説明

車両用主電動機の速度センサ用ギヤ

【課題】速度センサを持つ車両用主電動機は,回転子とともに回転する速度センサ用ギヤを有するため,ギヤ先端で風切り音が発生することがある。また,軸受を潤滑油で潤滑する車両用主電動機においては,ギヤの攪拌作用によって,潤滑油に攪拌熱が発生することを低減する。
【解決手段】下側に貯油室を有する給油室内に回転子軸とともに回転する油掻揚げ円板を設け、該油掻揚げ円板の外周に凹凸または歯形を形成し、速度センサ用ギヤとした車両用主電動機の油潤滑装置において、該速度センサ用ギヤの凹部または歯間に詰めものをすることを特徴とする。前記詰めものが非磁性体であることを特徴とする。速度センサ用ギヤの外周を円弧形状に滑らかにするために,外周の凹凸がなくなり,速度センサ用ギヤの回転による風切り音の発生や潤滑油の攪拌熱の発生を抑えることができる。また,非磁性体を埋めるため,通常通り,車両用主電動機の回転を検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,速度センサを有する車両用主電動機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用主電動機には主回路制御やブレーキ制御に用いるため,主電動機の回転を検出する速度センサを取付けるものがある。
速度センサ用ギヤは磁性体でできており,外周は一定間隔の凹凸形状となっており,速度センサ用ギヤの回転により,速度センサ先端と速度センサ用ギヤの隙間が変化することになる。速度センサ内には磁石が埋め込まれており,隙間の変化によって速度センサ内に電磁誘導作用によって電力が発生し,その電圧の変化を速度センサで検出することによって,車両用主電動機の回転は検出できることになる。
また,車両用主電動機には軸受を潤滑油で潤滑するものがあり,軸受への潤滑油の供給は軸受近傍に貯められた潤滑油を油掻揚げ円板で上方に掻き揚げ,落下する際に軸受へ流入することに行われる。このような車両用主電動機に速度センサを取付ける場合,磁性体からなる油掻揚げ円板の外周に一定間隔の凹凸を付けることによって,速度センサ用ギヤとすることができる。
図2はこのような方式の車両用主電動機の速度センサ周りの断面図であり,1は固定子,2は回転子,3は回転子軸,4は軸受,5は軸受箱,6は油掻揚げ円板の機能も有する速度センサ用ギヤ,7は軸受押え,8はカバ−,9は速度センサ,10は潤滑油である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−90740公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
速度センサを持つ車両用主電動機は,回転子とともに回転する速度センサ用ギヤを有するため,ギヤ先端で風切り音が発生することがある。
また,軸受を潤滑油で潤滑する車両用主電動機においては,ギヤの攪拌作用によって,潤滑油に攪拌熱が発生することがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、下側に貯油室を有する給油室内に回転子軸とともに回転する油掻揚げ円板を設け、該油掻揚げ円板の外周に凹凸または歯形を形成し、速度センサ用ギヤとした車両用主電動機の油潤滑装置において、該速度センサ用ギヤの凹部または歯間に詰めものをすることを特徴とする。また前記詰めものが非磁性体であることを特徴とする。
【0006】
速度センサ用ギヤの外周を円弧形状に滑らかにするために,外周の凹凸を非磁性体で埋める。それにより,速度センサ用ギヤの外周の凹凸がなくなり,速度センサ用ギヤの回転による風切り音の発生や潤滑油の攪拌熱の発生を抑えることができる。
また,非磁性体を埋めるため,通常通り,車両用主電動機の回転を検出することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の構造は、車両用主電動機から発生する騒音の低減や,潤滑油の劣化速度の低減や潤滑油により潤滑される軸受寿命の延長を図ることができる。

【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】速度センサと速度センサ用ギヤを示した説明図である。(実施例1)
【図2】車両用主電動機の速度センサ周りの断面図である。
【図3】図2のA方向から速度センサ周りを示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
速度センサ用ギヤの騒音と潤滑油の攪拌熱の低減という目的を,最小の部品点数で実現できた。
【実施例1】
【0010】
図1は本発明の1実施例であって,図2のA方向から速度センサと速度センサ用ギヤを見た図で,速度センサの先端と速度センサ用ギヤは微小空間を空けて設置されており,ギヤの凹凸の間には非磁性体の詰め物をしている。
【産業上の利用可能性】
【0011】
速度センサ付きの車両用主電動機において,速度センサ用ギヤの凹凸を非磁性体で埋めることによって,車両用主電動機より発生する騒音の低減や,潤滑油や軸受の交換周期の延長とメンテナンス作業の低減に寄与することができる。
【符号の説明】
【0012】
1 固定子
2 回転子
3 回転子軸
4 軸受
5 軸受箱
6 速度センサ用ギヤ
7 軸受押え
8 カバ−
9 速度センサ
10 潤滑油
11 非磁性体の詰め物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下側に貯油室を有する給油室内に回転子軸とともに回転する油掻揚げ円板を設け、該油掻揚げ円板の外周に凹凸または歯形を形成し、速度センサ用ギヤとした車両用主電動機の油潤滑装置において、該速度センサ用ギヤの凹部または歯間に詰めものをすることを特徴とする車両用主電動機の速度センサ用ギヤ。
【請求項2】
前記詰めものが非磁性体であることを特徴とする請求項1記載の車両用主電動機の速度センサ用ギヤ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−13263(P2013−13263A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145076(P2011−145076)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000003115)東洋電機製造株式会社 (380)
【Fターム(参考)】