説明

車両用灯具

【課題】高い光の利用効率を有し、かつ、リフレクタの反射面を光軸を中心として放射状に分割した斬新な見え方の車両用灯具を提供することを目的とする。
【解決手段】車両用灯具1の光軸Ax上に配置された半導体光源10と、光軸Axを中心として放射状に分割された複数の反射面41と境界部43を備えるリフレクタ40と、光源10の前方を覆うレンズキャップ30と、を備え、レンズキャップ30が、光源10から前方へ向かう光のうち側方出射光L2をリフレクタ40へ向けて投射する側方レンズ部32を備え、この側方レンズ部32は側方出射光L2を境界部43を避けるように屈折させる車両用灯具により上記目的が達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
灯具の構成として種々のものが提案されている。車両用灯具の一つとして、光源と、光源からの光を前方へ反射させるリフレクタとを備えた構成が、特許文献1等として提案されている。特許文献1に記載の車両用灯具は、リフレクタの反射面を光軸を中心として放射状に分割し、点灯時の灯具の見栄えを向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−231809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の如く、リフレクタの反射面を放射状に分割すると、隣接する反射面の間に投射された光源からの光は反射面により狙った方向へ反射されず、光源からの光を有効に活用できず光利用効率を十分に高めることができなかった。
【0005】
そこで、本発明は高い光の利用効率を有し、かつ、リフレクタの反射面を光軸を中心として放射状に分割した斬新な見え方の車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、上記目的を達成するために以下が提供される。
(1) 車両用灯具の光軸上に配置された半導体光源と、
前記光軸を中心として放射状に分割された複数の反射面及び隣接する2つの前記反射面の間に形成された境界部を備えるリフレクタと、
前記光源の前方を覆うレンズキャップと、を備えた車両用灯具であって、
前記レンズキャップは、前記光源から前方へ向かう光のうち前記光軸を中心とした立体角が所定角度以上の側方出射光を、前記リフレクタへ向けて投射する側方レンズ部を備え、
前記側方レンズ部は、前記光軸に関して周方向に少なくとも2つのレンズ素子に分割されており、前記側方出射光を前記境界部を避けるように屈折させることを特徴とする車両用灯具。
(2) 前記レンズキャップは、前記光源から前方へ向かう光のうち、前記光軸を中心とした立体角が所定角度未満の前方出射光を鉛直方向よりも水平方向へ大きく拡散させて前方へ投射する前方レンズ部を備えることを特徴とする(1)に記載の車両用灯具。
(3) 前記側方レンズ部は、前記側方出射光を前記光軸に関して垂直な方向に集光する集光レンズであることを特徴とする(1)または(2)に記載の車両用灯具。
(4) 前記境界部には、前記リフレクタから前方に張り出すリブが設けられていることを特徴とする(1)から(3)のいずれか一項に記載の車両用灯具。
(5) 前記レンズキャップ及び/又は前記リフレクタは、前記光源が搭載される基板に固定されていることを特徴とする(1)から(4)のいずれか一項に記載の車両用灯具。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る車両用灯具によれば、反射面の境界部に向かい前方へ出射されず光の利用効率を低下させるはずの光を、分割された側方レンズ部により反射面に向けて屈折させるので、リフレクタに境界部を設けても光の利用効率を低下させることなく、斬新な見え方の車両用灯具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用灯具の正面図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】図1のIII−III断面図である。
【図4】図1に示す車両用灯具のレンズキャップの正面図である。
【図5】図1に示す車両用灯具の部分拡大図である。
【図6】図1のVI−VI断面図である。
【図7】本発明の変形例に係る車両用灯具の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る車両用灯具を、図面を参照しつつ説明する。
【0010】
(全体構造)
