の場合、一般的な軸受に使用される表面が鏡面状に仕上がっている鋼球では、表面に存在する材料製造時に発生した欠陥や球への加工時に発生した欠陥に関しては検出は可能であるが、例えば材料製造時に発生した酸化物系介在物などの欠陥の場合は球の表面に現われず、球の内部に存在することが多い。その場合、光学検査方法では球の内部を検査することは原理的に不可能である。これら球内部に存在する材料製造時に発生した酸化物系介在物等の欠陥は軸受等で球を使用する場合に軸受寿命への多大な影響が懸念される。そのため通常、渦電流探傷やX線を使った検査手法も考えられるが、渦電流探傷の場合、表面のみならず表面近傍の欠陥の検出も可能であるが、その検出条件として欠陥が表面に露出し開口していることが必要であり、表面に露出していない完全に内部に存在する微小欠陥の検出は困難である。またX線を使った検査手法では、一般に球を製造する場合はロット単位にて加工しており、そのロット個数は数万個から数十万個にもなり、検査タクトも無視できず、手動検査を行なえば多大な人件費及び処理時間を要するといった問題があった。一方、軸受用転動体の転動面表面及び表面近傍に存在する微小欠陥を迅速に検出できるものとして超音波を利用した方法ならびに装置も提案されている。(例えば特許文献2参照)
この方法または装置は超音波伝達媒体中に軸受用転動体及び超音波探触子を配置し、転動体にポンプ等の噴射手段によって回転自在に保持して前記探触子より超音波を送信し、反射してくる超音波エコーにより欠陥を検出する方法であり、転動体の表面及び表面から2mm以内の表面近傍に存在する微小欠陥を検出することが可能であると開示されている。
【0004】
また、一般的な超音波方式による検出装置として、球体ではないが、液中に被検査物を水没させた状態で超音波送信部より超音波を送信し、該送信部より送信された超音波の反射波を受光して検査を行なうことも知られている。(例えば特許文献3参照)
【特許文献1】特開2002−277226号公報
【特許文献2】特公平5−84865号公報
【特許文献3】特開2007−47056号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記超音波を利用した球体の検査においても球の表面や球表面から2mm以内の表面近傍の欠陥の検出は可能であるとしても、2mmよりも内部の検査については殆ど言及されておらず、そのため球径によっては球内部に存在する材料製造時に発生した介在物などの欠陥の検出は充分とは言えず、軸受等で使用する場合に軸受寿命への多大な影響を免れなかった。また、セラミック球の製造工程において空孔や、金属異物が内部深くに存在した場合には製品としての寿命への影響を免れなかった。特にポンプ等の噴射手段によって検査対象球を回転させることは液の管理及び制御が難しく、確実に検査対象球が子午線状に回転しているかの保証はなかった。
【0006】
本発明は上述の如き実状に鑑み、これに対処し、軸受等への影響を及ぼす球表面欠陥は勿論、球内部全域の探傷も同時に行い、いかなる球径においても確実に内部欠陥を検出する超音波方式を見出すことにより光学検査に比し球表面及び球内部全域の欠陥を容易かつ確実に検出して製品の信頼性を高めると共に、球の洗浄装置ならびに検査結果により良品,不良品を振り分ける装置等の結合を容易として作業性の向上をはかり、大量の球を高速に自動で検査し処理することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、上記目的に適合する本発明の特徴は、液中で回転装置により検査対象球を子午線状に回転させて、該検査対象球の中心を向いた位置に配置された垂直波法用超音波探触子から検査対象球に超音波を送信し、検査対象球の内部を伝播し反射源により反射されて戻る超音波を受信し、戻った超音波を電気変換し、波形信号を得て該信号のレベルにより該検査対象球の表面から0.4mm以上の内部の欠陥の有無を判定することと同時に、該検査対象球の中心線から該検査対象球の球径の20〜23%オフセットした(外れた)位置に中心線が配置された表面波法用超音波探触子から検査対象球に超音波を送信し、検査対象球の球表面及び球表面近傍を伝播し反射源により超音波が反射されて戻る超音波を受信し、戻った超音波を電気変換し、波形信号を得て該信号のレベルにより該検査対象球の表面から0.4mm以内の表面欠陥と内部欠陥の有無を判定することを同時に行なうことで球体の全域を同時に高速に検査する超音波探傷方式自動検査方法にある。
