説明

送風機

【課題】作業環境を改善すると共にタクトタイムを低減して生産性の向上が図れる構造にした、振動と空気漏れを低減することができる送風機を提供する。
【解決手段】吹出口13を備えたケーシング11と、吸込口34を備えたカバー29と、ベアリング16で回転可能に支持したシャフト20と、シャフト20を回転駆動するモータ部25と、シャフト20に一体回転可能に取り付けられた送風用ファン26と、から構成される送風機10において、カバー29との接合面28aに対向するケーシング11の内径側に設けた環状の凹部31と、凹部31内に配設されたリング部材32を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風機の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、印刷製本用装置の丁合機や紙折機等では送風機を使用し、紙を給紙する際、重ねてある用紙に送風機から風を吹き付けて紙を浮かせ、その浮き上がった紙の一枚目をエアで回転体に吸い付け、そのまま回転体を回転させて用紙を送り出すような方式が採られている。
【0003】
また、自動車等の車両用空調装置でも送風機を使用し、送風用ファンを電動モータで駆動している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
さらに、コンピュータやコピー機、プリンター等の各種OA機器でも送風機が使用されており、送風機を機器筐体の側壁に通気口を設けてそこに取り付け、内部の熱を機器の外部に放出させて筐体内の温度上昇を防止している。
【0005】
従来、印刷製本用装置の丁合機や紙折機用等として多く使用されている送風機の一例を図7乃至図9に基づいて以下に説明する。同図において、送風機50は、吹出口51(図8参照)を備えたケーシング52と、吸込口53を備えたカバー54と、軸受部材であるベアリング55,55によって支持したシャフト56と、そのシャフト56を回転駆動するモータ部57と、前記シャフト56に一体回転可能に取り付けられた送風用ファン58と、を設けた構成になっている。そして、送風される空気は、吸込口53から吸い込まれ、送風用ファン58の回転によって遠心力を受け、その送風用ファン58の外周に導かれて吹出口51から吐出される。
【0006】
また、この送風機構成において、ケーシング52とカバー54との結合は、ケーシング52側に設けたフランジ部59の接合面59aとカバー54側に設けたフランジ部60の接合面60aを対向させて、これを直接当接させると共に、カバー54のフランジ部60に設けた取付孔61を通ってケーシング52のフランジ部59に設けた取付孔62にタッピングスクリューまたはなべ小ねじ63をねじ込み、そのタッピングスクリューまたはなべ小ねじ63でフランジ部59の接合面59aとフランジ部60の接合面60aの間を締め付けることにより固定している。なお、通常、タッピングスクリューまたはなべ小ねじ63で固定する箇所は、図8に示すように略90°の間隔をおいた4箇所あるいは120°の間隔をおいた3箇所である。
【0007】
このように、ケーシング52側の接合面59aとカバー54側の接合面60aを直接当接させ、かつ、タッピングスクリューまたはなべ小ねじ63でフランジ部59の接合面59aとフランジ部60の接合面60aの間を締め付けている送風機50では、タッピングスクリューまたはなべ小ねじ63で固定している箇所にあっては締付力(軸力)にて密着固定される。しかしながら、タッピングスクリューまたはなべ小ねじ63,63間では、タッピングスクリューまたはなべ小ねじ63を締め付けることにより、厚みの薄いカバー54側のフランジ部60の一部が変形を起こし、その一部がケーシング52側におけるフランジ部59の接合面59aから離れて隙間を作り、送風機の内部圧力が高いため、その隙間より空気漏れを起す事で、振動騒音の誘発や隙間部のケーシングが共振して振動し、問題となっていた。
【0008】
このような問題に対して、従来では、ケーシング52側の接合面59aとカバー54側の接合面60aとの間に接着剤として液状のシール材を塗布し、その後固化させて接着を図り、振動の発生を抑えると共に空気漏れを防ぐようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−21797号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、ケーシング52側の接合面59aとカバー54側の接合面60aとの間に接着剤として液状のシール材を塗布して接着する方法では、接着剤による臭い等が発生して作業環境を悪くしている問題点があった。また、シール材が固化するまでの時間を要するので、タクトタイムが大きく、生産性が悪いという問題点もあった。
【0011】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、作業環境を改善すると共にタクトタイムを低減して生産性の向上が図れる構造にした、振動と空気漏れを低減することができる送風機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、本発明の送風機は、吹出口を備えたケーシングと、吸込口を備えたカバーと、軸受部材によって支持したシャフトにヨーク及びステータを配設し、該ステータの巻線への電流の供給によって前記シャフトを回転させるモータ部と、前記シャフトに一体回転可能に取り付けられた送風用ファンと、から構成される送風機において、前記カバーとの接合面に対向する前記ケーシングの内径側に設けた環状の凹部と、前記凹部内に配設されたリング部材と、を備える構成とした。
