説明

通信システムおよび通信方法

【課題】 電子時計と電子機器との間で無線通信を行う通信システムにおいて、電子時計の運針タイミングと通信データの送受信タイミングとが容易に重なってしまうことを防いで、効率的に通信データを送受信できるようにする。
【解決手段】 電子機器には、通信データを電子時計の運針間隔に応じたデータ量の分割データに切り分けて、当該分割データを運針の間の期間に送信していく分割送信手段が設けられ、電子時計には、運針の間の期間に電子機器から送信されてくる前記分割データを複数回に渡って受信していく分割受信手段が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ステッピングモータにより指針を駆動する電子時計および電子機器からなる通信システム、および、その通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばブルートゥース(Bluetooth;登録商標)の通信モジュールを用いて、腕時計と携帯電話機との間でデータ通信を行うシステムが提案されている(例えば、特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−152327号公報
【特許文献2】特開2002−223475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
指針をステッピングモータで駆動する電子時計で無線通信を行う場合、電波の送受信タイミングと運針タイミングとが重なると、運針に伴う電磁的なノイズによって通信エラーが生じることがある。また、電波の送受信に必要な比較的に大きな消費電力によってステッピングモータの駆動に影響が生じることもある。
【0005】
また、電子時計の中には、運針周期が様々に切り替わるものがある。例えば、1秒ごとに秒針を運針する通常の時刻表示モード、複数の指針を32pps(パルス毎秒)や16ppsで駆動する早送りモード、秒針を所定の情報を指示させるために停止させる一方、時刻表示のために分針を10秒ごとに時針を2分ごとにそれぞれ運針する特定機能モードなど、様々に駆動周期が切り替わる。
【0006】
この発明の目的は、電子時計と電子機器との間で無線通信を行う通信システムにおいて、電子時計の運針タイミングと通信データの送受信タイミングとが容易に重なってしまうことを回避し、効率的に通信データを送受信できる通信システムおよび通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
ステッピングモータにより指針を駆動する電子時計と、この電子時計と無線通信を行う電子機器とを備えた通信システムにおいて、
前記電子機器は、
無線通信を行う第1無線通信手段と、
前記第1無線通信手段により前記電子時計へ通信データを送信する場合に、当該通信データを前記指針の駆動間隔に応じたデータ量の分割データに切り分けて、当該分割データを前記指針の駆動期間を外した期間に送信していく分割送信手段とを備え、
前記電子時計は、
前記電子機器と無線通信を行う第2無線通信手段と、
前記指針の駆動期間を外した期間に前記電子機器から送信されてくる前記分割データを前記第2無線通信手段により複数回に渡って受信していく分割受信手段とを備えていることを特徴としている。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の通信システムにおいて、
前記電子機器は、
前記分割送信手段により前記分割データが複数回に渡って送信されていく間に前記指針の駆動間隔を確認する間隔確認手段を備え、
前記分割送信手段は、
前記間隔確認手段により確認された前記指針の駆動間隔が変更された場合に、前記分割データのデータ量を新たな駆動間隔に応じて変更して前記通信データから前記分割データを切り分けていくことを特徴としている。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の通信システムにおいて、
前記電子機器は、
前記指針の駆動が有ったことを示す駆動通知信号を前記電子時計に要求する通知要求手段と、
前記電子時計から前記駆動通知信号を前記第1無線通信手段により受信する通知受信手段と、
を備え、
前記電子機器の前記間隔確認手段は、
受信した前記駆動通知信号に基づいて前記指針の駆動間隔を確認し、
