説明

車両用灯具

【課題】温度変化に基づく電流変化による光量変化を適正に行うことが重要である。
【解決手段】この発明は、LED2と、点灯回路3と、温度センサ4と、を備える。点灯回路3は、電流設定部6と、電流調整部7と、から構成されている。点灯回路3は、温度が第1温度値T1から上昇すると電流を抑制し、温度が第1温度値T1よりも高い第2温度値T2から下降すると電流を増加する回路であって、温度下降時における電流の増加の度合いが、温度上昇時における電流の抑制の度合いよりも小さい。この結果、この発明は、温度が急激に下降しても、電流が緩やかに増加して光量が緩やかに増加するものであるから、光量の急激な増加に伴う誤認識を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体型光源を光源とする車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用灯具は、従来からある(たとえば、特許文献1)。以下、従来の車両用灯具について説明する。従来の車両用灯具は、光源としての半導体発光素子と、予め設定された電流を半導体発光素子に供給しかつ灯具の温度に基づいて供給電流を変化させる電流制御部と、を備えるものである。以下、前記の従来の車両用灯具の作用について説明する。電流制御部により予め設定された電流が半導体発光素子に供給されていて、灯具の温度が閾温度より大きいと、電流制御部により電流を減少させるものである。これにより、前記の従来の車両用灯具は、半導体発光素子の耐久性を向上させるものである。
【0003】
この種の車両用灯具においては、温度変化に基づく電流変化による光量変化を適正に行うことが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−276738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、この種の車両用灯具においては、温度変化に基づく電流変化による光量変化を適正に行うことが重要である、という点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明(請求項1にかかる発明)は、半導体型光源と、半導体型光源に電流を供給して半導体型光源を点灯させる点灯回路と、半導体型光源および点灯回路のうち少なくともいずれか一方の温度を検出する温度検出部と、を備え、点灯回路が、温度検出部が検出した温度に基づいて半導体型光源に供給する電流の値を算出する電流設定部と、半導体型光源に供給する電流を電流設定部が算出した電流値に調整して半導体型光源に供給する電流調整部と、から構成されていて、温度が設定値から上昇すると電流を抑制(減少)し、温度が設定値よりも高い値から下降すると電流を増加する回路であり、温度下降時における電流の増加の度合いが、温度上昇時における電流の抑制の度合いよりも小さい、ことを特徴とする。
【0007】
また、この発明(請求項2にかかる発明)は、半導体型光源と、半導体型光源に電流を供給して半導体型光源を点灯させる点灯回路と、半導体型光源および点灯回路のうち少なくともいずれか一方の温度を検出する温度検出部と、を備え、点灯回路が、温度検出部が検出した温度に基づいて半導体型光源に供給する電流の値を算出する電流設定部と、半導体型光源に供給する電流を電流設定部が算出した電流値に調整して半導体型光源に供給する電流調整部と、から構成されていて、温度が設定値から上昇すると電流を抑制(減少)し、温度が設定値よりも高い値から下降すると電流を増加する回路であり、温度下降時において、電流の増加開始時点から電流の目標値到達時点までの時間が、温度下降時における電流の増加の度合いが温度上昇時における電流の抑制の度合いと同じ場合の時間と比較して、長い、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、温度下降時における電流の増加の度合いが温度上昇時における電流の抑制の度合いよりも小さいので、温度下降時における電流の増加の度合いと温度上昇時における電流の抑制の度合とが同じ車両用灯具と比較して、温度が急激に下降した場合において、電流が緩やかに増加して、光量が緩やかに増加することとなる。すなわち、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、温度が急激に下降しても、電流が緩やかに増加して、光量が緩やかに増加するものであるから、光量の急激な増加に伴う誤認識を防止することができる。たとえば、ヘッドランプの場合においては、ロービームからハイビームに見えて、パッシングと誤認する場合がある。また、リアコンビネーションランプの場合においては、テールランプからブレーキランプ見えて、ブレーキングと誤認する場合がある。この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、前記の誤認を防止することができる。この結果、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、温度変化に基づく電流変化による光量変化を適正に行うことができる。