図1は、本発明の実施形態に係る車両用灯具1の正面図であり、図2は図1のII−II断面図であり、図3は図1のIII−III断面図である。なお、以下の説明において、前方とは車両用灯具1の前方をいい、図2及び図3の左側をいう。
【0011】
図1に示すように車両用灯具1は、車両用灯具1の光軸Ax(図2参照)上に配置されたLED等の半導体光源10と、フレーム20と、半導体光源10の前方を覆うレンズキャップ30と、半導体光源10からの光を前方へ反射させるリフレクタ40と、を備えている。
【0012】
図2に示すように、半導体光源10は基板11上に固定されており、リフレクタ40も同じく基板11に固定されている。この基板11はフレーム20に固定されている。共通の基板11上に半導体光源10及びリフレクタ40とを配置することにより、半導体光源10とリフレクタ40との位置合わせを精度良くすることができる。レンズキャップ30は、図2に示したようにリフレクタ40の上に固定してもよいし、基板11の上に固定してもよい。
【0013】
図1に戻り、リフレクタ40は、車両用灯具1の光軸Axを中心として複数個(図示の例では16個)に分割された反射面41を備えている。これら反射面41は、全体として車両用灯具1の光軸Axを中心とする回転放物面として構成される。回転放物面状の反射面41は、主に光軸Axに対して平行となる平行光として半導体光源10からの光を反射する。
【0014】
また、図1及び図3に示すように、光軸Axの周方向に関して各反射面41の間に形成された境界部には、リフレクタ40から前方へ張り出すリブ43が形成されており、車両用灯具1の意匠性を高めるとともにリフレクタ40の強度が向上されている。
【0015】
レンズキャップ30は、図2に示すように、半導体光源10の前方に位置する前方レンズ部31と、半導体光源10の側方に位置する側方レンズ部32とが、一体的に形成された透光性の部材である。
【0016】
レンズキャップ30の前方レンズ部31は、半導体光源10から発光された光のうち、光軸Axを中心とした立体角が所定角度Φ1未満の前方出射光L1が入射される位置に配置され、鉛直方向よりも水平方向へ大きく拡散して前方へ投射するように形成される。
【0017】
また、レンズキャップ30の側方レンズ部32は、半導体光源10から発光された光のうち、光軸Axを中心とした立体角が所定角度Φ1以上の側方出射光L2が入射される位置に配置され、リフレクタ40の反射面41に向けて投射するように形成される。
【0018】
この側方レンズ部32は、図1及び図4に拡大して示すように、光軸Axに関して周方向に、各反射面に対応するように複数(図示の例では16個)のレンズ素子33に分割されている。また、側方レンズ部32は、側方出射光L2を、リフレクタ40のリブ43を避けるように屈折させ、リフレクタ40の反射面41にのみ光を投射させる。
【0019】
このような側方レンズ部32は、複数の凸レンズからなるレンズ素子33と、これらレンズ素子33の間に形成したステップ34により形成することができる。側方レンズ部32を、図5に示すように、リフレクタ40の反射面41に対応する領域にレンズ素子33が位置し、リフレクタ40のリブ43に対応する領域にステップ34が位置するように、配置することにより、リブ43を避けるように側方出射光L2を屈折させることができる。なお、図5においては、レンズ素子33の曲率を誇張して描いている。
【0020】
(作用)
このように構成された車両用灯具1によれば、図2に示すように、半導体光源10から立体角がΦ1未満の前方に出射された前方出射光L1は前方レンズ部31により拡散されて前方へ投射され、立体角がΦ1以上の側方に出射された側方出射光L2は側方レンズ部32により反射面41にのみ投射されるように屈折され、反射面41で反射され拡散されて前方へ投射される。
【0021】
このように、車両用灯具1の中央に位置する前方レンズ部31と、レンズキャップ30の周囲に放射状に配置されたリフレクタ40の反射面41と、により半導体光源10からの光が前方へ拡散して投射され、両者で異なる見え方となるので、斬新なデザインの車両用灯具1を提供することができる。
【0022】
また、図5に示したように、半導体光源10から出射された側方出射光L2のうち、本来はリブ42へ向かうはずであった光を、側方レンズ部32により屈折させて反射面41に向かわせることで、リブ43に照射されて前方へ投射されない光が発生することを防止し、半導体光源10からの光を有効に利用することができる。したがって、照度の高い車両用灯具1を提供することができる。
【0023】