前記電子時計は、
前記電子機器からの要求に応じて前記駆動通知信号を前記第2無線通信手段により前記電子機器へ送信する通知送信手段を備えていることを特徴としている。
【0010】
請求項4記載の発明は、
第1無線通信手段を備えた電子機器と、ステッピングモータにより指針を駆動するとともに第2無線通信手段を備えた電子時計との間で、データ通信を行わせる通信方法において、
前記電子機器から前記電子時計へ通信データを送信する場合に、前記電子機器の制御手段が、当該通信データを前記指針の駆動間隔に応じたデータ量の分割データに切り分けていく分割ステップと、
前記電子機器の前記第1無線通信手段が、前記分割ステップにより切り分けられた前記分割データを前記指針の駆動期間を外した期間に送信していく送信ステップと、
前記電子時計の前記第2無線通信手段が、前記指針の駆動期間を外した期間に前記電子機器から送信されてくる前記分割データを複数回に渡って受信していく分割受信ステップと、
を含むことを特徴としている。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の通信方法において、
前記分割ステップおよび前記送信ステップにより前記分割データが複数回に渡って送信されていく間に、前記電子機器の制御手段が前記指針の駆動間隔を確認する間隔確認ステップを含み、
前記分割ステップは、
前記間隔確認ステップにより確認された前記指針の駆動間隔が変更された場合に、前記分割データのデータ量を新たな駆動間隔に応じて変更して前記通信データから前記分割データを切り分けていくことを特徴としている。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の通信方法において、
前記電子機器の制御手段が前記指針の駆動が有ったことを示す駆動通知信号を前記電子時計に要求する通知要求ステップと、
前記電子機器の前記第1無線通信手段が前記電子時計から前記駆動通知信号を受信する通知受信ステップと、
前記電子時計の前記第2無線通信手段が前記電子機器からの要求に応じて前記駆動通知信号を前記電子機器へ送信する通知送信ステップと、
を含み、
前記間隔確認ステップは、
前記通知受信ステップにより受信された駆動通知信号に基づいて前記指針の駆動間隔を確認することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に従うと、指針の駆動間隔に応じたデータ量で通信データを切り分け、この切り分けられた分割データを指針の駆動期間を外した期間に送受信するので、運針タイミングと通信データの送受信タイミングとが容易に重なることなく、効率的に通信データを送受信させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態の電子時計の全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る電子機器の実施形態である通信端末の全体構成を示すブロック図である。
【図3】電子時計と通信端末との通信シーケンス(a)と電子時計の運針タイミング(b)とを示したタイムチャートである。
【図4】電子時計のCPUにより実行される分割受信処理の制御手順を示すフローチャートである。
【図5】通信端末のCPUにより実行される分割送信処理の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1と図2には、この実施形態の通信システムを構成する電子時計40および電子機器としての通信端末10の全体構成をそれぞれ表わしたブロック図を示す。
【0017】
この実施の形態の通信システムは、無線により通話が可能な携帯電話機などの通信端末10と、腕に装着して使用する電子時計40とから構成される。通信端末10と電子時計40とは、それぞれ短距離無線通信の機能をそれぞれ有し、互いに通信接続が確立された状態で無線信号により通信データの送受信が可能になっている。このような通信により、例えば、通信端末10に音声着信やメール着信があった場合に、これらの通知データを電子時計40へ送信してユーザに着信を報知する処理を行ったり、また通信端末10から正確な時刻データを電子時計40へ送信して電子時計40の時刻修正を行ったり、通信端末10が通信ネットワークからダウンロードした情報を電子時計40に送信して関連する表示出力を行わせたり、種々の連携機能を実現させるようになっている。
