説明

車載用の電気接続箱

【課題】ケース本体にカバー材をスライドさせて被せる電気接続箱において、ケース本体とカバー材のガタツキをなくして、異音の発生を防止する。
【解決手段】ケース本体の下面に長さ方向の後端側の一端から前方へとスライドさせて被せるカバー材を備え、ケース本体の両側壁の外面にレール部を突設すると共にレール部の前端位置に係止ピンを突設している一方、カバー材の両側壁の内面にレール部の上下面に沿って摺動するガイド部を突設すると共に、係止ピンが挿入係止する係止溝を備え、かつ、カバー材の底壁後端に連続して上方傾斜する傾斜壁と、該傾斜壁の上端より上向きに突出してケース本体の後側壁に外嵌する外嵌壁と、傾斜壁の内面から上向きに突出するリブを備え、該リブはケース本体の後側壁を乗り越えて後側壁の内面およびケース本体の下面に押し当てられ、該カバー材のリブと外嵌壁とでケース本体の後側壁を挟持すると共にカバー材とケース本体の隙間を無くしてガタ止めしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に搭載される電気接続箱に関し、詳しくは、自動車に配索される電線が接続されるケース本体に、電線を引き出す開口をあけてカバー材を被せている電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車に搭載される電気接続箱では、内部回路を収容するケース本体にカバーが被せられている。
例えば、本出願人は、特開2003−9349号公報(特許文献1)において、ケース本体にカバーをスライドさせて被せる電気接続箱1を提供している。該電気接続箱1は、図15に示すように、リレー、ヒューズおよびコネクタ等が装着されるジャンクションブロック2と、該ジャンクションブロック2を収容するケース本体3と、該ケース本体3にスライドさせて被せるカバー4からなる。ケース本体3にカバー4を被せる際には、ケース本体3の側壁外面に設けたガイド突起3aに、カバー4の側壁内面に設けた溝部4aを係合させ、カバー4をケース本体3にスライドさせて被せ、ケース本体3の係止爪3bにカバー4の係止枠4bを係止してロック結合している。
【0003】
しかしながら、特許文献1で提供している電気接続箱1では、カバー4をケース本体3に対してスムーズにスライドさせるために、カバー4の溝部4aとケース本体3のガイド突起3aとの間に所要のクリアランスを設ける必要がある。
よって、電気接続箱1は、前記クリアランスを設けた分、自動車の走行時の振動によりケース本体3とカバー4の間でガタツキが生じて異音が発生してしまうおそれがあり、この点において改善の余地がある。
【0004】
【特許文献1】特開2003−9349号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、ケース本体にカバー材をスライドさせて被せる電気接続箱において、ケース本体とカバー材のガタツキをなくして、異音の発生を防止することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、直方体形状のケース本体の上下いずれか一面に設けた端子挿入用キャビテイあるいは/およびコネクタ収容部に電線端末に接続された端子あるいは/およびコネクタを装着した後に、長さ方向の後端側の一端から前方へとスライドさせて被せるカバー材を備え、
前記カバー材は、前記ケース本体の長さ方向の前部側は閉鎖せず、電線引き出し用の開口をあけており、
前記ケース本体の長さ方向の両側壁の外面にレール部を突設すると共に、前記レール部の前端位置に係止ピンを突設している一方、前記カバー材の両側壁の内面に前記レール部の上下面に沿って摺動するガイド部を突設すると共に、前記係止ピンが挿入係止する係止溝を備え、
かつ、前記カバー材の後端壁は傾斜壁とし、該傾斜壁の先端に連続して前記ケース本体の後側壁に外嵌する外嵌壁と、前記傾斜壁の内面から突出するリブを備え、該リブは前記ケース本体の後側壁を乗り越えさせて前記後側壁の内面に押し当て、該リブと前記外嵌壁との間にケース本体の後側壁を挟むと共に該ケース本体とカバー材との間のガタ止めをしていることを特徴とする車載用の電気接続箱を提供している。
【0007】
