説明

車両用アウタミラー装置

【課題】支持部材を支持する支持剛性を確保しつつ、車体外板に対する支持部材の位置を調整することなく支持部材と車体外板との間の隙間を抑制する。
【解決手段】車両用ドアミラー装置10では、ドアミラーステー12がドアアウタパネル32に直接組付けられるため、ドアアウタパネル32に対するドアミラーステー12の位置を調整しなくても、ドアミラーステー12とドアアウタパネル32との間の隙間を抑制できる。また、ドアミラーステー12に荷重が作用して、ステーピン18が移動しようとしても、ステーピン18の外周面が挿通孔56の内周面に当接されることで、ドアミラーステー12が挿通孔ボルト50に保持される。このため、ドアミラーステー12が、ドアアウタパネル32だけでなく、挿通孔ボルト50及び締結ナット60を介してドアアウタリンフォース46にも支持される。これにより、ドアミラーステー12を支持する支持剛性を確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミラー本体を支持する支持部材を備えた車両用アウタミラー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドアでは、車両の軽量化の要件からドアアウタパネルの板厚が薄く設定されている。このため、車両のドアミラー装置では、一般に、ドアミラー本体を支持するベース部材がドアアウタパネルの車幅方向内側に設けられたアウタリインフォースに締結されている。これにより、アウタリインフォースによってベース部材を支持する支持剛性を確保している。
【0003】
ところで、このドアミラー装置では、アウタリインフォースにベース部材が締結されているため、アウタリインフォースとドアアウタパネルとの間の位置ばらつきによって、ドアアウタパネルとベース部材との間に隙間が生じる場合がある。このため、ドアアウタパネルとベース部材との間に設けられたガスケットによって、該隙間を詰めている。
【0004】
一方、車両のドアミラー装置では、ドアアウタパネルとベース部材との間の位置を調整できるものがある(特許文献1参照)。このドアミラー装置では、ベース部材にスタッドボルトが固定されており、ベース部材とアウタリインフォースとの間には、圧縮コイルスプリングが設けられている。圧縮コイルスプリングはベース部材をアウタリインフォースから離間する方向へ付勢しており、スタッドボルトをアウタリインフォースに貫通させた状態で、スタッドボルトにナットを螺合している。このスタッドボルトにナットを螺合する際に、ナットの締付を調整することで、ドアアウタパネルに対するベース部材の位置が調整されて、ドアアウタパネルとベース部材に取付けられたベースカバーとの間の隙間を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−302738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このドアミラー装置では、上述のように、ドアアウタパネルに対するベース部材の位置を手動で調整しなければならないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記事実を考慮して、支持部材を支持する支持剛性を確保しつつ、車体外板に対する支持部材の位置を調整することなく支持部材と車体外板との間の隙間を抑制できる車両用アウタミラー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の車両用アウタミラー装置は、ミラー本体を支持する支持部材と、前記支持部材が組付けられた組付部を有する車体外板と、前記車体外板の車幅方向内側に設けられ、前記支持部材に対して接離する方向において移動自在に構成されると共に前記接離する方向と異なる方向において前記支持部材を保持する保持部材と、を備えている。
【0009】
請求項1に記載の車両用アウタミラー装置では、ミラー本体を支持する支持部材が車体外板の組付部に組付けられている。これにより、支持部材が車体外板に直接組付けられるため、車体外板に対する支持部材の位置を調整しなくても、支持部材と車体外板との間の隙間を抑制した状態で支持部材を車体外板に設置できる。
【0010】