【0018】
電子時計40は、図1に示すように、機器の全体的な制御を行うCPU(中央演算処理装置)41と、CPU41が実行する制御プログラムや制御データを格納したROM(Read Only Memory)42と、CPU41に作業用のメモリ空間を供給するRAM(Random Access Memory)43と、外部からユーザが操作入力を行うためのスイッチ44と、現在時刻を計時する計時回路45と、腕時計本体の正面部に設けられ時刻表示や種々の機能表示を行う液晶表示部(LCD)46と、液晶表示部46を駆動する液晶ドライバ47と、アンテナAN41を介して短距離無線通信を行うブルートゥース(Bluetooth)モジュール(第2無線通信手段)48と、ブルートゥースモジュール48を介して送受信されるデータに対してシリアル/パラレル変換等のデータ処理を行うUART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)49と、振動によりユーザに報知を行う振動モータ50およびそのドライバ51と、発光点滅等によりユーザに報知を行う発光ダイオード52およびそのドライバ53と、ブザー音によりユーザにアラーム報知を行うピエゾ素子54およびそのドライバ55と、回転して時刻等を表示する複数の指針(例えば秒針、分針、時針など)59と、複数の指針59を駆動する複数のモータ(例えば第1〜第3モータ)56およびそのドライバ57と、複数のモータ56の回転運動を複数の指針59にそれぞれ伝達する輪列機構58と、CPU41と各部との間で信号をやり取りするバス60等を備えている。
【0019】
複数のモータ56は、それぞれパルス状の駆動信号を受けて所定角度(例えば180°)ずつ回転するステッピングモータである。
【0020】
ROM42には、制御プログラムとして、指針59を回転させて時刻やその他の情報を表示させる指針制御処理のプログラムと、液晶表示部46により通信端末10と連携した種々の情報を表示させたり報知部(50,52,54)を駆動させたりする連携機能処理のプログラムと、運針タイミングをなるだけ避けて通信端末10からデータ受信を行う分割受信処理のプログラムなどが格納されている。この分割受信処理のプログラムとこれを実行するCPU41により分割受信手段が構成される。
【0021】
上記の指針制御処理では、複数の指針59のうち秒針を1秒ごと分針を10秒ごと時針を2分ごとにそれぞれ運針する通常の時刻表示モード、複数の指針59を高速に駆動する早送りモード、秒針を他の情報を指示させるために停止させて分針と時針で通常の時刻表示をさせる特定機能モードなど、所定条件に従って駆動モードが切り替わり、それにより一番早い指針59の運針スピードが変化するようになっている。
【0022】
通信端末10は、図2に示すように、機器の全体的な制御を行うCPU11と、CPU11が実行する制御プログラムや制御データを格納したROM12と、CPU41に作業用のメモリ空間を供給するRAM13と、複数の操作キーを有する操作部14と、種々の機能表示を行う液晶表示部(LCD)15およびその表示ドライバ16と、通話時の音声入出力を行うスピーカ17およびマイク18と、入出力される音声信号とデジタルデータとの相互変換を行うコーデック19と、アンテナAN11を介して基地局との間で無線信号の送受信を行うRF送受信回路20と、コーデック19から入出力される通話音声のデジタルデータや種々の送受信データの変調および復調処理を行う通信回路21と、アンテナAN12を介して短距離無線通信を行うブルートゥース(Bluetooth)モジュール(第1無線通信手段)22と、ブルートゥースモジュール22を介して送受信されるデータに対してシリアル/パラレル変換等のデータ処理を行うUART23と、振動により着信を知らせる振動モータ24およびそのドライバ25と、CPU11と各部との間で信号をやりとりするバス26等を備えている。
【0023】
ROM12には、制御プログラムとして、携帯電話機の種々の機能を実現するメイン制御処理のプログラムや、運針タイミングをなるだけ避けて電子時計40にデータ送信を行う分割送信処理のプログラムなどが格納されている。この分割送信処理のプログラムとこれを実行するCPU11とにより分割送信手段および制御手段が構成される。
