説明

車両用灯具

【課題】保持部材に大きな剛性を必要とすることなくランプ本体と車両パネルとの相対的な位置関係を適切に保持することができ、かつ車両パネルに入力された荷重のランプ本体への影響を抑制することができる車両用灯具を提供する。
【解決手段】ハウジング13にレンズ14が設けられた灯具本体11と、これと車両パネルBとの位置関係を保持する保持部材12とを備える車両用灯具10である。保持部材12は、貫通孔が形成された第1壁部18と、第1壁部18から屈曲して連続する第2壁部19とを有し、水平面内での相対的な移動を拘束する拘束手段32を介して第1壁部18が車両パネルBに連結され、かつ第2壁部19がハウジング13に固着され、レンズ14から車両パネルBへ向けて水平方向に突起された突起片17が、保持部材12の貫通孔21に延在方向の相対的な移動可能に挿通された状態で保持部材12を鉛直方向に支持している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に用いられるヘッドランプ等の灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車(車両。)の前部又は後部に取り付けられるランプ(灯具。)には、一端開放のハウジングにレンズが設けられたランプ本体(灯具本体。)が、そのハウジングの下部に固着された保持部材により、車両の外壁の一部を構成し上下に隣接して配置されるバンパとの相対的な位置関係が保持されているものがある(例えば、特許文献1参照。)。この保持部材は、ハウジングの下方から前方へ向けて延出された支持部を有し、この支持部がバンパに設けられた縦リブに形成された凹所である受け部に挿入され、この受け部を上下方向で支える構成とされている。このランプでは、上下方向で見たバンパとの間隔を所定のものとすることができ、車両の外観の装飾性を高めることができる。
【0003】
さらに、上記したランプの構成において、保持部材の支持部材の先端部分をバンパと結合可能な構成とすることにより、上下方向のみならず前後左右方向を含むバンパとの相対的な位置関係を所定のものとすることができ、車両の外観の装飾性をより高めることができるものが知られている。
【特許文献1】特開平8−58498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来のランプでは、バンパに荷重が入力された場合、当該荷重のすべてを保持部材およびハウジングが受けることとなるので、ハウジング自体またはランプ本体の車両への取り付け個所が破損してしまう虞がある。
【0005】
また、ランプでは、車両の表面の一部を構成するレンズよりも車両の内方側にハウジングが位置されることから、上記した従来のランプでは、ランプ本体とバンパとの相対的な位置関係を所定のものとするために、保持部材の撓み変形に起因して保持位置が変位しないように保持部材自体の剛性を高くする必要がある。
【0006】
本発明の課題は、保持部材に大きな剛性を必要とすることなくランプ本体と車両パネルとの相対的な位置関係を適切に保持することができ、かつ車両パネルに入力された荷重のランプ本体への影響を抑制することができる車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の車両用灯具は、ハウジングの開放端にレンズが設けられた灯具本体と、該灯具本体と車両パネルとの相対的な位置関係を保持する保持部材とを備える車両用灯具であって、前記保持部材は、板形状を呈し貫通孔が形成された第1壁部と、該第1壁部から屈曲して連続する板形状の第2壁部とを有し、水平面内での相対的な移動を拘束する拘束手段を介して前記第1壁部の先端個所が前記車両パネルに連結され、かつ前記第2壁部が前記ハウジングに固着されることにより該ハウジングと前記車両パネルとの間に掛け渡され、前記レンズには、前記車両パネルへ向けて水平方向に突起する突起片が設けられ、該突起片は、掛け渡された前記保持部材の前記貫通孔に延在方向の相対的な移動可能に挿通された状態で前記保持部材を鉛直方向に支持していることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の車両用灯具は、請求項1に記載の車両用灯具であって、前記保持部材には、前記第1壁部および前記第2壁部に対して角度を為すように前記第1壁部および前記第2壁部に連続する本体補強リブが設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の車両用灯具は、請求項1または請求項2に記載の車両用灯具であって