説明

車両用電源装置の電流検出装置

【課題】簡単な回路構成としながら、最大検出レンジが異なる充電電流と放電電流を高精度に検出する。
【解決手段】電流検出装置は、車両用の走行用のバッテリ10の充電電流と放電電流を検出する電流検出部20、30と、この電流検出部20、30の出力側に接続されて電流検出部20、30の出力をシフトするレベルシフト回路40、50と、このレベルシフト回路40、50の出力側に接続しているA/Dコンバータ60とを備える。電流検出装置は、レベルシフト回路40、50が、電流検出部20、30の出力信号をシフトして、検出できる最大放電電流と最大充電電流をアンバランスに調整している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電源装置の走行用のバッテリの放電電流と充電電流を検出する電流検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の電源装置は、走行用のバッテリの残容量を正確に演算することが大切である。残容量の検出に誤差が発生すると、走行時間が長くなるにしたがって誤差が累積される。累積誤差は、バッテリの実際の残容量と演算した残容量とを違う残容量とし、バッテリを過充電したり過放電させる原因となる。バッテリは、過充電と過放電で著しく電気的な性能が低下して寿命が短くなる。自動車用のバッテリは極めて高価であるために、できるかぎり長い期間使用できることが大切である。
また、バッテリを過充電したり過放電したりさせないよう残容量範囲を制限しており、累積誤差が大きくなるとバッテリの使用範囲が狭くなり、車両走行が制限される。
【0003】
バッテリの残容量は、バッテリに流れる電流を積算して演算される。充電効率と放電効率を考慮しながら、充電電流の積算値から放電電流の積算値を減算して残容量は演算される。正確に残容量を演算するためには、正確にバッテリ電流を検出する必要がある。ところで、バッテリ電流は、電流センサで検出したアナログ信号をA/Dコンバータでデジタル信号に変換し、デジタル信号を電流補正回路が演算して残容量を計算している。電流検出装置は、バッテリの放電電流と充電電流を電流センサで検出する。電流センサから出力されるアナログ信号は、A/Dコンバータでデジタル信号に変換されて、残容量を演算する演算回路に入力される。図1は電流センサの出力特性を示す。この特性の電流センサは、放電電流が増加するにしたがって出力電圧を高く、充電電流が大きくなるにしたがって出力電圧を低くする。図の電流センサは、200Aの充電電流と放電電流を検出して、電流に比例する電圧を出力する。すなわち、この電流センサは、400Aの電流変化を検出して、0V〜10Vの電圧信号として出力する。
【0004】
電流センサの出力信号はA/Dコンバータに入力され、A/Dコンバータから出力されるデジタル信号を演算回路で演算してバッテリの電流が検出される。電流センサは、検出電流の0Aを中心として、充電電流と放電電流を同じ最大電流として検出する。ただ、バッテリの現実の使用状態において、放電電流と充電電流の最大電流は同じでない。バッテリの充電電流と放電電流はバッテリECUでコントロールされるが、最大充電電流は最大放電電流よりも小さく制御される。それはバッテリを保護しながら、車両の走行状態を最適な状態とするためである。放電電流を可能な限り大きくとることにより、加速性能など、使用者に対して快適性能を提供することが可能であるが、充電電流については、あまり大きな電流量をバッテリに供給すると充電電圧の急激な上昇を招く恐れがある。もし、システムで規定している電圧を上回ってしまうと電池が過充電され、寿命の低減や最悪の場合には電池の漏液など、安全上の問題につながることもある。したがって、最大充電電流と最大放電電流を同じレンジとする電流検出回路は、高精度に電流を検出できない。それは、A/Dコンバータがデジタル信号に変換する1ビットの分解能が低くなるからである。たとえば、400Aの電流レンジを10ビットのデジタル信号に変換する装置は、1ビットの分解能が400/1024Aとなる。
【0005】
この欠点を解決する装置として、本発明者は、充電電流と放電電流を切り換えて高精度に検出する装置を開発した。(特許文献1参照)
