説明

農作業機

【課題】圃場の土質に対応でき、土質に応じた適切な作業ができる農作業機を提供する。
【解決手段】農作業機1は、機体7,21と、機体7,21に上下方向に回動可能に設けた整地体11,23とを備える。農作業機1は、機体7,21に設けた引掛受け体32,51と、整地体11,23に設けた引掛体34,52とを備える。機体7,21には、引掛体34,52の移動を規制する規制状態と引掛体34,52の移動を許容する許容状態とに切換え可能な規制体36,54を回動可能に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場の土質に対応でき、土質に応じた適切な作業ができる農作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばトラクタに連結される機体と、機体に回転可能に設けられたロータリ式の耕耘体と、機体に上下方向に回動可能に設けられた整地体(均平板)と、機体から整地体にわたって設けられた吊持アーム、吊持板、吊持杆およびスプリング等からなる吊持手段とを備えた代掻き機等の農作業機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−255209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の農作業機では、圃場によってはその土質に対応しきれず、適切な作業ができないおそれがある。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、圃場の土質に対応でき、土質に応じた適切な作業ができる農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の農作業機は、機体と、この機体に上下方向に回動可能に設けられた整地体と、前記機体に設けられた引掛受け体と、前記整地体に設けられ、前記引掛受け体に引っ掛かる引掛体と、前記機体に設けられ、前記引掛体の移動を規制する規制状態と前記引掛体の移動を許容する許容状態とに切り換えられる規制体とを備えるものである。
【0006】
そして、引掛体の移動を規制する規制状態と引掛体の移動を許容する許容状態とに切り換えられる規制体を備えるため、圃場の土質に対応でき、土質に応じた適切な作業が可能である。
【0007】
請求項2記載の農作業機は、請求項1記載の農作業機において、規制体は、引掛体の許容移動量が異なる複数の許容状態に切換え可能となっているものである。
【0008】
そして、規制体は、引掛体の許容移動量が異なる複数の許容状態に切換え可能となっているため、土質に応じたより一層適切な作業が可能である。
【0009】
請求項3記載の農作業機は、請求項1または2記載の農作業機において、走行車に連結される作業機本体部と、この作業機本体部の左右方向両端部に回動可能に設けられた左右一対の折畳作業部とを具備し、引掛受け体、引掛体および規制体が、前記作業機本体部の左右方向両端部および前記各折畳作業部の左右方向両端部にそれぞれ設けられているものである。
【0010】
そして、引掛受け体、引掛体および規制体が、作業機本体部の左右方向両端部および各折畳作業部の左右方向両端部にそれぞれ設けられているため、全幅にわたって安定した作業が可能である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、引掛体の移動を規制する規制状態と引掛体の移動を許容する許容状態とに切り換えられる規制体を備えるため、圃場の土質に対応でき、土質に応じた適切な作業ができる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、規制体は、引掛体の許容移動量が異なる複数の許容状態に切換え可能となっているため、土質に応じたより一層適切な作業ができる。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、引掛受け体、引掛体および規制体が、作業機本体部の左右方向両端部および各折畳作業部の左右方向両端部にそれぞれ設けられているため、全幅にわたって安定した作業ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の農作業機の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0015】
図1ないし図3において、1は3分割の折畳み式農作業機で、この農作業機1は、走行車であるトラクタ(図示せず)に連結して使用する牽引式の代掻き機である。そして、農作業機1は、トラクタの後部に連結された状態で、トラクタの走行により圃場を前方に移動しながら、代掻作業および土引作業を選択的に行うものである。
【0016】
農作業機1は、トラクタの後部の3点リンク部(作業機昇降装置)に連結される左右方向長手状の作業機本体部(中央作業部)2と、この作業機本体部2の左右方向両端部に回動中心軸体(支点軸)3を介して上下方向に回動可能に設けられ回動中心軸体3を中心とする回動により折畳状態と展開状態とに切り換えられる左右一対の折畳作業部(延長作業部)4と、この各折畳作業部4を回動中心軸体3を中心として回動させる駆動手段である油圧シリンダ5とを具備している。