、前記突起片は、前記第1壁部を水平方向で見て中心位置となる個所で前記保持部材を支持していることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の車両用灯具は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の車両用灯具であって、前記拘束手段は、前記車両パネルに設けられた係止突片に形成された挿通孔と、前記第1壁部の前記先端個所で鉛直方向に突起された係合突起とを有し、該係合突起は、水平面内での相対的な移動が拘束されるように前記挿通孔に鉛直方向から嵌入されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の車両用灯具は、請求項4に記載の車両用灯具であって、前記第1壁部の前記先端個所には、前記車両パネルの前記係止突片と対向するように前記第1壁部から延出されたフランジ壁部分が設けられ、前記係合突起は、前記フランジ壁部分から鉛直方向に突起され、前記フランジ壁部分には、延出方向に沿って延在し前記係合突起に接続された先端補強リブが設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の車両用灯具は、請求項5に記載の車両用灯具であって、前記突起片は、前記フランジ壁部分の下面に当接して前記保持部材を鉛直方向に支持し、前記先端補強リブは、前記フランジ壁部分の上面で略中央を通るように延在されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の車両用灯具では、車両パネルに水平方向に荷重が入力された場合、当該水平荷重が拘束手段を介して保持部材の第1壁部の先端個所に作用することとなるが、レンズの突起片は、第1壁部の貫通孔に延在方向への相対的な移動可能に挿通された状態で保持部材を鉛直方向に支持する構成であることから、当該水平荷重により先端個所が変位されて第1壁部が変位された場合であっても貫通孔との位置関係のみが変化するので、当該荷重をレンズに直接伝達することはない。このように、車両パネルに入力された荷重のうち、水平方向の成分が突起片からレンズに伝達されることを防止することができる。
【0014】
また、保持部材の第1壁部の先端個所に作用した水平荷重は、第1壁部および第2壁部が撓み変形すること、および両壁部を繋ぐ屈曲個所を軸にして第1壁部が回動変位することにより保持部材において吸収されるので、第2壁部が固着されたハウジングに当該水平荷重が伝達されることを抑制することができる。
【0015】
さらに、レンズに設けられた突起片が車両パネルを鉛直方向に支持していることから、車両パネルから保持部材に入力された荷重のうち、水平成分および鉛直成分の双方をハウジングが受ける構成の従来の車両用灯具に比較して、荷重の鉛直成分をより車両パネルに近いレンズに負担させることができるので、保持部材自体の大きな剛性を必要とすることなく、車両パネルとの相対的な位置関係を保持することができる。
【0016】
ついで、保持部材は、第2壁部がハウジングに固着されることに加えて、拘束手段を介して車両パネルに結合された第1壁部の先端個所で車両パネルとの水平面内での間隔を保持し、鉛直方向に支持する突起片で車両パネルとの鉛直方向の間隔を保持する構成であることから、車両パネルとの相対的な位置関係を適切に保持することができる。
【0017】
灯具本体と車両パネルとの相対的な位置関係が適切に保持されていることから、灯具本体のレンズと車両パネルとの間隔を所望のものとする、例えば、レンズの幅方向に沿ってレンズと車両パネルとが一定の間隔を保ちつつ隣接するように設定することができる。これにより、車両の外観の装飾性、すなわち見映えを向上させることができる。
【0018】
請求項2に記載の車両用灯具では、保持部材が本体補強リブにより適切に補強されていることから、より確実に車両パネルとの相対的な位置関係を保持することができる。
【0019】
請求項3に記載の車両用灯具では、突起片が偏りなく保持部材を鉛直方向に支持することができるので、鉛直方向への支持強度を高めることができる。
【0020】
請求項4に記載の車両用灯具では、保持部材が第1壁部に貫通孔が設けられるとともに第1壁部の先端個所に車両パネルの係止突片の挿通孔と水平方向で係合可能な係合突起が設けられた保持部材により、水平面方向および鉛直方向の保持を行うことができるので、複雑な構成の保持部材を必要とすることなく車両パネルとの相対的な位置関係を保持させることができる。
【0021】