前記本発明の電気接続箱において、前記ケース本体に対するカバー材の取付位置はケース本体から電線が引き出される面であれば、ケース本体の上面、下面のいずれでも良い。 ケース本体から電線は下方へ引き出される場合が多く、この場合は、前記ケース本体の下面側に前記カバー材を取り付け、該カバー部材の底壁の両側より上向きに前記両側壁を突設していると共に、該カバー部材の底壁の後端より突出する前記後端壁は上向き傾斜壁とすると共に前記リブは上向きに突設している。
【0008】
前記本発明の電気接続箱によれば、ケース本体にカバー材をスライドさせて被せる電気接続箱において、前端側でケース本体に設けた係止ピンをカバー材に設けた係止溝に挿入係止する一方、後端側ではケース本体の後側壁にカバー材のリブをと外嵌壁で挟持することにより、スライド方向の前後両端でケース本体とカバー材とを互いに固定している。
かつ、前記カバー材をケース本体にスライドさせて被せる際に、カバー材に設けたリブをケース本体の後側壁を乗り越えさせて、ケース本体の後側壁の内面に押し当てているため、ケース本体とカバー材との間でガタつきが発生する隙間を無くすことができる。
前記リブはカバー材の傾斜壁に設けているため、リブの先端がケース本体の後側壁と干渉すると、カバー材の傾斜壁がケース本体の後側壁と離反する方向に撓んで、リブがケース本体の後側壁を容易に乗り越えることができる。これにより、ケース本体へのカバー材のガタつきのない取り付けを無理なく行うことができる。
【0009】
前記リブの先端面は、少なくともカバー材のスライド方向の前方から後方にかけて湾曲する円弧面としていることが好ましい。
前記構成によれば、リブの先端面を円弧面としているため、ケース本体にカバー材をスライドさせて被せる際に、リブの先端とケース本体の後側壁が干渉すると、リブ先端の円弧面がケース本体の後側壁の先端に引っ掛かることなく沿って移動し、リブが後側壁をスムーズに乗り越えることができる。
【0010】
かつ、ケース本体の後側壁を乗り越えたリブの先端の円弧面は、該円弧面の頂点部分がケース本体の前記一面に押し当てられると共に、該円弧面の外周部が後側壁内面の先端縁の隅部に斜め方向から押し当てられる形状としていることが好ましい。
このように、リブの円弧面の外周部をケース本体の後側壁先端の内側の隅部に斜め方向から押し当てると、該リブによりカバー材がケース本体に対して前後方向および上下方向に移動不可となり、ケース本体とカバー材のガタツキをより確実に防止することができる。
【0011】
前記ケース本体の両側壁の外面には、前記レール部の前端に近接した前方位置に電線当て突起を設け、前記カバー材で閉鎖されない前記開口から引き出される電線が前記カバー材に引っ掛からない構成としていることが好ましい。
前記構成によれば、レール部に近接した前方位置、即ち、電線を引き出す前記開口とレール部との間の位置に電線当て突起を設けているため、開口から引き出される電線が電線当て突起によりレール部側へいくのを防止でき、電線がカバー材に引っ掛かるのを防止することができる。
【0012】
前記カバー材で閉鎖されない前記開口から引き出される電線群を集束するタイバンドの通し穴を、該カバー材に設けていることが好ましい。
該カバー材に設ける通し穴は、カバー材をケース本体の下面に取り付ける場合には、カバー材の底壁の前端近傍に設けている。
前記構成によれば、前記開口から引き出した電線群に巻き付けたタイバンドをカバー材の通し穴に通して固定することにより、電線群を集束できると共に、タイバンドがカバー材に固定されていることにより電線群の配線方向もタイバンドで規制でき、電気接続箱を車両に搭載する際に電線群が作業の邪魔になるのを防止して、作業性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
前述したように、本発明によれば、ケース本体の前端側でケース本体に設けた係止ピンをカバー材に設けた係止溝に挿入係止すると共に、後端側ではケース本体の後側壁をカバー材のリブと外嵌壁で挟持し、スライド方向の前後両側でケース本体とカバー材とを互いに係止固定し、かつ、前記リブでカバー材とケース本体との間の隙間を無くしているため、ケース本体とカバー材とのガタツキを防いで、自動車の走行時の振動により異音が発生するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図14に、本発明の実施形態を示す。
