説明

農用結束装置

【課題】 茎稈が集束空間に強く詰め込まれても的確な結束作動を行わせることができる農用結束装置を提供する。
【解決手段】 段付き長孔状の開口50を備えた紐案内板12における集束空間に向かう外面に、バネ線材からなる紐案内棒52を開口50の一側脇に沿って後向き片持ち状に配備する。紐案内棒52の後方遊端部に開口50を横断する屈曲部52aを形成し、開口50の前後中間に形成された紐受け段部dに屈曲部52aを交差させた農用結束装置において、開口50の側脇に沿って茎稈案内用のリブ12aを突設する。リブ12aを紐案内棒52の遊端部に備えた屈曲部52aよりも後方まで延出し、リブ12aに形成した透孔53に屈曲部52aを前後方向へ弾性変形移動可能に挿通してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、脱穀後の排ワラを結束処理する場合に利用する農用結束装置に関する。
【背景技術】
【0002】
農用結束装置の一例である排ワラ結束装置においては、集束空間の一側脇に紐案内板、ノッタ・ビル方式の結節機構、および、クランク式の放出機構を配備し、集束空間の他側脇に結束紐供給用のニードルと茎稈送り込み用の掻込みパッカーを配備し、収束空間の上手において茎稈供給路を横断して進出移動するニードルによって、収束空間に収集された茎稈に結束紐を巻きつけながら紐案内板の背部に位置する結節機構に供給して結節し、結束した茎稈束を放出機構によって集束空間から後方に払い出すよう構成している。
紐案内板に、ニードルおよび結束紐が通過する段付き長孔状の開口を茎稈移動方向に長く形成し、紐案内板における集束空間に向かう外面にバネ線材からなる後向き片持ち状の紐案内棒を前記開口の一側脇に沿って配備し、この紐案内棒の後方遊端部に開口を横断する屈曲部を形成し、前記開口の前後中間に形成した紐受け段部に紐案内棒の屈曲部を交差させたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実開昭63−28325号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、コンバインに装備される排ワラ結束装置においては、ワラ束の数を少なくするために大束の結束行われることが多くなっており、集束空間に詰め込まれる排ワラの量が多くなることで、紐案内棒の作動に支障がでることがある。つまり、ニードルによって紐案内板の背部に持ち込まれた結束紐を結節機構の結節ビルに巻きつけて結び目を作る際、紐案内板の開口における紐受け段部に受け止められた紐部分を紐案内棒の屈曲部で支持することで、結束紐が後方にズレ動いて紐受け段部から外れてしまうことを阻止し、結節作動後にワラ束が後方への放出作用を受けるとワラ束に巻き付けられた結束紐が紐案内棒の屈曲部を後方に押圧し、その押圧力で紐案内棒が弾性変形して紐案内棒の屈曲部が退避移動し、結束紐の後方への通過移動を許容することになる。
【0004】
この場合、紐案内棒は、結節機構の邪魔にならないように、紐案内板における集束空間に向かう外面に取付けられているので、詰め込まれるワラ量が多くなって排ワラの一部が紐案内棒の屈曲部に強く押し付けられて紐案内棒の屈曲部の移動が阻害され、ワラ束に巻回された結束紐が紐受け段部から円滑に移動できなくなり、結節不良や排出ミスなどのトラブルが発生するおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、排ワラなどの茎稈が集束空間に強く詰め込まれても、紐案内棒を円滑に移動させて的確な結束作動を行わせることができる茎稈結束装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、集束空間の一側脇に紐案内板、ノッタ・ビル方式の結節機構、および、放出機構を配備し、前記集束空間の他側脇に結束紐供給用のニードルと茎稈送り込み用の掻込みパッカーを配備し、収束空間の入口前方において茎稈供給路を横断して進出移動するニードルによって、収束空間に収集された茎稈に結束紐を巻きつけながら前記紐案内板の背部に位置する前記結節機構に供給して結節し、結束した茎稈束を前記放出機構によって集束空間から払い出すよう構成し、前記紐案内板に、ニードルおよび結束紐が通過する段付き長孔状の開口を茎稈移動方向に長く形成し、紐案内板における集束空間に向かう外面にバネ線材からなる紐案内棒を前記開口の一側脇に沿って後向き片持ち状に配備し、この紐案内棒の後方遊端部に前記開口を横断する屈曲部を形成し、前記開口の前後中間に形成された紐受け段部に前記屈曲部を交差させた農用結束装置において、