請求項5に記載の車両用灯具では、係合突起およびフランジ壁部分の剛性を適切なものとすることができるので、第1壁部の先端個所と車両パネルとの水平面内での相対的な移動の拘束をより確実なものとすることができる。
【0022】
請求項6に記載の車両用灯具では、突起片による保持部材の支持個所であるフランジ壁部分の略中央を通るように先端補強リブが設けられていることから、車両パネルからの鉛直方向の荷重を受けるフランジ壁部分の剛性を適切なものとすることができ、車両パネルとの相対的な位置関係を保持させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明に係る自動車用の灯具の一例であるヘッドランプの実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【実施例】
【0024】
図1は、本発明に係る自動車用の灯具の一例であるヘッドランプ10が採用された車両Cを模式的に示す斜視図であり、図2は、図1に示す矢印A1から見た上面図であり、図3は、図2に示すI−I線に沿って得られた模式的な断面図であり、図4は、図2に示すII−II線に沿って得られた模式的な断面図である。なお、以下の説明では、車両Cが水平面上に設置された状態における水平方向および鉛直方向を示すものである。また、前後方向は車両Cを基準としており、車両Cを基準とした内側とは、該当する部材から見て車両Cの中心位置に近い側をいう。
【0025】
ヘッドランプ10は、図1に示すように、車両Cの外壁の一部を構成するフロントバンパBと隣接するように配置されており、ランプ本体11と保持部材12とを備えている(図3および図4参照。)。
【0026】
ランプ本体11は、図3および図4に示すように、光源(図示せず。)を収容する一端開放のハウジング13と、開放端に取り付けられたレンズ14とを有する。ハウジング13の下部には、鉛直下方向に延出された一対の取付台座15が設けられている。各取付台座15は、全体に円柱形状を呈し、その軸線に沿うネジ孔16を有する。
【0027】
レンズ14の下部には、突起片17が設けられている。突起片17は、図2および図4に示すように、レンズ14と一体的に形成されており、車両Cの前面側で鉛直方向および車両Cの前後方向を含む面に沿って突起する板形状を呈している。このため、突起片17は、フロントバンパBへ向けて突起している。突起片17は、その上端面17aが大略水平面に沿う面となるように設定されている。本実施例では、突起片17は、互いに間隔を置くように対を為して延出された構成とされており、3個所に設けられている(図2参照。)。
【0028】
このランプ本体11とフロントバンパBとの相対的な位置関係を保持するために、保持部材12がランプ本体11とフロントバンパBとを掛け渡されて配接されている(図3および図4参照。)。本実施例では、図示は略すが3個所に設けられた突起片17のそれぞれに対応して保持部材12が設けられており、車幅方向で見た3個所でレンズ14とフロントバンパBとの間隔を所定のものとしてランプ本体11とフロントバンパBとの相対的な位置関係を保持している。保持部材12は、弾性変形が可能な材料から形成されており、図5ないし図8に示すように、第1壁部18と、第2壁部19と、曲折部20とを有する。なお、以下の保持部材12の説明では、ランプ本体11とフロントバンパBとを掛け渡された状態(図3および図4参照。)での各部の配置関係を示している。また、3つの保持部材12の構成およびそれらのランプ本体11とフロントバンパBとの間での掛け渡し状態は、互いに等しいものであることから、以下の説明では車両Cを基準として内側のものについて説明し、他の2つについては説明を省略する。
【0029】
第1壁部18は、全体に略板形状を呈しており、水平面に対して角度を為す面に沿って延在するように設定されている。本実施例では、第1壁部18は、車両Cを基準として上側および内側が前方に位置し下側および外側が後方に位置するように傾斜されつつ大略鉛直方向および車両Cの幅方向を含む面に沿って延在するように設定されており、ランプ本体11の設置個所に適合する形状とされている(図2参照。)。
【0030】
この第1壁部18には、貫通孔21が形成されている。貫通孔21は、車両Cの前後方向に沿うように第1壁部18を板厚方向に貫通している。貫通孔21は、本実施例では、車両Cの幅方向に大略沿う第1壁部18の幅方向(保持部材12の幅方向。)で見た略中間位置を中心とする矩形状を呈し、鉛直方向すなわち車両Cの上下方向で見て第1壁部18の上端に至るように設定されている。この第1壁部18の下端に曲折部20が連続され、この曲折部20に第2壁部19が連続されている。
