説明

軽量断熱キャスタブル

【課題】本発明の目的は、1000℃〜1200℃の中間温度域で高強度を発揮することができる軽量断熱キャスタブルを提供することにある。
【解決手段】本発明の軽量断熱キャスタブルは、粒径3mm未満のCaO・6Alを30〜50質量%、アルミナセメントを40〜60質量%及び粒径45μm未満のアルミナ微粉を10〜20質量%含有してなる耐火原料に対して外掛けで0.01〜1.0質量%の増粘剤を配合してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種炉蓋、加熱炉、焼却炉などに使用される軽量断熱キャスタブルに関し、更に詳細には、1000℃〜1200℃の中間温度域で高強度を発揮する軽量断熱キャスタブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、世界規模でのエネルギー消費量の増加に伴う地球環境問題がクローズアップされ、世界各国がCO排出削減に取り組まなければならない状況になってきている。高熱を扱う各種窯炉も例外ではなく、高い断熱性が求められている。また、各種窯炉に安定した施工体を施工するために、各種耐火物に高い強度も求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、主組成がCaO・6Alであるアルミナ−石灰クリンカーと、5〜15質量%の高アルミナセメントからなる溶融金属容器の内張材が開示されている。特許文献1によれば、内張り材にAlとCaOが共存しているために、内張り材とスラグが接触すると、CaOが溶け出してスラグの融点は低い方向に向かい、内張り材の耐食性を低下することなく、スラグのビルドアップを防止できるとしている。
【0004】
また、特許文献2には、CA6(CaO・6Al)組成の六方晶系結晶のポーラスな断熱骨材を骨材とし、結合剤として水硬性アルミナを添加した断熱耐火組成物において、酸化物換算の化学組成でSiOが全体組成の0.5質量%未満であることを特徴とする断熱耐火組成物が開示されている。ここで、水硬性アルミナは、施工雰囲気温度が高い場合の乾燥後の強度物性値低下を抑制するために用いられている。
【0005】
更に、特許文献3には、少なくとも軽量耐火性原料、フッ化カルシウム及び結合材からなるアルミニウム及びアルミニウム合金溶湯用軽量キャスタブル耐火物において、前記軽量耐火性原料がCaO・6Al質軽量骨材であり、前記軽量キャスタブルの固形分を100質量%として前記フッ化カルシウムを3〜30質量%含有することを特徴とするアルミニウム及びアルミニウム合金溶湯用軽量キャスタブル耐火物が開示されている。特許文献3によれば、フッ化カルシウムを添加することにより地金離れが良好になり、付着物の成長や溶湯の汚染を防止できるとしている。
【0006】
また、特許文献4には、かさ比重1.0以下の軽量耐火性骨材、平均粒径75μm以下のアルミナ微粉及びアルミナセメントからなる耐火組成物と、分離防止剤とを水で混練してなるポンプ圧送用断熱キャスタブル耐火物であって、前記軽量耐火性骨材のうち90質量%以上がAlであり、前記分離防止剤がウエランガム及び/又はキサンタンガムであるとともにその添加量が前記耐火組成物100質量%に対して0.01〜0.1質量%(外割)であり、前記軽量耐火性骨材と、前記アルミナ微粉と、前記アルミナセメントの合計に対する前記軽量耐火性骨材の容積配合比が0.65〜0.85であることを特徴とするポンプ圧送用断熱キャスタブル耐火物が開示されている。なお、特許文献4の[0024]段落には、アルミナセメントの含有量は耐火組成物100質量%に対してCaO換算量で5〜10質量%が好ましい旨の記載がある。
【0007】
更に、特許文献5には、粒径1mm以上の粗粒域に、CaO・6Alを主成分とした多孔質な断熱性骨材が該粗粒域100質量%に占める割合で65質量%以上配合され、粒径75μm未満の微粒域には、アルミナ質原料及びアルミナセメントが該微粒域100質量%に占める割合で合計65質量%以上配合され、かつ該微粒域の化学成分構成がCaO/Alの質量比=0.03〜0.13なる条件を満たす耐火性粉体組成物と、この耐火性粉体組成物100質量%に対する外掛けで30〜50質量%の量の施工水とを含んでなる断熱キャスタブル耐火物が開示されている。また、特許文献5の[0025]段落には、アルミナセメントの割合が耐火性粉体組成物100質量%に占める割合で、35質量%以下であることが好ましい旨の記載がある。
【0008】