前記紐案内板における集束空間に向かう外面に、前記開口の側脇に沿って茎稈案内用のリブを突設するとともに、このリブを前記紐案内棒の前記屈曲部よりも後方まで延出し、前記リブに形成した透孔に前記屈曲部を前後方向へ弾性変形移動可能に挿通してあることを特徴とする。
【0007】
上記構成によると、集束空間に詰め込まれた茎稈がリブで受け止められることで、紐案内棒の屈曲部に茎稈が強く押し付けられることが阻止されることになり、紐案内棒の屈曲部は茎稈に邪魔されることなく移動して、結束紐が紐受け段部から後方に通過することを許容する。
【0008】
従って、第1の発明によると、茎稈が集束空間に強く詰め込まれても、紐案内棒を円滑に弾性変形させ移動させて的確な結束作動を行わせることができる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、
前記紐案内板における集束空間に向かう外面に、前記開口の両側脇に沿って茎稈案内用のリブを突設し、前記紐案内棒が設けられる側の一方のリブに、前記屈曲部を挿通する前記透孔を設けてあるものである。
【0010】
上記構成によると、一対のリブの間の内奥に紐受け段部および紐案内棒の屈曲部が位置することになり、集束空間がわから紐案内板に押し付けられる茎稈が一対のリブの間に強く押し込められることがなく、紐案内棒の屈曲部が茎稈に邪魔されることなく容易に弾性変形することができ、茎稈束が放出される際の結束紐の移動を紐案内棒の屈曲部で阻害することがなく、第1の発明の上記効果を助長する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1に、本発明に係る茎稈結束装置を排ワラ結束装置として搭載した自脱型コンバインの後部における側面が、図2にその平面が、また、図3に排ワラ処理部の側面がそれぞれ示されている。機体後部に搭載された脱穀装置1の後端には円盤型の排ワラカッタCが連結されるとともに、この排ワラカッタCの後方に本発明に係る排ワラ結束装置(茎稈結束装置)Bが配備されている。排ワラカッタCの上方には流路切換え板2が後支点aを中心に上下揺動可能に配備さており、この流路切換え板2を下げて排ワラカッタCの上部入口を閉塞することで、脱穀装置1から搬出され排ワラ搬送装置3によって搬送されてきた横倒れ姿勢の排ワラを排ワラ結束装置Bに供給し、流路切換え板2を上げて排ワラカッタCの上部入口を開放することで、搬送されてきた排ワラを排ワラカッタCに導いて細断して下方に放出することができるようになっている。
【0012】
前記排ワラ結束装置Bは、横倒れ姿勢で供給されてきた排ワラ(茎稈)を所定量づつ収集して結束し、形成されたワラ束(茎稈束)を機体後方に放出するもであり、排ワラ穂先側に配備された伝動ケース4の上下中間部位に、供給されてきた排ワラを横倒れ姿勢で収集する集束空間Sが形成されている。図2に示すように、排ワラ結束装置Bの株元側に、搬入されてくる排ワラの株端を左右揺動する叩き板5によって叩き揃える株揃え装置Dが配備されている。
【0013】
前記集束空間Sの下側となる伝動ケース4の下部には、搬送されてきた排ワラを集束空間Sに向けて送り込むクランク式の掻き込みパッカー6、結束紐供給用のニードル7、集束空間Sに集められた排ワラの集束圧を感知する感知ドア8、等が装備されている。集束空間Sの上側となる伝動ケース4の上部には、搬送されてきた排ワラを掻き込みパッカー6の作用域に送り込むクランク式の補助パッカー9、集束空間Sの上壁を形成する紐案内板12、ノッタ・ビル方式の周知の結節機構10、クランク式の放出機構11が装備されている。掻き込みパッカー6および補助パッカー9は常時駆動されるとともに、下部のニードル7と上部の結節機構10、および、放出機構11は集束圧感知に基づいて間欠的に同調駆動されるようになっている。
【0014】
