説明

車両用ミラー装置

【課題】ミラーボディーが車両の振動によりぶれるのを極力抑制することが重要である。
【解決手段】この発明は、ピボット機構12の中心Oが3個の撓み部28、29、30により囲まれた範囲内に位置し、各撓み部28、29、30の中心O1、OH1、OV1からピボット機構12の中心Oまでの距離と各撓み部28、29、30の弾性力との積が同等もしくはほぼ同等である。この結果、この発明は、ミラーボディー10をピボット機構12およびパワーユニット8を介してユニットブラケット7にバランスよく取り付けることができ、その分、ミラーボディー10が車両の振動によりぶれるのを極力抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば、ドアミラー、フェンダミラー、トラックミラーなどの車両用ミラー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用ミラー装置は、従来からある(たとえば、特許文献1)。以下、従来の車両用ミラー装置について説明する。従来の車両用ミラー装置は、ミラー部材と、ミラー部材を支持する鏡面調整ユニットと、鏡面調整ユニットを取り付けるドアミラーバイザと、を備えるものであって、ドアミラーバイザには、鏡面調整ユニットの車両後方への移動を阻止する(鏡面調整ユニットに係合する)係合部材と、鏡面調整ユニットを車両後方に付勢する(鏡面調整ユニットに弾性当接する)弾性部材とがそれぞれ設けられているものである。前記の従来の車両用ミラー装置は、係合部材および弾性部材により、スクリューなどを使用せずに、ミラー部材を鏡面調整ユニットを介してドアミラーバイザに取り付けることができる。
【0003】
かかる車両用ミラー装置においては、ミラー部材が車両の振動によりぶれるのを極力抑制することが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−168674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする問題点は、車両用ミラー装置においては、ミラー部材(ミラーボディー)が車両の振動によりぶれるのを極力抑制することが重要であるという点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明(請求項1にかかる発明)は、ミラーボディーと、ミラーボディーをピボット機構を介して支持する支持部材と、支持部材を取り付ける取付部材と、を備える車両用ミラー装置において、支持部材もしくは取付部材のうち少なくともいずれか一方には、いずれか他方に嵌合する複数個の嵌合部が設けられていて、支持部材もしくは取付部材のうち少なくともいずれか一方には、いずれか他方に弾性当接する複数個の撓み部が設けられていて、ミラーボディーおよびピボット機構および支持部材を含めた重心が、複数個の撓み部により囲まれた範囲内に位置し、各撓み部から重心までの距離と各撓み部の弾性力との積が、同等もしくはほぼ同等である、ことを特徴とする。
【0007】
また、この発明(請求項2にかかる発明)は、ミラーボディーと、ミラーボディーをピボット機構を介して支持する支持部材と、支持部材を取り付ける取付部材と、を備える車両用ミラー装置において、支持部材もしくは取付部材のうち少なくともいずれか一方には、いずれか他方に嵌合する複数個の嵌合部が設けられていて、支持部材もしくは取付部材のうち少なくともいずれか一方には、いずれか他方に当接する複数個の撓み部が設けられていて、ピボット機構の中心が、複数個の撓み部により囲まれた範囲内に位置し、各撓み部からピボット機構の中心までの距離と各撓み部の弾性力との積が、同等もしくはほぼ同等である、ことを特徴とする。
【0008】
