説明

転写装置および転写方法

【課題】転写用の型に形成されている微細な転写パターンを被成形品に転写する転写装置において、正確な転写を行う。
【解決手段】転写用の型M1に形成されている微細な転写パターンを被成形品W1に転写する転写装置1において、型M1で被成形品W1を押圧する押圧手段と、被成形品W1に照射するための所定の波長の電磁波を発生する発生装置9と、被成形品W1に照射される前記所定の波長の電磁波の照射エネルギー量が変化するように、発生装置9を制御する制御手段19とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写装置および転写方法に係り、特に、紫外線等の電磁波を被成形品の被成形層に照射して転写を行うものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子線描画法などで石英基板等に超微細な転写パターンを形成して型(テンプレート、スタンパ)を作製し、被成形品(基板)として被転写基板(被成形品)表面に形成されたレジスト膜に前記型を所定の圧力で押圧して、当該型に形成された転写パターンを転写するナノインプリント技術が研究開発されている(非特許文献1参照)。
【0003】
また、前記ナノインプリントを実行するための装置としてたとえば特許文献1に記載の転写装置が知られている。この転写装置は、L字型のフレームの下部水平部にXステージ、Yステージを設けてその上に被成形品の支持部である基板テーブルを搭載し、フレームの垂直部の上部に上下方向の移動機構を介して型支持部(型保持体)を設けている。型保持体は平面部を備え、この平面部で転写用の超微細な転写パターンが形成されている型を保持するようになっている。
【特許文献1】特開2004−34300号公報
【非特許文献1】Precision Engineering Journal of the International Societies for Precision Engineering and Nanotechnology
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、基材の一方の面に薄い紫外線硬化樹脂を設け、前記転写装置を用い、基材の一方の面を型で押圧し紫外線を照射して前記紫外線硬化樹脂を硬化させ転写を行う場合、基材(紫外線硬化樹脂)に照射する紫外線の強度をほぼ一定にしている。
【0005】
したがって、紫外線硬化樹脂が硬化する際に変形が生じ、正確な転写を行うことができない場合があるという問題がある。
【0006】
たとえば、図1に示すような状態から、移動ダイ11を上昇させて、被成形品W1を石英ガラスで構成された型M1に接触させて型M1で被成形品W1を押圧し、さらに、一定の強度の紫外線を、型M1を通過させて被成形品W1の被成形層(たとえば紫外線硬化樹の層)W5に照射すると、被成形層W5の厚さtが薄くなっているにもかかわらず、被成形層W5の上側と下側とでは、紫外線の強度が僅かに異なり、紫外線の強度が強い側(上側)から被成形層W5が硬化をし始める。
【0007】
このように、の上側だけがはじめに硬化すると、この硬化した部分で被成形層W5の体積が僅かに小さくなり、転写が終了したときに(被成形層W5の総てが硬化したときに)、被成形品W1が下側に凸になるように僅かに変形するおそれがある。
【0008】
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、転写用の型に形成されている微細な転写パターンを被成形品に転写する転写装置および転写方法において、正確な転写を行うことができるものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、 転写用の型に形成されている微細な転写パターンを被成形品に転写する転写装置において、前記型で前記被成形品を押圧する押圧手段と、前記被成形品に照射するための所定の波長の電磁波を発生する発生装置と、前記被成形品に照射される前記所定の波長の電磁波の照射エネルギー量が変化するように、前記発生装置を制御する制御手段とを有する転写装置である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の転写装置において、前記制御手段は、前記押圧手段による押圧力を制御する手段である転写装置である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の転写装置において、前記制御手段は、前記押圧手段が押圧を開始する時から所定の時間だけ遡った時刻、または、前記押圧手段が押圧を開始した時、または、前記押圧手段が押圧を開始した時から所定の時間が経過した時刻から、前記所定の波長の電磁波の照射が開始されるように前記発生装置を制御する手段である転写装置である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の転写装置において、前記被成形品に照射される前記所定の波長の電磁波の照射エネルギー量の変化パターンを入力する入力手段を有し、前記制御手段は、前記入力手段で入力された変化パターンに基づいて前記被成形品に照射される前記所定の波長の電磁波の照射エネルギー量が変化するように、前記発生装置を制御する手段である転写装置である。