説明

通信制御装置、プログラムおよび画像形成装置

【課題】ネットワークに接続された装置における消費電力の低減を図る。
【解決手段】受信したパケットについての処理が可能か否かを制御部10にて判定し、制御部10での判定結果に基づき、条件更新部26は、パケットを取り込むか否かを判定する第1フィルタ部21および第2フィルタ部24において用いられる判定条件を更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信制御装置、プログラムおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般のオフィス等においては、1または複数の端末装置と1または複数の画像形成装置(例えば、プリンタ)とをネットワーク環境下で接続して、1または複数の端末装置から1または複数の画像形成装置の共有使用または選択使用が可能なシステムが構築されている。このようなシステムでは、接続された画像形成装置等に対して通信回線から頻繁に信号が送信される。そのため、受信した信号がその画像形成装置にて処理の必要がない信号等であっても、信号の受信の度毎に画像形成装置内のCPUが起動される。それにより、ネットワークに接続された画像形成装置等では無駄な電力消費が発生する。
このような無駄な電力消費の発生を抑える技術として、例えば特許文献1には、メインCPUよりも消費電力の小さなサブCPUを設け、省エネモードではサブCPUのみに通電し、ネットワークやファクシミリインターフェースからのデータ受信に応じてサブCPUからメインCPUに復帰トリガーを発行する技術が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−5029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで一般に、ネットワークに接続された装置においては、自身で処理することができないパケットもネットワークを介して受信される。その場合にも装置内のCPUが起動されるため、省エネ効果を低減させるという問題があった。
本発明は、ネットワークに接続された装置における消費電力の低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、通信回線からパケットを受信するパケット受信部と、所定の判定条件を用いて前記パケット受信部にて受信した前記パケットを取り込むか否かを判定するパケット判定部と、前記パケットについての処理が可能か否かを判定する処理可否判定部と、前記処理可否判定部での判定結果に基づき、前記パケット判定部で用いられる前記判定条件を更新する判定条件更新部とを備えたことを特徴とする通信制御装置である。
【0006】
請求項2に記載の発明は、前記パケット判定部は、前記パケット受信部にて受信した前記パケットを第1の判定条件を用いて当該パケットを取り込むか否かを判定する第1のパケット判定部と、当該第1の判定条件とは異なる第2の判定条件を用いて当該第1のパケット判定部にて取り込むと判定された前記パケットの全部または一部について取り込むか否かを判定する第2のパケット判定部とを有し、前記判定条件更新部は、前記第1のパケット判定部にて用いられる前記第1の判定条件および前記第2のパケット判定部にて用いられる前記第2の判定条件のいずれか一方または双方を更新することを特徴とする請求項1記載の通信制御装置である。
請求項3に記載の発明は、前記パケット判定部は、前記第1のパケット判定部に用いられる前記第1の判定条件が前記パケット受信部にて受信した前記パケットに含まれる所定のデータに基づき設定され、前記第2のパケット判定部に用いられる前記第2の判定条件が当該第1のパケット判定部にて用いられる当該所定のデータを含む当該パケットのデータ領域および当該所定のデータを含まない当該パケットのデータ領域のいずれかに含まれるデータに基づき設定されることを特徴とする請求項2記載の通信制御装置である。
【0007】
請求項4に記載の発明は、前記パケット判定部にて取り込むと判定された前記パケットを記憶する記憶部をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の通信制御装置である。
請求項5に記載の発明は、前記処理可否判定部は、前記パケットについての処理を行う処理部にて当該パケットを処理できるアプリケーションソフトが備えられているか否かを判定することを特徴とする請求項1記載の通信制御装置である。
【0008】
請求項6に記載の発明は、コンピュータに、通信回線からパケットを受信する機能と、受信した前記パケットを所定の判定条件を用いて取り込むか否かを判定する機能と、前記パケットについての処理が可能か否かを判定する機能と、前記パケットについての処理が可能か否かに関する判定結果に基づき、前記パケットを取り込むか否かに関する前記判定条件を更新する機能とを実現させることを特徴とするプログラムである。
【0009】
請求項7に記載の発明は、前記パケットを取り込むか否かを判定する機能は、受信した前記パケットに含まれる所定のデータに基づき設定される第1の判定条件を用いて当該パケットを取り込むか否かを判定する機能と、当該所定のデータを含む当該パケットのデータ領域および当該所定のデータを含まない当該パケットのデータ領域のいずれかに含まれるデータに基づき設定される第2の判定条件を用いて当該パケットを取り込むか否かを判定する機能とを含むことを特徴とする請求項6記載のプログラムである。
請求項8に記載の発明は、前記パケットについての処理が可能か否かを判定する機能は、前記パケットの処理を行う処理部にて当該パケットの処理が可能なアプリケーションソフトが備えられているか否かを判定することを特徴とする請求項6記載のプログラムである。
【0010】
なお、このプログラムは、例えば、ハードディスクやDVD−ROM等の予約領域に格納されたプログラムを、RAMにロードして実行される場合がある。また、予めROMに格納された状態にて、CPUで実行される形態がある。さらに、EEPROM等の書き換え可能なROMを備えている場合には、機器がアッセンブリされた後に、プログラムだけが提供されてROMにインストールされる場合がある。このプログラムの提供に際しては、インターネット等のネットワークを介してデータ記録装置を備えたコンピュータにプログラムが伝送され、データ記録装置の有するROMにインストールされる形態も考えられる。
【0011】
請求項9に記載の発明は、通信回線から送信されるパケットの受信を制御する通信制御部と、前記通信制御部にて受信された前記パケットを処理する処理部と、前記処理部にて処理された前記パケットに含まれる画像データに基づき画像形成する画像形成部とを有し、前記通信制御部は、前記通信回線からパケットを受信するパケット受信部と、所定の判定条件を用いて前記パケット受信部にて受信した前記パケットを取り込むか否かを判定するパケット判定部と、前記処理部にて前記パケットの処理が可能か否かを判定する処理可否判定部と、前記処理可否判定部での判定結果に基づき、前記パケット判定部で用いられる前記判定条件を更新する判定条件更新部とを備えたことを特徴とする画像形成装置である。
