説明

車両用ミラー装置

【課題】ミラーを初期傾動位置に高精度に復帰させる。
【解決手段】車両用ドアミラー装置では、自動変速機のシフトレンジが「R」レンジに変更された際に、上下モータが駆動されて、ミラーが初期傾動位置から変更傾動位置に傾動される。一方、自動変速機のシフトレンジが「R」レンジ以外に変更された際に、上下モータが駆動されて、ミラーが変更傾動位置から初期傾動位置へ向けて傾動される。ここで、ECUでは、上下モータの駆動停止後の慣性作動量を予測した上で、ミラーが初期傾動位置である上下モータの初期作動位置よりも上下モータの慣性作動量だけ前の位置において、上下モータの駆動を停止する。このため、その後、上下モータが慣性作動量だけ慣性作動されて、ミラーが傾動されることで、ミラーを初期傾動位置に高精度に復帰させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の機会にミラーを初期傾動位置から傾動させると共に第2の機会にミラーを初期傾動位置側へ傾動させる車両用ミラー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載された車両用電動ミラー装置では、シフトレバーがリバースレンジに対応したシフト位置に移動された際に、モータが駆動されて、ミラーが復帰位置から後輪視認位置へ回動される。その後、シフトレバーがリバースレンジに対応したシフト位置から離脱された際に、モータが駆動されて、ミラーが後輪視認位置から復帰位置側へ回動される。
【0003】
しかしながら、この車両用電動ミラー装置では、ミラーが後輪視認位置から回動されて復帰位置に到達した際にモータの駆動が停止されても、モータが慣性作動されることで、ミラーが復帰位置に正確には復帰されない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−243819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、ミラーを初期傾動位置に高精度に復帰させることができる車両用ミラー装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の車両用ミラー装置は、車両に設けられるミラーと、前記ミラーを支持し、第1の機会に駆動されて前記ミラーを初期傾動位置から変更傾動位置へ傾動させることで前記ミラーの鏡面角度が変更されると共に、第2の機会に駆動されて前記ミラーを変更傾動位置から初期傾動位置側へ傾動させる傾動機構と、前記傾動機構を制御可能にされると共に、前記傾動機構の駆動を停止させた後に前記傾動機構が慣性作動される慣性作動量又は慣性作動時間を設定され、第2の機会に前記ミラーが初期傾動位置に復帰するより慣性作動量又は慣性作動時間だけ前に前記傾動機構の駆動を停止させる制御手段と、を備えている。
【0007】
請求項2に記載の車両用ミラー装置は、請求項1に記載の車両用ミラー装置において、前記制御手段は、第2の機会に前記傾動機構の作動速度に基づき前記傾動機構の慣性作動量又は慣性作動時間を設定する。
【0008】
請求項3に記載の車両用ミラー装置は、請求項2に記載の車両用ミラー装置において、前記制御手段は、第2の機会に前記傾動機構の作動速度の変動状況に基づき前記傾動機構の慣性作動量又は慣性作動時間を設定する。
【0009】
請求項4に記載の車両用ミラー装置は、請求項2又は請求項3に記載の車両用ミラー装置において、前記制御手段は、前記傾動機構の作動量を所定量毎にカウントして検出する検出手段を有し、第2の機会に前記検出手段が前記傾動機構の作動量をカウントする時間間隔に基づき前記傾動機構の作動速度を検出する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の車両用ミラー装置では、傾動機構がミラーを支持しており、制御手段が傾動機構を制御可能にされている。
【0011】
第1の機会には、傾動機構が駆動されてミラーを初期傾動位置から変更傾動位置へ傾動させることで、ミラーの鏡面角度が変更される。さらに、第2の機会には、傾動機構が駆動されてミラーを変更傾動位置から初期傾動位置側へ傾動させる。