【0024】
次に、上記の通信端末10と電子時計40との間で行われるブルートゥースモジュール48,22を介した通信動作について説明する。
【0025】
図3には、電子時計40と通信端末10との通信シーケンス(a)および電子時計40の運針タイミング(b)とを表わしたタイムチャートを示す。図3(b)では丸点によりモータ56が駆動される運針期間を示している。
【0026】
この実施形態の通信システムでは、図3(a),(b)に示すように、通信端末10から電子時計40へデータ量の比較的に大きな通信データを送信する際に、運針タイミングとデータ通信の送受信タイミングとが容易に重ならないように、電子時計40の運針間隔に合わせたデータ量ごとに通信データを切り分けて、この切り分けられた分割データを運針の間の期間に複数回に渡って送受信していく。
【0027】
分割データのデータ量は、次のように決定する。すなわち、電子時計40の最小運針間隔が1秒のときに運針の間の期間に送信できるデータ量がα(byte)、現在の運針間隔が1/x秒とすれば、この運針の間の期間に送信できるデータ量β(byte)は、次式(1)のように求める。
β = α/x ・・・ (1)
【0028】
このように、通信データを運針間隔に対応するデータ量に切り分けて複数回に渡って送信していくことで、大きなデータ量の通信データを送信する場合でも、運針タイミングと送受信タイミングとが重ならないように処理することができる。
【0029】
また、この実施形態の通信システムでは、図3(a)に示すように、分割データを複数回に渡って送信する間に、通信端末10が電子時計40の運針間隔を確認する処理を行い、運針間隔が変更された場合には、通信データを切り分けるデータ量を新たな運針間隔に対応するデータ量に切り替えて、分割データを運針の間の期間に送っていく。
【0030】
具体的には、運針間隔を確認する処理は、次のように行われる。まず、通信端末10が電子時計40へモータOUT信号の確認リクエストを送信する。この確認リクエストは、電子時計40に正常に受信されるように、電子時計40の応答があるまで、短い時間間隔で繰り返し出力される。
【0031】
電子時計40は、確認リクエストを受けると、モータ56に駆動信号が出力されて運針が行われたことを示すモータOUT信号を、次の運針時とその次の運針時に通信端末10へそれぞれ送信する。
【0032】
通信端末10は、上記のように送られてくる2回の運針を表わす2つのモータOUT信号から、これらの時間間隔を計測することで現在の運針間隔を確認する。
【0033】
このような運針間隔の確認処理により、図3のタイミングT1に示すように、その前後で運針間隔が変更された場合に、電子時計40から通信端末10へ送信されるモータOUT信号の間隔が狭くなって、通信端末10により運針間隔が狭くなったことが確認される。その結果、通信端末10において通信データが切り分けられるデータ量が小さく設定されて、データ量の小さい分割データが運針の間の期間に電子時計40へ送信されることになる。
【0034】
このような、通信データの分割送信と運針間隔の確認処理とにより、運針タイミングと通信データの送受信タイミングとが容易に重ならないように、且つ、効率的に通信端末10から電子時計40へ通信データが送られるようになっている。さらに、電子時計40で運針間隔が変更された場合にも、この変更に対応して通信データを切り分けるデータ量を適宜変更して効率的に通信データが送られるようになっている。
【0035】
次に、上記の通信動作を実現する電子時計40と通信端末10の制御処理について、フローチャートに基づき詳細に説明する。
【0036】
図4には、通信処理中に電子時計40のCPU41により実行される分割受信処理のフローチャートを示す。
【0037】
この分割受信処理は、通信データの受信要求が生じた場合に、電子時計40のCPU41によって、指針制御処理や表示制御処理など、他の処理と並列的に実行される。また、この分割受信処理は、電子時計40のブルートゥースモジュール48と、通信端末10のブルートゥースモジュール22とが通信接続されて互いに無線通信可能な状態で開始される。
【0038】
この分割受信処理が開始されると、電子時計40のCPU41は、主に、通信端末10から送信されてくる通信データの受信処理と、通信端末10の確認リクエストに応じてモータOUT信号を送信する処理とを、繰り返し実行する。