【0012】
請求項10に記載の発明は、前記パケット判定部は、前記所定の判定条件に基づき前記パケットを取り込むと判定した場合に、前記処理部に対する電力供給の開始を指示することを特徴とする請求項9記載の画像形成装置である。
請求項11に記載の発明は、前記パケット判定部は、前記パケット受信部にて受信した前記パケットを当該パケットに含まれる所定のデータに基づき設定される第1の判定条件を用いて取り込むか否かを判定する第1のパケット判定部と、当該所定のデータを含む当該パケットのデータ領域および当該所定のデータを含まない当該パケットのデータ領域のいずれかに含まれるデータに基づき設定される第2の判定条件を用いて当該第1のパケット判定部にて取り込むと判定された当該パケットの全部または一部について取り込むか否かを判定する第2のパケット判定部とを有し、前記判定条件更新部は、前記処理可否判定部での判定結果に基づき、前記第1のパケット判定部にて用いられる前記第1の判定条件および前記第2のパケット判定部にて用いられる前記第2の判定条件のいずれか一方または双方を更新することを特徴とする請求項9記載の画像形成装置である。
請求項12に記載の発明は、前記通信制御部は、前記パケット判定部にて取り込むと判定された前記パケットを記憶する記憶部をさらに備えたことを特徴とする請求項9記載の画像形成装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1によれば、本発明を採用しない場合に比べて、ネットワークに接続された装置における消費電力を低減できる。
本発明の請求項2によれば、本発明を採用しない場合に比べて、ネットワークに接続された装置にて不要なパケットや処理不能なパケットの取込みを抑制できる。
本発明の請求項3によれば、通信回線を介して受信されると従来想定されていなかったパケットを取り込むか否かの判定を行うことができる。
【0014】
本発明の請求項4によれば、本発明を採用しない場合に比べて、パケットの取りこぼしを抑制できる。
本発明の請求項5によれば、ネットワークに接続された装置にて処理が不能なパケットを取り込むか否かの判定を行うことができる。
【0015】
本発明の請求項6によれば、本発明を採用しない場合に比べて、ネットワークに接続された装置における消費電力を低減できる。
本発明の請求項7によれば、通信回線を介して受信されると従来想定されていなかったパケットを取り込むか否かの判定を行うことができる。
本発明の請求項8によれば、ネットワークに接続された装置にて処理が不能なパケットを取り込むか否かの判定を行うことができる。
【0016】
本発明の請求項9によれば、本発明を採用しない場合に比べて、ネットワークに接続された画像形成装置における消費電力を低減できる。
本発明の請求項10によれば、処理部を必要な場合に起動させることができる。
本発明の請求項11によれば、通信回線を介して受信されると従来想定されていなかったパケットを取り込むか否かの判定を行うことができる。
本発明の請求項12によれば、本発明を採用しない場合に比べて、パケットの取りこぼしを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態の画像形成装置が接続される通信システムの一例を示す概略構成図である。図1に示した通信システムでは、例えばユーザの作業スペース(例えば、デスク)等に設置されたクライアント装置2A〜2C(以下、単に「クライアント装置2」とも総称する)と、クライアント装置2A〜2Cにて生成等された画像データに基づき記録紙等の媒体(用紙)上に画像形成する画像形成装置3A〜3C(以下、単に「画像形成装置3」とも総称する)とが、通信回線やケーブルを利用したLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット等のネットワーク1を介して双方向に通信可能に接続されている。通信回線としては、電話回線や衛星通信回線(例えば、デジタル衛星放送における空間伝送路)を含んでもよい。なお、通常、ネットワーク1上に複数のクライアント装置2と複数の画像形成装置3とが接続可能であるが、図1に示した構成では、その一例として、それぞれ3台のクライアント装置2A〜2Cと3台の画像形成装置3A〜3Cとが接続されている場合を示している。
【0018】
ネットワーク1に接続されるクライアント装置2としては、例えばパーソナルコンピュータ(PC)が用いられ、文書や図形、写真等からなる画像データを作成・保存する。そして、クライアント装置2は、作成された画像データや保存された画像データを印刷するに際し、画像データを画像形成装置3A〜3Cのいずれかに対する印刷命令である印刷ジョブに変換して出力する。この印刷ジョブを構成するデータ(印刷ジョブデータ)は、画像データに加えて、各種印刷機能の設定や印刷を行う画像形成装置3A〜3Cのいずれかの指定等を行うための情報である属性データを含んで構成される。
クライアント装置2から出力された印刷ジョブは、ネットワーク1を介して画像形成装置3A〜3Cのいずれかに送信される。
【0019】
次に、画像形成装置3の構成について説明する。図2は、本実施の形態の画像形成装置3の構成を説明するブロック図である。図2に示したように、画像形成装置3は、予め定められた処理プログラムに従って画像形成装置3全体の動作を制御する制御部10、ネットワーク1との間の通信を制御する通信制御部20を備えている。また、ネットワーク1を介してクライアント装置2から送信される印刷ジョブデータの解析や印刷ジョブデータに含まれる画像データに対する各種処理を施す画像処理部30、画像処理部30にて各種処理等を行う際の作業用メモリとして用いられる画像処理用記憶部31、画像処理部30にて各種処理が施された画像データに基づいて用紙上に画像を形成する画像出力部32を備えている。ここで、画像出力部32としては、例えば電子写真方式の画像形成エンジンが用いられる。また、画像処理部30および画像出力部32、さらには必要に応じて他の機能部が加わって画像形成部として機能する。
【0020】
ここで、通信制御部20および画像処理部30は、外部バス41に接続されている。また、制御部10は、外部バス41とバスブリッジ60を介して接続される。それにより、制御部10、通信制御部20、および画像処理部30は、相互に信号の送受信が可能なように接続されている。
さらに、画像形成装置3は、商用電源から供給される例えば100Vの電力を所定の電圧(例えば、24V,12V,5V)に変換する電源部50を備え、電源部50から各機能部に対して所定の電圧の電力が供給される。
