説明

車両の走行制御装置

【課題】走行時の走行用回転体温度の過上昇を好適に防止するための車両の走行制御装置を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係る車両の走行制御装置10は、走行用回転体の回転により走行する車両Cの走行時の走行用回転体温度の過上昇を防止するためのものであって、車両Cの運転状態の変化に基づき、当該運転状態の変化に起因して上昇する走行用回転体温度の収束値である第1の平衡温度T1を導出する平衡温度導出手段12と、導出された第1の平衡温度T1と予め記憶している第1の閾値とを比較し、第1の平衡温度T1が第1の閾値を超えたときに所定の信号を出力する比較手段14とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両走行時の常用ブレーキの発熱によるホイールや常用ブレーキの回転部等の走行用回転体の温度の過上昇を防止するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の常用ブレーキの安全性を向上するために、車両の走行時の常用ブレーキ(いわゆるフットブレーキ)の周辺温度が高温になったときに警報を発して運転者の注意を促す装置として、特許文献1に記載される装置が知られている。
【0003】
この装置は複数の温度センサーを備え、これらの温度センサーは車両の各常用ブレーキ機構のカバー部に固定されている。そして、前記装置は、前記各温度センサーで測定した当該温度センサーの検知部周辺の温度と、前記車両の速度計等から取得した車速と、前記温度センサーにより異常温度を検出した場合のその継続時間とに基づいて常用ブレーキにおける異常温度を検出し、警報を発する。
【特許文献1】特開平9―177849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、前記車両においては、走行条件によって常用ブレーキの作動による発熱によってホイール及びその周辺部位の温度が過上昇し、ベーパーロックやホイール周辺部位の破損といった問題が生じる場合があるため、常用ブレーキの異常温度だけでなく、走行時のホイール温度を測定して制御したいといった要請もあった。
【0005】
しかし、前記の装置では、各温度センサーは、前記装置の本体に対して検出した温度データの送信等を行わなければならないため、ホイールのようなタイヤと共に回転する部位に取付けることが困難であった。そのため、前記の装置では、前記車両走行時の前記ホイールの温度(ホイール温度)を測定することが難しく、ホイール温度の過上昇を好適に防止することが困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、走行時のホイール温度の過上昇を好適に防止するための車両の走行制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、上記課題を解消すべく、本発明に係る車両の走行制御装置は、走行用回転体の回転により走行する車両の走行時の走行用回転体温度の過上昇を防止するための車両の走行制御装置であって、前記車両の運転状態の変化に基づき、当該運転状態の変化に起因して上昇する走行用回転体温度の収束値である第1の平衡温度を導出する平衡温度導出手段と、前記導出された第1の平衡温度と予め記憶している第1の閾値とを比較し、前記第1の平衡温度が前記第1の閾値を超えたときに所定の信号を出力する比較手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、前記走行用回転体温度を直接測定することなく前記運転状態の変化から前記第1の平衡温度が導出され、この第1の平衡温度が前記第1の閾値を超えるか否かによって前記走行用回転体温度が過上昇するか否かが判断される。この判断に基づき、前記所定の信号が出力されることで、現在の走行状態を続けると前記走行用回転体温度が上昇し過ぎる、即ち、過上昇となるのか否かが分かる。そのため、過上昇となると判断した場合には、事前に運転手等が補助ブレーキを作動させることで、前記走行用回転体温度の過上昇が未然に防止される。尚、本発明において、走行用回転体とは、ホイールやドラムブレーキのドラム、ディスクブレーキのディスク等、車両走行時に回転する部位のことをいう。
【0009】
詳細には、前記走行用回転体温度は、前記運転状態の変化から、当該運転状態の変化によって常用ブレーキで生じてホイールに伝わる熱と前記ホイール及びその周辺から大気に放熱される熱とが平衡状態となったときの温度である前記第1の平衡温度が導出される。そして、前記走行用回転体温度が過上昇と判断される温度値として予め記憶している前記第1の閾値と前記第1の平衡温度とが比較される。このように比較され、前記第1の平衡温度が前記第1の閾値を超えた場合には、前記車両が現在の走行状態を続けると前記走行用回転体温度が過上昇すると判断される。
【0010】
本発明に係る車両の走行制御装置においては、前記比較手段から出力される所定の信号に基づいて、運転手に補助ブレーキの使用を促す警報を発し、又は補助ブレーキを作動させる走行用回転体温度上昇抑制手段をさらに備える構成が好ましい。
【0011】