【0012】
ここで、制御手段が、傾動機構の駆動を停止させた後に傾動機構が慣性作動される慣性作動量又は慣性作動時間を設定されて、第2の機会に、ミラーが初期傾動位置に復帰するより慣性作動量又は慣性作動時間だけ前に、傾動機構の駆動を停止させる。
【0013】
このため、傾動機構が駆動を停止された後に傾動機構が慣性作動量又は慣性作動時間だけ慣性作動されることで、ミラーを初期傾動位置に高精度に復帰させることができる。
【0014】
請求項2に記載の車両用ミラー装置では、制御手段が、第2の機会に、傾動機構の作動速度に基づき、傾動機構の慣性作動量又は慣性作動時間を設定する。このため、傾動機構の慣性作動量又は慣性作動時間を高精度に設定できる。
【0015】
請求項3に記載の車両用ミラー装置では、制御手段が、第2の機会に、傾動機構の作動速度の変動状況に基づき、傾動機構の慣性作動量又は慣性作動時間を設定する。このため、傾動機構の慣性作動量又は慣性作動時間を一層高精度に設定できる。
【0016】
請求項4に記載の車両用ミラー装置では、制御手段の検出手段が傾動機構の作動量を所定量毎にカウントして検出する。さらに、第2の機会に、検出手段が傾動機構の作動量をカウントする時間間隔に基づき、制御手段が傾動機構の作動速度を検出する。このため、傾動機構の作動速度を検出する構成を安価にできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両用ドアミラー装置におけるミラーの復帰制御を示すタイミングチャートである。
【図2】本発明の実施の形態に係る車両用ドアミラー装置におけるミラーの復帰制御を示す動作説明図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る車両用ドアミラー装置におけるミラーの位置検出状況を示すグラフである。
【図4】本発明の実施の形態に係る車両用ドアミラー装置を示す車両後方から見た正面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る車両用ドアミラー装置の主要部を示す車両左右方向内方から見た断面図(図4の5−5線断面図)である。
【図6】(A)〜(C)は、本発明の実施の形態に係る車両用ドアミラー装置の上下センサを示す図であり、(A)は、斜視図であり、(B)は、側方から見た断面図であり、(C)は、軸方向から見た断面図((B)のC−C線断面図)である。
【図7】本発明の実施の形態に係る車両用ドアミラー装置におけるミラーの復帰制御の第1例を示すタイミングチャートである。
【図8】本発明の実施の形態に係る車両用ドアミラー装置におけるミラーの復帰制御の第2例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図4には、本発明の車両用ミラー装置が適用された実施の形態に係る車両用ドアミラー装置10が車両後方から見た正面図にて示されており、図5には、車両用ドアミラー装置10の主要部が車両左右方向内方(車両左方)から見た断面図(図4の5−5線断面図)にて示されている。なお、図面では、車両前方を矢印FRで示し、車両左右方向外方(車両右方)を矢印WOで示し、上方を矢印UPで示している。
【0019】
本実施の形態に係る車両用ドアミラー装置10は、車両のドア(フロントドア)の上下方向中間部の前端外側に設置されている。
【0020】
図4に示す如く、車両用ドアミラー装置10は、外周部材としての略直方体形容器状のバイザ12を備えており、バイザ12の車両左右方向内側部分がドア(車体側)に支持されることで、車両用ドアミラー装置10がドアに設置されている。また、バイザ12内は、車両後側へ開口されている。
【0021】
バイザ12内には、略矩形平板状のミラー14が設けられており、ミラー14は、バイザ12の開口部分に配置されている。ミラー14の車両後側部分には、ミラー本体16(鏡体)が設けられており、ミラー本体16は、反射膜の車両後側面が鏡面16Aにされている。また、ミラー本体16の車両前側及び外周は、ミラーホルダ18(ミラーホルダアウタ)によって被覆されている。