【0009】
また、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用灯具は、温度下降時において、電流の増加開始時点から電流の目標値到達時点までの時間が、温度下降時における電流の増加の度合いが温度上昇時における電流の抑制の度合いと同じ場合の時間と比較して、長いので、電流の増加開始時点から電流の目標値到達時点までの時間が、温度下降時における電流の増加の度合いが温度上昇時における電流の抑制の度合いと同じ場合と同じ時間である車両用灯具と比較して、温度が急激に下降した場合において、電流が緩やかに増加して、光量が緩やかに増加することとなる。すなわち、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用灯具は、前記の請求項1にかかる発明の車両用灯具と同様に、温度が急激に下降しても、電流が緩やかに増加して、光量が緩やかに増加するものであるから、光量の急激な増加に伴う誤認識を防止することができる。この結果、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用灯具は、前記の請求項1にかかる発明の車両用灯具と同様に、温度変化に基づく電流変化による光量変化を適正に行うことができる。
【0010】
しかも、この発明(請求項1、2にかかる発明)の車両用灯具は、半導体型光源および点灯回路のうち少なくともいずれか一方の温度が設定値から上昇すると電流を抑制するので、半導体型光源および点灯回路のうち高温に弱い電子部品を高温から保護することができ、半導体型光源および点灯回路の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、この発明にかかる車両用灯具の実施例を示す構成ブロック図である。
【図2】図2は、同じく、制御を示すフローチャートである。
【図3】図3は、同じく、温度と出力電流との特性を示す説明図である。
【図4】図4は、同じく、温度と出力電流との特性を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明にかかる車両用灯具の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0013】
(構成の説明)
以下、この実施例における車両用灯具の構成について説明する。図1において、符号1は、この実施例における車両用灯具である。この実施例における車両用灯具1は、たとえば、ヘッドランプ、リヤコンビネーションランプ、フロントコンビネーションランプ、デイタイムランニングランプなどである。この実施例における車両用灯具1は、ランプハウジング(図示せず)と、ランプレンズ(図示せず)と、光源すなわち半導体型光源としてのLED2と、点灯回路(駆動回路)3と、温度検出部としての温度センサ4と、を備える。
【0014】
前記LED2は、前記ランプハウジングおよび前記ランプレンズにより区画されている灯室(図示せず)内に配置されている。光源すなわち半導体型光源としては、前記LED2以外に、たとえば、EL(有機EL)などの自発光半導体型光源を使用しても良い。
【0015】
前記点灯回路3は、前記車両用灯具1に装備されている。前記点灯回路3は、車両電源(たとえば、バッテリー)5からの電流を前記LED2に適宜供給して前記LED2を安定した状態で点灯させるものである。前記点灯回路3は、車両からの電源供給(たとえば、ヘッドランプなどの車両用灯具の点灯用電源)を受けて動作を開始し、前記LED2に電力を供給する。また、前記点灯回路3は、車両からの電力供給が断たれた場合には、前記LED2への電力供給が行えなくなり、前記LED2は、消灯する。
【0016】
前記温度センサ4は、前記車両用灯具1に装備されている。前記温度センサ4は、前記LED2および前記点灯回路3のうち少なくともいずれか一方、すなわち、高温に弱い電子部品の温度を検出するものである。すなわち、前記温度センサ4は、前記LED2および前記点灯回路3のうち少なくともいずれか一方の温度を検出し、その検出信号を前記点灯回路3に出力するものである。温度検出部としては、求められる検出温度レンジの温度変化を適切に検出できるものであれば、所謂温度検出用素子に限定しない。
【0017】
