説明

農作業機

【課題】トラクタからの外部電源が不要でトラクタから下りて手作業で配線接続をする必要がない農作業機を提供する。
【解決手段】農作業機1は、トラクタ2のPTO軸6側からの動力で作動する油圧ポンプ31と、この油圧ポンプ31からの作動油で作動する油圧モータ32と、作動油を制御する制御手段51とを備える。農作業機1は、トラクタ2のPTO軸6側からの動力で作動する発電手段41と、この発電手段41による電力で作動して制御手段51をコントロールするコントローラ52とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車に連結されこの走行車の走行により移動しながら作業をする農作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば走行車であるトラクタの3点リンク部と耕耘装置等の農作業機の3点連結部との連結と同時に、トラクタ側配線(制御線或いは電力線等)と作業機側配線とを接続する配線カプラーが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−289606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような配線カプラーを用いた場合、トラクタ側配線と作業機側配線との接続に不具合が生じやすく、接続に不具合が生じた際には、作業者は、わざわざトラクタから下りて手作業でトラクタ側配線と作業機側配線とを接続しなければならない。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、走行車からの外部電源が不要で、走行車から下りて手作業で配線接続をする必要がない農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の農作業機は、走行車に連結され、この走行車の走行により移動しながら作業をする農作業機であって、流体圧ポンプと、この流体圧ポンプから吐き出される作動流体で作動する流体圧アクチュエータと、作動流体を制御する制御手段と、発電手段と、この発電手段による電力で作動して前記制御手段をコントロールするコントローラとを備えるものである。
【0007】
請求項2記載の農作業機は、走行車に連結され、この走行車の走行により移動しながら作業をする農作業機であって、流体圧ポンプと、この流体圧ポンプから吐き出される作動流体で作動する流体圧アクチュエータと、この流体圧アクチュエータによって駆動される第1作業部と、発電手段と、この発電手段による電力で作動する電気アクチュエータと、この電気アクチュエータによって駆動される第2作業部とを備えるものである。
【0008】
請求項3記載の農作業機は、請求項2記載の農作業機において、第1作業部は、流体圧アクチュエータからの動力を受けて所定方向に回転しながら耕耘作業をする耕耘手段であるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、走行車からの外部電源が不要で、走行車から下りて手作業で配線接続をする必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一関連技術に係る農作業機の概念図である。
【図2】同上農作業機の側面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る農作業機の概念図である。
【図4】本発明の他の実施の形態に係る農作業機の概念図である。
【図5】同上農作業機の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の農作業機の一関連技術を図面を参照して説明する。
【0012】
図1および図2において、1は農作業機で、この農作業機1は、走行車であるトラクタ2に連結され、このトラクタ2の走行により進行方向前方へ移動しながら耕耘整地作業をする耕耘装置である。
【0013】
農作業機1は、トラクタ2の後部の3点リンク部(3点ヒッチ部)に連結される機体3を備えている。
【0014】
機体3は、1本のトップマストおよび左右2本のロワアーム等にて構成されトラクタ2の後部の3点リンク部に連結される3点リンク部を有している。また、機体3は、左右方向略中央部に軸保持部5を有し、この軸保持部5にはトラクタ2の後部のPTO軸6にユニバーサルジョイント等のジョイントを介して連結されトラクタ2側から動力を入力する入力軸7が回転可能に設けられている。
【0015】
さらに、機体3は、左右方向両端部に側板部8を有している。これら左右両側の側板部8間には、動力を受けて所定方向に回転しながら耕耘作業をする作業手段である耕耘手段11が回転可能に設けられている。耕耘手段11は、左右両側の側板部8の下端部間に回転可能に設けられた水平状の耕耘軸12を有し、この耕耘軸12には複数の耕耘爪13が軸方向および周方向に等間隔をおいて設けられている。
【0016】
また、機体3は、耕耘手段11の上方部を覆う板状のカバー部15を有している。カバー部15の後端部には、耕耘手段11の後方で整地作業をする整地手段16が設けられている。整地手段16は、カバー部15の後端部に弾性板であるゴム板17を介して上下回動可能に設けられた第1整地体(均平板)21を有し、この第1整地体21の下端部には第2整地体(レーキ)22が上下回動可能に設けられている。機体3と第1整地体21とが第1連結手段23にて連結され、機体3と第2整地体22とが第2連結手段24にて連結されている。
【0017】