【0008】
請求項2は上記検査に先立ち検査対象球を洗浄し、清浄度を向上させることを特徴とする。請求項3は上記検査方法を終了した球の処理であり、検査終了後、排出されて来た球を自動的に良品と不良品に振り分けると共に、新規な検査対象球を検査部に投入することを特徴とする。
【0009】
請求項4は上記検査方法を実施する検査装置であり、液中に浸漬されたドライブローラー,サポートローラー及び偏心ハスバギヤを取り付けたコントロールローラーよりなり、コントロールローラーの回転により検査対象球にひねりを与え子午線状に回転させ保持する装置と、該装置により液中で支持された検査対象球の中心を向いて液中の所定の位置に配置された垂直波法用超音波探触子1と検査対象球の中心線からオフセットした(外れた)位置の液中の所定の位置に配置された表面波法用超音波探触子から同時に発信した夫々の超音波が検査対象球の表面近傍及び内部で反射されて戻ってきた超音波を夫々同時に受信し電気変換して夫々の信号を同時に処理する信号処理部と、前記超音波探触子を浸漬した液を浄化する液中浄化装置からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の超音波探傷方式球自動検査方法を利用することにより、球の表面及び球内部の全域における有害な微小欠陥を安定して検出することが可能となり、特に検査対象球を回転装置により順次、子午線状に球全表面を走査することと相俟って球全表面はもとよりその内部全域の自動検査がより確実に行なわれ、製品の寿命信頼性を従前の方式に比し向上すると共に、手動検査に比し人件費,処理時間を大幅に縮減し、作業性をも向上することができる。また、不良球をX線調査やマイクロスキャン等で更に内部調査を実施し、不良内容を把握することでサプライヤーに改善の要求を行なうことが可能となり、素球の品質向上にも繋がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、引き続き本発明の具体的実施形態について説明する。図1は本発明を実施するための検査装置の1態様を示す全体概要図であり、図2は本発明の要部をなす検査装置の要部を示す概要図である。
【0012】
本発明検査を実施する検査装置は、図1に示す如く検査対象球を供給する供給装置1、供給した検査対象球を検査前に洗浄する自動ブラシ洗浄装置からなる洗浄装置2、液中に浸漬された回転機構を具えた検査部3を順次配設し、検査部3の液を浄化するための液中浄化装置4及び検査終了後の球を受けるための受け箱5、供給装置1、洗浄装置2に洗浄液を送液するポンプユニット6を組み合わせることによって全体が構成されているが、後述する検査部3での検査方式を除いては、この配置構成は先に本出願人の出願に係る特開2002−277226号公報に詳述されているので詳細な説明は省略し、以下においては本発明の特徴とする検査部の構成についてのみ図2に基づいて説明することとする。
【0013】
図2は本発明の要部をなす検査部の構成の1例であり、図において31は検査対象球を示し、該球31は液中に浸漬配置されたドライブローラー32とサポートローラー33とコントロールローラー34によって所定の位置に保持されている。コントロールローラー34には偏心ハスバギヤ35が取り付けられており、ドライブローラー32を回転させることで、検査対象球31は回転し、それによりコントロールローラー32とサポートローラー33とコントロールローラー34によって取り付けられている偏心ハスバギヤ35により検査対象球31は回転し、それによりコントロールローラー34も回転するが、このとき上記コントロールローラー34に取り付けられている偏心ハスバギヤ35により検査対象球31にはひねりが与えられ、検査対象球31は子午線状に回転する仕組みになっている。