前記点灯回路3は、電流設定部6と、電流調整部7と、から構成されている。前記電流設定部6は、前記温度センサ4と前記電流調整部7とにそれぞれ接続されている。前記電流設定部6は、前記温度センサ4が検出した温度に基づいて前記LED2に供給する電流の値を算出するものである。前記電流調整部7は、前記LED2と前記車両電源5と前記電流設定部6とにそれぞれ接続されている。前記電流調整部7は、前記LED2に供給する電流を前記電流設定部6が算出した電流値に調整して前記LED2に供給するものである。
【0018】
前記点灯回路3は、前記LED2および前記点灯回路3のうち少なくともいずれか一方の温度、すなわち、前記温度センサの検出温度が設定値(予め設定されている所定温度値であって、以下、「第1温度値」と称する)T1から上昇すると電流を抑制し、温度が第1温度値よりも高い値(以下、「第2温度値」と称する)T2から下降すると電流を増加する回路である。前記点灯回路3は、前記温度下降時における電流の増加の度合いを、前記温度上昇時における電流の抑制の度合いよりも小さく制御する回路である。ここで、前記の電流の度合いが小さいとは、同一の温度変化量(時間単位に対する温度の変化量)に対して、電流変化量(時間単位に対する電流の変化量)が小さいことを言う。
【0019】
また、前記点灯回路3は、前記温度下降時において、電流の増加開始時点(図3、図4中の時間t2参照)から電流の目標値(たとえば、図3、図4中の出力電流I1参照)到達時点(図3中の時間t4、図4中の時間t5参照、)までの時間(t4−t2、t5−t2)を、前記温度下降時における電流の増加の度合いが前記温度上昇時における電流の抑制の度合いと同じ場合の時間(図3、図4中のt2−t1参照)と比較して、長く制御する回路である。
【0020】
(作用の説明)
この実施例にかかる車両用灯具1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について、図2(A)のメインルーチンの説明図、図2(B)のタイマ割り込みルーチンの説明図、図3および図4の温度と出力電流との特性の説明図に基づいて、説明する。
【0021】
図2(A)のメインルーチンと、図2(B)のタイマ割り込みルーチンとは、パラレルに(独立して)行われる。図3および図4は、温度と出力電流との相対的な変化を経時的に示すグラフであって、縦軸に温度(破線で示す)および出力電流(実線で示す)をとり、横軸に時間をとる。
【0022】
まず、図2(B)のタイマ割り込みルーチンにおいて、温度センサ4がLED2および点灯回路3のうち少なくともいずれか一方の温度を検出してその検出信号を点灯回路3に出力する。点灯回路3は、温度センサ4からの検出信号を温度計測値として読み込む(温度計測値読込み S11)。
【0023】
点灯回路3は、温度センサ4からの検出信号に基づいて、高温による電流抑制を開始するか否かを判定する(高温による電流抑制を開始するか?の判定 S12、必要? S13)。このとき、温度センサ4の検出温度が第1温度値未満の場合には、不必要であるから、タイマ割り込みルーチンが終了する(割込み終了 S14)。
【0024】
前記の(S12、S13)において、温度センサ4の検出温度が第1温度値以上の場合には、必要であるから、点灯回路3は、電流抑制の実施中のフラグをセットする(電流抑制実施中フラグをセット S15)。その後、前記の(S14)に進んで、タイマ割り込みルーチンが終了する。
【0025】
一方、図2(A)のメインルーチンにおいて、車両からの電源供給が無い場合には、点灯回路3はLED2に対して電力供給を行えず、その結果、LED2は消灯状態にある。ここで、たとえば点灯スイッチ(図示せず)をONして、電源供給が開始されると、点灯回路3はLED2に対して電力供給を開始する。それに伴って、LED2は発光を開始する。点灯回路3は、主として、出力電流(前記LED2の順方向電流)を一定(I1)に保つように出力電力を調整する。すなわち、点灯スイッチ(図示せず)をONしてLED2を点灯させる(点灯開始 S1)。すると、点灯回路3は、高温による電流抑制が実施されているか否かを判定する(高温による電流抑制実施中か否かの判定 S2、実施中? S3)。
【0026】
このとき、LED2が点灯された当初においては、LED2および点灯回路3の温度は、LED2点灯前の温度と比較して、さほど上昇していない。すなわち、温度センサ4の検出温度が第1温度値未満の状態にあるから、点灯回路3は、高温による電流抑制が実施されていないと判定する。
【0027】
このために、電流設定部6は、非抑制時用の電流値I1を算出する(非抑制時用の電流値算出 S4)。そして、電流調整部7は、電流設定部6において算出された非抑制時用の電流値I1に調整し(算出した電流値に調整 S5)、その後(S2、S3)に戻る。これにより、LED2には、電流設定部6において算出されかつ電流調整部7において調整された値I1の電流が供給される。