【0022】
バイザ12内には、図5に示す傾動機構としての電動式の位置調整ユニット20(鏡面角度調整装置)が設けられている。
【0023】
位置調整ユニット20の車両前側部分には、略半球形容器状のケース22が設けられており、ケース22内は、車両後側に開口されている。ケース22は、バイザ12に支持されており、これにより、位置調整ユニット20がバイザ12に支持されている。
【0024】
位置調整ユニット20の車両後側部分には、傾動体24(ミラーホルダインナ)が設けられており、傾動体24は、ケース22に傾動(揺動)可能に保持されている。傾動体24には、略円筒状の摺動筒24Aが設けられており、摺動筒24Aは、車両前側へ向かうに従い径が徐々に小さくされて、ケース22の周壁に対し摺動可能にされている。摺動筒24Aの車両後側端には、略円盤状の装着板24Bが一体に設けられており、装着板24Bの車両後側には、ミラー14のミラーホルダ18が着脱可能に装着されている。これにより、ミラー14が、重心位置(中心位置)を中心として、傾動体24と一体にケース22に対し傾動可能にされている。
【0025】
ケース22内には、傾動手段(モータ)としての上下モータ26及び左右モータ(図示省略)が固定されており、上下モータ26及び左右モータには、それぞれ移動部材(位置調整ロッド)としての棒状の上下ロッド28及び左右ロッド(図示省略)が機械的に接続されている。上下ロッド28及び左右ロッドは、ケース22内に、車両前後方向(軸方向)へスライド(移動)可能に保持されており、上下ロッド28の先端(車両後側端)は、ミラー14の重心位置の上方(下方でもよい)において、装着板24Bに回動可能に保持されると共に、左右ロッドの先端(車両後側端)は、ミラー14の重心位置の車両左右方向外方(車両左右方向内方でもよい)において、装着板24Bに回動可能に保持されている。
【0026】
上下モータ26及び左右モータは、バイザ12内又は車体側の制御手段を構成する制御装置としてのECU30(制御ECU、ミラーECU)に電気的に接続されており、ECU30には、車両の操作手段としての調整操作装置32及び電源としてのバッテリ34が電気的に接続されている。車両の乗員(特に運転手)により調整操作装置32が操作された際には、ECU30の制御により上下モータ26及び左右モータがバッテリ34から電流を供給されて駆動(回転)されることで、上下ロッド28が車両前後方向へスライドされて傾動体24及びミラー14がケース22に対し上下方向に傾動されると共に、左右ロッドが車両前後方向へスライドされて傾動体24及びミラー14がケース22に対し車両左右方向に傾動される。これにより、ミラー14の傾動位置が調整されて、ミラー14の鏡面16A角度(鏡面16Aが向けられる方向)が調整される。なお、上下モータ26の作動量(回転数)と上下ロッド28のスライド距離とは比例すると共に、左右モータの作動量(回転数)と左右ロッドのスライド距離とは比例する。
【0027】
ケース22には、制御手段を構成する検出手段(センサ、位置センサ)としての上下センサ36及び左右センサ(図示省略)が設けられており、上下センサ36及び左右センサは、それぞれECU30に電気的に接続されている。
【0028】
図6の(A)〜(C)にも示す如く、上下センサ36及び左右センサには、それぞれ略直方体形箱状のハウジング38が設けられており、ハウジング38がケース22の底壁外側に固定されることで、上下センサ36及び左右センサがケース22に固定されている。ハウジング38には、検出部材としての長尺略円筒状の検出ロッド40が車両前後方向(軸方向)へスライド可能に設けられており、検出ロッド40は、ハウジング38から車両後側へ突出されると共に、ケース22の底壁を貫通されて、ケース22内に挿入されている。上下センサ36の検出ロッド40は、上下ロッド28の車両前側において、上下ロッド28と同軸上に配置されると共に、左右センサの検出ロッド40は、左右ロッドの車両前側において、左右ロッドと同軸上に配置されている。
【0029】
