説明

車両用ミラー装置

【課題】カバーを仮組位置から組付位置へ2方向に移動させて保持部材に組付ける。
【解決手段】車両用ドアミラー装置10では、組付位置で本組用フック部56が車両前後方向において被係合爪部42の底壁44と係合すると共に、バイザカバー22(ロアカバー26)の仮組用フック部64が本組用フック部56に対して第1交差方向一側(第2交差方向一側)にずれて配置されている。これにより、バイザカバー22(ロアカバー26)がバイザボディ16に組付けられる際には、仮組位置と組付位置との間でバイザカバー22(ロアカバー26)を第1交差方向一側(第2交差方向一側)へ移動させた後にバイザカバー22(ロアカバー26)を車両後方へ移動させることで、本組用フック部56と被係合爪部42の底壁44とが係合する。これにより、バイザカバー22(ロアカバー26)を仮組位置から組付位置へ2方向に移動させてバイザボディ16に組付けできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組付位置と仮組位置との間で移動可能に構成されたカバーを備えた車両用ミラー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載のガーニッシュの取付構造では、フロントバンパに車両前方へ開放されたガーニッシュ収容用凹部が設けられており、ガーニッシュ収容用凹部内にガーニッシュが組付けられている。また、ガーニッシュには、固定保持用係止部及び仮保持用係止部が車両前後方向に延設されている。
【0003】
そして、仮保持用係止部をフロントバンパの取付孔に係合させることで、ガーニッシュが仮組位置に仮保持される。この状態からガーニッシュを車両後方へ押し込むことで、固定保持用係止部が該取付孔に係合されて、ガーニッシュがガーニッシュ収容用凹部内に組付けられる。これにより、例えば、仮組位置でフロントバンパ及びガーニッシュに塗料を吹き付けることで、フロントバンパ及びガーニッシュを同一の塗装色にできると共に、ガーニッシュ収容用凹部内及びガーニッシュの周縁部を塗装することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−352002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、ガーニッシュが一対の部材で構成された場合にこの取付構造を適用すると、仮組位置において、一対のガーニッシュはガーニッシュ収容用凹部に対して車両前方へ配置されるものの、一対のガーニッシュ間の距離は変化しない。このため、一対のガーニッシュにおける隣接した縁部に塗料を吹き付けできないという問題がある。
【0006】
これに対して、仮組位置と組付位置との間で一対のガーニッシュを互いに離間する方向へ傾斜して移動させる(固定保持用係止部及び仮保持用係止部を車両前後方向に対して傾斜する方向へ延設する)ことで、仮組位置において一対のガーニッシュを離間させることができる。
【0007】
しかしながら、この場合には、ガーニッシュ収容用凹部の開放方向と、仮組位置と組付位置との間でガーニッシュを移動させる方向と、が交差するため、ガーニッシュ本体を収容用凹部内へ組付けできないという問題がある。このため、このような仮組位置から組付位置へ部材を移動させて該部材を取付ける構造においては、未だ改善の余地がある。
【0008】
本発明は、上記事実を考慮し、カバーを仮組位置から組付位置へ2方向に移動させて保持部材に組付けできる車両用ミラー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の車両用ミラー装置は、車両のアウタミラーを保持する保持部材と、組付位置において前記保持部材に組付けられて前記保持部材の車両前面側を覆うと共に、前記組付位置から車両前側へ離間された仮組位置と前記組付位置との間を移動可能にされたカバーと、前記保持部材及び前記カバーの一方に設けられた被係合部と、前記保持部材及び前記カバーの他方に設けられ、前記被係合部と車両前後方向に係合して前記カバーを前記組付位置に保持させる本組用係合部と、前記保持部材及び前記カバーの他方に設けられ、前記被係合部と係合することで前記カバーを前記仮組位置に仮保持させると共に、前記本組用係合部に対して車両前後方向と交差する交差方向にずれて配置された仮組用係合部と、を備えている。
【0010】