さらに、この発明(請求項3にかかる発明)は、嵌合部には、いずれか他方に嵌合する際に、複数個の撓み部がいずれか他方に弾性当接する方向に対して交差する方向に弾性変形する弾性変形部が設けられている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明(請求項1にかかる発明)の車両用ミラー装置は、ミラーボディーおよびピボット機構および支持部材を含めた重心が複数個の撓み部により囲まれた範囲内に位置し、各撓み部から重心までの距離と各撓み部の弾性力との積が同等もしくはほぼ同等であるから、ミラーボディーおよびピボット機構および支持部材を含めた重心と複数個の撓み部の弾性力の合成した点とが一致もしくはほぼ一致することとなる。この結果、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用ミラー装置は、ミラーボディーおよびピボット機構および支持部材を取付部材にバランスよく取り付けることができ、その分、ミラーボディーが車両の振動によりぶれるのを極力抑制することができる。
【0010】
また、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用ミラー装置は、ピボット機構の中心が複数個の撓み部により囲まれた範囲内に位置し、各撓み部からピボット機構の中心までの距離と各撓み部の弾性力との積が同等もしくはほぼ同等であるから、ピボット機構の中心と複数個の撓み部の弾性力の合成した点とが一致もしくはほぼ一致することとなる。この結果、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用ミラー装置は、ミラーボディーをピボット機構および支持部材を介して取付部材にバランスよく取り付けることができ、その分、ミラーボディーが車両の振動によりぶれるのを極力抑制することができる。
【0011】
しかも、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用ミラー装置は、ミラーボディーがピボット機構および支持部材を介して取付部材にバランスよく取り付けられているので、ミラーボディーのミラー面の角度をピボット機構を介して調整する際に、取付バランスの偏りなどにより、嵌合部といずれか他方との嵌合状態が外れるようなことがなく、ミラーボディーをピボット機構および支持部材を介して取付部材に確実に取り付けることができる。
【0012】
さらに、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用ミラー装置は、嵌合部に設けた弾性変形部により、嵌合部がいずれか他方に確実に嵌合することができるので、ミラーボディーをピボット機構および支持部材を介して、取付部材に確実に取り付けることができる。
【0013】
その上、この発明(請求項1、2、3にかかる発明)の車両用ミラー装置は、嵌合部および撓み部により、スクリューなどを使用せずに、ミラーボディーをピボット機構および支持部材を介して取付部材に取り付けることができるので、取付作業が簡略化して製造コストを安価にすることができ、しかも、金属製のスクリューなどを使用しないことにより、樹脂製部品のリサイクル作業が容易化して環境対策に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、この発明にかかる車両用ミラー装置の実施例を示すパワーユニット(支持部材)とユニットブラケット(取付部材)との取付状態の正面図である。
【図2】図2は、同じく、ピボット機構の中心と3個の撓み部の弾性力の合成した点とが一致もしくはほぼ一致する状態を示す説明図である。
【図3】図3は、同じく、パワーユニット(支持部材)を示す正面図である。
【図4】図4は、同じく、ユニットブラケット(取付部材)を示す正面図である。
【図5】図5は、同じく、パワーユニット(支持部材)をユニットブラケット(取付部材)に取り付ける前の状態を示す一部拡大垂直断面図(一部拡大縦断面図)である。
【図6】図6は、同じく、パワーユニット(支持部材)をユニットブラケット(取付部材)に取り付けた状態を示す一部拡大垂直断面図(一部拡大縦断面図)である。
【図7】図7は、同じく、嵌合部の嵌合状態を示す一部拡大垂直断面図(一部拡大縦断面図)である。
【図8】図8は、同じく、撓み部の弾性当接状態を示す一部拡大垂直断面図(一部拡大縦断面図)である。
【図9】図9は、同じく、ドアミラーとして使用した状態を示す正面図である。
【図10】図10は、同じく、図9におけるX−X線断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、この発明にかかる車両用ミラー装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0016】
