説明

車両用計器における液晶パネルの照明構造

【課題】車両用計器に搭載される液晶表示パネルに対して、専用の光源を追加せずとも、輝度ムラのない安定した照明を実現することができ、搭載する光源の増加に起因した車両用計器における構造の複雑化や高額化を防止することができる車両用計器における液晶パネルの照明構造を提供すること。
【解決手段】指針照明用光源50から照明光が導光される指針駆動軸42の先端に指針本体22の軸連結部22aが固定され、軸連結部22aの前方に液晶表示パネル30が配置される車両用計器1において、軸連結部22aの前端に装備されて指針駆動軸42から受けた照明光の一部を液晶表示パネル30側に出射する照明光分割出力部60と、照明光分割出力部60が出射する照明光を液晶表示パネル30の背面の全域に配光する輝度調整部70と、を備えて、指針照明用光源50の照明光の一部で液晶表示パネル30の輝度を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用計器における液晶パネルの照明構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図6及び図7は、下記特許文献1に記載された車両用計器における液晶パネルの照明構造を示している。
【0003】
特許文献1に記載の車両用計器101は、速度計、回転計、燃料計などの各種の計測機能を備えたコンビネーションメータとして車両に搭載される計器である。この車両用計器101は、図示のように、文字盤110と、指針部材120と、液晶表示パネル(LCD)130と、指針駆動部(内機)140と、複数の指針照明用光源150と、LCD用光源160と、を備えている。
【0004】
文字盤110は、図7に示すように指針駆動軸挿通孔111を有し、指針駆動軸挿通孔111を中心とする略円弧状に計測量(速度)に対応する目盛り及び文字113(図6参照)を配列している。
【0005】
指針駆動部140は、軸状に形成されて指針駆動軸挿通孔111を挿通した指針駆動軸142を備えている。指針部材120は、指針駆動軸121の先端に固定される指針本体122を備えている。指針駆動軸142及び指針本体122は、何れも、導光性材料により形成されている。指針本体122は、指針駆動軸142の先端に固定される軸連結部122a(図7参照)と、該軸連結部122aから文字盤110の半径方向に延出して目盛りを指し示す指針部122b(図6参照)と、を備えている。この指針本体122は、指針駆動軸142に導入された照明光により照明される。
【0006】
液晶表示パネル130は、軸連結部122aの前方を覆うように、軸連結部122aの前端から前方に所定の距離を隔てて配置されている。この液晶表示パネル130は、速度以外の計測値(走行距離などの車両情報)の表示に利用される。
【0007】
指針駆動部140は、図7に示すように、文字盤110の背部に配置されている。この指針駆動部140は、指針本体122が計測値に対応する目盛りを指し示すように、計測値に応じて指針駆動軸142を回転駆動する。
【0008】
複数の指針照明用光源150は、指針駆動軸142や文字盤110の背部の複数箇所に配置されている。複数の指針照明用光源150の内の一部は、指針駆動軸142に照明光を導入させて、指針本体122を照明する。なお、複数の指針照明用光源150の一部は、文字盤110を照明する光源としても利用される。
【0009】
LCD用光源160は、図7に示すように、液晶表示パネル130の一方の端縁(図7では、下端縁)側で、液晶表示パネル130の背面側に寄った位置に配置されていて、液晶表示パネル130の背面に沿う方向(図7の矢印Y1方向)に、照明光を出射する。
【0010】
図7に示すように、LCD用光源160が照明光を出射する方向には、LCD用光源160から出射された光を液晶表示パネル130の背面に配光するテーパ板状の導光部材162が配置されている。
【0011】
即ち、特許文献1に開示された車両用計器101では、液晶表示パネル130を照明する照明構造は、専用のLCD用光源160から出射される照明光を、液晶表示パネル130の背面側に配置される導光部材162により液晶表示パネル130に照射させる構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2011−59136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところが、特許文献1に開示された液晶表示パネル130の照明構造では、液晶表示パネル130の付近に専用のLCD用光源160を装備するため、LCD用光源160を位置決めするための機構や、配線用のスペース等を確保しなければならない。その結果、搭載する光源の増加が原因となって、車両用計器における構造の複雑化や高額化と言った問題が発生した。