【0039】
すなわち、まず、CPU41は、現在が運針中であるか指針制御処理の状況を確認して(ステップS1)、運針中であれば、ステップS1の確認処理を繰り返して待機する。運針中は、データ受信と通信端末10からの確認リクエストの受信を行わないようにするためである。
【0040】
そして、現在が運針中でないと判別されれば、CPU41は、ブルートゥースモジュール48に通信端末10とデータ通信中(分割データの受信中)か確認し(ステップS2)、通信中であれば、分割データの受信が終了するまでブルートゥースモジュール48により受信される分割データを受信バッファからRAM43に取り込む処理(データ受信)を行う(ステップS3)。そして、一回の分割データの受信が完了したら、次に進む。一方、ステップS2の確認処理でデータ通信中でないと判別されたら、そのまま次に進む。
【0041】
次に進んだら、CPU41は、ブルートゥースモジュール48に通信端末10からモータOUT信号の確認リクエストが受信されていないか確認し(ステップS4)、受信していなければそのままステップS1に戻る。一方、受信されていれば、次回とその次の2回の運針時に、モータ56が駆動されたことを示すモータOUT信号(駆動通知信号)をブルートゥースモジュール48を介して通信端末10へ送信させる(ステップS5:通知送信手段)。そして、2回のモータOUT信号を送信したら、ステップS1へ戻る。そして、上記ステップS1からの処理を繰り返す。
【0042】
このような分割受信処理により、図3に示した、確認リクエストに対する応答と分割データの受信とを行う電子時計40の通信動作が実現される。
【0043】
図5には、通信処理中に通信端末10のCPU11により実行される分割送信処理のフローチャートを示す。
【0044】
この分割送信処理は、電子時計40へ比較的にデータ量の大きな通信データを送信する要求が生じた場合に、通信端末10のメイン制御処理と並列的に実行される処理である。また、この分割送信処理は、電子時計40のブルートゥースモジュール48と、通信端末10のブルートゥースモジュール22とが通信接続されて、互いに無線通信可能な状態で開始される。
【0045】
この分割送信処理が開始されると、まず、通信端末10のCPU11は、電子時計40の運針間隔(モータ端子に駆動信号が出力される間隔)を求めるためにモータOUT信号の確認リクエストを送信する(ステップS11:通知要求手段)。そして、受信側である電子時計40から応答があるか確認し(ステップS12)、応答があれば次に進むが、応答がなければステップS11に戻って、確認リクエストの送信と応答の確認とを繰り返す。
【0046】
その結果、電子時計40から応答があって次に進んだら、電子時計40から送られてくる1回目のモータOUT信号を受信し(ステップS13:通知受信手段)、時間の計測を開始する(ステップS14)。さらに、2回目のモータOUT信号が送られてくるのを待機して受信し(ステップS15:通知受信手段)、受信されたら時間の計測を終了する(ステップS16)。
【0047】
続いて、ステップS16の時間間隔の計測結果に基づいて、電子時計40のモータの速度(運針間隔)を算出する(ステップS17)。さらに、この算出された運針間隔に基づいて、この運針間隔に送信できる分割データのデータ量“β”を算出する(ステップS18)。このデータ量“β”は、先にも説明したが、1秒の運針間隔で送信できるデータ量“α”を運針の速度“x(pps;パルス毎秒)”で除算した値としている。上記ステップS11〜S17の処理により間隔確認手段が構成される。
【0048】
そして、分割データのデータ量“β”が算出されたら、通信直前にモータOUT信号が送信されていないか、すなわち、通信直前に運針動作が行われていないか、もしもの確認を行う(ステップS19)。その結果、モータOUT信号が送信されていなければ、通信データからデータ量“β”の分割データを切り分けて、ブルートゥースモジュール22を介して電子時計40へ送信する(ステップS20:分割ステップ、送信ステップ)。続いて、残りのデータ通信総量“z”から今回送信分のデータ量“β”を減算し(ステップS21)、減算後の残りのデータ通信総量“z”がゼロになったか判別する(ステップS22)。一方、ステップS19の確認処理で、モータOUT信号の送信が確認されたら、ステップS20,S21の処理は実行せずにステップS22へジャンプする。