かかる構成によれば、前記比較手段から前記所定の信号が出力されたときに、前記警報が発せられた運転手によって、又は前記走行用回転体温度上昇抑制手段によって補助ブレーキが作動されるため、車速が減速されて前記常用ブレーキの作動頻度が減少し前記走行用回転体温度の過上昇が好適に防止される。
【0012】
また、前記運転状態には、パラメータとして車速と常用ブレーキの作動の有無とが含まれ、前記平衡温度導出手段は、前記常用ブレーキの作動前及び作動後の車速に基づいて前記第1の平衡温度を導出するように構成されてもよい。
【0013】
かかる構成によれば、前記常用ブレーキの作動の前後における前記車速の変化から前記車両の運動エネルギーの変化が導出される。この変化した運動エネルギーが前記常用ブレーキで生じる熱量と擬制されることで前記第1の平衡温度の導出が容易になる。
【0014】
また、前記車速や前記常用ブレーキの作動の有無は、通常、車両に備わっている車速度計に使用する車速信号やブレーキランプ点灯用のブレーキ作動信号等から取得できる。そのため、センサー等を新たに車両に設けることなく既存の信号により前記運転状態の変化の取得が可能となる。
【0015】
また、前記運転状態には、パラメータとして車速と常用ブレーキのブレーキ圧力とが含まれ、前記平衡温度導出手段は、前記常用ブレーキの作動前の車速と、前記常用ブレーキの作動中の前記ブレーキ圧力とに基づいて前記第1の平衡温度を導出するように構成されてもよい。
【0016】
かかる構成によれば、前記ブレーキ圧力を検出するためのセンサーが必要となるが、前記常用ブレーキで生じる熱量の導出がより正確になる。そのため、前記導出される第1の平衡温度がより正確になり、前記走行用回転体温度の過上昇をより確実に防止できる。
【0017】
また、降坂時において、車速が一定となるように前記常用ブレーキを作動させたときのように、前記常用ブレーキの作動前と作動後との速度差がない場合でも、正確な前記第1の平衡温度の導出が可能となる。
【0018】
また、前記平衡温度導出手段は、連続する単位時間毎に前記運転状態の変化を積算し、この積算した運転状態の変化に基づいて前記第1の平衡温度を導出するように構成されることが好ましい。
【0019】
かかる構成によれば、より詳細な運転状態の変化が取得され、より正確な前記第1の平衡温度の導出が可能となる。そのため、前記走行用回転体温度の過上昇がより確実に防止される。
【0020】
また、前記運転状態には、パラメータとして前記常用ブレーキの発熱量と補助ブレーキでの発熱量とが含まれ、前記平衡温度導出手段は、前記常用ブレーキの発熱量として前記車両が前記常用ブレーキ及び前記補助ブレーキの作動によって失うエネルギー量から前記補助ブレーキでの発熱量を除いたものを用いて前記第1の平衡温度を導出するように構成されてもよい。
【0021】
かかる構成によれば、車両の走行中に補助ブレーキが作動している場合でも正確に前記第1の平衡温度の導出が可能となり、前記走行用回転体温度の過上昇がより確実に防止される。
【0022】
また、前記運転状態には、パラメータとして車両の降坂時における前記常用ブレーキの発熱量、作動時間及び解放時間が含まれ、前記平衡温度導出手段は、前記作動時間と前記解放時間との和に対する前記作動時間の比率である前記常用ブレーキの作動時間比率によって補正された前記降坂時における前記常用ブレーキの発熱量に基づいて前記第1の平衡温度を導出するように構成されてもよい。
【0023】
かかる構成によれば、降坂時において前記常用ブレーキが作動したときのように、前記車両の運動エネルギー及び位置エネルギーの両方が前記常用ブレーキで熱に変換されるような場合でも、正確な前記第1の平衡温度の導出が可能となる。そのため、前記走行用回転体温度の過上昇がより確実に防止される。
【0024】
また、前記運転状態には、パラメータとして大気温度が含まれ、前記平衡温度導出手段では、常用ブレーキにおいて大気温度からの上昇温度を導出することで前記第1の平衡温度が導出されるように構成されてもよい。
【0025】
かかる構成によれば、より正確な前記第1の平衡温度が導出され、前記走行用回転体温度の過上昇がより確実に防止される。
【0026】
また、前記比較手段は、前記第1の平衡温度を導出するときに前記運転状態の変化を評価した第1の評価時間よりも短い第2の評価時間に対応し、前記第1の閾値よりも大きな第2の閾値を記憶しており、前記第1の平衡温度と前記第1の閾値とを比較したときに前記第1の平衡温度が前記第1の閾値を超えないときに、さらに、前記平衡温度導出手段によって前記第2の評価時間内での運転状態の変化から導出された第2の平衡温度と前記第2の閾値とを比較し、前記第2の平衡温度が前記第2の閾値を超えたときに所定の信号を出力するように構成されてもよい。
【0027】
かかる構成によれば、急勾配を降坂するときのように常用ブレーキを強くかけて走行用回転体温度が急上昇するような場合でも、前記第2の平衡温度が導出されて第2の閾値と比較されることで、好適な走行制御が行われる。
【0028】
即ち、第1の評価時間での運転状態の変化に基づいて第1の平衡温度が導出される場合、短時間の急激な運転状態の変化が生じても、評価時間が長いことから(例えば、数十分)第1の平衡温度に反映され難い。そのため、前記走行用回転体温度上昇抑制手段からの警報等が遅れる可能性がある。