【0017】
作業機本体部2は、トラクタに連結される機体7を備えている。この機体7のチェーンケース部8およびブラケット部(図示せず)間には、入力軸9側から伝動手段を介して動力を受けて回転しながら耕耘作業をするロータリ式の耕耘体(図示せず)が回転可能に設けられている。また、機体7の耕耘カバー部10の後端部には、耕耘体の後方位置で圃場面に追従するように上下方向に回動しながら整地作業をする略板状の整地体11が弾性板であるゴム板12を介して上下方向に回動可能に設けられている。
【0018】
耕耘体は、左右方向長手状の耕耘軸およびこの耕耘軸に放射状に取り付けられた耕耘爪等にて構成されている。また、整地体11は、耕耘カバー部10の後端部に取り付けられたゴム板12に上端部が取り付けられた第1整地板(均平板)13およびこの第1整地板13の下端部に上端部が回動可能に取り付けられた第2整地板(レーキ)14等にて構成されている。
【0019】
左右一対の折畳作業部4は、左右対称のもので、いずれも、作業機本体部2の回動中心軸体3にこの回動中心軸体3を中心として上下方向に回動可能に設けられた機体21を備えている。この機体21には、折畳作業部4の展開状態時に中央の作業機本体部2の耕耘体側からクラッチ手段を介して動力を受けて回転しながら耕耘作業をするロータリ式の耕耘体(図示せず)が回転可能に設けられている。また、機体21の耕耘カバー部22の後端部には、耕耘体の後方位置で圃場面に追従するように上下方向に回動しながら整地作業をする略板状の整地体23が弾性板であるゴム板24を介して上下方向に回動可能に設けられている。
【0020】
耕耘体は、左右方向長手状の耕耘軸およびこの耕耘軸に放射状に取り付けられた耕耘爪等にて構成されている。また、整地体23は、耕耘カバー部22の後端部に取り付けられたゴム板24に上端部が取り付けられた第1整地板(均平板)25およびこの第1整地板25の下端部に上端部が回動可能に取り付けられた第2整地板(レーキ)26等にて構成されている。
【0021】
そして、中央の1つの作業機本体部2の左右方向両端部および左右の2つの各折畳作業部4の左右方向両端部の計6箇所には、整地体11,23の第1整地板13,25の接地面の土への作用力の大きさを設定するための設定手段30がそれぞれ独立して設けられている。
【0022】
これら6つの設定手段30のうち、中央の作業機本体部2の左右方向両端部および各折畳作業部4の内端部(作業機本体部2側の端部)に位置する4つの設定手段30は、同一構成のものである。
【0023】
この各設定手段30は、図4および図5に示されるように、機体7の被取付部31に固設されたフック状の引掛受け体32と、整地体11の第1整地板13の被取付部33に固設され引掛受け体32に引っ掛かる軸状の引掛体34とを備えている。また、各設定手段30は、機体7の被取付部31に軸35を介して回動可能に設けられ、引掛体34を軸状の引掛受け体32とともに挟持して引掛体34の移動を規制する規制状態と引掛体34の引掛受け体32に沿った上下移動を許容する許容状態とに切り換えられる規制体36を備えている。
【0024】
引掛受け体32は、凹状受部41を有し、この凹状受部41に左右方向の軸状の引掛体34が引っ掛けられている。また、引掛受け体32の円弧状のアーム部42には複数(例えば3つ)の孔部43が形成され、回動可能な規制体36にも複数(例えば3つ)の孔部44が形成されている。そして、引掛受け体32の複数の孔部43の中から選択された1つの孔部43および規制体36の複数の孔部44の中から選択された1つの孔部44に対してボルト45が差し込まれ、このボルト45にナット46が螺合されることにより、規制体36が引掛受け体32に対して固定されて所望の状態に切り換えられる。なお、規制体36は、引掛体34の許容移動量が異なる複数、例えば2つの許容状態に切換え可能となっている。
【0025】
また、6つの設定手段30のうち、各折畳作業部4の外端部(作業機本体部2側とは反対側の端部)に位置する2つの設定手段30は、同一構成のものである。
【0026】
この各設定手段30は、図6に示されるように、機体21の側板部21aに固設された板状の引掛受け体51と、整地体23の第1整地板25に固設され引掛受け体51に引っ掛かる軸状の引掛体52とを備えている。また、各設定手段30は、機体21の側板部21aに軸53を介して回動可能に設けられ、引掛受け体51とともに軸状の引掛体52を挟持して引掛体52の移動を規制する規制状態と引掛体52の上下移動を許容する許容状態とに切り換えられる規制体54を備えている。
【0027】
引掛受け体51は、凹状受部55を有し、この凹状受部55に左右方向の軸状の引掛体52が引っ掛けられている。また、引掛受け体51には1つの孔部56が形成され、回動可能な規制体54には複数(例えば4つの)の孔部57が形成されている。そして、引掛受け体51の1つの孔部56および規制体54の複数の孔部57の中から選択された1つの孔部57に対してボルト(図示せず)が差し込まれ、このボルトにナット(図示せず)が螺合されることにより、規制体54が引掛受け体51に対して固定されて所望の状態に切り換えられる。なお、規制体54は、引掛体52の許容移動量が異なる複数、例えば3つの許容状態に切換え可能となっている。
