説明

農用作業台車

【課題】使用しない際に、煩雑な作業を必要とすることなく、収納スペースを削減することが可能な農用作業台車を提供する。
【解決手段】車体フレーム2に前輪3L・3R及び後輪4L・4Rを配設して該後輪4L・4Rに移動用駆動源であるモータ20からの動力を伝達して台車を駆動させ、該車体フレーム2の前方に作業台6を設けた農用作業台車1において、バンパ40を車体フレーム2後部から上後方に延設し、車体フレーム2の前端を持ち上げ、バンパ40後端と後輪4L・4Rを接地させて、機体を直立保持可能に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータからの駆動力を伝達して台車を駆動させる農用作業台車の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動用駆動源としてモータを具備し、作業者等が座席に着座しながら野菜苗の植付け作業等を行う農用作業台車の技術は公知となっている。
前記農用作業台車は、モータを駆動させることにより、畝に沿って着座状態で移動することが可能となり、野菜苗の植付け作業が容易となる。該農用作業台車は使用しない際には、車体フレームを折りたたみ収納することが可能となっており、収納スペースの削減を可能としている。
【特許文献1】特開2006−55063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、使用しない際に農用作業台車を折りたたむ作業が必要となり、スペースの削減に関しても、折りたたまないでそのまま収納するよりもスペースは削減できるものの前後輪の幅以上はスペースを必要としていた。
本発明は、斯かる課題に鑑み、使用しない際に、煩雑な作業を必要とすることなく、収納スペースを削減することが可能な農用作業台車を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、車体フレームに前輪及び後輪を配設して該後輪に移動用駆動源であるモータからの動力を伝達して台車を駆動させ、該車体フレームの前方に作業台を設けた農用作業台車において、バンパを車体フレーム後部から上後方に延設し、車体フレームの前端を持ち上げ、バンパ後端と後輪を接地させて、機体を直立保持可能に構成したものである。
【0006】
請求項2においては、車体フレームに前輪及び後輪を配設して該後輪に移動用駆動源であるモータからの動力を伝達して台車を駆動させ、該車体フレームの前方に作業台を設けた農用作業台車において、前輪後部の左右車体フレームより下方向に棒状部材を延設して足載台を構成したものである。
【0007】
請求項3においては、車体フレームに前輪及び後輪を配設して該後輪に移動用駆動源であるモータからの動力を伝達して台車を駆動させ、該車体フレームの前方に作業台を設けた農用作業台車において、左右の車体フレームの前後中途部に座席フレームを横設し、該座席フレーム上に回転可能に座席を配設したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0009】
請求項1においては、農用作業台車の収納時に機体を直立させることにより、スペースの削減を図ることが可能となる。また、機体を直立させるだけなので、収納時に煩雑な作業が必要ではなくなる。
【0010】
請求項2においては、作業者の足が走行時に前輪に接触することがなく、車輪に対し専用のガードが不要となり部品点数を削減することが可能となる。
【0011】
請求項3においては、座席が回動することにより、後部にある荷台から荷物をとるなど振り向いて行う作業を容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係る農用作業台車の全体的な構成を示した側面図、図2は農用作業台車の平面図、図3は農用作業台車の底面図である。図4は収納時の農用作業台車を示した側面図、図5はクラッチ機構の背面一部断面図、図6は後輪の駆動機構を示した側面図、図7は座席付近の側面図、図8は座席の正面図、図9は右前輪及び足載台の平面図、図10は左前輪及び足載台の背面図、図11乃至図14はバッテリ押さえのボルト穴の一例を示した斜視図である。
【0013】
まず、図1乃至図3を用いて、本発明の農用作業台車の概略構成について説明する。なお、以下図1の矢印A方向を農用作業台車1の前部として説明する。