ハウジング38内には、付勢手段としての圧縮コイルスプリング42が設けられており、圧縮コイルスプリング42は、検出ロッド40を車両後側へ付勢している。このため、上下センサ36の検出ロッド40の先端(車両後側端)は、上下ロッド28の基端(車両前側端)に圧縮コイルスプリング42の付勢力によって接触されると共に、左右センサの検出ロッド40の先端(車両後側端)は、左右ロッドの基端(車両前側端)に圧縮コイルスプリング42の付勢力によって接触されており、上下センサ36及び左右センサの検出ロッド40は、常にそれぞれ上下ロッド28及び左右ロッドと一体に車両前後方向へスライド可能にされている。
【0030】
検出ロッド40の基端側部分(車両前側部分)には、長尺板状の通過部44が一体に設けられており、通過部44は、検出ロッド40の軸方向に沿って配置されて、検出ロッド40と一体に車両前後方向へスライド可能にされている。通過部44には、幅細矩形状の通過孔46が複数形成されており、複数の通過孔46は、それぞれ検出ロッド40の径方向に沿って配置されて、検出ロッド40の軸方向において小間隔かつ等間隔で配置されている。通過孔46は、通過部44を肉厚方向へ貫通しており、通過部44の通過孔46以外の部分は、遮光部44Aにされて光を遮蔽すると共に、通過部44の通過孔46は、光が通過可能にされている。
【0031】
ハウジング38内には、センサ部としての断面U字形柱状のフォトインタラプタ48が固定されており、フォトインタラプタ48内には、検出ロッド40の通過部44がスライド可能に配置されている。フォトインタラプタ48の一側部には、発光部48Aが設けられると共に、フォトインタラプタ48の他側部には、受光部48Bが設けられており、発光部48Aは、受光部48Bへ向けて光を発光可能にされると共に、受光部48Bは、発光部48Aが発光した光を受光可能にされている。発光部48Aと受光部48Bとの間に通過部44の遮光部44Aが配置される際には、発光部48Aが発光した光を遮光部44Aが遮蔽して受光部48Bが受光しない。発光部48Aと受光部48Bとの間に通過部44の通過孔46が配置される際には、発光部48Aが発光した光を通過孔46が通過させて受光部48Bが受光する。
【0032】
検出ロッド40が車両後側へスライドされる際には、上下センサ36及び左右センサが、それぞれ発光部48Aと受光部48Bとの間を通過部44の通過孔46が通過して発光部48Aが発光した光を受光部48Bが受光する毎(検出ロッド40が所定スライド量(通過孔46の配置間隔)スライドされる毎)にカウントを増加(段階的にアップ)させる。一方、検出ロッド40が車両前側へスライドされる際には、上下センサ36及び左右センサが、それぞれ発光部48Aと受光部48Bとの間を通過部44の通過孔46が通過して発光部48Aが発光した光を受光部48Bが受光する毎(検出ロッド40が所定スライド量スライドされる毎)にカウントを減少(段階的にダウン)させる。このため、上下センサ36及び左右センサは、それぞれ、検出ロッド40が車両前側端の位置に配置される際にカウントが最小(例えば0)にされると共に、検出ロッド40が車両後側端の位置に配置される際にカウントが最大にされる。
【0033】
図5に示す如く、上記ECU30には、車両の自動変速機50(変速機)が電気的に接続されており、自動変速機50には、車両の操作装置としてのシフトレバー装置52が機械的又は電気的に接続されている。車両の乗員(運転手)によりシフトレバー装置52が操作された際には、自動変速機50のシフトレンジ(シフトポジション)が例えば「P」レンジ(パーキングレンジ)、「R」レンジ(リバースレンジ)、「N」レンジ(ニュートラルレンジ)、「D」レンジ(ドライブレンジ)等に変更される。また、ECU30には、車両の高電流負荷装置としてのエアコンディショナ54(エアコン)に電気的に接続されており、エアコンディショナ54は、ECU30の制御により、バッテリ34から電流を供給されて作動される。
【0034】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0035】