請求項1に記載の車両用ミラー装置では、車両のアウタミラーが保持部材に支持されており、保持部材には、カバーが組付けられている。保持部材及びカバーの一方には、被係合部が設けられており、保持部材及びカバーの他方には、本組用係合部及び仮組用係合部が設けられている。そして、本組用係合部が被係合部と係合することで、カバーが組付位置に保持される。さらに、仮組用係合部が被係合部と係合することで、カバーが、組付位置から車両前側へ離間された仮組位置に仮保持される。
【0011】
ここで、本組用係合部は被係合部と車両前後方向に係合すると共に、仮組用係合部が本組用係合部に対して車両前後方向と交差する交差方向にずれて配置されている。このため、仮組位置では、カバーが本組位置に対して車両前方かつ交差方向へずれて配置される。これにより、カバーを保持部材に組付ける際には、カバーを交差方向へ移動させた後にカバーを車両後方へ移動させることで、本組用係合部が被係合部に係合できる。これにより、カバーを仮組位置から組付位置へ2方向に移動させてカバーを保持部材に組付けできる。
【0012】
請求項2に記載の車両用ミラー装置は、請求項1に記載の車両用ミラー装置において、前記本組用係合部と前記仮組用係合部とを連結すると共に、前記交差方向に延伸された交差部を有する連結部を備えた請求項1に記載の車両用ミラー装置。
【0013】
請求項2に記載の車両用ミラー装置では、本組用係合部と仮組用係合部とが連結部によって連結されており、連結部は、交差方向に延伸された交差部を有している。このため、本組用係合部、仮組用係合部、及び連結部を一体に形成できる。これにより、簡易な構成でカバーを仮組位置から組付位置へ2方向に移動させることができる。
【0014】
請求項3に記載の車両用ミラー装置は、請求項2に記載の車両用ミラー装置において、前記被係合部に設けられ、前記カバー部が前記仮組位置から前記組付位置へ移動される際に前記連結部と摺接可能に構成された摺接部を備えている。
【0015】
請求項3に記載の車両用ミラー装置では、被係合部に摺接部が設けられており、カバー部が仮組位置から組付位置へ移動される際に、連結部と摺接部とが摺接されるため、連結部及び摺接部によってカバーの移動をガイドすることができる。これにより、カバーを保持部材に組付ける際の組付性を向上できる。
【0016】
請求項4に記載の車両用ミラー装置は、請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の車両用ミラー装置において、前記カバーの縁部が前記保持部材の縁部に車両前方から挿入される。
【0017】
請求項4に記載の車両用ミラー装置では、カバーの周縁部が保持部材の周縁部に車両前方から挿入されるため、カバーの周縁部が保持部材の周縁部に挿入される方向と本組用係合部が被係合部に係合される方向とを一致させることができる。これにより、カバーの周縁部の浮きを抑制しつつカバーと保持部材とを係合できる。
【0018】
請求項5に記載の車両用ミラー装置は、請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の車両用ミラー装置において、前記被係合部が前記保持部材に設けられ、前記カバーは第1カバーと第2カバーとを含んで構成され、前記第1カバー及び前記第2カバーには前記本組用係合部及び前記仮組用係合部がそれぞれ設けられると共に、前記仮組用係合部が前記本組用係合部に対して車両後方かつ前記交差方向の一方向にずれて配置され、前記第1カバーに対応する前記交差方向の一方向と前記第2カバーに対応する前記交差方向の一方向とが互いに接近して交差する。
【0019】
請求項5に記載の車両用ミラー装置では、カバーが第1カバーと第2カバーとを含んで構成されている。第1カバー及び第2カバーには、本組用係合部及び仮組用係合部がそれぞれ設けられており、仮組用係合部が本組用係合部に対して車両後方かつ交差方向の一方向にずれて配置されている。また、被係合部が保持部材に設けられている。
【0020】
ここで、第1カバーに対応する交差方向の一方向と第2カバーに対応する交差方向の一方向とが互いに接近して交差する。このため、仮組位置では、第1カバー及び第2カバーが組付位置に対して交差方向の他方向へ各々配置されるため、第1カバーと第2カバーとが互いに離間して配置される。これにより、例えば、第1カバーと第2カバーとの隣接する縁部が仮組位置において互いに離間される。したがって、例えば、仮組位置において第1カバー、第2カバー、及び保持部材を同時に塗装する場合でも、これらの部材を良好に塗装できる。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載の車両用ミラー装置によれば、カバーを仮組位置から組付位置へ2方向に移動させてカバーを保持部材に組付けできる。