【0014】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消することに係り、車両用計器に搭載される液晶表示パネルに対して、専用の光源を追加せずとも、輝度ムラのない安定した照明を実現することができ、搭載する光源の増加に起因した車両用計器における構造の複雑化や高額化を防止することができる車両用計器における液晶パネルの照明構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の前述した目的は、下記の構成により達成される。
(1)指針駆動軸挿通孔を有し、前記指針駆動軸挿通孔を中心とする略円弧状に計測量に対応する目盛り及び文字を配列した文字盤と、
指針駆動軸の先端に固定される軸連結部と該軸連結部から前記文字盤の半径方向に延出して前記目盛りを指し示す指針部とを備えて前記指針駆動軸に導入された照明光により照明される導光性材料製の指針本体と、を備えた指針部材と、
前記軸連結部の前方を覆うように、前記軸連結部の前端から前方に所定の距離を隔てて配置された液晶表示パネルと、
導光性材料により軸状に形成されて前記指針駆動軸挿通孔を挿通した前記指針駆動軸を備え、前記文字盤の背部に配置されて、前記指針本体が計測値に対応する目盛りを指し示すように計測値に応じて前記指針駆動軸を回転駆動する指針駆動部と、
前記指針駆動軸の背部に配置されて、前記指針駆動軸に照明光を導入させて前記指針本体を照明する指針照明用光源と、
を備える車両用計器において、
前記軸連結部の前端から前記液晶表示パネル側に突出して設けられて前記指針駆動軸から受けた照明光の一部を前記液晶表示パネル側に出射する照明光分割出力部と、
前記照明光分割出力部と前記液晶表示パネルとの間に装備されて、前記照明光分割出力部が出射する照明光を前記液晶表示パネルの背面の全域に配光する輝度調整部と、
を備えて、前記指針照明用光源が出射した照明光の一部で前記液晶表示パネルの輝度を調整することを特徴とする車両用計器における液晶パネルの照明構造。
【0016】
(2)前記指針駆動軸の周囲には、前記指針駆動軸の周囲を覆う筒壁が設けられ、前記筒壁の内周面は、指針駆動軸の外周面から外に漏れる光を指針駆動軸内に反射する反射性能に優れた面としたことを特徴とする上記(1)に記載の車両用計器における液晶パネルの照明構造。
【0017】
(3)前記輝度調整部と対向する前記照明光分割出力部の前端面は、凹レンズ状に形成されていることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の車両用計器における液晶パネルの照明構造。
【0018】
(4)前記輝度調整部は、前記照明光分割出力部の前端から前記液晶表示パネル側に適宜距離だけ離れた位置に前記照明光分割出力部の前端面に対向して配置された第1の輝度調整板と、前記液晶表示パネルに対して凹の湾曲面状に前記軸連結部の前端の周囲に張り出して形成された第2の輝度調整板と、を備え、
前記第1の輝度調整板において前記照明光分割出力部と対向する第1の面は、前記照明光分割出力部から入射する光を前記第2の輝度調整板に向けて拡散反射する第1の反射面に形成され、
前記第1の輝度調整板において前記液晶表示パネルと対向する第2の面は、前記液晶表示パネルの表面からの反射で入射した光を再度液晶表示パネルに向かって反射する第3の反射面に形成され、
前記第2の輝度調整板において前記液晶表示パネルと対向する凹の湾曲面は、前記第1の反射面から入射する光を前記液晶表示パネル上に拡散反射する第2の反射面に形成され、
前記第1の輝度調整板の外周縁と前記第2の輝度調整板の内周縁との間において、前記照明光分割出力部の前端が前記液晶表示パネル側に露出する開口部は、前記照明光分割出力部の前端から出射される光線を直接前記液晶表示パネルに照射させる直接照射用開口として機能することを特徴とする上記(1)〜(3)に何れか1つに記載の車両用計器における液晶パネルの照明構造。
【0019】
(5)前記第1の輝度調整板は、前記第1の反射面と前記第3の反射面とを有して前記照明光分割出力部に対向配置される調整板本体と、該調整板本体の外周に垂設されて前記調整板本体を前記照明光分割出力部の前端から前記液晶表示パネル側に適宜距離だけ離れた位置に位置決めする複数の脚部とを備え、隣接する脚部間の隙間が前記直接照射用開口となることを特徴とする上記(4)に記載の車両用計器における液晶パネルの照明構造。