【0021】
制御部10は、処理部の一例であって、図2に示したように、画像形成装置3全体を制御する際の演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)101、CPU101の作業用メモリ等として用いられるRAM(Random Access Memory)102、CPU101により実行される処理プログラム等が格納されるROM(Read Only Memory)103を備えている。そして、これらはバスブリッジ60に接続された内部バス42を介して相互に接続されている。
そして制御部10は、ネットワーク1を介して送信されるパケットを処理し、パケットに含まれる印刷ジョブデータを画像処理部30に送る。
【0022】
続いて、通信制御部20は、通信制御装置の一例であって、第1フィルタ部21、第1通信バッファ部22、中間バッファ部23、第2フィルタ部24、第2通信バッファ部25、条件更新部26を備えている。
第1フィルタ部21は、パケット判定部および第1のパケット判定部の一例であって、ネットワーク1から送信されるパケットを最初に処理する第1段目のパケットフィルタであり、ハードウェアで構成されている。そして、第1フィルタ部21は、予め指定(登録)された第1の判定条件の一例としての取込み許可条件(パケットの取込みを許可する条件)に一致する(取込み許可条件を満たす)パケットを受信した場合には、受信したパケットを通過させて取り込み、第1通信バッファ部22に送る。さらには、画像形成装置3が後述する省エネモードに設定された状態にある場合には、制御部10(CPU101)に対する電力供給の開始を指示する信号としての復帰割り込み信号Sig_1を生成し、制御部10のCPU101に送信する。
一方、第1フィルタ部21は、予め指定(登録)された第1の判定条件の一例としての取込み拒否条件(パケットの取込みを拒否する条件)に一致する(取込み拒否条件を満たす)パケットを受信した場合には、受信したパケットを破棄する。
また、第1フィルタ部21は、予め指定(登録)した取込み許可条件および取込み拒否条件のいずれにも一致しない(満たさない)パケットを受信した場合には、受信したパケットを中間バッファ部23に送るとともに、第1フィルタ部21を通過させて中間バッファ部23に取り込む旨を第2フィルタ部24に通知する。
【0023】
第1通信バッファ部22は、記憶部の一例であって、第1フィルタ部21にて受信した取込み許可条件に一致するパケットを記憶する。
中間バッファ部23は、記憶部の一例であって、第1フィルタ部21にて受信した取込み許可条件および取込み拒否条件のいずれにも一致しないパケットを記憶する。
【0024】
第2フィルタ部24は、パケット判定部および第2のパケット判定部の一例であって、第1フィルタ部21の後段に配置される第2段目のパケットフィルタであり、第2の判定条件の一例としての取込み許可条件および取込み拒否条件をプログラマブルに設定可能に構成されている。そして、第1フィルタ部21から取込み許可条件および取込み拒否条件のいずれにも一致しないパケットを受信し、第1フィルタ部21を通過させて中間バッファ部23に取り込む旨の通知を受けた場合に、中間バッファ部23に記憶されたパケットが画像形成装置3にて処理が必要なパケットか否かの判定処理を行う。
すなわち、第2フィルタ部24は、中間バッファ部23から中間バッファ部23に記憶されたパケットを取得して、取得したパケットが画像形成装置3にて処理が必要なパケットか否かを判定する。そして、処理が必要なパケットであると判定した場合には、取得したパケットを第2通信バッファ部25に送る。それとともに、処理が必要であると判定されたパケットを中間バッファ部23から削除する。さらには、画像形成装置3が後述する省エネモードに設定された状態にある場合には、制御部10(CPU101)に対する電力供給の開始を指示する信号としての復帰割り込み信号Sig_2を生成し、制御部10のCPU101に送信する。
一方、第2フィルタ部24は、中間バッファ部23から取得したパケットが画像形成装置3にて処理の必要がないパケットであると判定した場合には、処理の必要がないと判定されたパケットを中間バッファ部23から削除する。
第2通信バッファ部25は、記憶部の一例であって、第2フィルタ部24において画像形成装置3にて処理が必要であると判定されたパケットを記憶する。
【0025】
また、条件更新部26は、判定条件更新部の一例であって、制御部10からの所定の通知に基づいて、第1フィルタ部21にて登録された取込み拒否条件の新規追加および取込み許可条件の内容修正を伴う更新を行う。また、条件更新部26は、制御部10からの所定の通知に基づいて、第2フィルタ部24にて画像形成装置3にて処理が必要なパケットか否かを判定する際の取込み拒否条件の新規追加および取込み許可条件の内容修正を伴う更新を行う。
【0026】
まず、第1フィルタ部21および第2フィルタ部24のそれぞれの機能について詳細に説明する。
図3は、ネットワーク1から受信されるパケットのデータ構造の一例を示した図である。図3に示したように、ネットワーク1から受信されるパケット(「フレーム」とも呼ばれる)は、例えば、プレアンブル、SFD(Start Frame Delimiter)、MAC(Medium Access Control)ヘッダ、IP(Internet Protocol)ヘッダ、TCP(Transmission Control Protocol)ヘッダ、データフィールド、PAD、FCS(Frame Check Sequence)で構成される。なお、IPヘッダ、TCPヘッダ、データフィールドおよびPADからなる領域を「MACフレーム」と称する。
【0027】
プレアンブルは、同期のためのデータであり、SFDは、直後にMACフレームの先頭が続くことを示すデータである。
MACヘッダは、宛先MACアドレスと送信元MACアドレスとタイプとで構成される。宛先MACアドレスは、MACフレームを届ける相手先を示すアドレスである。送信元MACアドレスは、自身のMACアドレスであり、通常は画像形成装置3内のROMに焼き込まれた固有の番号が割り当てられている。タイプは、データフィールドに格納する上位層プロトコルを示す情報データ(プロトコルタイプ)である。
IPヘッダは、送信元IPアドレス、宛先IPアドレス、パケット長等を含むデータ列で構成される。TCPヘッダは、送信元ポート番号、宛先ポート番号、シーケンス番号、応答確認番号等を含むデータ列で構成される。
データフィールドには、46〜1500バイトの範囲でアプリケーションのデータが格納される。例えば、画像データ等が格納される。また、PADは、MACフレームの長さを最小の64バイトにするためのビット列である。FCSは、MACフレームが壊れていないかをチェックするためのビット列である。
【0028】