【0029】
しかし、前記第2の評価時間では、前記第1の評価時間よりも短いため(例えば、数分)、前記短時間の急激な運転状態の変化が前記第2の平衡温度に反映され易い。そのため、前記第2の評価時間に対応して予め設定された前記第2の閾値と比較することで、短時間で的確に走行用回転体温度が過上昇するか否かの判断が可能となり、前記警報等の遅れを防止できる。
【発明の効果】
【0030】
以上より、本発明によれば、上記問題点に鑑み、走行時の走行用回転体温度の過上昇を好適に防止するための車両の走行制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0032】
図1に示される本実施形態に係る車両の走行制御装置(以下、単に「制御装置」とも称する。)10は、走行時の車両Cにおけるホイール等の温度の過上昇を防止するための装置であり、平衡温度導出手段12と、比較手段14と、警報装置(走行用回転体温度上昇抑制手段)16とを備える。本実施形態において、この制御装置10は、例えば、クレーン車のような常用ブレーキ(いわゆるフットブレーキ)以外にリターダブレーキや排気ブレーキ等の補助ブレーキSBを備える車両Cに搭載される。そして、制御装置10には、車両Cに備わっている速度検出器Sm、ブレーキ作動検出器BL及び補助ブレーキSBが接続されている。尚、本実施形態においては、補助ブレーキSBとしてリターダブレーキが用いられる。
【0033】
平衡温度導出手段12は、車両Cの運転状態の変化に基づき、車両Cのホイールの温度(ホイール温度)の平衡温度Tを導出するためのものである。平衡温度Tは、前記運転状態の変化に起因して上昇するホイール温度が収束する温度値である。詳細には、車両Cの運転状態の変化によって常用ブレーキで生じてホイールに伝わる熱と、ホイール及びその周辺から大気に放熱される熱とが平衡状態になったときの温度である。尚、制御装置10において、前記の平衡温度Tは、より詳細には、ホイールやドラムブレーキのドラム、ディスクブレーキのディスクのような車両Cの走行時にタイヤと共に回転する走行用回転体の温度が収束する温度値であるが、本実施形態においては、ホイール温度を用いて説明する。
【0034】
また、平衡温度導出手段12には、速度検出器Sm、ブレーキ作動検出器BL及び補助ブレーキSBが接続されている。平衡温度導出手段12は、前記運転状態のパラメータとして、速度検出器Smからは車速、ブレーキ作動検出器BLからは常用ブレーキのオン・オフ(作動・解除状態)、補助ブレーキSBからは当該補助ブレーキSBのオン・オフ等の情報を取得する。
【0035】
比較手段14は、平衡温度導出手段12で導出された平衡温度Tと予め記憶している閾値とを比較し、平衡温度Tが閾値を超えたときに所定の信号(警報信号)を出力するものである。本実施形態において、比較手段14には複数の閾値が記憶されている。この閾値は、当該制御装置10が搭載される車両毎に異なる値であり、走行試験によって決定される。
【0036】
警報装置16は、スピーカ16aが接続され、比較手段14から出力される警報信号に基づいて、車両Cの運転手に補助ブレーキSBの使用を促す警報(本実形態ではアラーム音)を発するものである。尚、本実施形態において、警報装置16は、前記警報信号に基づいてアラーム音を鳴らすように構成されているが、これに限定されず、ランプや各種表示、又はブザーによる警報としたり、直接、補助ブレーキSBを作動させるように構成されてもよい。このように構成されることで、比較手段14から前記警報信号が出力されると、補助ブレーキSBが強制的に作動して車両Cが減速される。そのため、常用ブレーキの作動頻度が減少し、ホイール温度の過上昇が確実に防止される。
【0037】
以上のように構成される制御装置10では、前記運転状態の変化から平衡温度Tを導出し、この平衡温度が所定の閾値を超えるか否かを判断することで、直接測定することなくホイール温度が過上昇するか否かを判断することが可能となる。
【0038】
次に、この平衡温度を導出するために平衡温度導出手段12で用いられている数式について具体的に説明する。尚、以下の説明中の式に用いられる記号、及びこの記号の添え字については、以下のように定義する。
(1)記号
qは単位時間当たりに車体が失う運動エネルギー(W)、qhstは単位時間当たりの補助ブレーキSBの発熱量(W)、hAは常用ブレーキ周りにおける熱伝達率×放熱面積の合計(W/K)、mは質量(kg)、Cは比熱(J/kgK)、Tは平衡温度(K又は℃)、tは時間(sec)、Vは車速(m/s)である。
(2)添え字
aは大気条件、bは常用ブレーキ部、iは温度管理項目、vは車両全体、nは時間段階(サンプリング時間の段階)、testは試験走行、maxは許容上限値、Δtは平均化するための時間(平均化時間)である。
【0039】
1.平衡温度を導出するための基本式について
平衡温度Tは、ホイールにおいて、常用ブレーキから伝わる熱とホイール及びその周辺部位から大気に放熱される熱とが平衡状態になったときの温度であり、以下の式(1)によって導出される。
【0040】
【数1】