【0020】
(6)前記調整板本体又は前記脚部の少なくとも一方には、光を透過させる光透過孔が形成されていることを特徴とする上記(5)に記載の車両用計器における液晶パネルの照明構造。
【0021】
(7)前記第1の輝度調整板における前記調整板本体には、光の反射方向を周囲とは変化させることで液晶表示パネルの輝度を調整する凹凸形状を形成したことを特徴とする上記(5)又は(6)に記載の車両用計器における液晶パネルの照明構造。
【0022】
(8)前記調整板本体における第3の反射面には、光の反射方向に変化を付与する手段として、皺又はうねりが付与されていることを特徴とする上記(5)〜(7)の何れか1つに記載の車両用計器における液晶パネルの照明構造。
【0023】
(9)前記調整板本体が半透明のシート状部材によって形成されていることを特徴する上記(5)〜(8)の何れか1つに記載の車両用計器における液晶パネルの照明構造。
【0024】
上記(1)の構成によれば、液晶表示パネルの照明構造は、指針本体の照明用として指針照明用光源が出射する照明光の一部が、指針本体の軸連結部の前端に突設された照明光分割出力部と、当該照明光分割出力部と液晶表示パネルとの間に装備される輝度調整部とによって、液晶表示パネルの背面の全域に配光されるものである。
【0025】
即ち、指針本体の照明用として装備されている指針照明用光源が、液晶表示パネルの照明用にも兼用される。また、照明光分割出力部と液晶表示パネルとの間に装備される輝度調整部によって配光の偏りを抑止することもできる。
【0026】
従って、車両用計器に搭載される液晶表示パネルに対して、専用の光源を追加せずとも、輝度ムラのない安定した照明を実現することができ、搭載する光源の増加に起因した車両用計器における構造の複雑化や高額化を防止することができる。
【0027】
上記(2)の構成によれば、指針駆動軸の周囲を覆う筒壁の内周面が、指針駆動軸の外周面から外に漏れる光を指針駆動軸内に反射する反射性能に優れた面に形成されている。そのため、指針照明用光源から指針駆動軸に導入された照明光が、指針駆動軸からの漏れにより減衰することを防止して、指針駆動軸から指針本体や照明光分割出力部に効率良く導光することが可能になる。従って、指針本体や液晶表示パネルに対する照明効率を向上させることができる。
【0028】
上記(3)の構成によれば、照明光分割出力部の前端面が凹レンズ状になっているため、照明光分割出力部から出射される光は拡散光となり、照明光を液晶表示パネル上の広範囲に拡散照射して液晶表示パネルにおける輝度のバラツキを無くすことが容易になる。
【0029】
上記(4)の構成によれば、照明光分割出力部の前端面から出射された照明光は、第1の反射面、第2の反射面を経由して液晶表示パネルに照射されるため、それぞれの反射面で反射光を拡散させることで、無理なく、液晶表示パネルの全域に照明光を照射することができる。
【0030】
更に、照明光分割出力部の前端面から出射された照明光の一部は、直接照射用開口から直接的に、液晶表示パネルに照射される。そして、直接照射用開口から出射される光は、第2の反射面とは異なる照射角度となるため、直接照射用開口からの配光によって液晶表示パネルの輝度を微調整することが可能になり、液晶表示パネルにおける輝度のバラツキを更に低減させることが可能になる。
【0031】
上記(5)の構成によれば、第1の輝度調整板において、調整板本体の外周に垂設される脚部相互の間隔や、脚部の長さや幅寸法等を適宜に選定することで、直接照射用開口の大きさを任意に調整することができる。従って、直接照射用開口を透過する光量の調整が容易にできる。
【0032】
上記(6)の構成によれば、調整板本体又は脚部に形成される光透過孔の径や数量を調整することで、液晶表示パネルに照射する光量を調整することができ、液晶表示パネルに対する配光の微調整等が容易になる。
【0033】
上記(7)の構成によれば、調整板本体に形成した凹凸形状により、液晶表示パネルの輝度の調整が可能なため、凹凸形状の配置や大きさを適宜に選定することで、液晶表示パネルに対する輝度調整をより高精度化することができる。
【0034】
上記(8)の構成によれば、第3の反射面に付与される皺又はうねりによって、第3の反射面における光の反射性能に変化を付与することができ、第3の反射面に付与される皺又はうねりの装備形態を調整することで、第3の反射面における反射性能を微調整することが可能になる。