また、車体外板の車幅方向内側には、保持部材が設けられており、保持部材が、支持部材に対して接離する方向と異なる方向において、支持部材を保持している。このため、ミラー本体の重量と支持部材の重量とによる荷重が支持部材に作用しても、支持部材が、車体外板だけでなく、保持部材にも支持される。これにより、支持部材が車体外板に直接組付けられても、支持部材を支持する支持剛性を保持部材によって補うことができるため、支持部材を支持する支持剛性が確保される。
【0011】
しかも、保持部材は、支持部材に対して接離する方向に移動自在に構成されている。このため、車体外板と保持部材との間に位置ばらつきが生じた場合には、保持部材が、支持部材に対して接離する方向に、支持部材に対して相対移動する。これにより、車体外板と保持部材との間に位置ばらつきが許容される。したがって、車体外板と保持部材との間の位置ばらつきが、支持部材の車体外板への組付けに影響されない。
【0012】
請求項2に記載の車両用アウタミラー装置は、請求項1に記載の車両用アウタミラー装置において、前記支持部材に設けられ、前記支持部材から前記保持部材へ向けて突出された突出ピンと、前記保持部材に設けられ、前記保持部材を狭持し、前記突出ピンが挿通されると共に前記突出ピンが当接されることで前記支持部材を保持する狭持部材と、を備えている。
【0013】
請求項2に記載の車両用アウタミラー装置では、支持部材に突出ピンが設けられており、突出ピンは支持部材から保持部材へ向けて突出されている。また、保持部材には、保持部材を狭持する狭持部材が設けられている。狭持部材には、突出ピンが挿通されており、突出ピンが狭持部材に当接されることで、狭持部材が支持部材を保持する。
【0014】
このため、保持部材と狭持部材とが別体により構成されて、狭持部材が保持部材を狭持することで、狭持部材と保持部材とが一体に構成される。これにより、保持部材に対して突出ピンの位置がずれたとしても、このずれを許容した状態で狭持部材が保持部材を狭持することで、保持部材に対する突出ピンの位置ずれが許容される。
【0015】
請求項3に記載の車両用アウタミラー装置は、請求項2に記載の車両用アウタミラー装置において、前記突出ピンの先端に設けられ、前記狭持部材に当接することで前記突出ピンの前記狭持部材から離間する方向への移動を阻止する阻止部を備えている。
【0016】
請求項3に記載の車両用アウタミラー装置では、突出ピンの先端に阻止部が設けられており、阻止部が狭持部材に当接することで、突出ピンの狭持部材から離間する方向への移動が阻止される。このため、支持部材の保持部材からの脱落が防止される。
【0017】
請求項4に記載の車両用アウタミラー装置は、請求項2又は請求項3に記載の車両用アウタミラー装置において、前記狭持部材は軸線方向に前記突出ピンが挿通される挿通孔を有した挿通孔ボルトと前記挿通孔ボルトに螺合されて前記挿通孔ボルトを前記保持部材に締結させる締結ナットとで構成されている。
【0018】
請求項4に記載の車両用アウタミラー装置では、狭持部材が、挿通孔ボルトと締結ナットとで構成されており、締結ナットが挿通孔ボルトに螺合することで、挿通孔ボルトが保持部材に締結される。また、挿通孔ボルトには、軸線方向に挿通孔が設けられており、挿通孔内に突出ピンが挿通されている。このため、挿通孔ボルトの軸線方向の長さによって、挿通孔ボルトと突出ピンとの当接領域を大きく設定できる。これにより、挿通孔ボルトの支持部材を保持する保持剛性を高くできる。
【0019】
請求項5に記載の車両用アウタミラー装置は、請求項4に記載の車両用アウタミラー装置において、前記挿通孔ボルトに設けられ、前記支持部材に係合される係合部を備えている。
【0020】
請求項5に記載の車両用アウタミラー装置では、挿通孔ボルトに支持部材に係合される係合部が設けられている。このため、挿通孔ボルトに締結ナットを螺合させる際に、係合部によって挿通孔ボルトの回転が阻止される。これにより、挿通孔ボルトの回転に対して係合部が回り止として作用する。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載の車両用アウタミラー装置によれば、支持部材を支持する支持剛性を確保しつつ、車体外板に対する支持部材の位置を調整することなく支持部材と車体外板との間の隙間を抑制できる。