【0028】
次に、上記一実施の形態の作用等を説明する。
【0029】
最大の作業幅で代掻作業をする場合は、左右の折畳作業部4を油圧シリンダ5で回動中心軸体3を中心として展開方向に向けて回動させて展開状態に設定する。また、圃場の土質に対応して6つの設定手段30の規制体36,54を規制状態または許容状態に設定する。
【0030】
例えば設定手段30の規制体36,54を規制状態に設定した場合には、整地体11,23の第1整地板13,25の接地面の土への作用力が比較的大きくなる。また、設定手段30の規制体36,54を許容状態に設定した場合には、整地体11,23の上方回動量が増大し、整地体11,23の第1整地板13,25の接地面の土への作用力が比較的小さくなる。そして、トラクタの走行により農作業機1を移動させると、作業機本体部2の耕耘体と折畳作業部4の耕耘体とにて耕耘作業が行なわれ、作業機本体部2の整地体11と折畳作業部4の整地体23とにて整地作業が行なわれる。
【0031】
また、例えば左右の折畳作業部4を折畳んで中央の作業機本体部2のみで代掻作業をする場合は、左右の折畳作業部4を油圧シリンダ5で回動中心軸体3を中心として折畳方向に向けて回動させて折畳状態に設定する。また、圃場の土質に対応して、作業機本体部2の両端位置の2つの設定手段30の規制体36を規制状態または許容状態に設定する。そして、トラクタの走行により農作業機1を移動させると、作業機本体部2の耕耘体にて耕耘作業が行なわれ、作業機本体部2の整地体11にて整地作業が行なわれる。
【0032】
そして、上記農作業機1によれば、引掛体34,54の移動を規制する規制状態と引掛体34,54の移動を許容する許容状態とに切り換えられる規制体36,54を備えるため、圃場ごとに異なる土質の変形に対応することができ、よって圃場の土質に応じた適切な代掻作業等ができる。しかも、規制体36,54は、引掛体34,54の許容移動量が異なる複数の許容状態に切換え可能となっているため、土質に応じたより一層適切な作業ができる。
【0033】
また、設定手段30が作業機本体部2の左右方向両端部および各折畳作業部4の左右方向両端部の計6箇所にそれぞれ独立して設定できるように設けられているため、農作業機1の全幅にわたって安定した作業ができる。
【0034】
なお、上記実施の形態では、左右一対の折畳作業部4を有する3分割の折畳み式農作業機1について説明したが、例えば左右いずれか一方のみに折畳作業部4を有するものや、折畳作業部4を有しないもの等でもよい。
【0035】
また、図4に示す4つの設定手段30と、この設定手段30とは構成が異なる図6に示す2つの設定手段30とを備えた農作業機1には限定されず、例えば6つすべてを同一構成の設定手段で構成したもの等でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の農作業機の一実施の形態の斜視図である。
【図2】同上農作業機の側面図である。
【図3】同上農作業機の背面図である。
【図4】同上農作業機の要部側面図である。
【図5】(a)は規制状態時の要部側面図、(b)は第1許容状態時の要部側面図、(c)は第2許容状態時の要部側面図である。
【図6】同上農作業機の要部側面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 農作業機
2 作業機本体部
4 折畳作業部
7,21 機体
11,23 整地体
32,51 引掛受け体
34,52 引掛体
36,54 規制体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、
この機体に上下方向に回動可能に設けられた整地体と、
前記機体に設けられた引掛受け体と、
前記整地体に設けられ、前記引掛受け体に引っ掛かる引掛体と、
前記機体に設けられ、前記引掛体の移動を規制する規制状態と前記引掛体の移動を許容する許容状態とに切り換えられる規制体と
を備えることを特徴とする農作業機。
【請求項2】
規制体は、引掛体の許容移動量が異なる複数の許容状態に切換え可能となっている
ことを特徴とする請求項1記載の農作業機。
【請求項3】
走行車に連結される作業機本体部と、
この作業機本体部の左右方向両端部に回動可能に設けられた左右一対の折畳作業部とを具備し、
引掛受け体、引掛体および規制体が、前記作業機本体部の左右方向両端部および前記各折畳作業部の左右方向両端部にそれぞれ設けられている
ことを特徴とする請求項1または2記載の農作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−158328(P2006−158328A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−356885(P2004−356885)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】