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の転写装置において、前記被成形品に照射する前記所定の波長の電磁波の照射エネルギー量の変化パターンを、複数記憶している記憶手段と、前記記憶手段が記憶している各変化パターンのうちの1つの変化パターンを選択する選択手段とを有し、前記制御手段は、前記選択手段で選択された変化パターンに基づいて、前記被成形品に照射される前記所定の波長の電磁波の照射エネルギー量が変化するように、前記発生装置を制御する手段である転写装置である。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の転写装置において、前記被成形品への1回の転写で前記照射装置から照射されるエネルギー量を表示する第1の表示手段を有する転写装置である。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の転写装置において、前記被成形品に照射する前記所定の波長の電磁波の照射エネルギー量の変化パターンを、グラフを用いて表示する第2の表示手段を有する転写装置である。
【0016】
請求項8に記載の発明は、転写用の型に形成されている微細な転写パターンを被成形品に転写する転写方法において、前記型で前記被成形品を押圧する押圧工程と、前記被成形品に照射する前記所定の波長の電磁波の照射エネルギー量を変化させつつ照射する照射工程とを有する転写方法である。
【0017】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の転写方法において、前記押圧工程は、押圧力をほぼ一定に保ったまま、押圧を行う工程である転写方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、転写用の型に形成されている微細な転写パターンを被成形品に転写する転写装置および転写方法において、正確な転写を行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る転写装置1の概略構成を示す図であり、図2は、転写装置1の制御系の概略構成を示すブロック図である。
【0020】
転写装置1は、型M1に形成されている微細な転写パターンを、被成形品W1に転写するための装置であり、ベース部材3を備えている。なお、被成形品W1として、DVD等の記録媒体や液晶表示装置の導光板等がある。
【0021】
ベース部材3には、コラム5が一体的に立設されており、コラム5の上部側には固定ダイ7が一体的に設けられている。固定ダイ7の上には、所定の波長の電磁波(たとえば紫外線)を発生する発生装置の例である紫外線ランプ9が設けられている。また、固定ダイ7の下側には、型M1が設置されるようになっている。型M1は、紫外線を透過する部材(たとえば、石英ガラス)で構成されている。型M1の下面に微細な転写パターンが形成されている。
【0022】
コラム5の中程には、移動ダイ11が設けられている。移動ダイ11は、アクチュエータの例であるサーボモータと動力変換機構の例であるボールねじ15(押圧手段)とによって、固定ダイ7に対して接近もしくは離反する方向(図1に矢印で示すような上下方向)に移動することができるようになっている。
【0023】
移動ダイ11の上部に、被成形品W1を設置することができるようになっている。被成形品W1は、ガラス等で形成された平板状の基材W3の上面に、所定の波長の電磁波が照射されると硬化する被成形層(たとえば、紫外線硬化樹脂)の薄膜W5が設けられている。
【0024】
そして、図1に示すように、移動ダイ11に被成形品W1(紫外線硬化樹脂W5が硬化していない被成形品W1)が設置された状態で、移動ダイ11を上昇させて型M1で被成形品W1を押圧し、紫外線ランプ9が発生する紫外線を被成形品W1に照射し、型M1の微細な転写パターンを被成形品W1(紫外線硬化樹脂W5)に転写することができるようになっている。
【0025】
なお、紫外線ランプ9が発生する紫外線は、移動ダイ11に形成されている経路(図示せず)と、型M1とを通って、被成形品W1に到達するようになっている。また、移動ダイ11には、押圧力検出手段の例であるロードセル17が設けられており、詳しくは後述するが、型M1による被成形品W1への押圧力を制御することができるようになっている。
【0026】