【0022】
請求項2に記載の車両用アウタミラー装置によれば、保持部材に対する突出ピンの位置ばらつきを許容できる。
【0023】
請求項3に記載の車両用アウタミラー装置によれば、支持部材の保持部材からの脱落を防止できる。
【0024】
請求項4に記載の車両用アウタミラー装置によれば、狭持部材の支持部材を保持する保持剛性を高くできる。
【0025】
請求項5に記載の車両用アウタミラー装置によれば、係合部が挿通孔ボルトの回転に対して回り止として作用するため、挿通孔ボルトに締結ナットを螺合する際の組付性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両用ドアミラー装置を示す車両左斜め後方から見た分解した斜視図である。
【図2】図1に示される車両用ドアミラー装置に用いられるドアミラーステーのスタッドボルトがドアアウタパネルに締結された状態を示す車両後方から見た断面図(図1の2−2線断面図)である。
【図3】図1に示される車両用ドアミラー装置に用いられるドアミラーステーのクリップピンがドアアウタパネルに固定されたクリップに嵌入された状態を示す車両後方から見た断面図(図1の3−3線断面図)である。
【図4】図1に示される車両用ドアミラー装置に用いられるドアミラーステーのステーピンがドアアウタリインフォースに締結された挿通孔ボルトに挿通された状態を示す車両後方から見た断面図(図1の4−4線断面図)である。
【図5】図4を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1には、本発明の実施の形態に係る車両用アウタミラー装置としての車両用ドアミラー装置10が車両左斜め後方から見た分解した斜視図にて示されている。なお、図面では、車両前方向を矢印FRで示し、車両右方向(車幅方向外側)を矢印RHで示し、上方を矢印UPで示す。
【0028】
この図に示すように、車両用ドアミラー装置10は、車両のドア30に設置されている。車両用ドアミラー装置10は、支持部材としてのドアミラーステー12を備えている。ドアミラーステー12には、車両右方(車幅方向外側)の部分において、支持部12Aが設けられている。支持部12Aの上方には、図示しないミラー本体としてのドアミラー本体が配置されており、ドアミラー本体は支持部12Aに回動可能に支持されている。さらに、ドアミラー本体は車両後方視認用の図示しないミラーを備えており、ミラーは鏡面を車両後側にしてドアミラー本体に支持されている。
【0029】
ドアミラーステー12には、車両左方(車幅方向内側)の部分において、本体部12Bが設けられている。本体部12Bは、略矩形状に形成され、ドアミラーステー12の支持部12Aと一体に形成されている。本体部12Bには、車両前方の部分において、スタッドボルト14が一体に設けられている。スタッドボルト14には、略六角形板状の座部14Aが設けられており、座部14Aには、略円柱状のボルト部14Bが立設されている。ボルト部14Bは、車幅方向内側へ向かうに従い下方へ傾斜して座部14Aから突出されており、ボルト部14Bの外周部には、雄ネジが形成されている。
【0030】
本体部12Bには、車両前方の部分及び車両後方の部分において、一対のクリップピン16が一体に設けられている。クリップピン16には、略六角形板状の座部16Aが設けられており、座部16Aには、略円錐形状のピン部16Bが立設されている。ピン部16Bは、車幅方向内側へ向かうに従い下方へ傾斜して座部16Aから突出されている。
【0031】
本体部12Bには、一対のクリップピン16の間の位置において、突出ピンとしての略円柱状のステーピン18が設けられている。ステーピン18は、車幅方向内側へ向かうに従い下方へ傾斜して本体部12Bから突出されている。ステーピン18の先端部には、外周部において、リング溝18Aが設けられており、リング溝18Aは、断面略矩形状に形成されると共に、ステーピン18の周方向に沿って形成されている。リング溝18Aには阻止部としてのEリング20が嵌入されている。また、本体部12Bには、スタッドボルト14の下方において、断面略矩形状の係合孔22が貫通形成されており、係合孔22内には後述する挿通孔ボルト50の係合突起58が配置されている(図4及び図5参照)。