ところで、ネットワーク1を介して受信されると予め想定されるパケットに関しては、パケットの所定の位置に存在するデータを分析することで、そのパケットが処理を必要とするものであるか否かをある程度の確度で判定することができる。そこで、第1フィルタ部21では、図3に示したパケットの中で予め定めた領域のデータに関して取込み許可条件および取込み拒否条件が指定(登録)される。それにより、第1フィルタ部21は、予め定めた領域のデータについての登録された取込み許可条件および取込み拒否条件に従って、ネットワーク1から受信されるパケットのうち、受信されると予め想定されたパケットを取り込むかまたは取り込まないかを一意的に判定する。
その場合に、第1フィルタ部21において、パケットの中の予め定めた領域のデータに関する取込み許可条件および取込み拒否条件に従ってパケットを取り込むかまたは取り込まない処理を実行するアプリケーション機能をハードウェアで構成する。そのため、ネットワーク1に直接接続され、ネットワーク1から送信される大量のパケットを処理する必要が生じる第1フィルタ部21において、パケットに関して取り込むかまたは取り込まないかの判定処理を高速で行う。
【0029】
ここで、第1フィルタ部21において、パケットの中で取込み許可条件および取込み拒否条件が登録される予め定めた領域のデータとしては、例えば、MACヘッダの宛先MACアドレスや送信元MACアドレスやプロトコルタイプ、IPヘッダの送信元IPアドレスや宛先IPアドレス、TCPヘッダの送信元コンピュータの処理ポート番号等が用いられる。
図4は、第1フィルタ部21において登録されるパケットの取込み許可条件および取込み拒否条件の一例を示した図である。図4では、取込み許可条件および取込み拒否条件の対象となるデータの一例として、送信元IPアドレスおよび宛先IPアドレス、プロトコルタイプ、送信元ポート番号および宛先ポート番号を用いる場合を示している。第1フィルタ部21は、例えば図4に示したような予め登録された取込み許可条件および取込み拒否条件に従って、ネットワーク1から受信されるパケットについて取込むかまたは取込まないかを一意的・画一的に判定する。
このように、第1フィルタ部21では、図3に示したパケットの中で予め定めた領域のデータに関して、取込み許可条件および取込み拒否条件が登録される。
【0030】
これに対して、第2フィルタ部24では、第1フィルタ部21にて取込み許可条件および取込み拒否条件の登録対象とされたデータよりも広い領域に存在するデータを対象として、取込み許可条件および取込み拒否条件が設定される。つまり、第2フィルタ部24においては、第1フィルタ部21にて取込み許可条件および取込み拒否条件の登録対象とされたデータを含むパケットの全体領域または一部領域に含まれるデータ、または、第1フィルタ部21にて取込み許可条件および取込み拒否条件の登録対象とされたデータを除くパケットの全体領域または一部領域に含まれるデータが、取込み許可条件および取込み拒否条件の設定対象となる。
【0031】
すなわち、第1フィルタ部21において取込み許可条件および取込み拒否条件のいずれにも一致しないパケットは、ネットワーク1を介して受信されると従来は想定されていないもの、例えばプロトコルの改良や拡張等による新たなプロトコルからなるパケットやネットワーク環境の変化に起因するパケット等である場合がある。
そのため、第2フィルタ部24は、パケット内の任意の領域のデータに関する取込み許可条件および取込み拒否条件を、例えば画像形成装置3の操作入力パネル(不図示)からの入力やネットワーク1を介した例えばクライアント装置2からの遠隔入力等により必要に応じて随時設定できるように構成される。そして、第2フィルタ部24は、第1フィルタ部21にて取込み許可条件および取込み拒否条件のいずれにも一致しないパケットに関して更なる詳細なデータ分析を行い、取込み許可または取込み拒否の判定を行う。それにより、第2フィルタ部24では、例えばプロトコルの改良や拡張等による新たなプロトコルからなるパケットの出現やネットワーク環境の変化等が生じた場合にも、そのような変化に機動的に対応させて、ネットワーク1から受信されるパケットを取り込むかまたは取り込まないかを適応的に判定している。
【0032】
そして、その後、第1フィルタ部21および第2フィルタ部24のいずれかにおいて取込み許可条件に一致したパケットは制御部10に送られ、制御部10にてそのパケットに対応するアプリケーションソフトによる処理が実行されることとなる。それにより、制御部10のCPU101に対する処理の必要のないパケット等の送信は低減される。
【0033】
ところで、このような第1フィルタ部21および第2フィルタ部24において取り込まれたパケットの中には、例えばそのパケットに対応するアプリケーションソフトが制御部10のROM103に格納されていないために、制御部10のCPU101が処理できないパケットも含まれる。その場合に、画像形成装置3が後述する省エネモードに設定された状態にあると、処理できないパケットによりCPU101が起動される結果、CPU101での電力消費量が増加することとなる。そこで、本実施の形態の通信制御部20は、CPU101にて処理できないパケットが第1フィルタ部21および第2フィルタ部24において取り込まれた場合には、その後、そのようなパケットを取り込まないように自動設定する。
【0034】
具体的には、第1フィルタ部21は、登録された取込み許可条件に一致するパケットを受信した場合には、受信したパケットを通過させて取り込み、第1通信バッファ部22に送る。その際に、画像形成装置3が後述する省エネモードに設定された状態にある場合には、制御部10(CPU101)に対して復帰割り込み信号Sig_1を送信する。それにより、復帰割り込み信号Sig_1を取得したCPU101は、省エネモードから復帰し、第1通信バッファ部22に記憶されたパケットの処理を試みる。その際に、例えばそのパケットを処理するアプリケーションソフトがROM103に格納されておらず、CPU101がそのパケットを処理できない場合には、CPU101は、第1通信バッファ部22に記憶されたパケットを処理できない旨を条件更新部26に通知する。したがって、ここでの制御部10は、処理可否判定部として機能する。そして、その旨の通知を受けた条件更新部26は、第1フィルタ部21において、そのパケットの取込みが拒否されるような取込み拒否条件を新たに追加設定する。また、このパケットの取込みが許可されるような取込み許可条件が設定されていた場合には、取込み許可条件からそのパケットの取込みが許可されるような取込み許可条件を削除する内容変更を行う。
【0035】