また、非特許文献1には、SLA−92[アルコア(Alcoa)社製:CaO・6Alよりなる高純度微細多孔質軽量断熱骨材]70〜93%、セメント5〜30%の配合を有する高温断熱キャスタブルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平3−159967号公報
【特許文献2】特開2002−179471号公報
【特許文献3】特許第4361048号公報
【特許文献4】特許第4464303号公報
【特許文献5】特開2009−203090号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】UNITECR '99 181〜186頁 "Long Term High Temperature Stability of Microporous Calcium Hexaluminate Based Insulating Materials"
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の内張り材に使用されている溶融金属容器の内張材は、アルミナセメントの配合割合が5〜15質量%と少ないため、1000℃〜1200℃の温度域での強度が不十分である。また、特許文献2に記載の断熱耐火組成物は、結合剤として水硬性アルミナが使用されており、1000℃〜1200℃の温度域での強度が不充分である。更に、特許文献3に記載されたアルミニウム及びアルミニウム合金溶湯用軽量キャスタブル耐火物には、フッ化カルシウムが配合されており、フッ素が検出される恐れがあり、フッ素を嫌う用途には使用することができない。また、特許文献4に記載されたポンプ圧送用断熱キャスタブル耐火物は、ポンプ圧送施工時の沈降防止のために、分離防止剤(ウエラガム、キサンタンガム)が配合されており、このキャスタブル耐火物を流し込み施工に使用すると、保形性が高過ぎてキャスタブル耐火物の平滑性が不充分となり、施工に不具合を生じる恐れがある。更に、特許文献5に記載された断熱キャスタブル耐火物では、セメント量が35%以下で設定されているため、強度が不足する。また、比較例としてアルミナセメントを45%配合した例が挙げられているが、アルミナ微粉の配合量が少ないために、1000〜1200℃の中間温度域での強度を改善することができない。また、非特許文献1に記載された断熱キャスタブル耐火材では、その配合例におけるセメントの配合量が5〜30%程度と少なく、1000℃〜1200℃の中間温度域で十分な強度を発揮することができない。
【0012】
従って、本発明の目的は、1000℃〜1200℃の中間温度域で高強度を発揮することができる軽量断熱キャスタブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
即ち、本発明の軽量断熱キャスタブルは、粒径3mm未満のCaO・6Alを30〜50質量%、アルミナセメントを40〜60質量%及び粒径45μm未満のアルミナ微粉を10〜20質量%含有してなる耐火原料に対して外掛けで0.01〜1.0質量%の増粘剤を配合してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、1000℃〜1200℃の中間温度域で高強度を発揮する軽量断熱キャスタブルを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の軽量断熱キャスタブルには、粒径3mm未満のCaO・6Alを30〜50質量%使用する。ここで、CaO・6Alの粒径が3mm以上となると、施工体の強度が不足するため好ましくない。なお、CaO・6Alは、好ましくは3〜1mmの範囲の粒子を20〜40質量%配合することが好ましい。なお、CaO・6Alの配合量が50質量%を超えると、施工体の強度が不足するため好ましくなく、また、30質量%未満であると、断熱効果が発現しないため好ましくない。なお、CaO・6Alの配合量は、好ましくは35〜45質量%の範囲内である。
【0016】
また、本発明の軽量断熱キャスタブルには、アルミナセメントを40〜60質量%使用する。ここで、アルミナセメントの配合量が60質量%を超えると、施工体が収縮することがあるため好ましくなく、また、40質量%未満であると、1000℃〜1200℃の中間温度域で施工体に十分な強度を付与することができないために好ましくない。なお、アルミナセメントの配合量は、好ましくは40〜55質量%の範囲内である。なお、アルミナセメントの配合量は、CaO換算量で6〜17質量%の範囲内に相当する。
【0017】
更に、本発明の軽量断熱キャスタブルには、粒径45μm未満のアルミナ微粉を10〜20質量%使用する。ここで、アルミナ微粉の粒径が45μm以上となると、微粉としての効果が小さく、施工体に強度を付与できないために好ましくない。
