説明

車載用電子機器の筐体、及びこの筐体を備えた車載用電子機器

【課題】滴下してきた水が天壁の放熱用開口から浸入するのを防止できる車載用電子機器の筐体、及びこの筐体を備えた車載用電子機器を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係る車載用電子機器10の筐体12は、パネルPから車室内に露出するパネル部20と、パネル部20の後方に配設され、電子部品72(70)が収納される収納空間Sをパネル部20と共に囲う後部ケース部30とを備え、後部ケース部30は、電子部品72の発する熱を収納空間S内から外部へ放出するための放熱用開口52が設けられた天壁31を有し、パネル部20には、天壁31よりも上側で且つ当該天壁31との間に間隔を有し、上方から見て放熱用開口52を覆うような形状を有する防水壁54が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車室内のパネルに装着され、エアコンや音響機器等の操作や表示が行われる操作部や表示部を有する車載用電子機器の筐体、及びこの筐体を備えた車載用電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から車載用電子機器としては、特許文献1に記載のものが知られている。図7に示されるように、この車載用電子機器100は、車両のインストルメントパネル110から車室内にコントロールパネル部(操作部)102aが露出するように、当該インストルメントパネル110に装着される。
【0003】
具体的には、車載用電子機器100は、図8にも示されるように、筐体102とその内部、即ち、収納空間s内に収納された電子部品104とで構成されている。筐体102は、各種操作を行うためのボタン類が配設されたコントロールパネル部102aと、このコントロールパネル部102aの後方(インストルメントパネル110の内部側)に配設され、収納空間sをコントロールパネル部102aと共に囲う後部ケース部102bとで構成される。この後部ケース部102bは、筐体102内部と外部とを連通する複数の放熱用開口106を囲む天壁108を有し、電子部品104から発生した熱をこの放熱用開口106を通じて筐体102の外部に放出できるように構成されている。
【特許文献1】実用新案登録第2577674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような車載用電子機器100では、パネル(インストルメントパネル)110に装着されたときに、例えば、エアコンの吹き出し口を構成するダクトのような結露の生じ易い部品が当該車載用電子機器100の上方に配設された場合、この部品に生じた結露が滴下して天壁108の放熱用開口106から筐体102の収納空間s内に浸入することが懸念される。筐体102の収納空間s内に水が浸入すると、当該筐体102の収納空間s内に収納された電子部品104に短絡や錆等が発生するといった問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、滴下してきた水が天壁の放熱用開口から浸入するのを防止できる車載用電子機器の筐体、及びこの筐体を備えた車載用電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、上記課題を解消すべく、本発明は、車両の車室内のパネルに装着される車載用電子機器の筐体であって、前記パネルから露出するパネル部と、前記パネル部の後方に配設され、電子部品が収納される収納空間を前記パネル部と共に囲う後部ケース部とを備え、前記後部ケース部は、前記電子部品の発する熱を前記収納空間内から外部へ放出するための放熱用開口が設けられた天壁を有し、前記パネル部には、前記天壁よりも上側で且つ当該天壁との間に間隔を有し、上方から見て前記放熱用開口を覆うような形状を有する防水壁が設けられていることを特徴とする。
【0007】
通常、収納空間内で生じた熱によって暖められた空気は上昇するため、この温められた空気が通過可能な放熱用開口が天壁に設けられることにより、収納空間内に生じた熱が効果的に筐体の外部に放出される。しかも、天壁よりも上側で且つ当該天壁との間に間隔を有し、上方から見て放熱用開口を覆うような形状を有する防水壁が設けられることにより、前記間隔を通じての放熱用開口からの前記暖められた空気の放出を可能としたまま、当該放熱用開口に向かって上方から滴下してきた水を遮ることによって、この滴下してきた水の前記収納空間内への直接の浸入を防止することができる。
【0008】