上記排ワラ結束装置Bの基本的な結束作動を以下に説明する。つまり、搬送されてきた排ワラは、先ず補助パッカー9によって後方に掻き込まれ、引き続き掻き込みパッカー6の掻き込み作用を受けて集束空間Sに詰め込まれる。感知ドア8に作用する集束圧が設定値未満の間は、伝動ケース4に内装された1回転クラッチ(図示せず)が切られており、ニードル7は集束空間Sの下方に退避した待機位置で停止している。このニードル7に同調連動されている結節機構10および放出機構11も待機状態で停止している。
【0015】
集束空間Sに所定量の排ワラが詰め込まれると、掻き込みパッカー6の掻き込み作動に伴って発生した設定値以上の集束圧を受けて感知ドア8が後退変位し、これによって1回転クラッチが起動可能状態になる。感知ドア8が感知作動した次回の掻き込みパッカー6の掻き込み作動(最終回の掻き込み作動)に同調して、所定のタイミングで1回転クラッチが入り作動し、ニードル7が駆動開始されるとともに結節機構10への駆動力伝達が開始される。
【0016】
掻き込みパッカー6が最終回の掻き込み作動を行うと、掻き込みパッカー6で排ワラを前後に押し分けた空間を通ってニードル7が排ワラ供給路を下から上に横断し、結節機構10の下方に配備されている紐案内板12を通過し、結節機構10の紐ホルダー14に先端部が保持されている結束紐hを集束空間Sの排ワラに前方から巻き付けなが結節機構10に供給する。このニードル7による紐供給作動に同調して結節機構10が作動し、後述のように、結節ビル13による結束紐hの結節、紐ホルダ14による結束紐hの切断および切断端の保持、等の結節作動が順次行われる。
【0017】
結節作動が終了すると、結節機構10と同調作動する放出機構11の放出アーム44が結束ワラを後方に押し出し移動させ、これに伴って結束紐hが結節ビル13から抜き出されて結び目が形成され、引き続く放出アーム44の後方移動によってワラ束Rが集束空間Sから後方に放出されてゆく。なお、この時点では感知ドア8は下方に後退して集束空間Sの後部出口を開放している。
【0018】
結節機構10で結節作動が完了して結束紐hの新しい切断端が紐ホルダー14にくわえ込み保持されるとニードル7は後退移動し、ニードル7が集束空間Sの下方の待機位置に戻った時点で1回転クラッチが自動的に切られてニードル7の駆動が停止される。感知ドア8が元の感知位置に上昇復帰し、これで1回の結束作動が完了して、後続の排ワラが引き続き集束されてゆく。
【0019】
以上のように構成された排ワラ結束装置Bにおける各部の詳細な構成を、以下に説明する。
最初に排ワラを掻き込み搬送する補助パッカー9は、図4に示すように、結束作用位置に対して排ワラ株元側に適当距離だけ離れた位置に配備されており、横向きに支架されて図3中反時計回りに常時回転駆動されるクランク軸16、このクランク軸16の両端に連結された左右一対のクランクアーム17、装置固定部に支点bを中心にして前後揺動可能に装着された揺動アーム18、および、クランクアーム17の遊端と揺動アーム18の遊端とに亘って枢支連結された板材製のパッカーアーム19とから構成されている。クランクアーム17の回転に伴うクランク作動によってパッカーアーム19の先端が前後に長い回動軌跡をもって循環回動することで、排ワラを掻き込みパッカー6の作用域に向けて搬送するようになっている。なお、左右一対のパッカーアーム19の内、排ワラ穂先側に位置するパッカーアーム19は左右2連式に構成されている。
【0020】
前記クランク軸16には、クランクアーム径よりも大径に構成された円形ドラム状の回転体20が取り付けられており、クランク機構にワラ屑などが巻き付くことが回転体20によって阻止されるとともに、回転体20がクランク軸16と一体に回転することで、回転体20の外周面が排ワラを後方に送込む機能を発揮する。
【0021】
図3に示すように、左右のパッカーアーム19の間には、リミットスイッチからなる排ワラ存否センサ21が回転体20の外径内に隠されて配備されている。この排ワラ存否センサ21は、排ワラ供給路に突入して前後に揺動偏位する感知レバー22によって操作されるようになっており、感知レバー22が排ワラに押されて後方に揺動することで排ワラの存在が感知される。排ワラの存在が感知されている間は、搬入されてくる排ワラの株端位置検出に基づいて、株揃え装置Dの叩き板5が自動的に排ワラ稈長に対応した最適な叩き位置となるように電動モータ23によって左右にネジ送り制御され、また、排ワラの搬入が途絶えたことが感知レバー22の前方復帰によって感知されると、株端位置の検出情報に関係なく叩き板5は現在位置に保持されるようになっている。