【0032】
ドアミラーステー12の本体部12Bの車幅方向内側には、ドア30を構成する車体外板としてのドアアウタパネル32が配置されている。ドアアウタパネル32は、縁部において、ドア30を構成するベルトラインリインフォース45と接合されている(図2参照)。ドアアウタパネル32には、ドアミラーステー12を組付けるための組付部としてのステー組付部34が設けられており、ステー組付部34は略矩形凹状に形成されている。
【0033】
図2にも示すように、ステー組付部34には、車両前方の部分において、断面円形状の組付孔36が貫通形成されている。組付孔36内には、ドアミラーステー12のスタッドボルト14のボルト部14Bが車幅方向外側から車幅方向内側へ挿通されており、スタッドボルト14の座部14Aがステー組付部34の車幅方向外側面に当接されている。ステー組付部34の車幅方向内側には、六角ナット38が設けられており、六角ナット38はボルト部14Bの雄ネジに螺合されている。これにより、スタッドボルト14がステー組付部34に締結されて、ドアミラーステー12がドアアウタパネル32に組付けられている。
【0034】
図1及び図3に示すように、ステー組付部34には、車両前方の部分及び車両後方の部分において、略トラック形状の一対の長孔40が貫通形成されており、長孔40内には、クリップ42が固定されている(図1では、クリップ42が図示省略されている)。クリップ42は、開口部から底部へ向けて内周面を次第に縮径とした略有底円錐筒形状に形成されており、クリップ42の開口部には、円環状のフランジ42Aが一体に形成されている。フランジ42Aはステー組付部34の車幅方向外側面に当接されると共に、クリップ42が車幅方向内側へ向かうに従い下方に傾斜してステー組付部34から突出されている。クリップ42内には、前述したドアミラーステー12のクリップピン16が嵌入されており、クリップピン16の座部16Aがクリップ42のフランジ42Aに当接されている。これにより、ドアミラーステー12がクリップ42を介してステー組付部34に組付けられている。
【0035】
図1、図4、及び図5に示すように、ステー組付部34には、一対の長孔40の間の位置において、略矩形状の貫通孔44が貫通形成されている。貫通孔44内にはドアミラーステー12のステーピン18が貫通した状態で配置されている。
【0036】
ドアアウタパネル32とベルトラインリインフォース45との間には、ドア30を構成する保持部材としてのドアアウタリインフォース46が設けられている。ドアアウタリインフォース46は、ベルトラインリインフォース45に接合されている。また、ドアアウタリインフォース46の板厚はドアアウタパネル32の板厚に比して厚く設定されており、これにより、ドアアウタリインフォース46の剛性がドアアウタパネル32の剛性に比して高く設定されている。ドアアウタリインフォース46には、ドアアウタパネル32のステーピン18に対応する位置において、断面円形状の円孔48が貫通形成されている。
【0037】
ドアアウタリインフォース46の円孔48内には、狭持部材としての略円筒形状の挿通孔ボルト50が設けられている。挿通孔ボルト50は、車幅方向内側へ向かうに従い下方へ傾斜してドアアウタリインフォース46から突出されており、挿通孔ボルト50の外周部には、雄ネジ部52が形成されている。挿通孔ボルト50の車幅方向外側の端部には、外周部において、略円環状のボルト側フランジ部54が設けられている。ボルト側フランジ部54は、挿通孔ボルト50から挿通孔ボルト50の径方向外側へ突出されて、ドアアウタリインフォース46の車幅方向外側面に当接されている。また、挿通孔ボルト50には、軸心部において、断面円形状の挿通孔56が貫通形成されている。挿通孔56の内径寸法はドアミラーステー12のステーピン18の外径寸法に比して僅かに大きく設定されており、挿通孔56内にステーピン18が挿通されている。また、ボルト側フランジ部54には、係合部としての略矩形柱状の係合突起58が設けられている(図1では、係合突起58が図示省略されている)。係合突起58は、ボルト側フランジ部54からドアミラーステー12側へ向けて突出されると共に、前述したドアミラーステー12の係合孔22内に配置されている。
