説明

車両用LED発光エンブレム

【課題】
少ない光源でも十分な光量で均一な発光を実現できる車両用LED発光エンブレムを提供する。
【解決手段】
前面に配置されると共に少なくとも一部が前後方向にくり貫かれたくり抜き部111〜114を有し且つ当該くり抜き部111〜114以外の部分の後面に凹部110aを有するエンブレムカバー110と、該凹部110aに配置され後方に向かって光を放つLED光源150と、当該LED光源150の後方に配置されると共に、少なくとも前記くり抜き部111〜114全体をカバーする形状に透明な樹脂で形成された平板状の導光板140であって、前面側から受けた前記LED光源の光を水平方向に拡散する光拡散部を備えた導光板140と、を備え、前記くり抜き部111〜114を介して前記LED光源150の光が前面側に放出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導光板を用いた照明装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には当該車両メーカーのロゴマークや車両のグレード等を示すエンブレムが装着されている。
【0003】
近年、意匠性の向上を図る等のため、図11に記載の構造を備えたエンブレム100が多数存在する。このエンブレム100は、表面にクロームメッキ等の表面処理が施され、車両メーカー等のロゴマークの形状に形作られたエンブレムカバー110と、当該エンブレムカバー110を車両側に固定するためのエンブレムベース130と、これらエンブレムカバー110及びエンブレムベース130に挟持され、表面が所望の色や模様121で彩られたデザインシート120とを有してなる。
【0004】
また、エンブレムカバー110にはメーカーのロゴマーク等の形状に対応して裏面側に貫通するくり抜き部111が形成されているので、これらを組み付けるとデザインシート120の表面の色や模様121を当該くり抜き部111を介して視覚的に捉えることができるようになっている。
【0005】
一方、こういったエンブレムを加工して、エンブレム内部に光源を配置し、エンブレムを発光させる技術も存在する。例えば、図12に示しているように、自動車等の車両ボデーXに予め備わっているエンブレム10を一旦取り外し、その取り外したエンブレム10と車両ボデーXとの間に、LED光源30が適宜組込まれたアクリルプレート20を挟むようにして再度車両ボデーX側に取り付けて発光させる。なお、アクリルプレート20に組込まれたLED光源30は、適当な間隔を空けて組込まれ、更に上向き(エンブレム側)に指向性が向くように取り付けられている。即ち、アクリルプレート20を一種の導光板として利用してエンブレム全体を発光させんとするものである。
【0006】
なお、発明者は既にこういった発光エンブレムについて特許出願済みである(特許文献1)。この特許文献1の発光エンブレムは、ケーシングの内周面にLED光源を水平方向に指向性が向くように配置した上で、拡散板を介在させることによって、ムラのない均一な発光を実現するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特願2010−096718号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図12に示した構造の発光エンブレムの場合、不可避的に発光に「ムラ」が生じるという問題がある。具体的には、光源として指向性の強いLEDを使用していることから、アクリルプレート20を導光板として利用したとてもその指向性は弱まらず、例えば、図13に示しているように、アクリルプレート20に組込まれたLED光源30の周辺部40の発光が強く、それ以外の部分の発光が弱くなってしまう。即ち、発光が均一でなく、「発光ムラ」が生じるのである。
【0009】
一方、上記特許文献1のLED発光エンブレムの場合、均一でムラのない発光を実現することができるものの、そのためには相当数のLED光源が必要となり、コストの問題、消費電力の問題等が少なからず残っていた。
【0010】