本実施形態の自動車用の電気接続箱10は、直方体形状のケース本体11の下面11a側に、その長さ方向の後端側の一端から前方(図1の矢印方向)へとカバー材12をスライドさせて被せるものである。
なお、図1、図2、図6、図8、図9及び図12は、電気接続箱10を自動車搭載時の配置状態に対して上下逆転させた状態で図示している。
【0015】
ケース本体11は、図1に示すように、長さ方向Xに長尺とする一方、長さ方向Xに直交する左右方向Yに短尺とした直方体形状としている。
図3(A)に示すように、ケース本体11の上面11bに複数のヒューズ収容部11cを設ける一方、下面11aには、図3(C)に示すように、上面11b側のヒューズ収容部11cと連通する複数の端子挿入用キャビテイ11dとバスバー収容部11eを設けている。
また、左右両側の両側壁11f、長さ方向Xの前端の前側壁11gおよび長さ方向Xの後端の後側壁11hは、ケース本体11の上下面11b、11aより上下両側に突出している。
【0016】
ケース本体11の両側壁11fの下部側外面に、長さ方向Xの後部側から前端と所要間隔をあけた位置まで延在するリブ状のレール部11iを突設すると共に、該レール部11iの外側面の前端位置に半球状の係止ピン11jを突設している。
また、ケース本体11の両側壁11fの外面には、係止ピン11jよりも前方側に所要間隔をあけて、L字状の電線当て突起11kを突設している。該電線当て突起11kは、上下方向に延在する垂直部11k−1と、該垂直部11k−1の上端より係止ピン11jを設けた後方へ延在する水平部11k−2とからなる。
【0017】
一方、ケース本体11の下面11a側にスライドさせて被せるカバー材12は、長さ方向Xの長さをケース本体11よりも短尺とし、ケース本体11にカバー材12を被せたときに、ケース本体11の長さ方向Xの後部側を閉鎖する一方、前部側は閉鎖せず、電線引き出し用の開口Sが形成される構成としている。
カバー材12の底壁12aは、図4に示すように、左右方向Yの一端から他端にかけて湾曲し、該底壁12aの両端より両側壁12bを上方に向けて突出させている。
【0018】
前記カバー材12の両側壁12bの内面には、図5に示すように、複数の上側突条12c−1と下側突条12c−2からなるガイド部12cを突設している。上側突条12c−1と下側突条12c−2とは、上下方向に間隔をあけており、この間隔の幅L1をケース本体11に設けたレール部11iの上下方向の幅L2よりも若干大きくしている。また、上側突条12c−1と下側突条12c−2とは長さ方向Xに位置ズレさせて設けており、上側突条12c−1と下側突条12c−2を長さ方向Xに交互に設けている。
【0019】
また、カバー材12の長さ方向Xの前端近傍には、底壁12aと両側壁12bの境界位置から上方に切り欠いて係止溝12dを設けている。該係止溝12dは、ケース本体11に設けた係止ピン11jが挿入係止されるものであり、係止溝12dの切欠先端を係止ピン11jの球面に沿うように円弧形状としている。
【0020】
カバー材12の長さ方向Xの寸法はケース本体11の長さ方向の寸法より短くし、カバー12をケース本体11に後端側からスライドさせて取り付けた状態で、ケース本体11の前部は開口とする設定としている。
一方、カバー材12の後端側は底壁12aの後端に連続して上方傾斜する傾斜壁12eを突設し、さらに、該傾斜壁12eの上端より外嵌壁12fを上向きに突設している。該外嵌壁12fの左右方向Yの両端は両側壁12bの後端と連続させている。
【0021】
前記傾斜壁12eの内面の後端側には、外嵌壁12fと所要の間隔をあけて上向きに突出するリブ12gを設けている。該リブ12gの先端は長さ方向Xの前方から後方にかけて湾曲する円弧面12g−1としている。
リブ12gの突出高さは、リブ12gの最先端がケース本体11の後側壁11hの下端より上方に突出し、図6(B)に示すように、リブ12gの先端の円弧面12g−1の外周部が後側壁11hの内側先端隅部に押し当てられる設定している。本実施形態では、リブ12gを左右方向Yの両側位置と略中央位置に3つ設けている。