また側方レンズ部32は、側方出射光L2を光軸Axに対して垂直な方向(反射面41側)に集光する集光レンズとすることが好ましい。このように、側方レンズ部32から出射する光を反射面41側に集光する、つまり、前方側に投射される光を光軸Axに対して垂直な方向に屈折させることにより、リフレクタ40の反射面41を前方側まで形成する必要がなくなるので、リフレクタ40の奥行き寸法を小さくすることができる。
【0024】
更に集光レンズである前方レンズ部31も、図1の如くフレネルレンズとして形成すると、所望の屈折率を保ったまま前方レンズ部31の奥行き寸法を小さくすることができる。したがって、搭載空間の小さい車両にも本実施形態に係る車両用灯具1を搭載することができる。
【0025】
また、反射面41は側方出射光L2を光軸Axに対して平行な平行光として反射すると共に、一部の側方出射光L3を光軸Ax寄りに拡散するように形成すると、車両用灯具1の視認性を高めることができるので好適である。
【0026】
また、リフレクタ40の反射面41は、図6に示すように、側方出射光L2が反射する際、反射光L4,L5が一度集光してから前方に拡散する、所謂「クロス拡散」するように、前記回転放物面に対して周方向断面が窪んだ凹面に形成されていてもよい。反射面41をこのような凹面形状とすることにより、反射面41で反射された光がリブ43で遮られることなく前方へ投射され、照度の高い車両用灯具1を提供することができる。
【0027】
更にリフレクタ40の反射面41は、光軸Axに関して周方向に形成された周方向ステップ42により、光軸Axを中心とした同心状に分割されている。このように反射面41を同心状に分割することにより、同心状に発光する複数の発光面を形成でき、車両用灯具1の意匠性を高めることができる。
【0028】
また、この周方向ステップ42は側方レンズ部32からの屈折光に対して平行に設けられていると、側方レンズ部32から出射された側方出射光L2を周方向ステップ42で遮ることなく反射面41に到達させることができ、車両用灯具1の光の利用効率を高めることができる。なお、側方レンズ部32が側方出射光L2を光軸Axに対して垂直な方向に集光する集光レンズに形成されている場合は、この周方向ステップ42の傾斜角度が半導体光源10から離れるに従って小さくなるように形成される。
【0029】
さらに、全体として車両用灯具1の光軸Axを中心とする回転放物面として構成されるリフレクタ40の反射面41において、周方向ステップ42により分割された反射面41のそれぞれは、互いに焦点距離が異なる複数の放物面を接続して形成することが好ましい。即ち、反射面41の焦点位置を半導体光源10またはその近傍とし、半導体光源10から遠い反射面41ほど、その焦点距離が大きい放物面形状とすることが好ましい。反射面41をこのように構成することにより、車両用灯具1の奥行きを増大させずに発光面積を広げて光源10からの光を前方へ投射することができ、また光軸Axを中心として光軸Axの径方向に離散的な複数の円環状に発光させることができるので、車両用灯具1の見栄えを向上させることができる。
【0030】
また、前方レンズ部31を複数個のレンズ素子に分割し、それぞれのレンズ素子から投射される光の方向を変えても良い。例えば、鉛直方向よりも水平方向に光を大きく拡散させるように、前方レンズ部31のそれぞれのレンズ素子の形状を異ならせれば、水平方向に広く照射することのできる車両用灯具1を形成することができる。
【0031】
また、図2,3に示すように、リフレクタ40の前面にレンズカバー50を設け、レンズキャップ30の前方レンズ部31及びリフレクタ40の反射面41から前方に投射された光を、拡散させて前方に投射するように構成してもよい。
【0032】
また、リフレクタ40の各反射面41は、各々の反射面41で反射した光が互いに異なる出射パターンを形成するように構成してもよい。例えば、鉛直方向へ延びる反射面41をその反射光が光軸Axと略平行な平行光となるように構成し、水平方向へ延びる反射面41をその反射光が水平方向へ拡散する拡散光となるように構成すると、対向車等に眩しさを感じさせずに視認性を向上させることができるので好適である。
【0033】
(変形例)
上記の実施形態では、放射状に分割した複数の反射面41の間の境界部にリブ43を形成した例を挙げて説明したが、以下のような変形例にも本発明を適用することができる。
【0034】
図7は、本発明の変形例に係る車両用灯具1Aを示す正面図である。
本変形例においても、上述の実施形態と同様に、第1半導体光源10A、フレーム20と、第1半導体光源10Aの前方を覆う第1レンズキャップ30Aと、第1半導体光源10Aからの光を前方へ反射させる第1反射面41を備えたリフレクタ40と、を備えおり、第1反射面41は光軸Axを中心として放射状に分割されている。
