説明

農用作業車

【課題】 車体の前後バランスの向上を図りながら、車体の小型化や作業性の向上を図れるようにする。
【解決手段】 走行車体1の後部に作業装置4を連結するとともに、走行車体1における車体フレーム64の前後中心Pa上に運転座席45を配備してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車体の後部に作業装置を連結した農用作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような農用作業車においては、走行車体の前端部(例えば前車軸よりも前方に大きく延出したエンジン搭載部)に重量の大きいエンジンなどを搭載することで、車体の前後バランスの向上を図るようにしていた(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−224209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の従来技術のように、走行車体の前端部にエンジンなどを搭載すると、そのエンジンの搭載位置が車体の前方側であるほど、走行車体の全長が長くなり、又、エンジンを覆うボンネットなどによって隠れる前下方の圃場部分が広くなって、圃場に対する運転者の視界が狭められることから、作業性の低下を招くことになる。
【0004】
本発明の目的は、車体の前後バランスの向上を図りながら、車体の小型化や作業性の向上を図れるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するための手段として、本発明のうちの請求項1に記載の発明では、走行車体の後部に作業装置を連結するとともに、前記走行車体における車体フレームの前後中心上に運転座席を配備してある。
【0006】
この構成によると、運転座席を車体フレームの前後中心よりも後方に配備する場合に比較して、運転座席に着座する運転者の重量が前寄りになって、より効果的に車体の前後バランスの向上に貢献することになり、その分、エンジンを車体後方側(運転者側)に寄せた状態で配備できることから、車体の全長を短くすることができるとともに、エンジンを覆うボンネットなどによって隠れる前下方の圃場部分が狭くなり、圃場に対する運転者の視界が広くなる。
【0007】
従って、車体の前後バランスの向上を図りながら、車体の小型化や作業性の向上を図ることができる。
【0008】
本発明のうちの請求項2に記載の発明では、走行車体の後部に作業装置を連結するとともに、前記走行車体における車体フレームの前後中心上にエンジンを配備してある。
【0009】
この構成によると、エンジンを車体の前後バランスの向上に利用しながら、車体の全長を短くすることができるとともに、エンジンを覆うボンネットなどによって隠れる前下方の圃場部分がなくなり、圃場に対する運転者の視界が広くなる。
【0010】
これは、走行車体の後部に軽量の作業装置を連結する農作業車において特に有効なものである。
【0011】
従って、車体の前後バランスの向上を図りながら、車体の小型化や作業性の向上を図ることができる。
【0012】
本発明のうちの請求項3に記載の発明では、走行車体の後部に作業装置を連結するとともに、前記走行車体に連結される連結部から前方に向けて延出する延出部に予備苗台が装備される予備苗支持フレームを設けてある。
【0013】
この構成によると、予備苗支持フレームの延出部、その延出部に装備する予備苗台、その予備苗台に載置する予備苗、などの重量を、車体の前後バランスの向上に効果的に貢献させることができ、その分、エンジンを車体後方側(運転者側)に寄せた状態で配備できることから、車体の全長を短くすることができるとともに、エンジンを覆うボンネットなどによって隠れる前下方の圃場部分が狭くなり、圃場に対する運転者の視界が広くなる。
【0014】
従って、車体の前後バランスの向上を図りながら、車体の小型化や作業性の向上を図ることができる。
【0015】
本発明のうちの請求項4に記載の発明では、走行車体の後部に作業装置を連結するとともに、前記走行車体の前端から前記作業装置の後端にわたる車体全長の前後中心上にミッションケースを配備してある。