そこで本発明は、より少ない光源であっても均一でムラのない発光を実現できる車両用LED発光エンブレムを提供する事をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するべく、本願発明は、前面に配置されると共に少なくとも一部が前後方向にくり貫かれたくり抜き部を有し且つ当該くり抜き部以外の部分の後面に凹部を有するエンブレムカバーと、該凹部に配置され後方に向かって光を放つLED光源と、当該LED光源の後方に配置されると共に、少なくとも前記くり抜き部全体をカバーする形状に透明な樹脂で形成された平板状の導光板であって、前面側から受けた前記LED光源の光を水平方向に拡散する光拡散部を備えた導光板と、を備え、前記くり抜き部を介して前記LED光源の光が前面側に放出されることを特徴とする。
【0012】
このような構成を採用したことによって、くり抜き部を介してムラの無い発光を実現することが可能となった。従来のように、LED光源を前面側(正面側)に向かって配置するのではなく、逆の発想で後方(裏面側)に向かってLED光源を配置し、導光板に設けた光拡散部でこの受けた光を水平方向に拡散させる。LED光源はエンブレムカバーの後面(裏面)に設けられた凹部に数個しか配置されないが、導光板は少なくともくり抜き部全体をカバーする形状に形成されているので、導光板全体に拡散した光はくり抜き部を介してムラなく均一に前面側に放出される。
【0013】
また、前記導光板の前面には、前記くり抜き部に嵌合する凸部が形成されていることを特徴とする。これにより、くり抜き部から放たれる光が立体的となり、真正面だけでは無く斜め方向や横方向から当該エンブレムを見た場合でも、発光状態を容易に把握できる。
【0014】
また、前記凸部は前記導光板から鉛直に前面側に立ち上がるように成形されていることを特徴とする。これにより当該凸部の前面(正面)よりも端面からの発光がより強調されるので、発光時に独特の意匠性を呈する事が可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明を適用することで、少量の光源であってもムラなく均一に発光する車両用発光エンブレムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る車両用LED発光エンブレムの正面側分解斜視図である。
【図2】本発明に係る車両用LED発光エンブレムの背面側分解斜視図である。
【図3】導光板の正面図である。
【図4】図3における矢示A−A線に沿う断面図である。
【図5】組み付け後の車両用LED発光エンブレムの正面図である。
【図6】図5における矢示B−B線に沿う断面図である。
【図7】(a)が柱状体周辺の拡大断面図、(b)が柱状体の上面図(平面図)である。
【図8】(a)が柱状体と車両用LED光源の位置関係を示した拡大断面図、(b)が柱状体(第2実施例)周辺の拡大断面図である。
【図9】(a)が柱状体(第3実施例)周辺の拡大断面図、(b)が柱状体(第3実施例)の上面図(平面図)である。
【図10】(a)が柱状体(第4実施例)周辺の拡大断面図、(b)が柱状体(第4実施例)の上面図(平面図)である。
【図11】公知の自動車エンブレムを正面側からみた分解斜視図である。
【図12】公知の車両用LED発光エンブレムの概略構成図である。
【図13】図12の車両用LED発光エンブレム発光時の状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態の一例である車両用発光エンブレム101について説明を加える。なお、図面理解容易の為、各部の大きさや寸法を誇張して表現している部分があり、実際の製品と必ずしも一致しない部分があることを付記しておく。また各図面は符号の向きに見るものとし、当該向きを基本に上下左右、手前、奥と表現する。
【0018】
〈車両用発光エンブレムの構成〉
車両用発光エンブレム(以下単に「発光エンブレム」という。)101は、エンブレムカバー(以下単に「カバー」という)110、導光板140、LED光源150、デザインプレート120及びエンブレムベース(以下単に「ベース」という)130を有して構成されている。なお、LED光源150には電力が供給される電源ラインが接続され、当該電源ラインがベース130を貫通して当該発光エンブレム101の外へと繋がっているが、図面上は省略している。
【0019】
カバー110は、本実施形態では車両メーカーのロゴマークにデザインされた正面視楕円形且つ立体的な形状をなし、表面がクロームメッキ処理されている。材質はABS樹脂などのプラスティックである。カバー110は厚みを構成する外周面117と、当該外周面117と繋がる正面115とを有し、ロゴマークの形状に対応するように複数のくり抜き部111、112、113、114を備えている。正面115から各くり抜き部111、112、113、114に至るまで斜状に形成されたテーパ面116を有する。また、カバー110の裏面には、凹部110aが形成されると共に、固定爪119や位置決め爪118が一体成形されている。