【0022】
さらに、カバー材12の長さ方向Xの前端側には、電線群を集束するタイバンド30を通すための2つの通し穴12hを左右方向Yに間隔をあけて設けている。また、カバー材12の底壁12aの内面には、左右方向Yに延在する補強リブ12iを長さ方向Xに間隔をあけて2つ設けている。
【0023】
ケース本体11の下面11aに設けた端子挿入用キャビテイ11dに電線w端末の端子(図示せず)を挿入係止すると共に、バスバー収容部11eに基板部21aと該基板部21aより突設した複数の圧接タブ21bとからなるバスバー21を挿入係止した後に、ケース本体11にカバー材12を被せている。なお、電線端末の端子とバスバー21の圧接タブ21bにはヒューズ収容部11cに収容されるヒューズ(図示せず)の端子がそれぞれ接続される。
【0024】
ケース本体11にカバー材12を被せる際には、図1、図2及び図6に示すように、ケース本体11とカバー材12を上下逆転させている。図1に示すように、カバー材12をケース本体11の長さ方向Xの後端側からスライドさせて被せており、ケース本体11に設けたレール部11iをカバー材12のガイド部12cを構成する上側突条12c−1と下側突条12c−2の間の隙間に挿入し、レール部11iの上下面に上側突条12c−1と下側突条12c−2摺動させて、カバー材12を前方へスライドさせている。
【0025】
前記のように、カバー材12を前方へスライドさせていくと、ケース本体11とカバー材12の後端側において、図6に示すように、カバー材12のリブ12gの下端(車両搭載時は上端)の円弧面12g−1がケース本体11の後側壁11hの上端(車両搭載時は下端)に当接する。
この状態から、更に、カバー材12を前方へスライドさせて、リブ12gが後側壁11hを乗り越えて、図6(B)に示すように、リブ12gが後側壁11hの内面に当接し、カバー材12のリブ12gと外嵌壁12fとでケース本体11の後側壁11hを挟持して、後端側においてケース本体11にカバー材12を固定している。
詳細には、リブ12gの先端の円弧面12g−1を後側壁11hの内面の先端縁、即ち、後側壁11hの先端内側の隅部に斜め方向から当接させた状態となり、該リブ12gによりカバー材12がケース本体11に対して長さ方向Xおよび上下方向に移動不可となり、ケース本体11とカバー材12のガタツキを確実に防止している。
【0026】
また、長さ方向Xの前端側では、ケース本体11のレール部11iの先端に設けた係止ピン11jがカバー材12の係止溝12dに挿入係止されると共に、カバー材12の両側壁12bの先端隅部が電線当て突起11kの内面に当接されて、前端側においてもケース本体11にカバー材12が位置決め固定される。
なお、ケース本体11にカバー材12を被せる際には、ケース本体11に接続された電線wがレール部11i側に移動しそうになっても、図8に示すように、電線wがレール部11iの前方に設けた電線当て突起11kに当接することによりレール部11i側に移動しないようにして、電線wがスライドさせるカバー材12に引っ掛からない構成としている。
【0027】
ケース本体11にカバー材12を被せた状態で、長さ方向Xの前部側に形成された電線引き出し用の開口Sよりケース本体11に接続した電線wを引き出している。この引き出した電線wを、図9に示すように、カバー材12の前端側に設けた2つの通し穴12hに1つのタイバンド30を通すと共に、該タイバンド30により開口Sより引き出した電線群を集束している。
詳細には、タイバンド30は、貫通穴30a内に係止片(図示せず)を突出させた本体部30bより係止歯30cを設けたバンド部30dが延在し、該バンド部30dをカバー材12の通し穴12hに通すと共に電線群に巻き付けた後に本体部30bの貫通穴30aに通して係止歯30cに係止片を係止して締結している。
これにより、タイバンド30によって電線群を集束すると共に、電線群の配線方向もカバー材12に固定されたタイバンド30で規制している。
【0028】