【0016】
この構成によると、車体全長の前後中心よりも後方側にミッションケースを配備する場合に比較して、ミッションケースを、より有効に車体の前後バランスの向上に利用することができ、その分、エンジンを車体後方側(運転者側)に寄せた状態で配備できることから、車体の全長を短くすることができるとともに、エンジンを覆うボンネットなどによって隠れる前下方の圃場部分が狭くなり、圃場に対する運転者の視界が広くなる。
【0017】
従って、車体の前後バランスの向上を図りながら、車体の小型化や作業性の向上を図ることができる。
【0018】
本発明のうちの請求項5に記載の発明では、走行車体の後部に作業装置を連結するとともに、前記走行車体の前端から前記作業装置の後端にわたる車体全長の前後中心上に燃料タンクを配備してある。
【0019】
この構成によると、車体全長の前後中心よりも後方側に燃料タンクを配備する場合に比較して、燃料タンクやその内部の燃料などの重量を、車体の前後バランスの向上に効果的に貢献させることができ、その分、エンジンを車体後方側(運転者側)に寄せた状態で配備できることから、車体の全長を短くすることができるとともに、エンジンを覆うボンネットなどによって隠れる前下方の圃場部分が狭くなり、圃場に対する運転者の視界が広くなる。
【0020】
従って、車体の前後バランスの向上を図りながら、車体の小型化や作業性の向上を図ることができる。
【0021】
本発明のうちの請求項6に記載の発明では、走行車体の後部に作業装置を連結するとともに、前記走行車体における車体フレームの前後中心上に運転座席とエンジンとを配備し、前記走行車体に連結される連結部から前方に向けて延出する延出部に予備苗台が装備される予備苗支持フレームを設け、前記走行車体の前端から前記作業装置の後端にわたる車体全長の前後中心上にミッションケースを配備してある。
【0022】
この構成によると、走行車体における車体フレームの前後中心上にエンジンを配備することで、車体の全長を短くすることができるとともに、エンジンを覆うボンネットなどによって隠れる前下方の圃場部分がなくなり、圃場に対する運転者の視界が広くなる。
【0023】
又、運転座席を車体フレームの前後中心よりも後方に配備する場合に比較して、運転座席に着座する運転者の重量が前寄りになって、より効果的に車体の前後バランスの向上に貢献することになり、又、エンジンを車体の前後バランスの向上に利用でき、更に、予備苗支持フレームの延出部、その延出部に装備する予備苗台、その予備苗台に載置する予備苗、などの重量を、車体の前後バランスの向上に効果的に貢献させることができ、その上更に、車体全長の前後中心よりも後方側にミッションケースを配備する場合に比較して、ミッションケースを、より有効に車体の前後バランスの向上に利用することができる。
【0024】
従って、車体の前後バランスの向上をより効果的に図れるとともに、車体の小型化や作業性の向上を更に図ることができる。
【0025】
本発明のうちの請求項7に記載の発明では、上記請求項1,3,4又は5に記載の発明において、前記走行車体における前車軸よりも後方で、かつ、平面視で燃料タンクと重複しない位置にエンジンを配備してある。
【0026】
この構成によると、エンジンを車体の前後バランスの向上に利用しながら、車体の全長をより短くすることができるとともに、エンジンを覆うボンネットなどによって隠れる前下方の圃場部分がより狭くなり、圃場に対する運転者の視界がより広くなる。
【0027】
又、燃料タンクとキャブレタとの水頭差を確保するためにエンジンの上方に燃料タンクを配備した場合に生じる重心位置の上昇を回避できる。
【0028】
従って、車体の前後バランスの向上をより効果的に図れるとともに、車体の小型化や作業性の向上を更に図ることができ、更に、重心位置の上昇による車体の安定性の低下を回避できる。
【0029】
本発明のうちの請求項8に記載の発明では、上記請求項1〜7のいずれか一つに記載の発明において、前記走行車体の前端部に、前記走行車体の地上側からの誘導操作を可能にする操作アームを固定装備してある。