以上の構成の車両用ドアミラー装置10では、調整操作装置32が操作された際に、ECU30の制御により、位置調整ユニット20が作動されて、上下モータ26及び左右モータがバッテリ34から電流を供給されて駆動されることで、上下ロッド28及び左右ロッドが車両前後方向へスライドされる。このため、傾動体24及びミラー14がケース22に対し上下方向及び車両左右方向へ傾動されることで、ミラー14の傾動位置(鏡面16A角度)が調整されて、乗員(運転手)のミラー14による視認範囲が調整される。
【0036】
また、上下ロッド28及び左右ロッドが車両前後方向へスライドされる際には、それぞれ上下センサ36及び左右センサにおいて、検出ロッド40が上下ロッド28又は左右ロッドと一体に車両前後方向へスライドされることで、フォトインタラプタ48の発光部48Aと受光部48Bとの間を検出ロッド40の通過部44の通過孔46が通過して発光部48Aが発光した光を受光部48Bが受光する毎(検出ロッド40が所定スライド量スライドされる毎)に、カウントが増加又は減少される。これにより、調整操作装置32の操作によりミラー14の傾動位置が調整された際には、上下センサ36及び左右センサによってミラー14の傾動位置が検出されて、ECU30が、ミラー14の傾動位置を、初期傾動位置(目標復帰位置、原点)として、上下センサ36及び左右センサにおけるカウント(設定カウント、初期値)によって記憶(設定、学習)する。
【0037】
シフトレバー装置52が操作されて、自動変速機50のシフトレンジが「R」レンジに変更された際(第1の機会)には、ECU30の制御により、位置調整ユニット20が作動されて、上下モータ26がバッテリ34から電流を供給されて正方向へ駆動されることで、上下ロッド28が車両後側へスライドされる。このため、傾動体24及びミラー14がケース22に対し下側(変更方向)へ傾動されることで、ミラー14の傾動位置が初期傾動位置から変更傾動位置(リバース停止位置)まで下側へ自動的に変更されて、鏡面16Aが向けられる方向が車両後斜め下方へ変更される。これにより、乗員(運転手)がミラー14によって車両の後輪及びその周辺を視認可能にされる。
【0038】
その後、シフトレバー装置52が操作されて、自動変速機50のシフトレンジが「R」レンジ以外(例えば「P」レンジ)に変更された際(第2の機会)には、ECU30の制御により、位置調整ユニット20が作動されて、上下モータ26がバッテリ34から電流を供給されて逆方向へ駆動されることで、上下ロッド28が車両前側へスライドされる。このため、傾動体24及びミラー14がケース22に対し上側(復帰方向)へ傾動されることで、ミラー14の傾動位置が変更傾動位置から初期傾動位置へ向けて上側へ自動的に変更される。
【0039】
ところで、図3に示す如く、自動変速機50のシフトレンジが「R」レンジに変更された際には、上下モータ26が正方向へ所定作動量(所定量)作動されて上下ロッド28が車両後側へ所定スライド量スライドされることで、上下センサ36の検出ロッド40が車両後側へ所定スライド量スライドされる毎に、上下センサ36のカウントが増加される。一方、自動変速機50のシフトレンジが「R」レンジ以外に変更された際には、上下モータ26が逆方向へ所定作動量作動されて上下ロッド28が車両前側へ所定スライド量スライドされることで、上下センサ36の検出ロッド40が車両前側へ所定スライド量スライドされる毎に、上下センサ36のカウントが減少される。
【0040】
ここで、図1及び図2に示す如く、自動変速機50のシフトレンジが「R」レンジから「R」レンジ以外に変更された際には、ECU30は、上下センサ36のカウントが減少される毎において、上下センサ36のカウントが減少される時間間隔(予測時間間隔、予測ラップタイム)を予測した上で、上下センサ36のカウントが減少される時間間隔(計測時間間隔、計測ラップタイム)をタイマにより計測する。
【0041】
すなわち、ECU30は、前回以前の計測時間間隔に基づき、上下モータ26の作動速度の変動状況を予測して、今回以降の予測時間間隔を予測する。
【0042】