【0035】
上記(9)の構成によれば、調整板本体が半透明のシート状部材により形成されているため、シート状部材における透明度や表面粗さ等を適宜に設定することで、第1の反射面や第3の反射面に所定の反射性能を確保することができる。また、シート状部材を変更することで、簡単に第1の反射面や第3の反射面の反射性能を変更することができ、調整板本体の仕様変更が容易になる。
【発明の効果】
【0036】
本発明による車両用計器における液晶パネルの照明構造は、指針本体の照明用として指針照明用光源が出射する照明光の一部が、指針本体の軸連結部の前端に突設された照明光分割出力部と、当該照明光分割出力部と液晶表示パネルとの間に装備される輝度調整部とによって、液晶表示パネルの背面の全域に配光されるものである。
【0037】
即ち、指針本体の照明用として装備されている指針照明用光源が、液晶表示パネルの照明用にも兼用される。また、照明光分割出力部と液晶表示パネルとの間に装備される輝度調整部によって配光の偏りを抑止することもできる。
【0038】
従って、車両用計器に搭載される液晶表示パネルに対して、専用の光源を追加せずとも、輝度ムラのない安定した照明を実現することができ、搭載する光源の増加に起因した車両用計器における構造の複雑化や高額化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る液晶パネルの照明構造を採用した車両用計器の第1実施形態の縦断面図である。
【図2】図1における要部の拡大図である。
【図3】図2に示した第1の輝度調整板の拡大斜視図である。
【図4】本発明に係る車両用計器における液晶パネルの照明構造における第1の輝度調整板の第2実施形態の拡大斜視図である。
【図5】本発明に係る車両用計器における液晶パネルの照明構造における第1の輝度調整板の第3実施形態の拡大斜視図である。
【図6】従来の車両用計器の正面図である。
【図7】図6のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明に係る車両用計器における液晶パネルの照明構造の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0041】
図1〜図3は本発明に係る車両用計器における液晶パネルの照明構造の説明図で、図1は本発明に係る液晶パネルの照明構造を採用した車両用計器の第1実施形態の縦断面図、図2は図1における要部の拡大図、図3は図2に示した第1の輝度調整板の拡大斜視図である。
【0042】
この第1実施形態の車両用計器1は、速度計、回転計、燃料計などの各種の計測機能を備えたコンビネーションメータとして車両に搭載される計器である。この車両用計器1は、図1に示すように、文字盤10と、指針部材20と、液晶表示パネル(LCD)30と、指針駆動部(内機)40と、指針照明用光源50と、照明光分割出力部60と、輝度調整部70と、を備えている。
【0043】
文字盤10は、図2に示すように指針駆動軸挿通孔11を有している。また、文字盤10は、指針駆動軸挿通孔11を中心とする略円弧状に計測量(速度)に対応する目盛り及び文字13(図1参照)が配列されている。
【0044】
文字盤10は、図1に示すように、計器ケース81の前面に取り付けられている。計器ケース81は、背面側を開放した枠構造で、背面の開放部は、裏カバー82により覆われる。また、計器ケース81の前面側には、前方に張り出す庇状の見返し83が装着されている。
【0045】
見返し83は、視認性を低下させる外光が文字盤10に当たらないように、文字盤10の周囲を覆っている。この見返し83の前面側の開放部は、図1に示すように、透明な表硝子85により覆われている。
【0046】
指針駆動部40は、軸状に形成されて指針駆動軸挿通孔11を挿通する指針駆動軸42を備えている。指針部材20は、図2に示すように、指針駆動軸21の先端に固定される指針本体22を備えている。指針駆動軸21及び指針本体22は、何れも、導光性(透光性)材料により形成されている。
【0047】
指針本体22は、指針駆動軸42の先端に固定される基端部である軸連結部22aと、該軸連結部22aから文字盤10の半径方向に延出して目盛りを指し示す指針部22bと、を備えている。この指針本体22は、指針駆動軸42に導入された照明光B1の一部が、軸連結部22aの傾斜面221により指針部22b内に導入されて、照明光B1により照明される。