前記構成によれば、ケース本体11にカバー材12をスライドさせて被せる電気接続箱10において、前端側でケース本体11に設けた係止ピン11jをカバー材12に設けた係止溝12dに挿入係止すると共に、後端側ではケース本体11の後側壁11hをカバー材12のリブ12gと外嵌壁12fで挟持することにより、スライド方向の前後両側でケース本体11とカバー材12とを互いに係止固定している。かつ、カバー材12の後端側では、リブ12gの先端をケース本体の後側壁11hに押し当てて隙間をなくしている。これにより、ケース本体11とカバー材12とのガタツキを防いでいるため、自動車の走行時の振動により異音が発生するのを防止することができる。
【0029】
また、カバー材12をケース本体11にスライドさせて被せる際に、カバー材12に設けたリブ12gがケース本体11の後側壁11hを乗り越えて、該後側壁11hの内面に押し当てる構成としているが、リブ12gをカバー材12の傾斜壁12eに設けているため、リブ12gの先端がケース本体11の後側壁11hと干渉すると、カバー材12の傾斜壁12がケース本体11の後側壁11hと離反する方向に撓んで、リブ12gがケース本体11の後側壁11hを容易に乗り越えることができる。また、リブ12gの先端とケース本体11の後側壁11hが干渉すると、リブ先端の円弧面がケース本体11の後側壁11hの先端に引っ掛かることなく沿って移動し、リブ12gが後側壁11hをスムーズに乗り越えることができる。これにより、ケース本体11へのカバー材12の取付作業を効率良く行うことができる。
さらに、電線群をタイバンド30により結束して方向を規制しているため、電線がカバー材12の先端と干渉せず、電線によりカバー材12がケース本体より外れる方向に負荷を受けることを確実に防止できる。
【0030】
前記したケース本体11にカバー材12を取り付ける本実施形態の電気接続箱には、下記の端子挿入用キャビテイ11dに挿入係止する電線端末端子を二重係止するリテーナ40の仮係止位置の検知機構、リテーナ40の誤作動防止機構を付設している。
【0031】
以下に、リテーナ40の仮係止位置検知機構について説明する。
ケース本体11の前側壁11gには、ケース本体11の端子挿入用キャビテイ11dに挿入係止した端子を二重係止するリテーナ40の挿入口11mを左右方向Yに間隔をあけて2つ設け、各挿入口11mよりも電線引き出し側に上下方向に延在する突起11nを突設している。
【0032】
前記挿入口11mよりケース本体11内に挿入するリテーナ40は、後述するように仮係止位置と本係止位置の2箇所で順に係止されるものであり、仮係止位置ではリテーナ40の押し込み端面40jがケース本体11の前側壁11gより突出しており、前記突起11nが仮係止位置のリテーナ40の押し込み端面40jよりも更に前方へ突出している。
よって、図8に示すように、ケース本体11に接続された電線wがケース本体11の前側壁11g側に引き出されても、該電線wが前側壁11gに突設した突起11nと干渉する。これにより、電線wが仮係止位置のリテーナ40と干渉するのを防止して、仮係止位置のリテーナ40を電線wにより本係止位置まで押し込んでしまうのを防止することができる。
【0033】
前記リテーナ40は、第1リテーナ40Aと第2リテーナ40Bからなる。
第1リテーナ40Aは、図10に示すように、基部40aより長尺の軸部40bと短尺の軸部40cを同一方向に突設し、長尺の軸部40bの両側面に端子に係止して抜けを防止する係止突起40dを軸部40bの長さ方向に間隔をあけて複数突設する一方、短尺の軸部40cの一側面に係止突起40eを軸部40cの長さ方向に間隔をあけて複数突設している。長尺な軸部40bの先端に検知部40fを軸部40bの長さ方向に突出させて設けると共に、上下方向の一端面には先端から所要間隔をあけた位置に係止溝40gを設けている。また、短尺な軸部40cの上下方向の一端面には基部40aと所要の間隔をあけた位置に2つの突起40h、40iを軸部40cの長さ方向に間隔をあけて突設している。なお、基部40aの軸部40b、40cを突設させていない側の端面を前記押し込み端面40jとしている。
【0034】