【0020】
デザインプレート120は、正面側に所望の色や模様121が描かれた略楕円形のプラスティック製のプレートである。組み付けると、カバー110のくり抜き部111、112、113、114から当該色や模様121を視認することができる。なお符号128はカバ−110の位置決め爪118を通す為の位置決め穴であり、符号129はカバー110の固定爪119を通す為の固定穴である。
【0021】
ベース130は、ABS樹脂で一体成形された略楕円形の黒色の部材であり、カバー110の位置決め爪118が通る位置決め穴138、カバー110の固定爪119が挿通係止される固定爪受け孔139を備えている。また符号137は、当該ベース130を車両に固定するためのネジ穴であり、当該ネジ穴137及びネジ(図示していない)を利用して車両側に固定される。
【0022】
LED光源150は、本実施形態では、所謂SMT型のLEDが使用される。そのうち特に指向性の強いものでなく、ある程度照射角度(照射範囲)に広がりのあるタイプを用いるのが望ましい。当該LED光源150はそれぞれ、後述する導光板140の柱状体145の上面(天面)に配置されると共に、柱状体145の上面が全て照射角θ(照射領域)内となるように位置決めされている(図8(a))。なおこのLED光源150は、カバー110の裏面(凹部110a)に直接貼り付けるように構成してもよいし、何らかの足場を介してカバー110(の凹部110a)に固定してもよい。
【0023】
導光板140は、本実施形態においては射出成形により一体成形された無色透明なアクリル材料よりなる。厚さ約0.8ミリメートルで構成された正面視楕円形状の本体140aと、当該本体140aの正面側に一体成形された5つの柱状体145を備える。本実施形態における当該柱状体145は、直径約4ミリメートル、高さ約3ミリメートルとされた円柱体である。また、本体140aにはこれら柱状体145の他に、カバー110のくり抜き部111、112、113、114の形状に対応した凸部141、142、143、144が一体成形されている。これら凸部141、142、143、144の高さはいずれも4ミリメートルとされ、柱状体145の高さよりも僅かに高く構成されている。なお、符号148はカバ−110の位置決め爪118を通す為の位置決め穴であり、符号149はカバー110の固定爪119を通す為の固定穴である。
【0024】
また、導光板140の裏面であって、丁度それぞれの柱状体145の真下位置(鉛直位置)には光拡散部146が形成されている。本実施形態においてこの光拡散部146は球面形状(半球形状)に構成される。
【0025】
導光板140は本体140aの厚みが約0.8ミリメートルとされている上に、各凸部141、142、143、144はそれぞれくり抜き部111、112、113、114の形状に対応していることから、組み付けると純正部品としてのカバー110とベース130との間にスッポリと収容される(図6参照)。即ち、導光板140を挟み込むように組み付けた場合であっても、純正部品としてのエンブレムとの比較において厚みが増すことはない。
【0026】
〈発光エンブレムの作用・機能〉
通電されると、LED光源150が発光する。LED光源150はそれぞれ柱状体145の上面に配置されているので、当該発光は柱状体145の中を伝搬して本体140aの裏面側へと向う。
【0027】
本体140aの裏面側であって、ちょうど各柱状体145の真下位置(鉛直位置)には、反射部としての凹部146が形成されているので、伝搬してきた光は当該凹部146に反射して水平方向等に拡散する。この時本実施形態の凹部146は半球面の形状とされているので、図7(b)に示しているように、光は水平方向の360度に渡って満遍なく拡散する。そして拡散した光が、各凸部141、142、143、144の上面や、各凸部の厚みとして把握される凸部端面(側面)141a、142a、143a、144a等から外部に放出される。
【0028】
この時、凸部端面141a、142a、143a、144aから放出された光は各凸部141、142、143、144の上面から放たれる光よりも強くなるので、且つ、カバー110のテーパ面116等に反射する為、ロゴマークの輪郭がクッキリと浮かび上がり、美感性に優れた発光を実現し、特有の意匠性が発揮される。