例えば、ECU30は、前回以前の計測時間間隔が一定であれば、当該前回以前の計測時間間隔を今回以降の予測時間間隔にする。さらに、前々回以前の計測時間間隔が一定であるにも拘らず前回の予測時間間隔と計測時間間隔とが異なる場合には、前回の計測時間間隔を今回以降の予測時間間隔にする。また、前回以前の計測時間間隔に周期的な変動がある場合には、今回以降の予測時間間隔を当該周期的な変動に対応した時間間隔にする。特に、前回以前の計測時間間隔に予め設定された周期的な変動がある場合には、今回以降の予測時間間隔を当該予め設定された周期的な変動に対応した時間間隔にする。
【0043】
これにより、ECU30は、仮に上下モータ26の駆動を継続した場合に上下センサ36のカウントがミラー14の傾動位置が初期傾動位置であるカウントに減少される際における予測時間間隔を予測することで、当該予測時間間隔によって上記所定作動量(上下センサ36のカウントが減少される毎の上下モータ26の作動量)を除して、当該予測時間間隔における上下モータ26の作動速度(上下ロッド28及び検出ロッド40のスライド速度、ミラー14の傾動速度)を予測(算出)する。さらに、ECU30は、当該上下モータ26の作動速度(バッテリ34から上下モータ26への電流供給状況等を含んでもよい)から、予め記憶されたデータに基づき、上下モータ26がバッテリ34からの電流供給を停止されて駆動を停止された後に上下モータ26が慣性作動(惰性回転、空転)される慣性作動量(上下ロッド28及び検出ロッド40が慣性スライドされる慣性スライド量、ミラー14が慣性傾動される慣性傾動量)を予測(算出、設定)する。
【0044】
以上により、ECU30は、ミラー14の傾動位置が初期傾動位置である上下モータ26の初期作動位置(上下ロッド28及び検出ロッド40の初期スライド位置、ミラー14の初期傾動位置)よりも上下モータ26の慣性作動量(上下ロッド28及び検出ロッド40の慣性スライド量、ミラー14の慣性傾動量)だけ前の位置に上下モータ26の作動位置(上下ロッド28及び検出ロッド40のスライド位置、ミラー14の傾動位置)が到達する時間を上下モータ26の駆動停止時間(タイムラグ)として設定(算出)することで、上下モータ26の駆動停止時間において、バッテリ34から上下モータ26への電流供給を停止して、上下モータ26の駆動を停止する。このため、その後、上下モータ26が慣性作動量だけ慣性作動されて停止されることで、上下ロッド28の慣性スライド量だけのスライドにより、ミラー14が慣性傾動量だけ傾動されて、ミラー14の傾動位置が初期傾動位置に復帰される。なお、ECU30は、上下センサ36のカウントにより、ミラー14の傾動位置が初期傾動位置に復帰されたことを確認できる。
【0045】
このように、自動変速機50のシフトレンジが「R」レンジから「R」レンジ以外に変更された際には、ECU30が、設定した上下モータ26の駆動停止時間において、上下モータ26の駆動を停止することで、その後、上下モータ26が慣性作動量だけ慣性作動されて、ミラー14が慣性傾動量だけ傾動される。これにより、ミラー14の傾動位置を初期傾動位置に高精度に復帰させることができる。
【0046】
また、ECU30が、上下モータ26の作動速度(位置調整ユニット20の作動速度)に基づき、上下モータ26の慣性作動量を設定する。このため、上下モータ26の慣性作動量を高精度に設定でき、上下モータ26の駆動停止時間を高精度に設定できて、ミラー14の傾動位置を初期傾動位置に一層高精度に復帰させることができる。
【0047】
さらに、ECU30が、前回以前の計測時間間隔に基づき、上下モータ26の作動速度の変動状況を予測して、今回以降の予測時間間隔を予測することで、上下モータ26の慣性作動量を設定する。このため、バッテリ34の状況や位置調整ユニット20の作動状況(環境温度や雪の付着状況等の環境条件等)に上下モータ26の慣性作動量を対応させることができるため、上下モータ26の慣性作動量を一層高精度に設定でき、上下モータ26の駆動停止時間を一層高精度に設定できて、ミラー14の傾動位置を初期傾動位置に更に一層高精度に復帰させることができる。
【0048】
