説明

農作物の等級判別装置

【課題】農作物の等級をより正確に判別する。
【解決手段】農作物Aの内側の良否と農作物Aの外側の良否とを総合して等級を判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作物の等級を判別する判別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の農作物の等級判別に関連する先行技術文献としては下記のものがある。(特許文献1〜特許文献3参照)
これらのものは、基本的には、農作物に軟エックス線を照射することによってこの農作物内の「す」を発見して農作物の良否を判定するものである。
【特許文献1】 特開昭52−145154号
【特許文献2】 特開昭62−273087号
【特許文献3】 特開平3−68846号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、農作物には根菜類や青物類さらには果物類等があり、農作物の種類によっては、元々空洞や隙間を有するものもあるため、単に「す」を発見するという行為だけで、農作物の良否の判定を行うのは不完全である。
また、農作物の良否判定をするためには、前記「す」だけではなく、農作物内部の中腐れ、中傷等の発見、外観における大きさ・形状・傷の有無等の発見も、より正確な良否の判定を行うのに必要なものである。
【0004】
そこで、本発明は、農作物の等級をより正確に判別することを課題とし、この課題を解決する農作物の等級判別装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために本発明が採用した技術的手段は、軟エックス線の照射部および受光部を備えた内側検出部と、当該内側検出部による検出結果を画像処理する画像処理部とを備え、前記画像処理部は、処理された画像を任意に設定される範囲内において農作物内側の良否を判定するとともに、処理される画像の輪郭から農作物外側の良否を判定し、さらに、前記設定される範囲の大きさ・形状・位置を可変可能にしたことである。(請求項1)
本発明で云う農作物は、根菜類や青物類さらには果物類等のすべてを含む。
また、農作物内側の良否の判定は、前記農作物内部の中腐れ、中傷、芽の有無、密度等、および農作物外側の形状、大きさ、傷の有無、芽の有無等を総合して判定される。
また、処理された画像の任意に設定される範囲は、画像処理された農作物の画像の範囲で任意に特定する。
【0006】
前記農作物内側の良否の判定は、たとえば、処理された画像の濃淡を検出することにより行われ、当該濃淡は、農作物内側の密度を示すことにより行うことが挙げられる。(請求項2)
また、前記農作物外側の良否の判定は、たとえば、前記処理される画像の輪郭の扁平率と、前記画像処理部であらかじめ記憶された扁平率との比較により行うことが挙げられる。(請求項3)
また、前記農作物外側の良否の判定は、少なくとも異なる2方向から農作物の外観を撮像する撮像部を備え、当該撮像部の撮像データから前記画像処理部が農作物の体積を算定することで行うことが挙げられる。(請求項4)
【発明の効果】
【0007】
本発明の農作物の等級判別装置によれば、農作物内側と農作物外側を検出し、処理された画像から総合的に農作物の良否を判定するとともに、検出する範囲を任意に設定することによって、より正確な農作物の等級を判別することができる。
また、請求項2の発明によれば、農作物内側の密度を示し、その密度から各種判定を行うことができる。
また、請求項3の発明によれば、扁平率を比較することによって、農作物の外観形状を含む外側の良否を判定することができる。
また、請求項4の発明によれば、農作物の体積を算定することによって、農作物の大きさを判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図1および図2に基づいて説明する。
本形態の等級判別装置1は、農作物Aの内側検出部2と、画像処理部3と、農作物Aを運搬するコンベア4とを備えている。
また、等級判別装置1は、農作物Aの2方向から当該農作物Aの外観を撮像する撮像部23を備えている。
【0009】
内側検出部2は、軟エックス線の照射部21と、当該照射部からの軟エックス線を受光する受光部22とを備えている。
照射部21は、前記コンベア4の表面側に設けられ、受光部22は、コンベア4の裏面側に前記照射部21と対向させて設けられている。
【0010】
照射部21は、農作物A上から受光部22に向けて、農作物Aの輪郭を含み、農作物Aを横断するように軟エックス線を照射する。
また、照射部21は、コントローラ5によって適正に軟エックス線が照射されるように制御されている。
なお、照射部21が照射する軟エックス線は、電離放射線障害防止法第46条に規定するエックス線作業者を必要としないものであり、また、エックス線による人体への影響も0に近いものである。
【0011】
受光部22は、移動する農作物Aを設定された一定ピッチごとに線視野で撮像するラインセンサカメラと称されるものである。
また、受光部22で撮像される撮像データは、検出感度等を調整可能な機能を含むコントローラ6によって画像処理部3へ送られて画像処理される。
【0012】