(構成の説明)
以下、この実施例における車両用ミラー装置の構成について説明する。図9、図10において、符号1は、この実施例における車両用ミラー装置であって、この例ではリモートコントロール式のドアミラー装置である。前記ドアミラー装置1は、自動車の左側(ドライバー側から前方を見た場合の左側)のドア(図示せず)に装備される左用のドアミラー装置であって、右用のドアミラー装置の構成は、この左用のドアミラー装置1の構成に対してほぼ左右対称となる。
【0017】
前記ドアミラー装置1は、自動車のドアに固定されるミラーベース(ベース)2と、前記ミラーベース2にほぼ垂直軸V1−V1回りに傾倒可能に装備されたミラーアッセンブリ3と、前記ミラーベース2と前記ミラーアッセンブリ3との間に設けられている電動格納ユニット4と、を備えるものである。
【0018】
前記電動格納ユニット4は、前記ミラーベース2に固定されているシャフトホルダ(図示せず)およびシャフト23と、前記ミラーアッセンブリ3に固定されているケーシング24と、を備える。前記ケーシング24が前記シャフト23に前記垂直軸V1−V1回りに回転可能に取り付けられている。前記シャフト23と前記ケーシング24との間には、回転力伝達機構としての減速機構(図示せず)およびクラッチ機構(図示せず)が設けられている。前記ケーシング24内には、モータ(図示せず)が内蔵されている。前記モータと前記回転力伝達機構とが機械的に接続されている。この結果、前記電動格納ユニット4により、前記ミラーアセンブリ3が前記ミラーベース2に対して、前記垂直軸V1−V1回りに、使用位置と格納位置との間を電動傾倒する。なお、傾倒としては、前記の電動傾倒のほかに、手動傾倒、緩衝傾倒を含む。また、傾倒としては、使用位置と格納位置と前方傾倒位置との間の傾倒も含む。
【0019】
前記ミラーアッセンブリ3は、図9、図10に示すように、ミラーハウジング5と、前記ミラーハウジング5に取付手段としてのスクリュー6により取り付けられた取付部材としてのユニットブラケット7と、前記ユニットブラケット7に取り付けられている支持部材としてのパワーユニット8と、前記パワーユニット8に支持されているミラーユニット9と、を備えるものである。
【0020】
前記ミラーユニット9は、裏面側に反射面(ミラー面)を有するミラーボディ−10と、前記ミラーボディー10を保持するミラーホルダ11(または、ミラーホルダおよびミラーホルダベース)とから構成されている。前記ミラーユニット9は、ピボット機構12および上下用傾倒機構13および前記左右用傾倒機構14を介して前記パワーユニット8に支持されている。
【0021】
前記ピボット機構12は、前記パワーユニット8に設けられたピボット受部15と、前記ミラーユニット9に設けられたピボット部16とから構成されている。前記ピボット部16が前記ピボット受部15に圧入嵌合されている。この結果、前記ミラーユニット9は、前記ピボット機構12により、前記パワーユニット8に傾動可能に支持されることとなる。
【0022】
前記上下用傾倒機構13および前記左右用傾倒機構14は、前記パワーユニット8の前記ピボット受部15に対して下側(もしくは上側)および左側(もしくは右側)に設けられた進退ロッド17および18と、前記進退ロッド17および18の先端に一体に設けられたピボット19および20と、前記ミラーユニット9の下側および左側に設けられたピボット受21(左右用のみを図示)とから構成されている。前記進退ロッド17および18のピボット19および20が前記ピボット受21に圧入嵌合されている。この結果、前記ミラーユニット9は、前記上下用傾倒機構13により、前記ピボット機構12の中心Oと前記左右用傾倒機構14の中心OHとを結ぶほぼ水平軸H−H回りに上下方向に傾動可能となる。また、前記ミラーユニット9は、前記左右用傾倒機構14により、前記ピボット機構12の中心Oと前記上下用傾倒機構13の中心OVとを結ぶほぼ垂直軸V−V回りに左右方向に傾動可能となる(図3、図9参照)。なお、前記ミラーアッセンブリ3の回転軸である前記垂直軸V1−V1と、前記ミラーユニット9の左右方向の傾動軸である前記垂直軸V−Vとは、平行もしくはほぼ平行である。
【0023】