【0041】
この式(1)は、以下の常用ブレーキにおける非定常エネルギー保存式(式(2))から導出することができる。
【数2】

この式(2)を変数分離して一般解を求めると、
【数3】

となる。この一般解(式(3))において、t→∞として定常解(温度の最大値)を求めることで、前記の式(1)を求めることができる。
【0042】
この式(1)におけるqは、単位時間当たりに車両Cが常用ブレーキによって失う運動エネルギーであり、以下の式(4)によって導出される。
【0043】
【数4】

【0044】
この式(4)は、単位時間当たりの常用ブレーキによる車速の減速に基づいて車両Cが失った運動エネルギーを導出し、連続する単位時間毎の前記運動エネルギーの減少量を積算するものである。
【0045】
ここで、式(4)の両辺を車両質量mで除することで、式(4)を車両Cの車両質量mに依らないパラメータ(式(5))とすることができる。
【0046】
【数5】

【0047】
このようにして求められた式(1)及び式(4)が平衡温度Tを導出するための基本式であり、式(1)に式(4)で求められたqが代入されることで、平衡温度Tが導出される。このように、式(1)及び式(4)において車両Cの失った運動エネルギーqを常用ブレーキでの発熱量と擬制することで、車速の変化のみから平衡温度Tの導出が可能となる。尚、式(4)には、車両Cの走行状態によって種々の補正が加えられる。この補正が加えられることで、より正確な平衡温度Tの導出が可能となる。
【0048】
ここで、大気温(T)及びΔtが与えられれば、hA及びqhstが定数であることから、常用ブレーキの作動による車両Cの車速の変化のみに基づいて平衡温度Tの導出が可能となる。このとき、車速や常用ブレーキの作動の有無は、通常、車両Cに備わっている車速度検出器やブレーキ作動検出器等から取得できるため、センサー等を新たに車両Cに設けることなく運転状態の変化の取得がなされ、平衡温度Tの導出が可能となる。
【0049】
尚、式(1)においては、右辺に大気温である変数Tが含まれているが、本実施形態においては、以下の式(1−a)のように定数Tが用いられる。
【数6】

前記の式(1)ようにパラメータとして大気温が含まれることで、より正確な平衡温度Tの導出が可能となる。しかし、例えば、35℃のような一定の値を用いても、実際に制御装置10を車両Cに搭載して走行するときに実用上問題となるような警報の誤作動等が生じないため、本実施形態においては式(1−a)のように定数Tが用いられる。
【0050】
2.走行試験による未知の定数(hA、qhst)の決定方法
式(1−a)における未知の定数(hA、qhst)は、車両毎に値が異なる定数であるため、以下の走行試験によって求められる。
【0051】
走行試験パターンとしては、単純に一定速度Vtestまでの加速と完全停止とを所定の時間間隔Δttest毎に繰り返す方法が用いられる。VtestとΔttestとには、以下の式(6)を満たす任意の組み合わせから、試験可能な制限の下で自由に選ぶことができる。
【0052】
【数7】

【0053】
この走行試験では、i)補助ブレーキSBが解除された状態、ii)補助ブレーキSBが作動した状態の2回の走行試験が必要となる。本実施形態においては、補助ブレーキSBの強度が1段階であるため2回の走行試験で未知の定数(hA、qhst)を得ることができる。そして、補助ブレーキSBの強度がN段階ある場合(Nは1以上の自然数)には、N+1回の走行試験によって未知の各定数を得ることができる。
【0054】
例えば、ホイールのある位置の温度に注目して前記2回の走行試験による温度時刻歴をプロットすると図2のようなグラフが得られる。図2におけるi)の定常値からhAが求まり、図2におけるii)の定常値からqhstが求まる。ここで重要なのは定常値であるため、図2のように2回の走行試験全てをホイール温度が低い状態から始める必要はない。図3に示されるように、低温→ii)→i)の順に走行試験が順次行われることで効率よく走行試験が行われ、未知数が導出される。
【0055】
尚、このようにして決定されたqhstは、前記のように補助ブレーキSBの発熱量であり、このqhstが式(3)にパラメータとして含まれることで、車両Cの走行中に補助ブレーキSBが作動している場合でも、正確に平衡温度Tの導出が可能となる。
【0056】
3.パラメータとホイール温度との関係
次に、パラメータとして式(5)がどれほどホイールにおける温度を管理したい位置(管理位置)での温度を表現することができるのかについて、実際の走行試験データをもとに比較を行った。このとき、式(5)は、坂道を登ることによる減速(車速の変化)の影響を除外するために、以下の式(7)のように補正される。
【数8】