【0031】
第2壁部19は、全体に略板形状を呈しており、第1壁部18に対して角度を為す面に沿って延在するように設定されている。本実施例では、第2壁部19は、車両Cを基準として外側が上方に位置するように傾斜されつつ大略水平面に沿って延在するように設定されており、第1壁部18と同様にヘッドランプ10への設置個所に適合する形状とされている(図2参照。)。この第2壁部19には、ネジ挿通孔22および台座ガイド突起23が設けられている。ネジ挿通孔22は、ハウジング13に設けられた両取付台座15と対応して対を為して設けられており、本実施例では、車両Cを基準とした後側に位置する後端近傍に設定されている。台座ガイド突起23は、各ネジ挿通孔22を取り巻きつつ上方へ向けて突起されて形成されている。両台座ガイド突起23は、ハウジング13に設けられた両取付台座15の嵌入が可能な径寸法に設定されており、両取付台座15を各ネジ挿通孔22と同心位置へ導くことができるように設定されている。
【0032】
このように、保持部材12は、その延在方向で見て第1壁部18が形成する端部を先端部12aとすると、先端部12aから第1壁部18、曲折部20および第2壁部19を経て終端部12bに至るまでが全体にL字状を呈する構成とされている。この先端部12a(第1壁部18の先端個所。)には、フランジ壁部分24が設けられている。
【0033】
フランジ壁部分24は、全体に略板形状を呈し、第1壁部18と連続するように先端部12aから略水平面に沿って延在している。フランジ壁部分24の下面24aは、ハウジング13の取付台座15が第2壁部19の保持部材12の台座ガイド突起23に嵌入された状態、すなわち保持部材12がハウジング13に固着された状態において、レンズ14に設けられた一対の突起片17の上端面17aに当接するように設定されている。フランジ壁部分24は、本実施例では、保持部材12の幅方向、すなわちフランジ壁部分24の幅方向で見た両端が切り欠かれており、幅方向で見た中央近傍に係合突起25および先端補強リブ26が設けられている。
【0034】
係合突起25は、フランジ壁部分24の上面24bにおいて、フランジ壁部分24の前側すなわち先端24c側に設けられている。係合突起25は、上面24bから鉛直方向に沿って突起されて形成され、水平方向に交差する周面が略鉛直方向に沿うように設定されており、フランジ壁部分24の先端24c側の上部25aが面取りされている。この係合突起25に連続して先端補強リブ26が設けられている。
【0035】
先端補強リブ26は、フランジ壁部分24の幅方向の中心位置をフランジ壁部分24の延在方向に沿って延在する突条であり、一端が係合突起25に連続し、かつ他端が貫通孔21に面している。先端補強リブ26は、鉛直方向で見て係合突起25よりも低く、すなわち係合突起25よりも小さな高さ寸法に設定されている。
【0036】
また、保持部材12では、フランジ壁部分24が設けられた先端部12aとは反対側の端部である終端部12bに、補助壁部分27が設けられている。補助壁部分27は、全体に略板形状を呈し、第2壁部19と連続して終端部12bから略水平面に沿って延在している。
【0037】
さらに、保持部材12には、本体補強リブ28が設けられている。本体補強リブ28は、全体に板形状を呈し、車両Cを基準として内側に設けられている。本体補強リブ28は、大略鉛直方向および車両Cの前後方向を含む面に沿って設けられ、第1壁部18、そのフランジ壁部分24、曲折部20、第2壁部19およびその補助壁部分27に連続されている。
【0038】
この保持部材12が掛け渡されるフロントバンパBには、係止突片29が設けられている(図2ないし図5参照。)。係止突片29は、全体に板形状を呈し、保持部材12およびフロントバンパBが車両Cに装着された状態において保持部材12のフランジ壁部分24に対向するように、大略水平面に沿って延在されている。係止突片29には、挿通孔30が設けられている。挿通孔30は、大略鉛直方向に沿って係止突片29を貫通して形成されており、保持部材12の先端部12aに設けられた係合突起25の鉛直方向からの嵌入を許す大きさ寸法に設定されている。
【0039】
このヘッドランプ10では、先ず、光源(図示せず。)が収容されたハウジング13にレンズ14が取り付けられてランプ本体11が形成され、このランプ本体11に保持部材12が装着される。保持部材12は、第1壁部18の貫通孔21にレンズ14の一対の突起片17が挿通され、かつ第2壁部19の保持部材12の環状の台座ガイド突起23にハウジング13の下部の取付台座15が嵌入され、この取付台座15のネジ孔16に保持部材12の下方から第2壁部19を介在させた状態でネジ31が螺合されて、ランプ本体11に装着される(図3および図4参照。)。これにより、ヘッドランプ10が組み付けられる。