ところで、転写装置1において、被成形品W1を型M1よりも大きくし、型M1(固定ダイ7)に対して被成形品W1(移動ダイ11)を水平方向(図1の紙面に垂直な方向、図1の左右方向)で相対的に移動位置決め自在に構成し、1枚の被成形品W1に型M1による複数回の広範囲の転写を行うようにしてもよい。また、紫外線ランプ9を移動ダイ11の下側に設置し、移動ダイ11に設けた経路と基材W3とを通過した紫外線が、紫外線硬化樹脂W5に照射される構成であってもよい。さらに、被成形品W1を固定しておいて型M1を移動し押圧をするように構成してもよい。
【0027】
また、転写装置1には、制御手段(コントローラ)19が設けられている。詳しくは後述するが、転写を行う際、コントローラ19の制御の下、紫外線出力アンプ21は、時刻の経過にしたがって被成形品W1に照射される紫外線の照射エネルギー量(紫外線の強度)を変化させることができるようになっている。コントローラ19は、たとえば、ステップ毎に紫外線の照射エネルギー量を変化させるようになっている。なお、紫外線の照射エネルギー量を初めは少なく(弱く)しておき、その後、多く(強く)して紫外線硬化樹脂W5を硬化させることが望ましい。
【0028】
なお、紫外線の照射エネルギー量(強度)を変化させる方式として、紫外線ランプ9が紫外線を連続して発生している状態において紫外線ランプ9が発生する紫外線の強度(紫外線ランプ9が単位時間あたり発生する照射エネルギー量)を変えることにより、紫外線の強度を変化させる方式と、間欠制御により(紫外線ランプ9をごく短い時間間隔で間欠的にONさせて)、見かけ上で紫外線の強度を変化させる方式とを考えることができる。
【0029】
また、コントローラ19には、転写の際における押圧力の値がロードセル17から入力されるようになっており、コントローラ19の制御の下、サーボモータ13が駆動し、移動ダイ11が移動し、押圧力をフィードバック制御しながら被成形品W1を押圧するようになっている。
【0030】
さらに、コントローラ19には、HMI(Human Machine Interface)23と、メモリ25とが接続されている。HMI23は、たとえば液晶表示装置とこの液晶表示装置に設けられたタッチパネル等で構成されている、メモリ25は、転写を行う際、被成形品W1に照射する紫外線(紫外線ランプ9から照射される紫外線)の照射エネルギー量(強度)の変化パターン(被成形品の種類毎のパターン)を、主に記憶しているメモリである。
【0031】
コントローラ19は、前述したように、被成形品W1への転写をすべく型M1による被成形品W1への押圧を行っているときの押圧力を制御するようになっている。
【0032】
たとえば、コントローラ19は、ロードセル17で検出した押圧力でサーボモータ13をフィードバック制御し、押圧を行っているときの押圧力がほぼ一定になるようにしている。なお、前述した紫外線の強度の制御と同様に、押圧力の大きさを変化させるようにしてもよい。このように、押圧力を変化させる際、紫外線の強度に対して正や負の相関関係を持たせて押圧力を変化させる必要はない。すなわち、紫外線強度が強くなるにしたがって押圧力を大きくし、もしくは小さくする必要はなく、紫外線強度の変化に関係なく、被成形品W1の性質に合わせて押圧力を変化させればよい。
【0033】
ここで、前述した紫外線の強度の変化等について例を掲げて詳しく説明する。
【0034】
転写装置1は、コントローラ19の制御の下、紫外線の照射を開始する時刻と、紫外線の照射を終える時刻との間の時間を、複数の時間(ステップ)に分割し、これらの各分割された時間毎に、紫外線の強度を変えることができるようになっている。
【0035】
たとえば、図5(HMI23に表示される画面の例を示す図)に示すように、紫外線を照射する時間を4つに分割し(等分割でもよいし、等分割でなくてもよい。)、第1の時間(紫外線の照射を開始する時刻t1と時刻t2との間の時間)TD1では、一定の強度DS1の紫外線を照射し、第2の時間(時刻t2と時刻t3との間の時間)TD2では、一定の強度DS2の紫外線を照射し、第3の時間(時刻t3と時刻t4との間の時間)TD3では、一定の強度DS3の紫外線を照射し、第4の時間(時刻t4と紫外線の照射を終える時刻t5との間の時間)TD4では、一定の強度DS4の紫外線を照射するようになっている。
【0036】
なお、すでに理解されるように、前述した時間の分割は、切れ目が無いようになされている。したがって、たとえば、第1の時間TD1と第2の時間TD2とは連続している。
【0037】
また、コントローラ19の制御の下、時刻の経過と共に、紫外線の強度を徐々に変化させるようにしてもよい。すなわち、紫外線の強度を段階的でなく(ステップ毎でなく)、時刻の経過にしたがって徐々に強くし、また、弱くし、また、強弱を繰り返すようにしてもよい。換言すれば、紫外線の強度DSを時刻tの関数(DS=f(t))にして変化させてもよい。
【0038】
