説明

車両用蓄冷式クーラー

【課題】後付けによって短時間で設置することができるとともに、車両走行時に十分な蓄冷運転ができ、エアコン停止時の冷房時間を十分確保することができる車両用蓄冷式クーラーを提供すること。
【解決手段】エンジン駆動式のエアコンを搭載した車両に前記エアコンとは独立して設けられる電動式の蓄冷式クーラー1を、電動圧縮機4と電動ファン付き凝縮器5を備えたコンデンシングユニット2と、蒸発器8と蓄冷材及び電動ファン9を備えた蓄冷ユニット3とを冷媒配管10,12で接続して構成する。そして、車両走行時に車載電源系統から供給される電力によって前記コンデンシングユニット2の電動圧縮機4と凝縮器5の電動ファン7を駆動することによって蓄冷運転を行い、エンジンが停止すると電動圧縮機4と凝縮器5の電動ファン7への電力の供給を遮断して蓄冷運転を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されたエンジン駆動式のエアコン(エアコンディショナ)とは独立して設けられる電動式の車両用蓄冷式クーラーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
長距離の貨物輸送に供せられる図9に示すようなトラック130には、キャビン131の運転シート132の後方に仮眠用ベッド133が設置されており、ドライバは、必要に応じてトラック130をパーキングエリアに駐車した状態で仮眠用ベッド133上で仮眠或いは休憩することができる。ここで、トラック130には不図示のエンジンによって駆動されるエアコン140が搭載されており、このエアコン140は、エンジンによって駆動される圧縮機141、凝縮器142、蒸発器143等の機器を冷媒配管144,145,146によって接続して構成されている。
【0003】
ところで、夏場等の気温が高いときにドライバが仮眠或いは休憩するときには、トラック130をパーキングエリアに駐車した状態で、エンジンをアイドリング運転してエアコン140の圧縮機141を駆動することによってキャビン131内を冷房することが行われていた。
【0004】
しかしながら、エンジンをアイドリング運転しながらエアコン140を駆動してキャビン131内を冷房すると燃料の消費量が増えるばかりか、排気ガスの排出や特に夜間での騒音が問題となる。
【0005】
一方、近年、地球環境に対する意識が強くなり、トラックのドライバが仮眠或いは休憩するときはアイドリングストップを行うことが強く求められているが、特に気温が高い夏場にエンジンを停止し、エアコンが稼働しない状態でドライバがキャビン内で仮眠することは殆ど不可能である。
【0006】
そこで、エンジンが停止した状態でもキャビン内の冷房が可能な蓄冷式クーラーが提案されている。
【0007】
上記蓄冷式クーラーとして、例えば特許文献1には、図9に示すように、トラック130のキャビン131内の運転シート132の後方に設置された仮眠用ベッド133の基台を蓄冷ユニット103とし、図10のシステム構成図に示すように、この蓄冷ユニット103を構成する蒸発器108をエアコン140の蒸発器143と並列に、冷媒配管147によって接続する提案がなされている。これによれば、トラック130の走行中にエンジンによって駆動されるエアコン140の凝縮器142によって液化した冷媒の一部を蓄冷ユニット103の蒸発器108に導き、その冷媒の蒸発潜熱によって不図示の蓄冷材を冷却して蓄冷し、ドライバが仮眠するときにエンジンを停止しても、蓄冷材によってキャビン131内を冷房することができる。
【0008】
又、特許文献2には、図10に示すように、凝縮器142からエアコン140の蒸発器143に至る冷媒配管145の途中に電磁弁148を設け、トラック130の走行中に蓄冷スイッチを投入すると、電磁弁制御回路によって電磁弁148が所定時間間隔ごとに短時間だけ閉じて液冷媒を蓄冷ユニット103の蒸発器108へと流して蓄冷材を冷却して蓄冷するようにした蓄冷式クーラーが提案されている。尚、図10において、149,150は膨張弁である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−171422号公報