リテーナ40Bは、図11に示すように、基部40aよりリテーナ40の長尺の軸部40bと同一長さの軸部40bを突設し、軸部40bの両側面に端子に係止して抜けを防止する係止突起40dを軸部40bの長さ方向に間隔をあけて複数突設している。軸部40bの先端に検知部40fを軸部40bの長さ方向に突出させて設けると共に、上下方向の一端面には先端から所要間隔をあけた位置に係止溝40gを設けている。また、軸部40bの上下方向の一端面に基部40aと所要の間隔をあけた位置に2つの突起40h、40iを軸部40bの長さ方向に間隔をあけて突設している。なお、基部40aの軸部40bを突設させていない側の端面を前記押し込み端面40jとしている。
【0035】
一方、ケース本体11のリテーナ挿入口11mに連通するリテーナ収容部11oには、図12に示すように、奥端側に係止突起11pを突設すると共に、挿入口11mから所要間隔をあけた位置に係止溝11qを設けている。
また、ケース本体11の上面11bには、図13に示すように、リテーナ収容部11oの本係止位置に挿入係止されたリテーナ40の検知部40fと上下対向する位置に目視穴11rを設けている。該目視穴11rは、リテーナ40が仮係止位置にある場合には、リテーナ40の検知部40fが目視できない大きさ及び位置となるように設定している。
【0036】
ケース本体11の挿入口11mからリテーナ40をリテーナ収容部11oに挿入すると、図12(A)に示すように、リテーナ40の検知部40fの先端が係止突起11pに当接すると共に、リテーナ40の突起40hが係止溝11qに挿入され、係止溝11qの開口側内面に係止される。このようにしてリテーナ40がリテーナ収容部11o内に係止された位置を仮係止位置としている。
前記仮係止位置では、図12(A)および図13(A)に示すように、目視穴11rを通してリテーナ40の検知部40fを目視することができず、リテーナ40が本係止位置にないことを目視により確認することができる。
【0037】
さらに、リテーナ40をリテーナ収容部11o内に押し込むと、検知部40fが係止突起11pを乗り越えて、係止突起11pがリテーナ40の係止溝40gに挿入係止されると共に、リテーナ40の突起40iもリテーナ収容部11oの係止溝11qに挿入される。このとき、突起40hが係止溝11qの奥端側内面に当接すると共に、突起40iが係止溝11qの開口側内面に当接し、リテーナ40が挿入方向に移動不可に位置決めされる。このようにしてリテーナ40がリテーナ収容部11o内に係止された位置を本係止位置としている。
前記本係止位置では、図12(B)および図13(B)に示すように、目視穴11rを通してリテーナ40の検知部40fを目視することができ、リテーナ40が本係止位置にあることを目視により確認することができる。
【0038】
即ち、ケース本体11には、リテーナ40の挿入口11mよりも上面11b側に車体固定用のブラケット11sを設けているため、該ブラケット11sが邪魔になって挿入口11mを目視することによってリテーナ40の係止状態を確認するのは困難であるが、本実施形態では、上面11bに設けた目視穴40fを通してリテーナ40の本係止位置まで挿入されているか否かを容易に確認することができる。
【0039】
また、ケース本体11の端子挿入用キャビテイ11dに挿入係止された電線端末の端子は、キャビテイ11d内に設けたランス(図示せず)により係止されており、リテーナ40をリテーナ収容部11oの本係止位置まで挿入すると、リテーナ40の各係止突起40d、40eが端子にそれぞれ係止されて、端子をランスとリテーナ40で二重係止した状態となり、端子の抜けを確実に防止している。
【0040】
前記本実施形態では、ケース本体11の下面11aに端子挿入用キャビテイ11dを設けて、該端子挿入用キャビテイ11dに電線端末の端子を直接挿入する構成としているが、図14に示すように、ケース本体11の下面11aにコネクタ収容部11tを設けて、ケース本体11に電線をコネクタ接続する構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態のケース本体にカバー材を被せる方法を示す図面である。
【図2】電気接続箱の底面側斜視図である。
【図3】ケース本体を示し、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は底面図を示す図面である。
【図4】カバー材の斜視図である。