また、上下センサ36が、上下ロッド28(検出ロッド40)のスライド量を所定スライド量毎にカウントして検出することで、上下モータ26の作動量を所定作動量毎にカウントして検出する。さらに、ECU30が、上下モータ26の作動量をカウントする時間間隔に基づき、上下モータ26の作動速度を検出する。しかも、上下センサ36が、永久磁石及びホール素子を設けたものではなく、フォトインタラプタ48を設けたものにされている。これにより、上下モータ26の作動速度を検出する構成を安価にできる。
【0049】
なお、本実施の形態では、ECU30が、上下モータ26の駆動停止後の慣性作動量(慣性作動距離、慣性作動角度)を設定した上で、ミラー14の傾動位置が初期傾動位置である上下モータ26の初期作動位置よりも上下モータ26の慣性作動量だけ前の位置に上下モータ26の作動位置が到達する時間を上下モータ26の駆動停止時間として設定した。しかしながら、ECU30が、上下モータ26の駆動停止後の慣性作動時間を設定した上で、仮に上下モータ26の駆動を継続した場合にミラー14の傾動位置が初期傾動位置に到達する時間よりも上下モータ26の慣性作動時間だけ前の時間を上下モータ26の駆動停止時間として設定してもよい。
【0050】
さらに、本実施の形態では、上下センサ36が上下ロッド28のスライドを検出して上下モータ26の作動及びミラー14の傾動を検出した。しかしながら、上下センサ36が上下モータ26の作動を検出して上下ロッド28のスライド及びミラー14の傾動を検出してもよく、また、上下センサ36がミラー14や傾動体24の傾動を検出して上下モータ26の作動及び上下ロッド28のスライドを検出してもよい。
【0051】
また、本実施の形態では、自動変速機50のシフトレンジが「R」レンジに変更された際(第1の機会)にミラー14を自動的に傾動させる。しかしながら、他の第1の機会にミラー14を自動的に傾動させてもよい。
【0052】
さらに、本実施の形態では、第1の機会にミラー14を上下ロッド28によって上下方向に傾動させる。しかしながら、第1の機会にミラー14を上下ロッド28及び左右ロッドの少なくとも一方によって上下方向及び車両左右方向の少なくとも一方に傾動させればよい。
【0053】
例えば、車両の方向指示器(操作装置)が操作された際(第1の機会)に、車両の進行方向が変更される側(方向指示器が操作された側)の車両用ドアミラー装置10において、ミラー14を左右ロッドによって車両左右方向に傾動させて車幅方向外側へ向けてもよい。この場合、車両の方向指示器の操作が解除された際(第2の機会)に、当該ミラー14を初期傾動位置に傾動させる。
【0054】
また、本実施の形態では、本発明を車両用ドアミラー装置10に適用した。しかしながら、本発明を他の車外や車内のミラー装置に適用してもよい。
【0055】
(第1例)
図7は、本実施の形態に係る車両用ドアミラー装置10におけるミラー14の復帰制御の第1例を示すタイミングチャートである。
【0056】
図7に示す如く、本第1例では、自動変速機50のシフトレンジが「R」レンジから「R」レンジ以外に変更された際において、位置調整ユニット20の作動によりミラー14が変更傾動位置(リバース位置)から初期傾動位置(原点位置)側へ傾動される初期に、車両のエアコンディショナ54が一時的(継続的でもよい)にバッテリ34から電流を供給されて作動される(ONにされる)と、バッテリ34の電圧値は、当初電圧値(定格電圧値)から一時的に大きく減少された後に、徐々に増加されて、最終的には周期的に変動して当初電圧値に回復(収束)される。このため、上下モータ26(鏡面駆動モータ)の作動速度(作動回転数)は、エアコンディショナ54の作動以降、バッテリ34の電圧値に対し僅かに遅れた(僅かなタイムラグを持った)状態で同期して、当初作動速度から一時的に大きく減少された後に、徐々に増加されて、最終的には当初作動速度近傍において周期的に変動される。
【0057】
これにより、上下センサ36(鏡面センサ)により検出される計測時間間隔tは、エアコンディショナ54の作動以降、当初のt0から一時的に大きく長くされてt1にされた後に、徐々に短くされてt2〜t5にされ、最終的には当初のt0近傍において周期的に変動されてt6、t0’、t6’、t0’’、t6’’にされる(t0、t0’、t0’’はほぼ等しく、t6、t6’、t6’’はほぼ等しい)。