【特許文献2】特開2003−335125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1において提案された蓄冷式クーラーでは、トラック130の走行中はエアコン140の冷房運転負荷に加えて蓄冷ユニット103の蓄冷運転負荷がエンジンに掛かるため、燃料消費量が増えて不経済であるという問題がある。
【0011】
又、特許文献1において提案された蓄冷式クーラーでは、トラック130の走行中はエアコン140による冷房運転を主とし、蓄冷運転は冷房運転の合間の余裕時間内で行うため、蓄冷時間を十分確保することができず、仮眠時の冷房時間が不足するという問題がある。
【0012】
更に、特許文献1,2において提案された蓄冷式クーラーの設置は後付けとなり、エアコン140の冷媒配管144〜146の改造が必要であるためにトラック130をサービス工場に持ち込む必要があり、設置に長時間を要するため、その時間はトラック130を使用することができず、トラック130の運行計画に支障を来たすという問題もある。
【0013】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、後付けによって短時間で設置することができるとともに、車両走行時に十分な蓄冷運転ができ、エアコン停止時の冷房時間を十分確保することができる車両用蓄冷式クーラーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、エンジン駆動式のエアコンを搭載した車両に前記エアコンとは独立して設けられる電動式の蓄冷式クーラーを、電動圧縮機と電動ファン付き凝縮器を備えたコンデンシングユニットと、蒸発器と蓄冷材及び電動ファンを備えた蓄冷ユニットとを冷媒配管で接続して構成したことを特徴とする。
【0015】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、車両走行時に車載電源系統から供給される電力によって前記コンデンシングユニットの電動圧縮機と凝縮器の電動ファンを駆動することによって蓄冷運転を行い、エンジンが停止すると電動圧縮機と凝縮器の電動ファンへの電力の供給を遮断して蓄冷運転を停止することを特徴とする。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、エンジン停止時に放冷運転が選択されると、車載バッテリから供給される電力によって前記蓄冷ユニットの電動ファンを駆動することを特徴とする。
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記蓄冷ユニットを仮眠用ベッド内に組み込み、該蓄冷ユニットを通過する通風路を前記仮眠用ベッド内に形成し、前記電動ファンによって室内空気を吸引して前記通風路を流し、前記蓄冷ユニットによって冷却された冷気を室内に供給することを特徴とする。
【0018】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れかに記載の発明において、前記コンデンシングユニットと前記蓄冷ユニットとを一体化して仮眠用ベッド内に組み込んだことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1〜3記載の発明によれば、電動式の蓄冷式クーラーを車両に既設のエアコンとは独立して構成したため、エアコンの冷媒配管の改造を要することなく、該蓄冷式クーラーを後付けによって短時間で設置することができ、車両の拘束時間を短縮することができる。
【0020】
又、車両走行時にはエンジンによって駆動される発電機又は運転状況により車載バッテリから供給される電力、即ち車載電源系統から供給される電力によってコンデンシングユニットの電動圧縮機と凝縮器の電動ファンを駆動することによって蓄冷運転を行うようにしたため、エンジンの負荷が低く抑えられて燃料消費量も低く抑えられる。そして、エンジンによって発電がなされている間は蓄冷運転がなされるため、蓄冷材が冷却されて十分な蓄冷がなされ、エンジンが停止すると蓄冷式クーラーの電動圧縮機と凝縮器の電動ファンへの電力を供給を遮断して蓄冷運転を停止するようにしたため、バッテリ上り等の不具合の発生が防がれる。
【0021】