【0049】
ステップS22の判別処理の結果、残りのデータ通信総量“z”がゼロでなければ、ステップS11に戻って、再びステップS11からの処理を繰り返す。この繰り返しにより、分割データが運針の間の期間に複数回に渡って送信されていく。そして、残りのデータ通信総量“z”がゼロになっていれば、この分割送信処理を終了する。
【0050】
このような分割送信処理により、図3に示した運針間隔の確認と分割データの送信とを行う通信端末10の通信動作が実現される。
【0051】
以上のように、この実施形態の電子時計40および通信端末10によれば、比較的にデータ量の大きな通信データを送受信する場合に、通信端末10が通信データを電子時計40の運針間隔に合わせたデータ量に切り分けて、運針の間の期間に送信していく。したがって、運針タイミングと通信データの送受信タイミングとが容易に重なることがなく、且つ、効率的な通信データの送受信を行うことができる。
【0052】
また、通信端末10は、通信データを複数回に渡って送信していく間にも、電子時計40の運針間隔を確認し、運針間隔が変更されたら、新たな運針間隔に合わせたデータ量で通信データを切り分け、切り分けられた分割データを送信するようになっている。従って、通信データの送信中に運針間隔が変更された場合にも適宜対応することができる。
【0053】
また、通信端末10による運針間隔の確認は、次のように実行されるようになっている。すなわち、通信端末10から確認リクエストを電子時計40へ送信し、この確認リクエストに基づき電子時計40が連続する2回の運針の際にモータOUT信号を通信端末10へ送信し、このモータOUT信号により通信端末10が運針間隔を確認する。従って、実際の運針間隔を確実に確認することができる。
【0054】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、上記実施形態では、運針間隔に応じて通信データを切り分けるデータ量“β”を、1秒運針時に適したデータ量“α”を運針スピード“x”で除算した値としているが、これに制限されるものではない。例えば、運針タイミングから所定のマージン期間にも電磁的なノイズが発生して通信データの送受信を避ける必要がある場合には、このマージン期間を除いた期間にデータ送信可能なデータ量を、分割データのデータ量として算出するように構成すれば良い。
【0055】
また、上記実施形態では、運針を表わすモータOUT信号の要求と応答とにより運針間隔を確認するようにしているが、例えば、電子時計から運針間隔を表わすデータを電子機器に送って運針間隔の確認を行わせたり、運針間隔の変更が合った場合に、この変更を表わすデータを電子機器に送って運針間隔の変更を通知するようにしても良い。
【0056】
また、上記実施形態では、分割データを1回送信するたびに、確認リクエストとモータOUT信号のやり取りを行って運針間隔の確認を行うようにしているが、例えば、分割データを複数回送信するたびに運針間隔の確認を行うようにしても良い。このような構成では、運針間隔が変更された場合に、次の運針間隔の確認が行われるまで、この変更に対応することができなくなるが、運針間隔が同一であるときには1回の運針ごとに1つの分割データを送信していくことができるため、通信データのデータ量が大きくて運針間隔が変更される頻度が少ないときには通信データを効率的に送ることができて効果的である。
【0057】
また、上記実施形態では、腕に装着して使用する電子時計と通信端末(携帯電話機)との通信に、本発明を適用した例を示したが、電子時計はステッピングモータで指針を駆動するものであれば置時計を適用しても良く、また、通信相手の電子機器は、例えばコンピュータやデジタルカメラなど、種々の機器を適用することができる。
【0058】
また、無線通信手段としてブルートゥースモジュールを例示したが、通信方式は特に制限されるものでない。その他、実施の形態で具体的に示した細部構成および細部方法は発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0059】
10 通信端末
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 操作部