【0022】
図3〜5に示すように、前記収束空間Sの下側に、供給されてきた排ワラを下方から受け止めるように、丸棒材からなる排ワラ支持部材25がニードル7の移動軌跡の株元側に近接して配備固定されている。この排ワラ支持部材25は集束空間Sの後部出口から前部入口を越えて前方にまで延出されるとともに、排ワラ支持部材25の収束空間始端部に相当する部位で、かつ、ニードル7の通過軌跡の直後に位置させて排ワラ逆流防止用の落込み段差部25aが屈曲形成されている。
【0023】
排ワラ支持部材25より排ワラ株元側には平板からなるデッキ26が配備されるとともに、このデッキ26の排ワラ受け止め高さが、排ワラ支持部材25の落込み段差部25aの底面よりも更に低い位置に設定されており、落込み段差部25aを越えて集束空間Sに送込まれた排ワラの株元側が低いデッキ26で下方から受け止め支持される。このように穂先側に比べて嵩高い株元側がデッキ26で低く受け止められることで、大量の排ワラを崩れ動くことなく安定して集束することができるようになっている。
【0024】
集束空間Sの上方には、湾曲板バネ材からなる分離バネ27と支持バネ28がそれぞれ後ろ向き片持ち状に配備されている。支持バネ28はデッキ26に対向して配備されて、集束中の排ワラを集束空間Sの後部において受け止めるものであり、集束作動中は排ワラが集束空間Sから後方に逃げるのを阻止するとともに、ワラ束放出時には上方に撓んで逃げることができる。また、分離バネ27は支持バネ28よりも株端側に配備されており、集束空間Sに掻き込み供給される排ワラの通過を上方への弾性変形によって許容するが、ワラ束が放出される際に、結束されていない後続の排ワラがワラ束に引きずられて出て行くのをバネ先端で掻き取り阻止する。
【0025】
前記感知ドア8の前面には板バネ材からなるワラ受け板15が装着されている。このワラ受け板15は通常は前方上方に向けて片持ち状に張り出した姿勢にあり、この前方張り出し姿勢で排ワラを受け止めて集束圧を感知ドア8に伝達するが、感知ドア8が所定の集束圧を感知してニードル7が紐供給作動する際の掻き込みパッカー9による最後の掻き込み作動によって、集束された排ワラの量が多いとワラ受け板15が弾性後退変形して集束圧の異常な上昇が吸収抑制されるようになっている。
【0026】
図4,図5に示すように、紐案内板12の集束空間Sに向かう外面(図4では下向き面)には排ワラ持ち込み防止用として前後に長い3本のリブ12a,12b,12cが左右に並列して一体突設され、そのうちの排ワラ穂先側に位置する一対のリブ12a,12bの間に、ニードル7の通過用の開口50が形成されている。図10に示すように、前記開口50は、前後中間に紐受け段部dを備えた段付き長孔状に形成されており、前記紐受け段部dの前方部位において開口50を横断するように、紐受け金具51が紐案内板12の背面に取付られている。
【0027】
最も排ワラ穂先側に位置するリブ12aの根元に沿って、バネ線材からなる紐案内棒52が後向き片持ち状に配備され、その前端に屈曲形成したループ部が紐案内板12の外面に2本のボルト55によって一定姿勢に締め付け固定されている。この紐案内棒52の遊端側は前記開口50を横断するように屈曲されるとともに、その屈曲部52aが開口50の紐受け段部dに交差されている。前記リブ12aには前後に長い透孔53が形成されており、この透孔53に紐案内棒52の屈曲部52aが挿通されている。
【0028】
前記紐案内棒52は、結節機構10の結節作動を補助するものであり、図12〜図18の結節作動行程図を参照しながら紐案内棒52の機能を説明する。
(1)図12に示すように、集束中において、退避位置のニードル7から導出された結束紐hは、集束空間Sの後方を横断して紐案内板12の紐受け金具51に引っ掛けられた状態で開口50に挿入され、紐先端部が紐ホルダ14に保持固定され、集束空間Sに渡し掛けられた結束紐hの前方に排ワラRが詰め込まれてゆく。
【0029】