【0014】
図中、36,37は本発明超音波方式検査において重要な要素をなす垂直波法用と表面波法用の各超音波探触子であり、垂直波法用超音波探触子36は前記一連の回転装置により子午線状に回転している検査対象球31の中心を向くように設置して液中で所定の位置に配置されていて子午線状に回転している検査対象球31の球表面に垂直に超音波を送信するようになっている。垂直波法用超音波探触子36から送信された上記超音波は対向する検査対象球31に直進し検査対象球31の表面にて正反射して垂直波法用超音波探触子36に戻る超音波、検査対象球31の表面で球内部に入射、伝播する超音波に分けられる。球内部に材料製作時についた欠陥がある場合は、検査対象球31の球内部を伝播する超音波にて欠陥部分で超音波が反射され、同じ経路を辿って、超音波探触子に戻ることになる。ここで検査対象球31の表面近傍内部に例えば材料製作時についた欠陥がある場合は、検査対象球31の表面で反射するエコーの影響で検査不能となる場合がある。その場合は後述の表面波法用超音波探触子37で探傷可能となる。
【0015】
表面波法用超音波探触子37は前記一連の回転装置により子午線状に回転している検査対象球31の中心線から検査対象球31の球径の20〜23%オフセットした液中の位置に中心線が配置されていて子午線状に回転している検査対象球31の球表面に超音波を送信するようになっている。
【0016】
表面波法用超音波探触子37から送信された上記超音波は検査対象球31に直進し検査対象球31の表面にて正反射して表面波法用超音波探触子37に戻る超音波、検査対象球31の表面に沿って球表面を伝播する超音波、検査対象球31の表面で球表面近傍に伝播する超音波に分けられる。そして球表面に球加工製作時に付いた欠陥がある場合、または球表面近傍に材料製作時に付いた欠陥がある場合は、検査対象球31の表面に沿って球表面を伝播する超音波または球表面近傍に伝播する超音波にて欠陥部分で超音波が反射され、同じ経路を辿って、超音波探触子に戻ることになる。ここで検査対象球31内部に材料製作時に付いた材料キズがある場合は表面波法用超音波探触子37から送信された超音波が内部まで伝播しないため、探傷不能となるが、その場合は前述の垂直波法用超音波探触子36で探傷可能となる。そして、戻ったこれらの超音波は変換器40で電気変換されて波形となって信号が得られ、その信号のレベルを判定することで表面欠陥、内部欠陥の有無を判定することができる。
【0017】
なお、検査完了後、球を保持しているサポートローラー33が稼働し、球が上記検査部から排出されるが、排出された部分には良品,不良品を振り分ける判別ゲート38が設置されており、検査結果によりこの判別ゲート38が作動し、自動的に良品,不良品に振り分けられる。一方、球が排出されると同時に整流フィンガー39が上下動により待機している次の球41が1個だけ検査部へ投入され、この繰り返しにより連続的に検査が可能になっている。
【0018】
ここで、上記使用する垂直波法用超音波探触子36としては、検査対象球の球径・材質にもよるが、例えば球径10〜20mm前後の鋼球を検査するには、周波数10〜30MHz 、エレメント径3〜6mm程度が検査能力的に好ましい。セラミックス球を検査する際には、周波数50〜100MHz、エレメント径3〜6mm程度が検査能力的に好ましい。また、表面波法用超音波探触子37としては、検査対象球の球径・材質にもよるが、例えば球径10〜20mm前後の鋼球を検査するには、周波数10〜30MHz、エレメント径3〜6mm程度が検査能力的に好ましい。セラミックス球を検査する際には、周波数20〜50MHz、エレメント径3〜6mm程度が検査能力的に好ましい。また、超音波探触子を取り付けている治具は上下左右前後に容易に調整可能な構造となっており、超音波を球の任意の箇所に送信することができるようになっている。
【0019】