【0030】
この構成によると、運転者が地上に降りた状態で車体を走行させる畦越え走行などの際には、走行車体の前端部に固定装備した操作アームを利用すれば、畦越え走行時に発生し易い車体前部側の浮き上がりを抑える押さえ込み操作や、車体を左右に誘導する誘導操作、などを地上側から良好に行える。
【0031】
しかも、操作アームを固定装備することで、操作アームを利用した車体前部側の引き上げ操作が可能になることから、車体の前部側を持ち上げ気味にした誘導操作も良好に行うことができ、更に、それらの操作に必要な強度を比較的簡単な構造で安価に確保できる。
【0032】
特に、走行車体における車体フレームの前後中心上に運転座席を配備するものにおいては、運転者が運転座席に着座した走行時には、その運転者の重量を考慮した良好な前後バランスを得ることができ、又、運転者が地上側から操作アームを利用して車体を誘導する誘導操作時には、運転者が運転座席から離れることで車体重心が適度に後寄りになることから、操作アームを利用した車体の誘導操作、特に車体の前部側を持ち上げ気味にした誘導操作が行い易くなる。
【0033】
従って、構成の簡素化やコストの削減を図りながら、操作アームを利用した車体の地上側からの押さえ込み操作や誘導操作などを良好に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
図1には農用作業車の一例である乗用型田植機の全体側面が、又、図2にはその全体平面がそれぞれ示されており、この田植機は、走行車体1の後部に、油圧式の昇降シリンダ2の作動で昇降揺動するリンク機構3を装備し、そのリンク機構3の後端に苗植付装置(作業装置の一例)4を連結して、走行車体1の後部に苗植付装置4を駆動昇降可能に装備している。
【0035】
図1〜5に示すように、走行車体1は、前端に前車軸ケース5が連結された前後向きのパイプ材などからなる主フレーム6と、この主フレーム6の後端に連結されたミッションケース7の前端上部とにわたって、空冷式のガソリンエンジン8を、その高さが低くなり重量の大きいクランクケース側が前方に位置する後傾姿勢で防振搭載し、そのエンジン8からの動力を、ベルトテンション式の主クラッチ9を介して、ミッションケース7に内蔵した変速装置(図示せず)に断続切り換え可能に伝達し、その変速装置による変速後の走行用動力を、前輪駆動用として、主フレーム6に挿通した前後向きの伝動軸10、前車軸ケース5に内蔵したベベルギヤ11や横向きの伝動軸12、及び、前車軸ケース5から左右に向けて延出した左右の前車軸13、などを介して左右の前輪14に等速伝達し、かつ、後輪駆動用として、ミッションケース7に内蔵した左右のサイドクラッチ15や、ミッションケース7から左右に向けて延出した左右の後車軸16、などを介して左右の各後輪17に断続切り換え可能に伝達する4輪駆動型に構成され、又、変速装置による変速後の作業用動力をミッションケース7の後部から出力する。
【0036】
尚、図3における符号18は、横向きの伝動軸12に作用する多板式のブレーキであり、このブレーキ18は、主クラッチ9とともに走行車体1の右前部に配備した操作ペダル19に機械連係されており、この構成から、操作ペダル19の踏み込み操作で、主クラッチ9の切り状態への切り換え操作とブレーキ18の制動状態への切り換え操作とを行える。
【0037】
又、操作ペダル19には、走行車体1の前方に向けて延出する操作レバー20が一体装備されており、この操作レバー20を利用することで、地上側からでも、主クラッチ9の切り状態への切り換え操作とブレーキ18の制動状態への切り換え操作とを行うことができ、車体を走行停止させることが可能となっている。
【0038】
図1及び図2に示すように、苗植付装置4は、ミッションケース7からの作業用動力が、伸縮自在に構成された作業用の伝動軸21などを介して動力分配部22に伝達され、この動力分配部22からの分配動力で、3条分のマット状苗を載置する苗載台23が所定ストロークで左右方向に往復移動し、又、左右方向に一定間隔を隔てる状態に並設したクランク式の3つの植付機構24が、対応するマット状苗から所定量の苗を切り出して圃場泥土部に植え付け、更に、苗載台23が左右のストローク端に到達するごとに、左右方向に一定間隔を隔てる状態に並設した3つの縦送りベルト25が、対応するマット状苗を所定量だけ下方に向けて縦送りすることで、最大3条の苗の植え付けを行えるように構成されている。