【0058】
このため、ECU30は、仮に上下モータ26の駆動を継続した場合に上下センサ36のカウントがミラー14の傾動位置が初期傾動位置であるカウントに減少される際における予測時間間隔を周期的な変動に基づきt6’’であると予測することで、当該予測時間間隔t6’’における上下モータ26の作動速度を予測する。
【0059】
(第2例)
図8は、本実施の形態に係る車両用ドアミラー装置10におけるミラー14の復帰制御の第2例を示すタイミングチャートである。
【0060】
図8に示す如く、本第2例では、自動変速機50のシフトレンジが「R」レンジから「R」レンジ以外に変更された際において、位置調整ユニット20の作動によりミラー14が変更傾動位置(リバース位置)から初期傾動位置(原点位置)側へ傾動される後期に、車両のエアコンディショナ54が継続的にバッテリ34から電流を供給されて作動される(ONにされる)と、バッテリ34の電圧値は、当初電圧値(定格電圧値)から一時的に大きく減少された後に、僅かに増加される。このため、上下モータ26(鏡面駆動モータ)の作動速度(作動回転数)は、エアコンディショナ54の作動以降、バッテリ34の電圧値に対し僅かに遅れた(僅かなタイムラグを持った)状態で同期して、当初作動速度から一時的に大きく減少された後に、僅かに増加される。
【0061】
これにより、上下センサ36(鏡面センサ)により検出される計測時間間隔tは、エアコンディショナ54の作動前にほぼ等しいt0〜t7にされるが、エアコンディショナ54の作動以降t7から一時的に大きく長くされてt8にされた後に、僅かに短くされてt9〜t10にされる(t9、t10はほぼ等しい)。
【0062】
このため、ECU30は、仮に上下モータ26の駆動を継続した場合に上下センサ36のカウントがミラー14の傾動位置が初期傾動位置であるカウントに減少される際における予測時間間隔を前回計測のt9にほぼ等しいt10であると予測することで、当該予測時間間隔t10における上下モータ26の作動速度を予測する。
【符号の説明】
【0063】
10 車両用ドアミラー装置(車両用ミラー装置)
14 ミラー
16A 鏡面
20 位置調整ユニット(傾動機構)
30 ECU(制御手段)
36 上下センサ(検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられるミラーと、
前記ミラーを支持し、第1の機会に駆動されて前記ミラーを初期傾動位置から変更傾動位置へ傾動させることで前記ミラーの鏡面角度が変更されると共に、第2の機会に駆動されて前記ミラーを変更傾動位置から初期傾動位置側へ傾動させる傾動機構と、
前記傾動機構を制御可能にされると共に、前記傾動機構の駆動を停止させた後に前記傾動機構が慣性作動される慣性作動量又は慣性作動時間を設定され、第2の機会に前記ミラーが初期傾動位置に復帰するより慣性作動量又は慣性作動時間だけ前に前記傾動機構の駆動を停止させる制御手段と、
を備えた車両用ミラー装置。
【請求項2】
前記制御手段は、第2の機会に前記傾動機構の作動速度に基づき前記傾動機構の慣性作動量又は慣性作動時間を設定する請求項1記載の車両用ミラー装置。
【請求項3】
前記制御手段は、第2の機会に前記傾動機構の作動速度の変動状況に基づき前記傾動機構の慣性作動量又は慣性作動時間を設定する請求項2記載の車両用ミラー装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記傾動機構の作動量を所定量毎にカウントして検出する検出手段を有し、第2の機会に前記検出手段が前記傾動機構の作動量をカウントする時間間隔に基づき前記傾動機構の作動速度を検出する請求項2又は請求項3記載の車両用ミラー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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