【0022】
請求項2に記載の車両用ミラー装置によれば、簡易な構成でカバーを仮組位置から組付位置へ2方向に移動させることができる。
【0023】
請求項3に記載の車両用ミラー装置によれば、カバーを保持部材に組付ける際の組付性を向上できる。
【0024】
請求項4に記載の車両用ミラー装置によれば、カバーの周縁部の浮きを抑制しつつカバーと保持部材とを係合できる。
【0025】
請求項5に記載の車両用ミラー装置によれば、例えば、仮組位置において第1カバー、第2カバー、及び保持部材を同時に塗装する場合でも、これらの部材を良好に塗装できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両用ドアミラー装置に用いられるバイザカバー及びロアカバーが仮組位置に配置された状態を示す側断面図(図2の1−1線断面図)である。
【図2】図1に示される車両用ドアミラー装置を車両前方から見た正面図である。
【図3】(A)〜(D)は、図1に示されるバイザカバーに設けられた係合爪部が仮組位置から組付位置へ移動される際を示す側断面図である。
【図4】(A)〜(D)は、図1に示されるバイザカバーの周縁部が仮組位置から組付位置へ移動される際を示す側断面図である。
【図5】(A)〜(D)は、図1に示されるロアカバーに設けられた係合爪部が仮組位置から組付位置へ移動される際を示す側断面図である。
【図6】(A)〜(D)は、図1に示されるロアカバーの周縁部が仮組位置から組付位置へ移動される際を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1には、本発明の実施の形態に係る車両用ミラー装置としての車両用ドアミラー装置10のカバー20をバイザボディ16から分解した状態が車幅方向外側から見た側断面図にて示されており、図2には、車両用ドアミラー装置10が車両前方から見た正面図にて示されている。なお、図面に適宜示される矢印FRは車両前方を示し、矢印INは車幅方向内側を示し、矢印UPは上方を示している。
【0028】
これらの図に示すように、車両用ドアミラー装置10は、車体に固定されるステー12と、「保持部材」としてのバイザボディ16と、カバー20と、アウタミラー14と、組付機構40とを含んで構成されている。
【0029】
ステー12は、図示しない車両のドア(車体) に固定されている。ステー12には、格納機構(図示省略)が支持されており、この格納機構にバイザボディ16が固定されている。これにより、バイザボディ16は格納機構及びステー12を介して車体に連結されている。
【0030】
図1に示すように、バイザボディ16は、樹脂により製作されると共に、側面視において車両後方へ開放された凹形状に形成されている。バイザボディ16の開放部内には、アウタミラー14が保持されており、アウタミラー14は、鏡面を車両後方へ向けて配置されている。また、バイザボディ16の周縁部には、内周側の部分において、ボディ側段差部18が設けられており、ボディ側段差部18はバイザボディ16の周縁に沿って形成されている。
【0031】
カバー20は、バイザボディ16の車両前方に配置されると共に、車両後方へ開放された略容器状に形成されて、バイザボディ16の車両前方部分を覆っている。カバー20は、樹脂により製作されている。また、カバー20は、カバー20の上部を構成する「第1カバー」としてのバイザカバー22とカバー20の下部を構成する「第2カバー」としてのロアカバー26とを含んで構成されている。このバイザカバー22及びロアカバー26は、それぞれバイザボディ16に組付けられている。
【0032】
バイザカバー22の周縁部の外周側の部分には、下縁部を除く部分において、バイザカバー側段差部24が設けられている。バイザカバー側段差部24はバイザカバー22の周縁に沿って形成されており、バイザカバー22がバイザボディ16に組付けられた組付位置において、バイザカバー側段差部24内にバイザボディ16の周縁部が配置されて、ボディ側段差部18とバイザカバー側段差部24とが嵌合されている(図4(D)参照)。
【0033】