【0028】
ここで、周囲温度の上昇、もしくは、電量消費に伴うLED2および点灯回路3の自己発熱により、LED2および点灯回路3のうち少なくともいずれか一方の温度が上昇した場合には、点灯回路3が温度センサ4からの出力を介して温度上昇の状態を認識する。そして、LED2の点灯開始から時間t1が経過した時点において、LED2および点灯回路3のうち少なくともいずれか一方の温度が第1温度値に達する。すると、前記の(S2、S3)において、点灯回路3は、高温による電流抑制が実施されていると判定する。
【0029】
続いて、点灯回路3は、温度が上昇中なのか下降中なのか判断する(温度上昇/下降判断 S6、上昇中? S7)。ここで、LED2および点灯回路3のうち少なくともいずれか一方の温度が第1温度値から上昇しているので、点灯回路3は、温度が上昇中であると判断する。すると、点灯回路3は、一定(I1)に保っていた出力電流を抑制し始め、その後の上昇の度合いに応じて徐々に出力電流を減らす。
【0030】
すなわち、電流設定部6は、上昇時用の電流値を算出する(上昇時用の電流値算出 S8)。そして、電流調整部7は、電流設定部6において算出された上昇時用の電流値に調整し(算出した電流値に調整 S5)、その後(S2、S3、S6、S7)に戻る。これにより、LED2には、電流設定部6において算出されかつ電流調整部7において調整された値の電流(すなわち、LED2の点灯開始からLED2および点灯回路3のうち少なくともいずれか一方の温度が第1温度値に達した時間t1までの間においてLED2に供給されていた電流値I1よりも抑制された値の電流)が供給される。
【0031】
LED2に供給される電流が抑制されることにより、LED2および点灯回路3の自己発熱が低減されて、LED2および点灯回路3のうち少なくともいずれか一方の温度上昇が止まり、反対に、LED2および点灯回路3のうち少なくともいずれか一方の温度が下降し始める。すなわち、LED2および点灯回路3のうち少なくともいずれか一方の温度が、時間t2において、第1温度値よりも高い第2温度値T2から下降する。すると、点灯回路3は、温度が下降中であると判断する。このために、前記の(S6、S7)から、電流設定部6は、下降時用の電流値を算出する(下降時用の電流値算出 S9)。そして、電流調整部7は、電流設定部6において算出された下降時用の電流値に調整し(算出した電流値に調整 S5)、その後(S2、S3、S6、S7)に戻る。これにより、LED2には、電流設定部6において算出されかつ電流調整部7において調整された値の電流(すなわち、LED2および点灯回路3のうち少なくともいずれか一方の温度が第2温度値T2に達した時間t2においてLED2に供給されていた電流値I3よりも増加された値の電流)が供給される。
【0032】
ここで、時間t1は、温度が第1温度値よりも上昇して出力電流が電流値I1よりも抑制された時点における時間である。また、時間t2は、温度が第2温度値T2よりも下降して出力電流が電流値I3よりも増加された時点における時間である。さらに、時間t3は、時間t1から時間t2までの間の時間と同じ時間が時間t2から経過した時点の時間である。
【0033】
そして、温度下降時における電流の増加の度合いは、温度上昇時における電流の抑制の度合いよりも小さい。すなわち、下記の数式(1)に示すように、温度下降時における時間単位(t3−t2)当たりの温度の下降(T2−T1)率と、時間単位(t3−t2)当たりの電流の上昇(I2−I3)率と、の比は、温度上昇時における時間単位(t2−t1)当たりの温度の上昇(T2−T1)率と、時間単位(t2−t1)当たりの電流の下降(I1−I3)率と、の比よりも、小さい。
【0034】
【数1】

【0035】
このために、LED2および点灯回路3のうち少なくともいずれか一方の温度が第1温度値に戻った時点(復帰した時点)t3における出力電流は、温度が第1温度値に達するまでの電流値I1よりも小さい電流値I2までしか戻らない。
【0036】
そして、LED2および点灯回路3のうち少なくともいずれか一方の温度が第1温度値T1以下の状態が継続される時間すなわち時間t3から時間t4までの間の時間に応じて、出力電流を電流値I2から非抑制時用の電流値I1まで増加させる(図3参照)。あるいは、LED2および点灯回路3のうち少なくともいずれか一方の温度が第1温度値T1よりも低い第3所定値T3に達した時点t5において、出力電流を電流値I2から非抑制時用の電流値I1まで増加させる(図4参照)。
【0037】