【0039】
又、苗植付装置4の下部には、植え付け前の圃場泥面を車体の走行に伴って整地する整地フロート26が、その後部支点周りでのピッチングが許容された状態で配備されている。
【0040】
そして、図示は省略するが、この田植機には、整地フロート26を接地させた走行時に、その走行に伴う整地フロート26のピッチングに基づいて昇降シリンダ2の作動を制御することで、走行車体1の上下動にかかわらず、苗植付装置4を予め設定した接地高さに維持する高さ維持装置が装備されており、これによって、苗植付装置4による苗の植え付けを適切な植え付け深さで安定して行えるようになっている。
【0041】
図1〜4に示すように、前車軸ケース5の前部中央には、バランスウェイトとしての機能を有する鋳造製の支持台27が連結され、この支持台27には、ステアリング軸28の下部を挿通支持する開口29が形成されるとともに、ステアリング軸28を支持するハンドルポスト30を一体装備した板金製の第1カバー31が立設され、この第1カバー31に、支持台27及びハンドルポスト30を前方から覆う樹脂製の第2カバー32が着脱可能に係止連結され、その第1カバー31と第2カバー32とからフロントカバー33が構成されている。
【0042】
ステアリング軸28は、その上端にステアリングホイール34が装備され、その下端に一体形成されたピニオンギヤ35が、支持台27に軸支されたセクターギヤ36に噛合し、そのセクターギヤ36の左右両端部が、左右の前輪14を操舵する左右のナックルアーム37に対応するタイロッド38を介して連動連結されている。
【0043】
セクターギヤ36には、その支点を中心とする左右一対の長孔39が形成され、それらの長孔39に一端部が係合された左右の連係ロッド40の他端部が、対応するサイドクラッチ15の操作アーム41に連結されている。
【0044】
つまり、ステアリングホイール34の回動操作に連動して左右の前輪14が操舵され、又、その操作で、前輪14が直進位置から設定角度以上に操舵されると、旋回内側の後輪17に対するサイドクラッチ15が切り状態に切り換えられて、左右の前輪14と旋回外側の後輪17とを駆動した3輪駆動状態で旋回する小旋回状態が現出される。
【0045】
尚、図1、図2及び図4における符号42は、第1カバー31の左部に支持装備されるとともに変速装置に操作連係された変速レバーであり、図2における符号43は、運転座席45の右下部に支持装備されるとともにエンジン8のアクセル装置(図示せず)に操作連係されたアクセルレバーである。
【0046】
図1、図2及び図5に示すように、主フレーム6とミッションケース7の左右の後端部とにわたって、左右一対のパイプ材などによってミッションケース7の上部とエンジン8とを覆うように枠組みされた座席フレーム44が架設され、この座席フレーム44の上部前側に、運転座席45が、その前部の連結支点周りに前後揺動可能に、かつ、前後方向に位置調節可能にピン連結され、又、座席フレーム44の上部後側に燃料タンク46が連結配備されている。
【0047】
運転座席45の右側方には、昇降シリンダ2の作動状態を切り換える制御弁(図示せず)、及び、苗植付装置4に対する伝動状態を切り換える作業クラッチ(図示せず)に操作連係された作業用レバー47が配備されており、この作業用レバー47を用いることで、着座位置からの苗植付装置4の昇降操作や作動切り換え操作が可能となっている。又、燃料タンク46の右側方には、高さ維持装置に操作連係された感度調節レバー48が配備されており、この感度調節レバー48を用いることで、着座位置からの高さ維持装置に対する制御感度の調節操作が可能となっている。
【0048】