【特許文献1】特開2002−62341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の装置の回路図を図2に示す。この装置は、バッテリ81の充電電流と放電電流を検出する電流センサ80を備える。電流センサ80の出力信号は、異なる増幅率を有する1対のオペアンプ91、92、およびオペアンプ93、94で構成される放電電流専用増幅器82および充電電流専用増幅器83に入力される。各増幅器の出力を切替スイッチ84、85を介して一定ビット数のAD変換器を内蔵するマイコン86に入力し、このマイコン86の演算処理で算出される平均電流値に基づき増幅率を変更する。
【0007】
図2の装置は、オペアンプの増幅率で放電電流と充電電流を最適なレンジに調整して高精度に検出できる。しかしながら、この装置は専用のオペアンプに切り換えて充電電流と放電電流を検出することから回路構成が複雑になると共に、オペアンプの増幅率が検出精度に影響を与えることから、増幅率の誤差が検出精度を低下させる原因となる。
【0008】
本発明は、さらにこの欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、簡単な回路構成としながら、最大検出レンジが異なる充電電流と放電電流を高精度に検出できる車両用電源装置の電流検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の車両用電源装置の電流検出装置は、前述の目的を達成するために以下の構成を備える。
電流検出装置は、車両用の走行用のバッテリ10の充電電流と放電電流を検出する電流検出部20、30と、この電流検出部20、30の出力側に接続されて電流検出部20、30の出力をシフトするレベルシフト回路40、50と、このレベルシフト回路40、50の出力側に接続しているA/Dコンバータ60とを備える。電流検出装置は、レベルシフト回路40、50が、電流検出部20、30の出力信号をシフトして、検出できる最大放電電流と最大充電電流をアンバランスに調整している。
【0010】
本発明の請求項2の電流検出装置は、請求項1の構成に加えて、レベルシフト回路40を差動アンプ41としている。この差動アンプ41からなるレベルシフト回路40は、一方の入力端子に電流検出部20、30の出力を入力し、他方の入力端子には直流の補正電圧を入力し、補正電圧でもって電流検出部20、30の出力信号をシフトしてA/Dコンバータ60に入力する。
【0011】
本発明の請求項3の電流検出装置は、請求項1の構成に加えて、レベルシフト回路50を加算回路51としている。このレベルシフト回路50は、加算回路51の入力側に直流バイアス電圧を入力し、この直流バイアス電圧でもって電流検出部20、30の出力信号をシフトしてA/Dコンバータ60に入力する。
【0012】
本発明の請求項4の電流検出装置は、請求項1の構成に加えて、電流検出部20、30が、充電電流が大きくなるにしたがって出力電圧を低下し、かつ放電電流が大きくなるに従って出力電圧を高くする出力特性を有する。
【0013】
本発明の請求項5の電流検出装置は、請求項1の構成に加えて、レベルシフト回路40、50の出力側に、レベルシフト回路40、50の出力電圧の振幅をA/Dコンバータ60に入力範囲に調整する振幅調整回路61を設けている。
【0014】
本発明の請求項6の電流検出装置は、請求項5の構成に加えて、レベルシフト回路を振幅調整回路に併用されるオペアンプとしている。この電流検出装置は、オペアンプの振幅率でレベルシフト回路の出力電圧の振幅をA/Dコンバータの入力範囲に調整する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車両用電源装置の電流検出装置は、極めて簡単な回路構成としながら、最大検出レンジが異なる充電電流と放電電流を高精度に検出できる特徴がある。それは、本発明の電流検出装置が、バッテリの放電電流と充電電流を検出する電流検出部の出力側にレベルシフト回路を接続して、このレベルシフト回路でもって電流検出部の出力信号をシフトしてA/Dコンバータに入力するからである。
【0016】