前記パワーユニット8は、樹脂製(たとえば、ABS樹脂やその他の樹脂)でかつ2分割構造のハウジング22を有する。前記2分割構造のハウジング22中には、前記上下用傾倒機構13のモータ(図示せず)および回転力伝達機構(図示せず)と、前記左右用傾倒機構14のモータ(図示せず)および回転力伝達機構(図示せず)とが内蔵されている。また、前記ハウジング22には、前記上下用傾倒機構13および前記左右用傾倒機構14の前記進退ロッド17および18が進退可能に取り付けられている。前記進退ロッド17おおよび18は、前記回転伝達機構を介して前記モータに連結されている。前記駆動モータは、コネクタ(図示せず)やハーネス(図示せず)などを介して電源(図示せず)およびリモートコントロールスイッチ(図示せず)などに電気的に接続されている。
【0024】
前記パワーユニット8の前記上下用傾倒機構13のモータを駆動させることにより、前記上下用傾倒機構13の前記進退ロッド17が進退して前記ミラーユニット9が前記水平軸H−H回りに上下方向に傾動する。前記パワーユニット8の前記左右用傾倒機構14のモータを駆動させることにより、前記左右用傾倒機構14の前記進退ロッド18が進退して前記ミラーユニット9が前記垂直軸V−V回りに左右方向に傾動する。前記パワーユニット8は、前記ユニットブラケット7に取り付けられている。前記ユニットブラケット7には、前記電動格納ユニット4が固定されている。前記ユニットブラケット7は、前記ミラーハウジング5に固定されている。この結果、前記ミラーユニット9のミラーボディー10が前記ミラーハウジング5の開口部25に位置する。
【0025】
前記パワーユニット8の前記ハウジング22には、複数個この例では6個の嵌合部26が一体に設けられている。一方、前記ユニットブラケット7には、前記嵌合部26が嵌合する複数個この例では6個の嵌合受部27が前記嵌合部26に対応してそれぞれ一体に設けられている。
【0026】
前記ユニットブラケット7は、この例では、樹脂部材から構成されている。前記ユニットブラケット7には、前記パワーユニット8の前記ハウジング22に弾性当接する複数個のこの例では3個の撓み部28、29、30が一体に設けられている。3個の撓み部のうち第1撓み部28は、前記ピボット機構12の中心Oに対して右斜め上方の位置O1に位置する。すなわち、前記水平軸H−Hより上方であり、かつ、前記垂直軸V−Vより右側の位置O1に位置する。第2撓み部29は、前記左右用傾倒機構14の中心OHもしくはその近傍に位置する。第3撓み部30は、前記上下用傾倒機構13の中心OVもしくはその近傍に位置する。
【0027】
3個の前記撓み部28、29、30は、断面ほぼ半球形形状をなし、弾性板部31を介して前記ユニットブラケット7に一体に設けられている。3個の前記撓み部28、29、30は、前記弾性板部31により、前記パワーユニット8を前記ユニットブラケット7に取り付ける方向(図5中の実線矢印A方向)と反対方向(図6、図8中の実線矢印B方向)の弾性力を有する。
【0028】
前記ピボット機構12の中心Oは、3個の前記撓み部28、29、30により囲まれた範囲内に位置する。各前記撓み部28、29、30の中心O1、OH1、OV1からピボット機構12の中心Oまでの距離と各撓み部28、29、30の弾性力との積は、同等もしくはほぼ同等である。前記第2撓み部29の中心OH1、前記第3撓み部30の中心OV1は、前記左右用傾倒機構14の中心OH、前記上下用傾倒機構13の中心OVもしくはその近傍に位置する。
【0029】
前記嵌合部26には、前記嵌合受部27に嵌合する際に、3個の前記撓み部28、29、30が前記パワーユニット8の前記ハウジング22に弾性当接する方向Bに対して交差する方向(図6、図7中の実線矢印C方向)に弾性変形するU字形状の弾性変形部32が一体に設けられている。前記ユニットブラケット7の前記嵌合受部27は、剛体構造をなす。
【0030】
(取付の説明)
この実施例における車両用ミラー装置(ドアミラー装置1)は、以上のごとき構成からなり、以下、支持部材としての前記パワーユニット8を取付部材としての前記ユニットブラケット7に取り付ける作業について説明する。
【0031】
まず、図5に示すように、前記パワーユニット8の前記嵌合部26および前記ハウジング22を前記ユニットブラケット7の前記嵌合受部27および前記撓み部28、29、30に合わせる。つぎに、前記パワーユニット8を前記ユニットブラケット7に図5中の実線矢印A方向に押し込む。