【0013】
この構成によれば、ケーシングの接合面またはカバーの接合面に接着剤を塗布することなく、ケーシングの内径側に設けた凹部内にリング部材を配設してカバーを閉じると、ケーシングとカバーの間の隙間が埋まり、ケーシングとカバーの接合面の間より空気が漏れるのを抑えてケーシングとカバーの間で発生する振動を低減することができる。
【0014】
また、前記リング部材は、前記カバーとの接合面に対向する前記ケーシングの端面より所定の高さを突出させた厚みを有してなる、構成が好ましい。
【0015】
この構成によれば、カバーを閉じると、カバーの接合面とケーシングの接合面の間でリング部材を挟んで押さえ込み、ケーシングとカバーの間の隙間をそのリング部材により吸収することができる。これにより、更に、ケーシングとカバーの接合面の間より空気が漏れるのを抑えると共に、ケーシングとカバーの間で発生する振動を低減することができる。
【0016】
また、前記リング部材は、金属部材である、構成が好ましい。
【0017】
この構成によれば、リング部材を金属部材とすることにより、リング部材の耐久性が向上する。これにより、防振と空気漏れ防止効果を長期間に亘って良好に維持することができる。
【0018】
また、前記カバーは、弾性変形可能な部材である、構成が好ましい。
【0019】
この構成によれば、カバーの弾性変形を利用して、リング部材をケーシングの接合面に押圧することができる。これにより、更に、ケーシングとカバーの接合面の間より空気が漏れるのを抑えてケーシングとカバーの間で発生する振動を低減することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ケーシングの接合面またはカバーの接合面に接着剤を塗布することなく、ケーシングとカバーの接合面の間より空気が漏れるのを抑えると共に、ケーシングとカバーの間で発生する振動を低減することができるので、従来問題となっていた接着剤の臭いを無くして作業環境を改善することができる。また、リング部材は配設するだけで済み、接着剤の固化を待つ時間等を必要としないので、タクトタイムを短縮することができ、生産性の向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る送風機の一形態を示す一部断面図である。
【図2】図1に示す送風機の右側面図である。
【図3】図1のA部拡大断面図である。
【図4】カバーを取り外して見た図1に示す送風機の右側面図である。
【図5】図1に示す送風機のカバーを示す平面図である。
【図6】図1に示す送風機のリング部材を示す図であり、(a)は平面図、(b)側面図である。
【図7】従来の送風機の一例を示す一部断面図である。
【図8】図7に示す送風機の右側面図である。
【図9】図7のB部拡大断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)について詳細に説明する。
【0023】
図1〜図3は本発明に係る送風機の一実施形態を示し、図1はその送風機の一部断面図、図2はその側面図(図1の右側から見た図)、図3は図1のA部拡大断面図である。
【0024】
図1〜図3において、送風機10は、一端側が閉塞され他端側が開口された、アルミダイキャストおよび合成樹脂からなる略カップ形円筒状のケーシング11を有する。そのケーシング11には、その閉塞部11aの中央部に貫通孔12が形成され、外周部に送風機10の吹出口13(図2参照)が形成されている。
【0025】
また、貫通孔12には、一端側を閉塞部11aにビス14で固定すると共に他端側をケーシング11の開口側に向かって突出させて、ケーシング11と同軸的に配置してなる筒状をした軸受保持体15が配設されている。
【0026】
その軸受保持体15の内周部には軸受部材としてのベアリング16,16が取り付けられ、外周部にはステータヨーク17と該ステータヨーク17に巻回された巻線18とでなるステータ19が固定して取り付けられている。一方、軸受保持体15の内周部には、ベアリング16,16により回転自在に支持されてなるシャフト20が、該軸受保持体15の他端側からケーシング11内に先端側を突出した状態にして配設されている。
【0027】
また、シャフト20の前記突出先端側には、略カップ状のヨーク21が取り付けられており、そのヨーク21の内周にマグネット22及びスペーサ23が接着等で固定されて、ロータ24が形成されている。
【0028】
そして、マグネット22に対向する位置、すなわちマグネット22の内周側には、該マグネット22と所定の距離をおいて、前記ステータ19が前記軸受保持体15に固定された状態で配置されている。これらステータ19及びロータ24で、送風機10のモータ部25を形成している。
【0029】
また、ヨーク21の背面側(図1の右側)において、シャフト20上には後述するカバー29の吸込口34から吸い込んだ外気を高風圧にして吹出口13から排出するための送風用ファン26が一体回転可能に取り付けられている。
【0030】