更に、気温が高い夏場等においてドライバが仮眠のために車両をパーキングエリアに停車してエンジンを停止し、放冷運転(蓄冷材による冷房運転)を選択すると、車載バッテリから供給される電力によって蓄冷ユニットの電動ファンが駆動され、蓄冷材によって冷却された冷風がキャビン内を冷房するため、エアコンが稼働していない状態でもドライバは快適な状態で仮眠することができる。この場合、車両走行時の蓄冷運転によって蓄冷材が十分冷却されているため、エアコン停止時の冷房時間を十分確保することができる。そして、この放冷運転時にはエンジンが停止しているため、燃料が消費されることがなく、有害な排気ガスの排出や騒音が発生することがない。
【0022】
請求項4記載の発明によれば、蓄冷ユニットを仮眠用ベッド内に組み込み、該蓄冷ユニットを通過する通風路を仮眠用ベッド内に形成したため、エンジンを停止してドライバが仮眠等する際には、車載バッテリからの僅かな電力によって駆動される電動ファンによって室内空気を吸引して該通風路を流し、蓄冷ユニットによって冷却された冷気を室内に供給することによってキャビン内を効率良く冷房することができる。
【0023】
請求項5記載の発明によれば、蓄冷式クーラーを構成するコンデンシングユニットと蓄冷ユニットとを一体化して仮眠用ベッド内に組み込んだため、当該蓄冷式クーラーを後付けによって設置する際にコンデンシングユニットと蓄冷ユニットとを冷媒配管によって接続する作業が不要となり、設置作業が更に簡略化して設置時間が更に短縮される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る車両用蓄冷式クーラーを備えた車両前部の模式的側面図である。
【図2】本発明に係る車両用蓄冷式クーラーのシステム構成図である。
【図3】本発明に係る車両用蓄冷式クーラーの蓄冷ユニットの斜視図である。
【図4】本発明に係る車両用蓄冷式クーラーの蓄冷ユニットの分解斜視図である。
【図5】図3のA−A線断面図である。
【図6】図5のB−B線断面図である。
【図7】本発明に係る車両用蓄冷式クーラーの蒸発器の斜視図である。
【図8】図7のC−C線断面図である。
【図9】従来の蓄冷式クーラーを備えた車両前部の模式的側面図である。
【図10】従来の蓄冷式クーラーを備えた空調ユニットのシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0026】
図1は本発明に係る車両用蓄冷式クーラーを備えたトラック前部の模式的側面図であり、図示のトラック30の前部に設けられたキャビン31内の運転シート32の後方には仮眠用ベッド33が設置されている。又、トラック30には不図示のエンジンによって駆動されるエアコン40が搭載されており、このエアコン40は、エンジンによって駆動される圧縮機41、該圧縮機41によって圧縮された高温高圧のガス冷媒を外気との熱交換によって冷却して凝縮させる凝縮器42と、該凝縮器42によって液化した液冷媒を減圧して断熱膨張させる不図示の膨張弁と、該膨張弁によって減圧された液冷媒を蒸発させて周囲から蒸発潜熱を奪ってキャビン31内に冷気を供給する蒸発器43等の機器を冷媒配管44,45,46によって接続することによって構成されている。
【0027】
而して、本実施の形態では、トラック30には既設のエアコン40とは独立に構成された蓄冷式クーラー1が設けられている。この蓄冷式クーラー1は、トラック30のキャビン31内の助手席の座席下部又は足元に設置されたコンデンシングユニット2と前記仮眠用ベッド33内に収容された蓄冷ユニット3とを冷媒配管10,12によって接続することによって構成されている。ここで、本発明に係る車両用蓄冷式クーラー1の構成の詳細を図2に基づいて説明する。
【0028】
図2は車両用蓄冷式クーラー1のシステム構成図であり、前記コンデンシングユニット2は、発電機60又は車載バッテリ50からの電力の供給を受けて駆動される電動圧縮機4の吐出口と凝縮器5の入口とを冷媒配管6によって接続して構成されており、凝縮器5には電動ファン7が設けられている。尚、電動ファン7は発電機60又は車載バッテリ50から電力の供給を受けて駆動される。
【0029】
他方、前記蓄冷ユニット3は、蒸発器8と、車載バッテリ50からの電力の供給を受けて駆動される電動ファン9と、蒸発器8の入口とコンデンシングユニット2の前記凝縮器5の出口とを接続する冷媒配管10の途中に設けられた減圧手段としてのキャピラリチューブ11を備えており、蒸発器8の出口とコンデンシングユニット2の前記電動圧縮機4の吸入口とは冷媒配管12によって接続されている。
【0030】