同様に、第2フィルタ部24は、中間バッファ部23から取得したパケットが登録された取込み許可条件に一致する場合には、取得したパケットを通過させて取り込み、第2通信バッファ部25に送る。その際に、画像形成装置3が後述する省エネモードに設定された状態にある場合には、制御部10(CPU101)に対して復帰割り込み信号Sig_2を送信する。それにより、復帰割り込み信号Sig_2を取得したCPU101は、省エネモードから復帰し、第2通信バッファ部25に記憶されたパケットの処理を試みる。その際に、例えばそのパケットを処理するアプリケーションソフトがROM103に格納されておらず、CPU101がそのパケットを処理できない場合には、CPU101は、第2通信バッファ部25に記憶されたパケットを処理できない旨を条件更新部26に通知する。同様に、ここでの制御部10は、処理可否判定部として機能する。そして、その旨の通知を受けた条件更新部26は、第2フィルタ部24において、そのパケットの取込みが拒否されるような取込み拒否条件を新たに追加設定する。また、このパケットの取込みが許可されるような取込み許可条件が設定されていた場合には、取込み許可条件からそのパケットの取込みが許可されるような取込み許可条件を削除する内容変更を行う。
なお、制御部10は、通信制御装置の一部を構成する。すなわち、通信制御部20および制御部10、さらには必要に応じて他の機能部が加わって通信制御装置が構成される。
【0036】
ここで図5は、通信制御部20の内部構成を示すブロック図である。図5に示したように、通信制御部20は、予め定められた処理プログラムに従って演算処理を行うマイクロコードプロセッサ(Microcode Processor)201、マイクロコードプロセッサ201の作業用メモリ等として用いられるRAM202、電池によりバックアップされたSRAM(Static Random Access Memory)やフラッシュメモリ等の不揮発性メモリ204、制御部10や画像処理部30等との信号の入出力を制御するインターフェース部205、予め登録された取込み許可条件および取込み拒否条件に従ってパケットを取り込むかまたは取り込まない処理を実行するネットワークインターフェース部206を備えている。マイクロコードプロセッサ201、RAM202、ネットワークインターフェース部206は、内部バス207により相互に接続されている。
【0037】
図5のネットワークインターフェース部206は、第1フィルタ部21および条件更新部26を構成する。また、第1通信バッファ部22、中間バッファ部23および第2通信バッファ部25は、RAM202内にそれぞれの領域が振り分けられて構成される。なお、第1通信バッファ部22、中間バッファ部23および第2通信バッファ部25は、それぞれ毎に別個のRAM202で構成してもよい。
図5のマイクロコードプロセッサ201は、第2フィルタ部24および条件更新部26を構成する。また、不揮発性メモリ204は、取込み許可条件および取込み拒否条件を記憶する。
【0038】
ネットワークインターフェース部206の機能の一部として含まれる条件更新部26は、制御部10から取得した第1通信バッファ部22に記憶されたパケットを処理することができない旨の通知に基づき、ネットワークインターフェース部206に設定されている取込み拒否条件にそのパケットの取込みが拒否されるような新たな取込み拒否条件を追加設定するか、または、取込み許可条件からそのパケットの取込みが許可されるような取込み許可条件を削除する内容変更を行う。
また、マイクロコードプロセッサ201の機能の一部として含まれる条件更新部26は、制御部10から取得した第2通信バッファ部25に記憶されたパケットを処理することができない旨の通知に基づき、不揮発性メモリ204に記憶されている取込み拒否条件にそのパケットの取込みが拒否されるような新たな取込み拒否条件を追加設定するか、または、取込み許可条件からそのパケットの取込みが許可されるような取込み許可条件を削除する内容変更を行う。
本実施の形態の通信制御部20では、条件更新部26がネットワークインターフェース部206またはマイクロコードプロセッサ201に含まれる構成として記述しているが、通信制御部20内に条件更新部26とする機能モジュールとして単独で構成されていても構わない。
【0039】
このように、本実施の形態の通信制御部20においては、第1フィルタ部21および第2フィルタ部24のいずれかにて取り込んだパケットが制御部10にて処理することができないパケットであった場合には、自動的にそのパケットの取込みを行わないように設定する。
それにより、画像形成装置3が後述する省エネモードに設定された状態にある場合において、制御部10のCPU101にて処理の必要のないパケットに加え、CPU101が処理できないパケット等によっても無駄に起動される頻度を減らして、制御部10での電力消費量を低減している。
【0040】
次に、本実施の形態の各画像形成装置3にて設定される動作モードについて説明する。各画像形成装置3では、省電力効果を高めるために、動作モードとして、「画像形成動作モード」と、「低電力モード」と、「省エネモード」とが設定されるように構成されている。
画像形成動作モードは、画像データ等の入力に対してオンデマンドに対応することが可能な状態が設定された動作モードである。画像形成動作モードでは、電源部50から画像形成装置3内のすべての機能部に電力が供給される。
低電力モードは、例えば第1の期間の間に画像データ等の入力がない場合に設定される動作モードである。低電力モードでは、電源部50から画像出力部32の少なくとも画像形成エンジン(例えば定着器等を含む画像形成動作を行う機能部)への電力供給が停止される。一方、制御部10や通信制御部20等といった画像出力部32の画像形成エンジン以外の機能部への電力供給は継続される。
また、省エネモードは、第1の期間よりも長い時間で設定された第2の期間の間に画像データ等の入力がない場合に設定される動作モードである。省エネモードでは、電源部50から通信制御部20への電力供給だけが継続され、制御部10のCPU101を含めたその他の機能部への電力供給が停止される。
【0041】
ここで図6は、本実施の形態の画像形成装置3にて設定される動作モードを説明する図である。図6に示したように、画像形成装置3では、画像形成動作の維持に必要な大きな電力を消費する画像形成動作モードと、画像形成動作モードよりは低い消費電力であるが、比較的短時間に画像形成動作モードに復帰する低電力モードと、消費電力が極めて小さく、画像形成動作モードに復帰するまでに比較的長い時間を要する省エネモードとが画像データ等の入力までの時間に応じて適宜設定される。それにより、画像形成装置3での省電力効果を高めている。
【0042】