【0035】
このうち、放射状に分割されたリフレクタ40Aの特定の2つの反射面41a,41bの間の境界部には、第2光源10B、第2光源10Bからの光を前方へ反射させる第2反射面60、第2光源10Bからの光を前方及び第2反射面60に投射する第2レンズキャップ30Bが配置されている。
【0036】
本変形例における第1レンズキャップ30Aの側方レンズ部32Aは、第1半導体光源10Aからの側方出射光のうち、第2反射面60に向かう光を第1反射面41に投射するように屈折させる形状とされている。なお、第1半導体光源10Aからの側方出射光を屈折させてリブ43を避けるように、リブ43に対応する位置にステップ34が形成されている点は上記の実施形態と同様である。
【0037】
このように、リフレクタ40を放射状に第1反射面44と第2反射面60とに区分けし、例えば、第1反射面44により停止表示器を、第2反射面により方向指示器を構成することができる。このように、それぞれを別な光源により発光させることで更に斬新な見え方の車両用灯具を提供することができる。
【0038】
この場合でも、第1レンズキャップ30Aの側方レンズ部32Aにより、第1半導体光源10Aからの側方出射光L2を、第1半導体光源10Aの光を利用しない第2反射面60を避けるように屈折させ、第1反射面41に光を集中させることで、光の利用効率を高めることができる。
【0039】
以上、本発明をその実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に多様な変更または改良を加えることができることは、当業者にとって明らかである。
【0040】
例えば、図1に示した例においては、円状に形成されたリフレクタ40を示した、本発明はこの形状に限られず、矩形等、様々な形状に適用できることはもちろんである。また、反射面41を放射状に16等分した例を挙げて説明したが、分割数は6つに限られることがなく、また等分に分割しなくても良い。
【符号の説明】
【0041】
1:車両用灯具、10:半導体光源、11:基板、20:フレーム、30:レンズキャップ、31:前方レンズ部、32:側方レンズ部、33:レンズ素子、34:ステップ、40:リフレクタ、41:反射面、42:周方向ステップ、43:リブ(境界部)、50:レンズカバー、60:第2反射面(境界部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用灯具の光軸上に配置された半導体光源と、
前記光軸を中心として放射状に分割された複数の反射面及び隣接する2つの前記反射面の間に形成された境界部を備えるリフレクタと、
前記光源の前方を覆うレンズキャップと、を備えた車両用灯具であって、
前記レンズキャップは、前記光源から前方へ向かう光のうち前記光軸を中心とした立体角が所定角度以上の側方出射光を、前記リフレクタへ向けて投射する側方レンズ部を備え、
前記側方レンズ部は、前記光軸に関して周方向に少なくとも2つのレンズ素子に分割されており、前記側方出射光を前記境界部を避けるように屈折させることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記レンズキャップは、前記光源から前方へ向かう光のうち、前記光軸を中心とした立体角が所定角度未満の前方出射光を鉛直方向よりも水平方向へ大きく拡散させて前方へ投射する前方レンズ部を備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記側方レンズ部は、前記側方出射光を前記光軸に関して垂直な方向に集光する集光レンズであることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記境界部には、前記リフレクタから前方に張り出すリブが設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記レンズキャップ及び/又は前記リフレクタは、前記光源が搭載される基板に固定されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−221821(P2012−221821A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88004(P2011−88004)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】