本発明に係る車載用電子機器の筐体では、前記放熱用開口は、複数の分割開口に分割され、これら複数の分割開口は、前記後部ケース部の天壁において前記パネルの幅方向に並び、前記防水壁は、前記複数の分割開口をその上方で個別に覆う複数の個別防水部を有し、これら複数の個別防水部は、各分割開口と対応するように互いに間隔をおいて前記幅方向に並んでいるのが好ましい。
【0009】
このように放熱用開口が複数の分割開口に分割され、各分割開口がその上方を防水壁の個別防水部により個別に覆われる構成とすることにより、滴下してきた水の開口からの浸入を防止しつつ防水壁全体の周囲に加え隣り合う個別防水部間からも各分割開口を通過してきた前記暖められた空気が外部に放出されるため、単一の大きな放熱用開口にこの開口全体を覆う防水壁を設ける場合や、前記幅方向に並ぶ分割開口に、互いに隣り合う分割開口間の上方も解放することなく全ての分割開口を覆う防水壁を設ける場合に比べ、前記暖められた空気が収納空間内から外部により放出され易くなる。
【0010】
詳細には、放熱用開口を通過した空気は、この放熱用開口の上方を覆う防水壁の端縁部とその下方の天壁とに挟まれた領域(放出領域)を通過して外部に放出される。この放出領域は、防水壁の端縁部の当該端縁部に沿った方向の長さ、即ち、上から見た防水壁の輪郭線の長さが大きくなるほど増加する。そのため、互いに間隔をおいて並ぶ個別防水部を有することで、隣り合う個別防水部間が塞がれた形状の防水壁に比べ、防水壁端縁部の前記長さを大きくすることができ、これにより放出領域の面積を大きくすることができる。しかも、各個別防水部に対応するように分割開口がそれぞれ設けられているため、滴下する水が個別防水部により遮られて開口内に入らない状態での最大限の開口面積を確保することが可能となると共に、放出領域全域にわたって当該放出領域を通過する空気の量の偏りが少なく、その結果、収納空間内の前記暖められた空気が効率よく外部に放出される。
【0011】
このように複数の分割開口が前記幅方向に並ぶ場合、前記各分割開口は、当該分割開口の並び方向に扁平な開口形状であるのが好ましい。このように扁平な開口形状とすることで、前記幅方向における少ない領域に放熱用開口及び防水壁を設けなければならない場合であっても多くの分割開口を設けることができる一方、前後方向の開口寸法を大きくすることにより、放熱のための十分な開口面積の総計を確保することが可能となる。一方、個別防水部が各分割開口に対応するように当該分割開口を個別に覆っているため、前後方向における前記輪郭線の長さを大きくすることができ、防水壁が前記幅方向における少ない領域に設けられても十分な放出領域の面積を確保することが可能となる。
【0012】
前記後部ケース部の天壁は、後方に向って下り勾配となるように傾斜し、前記防水壁は、この天壁と平行になるように傾斜しているのが好ましい。
【0013】
このように天壁と防水壁とが同方向に傾斜することで、防水壁上を流れて当該防水壁の後端から天壁に流れ落ちた水が天壁上を後方側へ流れ、即ち、防水壁から離れる方向に流れ、これにより防水壁から天壁に流れ落ちた水が天壁上を流れて防水壁の下方に位置する放熱用開口へ向かうのを防ぐことができる。
【0014】
このように傾斜する前記防水壁は、その上面に前記天壁の傾斜方向に延び、前記放熱用開口上を通過する案内溝を有することにより、防水壁上に滴下した水がこの案内溝を流れて放熱用開口よりも後方側まで案内され、これにより防水壁の側方への前記水の落下をより確実に防ぐことができる。
【0015】
また、上記課題を解消すべく、本発明は、車両の車室内のパネルに装着される車載用電子機器であって、前記何れかの車載用電子機器の筐体と、この車載用電子機器の筐体の収納空間内に収納され、作動時に発熱する電子部品とを備え、前記車載用電子機器の筐体は、前記パネル部と前記後部ケース部とで囲まれる収納空間内の前記放熱用開口及び前記防水壁の下方位置に前記電子部品を収納していることを特徴とする。
【0016】
このような構成とすることで、前記電子部品の発する熱による故障や、滴下してきた水が筐体の内部に入ることによる電子部品の短絡や錆等の発生が少ない信頼性の高い車載用電子機器が得られる。
【発明の効果】
【0017】
以上より、本発明によれば、滴下してきた水が天壁の放熱用開口から浸入するのを防止できる車載用電子機器の筐体、及びこの筐体を備えた車載用電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0019】