【0040】
このヘッドランプ10は、図示は略すがフロントバンパBの車両Cへの装着よりも先に車両Cに装着される。その後のフロントバンパBの車両Cへの装着の際、フロントバンパBに設けられた係止突片29の挿通孔30に、保持部材12の先端部12aの係合突起25が嵌入される(図3および図4参照。)。このとき、フロントバンパBが車両Cへの装着位置とされると係止突片29が、車両Cに装着された状態のヘッドランプ10の保持部材12のフランジ壁部分24と対向するように設定され、かつ係合突起25の上部25aが面取りされていることから、車両Cの前方から後方へ向けてフロントバンパBを嵌め込むと、所定の位置となった時点で、カチッとした音または手応えを伴って係合突起25が挿通孔30に嵌入されることとなる。このため、フロントバンパBの装着作業を行う施工者は、係合突起25が挿通孔30に係合されたことを容易かつ確実に認識することができる。
【0041】
本発明に係る車両用灯具の一例であるヘッドランプ10では、図3および図4に示すように、車両Cに組み付けられた状態において、保持部材12は、第2壁部19が取付台座15およびネジ31を介してハウジング13に固着され、フランジ壁部分24の係合突起25がフロントバンパBの係止突片29の挿通孔30に係合され、抜き差し自在な状態で第1壁部18の貫通孔21に挿通されたレンズ14の一対の突起片17の上端面17aがフランジ壁部分24の下面24aに当接されて一対の突起片17により支持されている。このため、ヘッドランプ10では、フロントバンパBからの鉛直方向の荷重を、レンズ14の一対の突起片17で受けることとなる。
【0042】
また、ヘッドランプ10では、フロントバンパBからの荷重のうち水平成分を、フロントバンパBに設けられた係止突片29の挿通孔30、およびそこに係合された係合突起25が設けられた保持部材12を経て、その第2壁部19のハウジング13への固着個所(本実施例では、取付台座15とネジ31との螺合個所。)で受けることとなる。
【0043】
ここで、ヘッドランプ10では、前述したように、フロントバンパBに設けられた係止突片29の挿通孔30が大略鉛直方向に沿って係止突片29を貫通するように設定されており、保持部材12の係合突起25の水平方向と交差する周面が略鉛直方向に沿うように設定されていることから、係合突起25が挿通孔30に嵌入されると互いの係合により、フロントバンパBの係止突片29と保持部材12のフランジ壁部分24との水平面内での相対的な移動が拘束されることとなる。また、係合突起25および挿通孔30には、例えば鉤状の爪部のように鉛直方向への互いの変位を拘束する個所が設けられておらず、鉛直方向に沿う相対的な移動は可能とされている。このため、フロントバンパBの係止突片29の挿通孔30と、保持部材12のフランジ壁部分24の係合突起25とは、水平面内での相対的な移動を拘束する拘束手段32として機能することとなる。
【0044】
よって、ヘッドランプ10では、フロントバンパBとランプ本体11との水平面内での相対的な移動および鉛直方向の相対的な移動が保持部材12により制限されることから、ランプ本体11とフロントバンパBとの相対的な位置関係、すなわちレンズ14とフロントバンパBとの相対的な位置関係が保持されていることとなる。これにより、ヘッドランプ10では、ともに車両Cの表面の一部を構成するレンズ14とフロントバンパBとの相対的な位置関係(互いの間隔。)を所望のものとする、例えば、車幅方向で見てレンズ14とフロントバンパBとが一定の間隔を保ちつつ隣接するように設定することができる。このため、車両Cの外観の装飾性、すなわち見映えを向上させることができる。
【0045】
また、ヘッドランプ10では、フロントバンパBからの荷重のうち鉛直方向の成分は、フロントバンパBの係止突片29から保持部材12のフランジ壁部分24を介して突起片17へとかかることとなるので、突起片17を介してレンズ14で受けることとなる。これにより、保持部材12には、フロントバンパBからの荷重の鉛直成分が殆ど伝達されることはない。このため、保持部材12は、拘束手段32からの水平方向の荷重のみを受けることができる剛性を有していればよいことから、フロントバンパBからの荷重のすべてを受ける従来の構造に比較して、例えば、同等の強度に設定した場合には低い剛性に設定することができ、軽量化およびコストの低減等に寄与することができ、同等の部品として形成した場合にはより高い強度を得ることができる。