一方、農作業機1は、図1に示されるように、トラクタ2のPTO軸6側からの動力で作動する流体圧ポンプである油圧ポンプ31を備えている。油圧ポンプ31は、農作業機1の入力軸7の回転に基づいて作動して作動流体である作動油を吐き出す。また、農作業機1は、油圧ポンプ31から吐き出される作動油で作動する流体圧アクチュエータである油圧モータ32を備えている。なお、油圧ポンプ31と油圧モータ32とにて、機体3に設けられトラクタ2のPTO軸6側からの動力に基づいて耕耘手段11を駆動する第1駆動源である油圧駆動システム33が構成されている。
【0018】
また、農作業機1は、トラクタ2のPTO軸6側からの動力で作動する発電手段41を備えている。発電手段41は、例えばダイナモ或いはオルターネータ等で、農作業機1の入力軸7の回転に基づいて作動して電力を発生する。また、農作業機1は、発電手段41による電力で作動する電気アクチュエータである電動モータ42を備えている。電動モータ42は、発電手段41から供給される電力、ソーラーパネル等の追加発電手段43から供給される電力、およびバッテリ44から供給される電力によって作動する。バッテリ44は、発電手段41からの電力および追加発電手段43からの電力を貯える。なお、発電手段41と電動モータ42と追加発電手段43とバッテリ44とにて、機体3に設けられトラクタ2のPTO軸6側からの動力に基づいて耕耘手段11を駆動する第2駆動源である電気駆動システム45が構成されている。
【0019】
そして、農作業機1による作業時には、油圧駆動システム33の油圧モータ32と電気駆動システム45の電動モータ42とによって耕耘手段11が駆動される。すなわち例えば、農作業機1は、油圧モータ32の出力軸32aからの動力と電動モータ42の出力軸40からの動力とを合成して耕耘手段11を駆動する動力合成手段47を備え、この動力合成手段47からの動力で耕耘手段11の耕耘軸12が回転駆動される。
【0020】
次に、上記農作業機1の作用等を説明する。
【0021】
農作業機1をトラクタ2の後部に連結し、農作業機1をトラクタ2の走行により圃場上を移動させると、耕耘手段11の複数本の耕耘爪13によって耕耘作業が行われ、耕耘手段11の後方では第1整地体21および第2整地体22によって整地作業が行なわれる。
【0022】
この際、トラクタ2のPTO軸6側からの動力で入力軸7が回転すると、油圧ポンプ31が入力軸7の回転に基づいて作動し、油圧モータ32がその油圧ポンプ31からの作動油によって作動し、油圧モータ32の出力軸32aが回転する。また、電動モータ42が発電手段41、追加発電手段43およびバッテリ44の少なくともいずれか1つから供給される電力によって作動し、電動モータ42の出力軸40が回転する。そして、油圧モータ32の出力軸32aからの動力と電動モータ42の出力軸40からの動力とが動力合成手段47にて合成され、この合成後の動力によって耕耘手段11の耕耘軸12が回転する。
【0023】
このように農作業機1によれば、従来の農作業機とは異なり、トラクタ2からの外部電源が不要で、トラクタ2から下りて手作業で配線接続をする必要がなく、しかも、2つのアクチュエータである油圧モータ32と電動モータ42とを動力源とする耕耘手段11にて適切に耕耘作業ができる。
【0024】
また、PTO軸6側からの動力つまりPTO出力を耕耘手段11へ伝達するためのチェーンやスプロケット等の動力伝達部品が不要となり、設計自由度の向上、軽量化等を図ることができ、さらには、定格で回転するPTO軸6の出力から発生させる油圧のみの伝達と比較して、電気駆動システム45を付加することにより伝達効率の向上を図ることができる。
【0025】
次に、本発明の農作業機の一実施の形態を図3を参照して説明する。なお、図3において図1と同一符号を付した部分は、同一または相当部分を示す。
【0026】
図3に示す農作業機1は、油圧ポンプ31から吐き出される作動流体を制御する制御手段51と、発電手段41による電力で作動して制御手段51をコントロールするコントローラ52とを備えている。制御手段51は、コントローラ52からの電気信号を受信して作動油等の作動流体の流れる向きおよび流量等を制御するものである。
【0027】
そして、この図3に示す農作業機1では、トラクタ2から下りて手作業で配線接続をする必要がないばかりでなく、発電手段41やバッテリ44を電源とするコントローラ52を備えるため、制御手段51による作動流体の制御によって耕耘手段11或いは折畳式農作業機の延長作業部等の作業手段を任意に駆動させることができる。
【0028】
次に、本発明の農作業機の他の実施の形態を図4および図5を参照して説明する。なお、図4および図5において図1および図2と同一符号を付した部分は、同一または相当部分を示す。
【0029】
図4および図5に示す農作業機1は、トラクタのPTO軸に接続する入力軸の代わりに原動機であるエンジン61を備え、このエンジン61側からの動力で油圧ポンプ31および発電手段41が作動するようになっている。図5に示されるように、エンジン61の出力軸62に回転体63が固着され、この回転体63と油圧ポンプ31の入力軸64に固着された第1回転体65とに第1無端体66が掛け渡されている。また、発電手段41の入力軸67に回転体68が固着され、この回転体68と油圧ポンプ31の入力軸64に固着された第2回転体69とに第2無端体70が掛け渡されている。
【0030】
また、この農作業機1は、トラクタ2の3点リンク部に連結される中央作業部71と、この中央作業部71の左右方向両端部に回動軸を中心として回動可能に設けられ一方向への回動により折畳み非作業状態になり他方向への回動により展開作業状態になる左右の延長作業部72とを備えた3分割式の折畳み耕耘装置である。