そして、図1、図2及び図4〜7に示すように、支持台27と座席フレーム44とにわたって、エンジン8や支持台27などを上方から覆うように形成された板金製のステップ49が着脱可能に敷設され、その中央部には、エンジン8の前上部を露出させる開口50が形成されるとともに、その開口50とエンジン8の前上部とを覆い隠す樹脂製のボンネット51が着脱可能に係止連結され、又、ステップ49の後部には、燃料タンク46を露出させる開口52が形成され、更に、ステップ47における2つの開口50,52の間には、着座姿勢に揺動操作された運転座席45の後部を受け止め支持する左右一対のクッションバネ53が装備され、その上更に、ステップ49における開口50の右側方箇所には、作業用レバー47の前後揺動操作を許容する開口54が、又、ステップ49における開口52の右側方箇所には、感度調節レバー48の前後揺動操作を許容する開口55がそれぞれ形成されている。
【0049】
図1、図2、図5、図7及び図8に示すように、座席フレーム44の後上部には、予備苗が載置される予備苗台56を支持する予備苗支持フレーム57が連結され、この予備苗支持フレーム57は、座席フレーム44に連結される左右向きの連結部58と、その連結部58の両端から前方に向けて延出し、更に、その延出端から上方に向けて延出する左右一対のL字状の延出部59とを有するように屈曲形成されたパイプ材などで構成され、その左側の延出部59に2つの予備苗台56が上下に所定間隔を隔てて支持され、右側の延出部59に単一の予備苗台56が支持されている。
【0050】
各予備苗台56は、予備苗支持フレーム57から横外方に向けて延出する載置姿勢と、予備苗支持フレーム57に沿って起立する格納姿勢とに姿勢切り換え可能に構成され、走行車体1における運転座席45の横側方に位置するように配置されている。
【0051】
尚、図2における符号60は、エンジン始動時における引き上げ操作性を考慮してステップ49における運転座席45の右前方箇所に配置したエンジン始動用のリコイルノブである。又、ステップ49は、その運転座席45の左横側方箇所が、苗植付装置4の苗載台23に対する予備苗供給用の補助ステップとして利用可能な平坦面に形成されており、これによって、運転座席45の後方に配置した燃料タンク46に対する給油の際には、補給タンク(図示せず)を仮置きする仮置き台としても利用できる。
【0052】
図1〜3及び図9に示すように、支持台27には、走行車体1の地上側からの誘導操作を可能にする操作アーム61が固定装備され、この操作アーム61は、正面視略逆U字状で側面視略L字状に屈曲形成されたパイプ材からなり、その左右方向の長さ(幅)W1がフロントカバー33の左右方向の長さ(幅)W2よりも長くなるように設定され、又、その把持部62が支持台27よりも前方に位置し、かつ、その上端位置がフロントカバー33の上下中間位置よりも低くなる低位置に位置する状態となるように、その前後向きの両端部63が支持台27の対応する横側面にボルト連結されている。
【0053】
つまり、運転者が地上に降りた状態で車体を走行させる畦越え走行などの際には、走行車体1の前端部に固定装備した操作アーム61を利用すれば、畦越え走行時に発生し易い車体前部側の浮き上がりを抑える押さえ込み操作や、車体を左右に誘導する誘導操作、などを地上側から良好に行える。
【0054】
しかも、操作アーム61を、その延出長さを比較的短くした状態で固定装備することで、狭い小道などにおいても、操作アーム61を利用した車体の誘導操作などを、その操作アーム61が他物に接触するなどの不都合を招くことなく良好に行うことができ、又、操作アーム61を利用した車体前部側の引き上げ操作が可能になることで、車体の前部側を持ち上げ気味にした誘導操作も良好に行うことができ、更に、それらの操作に必要な強度を、比較的簡単な構造で安価に確保できる。
【0055】
更に、操作アーム61の左右方向の長さ(幅)W1をフロントカバー33の左右方向の長さ(幅)W2よりも長くすることで、操作アーム61の把持部62とフロントカバー33との間における前後間隔を小さくして車体の全長L1を短くするようにしても、把持部62とフロントカバー33との間を広い状態にすることができ、把持部62を把持する際にフロントカバー33が邪魔になる虞を回避できる。又、操作アーム61を、フロントカバー33の畦などの他物との接触を防止する保護フレームとして有効に機能させることができる。