なお、紫外線の照射を開始する時刻と紫外線の照射を終える時刻との間の時間を多数の時間に分割し、多数に分割した各時間毎に紫外線の強度を設定すれば、紫外線の強度を段階的でなく、時刻の経過にしたがい徐々に強くしまた弱くするように見える。図5に示してある紫外線強度DS1等は、絶対値(単位;mW/cm;ミリワット/平方センチメートル)で表してもよいし、紫外線ランプ9の100%の強度に対する百分率で表してもよい。
【0039】
また、コントローラ19の制御の下、転写のための押圧を開始する時から所定の時間だけ遡った時刻、または、転写のための押圧を開始した時、または、転写のための押圧を開始した時から所定の時間が経過した時刻から、紫外線の照射が開始されるようになっている。
【0040】
転写のための押圧を開始する時から所定の時間だけ遡った時刻から、紫外線の照射を開始する場合には、たとえば、コントローラ19が次の制御を行うようになっている。すなわち、転写装置1のスタートスイッチ(たとえば、HMI23を構成する転写スタートのスイッチ)が押された時にただちに紫外線の照射を開始し、もしくは、転写装置1のスタートスイッチが押された時から所定の時間が経過したときに紫外線の照射を開始するようになっている。
【0041】
続いて、前述した紫外線の照射が開始されてから所定の時間経過後に、型M1による被成形品W1への押圧が開始されるようになっている。
【0042】
また、転写のための押圧を開始した時から紫外線の照射を開始する場合には、たとえば、コントローラ19が次の制御を行うようになっている。すなわち、転写装置1のスタートスイッチが押され、移動ダイ11が移動(上昇)し始め、型M1が被成形品W1に接触し、ロードセル17で検出した押圧力が所定の値(閾値)を超えたときに、押圧が開始されたものとみなして、紫外線の照射が開始されるようになっている。
【0043】
また、前述したように、転写のための押圧を開始した時から所定の時間が経過した時刻から紫外線の照射を開始する場合には、たとえば、コントローラ19が次の制御を行うようになっている。すなわち、転写装置1のスタートスイッチが押され、移動ダイ11が移動し始め、型M1が被成形品W1に接触し、ロードセル17で検出した押圧力が所定の値を超えたときに、押圧が開始されたものとみなし、このみなした時刻から所定の時間が経過した時刻になったときに、紫外線の照射を開始するようになっている。
【0044】
ところで、転写装置1では、HMI23を用いて、被成形品W1に照射される紫外線の強度の変化パターンをオペレータが入力することができるようになっている。なお、前記入力された紫外線の強度の変化パターンは、図示しない記憶手段に一時的に格納されるようになっている。そして、転写装置1のコントローラ19は、前記入力され一時的に格納されている変化パターンに基づいて、被成形品W1に照射される紫外線の強度を変化させて、転写を行うようになっている。
【0045】
また、転写装置1では、コントローラ19の制御の下、被成形品W1への1回の転写で紫外線ランプ9から照射されるエネルギー量(エネルギーの総和量;仕事量)を、HMI23を用いて表示するようになっている。
【0046】
ここで、紫外線の強度の変化パターンを入力する画面等について図5を用いて説明する。
【0047】
図5中の表示A1は、被成形品W1に照射する紫外線の強度の変化パターンを、グラフを用いて表示したものである。表示A1の横軸は時刻の経過を示し、縦軸は紫外線の強度を百分率で示している。たとえば、時刻t1と時刻t2との間の時間では、25%の強度の紫外線が照射されることを示している。なお、百分率の値が100%である場合における紫外線の強度の値は、表示A15に示されており、図5では、0.1mW/cmになっている。この値は、HMI23を用いてオペレータが入力し変更することができるようになっている。また、A1の表示は、次に示す、A3、A5、A7、A13等で入力等された値に応じて自動的に変化するようになっている。
【0048】
図5中の表示A3は、表示A1の縦軸の単位を切り換えるためのものであり、オペレータによって「%」の箇所が押された場合には、図5の表示A1のように、表示A1の縦軸が百分率の表示になり、「mW/cm」の表示が押された場合には、図5の表示A1の縦軸が、紫外線強度を、「mW/cm」の単位で表示するようになっている。
【0049】
図5中の表示A5は、各ステップにおける紫外線の強度を表している。たとえば、「DS1」は、1つ目のステップ(表示A1における時刻t1と時刻t2との間のステップ)における紫外線の強度が25%であることを示している。なお、この値は、HMI23を構成する10キー等を用いて、オペレータが入力しまた変更することができるようになっている。また、表示A15によって実際の紫外線強度が選択された場合には、A5の表示は、「mW/cm」の単位になる。
【0050】