【0038】
ドアアウタリインフォース46の車幅方向内側には、狭持部材としての略六角形筒状の締結ナット60が設けられている。締結ナット60の内周部には、雌ネジ部62が形成されており、雌ネジ部62が挿通孔ボルト50の雄ネジ部52に螺合されている。締結ナット60の車幅方向外側の端部には、外周部において、円環状のナット側フランジ部64が設けられており、ナット側フランジ部64はドアアウタリインフォース46の車幅方向内側面に当接されている。これにより、挿通孔ボルト50がドアアウタリインフォース46に締結されると共に、挿通孔ボルト50と締結ナット60とでドアアウタリインフォース46を狭持している。
【0039】
ところで、ドアミラーステー12の重量とドアミラー本体の重量とによって、ドアミラーステー12には、下方の荷重が作用するため、ドアミラーステー12(ステーピン18)は下方(ステーピン18の軸線方向とは異なる方向)へ移動しようとする。ここで、ドアミラーステー12は、ドアアウタパネル32のステー組付部34に組付けられているため、基本的にはドアミラーステー12の下方への移動が阻止される。しかしながら、ドアミラーステー12に作用する荷重がドアミラーステー12を支持するドアアウタパネル32の支持剛性を上回る際には、ステーピン18(ドアミラーステー12)が下方へ移動しようとする。この際には、ステーピン18の外周面が挿通孔ボルト50の挿通孔56の内周面に当接されて、ステーピン18の移動が阻止される。このため、挿通孔ボルト50のドアミラーステー12に対して接離する方向(ステーピン18の軸線方向)とは異なる方向において、ステーピン18の外周面が挿通孔56の内周面に当接されることで、挿通孔ボルト50がステーピン18(ドアミラーステー12)を保持する構成にされている。
【0040】
また、前述したように、挿通孔ボルト50の挿通孔56内には、ドアミラーステー12のステーピン18が挿通されている。このため、ステーピン18は自身の軸線方向に移動自在に構成されており、換言すると、挿通孔ボルト50が、ドアミラーステー12に対して接離する方向において、移動自在に構成されている。
【0041】
次に、ドアミラーステー12をドア30に組付ける際の組付手順を通して、本実施の形態の作用及び効果について説明する。
【0042】
最初に、ドアミラーステー12のステーピン18を挿通孔ボルト50の挿通孔56内に挿入させると共に、挿通孔ボルト50の係合突起58をドアミラーステー12の係合孔22内に配置させる。その後に、ステーピン18のリング溝18AにEリング20を嵌入させる。これにより、挿通孔ボルト50がステーピン18の軸線方向に移動自在に取付けられると共に、挿通孔ボルト50のステーピン18からの脱落が防止される。
【0043】
この状態でドアミラーステー12のスタッドボルト14をドアアウタパネル32の組付孔36内に挿入させると共に、ドアミラーステー12のステーピン18をドアアウタパネル32の貫通孔44内に挿入させる。また、この際には、ドアミラーステー12のクリップピン16をドアアウタパネル32に固定されたクリップ42内に嵌入させる。さらに、六角ナット38をスタッドボルト14のボルト部14Bの雄ネジに螺合させて、スタッドボルト14をドアアウタパネル32のステー組付部34に締結させる。これにより、ドアミラーステー12がドアアウタパネル32に組付けられる。その後に、挿通孔ボルト50の雄ネジ部52に締結ナット60の雌ネジ部62を螺合させて、挿通孔ボルト50をドアアウタパネル32に締結させる(挿通孔ボルト50と締結ナット60とでドアアウタパネル32を狭持する)。これにより、挿通孔56内にステーピン18を挿通した状態で挿通孔ボルト50がドアアウタパネル32に締結される。
【0044】
ここで、上述したように、ドアミラーステー12のスタッドボルト14がドアアウタパネル32のステー組付部34に締結される。また、ドアミラーステー12のクリップピン16がステー組付部34に固定されたクリップ42に嵌入される。このため、ドアミラーステー12がドアアウタパネル32に直接組付けられる。これにより、ドアミラーステー12が、ドアアウタリインフォース46の位置によらずに、ドアアウタパネル32に設置される。したがって、ドアアウタパネル32に対するドアミラーステー12の位置を調整しなくても、ドアミラーステー12(本体部12B)とドアアウタパネル32との間の隙間が抑制された状態で、ドアミラーステー12をドアアウタパネル32に設置できる。