撮像部23は、前記コンベア4の表面側に設けられた上方撮像部23Aと、上方撮像部23Aと直交して設けられた側方撮像部23Bとからなり、農作物Aの外側を上方および側方から撮像し、撮像される撮像データは、撮像感度を調整可能な機能を含むコントローラ7によって画像処理部3へ送られて画像処理される。
【0013】
画像処理部3は、前記内側検出部2と電気的に配線され、当該内側検出部2および撮像部23で検出された撮像データを画像処理して、農作物Aの内側の良否と、農作物Aの外側の良否を総合的に判定する。
画像処理部3には、撮像データを画像処理するプログラムが記憶されており、このプログラムによって、生画像や多値化画像および2値化画像等の各種画像処理が行われるとともに、処理された画像をモニター31に出力する。
また、処理された画像に特定の範囲を任意に設定可能としてあり、この設定によって範囲の大きさ・形状・位置等が可変可能にされている。
さらに、農作物Aの良品・不良品を判別するための後述する数値、濃淡、数、面積等の各種データを設定可能にされている。
【0014】
以下、画像処理部3の農作物Aに対する良否の判別について詳述する。
農作物Aの外側の良否の判定は、前記画像処理部3が、受光部22から送られた撮像データを画像処理するとともに、農作物Aの輪郭の扁平率を算出し、この算出された農作物Aの扁平率の数値が、あらかじめ任意に設定された扁平率の数値の範囲内であったときに良品と判別し、それ以外は不良品として判別する。
さらに撮像部23から送られた撮像データを画像処理によって2値化し、この2値化データに基づいて算出された体積が、あらかじめ設定された数値よりも大きいときに良品と判別し、それ以外は不良品として判別する。
【0015】
農作物Aの内側の良否の判定は、画像処理部3が、受光部22から送られた農作物Aの内側の撮像データを、あらかじめ設定した範囲においてモノクロ濃淡画像に処理し、農作物Aの内側の空洞部、中傷、中腐れ、芽等を淡く現し、この淡い部位の濃度、数、面積、密度等が、あらかじめ設定された濃度、数、面積、密度等の数値内であれば良品と判別し、それ以外は不良品として判別する。
【0016】
そして、前記で判別された良否を総合的に判断し、たとえば、前記3つがすべて良品と判別された農作物を最も良い等級、2つが良品と判別された農作物をその次に良い等級、1つが良品と判別された農作物をその次に良い等級、すべて不良品と判別された農作物Aをいわゆる「はねもの」として判別することが可能である。
また、さらに細かいデータにより判別することができ、たとえば、前記扁平率の数値や体積の数値および濃度、数、面積、密度等を細分化して設定し、その数値ごとに等級をさらに細かく判別することも可能である。
また、根菜類、青物類、果実類等の農作物の種類によって、前記設定を変更することによりあらゆる農作物の等級を判別することが可能である。
【0017】
なお、本発明は前記で例示した構成に限定するものではなく、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲で他の構成にすることも任意である。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明の農作物の等級判別装置は、農作物が袋詰や箱詰めされた際に、袋内や箱内に混入した異物の検出においても適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る農作物の等級判別装置の一例を示す模式図。
【図2】内側検出部の配置の一例を示す模式図。
【符号の説明】
【0020】
1:等級判別装置
2:内側検出部
3:画像処理部
21:照射部
22:受光部
23:撮像部
A:農作物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟エックス線の照射部および受光部を備えた内側検出部と、当該内側検出部による検出結果を画像処理する画像処理部とを備え、
前記画像処理部は、処理された画像を任意に設定される範囲内において農作物内側の良否を判定するとともに、処理される画像の輪郭から農作物外側の良否を判定し、さらに、前記設定される範囲が変更可能にされている農作物の等級判別装置。
【請求項2】
農作物内側の良否の判定は、処理された画像の濃淡を検出することにより行われ、当該濃淡は、農作物内側の密度を示すことにより行われる請求項1に記載の農作物の等級判別装置。
【請求項3】
農作物外側の良否の判定は、たとえば、前記処理される画像の輪郭の扁平率と、前記画像処理部であらかじめ記憶された扁平率との比較により行われる請求項1に記載の農作物の等級判別装置。
【請求項4】
農作物外側の良否の判定は、少なくとも異なる2方向から農作物を外観を撮像する撮像部を備え、当該撮像部の撮像データから前記画像処理部が農作物の体積を算定することで行われる請求項1に記載の農作物の等級判別装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−64688(P2006−64688A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−282741(P2004−282741)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【出願人】(503166115)株式会社ヒロシ工業 (13)
【Fターム(参考)】