本発明に係る車載用電子機器は、図1に示すように車両のインストルメントパネルP(以下、単に「パネル」とも称する。)に装着される機器であり、図2乃至図4にも示されるように、筐体12と、その内部に収納される電子部品70とにより構成されている。本実施形態において車載用電子機器(以下、単に「機器」とも称する。)10は、車室内の空調をコントロールするためのものであり、パネルPにおいてエアコンの吹き出し口14の下方位置に配設される。以下、具体的に説明する。
【0020】
筐体12は、正面パネル(パネル部)20と後部ケース(後部ケース部)30とにより構成され、本実施形態において、後部ケース30は、さらにリアケース30aとリアカバー30bとにより構成される(図3参照)。また、この筐体12の上部には、電子部品70から発生した熱を筐体12の外部に放出するための上部放熱部50が設けられている。
【0021】
正面パネル20は、操作部21及び表示部22を備え、機器10がパネルPに装着されたときにこのパネルPから車室側に露出する部位である(図1参照)。操作部21は、エアコンの温度設定やオン・オフ等の各種操作を車両の運転者等が行うための部位であり、複数のボタンやダイヤル等により構成され、表示部22は、時間や温度等の情報を運転者等が視認するための部位である。表示部22は、本実施形態において、筐体12の収納空間S(図4参照)内に配設された電子部品70の一つである真空蛍光ディスプレイ(VFD)72に表示された情報(数字や文字、記号等)を運転者等が視認できるように構成されている。詳細には、表示部22は、透光性を有する素材(例えば、プラスチック等)で形成された板状の部材であり、VFD72の表示部の前方位置に配設されている。このように配設されることで、運転者等がこの表示部を透してVFD72の表示を視認することができる。
【0022】
尚、本実施形態において、正面パネル20には操作部21及び表示部22の両方が備えられているが、これに限定されず、例えば、操作部21又は表示部22の何れか一方のみが備えられてもよい。また、表示部22は、本実施形態のような筐体12の収納空間S内に配設された表示手段(VFD72)の表示を外部から視認できるような構成に限定されず、LCDやLED等のように表示部自体に文字や地図情報等が表示されるような構成であってもよい。
【0023】
この正面パネル20には、後部ケース30の天壁31よりも上側で且つ当該天壁31との間に間隔を有し、上方から見て天壁31に設けられた放熱用開口52を覆うような形状を有する防水壁54が設けられている(図3及び図4参照)。この防水壁54は、筐体12の上部の上部放熱部50の一部を構成する。
【0024】
後部ケース30は、正面パネル20の後方に配設され、電子部品70が収納される収納空間S(図4参照)を正面パネル20と共に囲う部位である。この後部ケース30は、前記のようにリアケース30aとリアカバー30bとからなり、リアケース30aは、互いに略平行な天壁31及び底壁32と、両壁31,32の幅方向両端部同士(即ち左側端部同士及び右側端部同士)をそれぞれつなぐ一対の側壁33と、これらの壁31,32,33,33によって囲まれる後方側の開口の略下半分を塞ぐ背面壁34とを一体に有する。従って、リアケース30aの背面側は、略下半分が背面壁34によって塞がれ、残りの略上半部が開口している。背面壁34の上部は、後方側に延出し、この延出している部位には、収納空間S内と筐体12の外部とを連通する放熱用の複数の開口35が設けられている。このリアケース30aの天壁31には、電子部品70の発する熱を収納空間S内(即ち、筐体12の内部)から筐体12の外部へ放出するための前記の放熱用開口52が設けられている。この放熱用開口52は、筐体12の上部の上部放熱部50の一部を構成する。リアカバー30bは、リアケース30aの背面側の前記開口を塞ぐ部位である。このリアカバー30bには、収納空間S内と筐体12の外部とを連通する放熱用の複数の開口36を有する。
【0025】
上部放熱部50は、図5(a)乃至図5(c)にも示されるように、正面パネル20の防水壁54と後部ケース30の放熱用開口52とが上下に重なるように配置されることによって構成されている。放熱用開口52は、後部ケース30の天壁31の前方側に設けられている。この放熱用開口52は複数(本実施形態においては3つ)の分割開口56に分割され、これら複数の分割開口56は正面パネル20の幅方向に並んでいる。各分割開口56は、当該分割開口56の並び方向(幅方向)に扁平な開口形状を有する。この実施形態では、各分割開口56は、後部ケース30の天壁31の前方側に開放された形状を有する。換言すれば、前方側端部から後方に向って凹む切欠きにより構成されている。これら複数の分割開口56が設けられた天壁31は、後方に向って下り勾配となるように傾斜している(図4参照)。
【0026】