【0045】
また、挿通孔ボルト50の挿通孔56内にはドアミラーステー12のステーピン18が挿通されており、挿通孔56の内径寸法はステーピン18の外径寸法に比して僅かに大きく設定されている。さらに、ドアミラーステー12の重量とドアミラー本体の重量とによって、ドアミラーステー12に下方の荷重が作用して、該荷重がドアミラーステー12を支持するドアアウタパネル32の支持剛性を上回る際には、ステーピン18が下方へ移動しようとする。この際には、ステーピン18の外周面が挿通孔ボルト50の挿通孔56の内周面に当接される。これにより、ドアミラーステー12が、ドアアウタパネル32だけでなく、挿通孔ボルト50及び締結ナット60を介してドアアウタリインフォース46にも支持される。つまり、ドアアウタリインフォース46に比して剛性の低いドアアウタパネル32にドアミラーステー12を直接組付けても、ドアミラーステー12を支持する支持剛性をドアアウタリインフォース46によって補うことができる。したがって、ドアミラーステー12を支持する支持剛性を確保できる。
【0046】
しかも、挿通孔ボルト50の挿通孔56内にドアミラーステー12のステーピン18が挿通されているため、挿通孔ボルト50は、ドアミラーステー12に対して接離する方向(ステーピン18の軸線方向)に移動自在に構成されている。これにより、ドアアウタパネル32とドアアウタリインフォース46との間に位置ばらつきが生じた場合には、締結ナット60を挿通孔ボルト50に螺合する際に、ステーピン18が挿通孔ボルト50に対して相対移動する。このため、ドアアウタパネル32とドアアウタリインフォース46との間の位置ばらつきが許容される。したがって、ステーピン18を保持する挿通孔ボルト50及び締結ナット60をドアアウタリインフォース46に設けても、ドアアウタパネル32とドアアウタリインフォース46との間の位置ばらつきが、ドアミラーステー12のドアアウタパネル32への組付けに影響されない。
【0047】
以上により、ドアミラーステー12を支持する支持剛性を確保しつつ、ドアアウタパネル32に対するドアミラーステー12の位置を調整することなくドアミラーステー12とドアアウタパネル32との間の隙間を抑制できる。
【0048】
また、挿通孔ボルト50の挿通孔56内にはステーピン18が挿通されており、挿通孔ボルト50と締結ナット60とでドアアウタリインフォース46を狭持している。このため、挿通孔ボルト50及び締結ナット60は、ドアアウタリインフォース46とは別体に構成されており、挿通孔ボルト50と締結ナット60とが、ドアアウタリインフォース46を狭持することで、挿通孔ボルト50及び締結ナット60がドアアウタリインフォース46と一体に構成される。これにより、仮に、ドアアウタリインフォース46に対するステーピン18の位置が、ステーピン18の軸線方向と直交する方向においてずれたとしても、この位置ずれを許容した状態で、挿通孔ボルト50をドアアウタリインフォース46に締結できる。したがって、ドアアウタリインフォース46に対するステーピン18の位置ずれを許容できる。
【0049】
さらに、挿通孔ボルト50の挿通孔56内にステーピン18が挿通されており、ステーピン18の外周面が挿通孔ボルト50の挿通孔56の内周面に当接することで、挿通孔ボルト50がステーピン18(ドアミラーステー12)を保持している。これにより、挿通孔ボルト50の軸線方向の長さによって、ステーピン18の外周面と挿通孔56の内周面との当接領域(挿通孔ボルト50がステーピン18を保持する領域)を大きく設定できる。このため、挿通孔ボルト50のドアミラーステー12を保持する保持剛性を高くできる。また、ドアアウタリインフォース46を挿通孔ボルト50と締結ナット60とで狭持しているため、簡易な構成によってステーピン18(ドアミラーステー12)を保持できる。
【0050】