次に、蓄冷ユニット3の構成の詳細を図3〜図8に基づいて説明する。
【0031】
図3は蓄冷ユニットの斜視図、図4は同蓄冷ユニットの分解斜視図、図5は図3のA−A線断面図、図6は図5のB−B線断面図、図7は蓄冷ユニットの蒸発器の斜視図、図8は図7のC−C線断面図である。
【0032】
図3〜図6に示すように、前記仮眠用ベッド33は、発泡スチロール等の断熱材で構成された上下の蓋材33Aと基台33Bとを接合して構成されている。即ち、基台33Bはトラック30のキャビン31の床材35上に設置されており、この基台33Bの上部に蓋材33Aを被せることによって仮眠用ベッド33が構成されている。
【0033】
而して、図4〜図6に示すように、仮眠用ベッド33の内部には収納空間S1が形成されており、この収納空間S1には蓄冷ユニット3の蒸発器8と電動ファン9が収納されている。ここで、図4及び図5に示すように、仮眠用ベッド33の基台33Bの長手方向一端部(図4及び図5の左端部)には隔壁33aによって吸込空間S2が画成されており、この吸込空間S2には基台33Bの左右に形成された吸気口13が開口している。従って、吸込空間S2は、左右の吸気口13を介してキャビン21内に連通している。
【0034】
図4に示すように、仮眠用ベッド33の基台33Bの隔壁33aの左右には矩形の凹部33bがそれぞれ形成されており、これらの凹部33bの周囲には嵌合溝33cが形成されている。そして、蓋材33Aの長手方向一端部の前記嵌合溝33cに対応する位置にはスリット状の左右一対のフィルタ差込口33dが形成されており、図5に示すように、各フィルタ差込口33dから差し込まれたフィルタ14は、その周縁が基台33Bの各凹部33bの周囲に形成された前記嵌合溝33cに嵌合することによって各凹部33bに組み付けられる。従って、仮眠用ベッド33の内部に形成された前記吸込空間S2は、左右一対のフィルタ14を介して前記収納空間S1に連通している。
【0035】
又、図3〜図5に示すように、仮眠用ベッド33の基台33Bの長手方向他端(図3〜図5の右端)には樹脂にて一体成形された矩形ダクト15が垂直に立設されており、この矩形ダクト15の下端は仮眠用ベッド33内の収納空間S1に連通している。そして、図4及び図5に示すように、仮眠用ベッド33内の収納空間S1の矩形ダクト15に近い側には左右一対の前記電動ファン9が配置されている。
【0036】
更に、図3及び図5に示すように、矩形ダクト15の上端部ベッド吸気口側には冷気を吹き出すための左右一対の排気口16が形成されており、各排気口16には冷気の吹出方向を変えるためのルーバー17が設けられている。
【0037】
ところで、仮眠用ベッド33の収納空間S1には、蓄冷ユニット3の前記電動ファン9の他に蒸発器(熱交換器)8と蓄冷材18が収納されている。ここで、蒸発器8は、図7及び図8に示すように、熱伝導性の高いアルミニウム製の吸熱板19の内部に冷媒配管(蒸発管)20を形成し、交互に折り返しながら連通することによって構成されている。即ち、冷媒配管20は、吸熱板19の内部を長手方向に貫通することによって吸熱板19の幅方向に適当なピッチで平行に配列されている。そして、U字状に折り曲げられたUベント管25を介して交互に折り返しながら連続して接続されている。
【0038】
又、図5及び図6に示すように、仮眠用ベッド33内の収納空間S1には上下2層の蓄冷材18が積層されて収容されており、各蓄冷材18の上面に蒸発器8がそれぞれ載置されている。そして、図6に示すように、仮眠用ベッド33の基台33Bの内底面(収納空間S1の底面)と蓋材33Aの下面(収納空間S1の上面)には長手方向(図6の紙面垂直方向)に延びる凸部33e,33fが左右方向にそれぞれ複数形成されており、一方の凸部33eとこれに当接する蓄冷材18との間には長手方向に延びる複数の通風路21が左右方向に複数形成され、他方の凸部33fとこれに当接する上側の蒸発器8との間には長手方向に延びる複数の通風路22が左右方向に複数形成されている。尚、蓄冷材18としては水やグリコール等が使用される。又、図4において、23は位置決め用の支柱、24は配管接続部である。
【0039】
次に、以上のように構成された本発明に係る車両用蓄冷式クーラー1の作用について説明する。
【0040】