ロアカバー26の周縁部の外周側の部分には、上縁部を除く部分において、ロアカバー側段差部28が設けられている。ロアカバー側段差部28は、ロアカバー26の周縁に沿って形成されており、ロアカバー26がバイザボディ16に組付けられた組付位置において、ロアカバー側段差部28内にバイザボディ16の周縁部が配置されて、ボディ側段差部18とロアカバー側段差部28とが嵌合されている(図6(D)参照)。
【0034】
ロアカバー26の上縁部には、フランジ部30が設けられており、バイザカバー22及びロアカバー26がバイザボディ16に組付けられた組付位置において、フランジ部30はバイザカバー22の下縁部に対して車両後方に配置されている。つまり、組付位置において、ロアカバー26の上縁部とバイザカバー22の下縁部とは車両前後方向において重なり合って配置されている。
【0035】
次に本発明の要部である組付機構40の構成について説明する。
【0036】
組付機構40は、「被係合部」としての被係合爪部42と係合爪部52(広義には、「係合部」として把握される要素である)とを含んで構成されており、被係合爪部42と係合爪部52とで対を成している。また、車両用ドアミラー装置10は、この一対の被係合爪部42と係合爪部52を複数(本実施の形態では4つ)備えており、一対の被係合爪部42と係合爪部52は、車両用ドアミラー装置10の上部に2箇所設けられると共に、車両用ドアミラー装置10の下部に2箇所設けられている。そして、車両用ドアミラー装置10の上部に設けられた一対の被係合爪部42及び係合爪部52は、車両用ドアミラー装置10の下部に設けられた一対の被係合爪部42及び係合爪部52と上下方向において対称に形成されている。これにより、車両用ドアミラー装置10の上部に設けられた被係合爪部42及び係合爪部52について説明して、車両用ドアミラー装置10の下部に設けられた被係合爪部42及び係合爪部52についての説明を省略する。
【0037】
被係合爪部42は、バイザボディ16に一体に設けられると共に、バイザボディ16の車幅方向外側部及び車幅方向中間部にそれぞれ配置されている(図1では、バイザボディ16の車幅方向中間部に配置された被係合爪部42が示されている)。被係合爪部42は、側面視において車両後方へ開放された略逆C字形状に形成されている。図3(A)に示すように、被係合爪部42の底壁44には、上下方向中間部において、「摺動部」としての溝部46が貫通形成されている。このため、被係合爪部42は、溝部46に対して上方に配置された第1被係合爪部48と溝部46に対して下方に配置された第2被係合爪部50とで構成されており、この第1被係合爪部48及び第2被係合爪部50は、上下方向に弾性変形可能に構成されている(図1参照)。
【0038】
第1被係合爪部48の先端には、車両前方の部分において、第1傾斜面48Aが形成されており、第1傾斜面48Aは、車両後方へ向かうに従い下方(図1の矢印C方向)へ傾斜して配置されている。また、第2被係合爪部50の先端には、車両後方の部分において、第2傾斜面50Aが形成されており、第2傾斜面50Aは第1傾斜面48Aと平行に配置されている。これにより、溝部46は、車両前後方向(図1の矢印A方向及び矢印B方向)に沿った第1溝46Aと車両前後方向に対して交差した交差方向(図1の矢印C方向及び矢印D方向)に沿った第2溝46Bとで構成されている。
【0039】
一方、図1に示すように、係合爪部52は、バイザカバー22及びロアカバー26にそれぞれ2つずつ設けられている。上述したように、バイザカバー22に設けられた係合爪部52とロアカバー26に設けられた係合爪部52は、上下方向において対称に形成されているため、バイザカバー22に設けられた係合爪部52について説明する。
【0040】
係合爪部52は、側面視において略クランク状に形成されて、被係合爪部42に対応する位置に配置されている。係合爪部52は、係合片54と、「本組用係合部」としての本組用フック部56と、「連結部」としての連結片60と、「仮組用係合部」としての仮組用フック部64とを含んで構成されている。
【0041】
係合片54は、バイザカバー22から車両後方へ突出されている。また、係合片54は、図3(A)に示す仮組位置において被係合爪部42に対して車両前方に配置されており、図3(D)に示す組付位置において、係合片54の車両後方の端部が被係合爪部42の溝部46内に配置されている。
【0042】