【0056】
そして、前後方向に連結される前車軸ケース5、主フレーム6、ミッションケース7、支持台27、及び操作アーム61、などによって車体フレーム64が構成されている。
【0057】
図1に示すように、この田植機においては、操作アーム61の前端からミッションケース7の後端にわたる前後長さL2を有する車体フレーム64の前後中心Pa上に運転座席45及びエンジン8を配備し、又、走行車体1の前端(操作アーム61の前端)から苗植付装置4の後端(植付機構24の後端)にわたる車体全長L1の前後中心Pb上にミッションケース7及び燃料タンク46を配備し、更に、座席フレーム44の後上部に連結される連結部58から前方に向けて延出する左右の延出部59に複数の予備苗台56を装備することで、田植機としての小型化を図れるとともに、前下方の視界を広げることによる作業性の向上を図れるようにしながらも、運転者が運転座席45に着座した走行時には、その運転者の重量を考慮した良好な前後バランスを得ることができ、又、運転者が地上側から操作アーム61を利用して車体を誘導する誘導操作時には、運転者が運転座席45から離れることで車体重心を適度に後寄りにすることができ、操作アーム61を利用した車体の誘導操作、特に車体の前部側を持ち上げ気味にした誘導操作が行い易くなる。
【0058】
又、エンジン8が操作アーム61から離れることで、操作アーム61を利用した車体の誘導操作時におけるエンジン8からの放射熱や騒音に起因した操作環境の悪化を抑制できる。
【0059】
更に、予備苗台56が運転座席45の左右に位置することで、走行車体1の横側方や前方からの乗降が行い易くなる。
【0060】
図1、図2、図5及び図7に示すように、燃料タンク46は、前後に延びる一対の突条65が、その左上部に形成した給油部66を挟む状態に一体形成されるとともに、平面視でエンジン8と重複しないエンジン8よりも後方の位置で、かつ、その底部が側面視でエンジン8の上部と重複する比較的低い位置に、その給油部66が後上向きとなる後傾姿勢で配置されており、これによって、燃料タンク46をエンジン8の上方にキャブレタ(図示せず)との水頭差を確保しながら配置する場合に生じる、エンジン8の上方に配置される運転座席45の高さ位置が高くなることに起因した重心位置の上昇、及び、燃料タンク46を側面視でエンジン8と重複しない高位置に配置することに起因した重心位置の上昇を回避できることから、車体の安定性の向上を図れるようになり、又、燃料タンク46に一対の突条65を一体形成するだけの安価な構成でありながら、万が一、給油部66からガソリンが溢れた場合であっても、そのガソリンがエンジン8側に流れることを防止できるようになっている。
【0061】
図1、図2及び図9〜11に示すように、この田植機には、操作アーム61に対して着脱可能なバランスウェイト67が装備されており、これによって、例えば、苗植付装置4を作業条数の多いものや重量大きい田の作業装置に付け替えることなどに起因した後部重量の増加に対する処置を、フロントカバー33の内部や車体フレーム64の底部などにバランスウェイト67を装着する場合に比較して簡単に行うことができ、前後バランスの改善が図り易くなる。
【0062】
しかも、操作アーム61は走行車体1の前端部に固定装備されたものであることから、バランスウェイト67の着脱を可能にする上において新たに補強する必要がなく、又、装着時には、車体重心から前方側に最も離れた位置にバランスウェイト67が位置するようになることから、バランスウェイト67として比較的軽量のものを採用しながらも、そのバランス機能を効果的に発揮させることができ、更に、バランスウェイト67として比較的軽量のものを採用できることで、車体全体としての重量化を抑制でき、操作アーム61を利用した地上側からの車体の操作性を確保できる。
【0063】
尚、操作アーム61に対するバランスウェイト67の着脱は、操作アーム61に対応させてバランスウェイト67の左右に形成した左右一対の嵌合凹部68に対する操作アーム61の係脱と、左右一対の嵌合凹部68に対する操作アーム61の抜け止めを行う抜止ボルト69のバランスウェイト67に対する着脱とで簡単に行える。