図5中の表示A7は、各ステップの時間を表している。たとえば、「TD1」は、1つ目のステップの時間が15秒であることを示している。なお、この値も、HMI23を構成する10キー等を用いて、オペレータが入力しまた変更することができるようになっている。
【0051】
図5中の表示A9は、転写を行う場合におけて紫外線の照射が開始されるタイミングを示している。この表示A9が図5で示すように「+5」になっているときには、転写のための押圧が開始された時刻(ロードセル17の検出値が所定の値を超えた時)から5秒経過後に、紫外線の照射が開始されるようになっている。表示A9がたとえば「−3」になっているときには、転写のための押圧が開始される時刻の約3秒前から紫外線の照射が開始されるようになっている。なお、この値も、HMI23を構成する10キー等を用いて、オペレータが入力しまた変更することができるようになっている。
【0052】
図5中の表示A11は、転写を行う場合におけて紫外線の照射が開始されるタイミングをA9の表示よりも遅延させる場合に使用される。図5では表示が「0.1」になっており、表示A9が「+5」になっているので、転写のための押圧が開始された時刻から5.1秒経過後に、紫外線の照射が開始されるようになっている。なお、この値も、HMI23を構成する10キー等を用いて、オペレータが入力しまた変更することができるようになっている。
【0053】
図5中の表示A13は、表示A1や表示A5、A7のステップ数を示している。図5では、「4」になっているので、ステップ数は4つになっている。なお、この値も、HMI23を構成する10キー等を用いて、オペレータが入力しまた変更することができるようになっている。
【0054】
図5中の表示A13は、被成形品W1への1回の転写で紫外線ランプ9から照射されるエネルギー量(単位;mJ/cm;ミリジュール/平方センチメートル)を示している。表示A13に示されている「ST」は、ST=DS1×TD1+DS2×TD2+DS3×TD3+DS4×TD4で求められる。なお、表示A13に示されている「ST」は、オペレータによって、DS1、TD1等の値が入力されまたは変更される毎に、計算されて表示されるようになっている。
【0055】
ところで、図5では、表示A7の各値が、TD1が15秒、TD2が20秒というように異なっていても、表示A1の横軸の長さは同じになっている。すなわち、たとえば、時刻t1と時刻t2との間の長さと、時刻t2と時刻t3との間の長さとは互いがほぼ等しくなっている。このような表示に代えて、表示A1の横軸を、表示A7の各値に応じて変えてもよい。たとえば、表示A7の各値の割合に応じて変えてもよい。また、転写をする際の押圧力を、図5に示す紫外線強度の場合と同様に表示し、入力し変更ことができるようにしてもよい。
【0056】
さらに、転写装置1では、メモリ(記憶手段)25に記憶されている複数の各変化パターン(転写の際における紫外線強度の変化のパターン)のうちの1つの変化パターンを、HMI23を用いてオペレータが選択し、この選択された変化パターンに基づいて、コントローラ19の制御の下、被成形品W1に照射される紫外線の強度を変化させるようになっている。
【0057】
なお、メモリ25が、紫外線の強度の各変化パターンに対応した紫外線照射開始時刻(紫外線照射開始のタイミング)を記憶しいてもよいし、紫外線の強度の各変化パターンに対応した押圧力の変化のパターンを記憶していてもよい。
【0058】
また、HMI23を用いてオペレータにより入力された変化パターンを、メモリ25に記憶するようにしてもよい。さらには、メモリ25記憶されている各変化パターンの中から、HMI23を用いてオペレータが1つの変化パターンを選択し、この選択した変化パターンを、HMI23を用いてオペレータが修正し、この修正した変化パターンを用いて転写を行うようにしてもよいし、前記修正した変化パターンを新たな変化パターンとしてメモリ25に記憶してもよい。
【0059】
ここで、メモリ25に記憶されている紫外線の変化パターンについて図6を用いて説明する。なお、図6に示す表は、オペレータの操作により、HMI23に表示されるようになっている。
【0060】
図6の「No.」は変化パターンの通し番号であり、「品名」は、変化パターンを用いて転写される被成形品の名称を示し、仕事量は、紫外線のエネルギーの量を示し、ステップ数は、紫外線の変化のステップ数を示している。
【0061】
たとえばNo.1では、被成形品W1の品名が、「aaa」であり、この「aaa」1枚の転写で照射される紫外線のエネルギーの総和は「ST1」であり、ステップ数は、図5で示す場合と同様に「4」である。
【0062】
オペレータは、「No.」の下にある数字の箇所を押すことによって、メモリ25に記憶されている複数の変化パターンから1つのパターンを選択することができるようになっている。
【0063】
次に、転写装置1の動作について説明する。
【0064】
図3、図4は、転写装置1の動作を示すフローチャートである。