(2)所定量の排ワラRが収集されると、図13に示すように、ニードル7が集束空間Sを横断して紐案内板12の背部にまで移動し、ニードル7から導出された結束紐hが収集された排ワラRに前方から巻き付けられる。この時、巻き付けられた結束紐hは、紐受け金具51に引っ掛けられた状態で結節ビル13および紐ホルダ14における爪14aの回転作動軌跡内まで供給される。
【0030】
(3)ニードル7による紐供給が終了したタイミングで結節ビル13および紐ホルダ14が回転起動され、図14に示すように、閉じ状態の結節ビル13がニードル7で持ち込まれた紐部分と紐ホルダ14で保持されている紐部分とを2本掛けで巻き取ってゆく。
【0031】
(4)回動する結節ビル13の紐巻取り作動によって2本の紐部分が紐受け金具51の先端側にずり動かされ、図15に示すように、結節ビル13に巻き付けられた2本掛けの紐部分は紐受け金具51を後方に乗り越える。この場合、ニードル7側の紐部分は回動する紐ホルダ14の爪14aに引っ掛けられる。
【0032】
(5)紐受け金具51を後方に乗り越えた結束紐hは、開口50の紐受け段部dと紐案内棒52における屈曲部52aとの交差部位に受け止められ、かつ、結節ビル13の可動爪13aは開放作動する。
【0033】
(6)その後、図16に示すように、結節ビル13が更に回動することで可動爪13aが閉じ作動し、2本の紐部分を咥え込む。
【0034】
(7)結節ビル13の紐咥え込みが終了すると、紐ホルダ14の回動に伴って紐保持作用が解除され、これまで保持されていた紐先端部が自由になるとともに、ニードル7で持ち込まれた紐部分が紐ホルダ14で新たに保持される。
【0035】
(8)その後、図17に示すように、新たに保持された紐部分が、紐ホルダ14に備えられたカッタ14bによって紐ホルダ14と結節ビル13aとの間において切断される。
【0036】
(9)図17に示すように、結節ビル13および紐ホルダ14が1回転作動して初期位置に復帰して停止すると、放出機構11によってワラ束が強制的に後方に押し出されて、ワラ束が後方に移動することで、ワラ束に巻き付けられた結束紐hが後方(図17では右方)に引っ張られ、閉じ状態になる結節ビル13に巻き付けられた結束紐hの輪が爪先に抜き出され、結節ビル13に咥え込まれている紐部分が相対的に結束紐hの輪に通される。この状態でワラ束が更に後方移動することで、結束紐hの輪が締められて結び目が形成され、更に、咥え込まれている紐部分が結節ビル10aの先端から抜け出して結節が完了する。
【0037】
(10)上記放出作動において、図18に示すように、紐案内棒52は屈曲部52aに働く結束紐hの圧力によって弾性変形され、紐案内棒52の屈曲部52aが紐受け段部dから離れるように変位することで、結束紐hが紐案内棒52の屈曲部52aと紐受け段部dとの交差部位を後方にすり抜けてゆく。この場合に、集束空間Sに詰め込まれた排ワラRが紐案内板12に強く押し付けられても、リブ12a,12b,12cが排ワラを受け止めるので、排ワラの一部が紐案内棒52の屈曲部52aに強く押し付けられることがなく、紐案内棒52の屈曲部52aは排ワラに邪魔されることなく移動することができる。
【0038】
紐案内板12に下方から対向するように掻き込みパッカー6が配備されている。掻き込みパッカー6は、前後幅広に形成された左右一対のパッカーアーム31a,31bと、棒材からなる掻き込みアーム32を備えており、両パッカーアーム31a,31bが紐案内板12における左右の前記リブ12aの外側において紐案内板12の下面に対向配備されるとともに、掻き込みアーム32は前記デッキ26よりも排ワラ株元側に離れた位置で作用するように株元側のパッカーアーム31bから延出されている。
【0039】
パッカーアーム31a,31bの中間部が、常時回転するパッカー駆動軸33に固着したクランクアーム34の遊端部に枢支連結されるとともに、装置固定部に支点c回りに揺動可能に装着した揺動アーム35の遊端部とパッカーアーム31a,31bの下端部とが枢支連結され、クランクアーム34の連続回転によってパッカーアーム31a,31bの先端が所定の先端軌跡Pa,Pbをもって循環回動して、前記補助パッカー9で送込まれてきた排ワラを集束空間Sに向けて送り込むよう構成されている。