一方、防水壁54は、正面パネル20の上端部で、且つ幅方向においては放熱用開口52と対応する位置に設けられ、後部ケース30の天壁31と平行になるように傾斜している。即ち、後方に向って天壁31と同じ下り勾配となるように傾斜している。この防水壁54は、複数の分割開口56をその上方で個別に覆う複数(本実施形態においては3つ)の個別防水部58を有している。これら複数の個別防水部58は、各分割開口56と対応するように互いに間隔をおいて幅方向に並んでいる。各個別防水部58は、上方からみて分割開口56と対応した形状を有し、且つこの分割開口56よりも一回り大きい。換言すると、各個別防水部58は、正面パネル20上端部の幅方向において各分割開口56に対応する位置から後方に向かってこの分割開口56に対応した形状となるように延びている。従って、図5(b)及び図5(c)のように、個別防水部58(防水壁54)と分割開口56(放熱用開口52)とは、一方の側部から後端部を経て他方の側部にかけて、各個別防水部58の端縁部と天壁31の分割開口56の周縁部とが上下方向に僅かに重なるような形状及び位置関係となっている。
【0027】
また、防水壁54は、その上面に案内溝59を有する。この案内溝59は、天壁31の傾斜方向(本実施形態では前後方向)に延び、放熱用開口52を前後方向に通過するように防水壁54に設けられている。本実施形態では、各個別防水部58に案内溝59がそれぞれ設けられている。詳細には、案内溝59は、各個別防水部58の幅方向中央を通り、幅と深さを一定に保った状態で正面パネル20の前方側から個別防水部58の後端まで真っ直ぐに延びている。
【0028】
これら正面パネル20と後部ケース30とは、互いに組み合わされることにより、筐体12を構成し、その内側に収納空間Sを形成する。この収納空間S内には、複数の電子部品70が収納される。これら複数の電子部品70のうち、作動時に発熱量の大きな部品(本実施形態では、前記のVFD72)は、前記収納空間S内において上部放熱部50(放熱用開口52及び防水壁54)の下方位置に収納されている。
【0029】
以上のような上部放熱部50が設けられた筐体12と、この筐体12の収納空間S内に収納され、作動時に発熱する電子部品72とを備え、筐体12が、収納空間S内の上部放熱部50(放熱用開口52及び防水壁54)の下方位置に電子部品72を収納することにより、電子部品72の発する熱による故障や、滴下してきた水が筐体12の内部に入ることによる電子部品72の短絡や錆等の発生が少ない信頼性の高い機器10が得られる。
【0030】
具体的には、収納空間S内で電子部品70の発する熱によって温められた空気が通過可能な放熱用開口52が天壁31に設けられることにより、収納空間S内に生じた熱が効果的に筐体12の外部に放出される。即ち、通常、収納空間S内で生じた熱によって暖められた空気は収納空間S内で上昇するため、この温められた空気が通過可能な放熱用開口52が天壁31に設けられることにより効果的に筐体12の外部に放出される。しかも、天壁31よりも上側で且つ当該天壁31との間に間隔を有し、上方から見て放熱用開口52を覆うような形状を有する防水壁54が正面パネルに設けられることにより、前記間隔を通じての放熱用開口52からの前記暖められた空気の放出を可能としたまま、当該放熱用開口52に向かって上方から滴下してきた水(例えば、本実施形態ではパネルPにおいて当該機器10の上方に配設されたエアコンの吹き出し口14に生じた結露が滴下した水)を遮ることによって、この滴下してきた水の収納空間S内への直接の浸入を防止することができる。
【0031】
また、図6(a)にも示すように、放熱用開口52が複数の分割開口56に分割され、各分割開口56がその上方を防水壁54の個別防水部58により個別に覆われる構成とすることにより、滴下してきた水の開口56(52)からの浸入を防止しつつ防水壁54全体の周囲に加え隣り合う個別防水部58間からも各分割開口56を通過してきた前記暖められた空気が外部に放出されるため、図6(b)に示すような単一の大きな放熱用開口52aにこの開口52a全体を覆う防水壁54aを設ける場合や、図6(c)に示すような正面パネル20の幅方向に並ぶ分割開口56に、互いに隣り合う分割開口56間の上方も解放することなく全ての分割開口56を覆う防水壁54aを設ける場合に比べ、前記暖められた空気が収納空間S内から外部により放出され易くなる。
【0032】