農用作業台車1は車体フレーム2、前輪3L・3R、後輪4L・4R、座席5等から構成されており、後輪4L・4Rをモータ2(図3参照)で駆動することにより前進、後退を可能としている。
前記車体フレーム2は、パイプ状または棒状部材を平面視略四角形状に枠組構成し、該車体フレーム2の最前部左右略中央上には、野菜苗や収穫物等を載置するための作業台6が設けられている。該作業台6は車体フレーム2の最前部で車体幅方向に架設した前フレーム10の中央部にボルトなどにより固設される。該作業台6には、前後方向に長穴6aが穿設されており、前記前フレーム10にボルトなどで固設する際に、作業台6は前後位置調節が可能となっている。
このように構成することにより、作業台6から座席5までの距離を自由に調節することが可能となり、作業の種類や作業者の体形等に合わせて適切な位置に調節して、楽な姿勢で作業をすることが可能となる。
また、車体フレーム2の前部左右両側には前輪3L・3Rが設けられており、前輪3L・3Rの後部に作業中に作業者の足を載せるための足載台7・7が設けられている。
【0014】
該足載台7・7は、図1、図2、図3、図9、及び図10に示すように、棒状部材を側面視L字状に折り曲げ形成して、前後方向に延設した左右の車体フレーム2の前記前輪3L・3Rの直後部より下方に垂設しており、垂直部7aの上端が車体フレーム2に固設され、下機体内方向に突出している。該垂直部7aの下端から車体後方でかつ車体幅方向外側に向かって屈曲させて水平部7bを構成しており、該水平部7b上に板状のフットレスト7cが固定されている。
前記足載台7・7は、前記前輪3L・3Rの後部に配置され、垂直部7aを車体幅方向内側に突出させることにより、足載台7・7が前輪3L・3Rの後部を保護し、カバーの役割を兼ね、フットレスト7cが前輪3L・3R後方で斜めに配置することで、作業者の足が前輪3と接触しないように配置している。
このように構成することにより、作業者の足が走行時に前輪に接触することがなく、前輪3L・3Rに対し専用のガードが不要となり部品点数を削減することが可能となる。
【0015】
前記足載台7・7の後方であって、車体フレーム2前後方向中間部で車体幅方向中央部に座席5が設けられている。つまり、左右の車体フレーム2の前後中途部間に車体幅方向にパイプ状の座席フレーム11を横設し、該座席フレーム11の左右中央部上に座席5を配置している。該座席5は、図7及び図8に示すように、下面中央より下方に回転軸5aが突設されており、該回転軸5aはパイプ状の軸受け5cに回転自在に挿入される。但し、図8に示すように、平頭ピン5dなどを回転軸5a及び軸受け5cに貫通させることにより回転不可能に固定することも可能である。
【0016】
前記軸受け5cは側面視四角形状に構成したステー5bの前面に上下方向に固設され、該ステー5bは前記座席フレーム11に外嵌して車体幅方向に摺動可能になっており、ノブ付きのボルト15をステー5b後部より螺装して、該ノブ付きのボルト15を締め付けることにより座席フレーム11上の左右任意位置で固定可能となっている。
このように構成することにより、作業に合わせて座席5を左右任意位置に固定し、側方や後方に振り向く時には座席5は回動し、後部にある荷台から荷物をとる時など容易に姿勢を変えることができる。
【0017】
前記車体フレーム2左右一側部で前記前輪3の後方には、スイッチケース12が設けられている。該スイッチケース12には操作手段や制御回路が設けられ、前記スイッチケース12の操作手段や制御回路は後述するモータ20と電気的につながっており、スイッチケース12の操作手段の操作によりモータ20の回転数や回転方向を制御することが可能となっている
【0018】
該スイッチケース12の支持部12aは筒状に構成されており、車体フレーム2の前後方向に対し摺動可能に嵌設されている。このように構成することにより、作業者の体形や習慣に応じてスイッチケース12の位置を移動することが可能となる。
一方、前記作業台6の側方には図3に示すようにクラッチレバー13が固設されている。つまり、クラッチレバー13は前フレーム10上に取り付けられ、該前フレーム10は身体を支える把手の役目もはたしている。該クラッチレバー13は後述するクラッチ機構30とワイヤ等の連結手段により機械的に接続されており、クラッチレバー13を操作することによりクラッチ機構30の入切を行うことが可能である。