なお、回転装置及び超音波探触子を浸漬している液は、液中浄化装置によって浄化され、液中の塵やゴミなどの微小物及び気泡が除去されており、それら塵やゴミなどの微小物及び気泡による擬似欠陥信号による歩留まりの悪化を防ぎ検査精度の向上を図っている。また、ここで使用される液としては、油だけでなく水も使用可能であるが、機械の発錆を考慮し本発明では油を使用している。次に上記検査の実施例について説明する。
【実施例】
【0020】
上記装置を使用し、球径17.5mmの球をドライブローラー,サポートローラー,コントロールローラーの回転により子午線状に回転させて垂直波法用超音波探触子により球表面に垂直に超音波を送信した。この送信した超音波が球表面,球内部に伝播して戻ってきた超音波を受信し、変換器で波形信号によって確認したところ、正常な部分については図3(イ)に示すような波形が認められたが、欠陥と判定された球を垂直波法用超音波探傷にて確認したところ、図3(ロ)に示すような欠陥と思われる信号が確認された。ここで表面エコー51は垂直波法用超音波にて球表面から反射した超音波で、底面エコー52は球の底から反射した超音波で、欠陥エコー53は球の内部の欠陥で反射された超音波である。そこで欠陥と思われる信号が確認された球を顕微鏡で球表面を確認したところ、球表面には欠陥が確認されなかった。そこで、球表面から数μmづつ削りながらその都度、顕微鏡にて確認した結果、深さ400μmの位置に図7のような300μmの酸化物系介在物の欠陥が確認された。
【0021】
また、表面波法用超音波探触子により検査対象球に超音波を送信し、検査対象球の球表面及び表面近傍内部を伝播し反射源により超音波が反射されて戻る超音波を受信し、戻った超音波を電気変換で波形信号によって確認したところ、正常な部分については図4(イ)に示すような波形が認められたが、欠陥と判定された球を表面波法超音波探傷にて確認したところ、図4(ロ)に示すような欠陥と思われる信号が確認された。ここで、表面エコー54は表面波法超音波にて球表面から反射した超音波で、欠陥エコー55は球の表面近傍の欠陥で反射された超音波である。そこで欠陥と思われる信号が確認された球を顕微鏡で球表面を確認したところ、表面には欠陥が確認されなかった。そこで、球表面から数μmづつ削りながらその都度、顕微鏡にて確認した結果、深さ400μmの位置に図8のような300μmの酸化物系介在物の欠陥が確認された。
【0022】
また、垂直波法用超音波探触子により球表面に垂直に超音波を送信した超音波が球表面,内部に伝播して戻って来た超音波を受信し、変換器で波形信号によって確認したところ、図5(イ)に示すような欠陥と思われる信号が確認された。ここで表面エコー56は垂直波法用超音波にて球表面から反射した超音波で、底面エコー57は球の底から反射した超音波で、欠陥エコー58は球の内部の欠陥で反射された超音波である。そこで欠陥と思われる信号が確認された球を表面波法用超音波探触子により検査対象球に超音波を送信し、検査対象球の球表面及び表面近傍内部を伝播し反射源により超音波が反射されて戻る超音波を受信し、戻った超音波を電気変換で波形信号によって確認したところ、図5(ロ)に示すような信号が確認され、欠陥と判定されなかった。ここで、表面エコー59は表面波法用超音波にて球表面から反射した超音波である。そこで、球表面から数μmづつ削りながらその都度、顕微鏡にて確認した結果、深さ50.4mmの位置内に図9のような400μmの金属異物の欠陥が確認された。
【0023】
また、表面波法用超音波探触子により検査対象球に超音波を送信し、検査対象球の球表面及び表面近傍内部を伝播し反射源により超音波が反射されて戻る超音波を受信し、戻った超音波を電気変換で波形信号によって確認したところ、図6(イ)に示すような欠陥と思われる信号が確認された。ここで、表面エコー60は表面波法超音波にて球表面から反射した超音波で、欠陥エコー61は球の表面の欠陥で反射された超音波である。そこで欠陥と思われる信号が確認された球を垂直波法用超音波探触子により検査対象球に垂直に超音波を送信し、検査対象球の球内部を伝播し反射源により超音波が反射されて戻る超音波を受信し、戻った超音波を電気変換で波形信号によって確認したところ、図6(ロ)に示すような信号が確認され、欠陥と判定されなかった。ここで表面エコー62は垂直波法超音波にて球表面から反射した超音波で、底面エコー63は球の底から反射した超音波である。