ここで、常用ブレーキの作動時:η=1、常用ブレーキの解除時:η=0とする。
【0057】
この式(7)において、平均化時間Δtを適切な時間(前記走行試験データにおいては30分〜45分が適切であった)を選ぶことで、実際の試験走行時の温度時刻履歴がプロットされたグラフと式(7)のグラフとはよく似た形状となる、即ち、一致した傾向を示す。従って、式(7)に車両質量mを乗じ、適切な定数hAで除することで、ホイール温度の平衡温度Tを適切に予測することが可能となる。
【0058】
前記の適切な平均化時間Δtは、平衡温度Tの導出するときに運転状態の変化を評価するために必要な時間(評価時間)である。本実施形態においては、第1の評価時間として30分が設定されている。
【0059】
4.降坂時のブレーキ引きずりに関する補正
例えば、車両Cが図4に示されるような長い下り坂を走行するとき(降坂時)に、走行時間に対する常用ブレーキの作動時間の割合が大きくなる。このとき、常用ブレーキの作動している時間内に減少した車両Cの位置エネルギーも常用ブレーキにおいて熱に変換されているが、この熱は式(7)においては考慮されていない。
【0060】
そこで、前記熱が考慮されるように式(7)が以下のように補正される。まず、坂の勾配を平均化時間Δtにおける平均勾配と同じであると仮定する。車両Cが加速時も減速時も等加速度運動するとした場合、平均速度が同じとなり、常用ブレーキの解除時に失った位置エネルギーと常用ブレーキの作動時に失った位置エネルギーの比が常用ブレーキの解除時と常用ブレーキの作動時との時間の比と同じになる。
【0061】
式(7)で示される位置エネルギーから運動エネルギーに変化したものは、常用ブレーキの解除時に失った位置エネルギーのみである。他方、常用ブレーキに吸収されて熱に変わるエネルギーは、常用ブレーキの解除時に失った位置エネルギーと常用ブレーキの作動時に失った位置エネルギーの和である。従って、近似的には式(7)により求めた運動エネルギーを(ΔtOFF+ΔtON)/ΔtOFF倍すればよいことになる。
【0062】
従って、式(7)が以下の式(8)のように補正される。
【数9】

ここで、ζ10は車両Cの車速が10km/h以上ではζ10=1、それ以外ではζ10=0になる速度条件判別子であり、
【数10】

【数11】

である。
【0063】
この場合、式(8)における式(7)に加えられた補正項でのゼロ割を避け、非常に車速が遅く余り精度のない状況での評価を避けるために、平均化時間の90%以上に渡って常用ブレーキが作動した場合、つまり、
【数12】

の場合には、制御装置10においてホイール温度が過上昇するか否かの判断動作が停止する。
【0064】
このように式(7)が式(8)のように補正されることで、降坂時の常用ブレーキの作動のように、車両Cの運動エネルギー及び位置エネルギーの両方が常用ブレーキで熱に変換されるような場合でも、正確な平衡温度Tの導出が可能となる。
【0065】
尚、パラメータとして車速と常用ブレーキの作動時間とが含まれた式(8)に代えて、パラメータとして車速と常用ブレーキのブレーキ圧力とを含む以下の式(8−a)が用いられてもよい。
【0066】
【数13】