本発明の電流検出装置の動作原理を図3に示す。この図は、電流検出部の出力特性を直線Aで示す。この電流検出部は、200Aの放電電流から200Aの充電電流を検出し、充電電流が200Aで出力電圧を0V、放電電流200Aで出力電圧は10Vとなる。電流検出部の出力電圧は、放電電流が増加して次第に高くなり、充電電流が増加して次第に低下する。充電電流と放電電流が0Aの状態で、電流検出部の出力電圧は中間電圧の5Vとなる。従来の電流検出装置は、この直線Aの出力を振幅調整回路でもって、鎖線Dに変換してA/Dコンバータに入力する。A/Dコンバータは0V〜5Vの入力電圧をデジタル信号に変換して出力する。この電流検出装置は、400Aの電流範囲の電流をデジタル信号に変換して出力する。10ビットのA/Dコンバータは、入力電圧を1/1024の階段状のデジタル信号に変換して出力する。したがって、この電流検出装置の1ビットの分解能は、400/1024Aとなる。
【0017】
本発明の電流検出装置は、A/Dコンバータから出力される直線Aをレベルシフト回路でもって直線Bにレベルシフトして、放電電流と充電電流をアンバランスとする。直線Bは、直線Aを−1.25Vレベルシフトして得られる。レベルシフトされた直線Bは、0V点が充電電流の200Aから150Aに変化する。したがって、充電電流のフルスケールが200Aから150Aに変更される。放電電流のフルスケール200Aは変化しない。振幅調整回路は、直線Bの電圧範囲を直線CとしてA/Dコンバータの入力範囲の0〜5Vに変換する。直線Cは、150Aの充電電流から200Aの放電電流を0〜5Vに変換してA/Dコンバータに入力する。したがって、A/Dコンバータは、150Aの充電電流から200Aの放電電流までの350Aをデジタル信号に変換して出力する。したがって、A/Dコンバータから出力されるデジタル信号の1ビットの分解能は、従来の400/1024Aから、350/1024Aと小さくなって、より高精度に電流を検出できる。すなわち、本発明の電流検出装置は、従来のように充電電流と放電電流に増幅率が異なる専用のオペアンプを設けることなく、簡単なレベルシフト回路でもって電流検出部の出力信号をレベルシフトして、充電電流のフルスケールと放電電流のフルスケールを自由に最適範囲に調整して、A/Dコンバータの分解能を高くできる。とくに、レベルシフト回路は、差動アンプの一方の入力端子にレベルシフトする直流の電圧を入力し、あるいはアンプの入力側に直流バイアス電圧を入力する極めて簡単な回路構成で実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための車両用電源装置の電流検出装置を例示するものであって、本発明は電流検出装置を以下のものに特定しない。さらに、この明細書は、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0019】
図4ないし図7に示す車両用電源装置の電流検出装置は、車両に搭載される走行用のバッテリ10の充電電流と放電電流を検出する電流検出部20、30と、この電流検出部20、30の出力側に接続されて電流検出部20、30の出力をシフトするレベルシフト回路40、50と、このレベルシフト回路40、50の出力側に接続しているA/Dコンバータ60とを備える。
【0020】
車両用の電源装置は、走行用のバッテリ10にDC/ACインバータ11を介してモータ12と発電機13を接続している。モータ12はバッテリ10を放電し、発電機13はバッテリ10を充電する。バッテリ10の放電電流と充電電流はバッテリECU14で制御される。バッテリECU14は、車両の走行状態やバッテリ10の残容量でモータ12の放電電流、すなわちモータ出力をコントロールしてモータ12が車両を走行させる動力をコントロールする。また、バッテリECU14は、バッテリ10の残容量や車両の回生制動でバッテリ10の充電電流をコントロールする。
【0021】