【0032】
すると、図7に示すように、前記パワーユニット8の前記嵌合部26が、前記ユニットブラケット7の前記嵌合受部27に当たって、前記弾性変形部32と共に、図7中の実線矢印C方向と逆方向に、すなわち、図7中の点線で示す状態側から図7中の実線で示す状態側への方向に、弾性変形する。
【0033】
また、図8に示すように、前記パワーユニット8の前記ハウジング22が、前記ユニットブラケット7の前記撓み部28、29、30に当たって、前記弾性板部31と共に、図8中の実線矢印B方向と逆方向(図5中の実線矢印A方向)に、すなわち、図8中の点線で示す状態側から図8中の実線で示す状態側への方向に、弾性変形する。
【0034】
そして、前記パワーユニット8を前記ユニットブラケット7に図5中の実線矢印A方向に所定の位置まで押し込む。すると、図7中の実線で示すように、前記パワーユニット8の前記嵌合部26が前記ユニットブラケット7の前記嵌合受部27に図7中の実線矢印C方向に嵌合する。また、図8中の実線で示すように、前記ユニットブラケット7の前記撓み部28、29、30が前記パワーユニット8の前記ハウジング22に図8中の実線矢印B方向(図5中の実線矢印A方向と逆方向)に弾性当接する。
【0035】
以上のように、前記嵌合部26および前記撓み部28、29、30により、スクリューなどを使用せずに、支持部材としての前記パワーユニット8が取付部材としての前記ユニットブラケット7に取り付けられることとなる。
【0036】
(作用の説明)
この実施例における車両用ミラー装置(ドアミラー装置1)は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0037】
まず、パワーユニット8の左右方向用のモータに通電する。すると、左右方向用のモータが正回転もしくは逆回転する。この左右方向用のモータの正回転もしくは逆回転に伴って、左右方向用の進退ロッド18が実線矢印方向に進退する。この左右方向用の進退ロッド18の進退に伴って、ミラーユニット9が垂直軸V−V(ピボット機構12の中心Oと上下用傾倒機構13の中心OVとを結ぶ軸)回りに左右方向に傾動する。
【0038】
また、パワーユニット8の上下方向用のモータに通電する。すると、上下方向用のモータが正回転もしくは逆回転する。この上下方向用のモータの正回転もしくは逆回転に伴って、上下方向用の進退ロッド17が破線矢印方向に進退する。この上下方向用の進退ロッド17の進退に伴って、ミラーユニット7が水平軸H−H(ピボット機構12の中心Oと左右用傾倒機構14の中心OHとを結ぶ軸)回りに上下方向に傾動する。
【0039】
さらに、電動格納ユニット4のモータを駆動させると、ミラーアッセンブリ3がミラーベース2に対して垂直軸V1−V1回りに、使用位置(図9に示す状態の位置)から格納位置(図示せず)に格納回動し、または、格納位置から使用位置に復帰回動する。しかも、ミラーアッセンブリ3は、手動によりあるいは緩衝のために、使用位置から格納位置あるいは前方傾倒位置(使用位置に対して格納位置と反対側の位置)に、逆に、格納位置あるいは前方傾倒位置から使用位置に、回動することができる。
【0040】
(効果の説明)
この実施例における車両用ミラー装置(ドアミラー装置1)は、以上のごとき構成、作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0041】
この実施例における車両用ミラー装置(ドアミラー装置1)は、ピボット機構12の中心Oが3個の撓み部28、29、30により囲まれた範囲内に位置し、各撓み部28、29、30の中心O1、OH1、OV1からピボット機構12の中心Oまでの距離と各撓み部28、29、30の弾性力との積が同等もしくはほぼ同等であるから、ピボット機構12の中心Oと3個の撓み部28、29、30の弾性力の合成した点とが一致もしくはほぼ一致することとなる。この結果、この実施例における車両用ミラー装置(ドアミラー装置1)は、ミラーユニット9のミラーボディー10をピボット機構12および支持部材としてのパワーユニット8を介して取付部材としてのユニットブラケット7にバランスよく取り付けることができ、その分、ミラーボディー10が車両の振動によりぶれるのを極力抑制することができる。