【0048】
本実施形態の場合、図2に示すように、指針駆動軸42の周囲には、指針駆動軸42の周囲を覆う筒壁81aが設けられている。
【0049】
この筒壁81aは、計器ケース81に一体形成されている。この筒壁81aの内周面811は、好ましくは、白色塗装又は鏡面加工により、指針駆動軸42の外周面から外に漏れる光を指針駆動軸42内に反射する反射性能に優れた面に仕上げられている。
【0050】
液晶表示パネル30は、軸連結部22aの前方を覆うように、軸連結部22aの前端から前方に所定の距離を隔てて配置されている。液晶表示パネル30は、周縁部がパネル収容ケース31に収容保持されている。パネル収容ケース31には、液晶表示パネル30の外周部を縁取って外観を整えるベゼル32が装備されている。この液晶表示パネル30は、速度以外の計測値の表示に利用される。
【0051】
指針駆動部40は、図2に示すように、文字盤10の背部に配置されている。詳しくは、指針駆動部40は、図1に示すように、文字盤10や指針駆動軸42の背部において計器ケース81に固定された回路基板86に取り付けられている。この指針駆動部40は、軸状に形成されて指針駆動軸挿通孔11を挿通する指針駆動軸42と、指針駆動軸42に一体形成された歯車41と、この歯車41に噛合する不図示の歯車に計測値に対応する回転を付与する不図示の回転制御部と、を備えている。この指針駆動部40は、指針本体22が計測値に対応する目盛りを指し示すように、計測値に応じて指針駆動軸42を回転駆動する。
【0052】
指針照明用光源50は、指針駆動軸42の背部(背面)に対向するように、計器ケース81内の回路基板86上に配置されている。この指針照明用光源50は、指針駆動軸42に照明光を導入させて、図2に示すように指針駆動軸42から導光された照明光B1により指針本体22を照明する。
【0053】
なお、回路基板86の文字盤10と対向する位置には、図1及び図2に示すように、文字盤10の照明を行う文字盤照明用光源52が、装備されている。文字盤照明用光源52は、文字盤10の中心(指針駆動軸42が挿通する位置)を中心とする円周上の複数箇所に装備されて、文字盤10を照明する。
【0054】
照明光分割出力部60は、軸連結部22aの前端から液晶表示パネル30側に突出して設けられた導光軸である。照明光分割出力部60は、軸連結部22aに一体形成されている。この照明光分割出力部60は、指針駆動軸42から受けた照明光の一部を、液晶表示パネル30側に出射する。
【0055】
輝度調整部70と対向する照明光分割出力部60の前端面60aは、図2に示すように、液晶表示パネル30側に凹の凹レンズ状に形成されている。
【0056】
輝度調整部70は、照明光分割出力部60と液晶表示パネル30との間に装備されて、照明光分割出力部60が出射する照明光を、液晶表示パネル30の背面の全域に配光する。本実施形態の輝度調整部70は、図1に示すように、第1の輝度調整板71と、第2の輝度調整板72と、を備える。
【0057】
第1の輝度調整板71は、図2に示すように、照明光分割出力部60の前端から液晶表示パネル30側に適宜距離だけ離れた位置において、照明光分割出力部60の前端面60aに対向して配置されている。
【0058】
第1の輝度調整板71において照明光分割出力部60と対向する第1の面71aは、照明光分割出力部60から入射する光を第2の輝度調整板72に向けて拡散反射する第1の反射面H1に形成されている。
【0059】
また、第1の輝度調整板71において液晶表示パネル30と対向する第2の面71bは、図2に光路C3で示すように、液晶表示パネル30の表面からの反射で入射した光を再度液晶表示パネル30に向かって反射する第3の反射面H3に形成されている。
【0060】
第1の輝度調整板71について、更に詳しく説明する。
本実施形態における第1の輝度調整板71は、図3に示すように、調整板本体711と、複数の脚部712とを備える。
【0061】
調整板本体711は、前述の第1の反射面H1と第3の反射面H3とを有して、照明光分割出力部60に対向配置される。
【0062】
複数の脚部712は、調整板本体711の外周に垂設されている。この脚部712は、調整板本体711を、照明光分割出力部60の前端から液晶表示パネル30側に適宜距離だけ離れた位置に位置決めする。
【0063】