本組用フック部56は係合片54の先端(車両後方端)に設けられている。本組用フック部56は、側面視において上方及び下方へ突出した略三角形状に形成されると共に、一対の本組用傾斜面58を有しており、上方に配置された本組用傾斜面58は、第1被係合爪部48の第1傾斜面48Aと平行に配置されている。そして、本組用フック部56は、仮組位置において被係合爪部42に対して車両前方に配置されて(図3(A)参照)、組付位置において被係合爪部42の底壁44と車両前後方向において係合されるように構成されている(図3(D)参照)。
【0043】
連結片60は、側面視において略クランク状に形成されて、本組用フック部56から車両後方へ延設された第1連結部60Aを有している。連結片60の長手方向中間部には、「交差部」としての傾斜部62が設けられている。傾斜部62は、第1連結部60Aの車両後方の端部から車両後方へ向かうに従い下方(図1の矢印C方向であり、本発明の「第1カバーに対応する交差方向の一方向」である。以下、この方向を「第1交差方向一側」と称す)へ延伸されると共に、被係合爪部42の溝部46の第2溝46Bと平行に形成されている(図3(A)参照)。また、連結片60は第2連結部60Bを有しており、第2連結部60Bは傾斜部62の車両後方の端部から車両後方へ延設されている。
【0044】
さらに、この傾斜部62は、第2溝46B内を交差方向(図1の矢印C方向及び矢印D方向)に沿って挿通可能に構成されている。これにより、連結片60が溝部46内を車両前後方向及び交差方向に挿通可能に構成されており、連結片60が溝部46内を挿通する際には、連結片60が溝部46内を摺接されるように構成されている。また、連結片60は、仮組位置において溝部46内に配置されて(図3(A)参照)、組付位置において被係合爪部42の底壁44に対して車両後方に配置されている(図3(D)参照)。
【0045】
仮組用フック部64は、連結片60の第2連結部60Bの先端部(車両後方端部)に設けられており、仮組用フック部64と本組用フック部56とが、連結片60によって連結されている。これにより、仮組用フック部64が本組用フック部56に対して車両後方かつ第1交差方向一側へ配置されており、仮組位置では、バイザカバー22が組付位置に対して車両前方かつ第1交差方向他側(図1の矢印D方向側)に配置されるように構成されている。仮組用フック部64は、側面視において上方へ突出された略台形状に形成されて、仮組位置において被係合爪部42の底壁44に対して車両後方に配置されている(図3(A)参照)。また、仮組用フック部64の車両前方の面が係止面66とされており、係止面66は車両前後方向に対して直交する方向に沿って配置されている。さらに、仮組用フック部64の上下方向の寸法は、溝部46の第1溝46Aの上下方向の寸法に比して大きく設定されており、組付位置において係止面66が底壁44に当接可能に構成されている。
【0046】
なお、上述したようにロアカバー26に設けられた係合爪部52は、バイザカバー22に設けられた係合爪部52と上下方向において対称に形成されているため、当該係合爪部52の連結片60の傾斜部62は、車両後方へ向かうに従い上方(図1の矢印E方向であり、本発明の「第2カバーに対応する交差方向の一方向」である。以下、この方向を「第2交差方向一側」と称す)へ延設されている。このため、ロアカバー26における第2交差方向一側とバイザカバー22における第1交差方向一側とは、縦断面視において互いに接近して交差している。したがって、仮組位置では、ロアカバー26が組付位置に対して車両前方かつ第2交差方向他側(図1の矢印F方向側)に配置されて、ロアカバー26とバイザカバー22とが互いに離間するように構成されている。
【0047】
次に、バイザカバー22及びロアカバー26をバイザボディ16に組付ける手順について説明しつつ本実施の形態の作用及び効果について説明する。
【0048】
上述のように構成された車両用ドアミラー装置10では、最初に、バイザカバー22及びロアカバー26をそれぞれ仮組位置に配置させる。この際には、バイザカバー22の仮組用フック部64及びロアカバー26の仮組用フック部64をバイザボディ16の被係合爪部42の溝部46内に車両前方から挿入させる(図1参照)。そして、各々の仮組用フック部64の係止面66を被係合爪部42の底壁44に当接させることで、バイザカバー22及びロアカバー26の車両前方への移動が制限されて、バイザカバー22及びロアカバー26が仮組位置に仮保持される。
【0049】