【0018】
なお、本発明の軽量断熱キャスタブルには、上記粒径3mm未満のCaO・6Al、アルミナセメント及び粒径45μm未満のアルミナ微粉に加えて、アルミニウム粉末、アルミニウム合金粉末、発泡剤、金属ファイバー、有機ファイバー、セラミックファイバー、縮合燐酸塩や、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリカルボン酸カルシウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩やそれらの重合体又は共重合体などの分散剤のようなその他の成分を配合することもできる。これらの成分の配合量は0.01〜1.0質量%の範囲内が好ましい。
【0019】
また、本発明の軽量断熱キャスタブルには、増粘剤を配合する。増粘剤としては、例えばグアーガム誘導体、メチルセルロース系のような天然系増粘多糖類、アクリル樹脂、アクリルエマルション、デキストリン、含水珪酸マグネシウム、ベントナイト等を挙げることができ、メチルセルロース系増粘剤を使用することが好ましい。増粘剤の配合量は、上記成分の合計量に対して外掛けで0.01〜1.0質量%、好ましくは0.1〜0.5質量%の範囲内である。増粘剤の配合量が外掛けで0.01質量%未満であると、施工時に充分な流動性を与えることができないために好ましくなく、また、1.0質量%を超えると、粘性が高くなりすぎるために好ましくない。
【0020】
本発明の軽量断熱キャスタブルを施工する際には、所定量の水を軽量断熱キャスタブルに添加、配合して混練する。水の配合量は、上記粒径3mm未満のCaO・6Al、アルミナセメント及び粒径45μm未満のアルミナ微粉並びに増粘剤、その他の成分の合計量に対して外掛けで40〜60質量%、好ましくは50〜60質量%の範囲内である。水の配合量が40質量%未満であると、施工性が悪化するため好ましくなく、また、60質量%を超えると、施工体の密度が低くなり、強度が低下するために好ましくない。
【実施例】
【0021】
本発明の軽量断熱キャスタブルを更に説明する。
以下の表1に記載する配合割合にて本発明品及び比較品の配合物を作製し、得られた配合物に所定量の水を添加し、万能ミキサーにて混練した後、40mm×40mm×160mmの型枠に流し込み、硬化、脱枠後、110℃で24時間乾燥して供試体を得た。
得られた供試体について、線変化率、曲げ強さ、かさ比重並びに熱伝導率を次に示す方法により測定した:
線変化率:JIS R2554に準じ、1000℃焼成後の供試体について測定した;
曲げ強さ:JIS R2553に準じ、1000℃焼成後の供試体について測定した;
かさ比重:JIS R2205に準じ、焼成後の供試体について測定した;
熱伝導率:115×114×65mmの供試体を1000℃で3時間焼成した後、熱線法により測定した。
得られた結果を表1に併記する。
【0022】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の軽量断熱キャスタブルは、各種炉蓋、加熱炉、焼却炉などに使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径3mm未満のCaO・6Alを30〜50質量%、アルミナセメントを40〜60質量%及び粒径45μm未満のアルミナ微粉を10〜20質量%含有してなる耐火原料に対して外掛けで0.01〜1.0質量%の増粘剤を配合してなることを特徴とする軽量断熱キャスタブル。
【請求項2】
更に、アルミニウム粉末、アルミニウム合金粉末、発泡剤、金属ファイバー、有機ファイバー、セラミックファイバー、縮合燐酸塩、ポリアクリル酸又はポリカルボン酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩又はそれらの重合体又は共重合体から選択されるその他の成分を含有する、請求項1記載の軽量断熱キャスタブル。
【請求項3】
水の配合量が外掛けで40〜60質量%である、請求項1または2記載の軽量断熱キャスタブル。

【公開番号】特開2012−72014(P2012−72014A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217821(P2010−217821)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000001971)品川リフラクトリーズ株式会社 (112)
【Fターム(参考)】