【0067】
この式(8−a)を用いて平衡温度Tを導出するためには、ブレーキ圧力pを検出するためにセンサー等が必要となる。しかし、このブレーキ圧力pを考慮した式(8−a)が用いられることで、常用ブレーキで生じる熱量の導出がより正確になる。そのため、導出される平衡温度Tがより正確になる。この式(8−a)は、ブレーキ圧力pと車両Cの加速度aとが比例することを用いて、式(8)から導出された式である。尚、Δτは、常用ブレーキの操作に要する数秒間を数十分割した0.1秒のオーダーの時間刻みであり、kは、常用ブレーキの摩擦係数に依存する定数である。
【0068】
以上のような式(1)と、式(4)に種々の補正が行われた式(8)とが用いられることで、平衡温度導出手段12において、車速の変化のみから走行用回転体温度の平衡温度Tの導出が可能になる。
【0069】
また、降坂時に車速が一定となるよう常用ブレーキを作動させたときのように、常用ブレーキの作動前と作動後との速度差がないような場合でも、正確な平衡温度の導出が可能となる。
【0070】
次に、比較手段14が記憶している閾値について説明する。
【0071】
この閾値は、比較手段14において平衡温度導出手段12で導出された平衡温度Tと比較される値である。本実施形態においては、複数の閾値(第1乃至第4の閾値)が予め比較手段14に記憶されている。
【0072】
具体的には、第1の閾値は、前記第1の評価時間(30分)における運転状態の変化から導出された平衡温度(第1の平衡温度)T1と対比される値である。
【0073】
この第1の閾値は、車両Cにおける種々の走行試験から得られたホイール及びその周辺部位の温度に基づいて設定される値である。詳細には、第1の閾値は、車両Cにおいてホイール周辺部位の許容温度よりも低く設定された値である。第1の閾値がこのような値に設定されることで、第1の平衡温度T1がこの第1の閾値を超えるか否かを判断するだけで、ホイール温度が過上昇するか否かが判断できる。
【0074】
第2乃至第4の閾値は、第1の評価時間よりも短い評価時間における運転状態の変化から導出された平衡温度と対比される値であり、第1の閾値よりも大きな値である。これら第2乃至第4の閾値は、以下のように決定された値である。
【0075】
車両Cが短時間で急勾配を降坂する際には、車両Cを減速させるためには常用ブレーキを強くかけなければならない。この場合、ホイール温度が急上昇する。第1の平衡温度T1が導出される場合、前記のような短時間の急激な運転状態の変化が生じても、評価時間が長い(本実施形態においては30分)ことから第1の平衡温度T1に反映され難い。そのため、比較手段14において前記平衡温度T1が第1の閾値をすぐには超えず、警報装置16からのアラームが遅れる可能性がある。
【0076】
そこで、第1の評価時間よりも短い評価時間を設定し、この評価時間における運転状態の変化から平衡温度を導出し、この平衡温度に基づいてホイール温度の過上昇を判断する。具体的には、本実施形態の場合、評価時間として、第2乃至第4の評価時間が設定される。第2の評価時間は2分、第3の評価時間は3分、第4の評価時間は4分である。これら短い評価時間内だけであれば、急激なホイール温度の急上昇があっても許容されることから、これら評価時間に対応した閾値として第1の閾値よりも大きな第2乃至第4の閾値が設定される。
【0077】
これら閾値は、第1の閾値同様、車両毎に異なる値となるため、制御装置10が搭載される車両C毎に走行試験を繰り返して設定される。例えば、第1の評価時間(30分)に対応する第1の閾値が100℃の場合に、第2の評価時間(2分)に対応する第2の閾値として400℃、第3の評価時間(3分)に対応する第3の閾値として300℃、第4の評価時間(4分)に対応する第4の閾値として200℃のように設定される。
【0078】
以上のように第2乃至第4の評価時間が第1の評価時間よりも短いため、前記短時間の急激な運転状態の変化があっても、第2乃至第4の平衡温度T2乃至T4に反映され易い。そのため、第2乃至第4の評価時間に対応して予め設定された第2乃至第4の閾値と比較することで、短時間で的確にホイール温度が過上昇するか否かの判断が可能となり、前記の警報等の遅れ等を防止することができる。
【0079】
尚、本実施形態においては、第1の評価時間以外に第2乃至第4の3つの評価時間が設定され、第1の閾値以外に前記3つの評価時間に対応する3つの閾値が設定されているが、この数に限定される必要はない。即ち、第1の評価時間よりも短い評価時間が設定され、この評価時間に対応する第1の閾値よりも大きな閾値が設定されれば、1つの組(評価時間とこの評価時間に対応する閾値)でもよく、2以上の前記組が設定されてもよい。
【0080】
次に、警報装置16のスピーカ16aから発せられるアラームについて説明する。
【0081】
警報装置16は、比較手段14において平衡温度Tが閾値を超えたときに出力される警報信号を取得すると、接続されたスピーカ16aからアラームを鳴らす。
【0082】
このとき、比較手段14での比較結果によって、アラームの鳴り方が異なる。即ち、補助ブレーキSBが作動しているか否か、第1乃至第4の平衡温度T1乃至T4のいずれの平衡温度が閾値を超えたかによってアラームの鳴り方が異なる。
【0083】
例えば、比較手段14において、第1の平衡温度T1と第1の閾値とが比較され、車両Cの失った運動エネルギーがqのとき、T1=T+(q/hA)>第1の閾値の場合には、補助ブレーキSBの使用を促すアラームが鳴る。また、T1=T+(q−qhst)/hA>第1の閾値の場合には、さらに強力なブレーキ力が生じるような補助ブレーキSBの操作を促すアラームが鳴る。さらに、警報装置16は、T2>第2の閾値、T3>第3の閾値、T4>第4の閾値でそれぞれ異なるアラームが鳴るように構成されている。
【0084】
このようなアラームの種類によって、運転手が補助ブレーキSBのオン・オフ操作や補助ブレーキSBのブレーキ力の段階の設定等を行うことで好適に車両が減速される。その結果、常用ブレーキの作動頻度が減少してホイール温度の過上昇が防止される。
【0085】