さらに、ケーシング11の開口端にはフランジ部27が設けられている。そのケーシング11の開口端は、フランジ部27と対応したフランジ部28を設けてなるカバー29で覆われ、そのカバー29により閉塞されている。
【0031】
また、ケーシング11のフランジ部27における接合面27aには、図4に示すように4個の取付孔30が略90°間隔で形成されている。さらに、ケーシング11の開口端側には、内径側から外径側に向かって連続して切欠された凹部31が、開口周辺全体に亘って環状に形成されており、その凹部31内にリング部材32が配設される。リング部材32は、板状の金属部材をプレス打ち抜きし、図6に示すように環状に形成されており、その厚みは凹部31内に収容した際、その凹部31から約0.2〜0.3mm突出する寸法で設定される。
【0032】
一方、前記カバー29は、弾性変形可能な金属部材または合成樹脂材で形成されており、フランジ部28の接合面28aにはケーシング11の取付孔30に対応して同じく略90°間隔で形成された取付孔33が形成されている。また、カバー29の天井面(図1に示す送風機10の右側面)の略中央には、吸込口34が形成されており、この吸込口34を通して外気が送風機10内に取り込まれるようになっている。
【0033】
そして、このように構成されたカバー29をケーシング11に取り付ける場合は、リング部材32を凹部31内に配設したケーシング11に対し、取付孔33を取付孔30に対応させた状態でカバー29側の接合面28aをケーシング11側の接合面27aに対向させ、まずフランジ部27とフランジ部28の間にリング部材32を挟む。また、その後からタッピングスクリューまたはなべ小ねじ35を、カバー29側から取付孔33を通って取付孔30にねじ込んで締め付ける。この締め付け作業をそれぞれ4箇所について行うと、フランジ部27とフランジ部28の間にリング部材32を強く挟んだ状態で、ケーシング11にその開口端を塞いでカバー29を取り付けることができる。
【0034】
また、タッピングスクリューまたはなべ小ねじ35で締め付けられた部分では、リング部材32が凹部31から突出している0.2〜0.3mm分の高さを吸収するよう、接合面28aの一部が弾性変形して接合面27aに締め付けられる。これにより、リング部材32がフランジ部27とフランジ部28の間でより強固に挟まれ、フランジ部27とフランジ部28の間の隙間を無くす。
【0035】
このように構成された送風機10では、ステータ19の巻線18への電流が供給されるとモータ部25が駆動され、ロータ24がシャフト20及び送風用ファン26と共に一体に回転される。また、送風用ファン26の回転により送風される空気は吸込口34から吸い込まれ、送風用ファン26の回転によって遠心力を受け、送風用ファン26の外周に導かれて吹出口13から吐出される。
【0036】
したがって、この送風機10では、ケーシング11の接合面27aまたはカバー29の接合面28aに接着剤を塗布することなく、ケーシング11の内径側に設けた凹部31内にリング部材32を配設してカバー29を閉じると、ケーシング11とカバー29の間の隙間が埋まり、ケーシング11とカバー29の間で発生する振動を抑えて低減できると共に、ケーシング11の接合面27aとカバー29の接合面28aの間より空気が漏れるのを抑えて低減することができる。
【0037】
なお、上記実施の形態では、リング部材32を金属部材で形成した場合として説明したが、例えば樹脂材等であってもよいものである。
【0038】
また、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれものである。
【符号の説明】
【0039】
10 送風機
11 ケーシング
13 吹出口
16 ベアリング(軸受部材)
19 ステータ
20 シャフト
24 ロータ
25 モータ部
26 送風用ファン
27 フランジ部
27a 接合面
28 フランジ部
28a 接合面
29 カバー
30 取付孔
31 凹部
32 リング部材
33 取付孔
34 吸込口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吹出口を備えたケーシングと、吸込口を備えたカバーと、軸受部材で回転可能に支持したシャフトと、該シャフトを回転駆動するモータ部と、前記シャフトに一体回転可能に取り付けられた送風用ファンと、から構成される送風機において、
前記カバーとの接合面に対向する前記ケーシングの内径側に設けた環状の凹部と、
前記凹部内に配設されたリング部材と、
を備えたことを特徴とする送風機。
【請求項2】
前記リング部材は、前記カバーとの接合面に対向する前記ケーシングの端面より所定の高さを突出させた厚みを有してなることを特徴とする請求項1に記載の送風機。
【請求項3】
前記リング部材は、金属部材であることを特徴とする請求項1または2に記載の送風機。
【請求項4】
前記カバーは、弾性変形可能な部材であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の送風機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−96231(P2013−96231A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236472(P2011−236472)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】