バッテリECU14は、図4ないし図7のグラフに示すように、バッテリ10の放電電流を充電電流よりも大きく制御する。これらの図のグラフは、バッテリ10を放電する最大電流を200Aとし、バッテリ10を充電する最大電流を150Aとする。このように、バッテリ10の放電電流を充電電流よりも大きくする電源装置は、車両を走行させるモータ12の出力を大きくしながら、バッテリ10の劣化を防止できる。それは、大きな充電電流でバッテリ10が劣化するのを防止しながら、モータ12の出力を大きくできるからである。バッテリ10の劣化は、大電流放電に比較して大電流充電の影響が大きい。充電時の電流が大きい場合、システムに許容された上限電圧を超えてしまうおそれがある。もし、バッテリそのものの設計電圧を超えるような状態が頻繁に発生するとバッテリの劣化が進行する。このため、バッテリ10の劣化を防止しながらモータ出力を大きくするには、放電電流よりも充電電流を小さく制御する必要がある。図の車両用電源装置は、バッテリ10を放電する最大電流を200Aとして、充電する最大電流を150Aとするが、車両用電源装置は、必ずしも放電電流と充電電流の最大値を200Aと150Aとしない。車両用電源装置は、車両の重量が重く、バッテリの容量が大きい場合に放電電流や充電電流の最大値を大きくするからである。
【0022】
図4と図5に示す電流検出部20と、図6と図7に示す電流検出部30は、出力特性が異なる。図4と図5のグラフは、電流検出部20の出力特性を示す。図に示す出力特性の電流検出部20は、200Aの充電電流で出力電圧を0Vとし、200Aの放電電流で出力電圧を10Vとし、電流を0Aとする状態で出力電圧を5Vとする。この電流検出部20は、放電電流が大きくなると出力電圧をリニアに高くし、充電電流が大きくなると出力電圧をリニアに低くし、かつ放電電流と充電電流の変化率に対する出力電圧の変化率を同じにしている。図6と図7のグラフに示す出力特性の電流検出部30は、電流を0Aとする状態で出力電圧を0V、最大放電電流の200Aで出力電圧を5V、200Aの充電電流で出力電圧を−5Vとする。図4ないし図7の電流検出部20、30は、バッテリ10を放電する方向の電流が増加するにしたがって、出力電圧をリニアに高くする。
【0023】
レベルシフト回路40、50は、充電電流と放電電流を200Aとする範囲の出力電圧をA/Dコンバータ60に入力しない。すなわち、A/Dコンバータ60に入力する電流検出部20、30の出力電圧範囲を制限するために、電流検出部20、30の出力電圧をレベルシフトする。図4ないし図7に示すレベルシフト回路40、50は、放電電流の最大値を200Aとし、充電電流の最大値を150Aとする範囲の電圧信号を電流検出部20、30からA/Dコンバータ60に入力するように、電流検出部20、30の出力電圧をレベルシフトする。
【0024】
図4と図5の直線Aは、電流検出部20の出力特性を示す。この出力特性の電流検出部20の出力信号は、レベルシフト回路40、50に入力される。レベルシフト回路40、50は、直線Aの入力信号を直線Bにレベルシフトする。このレベルシフト回路40、50は、入力信号を−1.25Vレベルシフトして出力する。直線Aからレベルシフトされた直線Bは、電流検出部20が検出する、充電電流を150Aとする信号を0Vとする。レベルシフト回路40、50は、直線Aを直線Bにレベルシフトするが、電流の変化に対する出力電圧を変化させない。すなわち、直線Bと直線Aは平行にレベルシフトされる。したがって、放電電流の200Aにおけるレベルシフト回路40、50の出力電圧は10Vから8.75V(10V−1.25V)にレベルシフトされる。
【0025】
図6と図7の直線Eは、電流検出部30の出力特性を示す。この電流検出部30は、電流を0Aとする状態で出力電圧を0Vとする。この出力特性の電流検出部30の出力信号は、レベルシフト回路40、50で直線Fにレベルシフトされる。すなわち、レベルシフト回路40、50は、電流検出部20、30の入力信号を、+3.75Vレベルシフトして出力する。直線Eからレベルシフトされた直線Fは、電流検出部30が検出する、充電電流を150Aとする信号を0Vとする。レベルシフト回路40、50は、直線Eを直線Fにレベルシフトするが、電流の変化に対する出力電圧を変化させず、直線Eと直線Fは平行にレベルシフトされる。したがって、放電電流の200Aにおけるレベルシフト回路40、50の出力電圧は5Vが3.75Vレベルシフトされて、8.75V(5V+3.75V)となる。
【0026】