【0040】
株元側のパッカーアーム31bの先端が穂先側のパッカーアーム31aの先端よりも低く設定されて、穂先側のパッカーアーム31aの先端軌跡Paが紐案内板12のリブ12aの下端より上方にまで及ぶのに対して、株元側のパッカーアーム31bの先端軌跡Pbは紐案内板12のリブ12aの下端近くを通過するようになっている。これによると、穂先側のパッカーアーム31aの先端軌跡Paと紐案内板12の下面との最小間隔t1よりも、株元側のパッカーアーム31bの先端軌跡Pbと紐案内板12の下面との最小間隔t2が大きいものとなるので、パッカーアーム31a,31bの先端部で排ワラが紐案内板12の近くにまで掻き込まれた際、嵩高い排ワラ株元側が過剰な力で紐案内板12およびリブ12aに押付けられることがなくなり、高流量の排ワラ搬送が行われても、掻き込みパッカー6と紐案内板12との間で排ワラ噛み込みロック現象が未然に回避されるようになっている。
【0041】
前記ニードル7は、前記感知ドア8と一体回動するドア軸36を中心にして回動可能に装着されるとともに、ニードル駆動軸37に設けられた駆動アーム38とニードル7とが連動リンク39で連動連結されている。ケース内装の図示されない1回転クラッチが入れられることでニードル駆動軸37が起動されて、駆動アーム38が1回転する内の前半の回転によってニードル7は待機位置から上方に揺動して集束空間Sを越え紐供給作動を行い、駆動アーム38の後半の回転によってニードル7が下方に揺動して元の待機位置にまで復帰作動するよう構成されている。
【0042】
図3,図6に示すように、前記放出機構11は、結節機構10を駆動する間欠駆動ギヤ40の駆動軸41に軸心P1周りに回転自在に遊嵌されたクランクアーム42と、固定の支点P2を中心に揺動自在に支持された揺動アーム43と、クランクアー42の先端支点P3と揺動アーム43の先端支点P4に亘って枢支連結された前記放出アーム44とからなり、図2に示すように、放出アーム44は、板材からなる複数の放出アーム本体44aをL形に屈曲したパイプ材44bに並列固定して構成されている。クランクアーム42が軸心P1周りに図中反時計回りに回転することによって放出アーム44の先端が、集束空間Sの前部から後部に亘る一定の循環回動軌跡Kを描くように構成されている。
【0043】
前記間欠駆動ギヤ40には、クランクアーム42の回転軌跡に干渉する駆動ピン45が設けられており、この駆動ピン45によってクランクアーム42が接当押圧されて前記方向に回転駆動されるようになっている。駆動ピン45は、中心ピン45aにゴム製のカラー45bを外嵌して構成されるとともに、クランクアーム42の基部が駆動ピン45の回動軌跡に干渉するよう突出形成されている。この突出部位には、駆動ピン45を受け止めるゴム製の接当部材47が埋設装備されており、駆動ピン45によるクランクアーム42の接当駆動が開始される際の衝撃および接当騒音の軽減が図られている。揺動アーム43の支点P2と放出アーム44とに亘って折り込み用バネ46が張設されている。
【0044】
前記放出機構11の放出作動を図6〜図9に基づいて説明する。図6に示すように、排ワラ集束中は間欠駆動ギヤ40は一定回転位相で保持されており、この場合、原点b0 に位置する駆動ピン45に対してクランクアーム42は先行回転した位置にある。つまり、放出アーム44の先端は、循環回動軌跡Kにおける前部下方の格納位置a0 で待機している。
【0045】
結節駆動のために駆動ギヤ40が図中反時計回りに回転するが、初期一定期間は駆動ピン45がクランクアーム42を押圧しないので、放出機構11は待機姿勢を維持する。結節作動が進んで駆動ピン45が位置b1 に至るとクランクアーム42を押圧回動を開始して、図7に示すように、放出アーム44は格納位置a0 から図中反時計回りに進行して集束空間Sを後方に移動し、結束ワラを後方に押し出し作用する。
【0046】
図8に示すように、駆動ギヤ40が1回転して駆動ピン45が原点b0 に至ると、放出アーム44等が慣性により先行移動し、駆動ピン45に対してクランクアーム42が離れてゆく。
【0047】