【0064】
図1、図2、図9及び図12〜14に示すように、支持台27の前部左右両端にはブラケット70が装備され、それらの各ブラケット70には、隣接マーカ取り付け用の縦向きの支軸71がその軸心周りに回動可能に装備され、その支軸71は、その上部にブラケット70に対して支軸71を押し上げ付勢するコイルバネ72が外嵌され、かつ、その下部に隣接マーカ挿通用の貫通孔73が穿設され、その貫通孔73に隣接マーカ74の基端部75を挿通することで、左右一対の隣接マーカ74を、走行車体1の前端部に、支軸71の軸心周りに前後揺動可能に、かつ、その基端部75の軸心周りに上下揺動可能に、更に、各揺動姿勢で摩擦保持可能に装備することができ、これによって、各隣接マーカ74を、その先端部76が車体外方で垂下する作用姿勢と、その先端部76が車体内方で起立する格納姿勢とに容易に切り換え保持できるとともに、その作用姿勢での先端部76の位置を、その先端部76が前輪14を挟んで基端部75の真横に位置する最大位置(既植えの隣接苗に対する離間距離を最大とする位置)と、その先端部76が基端部75よりも前方に位置して前輪14の外面側に近接する最小位置(既植えの隣接苗に対する離間距離を最小とする位置)との間で調節維持することができ、又、その格納姿勢では、その先端部76を操作アーム61に係止できるようになっている。
【0065】
又、各ブラケット70の前端には、隣接マーカ74の基端部75を受け止めることで、隣接マーカ74の先端部76が基端部75の真横に位置する最大位置よりも後方に変位することを阻止する受部77が下向きに屈曲形成されており、これによって、隣接マーカ74を畦などに引っ掛けた際に、その先端部76が最大位置よりも後方に変位することに起因して発生する隣接マーカ74の前輪14への巻き込みを回避できるようになっている。
【0066】
尚、図5における符号78は、主クラッチ9に並設された伝動ベルト79を介して伝達されるエンジン8からの動力で駆動される油圧ポンプである。
【0067】
〔別実施例〕
以下、本発明の別実施例を列記する。
〔1〕農用作業車としては、4条以上の植え付けが可能に構成された田植機や、施肥装置などを追加装備した田植機、あるいは、田植機以外のトラクタやコンバインなどであってもよい。
【0068】
〔2〕運転座席45の配置としては、運転者が運転座席45に着座した走行時に、その運転者の重量を考慮した良好な前後バランスを得られる位置であれば種々の変更が可能であり、その配置によって、運転者が地上側から操作アーム61を利用して車体を誘導する誘導操作時には、運転者が運転座席45から離れるのに伴って、操作アーム61を利用した車体の誘導操作、特に車体の前部側を持ち上げ気味にした誘導操作が行い易くなる良好な前後バランスを得られることが望ましい。
【0069】
〔3〕エンジン8の搭載位置としては、運転者が運転座席45に着座した走行時に、その運転者の重量を考慮した良好な前後バランスを得られるとともに、運転者の視界を良好に確保できる位置であれば種々の変更が可能であり、その配置によって、運転者が地上側から操作アーム61を利用して車体を誘導する誘導操作時には、運転者が運転座席45から離れるのに伴って、操作アーム61を利用した車体の誘導操作、特に車体の前部側を持ち上げ気味にした誘導操作が行い易くなる良好な前後バランスを得られることが望ましい。
【0070】
〔4〕予備苗支持フレーム57の配置としては、運転者が運転座席45に着座した走行時に、その運転者の重量を考慮した良好な前後バランスを得られる位置であれば種々の変更が可能であり、その配置によって、運転者が地上側から操作アーム61を利用して車体を誘導する誘導操作時には、運転者が運転座席45から離れるのに伴って、操作アーム61を利用した車体の誘導操作、特に車体の前部側を持ち上げ気味にした誘導操作が行い易くなる良好な前後バランスを得られることが望ましい。
【0071】