一般のネットワーク環境下においては、頻繁にパケットが送信され、また、ブロードキャストパケット(すべてのノードに対して同時に送られるパケット)も多く送信される。そのため、従来の制御部のCPUでは、自身にとって不要なパケットも含めたあらゆるパケットを受信する度にONされ、省エネモードから復帰することとなる。そして、CPUが一旦復帰すると暫くは省エネモードに移行できず、また、場合によっては画像形成動作モードに移行する。それにより、CPUもOFFするという超低消費電力モードである省エネモードを設けたとしても、画像形成装置3での省電力効果が充分に得られない場合が多い。その場合に、ArpFilter等の機能を用いて不要なパケットを除去し、CPUを復帰させないように設定することは一般に知られている。しかし、現在のネットワーク環境が例えばプロトコルの改良や拡張等による新たなプロトコルからなるパケットが出現する状況にあり、また、どのようなパケットを除去するかはネットワーク環境によっても様々であることから、ArpFilter等を実効的に機能させることができないケースが多い。
加えて、省エネモードが設定された状態では、CPUがOFFであるため、パケットをオンデマンドで受信することができない。そのため、取りこぼしたパケットを再度送信するように要求することとなる。ところが、パケットを再送信しないアプリケーションソフトも存在し、その場合にはパケットの取りこぼしが生じるという問題がある。
【0043】
そこで、本実施の形態の通信制御部20においては、ネットワーク1に直接接続されて多数のパケットを処理する必要が生じる第1フィルタ部21をハードウェアで構成し、予め登録された取込み許可条件および取込み拒否条件に従って、ネットワーク1を介して受信されると予め想定されるパケットを取り込む処理または取り込まない処理を一意的・画一的に高速処理する。さらに、第2フィルタ部24において、プロトコルの改良や拡張等により作成された新たなプロトコルからなるパケットやネットワーク環境の変化等に対応させた取込み許可条件および取込み拒否条件を機動的および適応的に随時設定する。それにより、第2フィルタ部24は、従来は想定されていなかったパケットを取り込むかまたは取り込まないかの判定処理を実行して、画像形成装置3にて処理が必要なパケットのみを通過させて取り込むように構成している。
加えて、第1フィルタ部21および第2フィルタ部24のいずれかから取り込んだパケットが制御部10にて処理することができないパケットであった場合には、第1フィルタ部21および第2フィルタ部24に登録された取込み許可条件および取込み拒否条件に関し、その処理できないパケットに関する新たな取込み拒否条件を追加設定し、または、その処理できないパケットに関する取込み許可条件を削除する内容変更を自動的に行っている。
【0044】
次に、図7は、本実施の形態の画像形成装置3が省エネモードに設定されている場合に、通信制御部20において実行されるパケットを取り込むかまたは取り込まないかに関する処理の手順の一例を示したフローチャートである。
図7に示したように、通信制御部20にパケットが受信されると(S101)、受信されたパケットは第1フィルタ部21に送られる。従って、第1フィルタ部21は、パケット受信部としても機能する。パケットを取得した第1フィルタ部21は、予め指定(登録)された取込み拒否条件に一致するパケット(不要パケット)か否かを判定する(S102)。ステップ102にて不要パケットであると判定した場合には、第1フィルタ部21は受信したパケットを破棄する(S103)。
【0045】
ステップ102にて不要パケットでないと判定した場合、すなわち取込み拒否条件に一致しない場合には、予め指定(登録)された取込み許可条件に一致するパケット(必要パケット)か否かを判定する(S104)。
ステップ104にて必要パケットであると判定した場合には、第1フィルタ部21は受信したパケット(必要パケット)を取り込み、第1通信バッファ部22に送る。第1通信バッファ部22は送られた必要パケットを記憶する(S105)。
また、第1フィルタ部21は復帰割り込み信号Sig_1を生成し、制御部10のCPU101に送信する(S106)。
そして、復帰割り込み信号Sig_1を受信したCPU101は、省エネモードから復帰する(S107)。省エネモードから復帰した後、CPU101は、復帰割り込み信号Sig_1を受信したことにより復帰したことを確認し、第1通信バッファ部22に記憶されたパケット(必要パケット)を処理する(S108)。例えば、必要パケットがクライアント装置2からの印刷ジョブであった場合には、CPU101は、第1通信バッファ部22に記憶されたパケットを所定のアプリケーションソフトにより処理する。そして、パケットに含まれる印刷ジョブデータを画像処理部30に送り、所定の画像処理が施された画像データに基づき画像出力部32にて印刷処理を実行する。
【0046】
一方、ステップ104にて必要パケットでないと判定した場合には、第1フィルタ部21は、受信したパケットが予め指定(登録)した取込み許可条件および取込み拒否条件のいずれにも一致しないパケットであるとして、第1フィルタ部21を通過させて取り込む旨を第2フィルタ部24に通知する(S109)。
さらに、第1フィルタ部21は、受信したパケットを中間バッファ部23に送る。中間バッファ部23は送られたパケットを記憶する(S110)。すなわち、第1フィルタ部21は、予め指定(登録)した取込み許可条件および取込み拒否条件のいずれにも一致しないパケットについても通過させて取り込むと判定し、中間バッファ部23に記憶させる。
【0047】
続いて、第2フィルタ部24は、中間バッファ部23から中間バッファ部23に記憶されたパケットを取得して、取得したパケットが画像形成装置3にて処理が必要なパケット(必要パケット)か否かを判定する(S111)。ここでの判定は、例えば、省エネモード移行前に制御部10のCPU101から随時記憶された、プロトコルの改良や拡張等により作成された新たなプロトコルからなるパケットやネットワーク環境の変化等に対応させた取込み許可条件および取込み拒否条件に基づく、従来は想定されていなかったパケットを取り込むかまたは取り込まないかの判定処理である。
【0048】
そして、ステップ111にて必要パケットであると判定した場合には、第2フィルタ部24は中間バッファ部23から取得したパケット(必要パケット)を第2通信バッファ部25に送る。第2通信バッファ部25は送られた必要パケットを記憶する(S112)。それとともに、処理が必要であると判定されたパケットを中間バッファ部23から削除する。
また、第2フィルタ部24は復帰割り込み信号Sig_2を生成し、制御部10のCPU101に送信する(S113)。
そして、復帰割り込み信号Sig_2を受信したCPU101は、省エネモードから復帰する(S107)。省エネモードから復帰した後、CPU101は、復帰割り込み信号Sig_2を受信したことにより復帰したことを確認し、第2通信バッファ部25に記憶されたパケット(必要パケット)を処理する(S108)。例えば、必要パケットがクライアント装置2からの印刷ジョブであった場合には、CPU101は、第2通信バッファ部25に記憶されたパケットを所定のアプリケーションソフトにより処理する。そして、パケットに含まれる印刷ジョブデータを画像処理部30に送り、所定の画像処理が施された画像データに基づき画像出力部32にて印刷処理を実行する。