22 ブルートゥースモジュール
40 電子時計
41 CPU
42 ROM
43 RAM
44 スイッチ
45 計時回路
48 ブルートゥースモジュール
56 モータ
58 輪列機構
59 指針

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステッピングモータにより指針を駆動する電子時計と、この電子時計と無線通信を行う電子機器とを備えた通信システムにおいて、
前記電子機器は、
無線通信を行う第1無線通信手段と、
前記第1無線通信手段により前記電子時計へ通信データを送信する場合に、当該通信データを前記指針の駆動間隔に応じたデータ量の分割データに切り分けて、当該分割データを前記指針の駆動期間を外した期間に送信していく分割送信手段とを備え、
前記電子時計は、
前記電子機器と無線通信を行う第2無線通信手段と、
前記指針の駆動期間を外した期間に前記電子機器から送信されてくる前記分割データを前記第2無線通信手段により複数回に渡って受信していく分割受信手段とを備えていることを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記電子機器は、
前記分割送信手段により前記分割データが複数回に渡って送信されていく間に前記指針の駆動間隔を確認する間隔確認手段を備え、
前記分割送信手段は、
前記間隔確認手段により確認された前記指針の駆動間隔が変更された場合に、前記分割データのデータ量を新たな駆動間隔に応じて変更して前記通信データから前記分割データを切り分けていくことを特徴とする請求項1記載の通信システム。
【請求項3】
前記電子機器は、
前記指針の駆動が有ったことを示す駆動通知信号を前記電子時計に要求する通知要求手段と、
前記電子時計から前記駆動通知信号を前記第1無線通信手段により受信する通知受信手段と、
を備え、
前記電子機器の前記間隔確認手段は、
受信した前記駆動通知信号に基づいて前記指針の駆動間隔を確認し、
前記電子時計は、
前記電子機器からの要求に応じて前記駆動通知信号を前記第2無線通信手段により前記電子機器へ送信する通知送信手段を備えていることを特徴とする請求項2記載の通信システム。
【請求項4】
第1無線通信手段を備えた電子機器と、ステッピングモータにより指針を駆動するとともに第2無線通信手段を備えた電子時計との間で、データ通信を行わせる通信方法において、
前記電子機器から前記電子時計へ通信データを送信する場合に、前記電子機器の制御手段が、当該通信データを前記指針の駆動間隔に応じたデータ量の分割データに切り分けていく分割ステップと、
前記電子機器の前記第1無線通信手段が、前記分割ステップにより切り分けられた前記分割データを前記指針の駆動期間を外した期間に送信していく送信ステップと、
前記電子時計の前記第2無線通信手段が、前記指針の駆動期間を外した期間に前記電子機器から送信されてくる前記分割データを複数回に渡って受信していく分割受信ステップと、
を含むことを特徴とする通信方法。
【請求項5】
前記分割ステップおよび前記送信ステップにより前記分割データが複数回に渡って送信されていく間に、前記電子機器の制御手段が前記指針の駆動間隔を確認する間隔確認ステップを含み、
前記分割ステップは、
前記間隔確認ステップにより確認された前記指針の駆動間隔が変更された場合に、前記分割データのデータ量を新たな駆動間隔に応じて変更して前記通信データから前記分割データを切り分けていくことを特徴とする請求項4記載の通信方法。
【請求項6】
前記電子機器の制御手段が前記指針の駆動が有ったことを示す駆動通知信号を前記電子時計に要求する通知要求ステップと、
前記電子機器の前記第1無線通信手段が前記電子時計から前記駆動通知信号を受信する通知受信ステップと、
前記電子時計の前記第2無線通信手段が前記電子機器からの要求に応じて前記駆動通知信号を前記電子機器へ送信する通知送信ステップと、
を含み、
前記間隔確認ステップは、
前記通知受信ステップにより受信された駆動通知信号に基づいて前記指針の駆動間隔を確認することを特徴とする請求項5記載の通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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