仮組位置では、バイザカバー22はバイザボディ16に対して車両前方かつ第1交差方向他側に配置されており、ロアカバー26はバイザボディ16に対して車両前方かつ第2交差方向他側に配置されている。これにより、車両前方から見て、バイザカバー22の下縁部とロアカバー26のフランジ部30との間に隙間が形成されるようにバイザカバー22とロアカバー26とが上下方向において離間して配置されている。この状態で、車両前方から塗料を吹き付けることで、バイザカバー22、ロアカバー26、及びバイザボディ16が同時に塗装される。
【0050】
次に、塗装したロアカバー26及びバイザカバー22を仮組位置から組付位置へ移動させてバイザボディ16に組付ける手順について説明する。
【0051】
先にロアカバー26を仮組位置から車両後方へ移動させる。この際には、ロアカバー26の連結片60の第2連結部60Bが、溝部46の第1溝46Aに沿って溝部46内を摺接しつつ車両後方へ移動される(図5(A)の矢印A方向へ移動される)。そして、該連結片60の傾斜部62がバイザボディ16の溝部46に到達した際にロアカバー26を第2交差方向一側(図5(B)の矢印E方向)へ移動させる。これにより、該連結片60の傾斜部62が、溝部46の第1傾斜面48A上及び第2傾斜面50A上を摺接しつつ、該連結片60が溝部46の第2溝46Bを挿通する(図5(B)参照)。この際には、ロアカバー26の周縁部が第2交差方向一側(図6(B)の矢印E方向)へ移動される。
【0052】
ロアカバー26の傾斜部62の車両前方の端部がバイザボディ16の溝部46に到達した際にロアカバー26を車両後方へ移動させると、連結片60の第1連結部60Aが溝部46内を摺接しつつ車両後方へ移動される(図5(C)参照)。そして、本組用フック部56が溝部46に到達すると、本組用フック部56の本組用傾斜面58が、第1被係合爪部48を下方へ押圧すると共に、第2被係合爪部50を上方へ押圧する。これにより、第1被係合爪部48が下方へ弾性変形すると共に、第2被係合爪部50が上方へ弾性変形することで、本組用フック部56の溝部46内への挿入が許容される。この際には、ロアカバー26の周縁部が、バイザボディ16のボディ側段差部18に対して車両前方へ配置されて、車両後方(図6(C)の矢印A方向)へ移動される。
【0053】
そして、ロアカバー26の本組用フック部56が被係合爪部42の底壁44と係合されると共に、ボディ側段差部18とロアカバー側段差部28とが嵌合される。これにより、ロアカバー26がバイザボディ16に組付けられる(図5(D)及び図6(D)参照)。
【0054】
次でバイザカバー22を仮組位置から車両後方へ移動させる。この際には、バイザカバー22の連結片60の第2連結部60Bが溝部46の第1溝46Aに沿って溝部46内を摺接しつつ車両後方へ移動される(図3(A)の矢印A方向へ移動される)。そして、該連結片60の傾斜部62がバイザボディ16の溝部46に到達した際にバイザカバー22を第1交差方向一側(図3(B)の矢印C方向)へ移動させる。これにより、該連結片60の傾斜部62が、溝部46の第1傾斜面48A及び第2傾斜面50A上を摺接しつつ、該連結片60が溝部46の第2溝46Bを挿通する(図3(B)参照)。この際には、バイザカバー22の周縁部が第1交差方向一側(図4(B)の矢印C方向)へ移動される。
【0055】
バイザカバー22の傾斜部62の車両前方の端部がバイザボディ16の溝部46に到達した際にバイザカバー22を車両後方へ移動させると、連結片60の第1連結部60Aが溝部46内を摺接しつつ車両後方へ移動される(図3(C)参照)。そして、本組用フック部56が溝部46に到達すると、本組用フック部56の本組用傾斜面58が、第1被係合爪部48を上方へ押圧すると共に、第2被係合爪部50を下方へ押圧する。これにより、第1被係合爪部48が上方へ弾性変形すると共に、第2被係合爪部50が下方へ弾性変形することで、本組用フック部56の溝部46内への挿入が許容される。この際には、バイザカバー22の周縁部が、バイザボディ16のボディ側段差部18に対して車両前方へ配置されて、車両後方(図4(C)の矢印A方向)へ移動される。
【0056】
そして、バイザカバー22の本組用フック部56が被係合爪部42の底壁44と係合されて(図3(D)参照)、バイザカバー22の下縁部がロアカバー26のフランジ部30の車両前方に配置されると共に、ボディ側段差部18とバイザカバー側段差部24とが嵌合される(図4(D)参照)。これにより、バイザカバー22がバイザボディ16に組付けられる。
【0057】