【0046】
さらに、ヘッドランプ10では、フロントバンパBの鉛直方向の荷重を受けるレンズ14の突起片17が、保持部材12の第1壁部18の貫通孔21に抜き差し自在に挿通された状態であることから、フロントバンパBに水平方向の荷重が入力された場合であっても、貫通孔21内での突起片17の位置が相対的に変位されるだけで、当該水平方向の荷重が突起片17を介してレンズ14に伝達されることはない。このため、当該水平方向の荷重によりレンズ14および突起片17等が破損されることを防止することができる。
【0047】
ついで、ヘッドランプ10では、フロントバンパBに水平方向の荷重が入力された場合、拘束手段32において、フロントバンパBの係止突片29の挿通孔30から、保持部材12のフランジ壁部分24の係合突起25へと当該水平方向の荷重が伝達されることとなる。この係合突起25に伝達された当該水平方向の荷重は、保持部材12の先端部12aであるフランジ壁部分24から、第1壁部18、曲折部20および第2壁部19を経て、ハウジング13への固着個所である取付台座15とネジ31との螺合個所に伝達されることとなるので、保持部材12の弾性変形による当該荷重の吸収、特に曲折部20を軸とした第1壁部18の回動変位、および第1壁部18の撓み変形等による当該荷重の吸収によりハウジング13に伝達される大きさを抑制することができる。このため、当該水平方向の荷重によりハウジング13およびその固着個所等が破損されることを抑制することができる。
【0048】
ヘッドランプ10では、フロントバンパBに水平方向の荷重が入力された場合に、ランプ本体11が破損されることが抑制されていることから、例えば、車両Cの前方から衝突された場合であっても、ランプ本体11が破損されることを抑制することができ、修理コストを低減させることができる。
【0049】
ヘッドランプ10では、本体補強リブ28が設けられていることから、フランジ壁部分24から、第1壁部18、曲折部20、第2壁部19およびその補助壁部分27に至るまでの強度を適切なものとすることができる。このため、フロントバンパBとレンズ14との相対的な位置関係を所望のものとすることができ、かつフロントバンパBからの荷重を適切に吸収することができる。
【0050】
ヘッドランプ10では、一対の突起片17が、保持部材12の幅方向で見てフランジ壁部分24の略中央位置を支える構成であることから、偏りなく保持部材12を支えることができ、鉛直方向への支持強度を効率的に高めることができる。
【0051】
ヘッドランプ10では、保持部材12が、全体にL字形状を呈しており、貫通孔21、係合突起25、本体補強リブ28および先端補強リブ26が設けられた簡易な構成であることから、容易に形成することができる。また、保持部材12は、鉛直方向で見て入り組んだ形状とされていないことから、鉛直方向に抜くような型枠を用いて容易に成形することができる。
【0052】
したがって、本発明に係る車両用灯具(本実施例ではヘッドランプ10。)では、保持部材12に大きな剛性を必要とすることなく灯具本体(本実施例ではランプ本体11。)と車両パネル(本実施例ではフロントバンパB。)との相対的な位置関係を適切に保持することができ、かつ車両パネル(B)に入力された荷重の灯具本体(11)への影響を抑制することができる。
【0053】
なお、上記した実施例では、車両用灯具としてヘッドランプ10が示されていたが、車両に用いられる灯具でありレンズが車両の外壁の一部を構成するものであれば、例えばリアランプであってもよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0054】
また、上記した実施例では、フロントバンパBの係止突片29の挿通孔30と、保持部材12のフランジ壁部分24の係合突起25とにより拘束手段32が構成されていたが、灯具本体(本実施例ではランプ本体11。)車両パネル(本実施例ではフロントバンパB。)との水平面内での相対的な移動を拘束するものであればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0055】
上記した実施例では、突起片17の上端面17aでフランジ壁部分24の下面24aを受けることにより、突起片17が保持部材12を鉛直方向に支持する構成とされていたが、突起片17は、貫通孔21に延在方向に相対的な移動自在に挿通された状態で保持部材12を鉛直方向に支持する構成であれば、例えば、貫通孔の上縁部を受ける構成であってもよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0056】