【0019】
また、車両後部には左右両側に後輪4・4が配設されている。以下後輪4・4の駆動機構について図5及び図6を用いて説明する。
後輪4の中心部には駆動軸4aが設けられている。該駆動軸4aにはスプロケット21が貫設固定されており、該スプロケット21はチェーンケース22に収納されており、チェーン23を介して伝達軸24の端部に取り付けた左右の第二スプロケット25L・25Rと連動している。該伝達軸24の中途部に第三スプロケット26が設けられており、チェーン27を介してモータ駆動軸20aに固設したスプロケットに連動連結される。
なお、動力を伝達する機構としては、スプロケット及びチェーンに限定せず、ギヤ伝動や、ベルト伝動も可能である。
【0020】
また、車体後部の左右に駆動源となる前記モータ20及びスイッチケース12の電源であるバッテリ41が積載されている。なお、駆動源はモータに限定することなくエンジン等であってもよい。そして、前記バッテリ41の上面にバッテリ押さえ42が配置され、該バッテリ押さえ42の両側にボルト43を挿入するためのボルト孔42aが開口され、該ボルト孔42aの一側にボルト頭または、ナットを通過させることが可能な通過可能部42bが設けられている。つまり、バッテリ押さえ42はバッテリ41の前後方向中心部を通るように左右方向に横設されている。前記車体フレーム2の後部右側上にバッテリ載置台が固設され、該バッテリ載置台に開口したボルト孔にボルト43が下方より挿入されて上方に突出し、ボルト43の上端が前記バッテリ押さえ42の両端に設けたボルト孔42aに貫通させており、前記ボルト43の上端にナットを螺装して締め付けることにより、バッテリ41を押さえつけて固定するようにしている。
【0021】
図11乃至図14にボルト孔42aの形状の一例を示す。
図11に示すボルト孔42aは、バッテリ押さえ42の幅方向(左右方向)略中央部でバッテリ押さえ42の長手方向両端部に略矩形の形状に構成されており、ボルト孔42aの一端(本実施例ではバッテリ押さえの中心側)が平面視略円形状に構成されて通過可能部42bを形成している。この円はナット及びワッシャーの半径よりも大きな半径で構成されている。このように構成することにより、ナットを緩めて、ボルト43をバッテリ押さえ42の中心側にずらすことにより(図13の矢印方向参照)、ナット(または上下逆の場合ボルト頭)は半径の大きな部分より抜けて通過しバッテリ押さえ42を容易に外すことが可能となる。
一方、図12に示すボルト孔42aは、バッテリ押さえ42の幅方向略中央部であって長手方向両端部に上面視略「J」字状に構成されており、「J」字状の一端がバッテリ押さえ42の端部で開放した形状として通過可能部42bを形成している。このように構成することにより、ナットを緩めてボルト43を開放している方向へ移動させることにより(図14の矢印方向参照)、バッテリ押さえ42を容易に外すことが可能となる。
以上のように構成することにより、バッテリ41の充電などのために頻繁に取り外しする場合に手間のかかる作業を行うことなく取り外すことが可能となり、負担が軽減される。
【0022】
前記伝達軸24には図5に示すようにクラッチ機構30が設けられている。クラッチ機構30は第一クラッチ31及び第二クラッチ32から構成される。第一クラッチ31は伝達軸24上に遊嵌した第三スプロケット26と、伝達軸24上にキー嵌合またはスプライン嵌合した第一スライダ50からなり、伝達軸24と第三スプロケット26の間の動力の断接を可能としている。該第三スプロケット26と第一スライダ50の対向する側面にはそれに係合体が設けられ、第一スライダ50はバネ51により係合方向に付勢されている。第一スライダ50はワイヤを介してクラッチレバー13と連結されている。
第二クラッチ32は、右第二スプロケット25Rと第二スライダ52とからなり、右第二スプロケット25Rと伝達軸24との間の動力の断接を可能としている。該右第二スプロケット25Rは伝達軸24上に遊嵌され、第二スライダ52は伝達軸24上にキー嵌合またはスプライン嵌合されて、相対回転不能、且つ摺動可能に外嵌し、右第二スプロケット25Rとスライダ52の対向する側にはそれぞれピン等の係合体が配置され、スライダ52はバネ53により係合方向に付勢されている。また、スライダ52はワイヤ等を介してクラッチレバー13と連結されている。このように構成することで、前記クラッチレバー13を握ることにより、モータ20と伝達軸24の接続を切ることが可能となる。また、前記クラッチレバー13を入切することにより、第二スプロケット25Rと伝達軸24の接続を入切することが可能となる。