ここで、上述したように、本組用フック部56は車両前後方向において被係合爪部42の底壁44と係合すると共に、バイザカバー22(ロアカバー26)の仮組用フック部64が本組用フック部56に対して第1交差方向一側(第2交差方向一側)にずれて配置されている。これにより、バイザカバー22(ロアカバー26)がバイザボディ16に組付けられる際には、仮組位置と組付位置との間でバイザカバー22(ロアカバー26)を第1交差方向一側(第2交差方向一側)へ移動させた後にバイザカバー22(ロアカバー26)を車両後方へ移動させることで、本組用フック部56と被係合爪部42の底壁44とが係合する。これにより、バイザカバー22(ロアカバー26)を仮組位置から組付位置へ2方向に移動させてバイザボディ16に組付けできる。
【0058】
また、バイザカバー22に対応する第1交差方向一側(車両後方へ向かうに従い下方へ傾斜する方向)とロアカバー26に対応する第2交差方向一側(車両後方へ向かうに従い上方へ傾斜する方向)とが、互いに接近して交差している。このため、仮組位置では、バイザカバー22とロアカバー26とが上下方向に互いに離間して配置される。これにより、組付位置においてバイザカバー22の下縁部とロアカバー26のフランジ部30とが車両前後に重なるように配置されても、仮組位置では、バイザカバー22の下縁部とロアカバー26のフランジ部30とが上下方向において互いに離間される。したがって、仮組位置においてバイザカバー22、ロアカバー26、及びバイザボディ16を同時に塗装する場合でも、バイザカバー22の下縁部とロアカバー26のフランジ部30に塗料を吹き付けることができるため、これらの部材を良好に塗装できる。
【0059】
また、連結片60が本組用フック部56と仮組用フック部64とを連結しており、連結片60は、交差方向に延伸された傾斜部62を有している。このため、本組用フック部56、仮組用フック部64、及び連結片60を一体に形成できる。これにより、簡易な構成でバイザカバー22(ロアカバー26)を仮組位置から組付位置へ2方向に移動させることができる。
【0060】
さらに、被係合爪部42には溝部46が設けられており、バイザカバー22(ロアカバー26)が仮組位置から組付位置へ移動される際に連結片60が溝部46内を摺接することができる。これにより、連結片60及び溝部46によってバイザカバー22(ロアカバー26)の移動をガイドすることができるため、バイザカバー22(ロアカバー26)をバイザボディ16に組付ける際の組付性を向上できる。
【0061】
また、バイザカバー22及びロアカバー26の周縁部が車両後方に移動されてバイザボディ16のボディ側段差部18に挿入される。これにより、バイザカバー22及びロアカバー26の周縁部をバイザボディ16のボディ側段差部18へ挿入させる方向と被係合爪部42と本組用フック部56との係合方向を一致できるため、バイザカバー22及びロアカバー26の周縁部の浮きを抑制しつつバイザカバー22及びロアカバー26とバイザボディ16とを係合できる。
【0062】
なお、本実施の形態では、バイザカバー22及びロアカバー26に係合爪部52が設けられており、バイザボディ16に被係合爪部42が設けられている。これに替えて、バイザカバー22及びロアカバー26に被係合爪部42を設けると共に、バイザボディ16に係合爪部52を設けてもよい。この場合には、バイザボディ16の上部に設けられる係合爪部52は、バイザボディ16から車両前方へ延設されると共に、係合爪部52の傾斜部62が車両前方へ向かうに従い上方へ延伸される。一方、バイザボディ16の下部に設けられる係合爪部52は、バイザボディ16から車両前方へ延設されると共に、係合爪部52の傾斜部62が車両前方へ向かうに従い下方へ延伸される。
【0063】
また、本実施の形態では、本組用フック部56と仮組用フック部64とが連結片60によって連結されて一体に形成されている。これに替えて、本組用フック部56と仮組用フック部64とを別体に形成してもよい。例えば、係合爪部52において本組用フック部56を省略して、本組用フック部56が形成された係合爪部52をバイザカバー22及びロアカバー26に別途設けると共に、別途設けた係合爪部52に対応する被係合爪部42をバイザボディ16に新たに設けてもよい。
【0064】