上記した実施例では、本体補強リブ28が設けられていたが、保持部材12に必要な強度に応じて適宜設ければよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る自動車用の灯具の一例であるヘッドランプが採用された車両を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1に示す矢印A1から見た車両の部分的な上面図である。
【図3】図2に示すI−I線に沿って得られた模式的な断面図である。
【図4】図2に示すII−II線に沿って得られた模式的な断面図である。
【図5】本発明に係る自動車用の灯具の保持部材を模式的に示す斜視図である。
【図6】図5と同様の保持部材の斜視図であり、図5とは異なる角度から見たものである。
【図7】図5に示す矢印A2から見た保持部材の上面図である。
【図8】図5に示す矢印A3から見た保持部材の正面図である。
【符号の説明】
【0058】
10 (車両用灯具としての)ヘッドランプ
11 (灯具本体としての)ランプ本体
12 保持部材
12a (第1壁部の先端個所としての)先端部
13 ハウジング
14 レンズ
17 突起片
17a 上端面
18 第1壁部
19 第2壁部
21 貫通孔
24 フランジ壁部分
24a 下面
24b 上面
26 先端補強リブ
28 本体補強リブ
29 係止突片
30 挿通孔
32 拘束手段
B (車両パネルとしての)フロントバンパ
C 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングの開放端にレンズが設けられた灯具本体と、該灯具本体と車両パネルとの相対的な位置関係を保持する保持部材とを備える車両用灯具であって、
前記保持部材は、板形状を呈し貫通孔が形成された第1壁部と、該第1壁部から屈曲して連続する板形状の第2壁部とを有し、水平面内での相対的な移動を拘束する拘束手段を介して前記第1壁部の先端個所が前記車両パネルに連結され、かつ前記第2壁部が前記ハウジングに固着されることにより該ハウジングと前記車両パネルとの間に掛け渡され、
前記レンズには、前記車両パネルへ向けて水平方向に突起する突起片が設けられ、該突起片は、掛け渡された前記保持部材の前記貫通孔に延在方向の相対的な移動可能に挿通された状態で前記保持部材を鉛直方向に支持していることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記保持部材には、前記第1壁部および前記第2壁部に対して角度を為すように前記第1壁部および前記第2壁部に連続する本体補強リブが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記突起片は、前記第1壁部を水平方向で見て中心位置となる個所で前記保持部材を支持していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記拘束手段は、前記車両パネルに設けられた係止突片に形成された挿通孔と、前記第1壁部の前記先端個所で鉛直方向に突起された係合突起とを有し、該係合突起は、水平面内での相対的な移動が拘束されるように前記挿通孔に鉛直方向から嵌入されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記第1壁部の前記先端個所には、前記車両パネルの前記係止突片と対向するように前記第1壁部から延出されたフランジ壁部分が設けられ、前記係合突起は、前記フランジ壁部分から鉛直方向に突起され、前記フランジ壁部分には、延出方向に沿って延在し前記係合突起に接続された先端補強リブが設けられていることを特徴とする請求項4に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記突起片は、前記フランジ壁部分の下面に当接して前記保持部材を鉛直方向に支持し、前記先端補強リブは、前記フランジ壁部分の上面で略中央を通るように延在されていることを特徴とする請求項5に記載の車両用灯具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−10248(P2008−10248A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−177875(P2006−177875)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】