本実施形態の第1の輝度調整板71の場合、隣接する脚部712間の隙間713が、直接照射用開口K1として機能する。直接照射用開口K1は、図2及び図3に示すように、第1の輝度調整板71の外周縁71cと第2の輝度調整板72の内周縁72cとの間において、照明光分割出力部60の前端が液晶表示パネル30側に露出する開口部である。この直接照射用開口K1は、図2に光路C1で示すように、照明光分割出力部60の前端から出射される光線を、直接液晶表示パネル30に照射させる。
【0064】
また、本実施形態の第1の輝度調整板71の場合、調整板本体711には、図3に示すように、光を透過させる光透過孔711aが貫通形成されている。光透過孔711aは、調整板本体711に複数装備されている。本実施形態の場合、脚部712には、光透過孔711aを装備していないが、脚部712にも光透過孔711aを装備するようにしても良い。更に、光透過孔711aは、調整板本体711には装備せずに、脚部712のみに装備しても良い。
【0065】
即ち、本発明の車両用計器における液晶パネルの照明構造では、第1の輝度調整板71における調整板本体711又は脚部712の少なくとも一方に、光を透過させる光透過孔711aが貫通形成された構成とする。
【0066】
本実施形態の場合、第2の輝度調整板72は、図2に示すように、液晶表示パネル30に対して凹の湾曲面状に、軸連結部22aの前端の周囲に張り出して形成されている。第2の輝度調整板72は、図2に示すように、外周部をパネル収容ケース31に係合させることで、パネル収容ケース31に固定されている。
【0067】
第2の輝度調整板72において液晶表示パネル30と対向する凹の湾曲面721は、図2に光路C2で示すように、第1の反射面H1から入射する光を液晶表示パネル30上に拡散反射する第2の反射面H2に形成されている。
【0068】
以上に説明した車両用計器1は、図2に示すように、指針照明用光源50の出射した照明光の一部を照明光分割出力部60及び輝度調整部70を介して液晶表示パネル30に照射して、液晶表示パネル30の輝度を調整する照明構造を有している。言い換えると、本実施形態の車両用計器1では、指針照明用光源50の出射した照明光の一部で液晶表示パネル30の輝度を調整する照明構造を備えている。
【0069】
以上に説明した第1実施形態の車両用計器1における液晶表示パネルの照明構造は、指針本体22の照明用として指針照明用光源50が出射する照明光の一部が、指針本体22の軸連結部22aの前端に突設された照明光分割出力部60と、当該照明光分割出力部60と液晶表示パネル30との間に装備される輝度調整部70とによって、液晶表示パネル30の背面の全域に配光されるものである。
【0070】
即ち、指針本体22の照明用として装備されている指針照明用光源50が、液晶表示パネル30の照明用にも兼用される。また、照明光分割出力部60と液晶表示パネル30との間に装備される輝度調整部70によって配光の偏りを抑止することもできる。
【0071】
従って、車両用計器1に搭載される液晶表示パネル30に対して、専用の光源を追加せずとも、輝度ムラのない安定した照明を実現することができ、搭載する光源の増加に起因した車両用計器1における構造の複雑化や高額化を防止することができる。
【0072】
また、第1実施形態の車両用計器1における液晶パネルの照明構造の場合、図2に示したように、指針駆動軸21の周囲を覆う筒壁81aの内周面811が、指針駆動軸42の外周面から外に漏れる光を指針駆動軸42内に反射する反射性能に優れた面に形成されている。そのため、指針照明用光源50から指針駆動軸42に導入された照明光が、指針駆動軸42からの漏れにより減衰することを防止して、指針駆動軸42から指針本体22や照明光分割出力部60に効率良く導光することが可能になる。従って、指針本体22や液晶表示パネル30に対する照明効率を向上させることができる。
【0073】
また、第1実施形態の車両用計器1における液晶パネルの照明構造の場合、照明光分割出力部60の前端面60aが凹レンズ状になっているため、照明光分割出力部60から出射される光は拡散光となり、照明光を液晶表示パネル30上の広範囲に拡散照射して液晶表示パネル30における輝度のバラツキを無くすことが容易になる。
【0074】
また、第1実施形態の車両用計器1における液晶パネルの照明構造の場合、照明光分割出力部60の前端面60aから出射された照明光は、第1の反射面H1、第2の反射面H2を経由して液晶表示パネル30に照射されるため、それぞれの反射面で反射光を拡散させることで、無理なく、液晶表示パネル30の全域に照明光を照射することができる。
【0075】