【0049】
一方、ステップ111にて必要パケットでないと判定した場合には、第2フィルタ部24は、処理が必要ではないと判定されたパケットを中間バッファ部23から削除し、パケットを破棄する(S114)。
このようにして、画像形成装置3が省エネモードに設定されている場合には、制御部10のCPU101が処理の必要のないパケットにより無駄に起動される頻度を減らして、CPU101での電力消費量を低減している。
なお、本実施の形態の第2フィルタ部24では、第1フィルタ部21にて予め指定(登録)された取込み許可条件および取込み拒否条件のいずれにも一致しないパケットについて画像形成装置3にて処理が必要なパケットか否かを判定した。すなわち、第1フィルタ部21を通過させて取り込んだ一部のパケットについて必要なパケットか否かを判定した。そのような処理の他に、第1フィルタ部21にて取込み拒否条件のみを登録しておき、取込み拒否条件に該当しないことで第1フィルタ部21を通過させて取り込んだパケットのすべてについて、画像形成装置3にて処理が必要なパケットか否かを判定するように構成してもよい。
【0050】
次に、図8は、本実施の形態の制御部10が通信制御部20から取得したパケットを処理できない場合に、通信制御部20において実行される取込み許可条件および取込み拒否条件の更新処理の手順の一例を示したフローチャートである。
図8に示したように、制御部10は、図7のステップ106およびステップ113により復帰割り込み信号Sig_1または復帰割り込み信号Sig_2を受信すると、通信制御部20に対してパケットの送信要求を送る(S201)。送信要求を受け取った通信制御部20は、制御部10に対して、第1通信バッファ部22または第2通信バッファ部25からパケットを送信する(S202)。
【0051】
制御部10は、第1通信バッファ部22または第2通信バッファ部25からパケットを取得すると(S203)、取得したパケットを処理することができるアプリケーションソフトがROM103に格納されているか否かを判定する(S204)。そして、ステップ204にてパケットを処理できるアプリケーションソフトがROM103に格納されていると判定された場合には、取得したパケットをそのアプリケーションソフトにより処理する(S205)。
一方、ステップ204にてパケットを処理できるアプリケーションソフトがROM103に格納されていないと判定された場合には、取得したパケットを処理できるアプリケーションソフトがROM103に格納されておらず、CPU101が第1通信バッファ部22または第2通信バッファ部25に記憶されたパケットを処理できない旨を通信制御部20に通知する(S206)。
【0052】
取得したパケットを処理できない旨の通知を制御部10から受けた通信制御部20においては、条件更新部26は、制御部10にて処理できないパケットが第1通信バッファ部22に記憶されていたパケットか、または第2通信バッファ部25に記憶されていたパケットかを判定する(S207)。
そして、ステップ207にて制御部10にて処理できないパケットが第1通信バッファ部22に記憶されていたパケットであると判定された場合には、条件更新部26は、第1フィルタ部21に登録されている取込み拒否条件にそのパケットの取込みが拒否されるような新たな取込み拒否条件を追加設定するか、または、第1フィルタ部21に登録されている取込み許可条件からそのパケットの取込みが許可されるような取込み許可条件を削除する内容変更を伴う更新を行う(S208)。なお、ステップ208での更新は、例えば図3に示したパケットの中で予め定めた領域のデータに関して設定された取込み許可条件および取込み拒否条件に関して行われる。
【0053】
また、ステップ207にて制御部10にて処理できないパケットが第2通信バッファ部25に記憶されていたパケットであると判定された場合には、条件更新部26は、第2フィルタ部24に登録されている取込み拒否条件にそのパケットの取込みが拒否されるような新たな取込み拒否条件を追加設定するか、または、第2フィルタ部24に登録されている取込み許可条件からそのパケットの取込みが許可されるような取込み許可条件を削除する内容変更を伴う更新を行う(S209)。なお、ステップ209での更新は、第1フィルタ部21にて取込み許可条件および取込み拒否条件の登録対象とされたデータよりも広い領域に存在するデータを対象として行われる。
図8に示したような更新処理により、画像形成装置3が省エネモードに設定された状態にある場合において、制御部10のCPU101が自身で処理できないパケットによって起動される頻度を減らし、CPU101での電力消費量を低減する。
【0054】
なお、図8に示した条件更新部26での更新処理は、例えば図7の処理フローのステップ107とステップ108との間にて実行される。
また、本実施の形態の通信制御部20では、パケットを取り込むか否かの判定を行う際の条件を異にする第1フィルタ部21と第2フィルタ部24とを設けたが、第1フィルタ部21および第2フィルタ部24のいずれか一方だけを配置した構成としてもよい。
【0055】
以上説明したように、本実施の形態の画像形成装置3の通信制御部20において、第1フィルタ部21では、ネットワーク1を介して受信されると予め想定されるパケットを取り込むかまたは取り込まないかを一意的・画一的に処理する。また、第2フィルタ部24では、プロトコルの改良や拡張等により作成された新たなプロトコルからなるパケットやネットワーク環境の変化等に対応させた取込み許可条件および取込み拒否条件に基づいて、画像形成装置3にて処理が必要なパケットのみを通過させて取り込む。そして、第1フィルタ部21および第2フィルタ部24のいずれかにて取り込んだパケットが制御部10にて処理することができないパケットであった場合には、自動的にそのパケットの取込みを行わないように設定する。
それにより、省エネモードが設定された状態の制御部10のCPU101では、処理の必要のないパケットや処理できないパケット等により起動されるのが抑制される。そのため、CPU101が省エネモードから復帰する頻度が減少し、CPU101の消費電力量、ひいては画像形成装置3の消費電力量の低減が図られる。
また、第1フィルタ部21において取込み許可条件および取込み拒否条件のいずれにも一致しないパケットを一旦中間バッファ部23に記憶しておくことで、パケットの取りこぼしの発生が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本実施の形態の画像形成装置が接続される通信システムの一例を示す概略構成図である。
【図2】画像形成装置の構成を説明するブロック図である。