【0042】
しかも、この実施例における車両用ミラー装置(ドアミラー装置1)は、ミラーユニット9のミラーボディー10がピボット機構12および支持部材としてのパワーユニット8を介して取付部材としてのユニットブラケット7にバランスよく取り付けられているので、ミラーボディー10のミラー面の角度をピボット機構12を介して調整する際に、取付バランスの偏りなどにより、嵌合部26と嵌合受部27との嵌合状態が外れるようなことがなく、ミラーユニット9のミラーボディー10をピボット機構12および支持部材としてのパワーユニット8を介して取付部材としてのユニットブラケット7に確実に取り付けることができる。
【0043】
さらに、この実施例における車両用ミラー装置(ドアミラー装置1)は、嵌合部26に設けた弾性変形部32により、嵌合部26が嵌合受部27に確実に嵌合することができるので、ミラーユニット9のミラーボディー10をピボット機構12および支持部材としてのパワーユニット8を介して取付部材としてのユニットブラケット7に確実に取り付けることができる。すなわち、図7に示すように、嵌合受部27に嵌合している嵌合部26の傾斜状態(図7中の実線で示す状態)と、嵌合受部27に嵌合していない嵌合部26の傾斜状態(図7中の点線で示す状態)とは、さほど変わらない。すなわち、嵌合部26の嵌合受部27に嵌合する前の状態と嵌合した状態との移動距離および移動角度が小さい。この結果、嵌合部26が嵌合受部27に確実に嵌合して嵌合受部27から外れるのを確実に防ぐことができる。
【0044】
その上、この実施例における車両用ミラー装置(ドアミラー装置1)は、嵌合部26および撓み部28、29、30により、スクリューなどを使用せずに、ミラーユニット9のミラーボディー10をピボット機構12および支持部材としてのパワーユニット8を介して取付部材としてのユニットブラケット7に取り付けることができるので、取付作業が簡略化して製造コストを安価にすることができ、しかも、金属製のスクリューなどを使用しないことにより、樹脂製部品のリサイクル作業が容易化して環境対策に貢献することができる。
【0045】
(実施例以外の例の説明)
なお、前記の実施例においては、ピボット機構12の中心Oが3個の撓み部28、29、30により囲まれた範囲内に位置し、各撓み部28、29、30の中心O1、OH1、OV1からピボット機構12の中心Oまでの距離と各撓み部28、29、30の弾性力との積が同等もしくはほぼ同等であるものである。ところが、この発明においては、ミラーボディー10からなるミラーユニット9およびピボット機構12および支持部材としてのパワーユニット8を含めた重心が3個の撓み部28、29、30により囲まれた範囲内に位置し、各撓み部28、29、30の中心O1、OH1、OV1からピボット機構12の中心Oまでの距離と各撓み部28、29、30の弾性力との積が同等もしくはほぼ同等であるものであっても良い。この場合においては、ミラーボディー10からなるミラーユニット9およびピボット機構12および支持部材としてのパワーユニット8を含めた重心が3個の撓み部28、29、30の弾性力の合成した点とが一致もしくはほぼ一致することとなる。この結果、この場合においては、ミラーユニット9のミラーボディー10およびピボット機構12および支持部材としてのパワーユニット8を取付部材としてのユニットブラケット7にバランスよく取り付けることができ、その分、ミラーボディー10が車両の振動によりぶれるのを極力抑制することができる。
【0046】
また、前記の実施例においては、取付部材としてミラーハウジング5に固定されているユニットブラケット7である。ところが、この発明においては、取付部材として、ミラーハウジング5に固定されているユニットブラケット7以外に、たとえば、ミラーハウジング5でも良い。
【0047】
さらに、前記の実施例においては、支持部材としてパワーユニット8である。ところが、この発明においては、支持部材として、パワーユニット8以外に、たとえば、ミラーボディー10をピボット機構12を介して支持する部材であれば良い。
【0048】
さらにまた、前記の実施例においては、車両用ミラー装置としてドアミラー装置1について説明する。ところが、この発明においては、ドアミラー装置1以外の車両用ミラー装置、たとえば、フェンダミラー、トラックミラーなどのアウトサイドミラー装置、あるいは、インサイドミラー装置などの車両用ミラー装置にも適用することができる。