運転手が補助ブレーキを作動させて車両Cの車速が落ちた後は、運転手によって手動でアラームが解除されるように警報装置16は構成されてもよい。しかし、これに限定されず、各評価時間での平衡温度が対応する閾値よりも全て小さくなったときに、自動的にアラームが鳴り止むように警報装置16は構成されてもよい。
【0086】
次に、この制御装置10の動作について図5も参照しつつ説明する。
【0087】
制御装置10が搭載された車両Cが走行を開始する。そして、制御装置10の平衡温度導出手段12が車両Cの運転状態の変化を取得する(ステップ01)。具体的には、本実施形態においては、平衡温度導出手段12は、速度検出器Sm及びブレーキ作動検出器BLから車速と常用ブレーキの作動の有無とを取得する。
【0088】
このように平衡温度導出手段で取得された運転状態のうち、車速の変化に関する情報が抽出される(ステップ02)。この車速の変化から式(4)を用いて単位時間当たりの車両Cの運動エネルギーの変化が導出される(ステップ03)。具体的には、常用ブレーキの作動により減速したときの当該常用ブレーキの作動前後における車速に基づき、単位時間当たりに減少した車両Cの運動エネルギーqが導出される。尚、本実施形態において、単位時間は1分である。
【0089】
このようにして求められた常用ブレーキの作動により減少した単位時間当たりの運動エネルギーqが所定の評価時間(第1の評価時間)だけ積算される(ステップ04)。本実施形態において、第1の評価時間は30分である。この30分は、常に現在から30分前までの時間である。即ち、単位時間(1分)に減少した運動エネルギーについての情報が新たに取得されると、既に積算されている30個の前記情報のうち最も古い情報が廃棄される。
【0090】
一方、平衡温度導出手段12で取得された運転状態のうち、車速、常用ブレーキの作動・解除及び時間に関する情報から、降坂時の常用ブレーキの引きずりに関する補正のための事項が抽出される。具体的には、車速が10km/h以上のときの時間が積算される(ステップ05及びステップ06)。さらに、車速が10km/h且つ常用ブレーキが解除状態の時間が積算される(ステップ07及びステップ08)。これらの積算値から、式(8)における常用ブレーキの引きずり補正に関する項が導出される(ステップ09)。
【0091】
前記ステップ04において導出された、第1の評価時間における車両Cから減少した運動エネルギーに前記ステップ09で導出された補正項を付加することで、式(8)の補正された減少した運動エネルギーqが導出される(ステップ10)。この値を式(1)に代入することで、第1の評価時間における第1の平衡温度T1が導出される(ステップ11)。
【0092】
このようにして平衡温度導出手段12で導出された第1の平衡温度T1は、比較手段14に送られる。比較手段14では、第1の平衡温度T1と予め記憶している第1の閾値とを比較し(ステップ12)、第1の平衡温度T1が第1の閾値を超えている場合は、警報装置16に警報信号を出力する。この警報信号を取得した警報装置16は、スピーカ16aから運転手に対して、補助ブレーキSBを促すアラームを鳴らす(ステップ13)。
【0093】
このアラームによって、運転手が補助ブレーキSBを作動させることで、車両Cが減速され、常用ブレーキの作動頻度が減少し、ホイール温度の過上昇が未然に防止される。
【0094】
一方、第1の平衡温度T1が第1の閾値を超えていない場合は、平衡温度導出手段12において、直近の第2乃至第4の評価時間における前記ステップ03で求めた単位時間当たりに減少した運動エネルギーの積算を行う(S14)。具体的には、第2の評価時間は、2分であり、直近2分の単位時間当たりに減少した運動エネルギーの積算が行われる。同様に、第3の評価時間が3分、第4の評価時間が4分である場合の積算がそれぞれ行われる。尚、これら第2乃至第4の評価時間における積算も、新たな単位時間当たりの運動エネルギーの情報が取得されると、最も古い単位時間当たりの運動エネルギーの情報が廃棄される。尚、本実施形態では、第1の平衡温度T1と第2以降の平衡温度T2〜において単位時間を1分としているが、状況によっては、各々の評価時間に合わせて単位時間を長くしたり、短くしたりしてもよい。
【0095】
このようにして導出された第2乃至第4の各評価時間における減少した運動エネルギーにそれぞれ前記ステップ09で導出された補正項が付加され、式(1)にそれぞれ代入される。そうすると、各評価時間における平衡温度T2乃至T4がそれぞれ導出される(ステップ15)。このようにして導出された第2乃至第4の平衡温度T2乃至T4がそれぞれ比較手段14に送られる。比較手段14では、第2の閾値と第2の平衡温度、第3の閾値と第3の平衡温度T3、第4の閾値と第4の平衡温度T4がそれぞれ比較され(ステップ16)、いずれか1つでも平衡温度が閾値を超える場合は、警報装置16に警報信号が出力される。そして、前記同様、この信号を取得した警報装置16は、運転手に対して補助ブレーキSBを促すアラームを鳴らす。
【0096】
このように、第1の評価時間よりも短い評価時間における平衡温度と、前記短い評価時間に対応する閾値とが比較されてアラームが鳴ることで、車両Cが急勾配を降坂するときのように常用ブレーキを強くかけてホイールの温度が急上昇するような場合でも、ホイール温度が過上昇するか否かの正確な判断が可能となり、好適な走行制御がなされる。
【0097】
以上のような制御装置10は、前記のように平衡温度Tが走行用回転体の温度が収束する収束値であるため、ホイールだけでなく、ドラムブレーキのドラムやディスクブレーキのディスク等を含む車両走行時にタイヤと共に回転する走行用回転体の温度(走行用回転体温度)の過上昇の防止に用いられる。
【0098】
尚、本発明の制御装置10は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0099】