【0024】
そこで、図6(イ)に示すような欠陥と思われる信号が確認された球を顕微鏡で球表面を確認したところ、図10のような球表面に加工工程でついたと思われる大きさφ0.1mmの欠陥が確認された。また、図3(イ)の如く欠陥と思われる信号が見られなかった球についても同様に球表面の確認及び球表面から数μmづつ削りながらその都度、顕微鏡について確認したが欠陥は確認されなかった。従って以上の本発明の超音波探傷検査により球全表面及び球内部の自動検査が可能であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明を実施する検査装置の1態様を示す全体概要図である。
【図2】本発明検査装置における要部をなす検査部を示す概要図である。
【図3】垂直波法用超音波探触子により球表面に垂直に送信し、球表面球内部に伝播し、戻ってきた超音波を受信した際の波形信号であり、(イ)は正常な場合、(ロ)は欠陥のある場合を示す。
【図4】表面波法用超音波探触子により球に送信し、球表面及び表面近傍内部を伝播し戻ってきた超音波を受信した際の波形信号であり、(イ)は欠陥がない正常な場合、(ロ)は欠陥のある場合を示す。
【図5】垂直波法用超音波探触子により球表面に垂直に送信し、球表面,球内部に伝播して戻ってきた超音波を受信した際の波形信号であり、(イ)は欠陥のある場合、(ロ)は(イ)の欠陥球を表面波法用超音波探触子より送信し、球表面及び球表面近傍内部を伝播し、戻って来た超音波を受信した際の波形信号で、欠陥がない場合を示す。
【図6】表面波法用超音波探触子により球に超音波を送信し、球表面及び表面近傍内部を伝播し戻ってきた波形信号であり、(イ)は欠陥がある場合、(ロ)は(イ)の欠陥球を垂直波法用超音波探触子により送信し、内部を伝播し戻って来た超音波を受信した際の波形信号で、正常な場合である。
【図7】前記図3の欠陥部の顕微鏡写真である。
【図8】前記図4の欠陥部の顕微鏡写真である。
【図9】前記図5の欠陥部の顕微鏡写真である。
【図10】前記図6の欠陥部の顕微鏡写真である。
【図11】従来の光学検査方法を実施する装置の概要図である。
【符号の説明】
【0026】
31:検査対象球
32:ドライブローラー
33:サポートローラー
34: コントロールローラー
35:偏心ハスバギヤ
36:垂直波法用超音波探触子
37:表面波法用超音波探触子
38:判別ゲート
39:整流フィンガー
40:変換器
41:待機球
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液中で回転装置により検査対象球を子午線状に回転させて、該検査対象球の中心を向いた位置に配置された垂直波法用超音波探触子から検査対象球に超音波を送信し、検査対象球の内部を伝播し反射源により反射されて戻る超音波を受信し、戻った超音波を電気変換し、波形信号を得て該信号のレベルにより該検査対象球の表面から0.4mm以上の内部の欠陥の有無を判定することと同時に、該検査対象球の中心線から該検査対象球の球径の20〜23%オフセットした(外れた)位置に中心線が配置された表面波法用超音波探触子から検査対象球に超音波を送信し、検査対象球の球表面及び表面近傍内部を伝播し反射源により超音波が反射されて戻る超音波を受信し、戻った超音波を電気変換し、波形信号を得て該信号のレベルにより該検査対象球の表面から0.4mm以内の表面欠陥と内部欠陥の有無を判定することを同時に行なうことにより球体の全域を同時に高速に検査することを特徴とする超音波探傷方式球自動検査方法。
【請求項2】
検査に先立ち検査対象球を洗浄し、表面状態の清浄度を向上させる請求項1記載の超音波探傷方式球自動検査方法。
【請求項3】
検査完了後、自動で排出されて来た球を自動で良品と不良品に振り分け、所定の保管位置に保管すると共に、新規な検査対象球を検査部に自動で挿入する請求項1または2記載の超音波探傷方式球自動検査方法。