レベルシフト回路40、50は、電圧増幅率を1とする差動アンプ41や加算回路51で実現できる。レベルシフト回路40を実現する差動アンプ41を図4と図6に示し、加算回路51のレベルシフト回路50を図6と図7に示す。
【0027】
図4と図6の差動アンプ41は、+側の入力端子に電流検出部20、30の出力信号を入力し、−側の入力端子に補正電圧を入力して電流検出部20、30の出力信号をレベルシフトする。図4のレベルシフト回路40は、差動アンプ41の−側の入力端子に+1.25Vの補正電圧を入力して、電流検出部20の出力信号を−1.25Vレベルシフトする。図6のレベルシフト回路40は、差動アンプ41の−側の入力端子に−3.75Vの補正電圧を入力して、電流検出部30の出力信号を+3.75Vレベルシフトする。
【0028】
図5と図7の加算回路51であるレベルシフト回路50は、電圧増幅率を1とするアンプ52の入力側に、電流検出部20、30の出力信号と、直流バイアス電圧の両方を抵抗器を介して入力して、電流検出部20、30の信号と、直線バイアス電圧を加算して出力する。図5のレベルシフト回路50は、電流検出部20の信号に、−1.25Vの直線バイアス電圧を加算して、電流検出部20の出力信号を−1.25Vレベルシフトする。図7のレベルシフト回路50は、電流検出部30の信号に、+3.75Vの直線バイアス電圧を加算して、電流検出部30の出力信号を+3.75Vレベルシフトする。
【0029】
レベルシフト回路40、50でレベルシフトされた信号は、充電電流の150Aから放電電流の200Aの範囲の出力電圧範囲を0V〜8.75Vとする。ここで、A/Dコンバータの入力電圧範囲が、レベルシフト回路の出力電圧範囲に等しい回路にあっては、レベルシフト回路の出力信号を直接にA/Dコンバータに入力してデジタル信号に変換できる。ただし、A/Dコンバータの入力電圧範囲が、レベルシフト回路の電圧範囲に等しくない回路にあっては、レベルシフト回路の出力信号を、振幅調整回路でレベル範囲を調整して、A/Dコンバータに入力する。振幅調整回路は、レベルシフト回路の出力電圧範囲がA/Dコンバータの入力電圧範囲よりも大きい場合は減衰回路となる。反対に、レベルシフト回路の出力電圧範囲がA/Dコンバータの入力電圧範囲よりも小さい場合は増幅回路となる。増幅回路で実現される振幅調整回路は、たとえば、レベルシフト回路を実現する差動アンプやアンプの増幅率を調整して実現できる。
【0030】
図4ないし図7の電流検出装置は、レベルシフト回路40、50の出力電圧範囲を0〜8.75Vとし、A/Dコンバータ60の入力電圧範囲を0〜5Vとする。したがって、レベルシフト回路40、50の出力電圧範囲を調整する振幅調整回路61は、8.75Vの電圧を5Vに減衰させる減衰回路となる。この振幅調整回路61は、入力される電圧信号を5/8.75倍して出力する回路である。
【0031】
汎用A/Dコンバータの入力電圧範囲は、一般的には0〜5Vである。電流検出部の出力電圧範囲が10Vであると、電流検出部の出力電圧範囲がA/Dコンバータの入力電圧範囲よりも大きいので、振幅調整回路は減衰回路となる。減衰回路である振幅調整回路61は、抵抗分圧回路62で実現できる。入力信号を5/8.75倍して出力する振幅調整回路61を実現する抵抗分圧回路62の減衰回路は、図4ないし図7に示すように、5kΩと3.75kΩの抵抗器63、64を直列に接続して実現できる。この減衰回路は、アース側に5kΩの抵抗器63を接続し、レベルシフト回路40、50の出力を3.75kΩの抵抗器64に接続し、ふたつの抵抗器63、64の接続点をA/Dコンバータ60の入力側に接続して実現できる。
また、電流検出部の出力電圧を0〜5Vとすれば、振幅調整回路は不要となるため、さらに精度が向上することになる。
【0032】