図9に示すように、クランクアーム42の軸心P1、先端支点P3、および、揺動アーム43の先端支点P4が一直線上に並ぶデッドポイントDPに到ると、折り込み用バネ46の張力が揺動アーム43と放出アーム11との屈折を促進する方向に働き、クランクアーム42の先端支点P3がデッドポイントDPを越える方向に移動する。この先端支点P3がデッドポイントDPを越えると、折り込み用バネ46の張力が揺動アーム43を先行揺動させる方向(図9では時計回り方向)に働き、放出機構11の全体が折り込み用バネ46によって、図6に示す元の格納状態に折り込まれる。クランクアーム42の基部には接当突起48が設けられており、放出機構11の全体が折り込み用バネ46によって格納状態に折り込まれ際、停止している駆動ピン45にクランクアーム42の前記接当突起48が背部から接当して、放出アーム44が格納位置a0 に正しく復帰保持される。
【0048】
〔別実施例〕
(1)クランクアーム42を格納位置a0 に位置決めする前記接当突起48は、クランクアーム42の基部に一体形成する他に、別部材からなる接当突起48を付設して実施することもできる。接当突起48の接当部位にアジャストボルトを備えて、接当位置を微調節できるように構成しておくと、精度の高い格納位置復帰を行うことができる。
(2)本発明は、バインダーに装備されて刈取り茎稈の結束を行う結束装置に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】コンバイン後部の側面図
【図2】排ワラ結束装置の背面図
【図3】排ワラ結束装置の側面図
【図4】排ワラ結束装置における要部の背面図
【図5】排ワラ結束装置の要部側面図
【図6】放出アームの作動行程を示す側面図
【図7】放出アームの作動行程を示す側面図
【図8】放出アームの作動行程を示す側面図
【図9】放出アームの作動行程を示す側面図
【図10】紐案内板の集束空間側から見た正面図
【図11】紐案内板の斜視図
【図12】結節作動行程図
【図13】結節作動行程図
【図14】結節作動行程図
【図15】結節作動行程図
【図16】結節作動行程図
【図17】結節作動行程図
【図18】結節作動行明図
【符号の説明】
【0050】
6 掻込みパッカー
10 結節機構
11 放出機構
12 紐案内板
12a リブ
12b リブ
50 開口
52 紐案内棒
52a 屈曲部
53 透孔
d 紐受け段部
S 集束空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集束空間の一側脇に紐案内板、ノッタ・ビル方式の結節機構、および、放出機構を配備し、前記集束空間の他側脇に結束紐供給用のニードルと茎稈送り込み用の掻込みパッカーを配備し、収束空間の入口前方において茎稈供給路を横断して進出移動するニードルによって、収束空間に収集された茎稈に結束紐を巻きつけながら前記紐案内板の背部に位置する前記結節機構に供給して結節し、結束した茎稈束を前記放出機構によって集束空間から払い出すよう構成し、前記紐案内板に、ニードルおよび結束紐が通過する段付き長孔状の開口を茎稈移動方向に長く形成し、紐案内板における集束空間に向かう外面にバネ線材からなる紐案内棒を前記開口の一側脇に沿って後向き片持ち状に配備し、この紐案内棒の後方遊端部に前記開口を横断する屈曲部を形成し、前記開口の前後中間に形成された紐受け段部に前記屈曲部を交差させた農用結束装置において、
前記紐案内板における集束空間に向かう外面に、前記開口の側脇に沿って茎稈案内用のリブを突設するとともに、このリブを前記紐案内棒の前記屈曲部よりも後方まで延出し、前記リブに形成した透孔に前記屈曲部を前後方向へ弾性変形移動可能に挿通してあることを特徴とする農用結束装置。
【請求項2】
前記紐案内板における集束空間に向かう外面に、前記開口の両側脇に沿って茎稈案内用のリブを突設し、前記紐案内棒が設けられる側の一方のリブに、前記屈曲部を挿通する前記透孔を設けてある請求項1記載の農用結束装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−182980(P2008−182980A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−20965(P2007−20965)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】