ここで、図3、図4に示すように、温度下降時において、電流の増加開始時点(図3、図4中の時間t2参照)から電流の目標値(たとえば、図3、図4中の出力電流I1参照)到達時点(図3中の時間t4、図4中の時間t5参照、)までの時間(t4−t2、t5−t2)は、温度下降時における電流の増加の度合いが温度上昇時における電流の抑制の度合いと同じ場合の時間(図3、図4中のt2−t1参照)と比較して、長い。
【0038】
以下、LED2が消灯されるまで、前記の図2(A)のメインルーチンと、前記の図2(B)のタイマ割り込みルーチンとがパラレルに(独立して)行われる。
【0039】
前記の図3および図4において、温度(破線で示す)の上昇および下降、出力電流(実線で示す)の上昇および下降は、直線で示されている。なお、曲線で、あるいは、直線と曲線との組み合わせで示される場合もある。
【0040】
(効果の説明)
この実施例にかかる車両用灯具1は、以上のごとき構成作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0041】
この実施例における車両用灯具1は、温度下降時における電流の増加の度合い(図3、図4中のt2からt3(t4)までの実線の傾き)が温度上昇時における電流の抑制の度合い(図3、図4中のt1からt2までの破線の傾き)よりも小さいので、温度下降時における電流の増加の度合いと温度上昇時における電流の抑制の度合とが同じ車両用灯具と比較して、温度が急激に下降しても、電流が緩やかに増加して、光量が緩やかに増加することとなる。すなわち、この実施例における車両用灯具1は、温度が急激に下降しても、電流が緩やかに増加して光量が緩やかに増加するものであるから、光量の急激な増加に伴う誤認識を防止することができる。たとえば、ヘッドランプの場合においては、ロービームからハイビームに見えて、パッシングと誤認する場合がある。また、リアコンビネーションランプの場合においては、テールランプからブレーキランプ見えて、ブレーキングと誤認する場合がある。この実施例における車両用灯具1は、前記の誤認を防止することができる。この結果、この実施例における車両用灯具1は、温度変化に基づく電流変化による光量変化を適正に行うことができる。
【0042】
ここで、車両用灯具、特に外気に晒されている車両用灯具においては、車両用灯具の温度上昇が緩やかであるのに対して、車両用灯具の温度下降(冷却)は急に行われる傾向にある。たとえば、車両が停止時にこもるエンジンの熱で車両用灯具の温度がゆっくり上昇し、車両が走行し始めた途端に走行風により車両用灯具の温度が急に下降する(急冷される)。このとき、温度下降時における電流の増加の度合いと温度上昇時における電流の抑制の度合とが同じ車両用灯具の場合においては、車両の走行と同時に車両用灯具が急冷されるので、出力電流が急増し、それに伴って、車両用灯具の光量も急増する。これにより、光量の急激な増加に伴う誤認識を与える場合がある。これに対して、この実施例における車両用灯具1は、温度下降時における電流の増加の度合いが温度上昇時における電流の抑制の度合いよりも小さいので、車両の走行と同時に車両用灯具が急冷されても、出力電流が緩やかに増加し、それに伴って、車両用灯具の光量も緩やかに増加するものであるから、光量の急激な増加に伴う誤認識を防止できる。
【0043】
また、この実施例における車両用灯具1は、温度下降時において、電流の増加開始時点(図3、図4中の時間t2参照)から電流の目標値(たとえば、図3、図4中の出力電流I1参照)到達時点(図3中の時間t4、図4中の時間t5参照、)までの時間(t4−t2、t5−t2)が、温度下降時における電流の増加の度合いが温度上昇時における電流の抑制の度合いと同じ場合の時間(図3、図4中のt2−t1参照)と比較して、長いので、電流の増加開始時点から電流の目標値到達時点までの時間が、温度下降時における電流の増加の度合いが温度上昇時における電流の抑制の度合いと同じ場合と同じ時間(図3、図4中のt2−t1参照)である車両用灯具と比較して、温度が急激に下降した場合において、電流が緩やかに増加して、光量が緩やかに増加することとなる。すなわち、この実施例における車両用灯具1は、温度が急激に下降しても、電流が緩やかに増加して、光量が緩やかに増加するものであるから、光量の急激な増加に伴う誤認識を防止することができる。この結果、この実施例における車両用灯具1は、温度変化に基づく電流変化による光量変化を適正に行うことができる。
【0044】