【請求項4】
液中に浸漬されたドライブローラー,サポートローラー及び偏心ハスバギヤを取り付けたコントロールローラーよりなり、コントロールローラーの回転により検査対象球にひねりを与え子午線状に回転させて保持する装置と、該装置により液中で支持された検査対象球の中心を向いて液中の所定の位置に配置された垂直波法用超音波探触子と、検査対象球の中心線からオフセット(外れた)位置の液中の所定の位置に配置された表面波法用超音波探触子から同時に送信した夫々の超音波が検査対象球の表面近傍及び内部で反射されて戻って来た超音波を夫々同時に受信し電気変換して夫々の信号を同時に処理する信号処理部と、前記超音波探触子を浸漬した液を浄化する液中浄化装置からなることを特徴とする超音波探傷方式球自動検査装置。
【請求項1】
液中で回転装置により検査対象球を子午線状に回転させて、該検査対象球の中心を向いた位置に配置された垂直波法用超音波探触子から検査対象球に超音波を送信し、検査対象球の内部を伝播し反射源により反射されて戻る超音波を受信し、戻った超音波を電気変換し、波形信号を得て該信号のレベルにより該検査対象球の表面から0.4mm以上の内部の欠陥の有無を判定することと同時に、該検査対象球の中心線から該検査対象球の球径の20〜23%オフセットした(外れた)位置に中心線が配置された表面波法用超音波探触子から検査対象球に超音波を送信し、検査対象球の球表面及び表面近傍内部を伝播し反射源により超音波が反射されて戻る超音波を受信し、戻った超音波を電気変換し、波形信号を得て該信号のレベルにより該検査対象球の表面から0.4mm以内の表面欠陥と内部欠陥の有無を判定することを同時に行なうことにより球体の全域を同時に高速に検査することを特徴とする超音波探傷方式球自動検査方法。
【請求項2】
検査に先立ち検査対象球を洗浄し、表面状態の清浄度を向上させる請求項1記載の超音波探傷方式球自動検査方法。
【請求項3】
検査完了後、自動で排出されて来た球を自動で良品と不良品に振り分け、所定の保管位置に保管すると共に、新規な検査対象球を検査部に自動で挿入する請求項1または2記載の超音波探傷方式球自動検査方法。
【請求項4】
液中に浸漬されたドライブローラー,サポートローラー及び偏心ハスバギヤを取り付けたコントロールローラーよりなり、コントロールローラーの回転により検査対象球にひねりを与え子午線状に回転させて保持する装置と、該装置により液中で支持された検査対象球の中心を向いて液中の所定の位置に配置された垂直波法用超音波探触子と、検査対象球の中心線からオフセット(外れた)位置の液中の所定の位置に配置された表面波法用超音波探触子から同時に送信した夫々の超音波が検査対象球の表面近傍及び内部で反射されて戻って来た超音波を夫々同時に受信し電気変換して夫々の信号を同時に処理する信号処理部と、前記超音波探触子を浸漬した液を浄化する液中浄化装置からなることを特徴とする超音波探傷方式球自動検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図11】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図11】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−127621(P2010−127621A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299051(P2008−299051)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(595151017)株式会社天辻鋼球製作所 (27)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(595151017)株式会社天辻鋼球製作所 (27)
【Fターム(参考)】
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