詳細には、放熱用開口52を通過した空気は、この放熱用開口52の上方を覆う防水壁54の端縁部とその下方の天壁31とに挟まれた領域(放出領域:図6(a)乃至図6(b)においては、太線位置における防水壁54(又は54a)の下面と天壁31の上面との間の領域)を通過して外部に放出される。この放出領域は、防水壁54の端縁部の当該端縁部に沿った方向の長さ、即ち、上から見た防水壁の輪郭線(図6(a)乃至図6(c)における太線)の長さが大きくなるほど増加する。そのため、互いに間隔をおいて並ぶ個別防水部58を有することで、隣り合う個別防水部58間が塞がれた形状の防水壁54a(図6(b)及び図6(c)参照)に比べ、防水壁54端縁部の前記長さを大きくすることができ(即ち、図6(b)及び図6(c)の太線に比べ図6(a)の太線を長くすることができ)、これにより放出領域の面積を大きくすることができる。しかも、各個別防水部58に対応するように分割開口56がそれぞれ設けられているため、滴下する水が個別防水部58により遮られて開口56内に入らない状態での最大限の開口面積を確保することが可能となると共に、放出領域全域にわたって当該放出領域を通過する空気の量の偏りが少なく、その結果、収納空間S内の前記暖められた空気が効率よく外部に放出される。
【0033】
この実施形態のように複数の分割開口56が正面パネル20の幅方向に並ぶ場合、各分割開口56を当該分割開口56の並び方向(前記幅方向)に扁平な開口形状とすることで、前記幅方向における少ない領域に放熱用開口52及び防水壁54を設けなければならない場合であっても多くの分割開口56を設けることができる一方、前後方向の開口寸法を大きくすることにより、放熱のための十分な開口面積の総計を確保することが可能となる。一方、個別防水部58が各分割開口56に対応するように当該分割開口56を個別に覆っているため、前後方向における前記輪郭線(図6(a)における太線)の長さを大きくすることができ、防水壁54が前記幅方向における少ない領域に設けられても十分な放出領域の面積を確保することが可能となる。
【0034】
後部ケース30の天壁31は、後方に向って下り勾配となるように傾斜し、防水壁54(個別防水部58)は、この天壁31と平行になるように傾斜することにより、防水壁54上を流れて天壁31に流れ落ちた水が、当該天壁31上を放熱用開口52へ向かって流れるのを防止できる。即ち、防水壁54と天壁31とが同方向に傾斜することにより、防水壁54上を流れて当該防水壁54の後端から天壁31に流れ落ちた水は、天壁31上を後方側へ流れ、即ち、防水壁54から離れる方向に流れ、これにより前記水が防水壁54の下方に位置する放熱用開口52へ向けて天壁31上を流れるのを防止することができる。その結果、防水壁54(個別防水部58)によって、滴下してきた水が直接放熱用開口52(分割開口56)を通過して収納空間S内に浸入することを妨げられると共に、防水壁54と天壁31とが同方向に傾斜することによって、前記妨げられた水が防水壁54から天壁31に流れ落ちたあとこの天壁31に沿って放熱用開口52内に流れ込むのが抑制される。
【0035】
また、前記のように傾斜する防水壁54(個別防水部58)は、その上面に天壁31の傾斜方向に延び、放熱用開口52(分割開口56)上を前後方向に通過する案内溝59を有することにより、防水壁54上に滴下した水がこの案内溝59を流れて放熱用開口52よりも後方側まで案内され、これにより防水壁54の側方への前記水の落下をより確実に防ぐことができる。そのため、側方へ落下した水が放熱用開口52から内部に浸入するのを防止することができる。
【0036】
尚、本発明の筐体12及びこの筐体12を備えた車載用電子機器10は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0037】
例えば、本実施形態では、放熱用開口52が複数の分割開口56に分割され、各分割開口56がその上方を防水壁54の個別防水部58により個別に覆われるが(図6(a)参照)、これに限定されず、単一の大きな放熱用開口52aにこの開口52a全体を覆う防水壁54aを設ける構成(図6(b)参照)や、正面パネル20の幅方向に並ぶ分割開口56に、互いに隣り合う分割開口56間の上方も解放することなく全ての分割開口56を覆う防水壁54aを設ける構成(図6(c)参照)であってもよい。これらの構成によれば、前記のように本実施形態に比べ収納空間S内で発生した熱の放熱量が少なくなるが、収納空間S内で生じた熱の放熱用開口52からの放出を可能としつつ、この開口52から滴下してきた水が浸入することを防止することができる。
【0038】
また、本実施形態の防水壁54は、その上面に案内溝59を有しているが、これに限定されず、案内溝59を有していなくてもよい。この場合、防水壁54が傾斜しているのが好ましく、このように傾斜することにより防水壁54に滴下した水は、防水壁54上を傾斜方向に流れるため当該防水壁54の側方への水の落下を抑制でき、側方へ落下した水が放熱用開口52から内部に浸入するのを抑制することができる。