【0065】
転写装置1は、図示しないROM等のメモリに格納されている動作プログラムに基づいて、コントローラ19の制御の下、HMI23に、メモリ25に格納してある照射パターン(被成形品W1への転写を行う際の紫外線の強度の変化パターン)を利用するか否かの表示をする(S1)。
【0066】
メモリ25に格納してある照射パターンを利用しない旨が、HMI23を介してオペレータにより選択された場合には、HMI23に、照射パターンの設定画面を表示し(S3)、この表示後、オペレータによって図5に示すようなパターンが入力され、パターン設定が終了した場合には(S5)、HMI23に、転写を行うか否かの表示をする(S7)。なお、ステップS5におけるパターン設定が終了の判断は、たとえば、図5に示す、A13、A5、A7の入力や変更が終了したことを条件にしてもよいし、HMI23に、別途、設定が終了したか否かのボタン等を表示し、オペレータが前記ボタンを押したか否かで判断してもよい。
【0067】
ステップS7で転写を行わないことが選択された場合には、ステップS15に進み、ステップS7で転写を行うことが選択された場合には、前記設定された紫外線の照射パターンで被成形品W1への転写を行う(S9)。
【0068】
続いて、ステップS9で転写を実行した後に、この実行した照射パターンに変更(修正)があるか否かの表示をHMI23で行い、HMI23を介してオペレータから修正が必要な旨が入力された場合には(S11)、ステップS13で、照射パターンの変更を行う。なお、この変更もHMI23を用いてオペレータにより入力される。
【0069】
ステップS11において照射パターンの変更が無い場合、また、ステップS13で、照射パターンの変更がなされた場合、変更(修正)された照射パターンをメモリ25に記憶するか否かを判断する(S15)。この判断も、HMI23を介してオペレータによりなされる。
【0070】
前記照射パターン(ステップS11、ステップS13の照射パターン)をメモリ25に記憶する旨が選択された場合には、前記照射パターンをメモリ25に記憶して(S17)動作を終了し、前記照射パターン(ステップS11、ステップS13の照射パターン)をメモリ25に記憶する旨が選択されない場合には、そのまま動作を終了する。
【0071】
ステップS1において、メモリ25に格納してある照射パターンを利用するか旨の選択がされた場合には、図6に示すような表を、HMI23に表示する(S19)。
【0072】
続いて、HMI23を介してオペレータにより、照射パターンが選択された場合(図6のNo.の下の数字のいずれかが押された場合)には(S21)、図5に示すような照射パターン(押された数字に対応する照射パターン)をHMI23に表示する(S23)。
【0073】
続いて、ステップS23で表示された照射パターンに修正があるか否かを判断する(S25)。この判断もHMI23を介してオペレータにより行われる。ステップS25で修正がない場合には、ステップS7に移行し、ステップS25で修正があるとされた場合には、HMI23を介してオペレータが照射パターンの修正を行い(S27)、その後、ステップS7に移行する。
【0074】
転写装置1において、紫外線の強度を初め弱くその後強くして転写を行えば、紫外線ランプ9に近い部位(被成形層W5の上側の部位;基材W3から離れた側の部位)が先に硬化してしまう事態を回避することができ、転写しているときに、被成形層W5がこの厚さ方向でほぼ同時に硬化することになり、転写後における被成形品W1の変形を防止することができ、正確な転写を行うことができる。
【0075】
なお、転写装置1によれば、紫外線の強度を初め弱くその後強くするパターンだけでなく、その他のパターンで紫外線強度が変化するように、適宜紫外線の強度を変化させることができるので、被成形品W1の性質に合致した紫外線の照射を行うことができ、多様な種類の微細転写において正確な転写を行うことができる。
【0076】
また、転写装置1によれば、押圧するときの押圧力をたとえば一定にする等、押圧力をロードセル17を用いて適宜制御することができるので、型M1の被成形品W1に対する相対的な位置を検出して押圧をする場合に比べて、より正確な押圧力で転写のための押圧をすることができ、前述した紫外線強度を変化させることと相俟って、一層的確な転写を行うことができる。
【0077】
また、転写装置1によれば、紫外線の照射を開始するタイミングを適宜変えることできるので、さらに正確な転写を行うことができる。
【0078】
たとえば、硬化前における粘度が著しく低い紫外線硬化樹脂の場合には、押圧前に紫外線を照射することにより、紫外線硬化樹脂の粘度を若干高めておいてから照射を行うことができ、粘度が著しく低い紫外線硬化樹脂が押圧によって押圧部位から流れ出てしまう等の不具合を回避することができる。
【0079】