更に、照明光分割出力部60の前端面60aから出射された照明光の一部は、直接照射用開口K1から直接的に、液晶表示パネル30に照射される。そして、直接照射用開口K1から出射される光は、第2の反射面H2とは異なる照射角度となるため、直接照射用開口K1からの配光によって液晶表示パネル30の輝度を微調整することが可能になり、液晶表示パネル30における輝度のバラツキを更に低減させることが可能になる。
【0076】
また、第1実施形態の車両用計器1における液晶パネルの照明構造の場合、第1の輝度調整板71において、調整板本体711の外周に垂設される脚部712相互の間隔や、脚部712の長さや幅寸法等を適宜に選定することで、直接照射用開口K1の大きさを任意に調整することができる。従って、直接照射用開口K1を透過する光量の調整が容易にできる。
【0077】
また、第1実施形態の車両用計器1における液晶パネルの照明構造の場合、調整板本体711又は脚部712に形成される光透過孔711aの径や数量を調整することで、液晶表示パネル30に照射する光量を調整することができ、液晶表示パネル30に対する配光の微調整等が容易になる。
【0078】
なお、本発明に係る車両用計器における液晶パネルの照明構造において、第1の輝度調整板71の具体的な構造は、上述した第1実施形態の構造に限らない。
【0079】
例えば、第1の輝度調整板71における調整板本体711の第3の反射面H3には、図3に示した光透過孔711aの代わりに、光の反射方向を周囲とは変化させることで液晶表示パネル30の輝度を調整する凹凸形状を形成するようにしても良い。
【0080】
このような構成とした場合には、調整板本体711の第3の反射面H3に形成した凹凸形状により、液晶表示パネル30の輝度の調整が可能なため、凹凸形状の配置や大きさを適宜に選定することで、液晶表示パネル30に対する輝度調整をより高精度化することができる。
【0081】
図4は、本発明に係る車両用計器における液晶パネルの照明構造における第1の輝度調整板の第2実施形態の拡大斜視図である。
【0082】
この第2実施形態の第1の輝度調整板71Aは、第1実施形態の第1の輝度調整板71の一部を改良したもので、同一の構成については、第1実施形態の第1の輝度調整板71と共通の符号を付すことで、説明を省略する。
【0083】
この第2実施形態の第1の輝度調整板71Aの場合、調整板本体711における第3の反射面H3には、光の反射方向に変化を付与する手段として、皺又はうねり711bが付与されている。
【0084】
図4に示した第1の輝度調整板71Aの構成では、第3の反射面H3に付与される皺又はうねり711bによって、第3の反射面H3における光の反射性能に変化を付与することができ、第3の反射面H3に付与される皺又はうねり711bの装備形態を調整することで、第3の反射面H3における反射性能を微調整することが可能になる。
【0085】
図5は、本発明に係る車両用計器における液晶パネルの照明構造における第1の輝度調整板の第3実施形態の拡大斜視図である。
【0086】
この第3実施形態の第1の輝度調整板71Bは、第1実施形態の第1の輝度調整板71の一部を改良したもので、同一の構成については、第1実施形態の第1の輝度調整板71と共通の符号を付すことで、説明を省略する。
【0087】
この第3実施形態の第1の輝度調整板71Bの場合、調整板本体711が半透明のシート状部材によって形成されている。
【0088】
図5に示した第1の輝度調整板71Bの構成では、調整板本体711が半透明のシート状部材により形成されているため、シート状部材における透明度や表面粗さ等を適宜に設定することで、第1の反射面H1や第3の反射面H3に所定の反射性能を確保することができる。また、シート状部材を変更することで、簡単に第1の反射面H1や第3の反射面H3の反射性能を変更することができ、調整板本体711の仕様変更が容易になる。
【0089】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0090】
1 車両用計器
10 文字盤
11 指針駆動軸挿通孔
22 指針本体
22a 軸連結部
22b 指針部
30 液晶表示パネル(LCD)
40 指針駆動部
42 指針駆動軸
50 指針照明用光源
60 照明光分割出力部
60a 前端面
70 輝度調整部
71 第1の輝度調整板
71a 第1の面
71b 第2の面
72 第2の輝度調整板
72c 内周縁
711 調整板本体
711a 光透過孔
711b 皺又はうねり
712 脚部
721 凹の湾曲面
81a 筒壁
811 内周面
H1 第1の反射面