【0039】
また、本実施形態の各個別防水部58には、1本の真っ直ぐな案内溝59が設けられているが、個別防水部58(防水壁54)の側方への水の落下を防止できればよく、複数本の案内溝が設けられていてもよく、また、直線状の溝でなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本実施形態に係る車載用電子機器が装着される車両のインストルメントパネル及びその周辺を示す概略図である。
【図2】同実施形態に係る車載用電子機器の斜視図である。
【図3】同実施形態に係る車載用電子機器の分解斜視図である。
【図4】同実施形態に係る車載用電子機器における図2のA−A断面図である。
【図5】同実施形態に係る車載用電子機器における(a)は図2のI部の拡大斜視図であり、(b)は図5(a)のB−B端面図であり、(c)は図5(a)のC−C端面図である。
【図6】上部放熱部の概略図であって、(a)は本実施形態に係る上部放熱部の平面概略図であり、(b)は単一の大きな放熱用開口と、この開口全体を覆う防水壁とで構成される上部放熱部の概略平面図であり、(c)は幅方向に並ぶ複数の分割開口と、互いに隣り合う分割開口間の上方も解放することなく全ての分割開口を覆う防水壁とで構成される上部放熱部の概略平面図である。
【図7】従来の車載用電子機器のインストルメントパネルに装着した状態の中央縦断面図である。
【図8】従来の車載用電子機器の斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
10 車載用電子機器
12 筐体
20 正面パネル(パネル部)
21 操作部
22 表示部
30 後部ケース(後部ケース部)
31 天壁
52 放熱用開口
54 防水壁
70 電子部品
P インストルメントパネル
S 収納空間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室内のパネルに装着される車載用電子機器の筐体であって、
前記パネルから露出するパネル部と、
前記パネル部の後方に配設され、電子部品が収納される収納空間を前記パネル部と共に囲う後部ケース部とを備え、
前記後部ケース部は、前記電子部品の発する熱を前記収納空間内から外部へ放出するための放熱用開口が設けられた天壁を有し、
前記パネル部には、前記天壁よりも上側で且つ当該天壁との間に間隔を有し、上方から見て前記放熱用開口を覆うような形状を有する防水壁が設けられていることを特徴とする車載用電子機器の筐体。
【請求項2】
請求項1に記載の車載用電子機器の筐体において、
前記放熱用開口は、複数の分割開口に分割され、これら複数の分割開口は、前記後部ケース部の天壁において前記パネルの幅方向に並び、
前記防水壁は、前記複数の分割開口をその上方で個別に覆う複数の個別防水部を有し、これら複数の個別防水部は、各分割開口と対応するように互いに間隔をおいて前記幅方向に並んでいることを特徴とする車載用電子機器の筐体。
【請求項3】
請求項2に記載の車載用電子機器の筐体において、
前記各分割開口は、当該分割開口の並び方向に扁平な開口形状であることを特徴とする車載用電子機器の筐体。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の車載用電子機器の筐体において、
前記後部ケース部の天壁は、後方に向って下り勾配となるように傾斜し、
前記防水壁は、この天壁と平行になるように傾斜していることを特徴とする車載用電子機器の筐体。
【請求項5】
請求項4に記載の車載用電子機器の筐体において、
前記防水壁は、その上面に前記天壁の傾斜方向に延び、前記放熱用開口上を通過する案内溝を有することを特徴とする車載用電子機器の筐体。
【請求項6】
車両の車室内のパネルに装着される車載用電子機器であって、
請求項1乃至5の何れか1項に記載の車載用電子機器の筐体と、
この車載用電子機器の筐体の収納空間内に収納され、作動時に発熱する電子部品とを備え、
前記車載用電子機器の筐体は、前記パネル部と前記後部ケース部とで囲まれる収納空間内の前記放熱用開口及び前記防水壁の下方位置に前記電子部品を収納していることを特徴とする車載用電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−103218(P2010−103218A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−271785(P2008−271785)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】