また、たとえば、硬化前における粘度がある程度高い紫外線硬化樹脂の場合には、押圧を開始してから所定の時間が経過したときに紫外線の照射を開始することにより、型の微細な転写パターンに紫外線硬化樹脂が十分になじんでから紫外線硬化樹脂の硬化が始まり、正確な転写を行うことができる。
【0080】
さらに、転写装置1によれば、メモリ25を備えているので、オペレータは、メモリ25に記憶されている各変化パターンの中から必要な変化パターンを選択すればよく、転写装置1の使用が容易になっている。
【0081】
また、転写装置1によれば、被成形品W1への1回の転写で照射される紫外線のエネルギー量を表示するようになっているので、被成形品W1への1回の転写で必要な紫外線の量をオペレータが確認するこができ、過不足のない状態で被成形品W1に紫外線を照射することができ、転写の失敗を回避することができる。
【0082】
また、転写装置1によれば、紫外線の強度の変化パターンを、図5の表示A1に示すようなグラフを用いて表示するようになっているので、紫外線の強度の変化パターンをオペレータが視覚的に理解することができ、転写の失敗を一層回避することができる。
【0083】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る転写装置は、紫外線エネルギーの総和量をまず決めてから、紫外線の強度を変更するようになっている点が、第1の実施形態に係る転写装置1と異なり、その他の点は、第1の実施形態に係る転写装置1とほぼ同様に構成されほぼ同様の効果を奏する。
【0084】
すなわち、第2の実施形態に係る転写装置は、被成形品W1への1回の転写で紫外線ランプ9から照射されるエネルギー量(エネルギーの総和量)を入力する入力手段(たとえばHMI23)と、前記入力手段で入力されたエネルギー量を分配することによって、被成形品W1に照射する紫外線の強度の変化パターンを設定する設定手段(たとえばHMI23やコントローラ19)とを有する。
【0085】
前記設定手段について例を掲げて説明する。
【0086】
たとえば、前記入力手段でエネルギー量(被成形品W1への1回の転写で紫外線ランプ9から照射されるエネルギー量)ST1が入力されているものとする。また、図5に示すように、前記入力手段を用いて、オペレータにより、4つのステップTD1、TD2、TD3、TD4が設定されているものとする。前記各ステップの時間は、互いが等しくてもよいし、互いが異なっていてもよい。4つのステップ毎に、前記入力手段を用いて、オペレータが紫外線の強度を設定する。この設定により、1つ目のステップTD1では、時間として15秒が入力され紫外線の強度として25%が入力され、2つ目のステップTD2では、時間として20秒が入力され紫外線の強度として40%が入力され、3つ目のステップTD3では、時間として25秒が入力され紫外線の強度として70%が入力され、4つ目のステップTD4では、時間として18秒が入力され紫外線の強度として20%が入力されたものとする。なお、100%の紫外線強度SDmax(図5の校正「0.1」)は、予め入力されているものとする。
【0087】
ここで、前記設定手段は、4つのステップにおけるエネルギー量の総和ST2(SDmax×0.25×TD1+SDmax×0.4×TD2+SDmax×0.7×TD3+SDmax×0.2×TD4)を求める。
【0088】
そして、エネルギーの総和ST2とエネルギー量ST1とを比較し、エネルギーの総和ST2とエネルギー量ST1とが、互いに異なる場合には、エネルギーの総和ST2を修正する。
【0089】
この修正について説明する。
【0090】
エネルギーの総和ST2>エネルギー量ST1の場合には、前記各ステップにおける紫外線強度の%の値や各ステップの時間を相似形的に減少させて、エネルギーの総和ST2=エネルギー量ST1になるようにする。すなわち、たとえば、エネルギーの総和ST2が、エネルギー量ST1の2倍の値である場合には、各ステップにおける紫外線強度の%を半分にするような修正をする。つまり、ステップTD1における%の値を12.5%にし、ステップTD2における%の値を20%にし、ステップTD3における%の値を35%にし、ステップTD4における%の値を10%にするような修正を行う。または、各ステップにおける時間を半分にするような修正をする。すなわち、たとえば、ステップTD1の時間を7.5秒にし、ステップTD2の時間を10秒にし、ステップTD3の時間を12.5秒にし、ステップTD3の時間を9秒にするような修正を行う。または、ステップTD1における%の値を17.7(25÷2の平方根)%にすると共に時間を10.6(15÷2の平方根)秒にするような修正を、各ステップTD2、TD3、TD4で同様に行う修正をする。
【0091】