【図5】カバー材を示し、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は底面図、(D)はA−A線断面図である。
【図6】(A)(B)はカバー材のリブがケース本体の後側壁を乗り越える過程を示す要部拡大断面図である。
【図7】電気接続箱の断面斜視図である。
【図8】ケース本体より電線を引き出した状態を示す図面である。
【図9】ケース本体より引き出した電線をタイバンドで集束した状態を示す図面である。
【図10】第1リテーナを示し、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図11】第2リテーナを示し、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図12】(A)は仮係止位置のリテーナを示す図面、(B)は本係止位置のリテーナを示す図面である。
【図13】(A)はリテーナが仮係止位置のときのケース本体を示す平面図、(B)はリテーナが本係止位置のときのケース本体を示す平面図である。
【図14】変形例を示す図面である。
【図15】従来例を示す図面である。
【符号の説明】
【0042】
10 電気接続箱
11 ケース本体
11c ヒューズ収容部
11d 端子挿入用キャビテイ
11g 前側壁
11h 後側壁
11i レール部
11j 係止ピン
11k 電線当て突起
11m リテーナの挿入口
11n 突起
11r 目視穴
12 カバー材
12a 底壁
12c ガイド部
12d 係止溝
12e 傾斜壁
12f 外嵌壁
12g リブ
12h タイバンドの通し穴
30 タイバンド
40 リテーナ
w 電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体形状のケース本体の上下いずれか一面に設けた端子挿入用キャビテイあるいは/およびコネクタ収容部に電線端末に接続された端子あるいは/およびコネクタを装着した後に、長さ方向の後端側の一端から前方へとスライドさせて被せるカバー材を備え、
前記カバー材は、前記ケース本体の長さ方向の前部側は閉鎖せず、電線引き出し用の開口をあけており、
前記ケース本体の長さ方向の両側壁の外面にレール部を突設すると共に、前記レール部の前端位置に係止ピンを突設している一方、前記カバー材の両側壁の内面に前記レール部の上下面に沿って摺動するガイド部を突設すると共に、前記係止ピンが挿入係止する係止溝を備え、
かつ、前記カバー材の後端壁は傾斜壁とし、該傾斜壁の先端に連続して前記ケース本体の後側壁に外嵌する外嵌壁と、前記傾斜壁の内面から突出するリブを備え、該リブは前記ケース本体の後側壁を乗り越えさせて前記後側壁の内面に押し当て、該リブと前記外嵌壁との間にケース本体の後側壁を挟むと共に該ケース本体とカバー材との間のガタ止めをしていることを特徴とする車載用の電気接続箱。
【請求項2】
前記ケース本体の下面側に前記カバー材を取り付け、該カバー部材の底壁の両側より上向きに前記両側壁を突設していると共に、該カバー材の底壁の後端より突出する前記後端壁は上向き傾斜壁とすると共に前記リブは上向きに突設している請求項1に記載の車載用の電気接続箱。
【請求項3】
前記ケース本体の両側壁の外面には、前記レール部の前端に近接した前方位置に電線当て突起を設け、前記カバー材で閉鎖されない前記開口から引き出される電線が前記カバー材に引っ掛からない構成としている請求項1または請求項2に記載の車載用の電気接続箱。
【請求項4】
前記カバー材で閉鎖されない前記開口から引き出される電線群を集束するタイバンドの通し穴を前記カバー材に設けている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の車載用の電気接続箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−95190(P2009−95190A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−265511(P2007−265511)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】