また、ドアミラーステー12のステーピン18のリング溝18AにはEリング20が嵌入されており、Eリング20が挿通孔ボルト50に当接することで、ステーピン18の挿通孔ボルト50から離間する方向への移動が阻止される。このため、ドアミラーステー12のドアアウタリインフォース46からの脱落を防止できる。
【0051】
さらに、挿通孔ボルト50のボルト側フランジ部54には、係合突起58が設けられており、係合突起58はドアミラーステー12の係合孔22内に配置されている。このため、挿通孔ボルト50が自身の軸線回りに回転する際には、係合突起58が係合孔22の内周部に係合されて、挿通孔ボルト50の回転が規制される。これにより、係合突起58が挿通孔ボルト50の回り止として作用する。したがって、挿通孔ボルト50に締結ナット60を螺合する際の組付性を向上できる。
【0052】
なお、本実施の形態では、挿通孔ボルト50に締結ナット60を螺合することで、挿通孔ボルト50と締結ナット60とでドアアウタリインフォース46を狭持している。これに替えて、例えば、挿通孔ボルト50の外周部に突部を設けて、締結ナット60の内周部に凹部を設けて、挿通孔ボルト50と締結ナット60とを所謂スナップフィットによって係合させることで、挿通孔ボルト50と締結ナット60とでドアアウタリインフォース46を狭持してもよい。
【0053】
また、本実施の形態では、挿通孔ボルト50の係合突起58がドアミラーステー12の係合孔22に係合することで、係合突起58が挿通孔ボルト50の回り止として作用するが、挿通孔ボルト50の回り止めの構造はこれに限らない。例えば、ステーピン18及び挿通孔ボルト50の挿通孔56の断面形状をD字形状に形成して、挿通孔ボルト50の回り止め構造にしてもよい。
【0054】
さらに、本実施の形態では、車両用アウタミラー装置が車両用ドアミラー装置10に適用された場合を説明したが、車両用アウタミラー装置が、例えば、フェンダーミラーのような車体の外側に取付けられる車両用アウタミラー装置であってもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 車両用ドアミラー装置(車両用アウタミラー装置)
12 ドアミラーステー(支持部材)
18 ステーピン(突出ピン)
20 Eリング(阻止部)
32 ドアアウタパネル(車体外板)
34 ステー組付部(組付部)
46 ドアアウタリインフォース(保持部材)
50 挿通孔ボルト(狭持部材)
56 挿通孔
58 係合突起(係合部)
60 締結ナット(狭持部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラー本体を支持する支持部材と、
前記支持部材が組付けられた組付部を有する車体外板と、
前記車体外板の車幅方向内側に設けられ、前記支持部材に対して接離する方向において移動自在に構成されると共に前記接離する方向と異なる方向において前記支持部材を保持する保持部材と、
を備えた車両用アウタミラー装置。
【請求項2】
前記支持部材に設けられ、前記支持部材から前記保持部材へ向けて突出された突出ピンと、
前記保持部材に設けられ、前記保持部材を狭持し、前記突出ピンが挿通されると共に前記突出ピンが当接されることで前記支持部材を保持する狭持部材と、
を備えた請求項1に記載の車両用アウタミラー装置。
【請求項3】
前記突出ピンの先端に設けられ、前記狭持部材に当接することで前記突出ピンの前記狭持部材から離間する方向への移動を阻止する阻止部を備えた請求項2に記載の車両用アウタミラー装置。
【請求項4】
前記狭持部材は軸線方向に前記突出ピンが挿通される挿通孔を有した挿通孔ボルトと前記挿通孔ボルトに螺合されて前記挿通孔ボルトを前記保持部材に締結させる締結ナットとで構成された請求項2又は請求項3に記載の車両用アウタミラー装置。
【請求項5】
前記挿通孔ボルトに設けられ、前記支持部材に係合される係合部を備えた請求項4に記載の車両用アウタミラー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−236533(P2012−236533A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107431(P2011−107431)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】