このように構成することにより、前記クラッチレバー13を握ると同時に第一クラッチ31及び第二クラッチ32を切ることができ、第一クラッチ31を「切」とすることでモータ20と伝達軸24の機械的接続が切れて動力伝達が行われなくなり、第二クラッチ32を「切」とすることで、左右の後輪4・4は独立して回動することが可能となる。そのため、旋回や畝跨ぎを容易に行うことができる。但し、クラッチの構成はピン係合に限定するものではなく、爪咬合式や多板式や歯車噛合式等限定するものではない。
【0023】
車体フレーム2の最後部には車体の後方を保護するためのバンパ40が設けられている。該バンパ40は車両最後部のフレーム中央部より後上方に突設されており、該バンパ40の後端は、前記後輪4の後端と略同じ上下の線上に設けられている。つまり、バンパ40は側面視において、車体フレーム2より上後方に突出して配置し、バンパ40の後端と後輪4の後端は略同一垂直面上に位置するように配設されている。
車両を格納する際には、図4に示すように、車両前端部を持ち上げ、車両後端部を接地させることにより、直立させて収納する。この際、車両後端部の接地する個所は、前記バンパ40と後輪4・4となる。
このように構成することにより、本来機体を保護する目的で設けているバンパを収納時に接地させることにより、接地させるための専用の部品(スタンド等)を必要とすることなく、車体を直立姿勢をとらせて格納でき、収納スペースを削減することができる。また、バッテリやモータ等は車体後部に配置されるため重心が後方に位置、後輪4を支点として容易に車体前部を持ち上げることが可能となるのである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施例に係る農用作業台車の全体的な構成を示した側面図。
【図2】農用作業台車の平面図。
【図3】農用作業台車の底面図。
【図4】収納時の農用作業台車を示した側面図。
【図5】クラッチ機構の背面一部断面図。
【図6】後輪の駆動機構を示した側面図。
【図7】座席付近の側面図。
【図8】座席の正面図。
【図9】右前輪及び足載台の平面図。
【図10】左前輪及び足載台の背面図。
【図11】バッテリ押さえのボルト穴の一例を示した斜視図。
【図12】バッテリ押さえのボルト穴の一例を示した斜視図。
【図13】バッテリ押さえのボルト穴の一例を示した斜視図。
【図14】バッテリ押さえのボルト穴の一例を示した斜視図。
【符号の説明】
【0025】
1 農用作業台車
2 車体フレーム
3L、3R 前輪
4L、4R 後輪
5 座席
6 作業台
7 足載台
20 モータ
24 伝達軸
30 クラッチ機構
40 バンパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームに前輪及び後輪を配設して該後輪に移動用駆動源であるモータからの動力を伝達して台車を駆動させ、該車体フレームの前方に作業台を設けた農用作業台車において、バンパを車体フレーム後部から上後方に延設し、車体フレームの前端を持ち上げ、バンパ後端と後輪を接地させて、機体を直立保持可能に構成したことを特徴とする農用作業台車。
【請求項2】
車体フレームに前輪及び後輪を配設して該後輪に移動用駆動源であるモータからの動力を伝達して台車を駆動させ、該車体フレームの前方に作業台を設けた農用作業台車において、前輪後部の左右車体フレームより下方向に棒状部材を延設して足載台を構成したことを特徴とする農用作業台車。
【請求項3】
車体フレームに前輪及び後輪を配設して該後輪に移動用駆動源であるモータからの動力を伝達して台車を駆動させ、該車体フレームの前方に作業台を設けた農用作業台車において、左右の車体フレームの前後中途部に座席フレームを横設し、該座席フレーム上に回転可能に座席を配設したことを特徴とする農用作業台車。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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