ここで、車両用灯具、特に外気に晒されている車両用灯具においては、車両用灯具の温度上昇が緩やかであるのに対して、車両用灯具の温度下降(冷却)は急に行われる傾向にある。たとえば、車両が停止時にこもるエンジンの熱で車両用灯具の温度がゆっくり上昇し、車両が走行し始めた途端に走行風により車両用灯具の温度が急に下降する(急冷される)。このとき、電流の増加開始時点から電流の目標値到達時点までの時間が、温度下降時における電流の増加の度合いが温度上昇時における電流の抑制の度合いと同じ場合と同じ時間(図3、図4中のt2−t1参照)である車両用灯具の場合においては、車両の走行と同時に車両用灯具が急冷されるので、出力電流が急増し、それに伴って、車両用灯具の光量も急増する。これにより、光量の急激な増加に伴う誤認識を与える場合がある。これに対して、この実施例における車両用灯具1は、電流の増加開始時点(図3、図4中の時間t2参照)から電流の目標値(たとえば、図3、図4中の出力電流I1参照)到達時点(図3中の時間t4、図4中の時間t5参照、)までの時間(t4−t2、t5−t2)が、温度下降時における電流の増加の度合いが温度上昇時における電流の抑制の度合いと同じ場合の時間(図3、図4中のt2−t1参照)と比較して、長いので、車両の走行と同時に車両用灯具が急冷されても、出力電流が緩やかに増加し、それに伴って、車両用灯具の光量も緩やかに増加するものであるから、光量の急激な増加に伴う誤認識を防止することができる。
【0045】
しかも、この実施例における車両用灯具1は、LED2および点灯回路3のうち少なくともいずれか一方の温度が第1所定温度T1から上昇すると電流を抑制するので、LED2および点灯回路3のうち高温に弱い電子部品を高温から保護することができ、LED2および点灯回路3の耐久性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 車両用灯具
2 LED(半導体型光源)
3 点灯回路(駆動回路)
4 温度センサ(温度検出部)
5 車両電源
6 電流設定部
7 電流調整部
T1 第1温度値
T2 第2温度値
T3 第3温度値
I1 温度上昇時において温度が第1温度値T1に達するまでの出力電流値
I2 温度下降時において温度が第1温度値T1に達した時点での出力電流値
I3 温度上昇時において温度が第2温度値T2に達した時点での出力電流値
t1 温度上昇時において温度が第1温度値T1に達した時点
t2 温度上昇時において温度が第2温度値T2に達した時点
t3 温度下降時において温度が第1温度値T1に達した時点
t4 出力電流上昇時において出力電流が電流値I1に達した時点
t5 温度下降時において温度が第3温度値T3に達した時点、出力電流上昇時において出力電流が電流値I1に達した時点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体型光源を光源とする車両用灯具において、
半導体型光源と、
前記半導体型光源に電流を供給して前記半導体型光源を点灯させる点灯回路と、
前記半導体型光源および前記点灯回路のうち少なくともいずれか一方の温度を検出する温度検出部と、
を備え、
前記点灯回路は、前記温度検出部が検出した温度に基づいて前記半導体型光源に供給する電流の値を算出する電流設定部と、前記半導体型光源に供給する電流を前記電流設定部が算出した電流値に調整して前記半導体型光源に供給する電流調整部と、から構成されていて、温度が設定値から上昇すると電流を抑制し、温度が設定値よりも高い値から下降すると電流を増加する回路であり、
前記温度下降時における電流の増加の度合いは、前記温度上昇時における電流の抑制の度合いよりも小さい、
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
半導体型光源を光源とする車両用灯具において、
半導体型光源と、
前記半導体型光源に電流を供給して前記半導体型光源を点灯させる点灯回路と、
前記半導体型光源および前記点灯回路のうち少なくともいずれか一方の温度を検出する温度検出部と、
を備え、
前記点灯回路は、前記温度検出部が検出した温度に基づいて前記半導体型光源に供給する電流の値を算出する電流設定部と、前記半導体型光源に供給する電流を前記電流設定部が算出した電流値に調整して前記半導体型光源に供給する電流調整部と、から構成されていて、温度が設定値から上昇すると電流を抑制し、温度が設定値よりも高い値から下降すると電流を増加する回路であり、
前記温度下降時において、電流の増加開始時点から電流の目標値到達時点までの時間が、前記温度下降時における電流の増加の度合いが前記温度上昇時における電流の抑制の度合いと同じ場合の時間と比較して、長い、
ことを特徴とする車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−61936(P2012−61936A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207070(P2010−207070)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】