【0031】
中央作業部71は、トラクタ2の後部の3点リンク部(3点ヒッチ部)に連結される機体73を備えている。機体73には、所定方向に回転しながら耕耘作業をする耕耘手段(第1作業部)74が回転可能に設けられている。耕耘手段74は、耕耘軸75およびこの耕耘軸75に放射状に取り付けられた耕耘爪76等にて構成され、油圧ポンプ31から吐き出される作動流体で作動する油圧モータ32によって駆動される。また、機体73には、耕耘手段74の後方で整地作業をする整地手段81が設けられている。整地手段81は、第1整地体(均平板)82およびこの第1整地体82の下端部に回動可能に取り付けられた第2整地体(レーキ)83等にて構成されている。さらに、機体73には、中央作業部71に対して延長作業部(第2作業部)72を上下方向に回動させる電気アクチュエータである電動油圧シリンダ42aが設けられている。
【0032】
延長作業部72は、中央作業部71の機体73の左右方向端部に回動可能に取り付けられた延長機体85を備えている。延長機体85には、延長作業部72の展開作業状態時に中央作業部71の作業幅を延長する延長耕耘手段およ延長整地手段87がそれぞれ設けられている。延長耕耘手段は、耕耘軸およびこの耕耘軸に放射状に取り付けられた耕耘爪等にて構成され、中央作業部71の耕耘手段側からの動力で駆動される。延長整地手段87は、第1整地体(均平板)88、この第1整地体88の下端部に回動可能に取り付けられた第2整地体(レーキ)89、および第2整地体89の外端部に回動可能に取り付けられた延長レーキ90等にて構成されている。延長レーキ(第2作業部)90は、ワイヤ91等を介して電気アクチュエータである電動モータ42bに接続され、この電動モータ42bにって駆動される。なお、電動油圧シリンダ42aおよび電動モータ42bにはそれぞれコントローラ92,93が接続されている。
【0033】
そして、この図4および図5に示す農作業機1では、トラクタ2からの外部電源が不要で、トラクタ2から下りて手作業で配線接続をする必要がなく、また、油圧モータ32で耕耘手段74を適切に回転でき、電動油圧シリンダ42aで延長作業部72を適切に回動でき、電動モータ42bで延長レーキ90を適切に回動できる。
【0034】
なお、油圧ポンプ31および発電手段41がトラクタ2のPTO軸6側からの動力つまりPTO出力で作動する構成等には限定されず、例えば油圧ポンプおよび発電手段が圃場側から受ける力で回転するゲージ輪等の接地輪側からの動力で作動する構成や、またエンジン等の原動機側からの動力で作動する構成等でもよい。
【0035】
また、発電手段を太陽光により発電するソーラーパネルにて構成したり、発電手段を油圧ポンプ等の流体圧ポンプからの作動流体で作動させるようにしてもよい。
【0036】
さらに、発電手段による電力で作動する電動モータ等の電気アクチュエータが、発電手段からの電力を貯えるバッテリからのみ電力供給を受けるようにしてもよい。
【0037】
また、流体圧アクチュエータや電気アクチュエータによって駆動される作業手段等は、耕耘作業をする耕耘手段11には限定されず、例えば畦塗り作業をするものや溝堀作業をするもの等でもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 農作業機
2 走行車であるトラクタ
31 流体圧ポンプである油圧ポンプ
32 流体圧アクチュエータである油圧モータ
41 発電手段
42a 電気アクチュエータである電動油圧シリンダ
42b 気アクチュエータである電動モータ
51 制御手段
52 コントローラ
72,90 第2作業部
74 第1作業部である耕耘手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車に連結され、この走行車の走行により移動しながら作業をする農作業機であって、
流体圧ポンプと、
この流体圧ポンプから吐き出される作動流体で作動する流体圧アクチュエータと、
作動流体を制御する制御手段と、
発電手段と、
この発電手段による電力で作動して前記制御手段をコントロールするコントローラと
を備えることを特徴とする農作業機。
【請求項2】
走行車に連結され、この走行車の走行により移動しながら作業をする農作業機であって、
流体圧ポンプと、
この流体圧ポンプから吐き出される作動流体で作動する流体圧アクチュエータと、
この流体圧アクチュエータによって駆動される第1作業部と、
発電手段と、
この発電手段による電力で作動する電気アクチュエータと、
この電気アクチュエータによって駆動される第2作業部と
を備えることを特徴とする農作業機。
【請求項3】
第1作業部は、流体圧アクチュエータからの動力を受けて所定方向に回転しながら耕耘作業をする耕耘手段である
ことを特徴とする請求項2記載の農作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−162039(P2010−162039A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60191(P2010−60191)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【分割の表示】特願2005−174839(P2005−174839)の分割
【原出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】