さらに、本実施の形態では、バイザカバー22の組付位置に対する仮組位置が車両前方かつ第1交差方向他側に設定されると共に、ロアカバー26の組付位置に対する仮組位置が車両前方かつ第2交差方向他側に設定されている。これに替えて、バイザカバー22又はロアカバー26の仮組位置を組付位置に対して車両前方に設定してもよい。つまり、バイザカバー22又はロアカバー26の仮組位置から組付位置への移動方向を一方向(車両後方)のみに設定してもよい。例えば、ロアカバー26の仮組位置を組付位置に対して車両前方に設定して、バイザカバー22の仮組位置を組付位置に対して車両前方かつ第1交差方向他側に設定してもよい。この場合においても、バイザカバー22の下縁部とロアカバー26のフランジ部30とが上下方向において互いに離間できる。また、この場合には、ロアカバー26の傾斜部62を車両前後方向に延伸するように形成する。
【0065】
また、本実施の形態における車両前後方向と第1交差方向一側との成す角度及び車両前後方向と第2交差方向一側との成す角度は任意に設定できる。
【0066】
さらに、本実施の形態では、第1交差方向一側が車両後方へ向かうに従い下方へ傾斜する方向とされると共に、第2交差方向一側が車両後方へ向かうに従い上方へ傾斜する方向に設定されているが、車両前後方向に対する第1交差方向一側及び第2交差方向一側の方向は任意に設定できる。例えば、バイザカバー22がカバー20の車幅方向内側部分を構成するように配置され、ロアカバー26がカバー20の車幅方向外側部分を構成するように配置される場合には、第1交差方向一側を車両後方へ向かうに従い車幅方向外側へ傾斜する方向に設定すると共に、第2交差方向一側を車両後方へ向かうに従い車幅方向内側へ傾斜する方向に設定してもよい。
【符号の説明】
【0067】
10 車両用ドアミラー装置(車両用ミラー装置)
14 アウタミラー
16 バイザボディ(保持部材)
20 カバー
22 バイザカバー(第1カバー)
26 ロアカバー(第2カバー)
42 被係合爪部(被係合部)
46 溝部(摺接部)
56 本組用フック部(本組用係合部)
60 連結片(連結部)
62 傾斜部(交差部)
64 仮組用フック部(仮組用係合部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のアウタミラーを保持する保持部材と、
組付位置において前記保持部材に組付けられて前記保持部材の車両前面側を覆うと共に、前記組付位置から車両前側へ離間された仮組位置と前記組付位置との間を移動可能にされたカバーと、
前記保持部材及び前記カバーの一方に設けられた被係合部と、
前記保持部材及び前記カバーの他方に設けられ、前記被係合部と車両前後方向に係合して前記カバーを前記組付位置に保持させる本組用係合部と、
前記保持部材及び前記カバーの他方に設けられ、前記被係合部と係合することで前記カバーを前記仮組位置に仮保持させると共に、前記本組用係合部に対して車両前後方向と交差する交差方向にずれて配置された仮組用係合部と、
を備えた車両用ミラー装置。
【請求項2】
前記本組用係合部と前記仮組用係合部とを連結すると共に、前記交差方向に延伸された交差部を有する連結部を備えた請求項1に記載の車両用ミラー装置。
【請求項3】
前記被係合部に設けられ、前記カバー部が前記仮組位置から前記組付位置へ移動される際に前記連結部と摺接可能に構成された摺接部を備えた請求項2に記載の車両用ミラー装置。
【請求項4】
前記カバーの縁部が前記保持部材の縁部に車両前方から挿入される請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の車両用ミラー装置。
【請求項5】
前記被係合部が前記保持部材に設けられ、
前記カバーは第1カバーと第2カバーとを含んで構成され、前記第1カバー及び前記第2カバーには前記本組用係合部及び前記仮組用係合部がそれぞれ設けられると共に、前記仮組用係合部が前記本組用係合部に対して車両後方かつ前記交差方向の一方向にずれて配置され、
前記第1カバーに対応する前記交差方向の一方向と前記第2カバーに対応する前記交差方向の一方向とが互いに接近して交差する請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の車両用ミラー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−112298(P2013−112298A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262727(P2011−262727)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】