H2 第2の反射面
H3 第3の反射面
K1 直接照射用開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指針駆動軸挿通孔を有し、前記指針駆動軸挿通孔を中心とする略円弧状に計測量に対応する目盛り及び文字を配列した文字盤と、
指針駆動軸の先端に固定される軸連結部と該軸連結部から前記文字盤の半径方向に延出して前記目盛りを指し示す指針部とを備えて前記指針駆動軸に導入された照明光により照明される導光性材料製の指針本体と、を備えた指針部材と、
前記軸連結部の前方を覆うように、前記軸連結部の前端から前方に所定の距離を隔てて配置された液晶表示パネルと、
導光性材料により軸状に形成されて前記指針駆動軸挿通孔を挿通した前記指針駆動軸を備え、前記文字盤の背部に配置されて、前記指針本体が計測値に対応する目盛りを指し示すように計測値に応じて前記指針駆動軸を回転駆動する指針駆動部と、
前記指針駆動軸の背部に配置されて、前記指針駆動軸に照明光を導入させて前記指針本体を照明する指針照明用光源と、
を備える車両用計器において、
前記軸連結部の前端から前記液晶表示パネル側に突出して設けられて前記指針駆動軸から受けた照明光の一部を前記液晶表示パネル側に出射する照明光分割出力部と、
前記照明光分割出力部と前記液晶表示パネルとの間に装備されて、前記照明光分割出力部が出射する照明光を前記液晶表示パネルの背面の全域に配光する輝度調整部と、
を備えて、前記指針照明用光源が出射した照明光の一部で前記液晶表示パネルの輝度を調整することを特徴とする車両用計器における液晶パネルの照明構造。
【請求項2】
前記輝度調整部は、前記照明光分割出力部の前端から前記液晶表示パネル側に適宜距離だけ離れた位置に前記照明光分割出力部の前端面に対向して配置された第1の輝度調整板と、前記液晶表示パネルに対して凹の湾曲面状に前記軸連結部の前端の周囲に張り出して形成された第2の輝度調整板と、を備え、
前記第1の輝度調整板において前記照明光分割出力部と対向する第1の面は、前記照明光分割出力部から入射する光を前記第2の輝度調整板に向けて拡散反射する第1の反射面に形成され、
前記第1の輝度調整板において前記液晶表示パネルと対向する第2の面は、前記液晶表示パネルの表面からの反射で入射した光を再度液晶表示パネルに向かって反射する第3の反射面に形成され、
前記第2の輝度調整板において前記液晶表示パネルと対向する凹の湾曲面は、前記第1の反射面から入射する光を前記液晶表示パネル上に拡散反射する第2の反射面に形成され、
前記第1の輝度調整板の外周縁と前記第2の輝度調整板の内周縁との間において、前記照明光分割出力部の前端が前記液晶表示パネル側に露出する開口部は、前記照明光分割出力部の前端から出射される光線を直接前記液晶表示パネルに照射させる直接照射用開口として機能することを特徴とする請求項1に記載の車両用計器における液晶パネルの照明構造。
【請求項3】
前記第1の輝度調整板は、前記第1の反射面と前記第3の反射面とを有して前記照明光分割出力部に対向配置される調整板本体と、該調整板本体の外周に垂設されて前記調整板本体を前記照明光分割出力部の前端から前記液晶表示パネル側に適宜距離だけ離れた位置に位置決めする複数の脚部とを備え、隣接する脚部間の隙間が前記直接照射用開口となることを特徴とする請求項2に記載の車両用計器における液晶パネルの照明構造。
【請求項4】
前記調整板本体又は前記脚部の少なくとも一方には、光を透過させる光透過孔が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の車両用計器における液晶パネルの照明構造。
【請求項5】
前記第1の輝度調整板における前記調整板本体には、光の反射方向を周囲とは変化させることで液晶表示パネルの輝度を調整する凹凸形状を形成したことを特徴とする請求項3又は4に記載の車両用計器における液晶パネルの照明構造。
【請求項6】
前記調整板本体が半透明のシート状部材によって形成されていることを特徴する請求項3〜5の何れか一項に記載の車両用計器における液晶パネルの照明構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−101049(P2013−101049A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244816(P2011−244816)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】