A/Dコンバータ60は、振幅調整回路61から入力される0〜5Vの電圧をデジタル信号に変換して、バッテリ10の充電電流と放電電流をデジタル信号に変換して出力する。A/Dコンバータ60から出力されるデジタル信号は、演算回路70に入力される。演算回路70は、入力されるデジタル信号から、バッテリ10の放電電流と充電電流を演算する。演算回路70は、図4及び図5の直線Cと、図6及び図7の直線Gの関数を記憶しており、これらの関数から入力されるデジタル信号を電流値に演算する。演算回路70は、A/Dコンバータ60から0Vのデジタル信号が入力されると充電電流を150Aとし、5Vのデジタル信号が入力されると200Aの放電電流とし、さらに2.14Vのデジタル信号が入力されると0Aの電流と演算する。電源装置は、電流検出装置の演算回路70で演算されるバッテリ10の放電電流や充電電流から、バッテリ10の残容量を演算し、また、バッテリ10の電流を検出しながら、バッテリECU14で放電電流や充電電流を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】電流センサの出力特性の一例を示すグラフである。
【図2】従来の電流検出装置の回路図である。
【図3】本発明の電流検出装置の動作原理の一例を示す図である。
【図4】本発明の一実施例にかかる電流検出装置の概略構成図とその動作原理を示すグラフである。
【図5】本発明の他の実施例にかかる電流検出装置の概略構成図とその動作原理を示すグラフである。
【図6】本発明の他の実施例にかかる電流検出装置の概略構成図とその動作原理を示すグラフである。
【図7】本発明の他の実施例にかかる電流検出装置の概略構成図とその動作原理を示すグラフである。
【符号の説明】
【0034】
10…バッテリ
11…DC/ACインバータ
12…モータ
13…発電機
14…バッテリECU
20…電流検出部
30…電流検出部
40…レベルシフト回路
41…差動アンプ
50…レベルシフト回路
51…加算回路
52…アンプ
60…A/Dコンバータ
61…振幅調整回路
62…抵抗分圧回路
63…抵抗器
64…抵抗器
70…演算回路
80…電流センサ
81…バッテリ
82…放電電流専用増幅器
83…充電電流専用増幅器
84…切替スイッチ
85…切替スイッチ
86…マイコン
91…オペアンプ
92…オペアンプ
93…オペアンプ
94…オペアンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の走行用のバッテリの充電電流と放電電流を検出する電流検出部と、この電流検出部の出力側に接続されて電流検出部の出力をシフトするレベルシフト回路と、このレベルシフト回路の出力側に接続しているA/Dコンバータとを備え、
レベルシフト回路が、電流検出部の出力信号をシフトして、検出できる最大放電電流と最大充電電流をアンバランスに調整してなる車両用電源装置の電流検出装置。
【請求項2】
レベルシフト回路が差動アンプで、この差動アンプからなるレベルシフト回路は、一方の入力端子に電流検出部の出力が入力され、他方の入力端子には直流の補正電圧が入力され、補正電圧でもって電流検出部の出力信号をシフトしてA/Dコンバータに入力する請求項1に記載される車両用電源装置の電流検出装置。
【請求項3】
レベルシフト回路が加算回路で、加算回路の入力側に直流バイアス電圧が入力され、この直流バイアス電圧でもって電流検出部の出力信号をシフトしてA/Dコンバータに入力する請求項1に記載される車両用電源装置の電流検出装置。
【請求項4】
電流検出部が、充電電流が大きくなるにしたがって出力電圧が低下し、かつ放電電流が大きくなるにしたがって出力電圧を高くする出力特性を有する請求項1に記載される車両用電源装置の電流検出装置。
【請求項5】
レベルシフト回路の出力側に、レベルシフト回路の出力電圧の振幅をA/Dコンバータに入力範囲に調整する振幅調整回路を設けている請求項1に記載される車両用電源装置の電流検出装置。
【請求項6】
レベルシフト回路が振幅調整回路に併用されるオペアンプで、このオペアンプの振幅率でレベルシフト回路の出力電圧の振幅をA/Dコンバータの入力範囲に調整する請求項5に記載される車両用電源装置の電流検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−232645(P2008−232645A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−68593(P2007−68593)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】