【0029】
更に、導光板140は透明なアクリル材料で構成されているので、LED光源150の光を効率よく伝搬できる。即ち、僅か5つのLED光源150の光であっても発光エンブレム全体を発光させるに足る十分量の発光を実現することができる。もちろんLED光源150の数は5つに限らず仕様に応じて適宜調整可能である。
【0030】
〈その他の構成例〉
上記では、柱状体145の上面(天面)が平らに構成されていたが、例えば図8(b)に示しているように、外縁145aから内側にテーパ状に窪み145bが形成されると共に更に中央に向って凸となるように球面145cが形成された形状としてもよい。これによりLED光源150からの光を「レンズ効果」によって効率よく収集でき、光量の損失を抑えることができる。
【0031】
また上記では、凹部が球面(半球面)の形状とされていたが、これに限られるものではない。例えば図9に示しているように、頂点246aが柱状体245の中心に位置するように構成された四角錐形状であってもよい。このようにすれば四方向により強く光を拡散することができる。もちろん四角錐のみならず他の多角錐形状であってもよいし、円錐形状などその他の形状を採用することも可能である。また円錐の斜面が凹側に湾曲して構成されていてもよい(図10参照)。
【0032】
また上記では、導光板140の正面側に柱状体145が配置されていたが、その全部若しくは一部が裏面側に配置されていてもよい。カバー110やベース130の構造に応じて所望の面に配置可能である。また柱状体の形状は「円柱」ではなく「角柱」でもよい。
【0033】
また上記では、純正部品としてのデザインシート120をそのまま利用していたが、場合よっては使用しないで構成してもよい。例えばその場合、導光板140の裏面に色や模様を付加する(レーザー印刷、ドット印刷、ブラスト処理等ことで代用することも可能である。
【0034】
また上記では、光拡散部146が射出成形により予め一体成形されていたが、事後的に加工して形成してもよい。例えば削ってもよいし、熱を加えて部分的に凹ませて形成してもよい。
【0035】
また、光拡散部146の代わりに、柱状体145の真下位置(鉛直位置)に光を一定量反射できる反射処理(反射シートの貼付、メッキ処理等)をすることで反射部を構成してもよい。更に凹部と反射処理を組み合わせて構成してもよい。
【0036】
101…発光エンブレム
110…エンブレムカバー
110a…凹部
120…デザインプレート
130…エンブレムベース
140…導光板
145…柱状体
146…光拡散部
150…LED光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に配置されると共に少なくとも一部が前後方向にくり貫かれたくり抜き部を有し且つ当該くり抜き部以外の部分の後面に凹部を有するエンブレムカバーと、
該凹部に配置され後方に向かって光を放つLED光源と、
当該LED光源の後方に配置されると共に、少なくとも前記くり抜き部全体をカバーする形状に透明な樹脂で形成された平板状の導光板であって、前面側から受けた前記LED光源の光を水平方向に拡散する光拡散部を備えた導光板と、を備え、
前記くり抜き部を介して前記LED光源の光が前面側に放出される
ことを特徴とする車両用LED発光エンブレム。
【請求項2】
請求項1において、
前記導光板の前面には、前記くり抜き部に嵌合する凸部が形成されている
ことを特徴とする車両用LED発光エンブレム。
【請求項3】
請求項2において、
前記凸部は前記導光板から鉛直に前面側に立ち上がるように成形されている
ことを特徴とする車両用LED発光エンブレム。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−38712(P2012−38712A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131737(P2011−131737)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【特許番号】特許第4790095号(P4790095)
【特許公報発行日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(507041353)株式会社ジュナック (3)
【Fターム(参考)】