一方、エネルギーの総和ST2<エネルギー量ST1の場合には、前記各ステップのおける%の値や各ステップの時間を相似形的に増加させて、エネルギーの総和ST2=エネルギー量ST1になるようにする。なお、紫外線強度の%の値が100%を超えてしまった場合には、アラームを出してオペレータに修正を促し、または、紫外線強度の%の値が100%を超えたステップにおいて紫外線の強度を100%にしたまま、時間を延ばす修正を自動的に行うようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施形態に係る転写装置の概略構成を示す図である。
【図2】転写装置の制御系の概略構成を示すブロック図である。
【図3】転写装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】転写装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】HMIに表示される画面の例を示す図である。
【図6】メモリに記憶されている紫外線の変化パターンを示す図である。
【符号の説明】
【0093】
1 転写装置
9 紫外線ランプ
17 ロードセル
19 コントローラ
23 HMI
25 メモリ
M1 型
W1 被成形品
W3 基材
W5 被成形層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写用の型に形成されている微細な転写パターンを被成形品に転写する転写装置において、
前記型で前記被成形品を押圧する押圧手段と;
前記被成形品に照射するための所定の波長の電磁波を発生する発生装置と;
前記被成形品に照射される前記所定の波長の電磁波の照射エネルギー量が変化するように、前記発生装置を制御する制御手段と;
を有することを特徴とする転写装置。
【請求項2】
請求項1に記載の転写装置において、
前記制御手段は、前記押圧手段による押圧力を制御する手段であることを特徴とする転写装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の転写装置において、
前記制御手段は、前記押圧手段が押圧を開始する時から所定の時間だけ遡った時刻、または、前記押圧手段が押圧を開始した時、または、前記押圧手段が押圧を開始した時から所定の時間が経過した時刻から、前記所定の波長の電磁波の照射が開始されるように前記発生装置を制御する手段であることを特徴とする転写装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の転写装置において、
前記被成形品に照射される前記所定の波長の電磁波の照射エネルギー量の変化パターンを入力する入力手段を有し、
前記制御手段は、前記入力手段で入力された変化パターンに基づいて前記被成形品に照射される前記所定の波長の電磁波の照射エネルギー量が変化するように、前記発生装置を制御する手段であることを特徴とする転写装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の転写装置において、
前記被成形品に照射する前記所定の波長の電磁波の照射エネルギー量の変化パターンを、複数記憶している記憶手段と;
前記記憶手段が記憶している各変化パターンのうちの1つの変化パターンを選択する選択手段と;
を有し、前記制御手段は、前記選択手段で選択された変化パターンに基づいて、前記被成形品に照射される前記所定の波長の電磁波の照射エネルギー量が変化するように、前記発生装置を制御する手段であることを特徴とする転写装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の転写装置において、
前記被成形品への1回の転写で前記照射装置から照射されるエネルギー量を表示する第1の表示手段を有することを特徴とする転写装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の転写装置において、
前記被成形品に照射する前記所定の波長の電磁波の照射エネルギー量の変化パターンを、グラフを用いて表示する第2の表示手段を有することを特徴とする転写装置。
【請求項8】
転写用の型に形成されている微細な転写パターンを被成形品に転写する転写方法において、
前記型で前記被成形品を押圧する押圧工程と;
前記被成形品に照射する前記所定の波長の電磁波の照射エネルギー量を変化させつつ照射する照射工程と;
を有することを特徴とする転写方法。
【請求項9】
請求項8に記載の転写方法において、
前記押圧工程は、押圧力をほぼ一定に保ったまま、押圧を行う工程であることを特徴とする転写方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−73949(P2008−73949A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−255726(P2006−255726)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】