【0049】
さらにまた、前記の実施例においては、電動格納タイプのドアミラー装置1について説明するものである。ところが、この発明においては、電動格納タイプのドアミラー装置1以外に、たとえば、手動格納タイプのドアミラー装置にも適用することができる。
【0050】
さらにまた、前記の実施例においては、撓み部28、29、30が3個であり、また、嵌合部26および嵌合受部27が6個である。ところが、この発明においては、撓み部および嵌合部(嵌合受部)の個数や設ける箇所や形状などは特に限定しない。
【符号の説明】
【0051】
1 ドアミラー装置(車両用ミラー装置)
2 ミラーベース
3 ミラーアセンブリ
4 電動格納ユニット
5 ミラーハウジング
6 スクリュー
7 ユニットブラケット(取付部材)
8 パワーユニット(支持部材)
9 ミラーユニット
10 ミラーボディー
11 ミラーホルダ
12 ピボット機構
13 上下用傾倒機構
14 左右用傾倒機構
15 ピボット受部
16 ピボット部
17 上下用傾倒機構の進退ロッド
18 左右用傾倒機構の進退ロッド
19 上下用傾倒機構のピボット
20 左右用傾倒機構のピボット
21 ピボット受
22 ハウジング
23 シャフト
24 ケーシング
25 開口部
26 嵌合部
27 嵌合受部
28 第1撓み部
29 第2撓み部
30 第3撓み部
31 弾性板部
32 弾性変形部
H−H 水平軸
V−V 垂直軸(ミラーユニットの左右方向の回転軸)
V1−V1 垂直軸(ミラーアッセンブリの回転軸)
O ピボット機構の中心(水平軸と垂直軸との交点)
OH 左右用傾倒機構の中心
OV 上下用傾倒機構の中心
O1 第1撓み部の中心
OH1 第2撓み部の中心
OV1 第3撓み部の中心
A 取付方向
B 弾性当接方向
C 嵌合方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラーボディーと、
前記ミラーボディーをピボット機構を介して支持する支持部材と、
前記支持部材を取り付ける取付部材と、
を備える車両用ミラー装置において、
前記支持部材もしくは前記取付部材のうち少なくともいずれか一方には、いずれか他方に嵌合する複数個の嵌合部が設けられていて、
前記支持部材もしくは前記取付部材のうち少なくともいずれか一方には、いずれか他方に弾性当接する複数個の撓み部が設けられていて、
前記ミラーボディーおよび前記ピボット機構および前記支持部材を含めた重心は、複数個の前記撓み部により囲まれた範囲内に位置し、
各前記撓み部から前記重心までの距離と、各前記撓み部の弾性力との積は、同等もしくはほぼ同等である、
ことを特徴とする車両用ミラー装置。
【請求項2】
ミラーボディーと、
前記ミラーボディーをピボット機構を介して支持する支持部材と、
前記支持部材を取り付ける取付部材と、
を備える車両用ミラー装置において、
前記支持部材もしくは前記取付部材のうち少なくともいずれか一方には、いずれか他方に嵌合する複数個の嵌合部が設けられていて、
前記支持部材もしくは前記取付部材のうち少なくともいずれか一方には、いずれか他方に当接する複数個の撓み部が設けられていて、
前記ピボット機構の中心は、複数個の前記撓み部により囲まれた範囲内に位置し、
各前記撓み部から前記ピボット機構の中心までの距離と、各前記撓み部の弾性力との積は、同等もしくはほぼ同等である、
ことを特徴とする車両用ミラー装置。
【請求項3】
前記嵌合部には、いずれか他方に嵌合する際に、複数個の前記撓み部がいずれか他方に弾性当接する方向に対して交差する方向に弾性変形する弾性変形部が設けられている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用ミラー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−62025(P2012−62025A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209982(P2010−209982)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】