気温が高い夏場等においてエアコン40をエンジンによって駆動することによってキャビン31内を冷房しながらトラック30が走行している間は、車載電源系統から供給される電力によって蓄冷式クーラー1が駆動されて蓄冷材18が冷却される。即ち、図2に示す蓄冷式クーラー1のシステムにおいて、コンデンシングユニット2の電動圧縮機4と凝縮器5の電動ファン7が発電機60又は車載バッテリ50からの電力の供給を受けて駆動されると、ガス冷媒が電動圧縮機4によって圧縮され、電動圧縮機4から吐出される高温高圧のガス冷媒は冷媒配管6を通って凝縮器5へと導入され、凝縮器5におけるキャビン31内の空気との熱交換によってガス冷媒が冷却されて凝縮する。
【0041】
凝縮器5における凝縮によって液化した液冷媒は、冷媒配管10を通って蓄冷ユニットへ3と導入され、冷媒配管10を流れる過程でキャピラリチューブ11によって減圧されて断熱膨張した後、仮眠ベッド33内に収容された上下2段の蒸発器8の冷媒配管20を順次流れる過程で蓄冷材18から蒸発潜熱を奪って蒸発し、上下2層の蓄冷材18を冷却する。そして、蓄冷材18を冷却した後のガス冷媒は、冷媒配管12を通ってコンデンシングユニット2の電動圧縮機4へと戻されて再度圧縮され、以後は同様の作用(冷凍サイクル)が繰り返されて蓄冷材18が冷却される。このとき、電動ファン9は停止している。尚、エンジンの回転数が低いときには、車載バッテリ50から供給される電力によって電動圧縮機4と電動ファン7は駆動され、エンジンの回転数が高いときには、発電機60は車載バッテリ50を充電しながら蓄冷式クーラー1に電力を供給する。
【0042】
そして、ドライバが例えば仮眠のためにトラック30をパーキングエリアに停車してエンジンを停止し、放冷運転を選択すると、車載バッテリ50から供給される電力によって蓄冷ユニット3の電動ファン9が駆動される。すると、トラック30のキャビン31内の空気が仮眠用ベッド33の長手方向一端両側部に開口する吸気口13から吸込空間S2へと吸い込まれ、この空気は、左右一対のフィルタ14を通過して浄化された後に収納空間S1内へと導入される。
【0043】
仮眠用ベッド33内の収納空間S1へと導入された空気は、図5に矢印にて示すように、上下2段の蓄冷材18に沿って長手方向に形成された上下の複数の通風路21,22を流れ、その過程で蓄冷材18によって冷却される。このように蓄冷材18によって冷却された空気(冷気)は、仮眠用ベッド33の長手方向他端(図5の右端)に立設された矩形ダクト15内を上方に向かって流れ、矩形ダクト15の上端部ベッド吸気口側に開口する左右一対の排気口16から排出され、キャビン21内の冷房に供される。
【0044】
以上において、本発明に係る蓄冷式クーラー1は、トラック30に既設のエアコン40とは独立して構成されるため、エアコン40の冷媒配管44〜46の改造を要することなく、該蓄冷式クーラー1を後付けによって短時間で設置することができる。このため、トラック30の拘束時間を短縮することができ、トラック30の運行計画に大きくな支障を来たすことがない。
【0045】
又、トラック30の走行時には、発電機60又は車載バッテリ50から供給される電力によってコンデンシングユニット2の電動圧縮機4と凝縮器5の電動ファン7を駆動することによって蓄冷運転を行うようにしたため、エンジンの負荷が低く抑えられて燃料消費量も低く抑えられる。そして、エンジンによって発電がなされている間は蓄冷運転がなされるため、蓄冷材18が冷却されて十分な蓄冷がなされ、エンジンが停止すると蓄冷式クーラー1の電動圧縮機4と凝縮器5の電動ファン7への電力の供給を遮断して蓄冷運転を停止するようにしたため、車載バッテリ50の蓄電量が0となるバッテリ上り等の不具合の発生が防がれる。
【0046】
更に、本実施の形態では、蓄冷運転時に蓄冷式クーラー1の凝縮器5においては外気よりも温度の低いキャビン31内の空気によってガス冷媒が効率良く冷却されて凝縮するため、電動圧縮機4によるガス冷媒の圧縮圧力(凝縮圧力)が低く抑えられる。このため、電動圧縮機4の消費電力が低く抑えられ、車載バッテリ50への負荷が軽減される。
【0047】