〔5〕ミッションケース7の配置としては、運転者が運転座席45に着座した走行時に、その運転者の重量を考慮した良好な前後バランスを得られる位置であれば種々の変更が可能であり、その配置によって、運転者が地上側から操作アーム61を利用して車体を誘導する誘導操作時には、運転者が運転座席45から離れるのに伴って、操作アーム61を利用した車体の誘導操作、特に車体の前部側を持ち上げ気味にした誘導操作が行い易くなる良好な前後バランスを得られることが望ましい。
【0072】
〔6〕燃料タンク46の配置としては、運転者が運転座席45に着座した走行時に、その運転者の重量を考慮した良好な前後バランスを得られる位置であれば種々の変更が可能であり、その配置によって、運転者が地上側から操作アーム61を利用して車体を誘導する誘導操作時には、運転者が運転座席45から離れるのに伴って、操作アーム61を利用した車体の誘導操作、特に車体の前部側を持ち上げ気味にした誘導操作が行い易くなる良好な前後バランスを得られることが望ましい。
【0073】
〔7〕車体フレーム64として専用のフレーム構造を備えるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】乗用型田植機の全体側面図
【図2】乗用型田植機の全体平面図
【図3】走行系の平面図
【図4】走行車体前部の縦断側面図
【図5】走行車体後半部の縦断側面図
【図6】ステップ及びボンネットの斜視図
【図7】予備苗支持フレーム及び燃料タンクの構成を示す要部の背面図
【図8】予備苗支持フレームの斜視図
【図9】操作アーム及び隣接マーカの構成を示す要部の正面図
【図10】バランスウェイトの着脱構造を示す要部の縦断背面図
【図11】バランスウェイトの着脱構造を示す要部の横断平面図
【図12】隣接マーカの支持構造を示す要部の縦断正面図
【図13】隣接マーカの支持構造を示す要部の斜視図
【図14】隣接マーカの格納姿勢を示す要部の正面図
【符号の説明】
【0075】
1 走行車体
4 作業装置
7 ミッションケース
8 エンジン
13 前車軸
45 運転座席
46 燃料タンク
56 予備苗台
57 予備苗支持フレーム
58 連結部
59 延出部
61 操作アーム
64 車体フレーム
L1 車体全長
Pa 車体フレームの前後中心
Pb 車体全長の前後中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体の後部に作業装置を連結するとともに、前記走行車体における車体フレームの前後中心上に運転座席を配備してある農用作業車。
【請求項2】
走行車体の後部に作業装置を連結するとともに、前記走行車体における車体フレームの前後中心上にエンジンを配備してある農用作業車。
【請求項3】
走行車体の後部に作業装置を連結するとともに、前記走行車体に連結される連結部から前方に向けて延出する延出部に予備苗台が装備される予備苗支持フレームを設けてある農用作業車。
【請求項4】
走行車体の後部に作業装置を連結するとともに、前記走行車体の前端から前記作業装置の後端にわたる車体全長の前後中心上にミッションケースを配備してある農用作業車。
【請求項5】
走行車体の後部に作業装置を連結するとともに、前記走行車体の前端から前記作業装置の後端にわたる車体全長の前後中心上に燃料タンクを配備してある農用作業車。
【請求項6】
走行車体の後部に作業装置を連結するとともに、前記走行車体における車体フレームの前後中心上に運転座席とエンジンとを配備し、前記走行車体に連結される連結部から前方に向けて延出する延出部に予備苗台が装備される予備苗支持フレームを設け、前記走行車体の前端から前記作業装置の後端にわたる車体全長の前後中心上にミッションケースを配備してある農用作業車。
【請求項7】
前記走行車体における前車軸よりも後方で、かつ、平面視で燃料タンクと重複しない位置にエンジンを配備してある請求項1,3,4又は5に記載の農用作業車。
【請求項8】
前記走行車体の前端部に、前記走行車体の地上側からの誘導操作を可能にする操作アームを固定装備してある請求項1〜7のいずれか一つに記載の農用作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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