例えば、本実施形態においては、車両Cに補助ブレーキSBとして1つのリターダブレーキが備えられているが、これに限定されず、複数の補助ブレーキSBが備えられてもよい。このような車両Cを制御する場合、平衡温度導出手段12で行われる演算において、式(1)、式(1−a)、式(2)及び式(3)における(q−qhst)を(q−qetc)と変形すればよい。このqetcは、複数の補助ブレーキSBにおける総発熱量(W)である。このように、常用ブレーキの発熱量として車両Cが常用ブレーキ及び補助ブレーキSBの作動によって失う運動エネルギーから複数の補助ブレーキSBでの総発熱量を除いたものを用いて平衡温度が導出されるように構成されてもよい。従って、補助ブレーキSBが複数備えられていても、各補助ブレーキSBの発熱量が前記の走行試験等によって与えられていれば、正確なホイール温度の平衡温度の導出が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本実施形態に係る車両の走行制御装置のブロック図である。
【図2】同実施形態に係る車両の走行制御装置に用いられる数式の未知定数を決定するための走行試験時の温度時刻歴のグラフである。
【図3】同実施形態に係る車両の走行制御装置に用いられる数式の未知定数を決定するための走行試験時の温度時刻歴のグラフである。
【図4】同実施形態に係る車両の走行制御装置に用いられる数式のブレーキ引きずり補正の項の説明のための図である。
【図5】同実施形態に係る車両の走行制御装置での制御例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0101】
C 車両
T 平衡温度
T1 第1の平衡温度
10 車両の走行制御装置
12 平衡温度導出手段
14 比較手段
16 警報装置(走行用回転体温度上昇抑制手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用回転体の回転により走行する車両の走行時の走行用回転体温度の過上昇を防止するための車両の走行制御装置であって、
前記車両の運転状態の変化に基づき、当該運転状態の変化に起因して上昇する走行用回転体温度の収束値である第1の平衡温度を導出する平衡温度導出手段と、
前記導出された第1の平衡温度と予め記憶している第1の閾値とを比較し、前記第1の平衡温度が前記第1の閾値を超えたときに所定の信号を出力する比較手段とを備えることを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の走行制御装置において、
前記比較手段から出力される所定の信号に基づいて、運転手に補助ブレーキの使用を促す警報を発し、又は補助ブレーキを作動させる走行用回転体温度上昇抑制手段をさらに備えることを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両の走行制御装置において、
前記運転状態には、パラメータとして車速と常用ブレーキの作動の有無とが含まれ、
前記平衡温度導出手段は、前記常用ブレーキの作動前及び作動後の車速に基づいて前記第1の平衡温度を導出するように構成されることを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の車両の走行制御装置において、
前記運転状態には、パラメータとして車速と常用ブレーキのブレーキ圧力とが含まれ、
前記平衡温度導出手段は、前記常用ブレーキの作動前の車速と、前記常用ブレーキの作動中の前記ブレーキ圧力とに基づいて前記第1の平衡温度を導出するように構成されることを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車両の走行制御装置において、
前記平衡温度導出手段は、連続する単位時間毎に前記運転状態の変化を積算し、この積算した運転状態の変化に基づいて前記第1の平衡温度を導出するように構成されることを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両の走行制御装置において、
前記運転状態には、パラメータとして前記常用ブレーキの発熱量と補助ブレーキでの発熱量とが含まれ、
前記平衡温度導出手段は、前記常用ブレーキの発熱量として前記車両が前記常用ブレーキ及び前記補助ブレーキの作動によって失うエネルギー量から前記補助ブレーキでの発熱量を除いたものを用いて前記第1の平衡温度を導出することを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の車両の制御装置において、
前記運転状態には、パラメータとして車両の降坂時における前記常用ブレーキの発熱量、作動時間及び解放時間が含まれ、
前記平衡温度導出手段は、前記作動時間と前記解放時間との和に対する前記作動時間の比率である前記常用ブレーキの作動時間比率によって補正された前記降坂時における前記常用ブレーキの発熱量に基づいて前記第1の平衡温度を導出することを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の車両の走行制御装置において、
前記運転状態には、パラメータとして大気温度が含まれ、
前記平衡温度導出手段は、常用ブレーキにおいて大気温度からの上昇温度を導出することで前記第1の平衡温度を導出することを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の車両の走行制御装置において、
前記比較手段は、前記第1の平衡温度を導出するときに前記運転状態の変化を評価した第1の評価時間よりも短い第2の評価時間に対応し、前記第1の閾値よりも大きな第2の閾値を記憶しており、前記第1の平衡温度と前記第1の閾値とを比較したときに前記第1の平衡温度が前記第1の閾値を超えないときに、さらに、前記平衡温度導出手段によって前記第2の評価時間内での運転状態の変化から導出された第2の平衡温度と前記第2の閾値とを比較し、前記第2の平衡温度が前記第2の閾値を超えたときに所定の信号を出力するように構成されることを特徴とする車両の走行制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−274519(P2009−274519A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126206(P2008−126206)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【出願人】(304020362)コベルコクレーン株式会社 (296)
【Fターム(参考)】