又、気温が高い夏場等においてドライバが仮眠のためにトラック30をパーキングエリアに停車してエンジンを停止し、放冷運転を選択すると、車載バッテリ50から供給される電力によって蓄冷ユニット3の電動ファン9が駆動され、蓄冷材18によって冷却された冷風がキャビン31内を冷房するため、エアコン40が稼働していない状態でもドライバは快適な状態で仮眠することができる。この場合、トラック30が走行している間の蓄冷運転によって蓄冷材18が十分冷却されているため、エアコン30を停止した後の冷房時間を十分確保することができる。そして、この放冷運転時にはエンジンが停止しているため、燃料が消費されることがなく、有害な排気ガスの排出や騒音が発生することがない。
【0048】
尚、以上の実施の形態では、仮眠用ベッド33内には蓄冷式クーラー1の蓄冷ユニット3を収納し、これとは別体に構成されたコンデンシングユニット2と該蓄冷ユニット3とを冷媒配管10,12によって接続する構成を採用したが、コンデンシングユニット2と蓄冷ユニット3とを一体化して仮眠用ベッド33内に組み込む構成を採用しても良い。このような構成を採用すれば、蓄冷式クーラー1を後付けによって設置する際にコンデンシングユニット2と蓄冷ユニット3とを冷媒配管10,12によって接続する作業が不要となり、設置作業が更に簡略化して設置時間が更に短縮される。
【符号の説明】
【0049】
1 車両用蓄冷式クーラー
2 コンデンシングユニット
3 蓄冷ユニット
4 電動圧縮機
5 凝縮器
6 冷媒配管
7 電動ファン
8 蒸発器
9 電動ファン
10 冷媒配管
11 キャピラリチューブ
12 冷媒配管
13 吸気口
14 フィルタ
15 矩形ダクト
16 排気口
17 ルーバー
18 蓄冷材
19 吸熱板
20 冷媒配管(蒸発管)
21,22 通風路
23 支柱
24 配管接続部
25 Uベント管
30 トラック(車両)
31 トラックのキャビン
32 運転シート
33 仮眠用ベッド
33A 仮眠用ベッドの蓋材
33B 仮眠用ベッドの基台
33a 仮眠用ベッドの隔壁
33b 仮眠用ベッドの凹部
33c 凹部の嵌合溝
33d 仮眠用ベッドのフィルタ差込口
33e,33f 仮眠用ベッドの凸部
35 キャビンの床材
40 エアコン
41 エアコンの圧縮機
42 エアコンの凝縮器
43 エアコンの蒸発器
44〜46 エアコンの冷媒配管
50 車載バッテリ
60 発電機
S1 収納空間
S2 吸込空間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン駆動式のエアコンを搭載した車両に前記エアコンとは独立して設けられる電動式の蓄冷式クーラーであって、
電動圧縮機と電動ファン付き凝縮器を備えたコンデンシングユニットと、蒸発器と蓄冷材及び電動ファンを備えた蓄冷ユニットとを冷媒配管で接続して構成されることを特徴とする車両用蓄冷式クーラー。
【請求項2】
車両走行時に車載電源系統から供給される電力によって前記コンデンシングユニットの電動圧縮機と凝縮器の電動ファンを駆動することによって蓄冷運転を行い、エンジンが停止すると電動圧縮機と凝縮器の電動ファンへの電力の供給を遮断して蓄冷運転を停止することを特徴とする請求項1記載の車両用蓄冷式クーラー。
【請求項3】
エンジン停止時に放冷運転が選択されると、車載バッテリから供給される電力によって前記蓄冷ユニットの電動ファンを駆動することを特徴とする請求項1又は2記載の車両用蓄冷式クーラー。
【請求項4】
前記蓄冷ユニットを仮眠用ベッド内に組み込み、該蓄冷ユニットを通過する通風路を前記仮眠用ベッド内に形成し、前記電動ファンによって室内空気を吸引して前記通風路を流し、前記蓄冷ユニットによって冷却された冷気を室内に供給することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の車両用蓄冷式クーラー。
【請求項5】
前記コンデンシングユニットと前記蓄冷ユニットとを一体化して仮眠用ベッド内に組み込んだことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の車両用蓄冷式クーラー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−148322(P2011−148322A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8745(P2010−8745)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(000219233)東プレ株式会社 (91)
【Fターム(参考)】