【図3】ネットワークから受信されるパケットのデータ構造の一例を示した図である。
【図4】第1フィルタ部において登録されるパケットの取込み許可条件および取込み拒否条件の一例を示した図である。
【図5】通信制御部の内部構成を示すブロック図である。
【図6】画像形成装置にて設定される動作モードを説明する図である。
【図7】画像形成装置が省エネモードに設定されている場合に、通信制御部において実行されるパケットを取り込むかまたは取り込まないかに関する処理の手順の一例を示したフローチャートである。
【図8】制御部が通信制御部から取得したパケットを処理できない場合に、通信制御部において実行される取込み許可条件および取込み拒否条件の更新処理の手順の一例を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0057】
1…ネットワーク、2(2A〜2C)…クライアント装置、3(3A〜3C)…画像形成装置、10…制御部、20…通信制御部、21…第1フィルタ部、22…第1通信バッファ部、23…中間バッファ部、24…第2フィルタ部、25…第2通信バッファ部、26…条件更新部、30…画像処理部、31…画像処理用記憶部、32…画像出力部、60…バスブリッジ、101…CPU(Central Processing Unit)、102,202…RAM(Random Access Memory)、103…ROM(Read Only Memory)、201…マイクロコードプロセッサ(Microcode Processor:第2フィルタ部および条件更新部)、204…不揮発性メモリ、206…ネットワークインターフェース部(第1フィルタ部および条件更新部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信回線からパケットを受信するパケット受信部と、
所定の判定条件を用いて前記パケット受信部にて受信した前記パケットを取り込むか否かを判定するパケット判定部と、
前記パケットについての処理が可能か否かを判定する処理可否判定部と、
前記処理可否判定部での判定結果に基づき、前記パケット判定部で用いられる前記判定条件を更新する判定条件更新部と
を備えたことを特徴とする通信制御装置。
【請求項2】
前記パケット判定部は、前記パケット受信部にて受信した前記パケットを第1の判定条件を用いて当該パケットを取り込むか否かを判定する第1のパケット判定部と、当該第1の判定条件とは異なる第2の判定条件を用いて当該第1のパケット判定部にて取り込むと判定された前記パケットの全部または一部について取り込むか否かを判定する第2のパケット判定部とを有し、
前記判定条件更新部は、前記第1のパケット判定部にて用いられる前記第1の判定条件および前記第2のパケット判定部にて用いられる前記第2の判定条件のいずれか一方または双方を更新することを特徴とする請求項1記載の通信制御装置。
【請求項3】
前記パケット判定部は、前記第1のパケット判定部に用いられる前記第1の判定条件が前記パケット受信部にて受信した前記パケットに含まれる所定のデータに基づき設定され、前記第2のパケット判定部に用いられる前記第2の判定条件が当該第1のパケット判定部にて用いられる当該所定のデータを含む当該パケットのデータ領域および当該所定のデータを含まない当該パケットのデータ領域のいずれかに含まれるデータに基づき設定されることを特徴とする請求項2記載の通信制御装置。
【請求項4】
前記パケット判定部にて取り込むと判定された前記パケットを記憶する記憶部をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の通信制御装置。
【請求項5】
前記処理可否判定部は、前記パケットについての処理を行う処理部にて当該パケットを処理できるアプリケーションソフトが備えられているか否かを判定することを特徴とする請求項1記載の通信制御装置。
【請求項6】
コンピュータに、
通信回線からパケットを受信する機能と、
受信した前記パケットを所定の判定条件を用いて取り込むか否かを判定する機能と、
前記パケットについての処理が可能か否かを判定する機能と、
前記パケットについての処理が可能か否かに関する判定結果に基づき、前記パケットを取り込むか否かに関する前記判定条件を更新する機能と
を実現させることを特徴とするプログラム。
【請求項7】
前記パケットを取り込むか否かを判定する機能は、受信した前記パケットに含まれる所定のデータに基づき設定される第1の判定条件を用いて当該パケットを取り込むか否かを判定する機能と、当該所定のデータを含む当該パケットのデータ領域および当該所定のデータを含まない当該パケットのデータ領域のいずれかに含まれるデータに基づき設定される第2の判定条件を用いて当該パケットを取り込むか否かを判定する機能とを含むことを特徴とする請求項6記載のプログラム。
【請求項8】
前記パケットについての処理が可能か否かを判定する機能は、前記パケットの処理を行う処理部にて当該パケットの処理が可能なアプリケーションソフトが備えられているか否かを判定することを特徴とする請求項6記載のプログラム。
【請求項9】
通信回線から送信されるパケットの受信を制御する通信制御部と、
前記通信制御部にて受信された前記パケットを処理する処理部と、
前記処理部にて処理された前記パケットに含まれる画像データに基づき画像形成する画像形成部とを有し、
前記通信制御部は、
前記通信回線からパケットを受信するパケット受信部と、
所定の判定条件を用いて前記パケット受信部にて受信した前記パケットを取り込むか否かを判定するパケット判定部と、
前記処理部にて前記パケットの処理が可能か否かを判定する処理可否判定部と、
前記処理可否判定部での判定結果に基づき、前記パケット判定部で用いられる前記判定条件を更新する判定条件更新部と
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
前記パケット判定部は、前記所定の判定条件に基づき前記パケットを取り込むと判定した場合に、前記処理部に対する電力供給の開始を指示することを特徴とする請求項9記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記パケット判定部は、前記パケット受信部にて受信した前記パケットを当該パケットに含まれる所定のデータに基づき設定される第1の判定条件を用いて取り込むか否かを判定する第1のパケット判定部と、当該所定のデータを含む当該パケットのデータ領域および当該所定のデータを含まない当該パケットのデータ領域のいずれかに含まれるデータに基づき設定される第2の判定条件を用いて当該第1のパケット判定部にて取り込むと判定された当該パケットの全部または一部について取り込むか否かを判定する第2のパケット判定部とを有し、
前記判定条件更新部は、前記処理可否判定部での判定結果に基づき、前記第1のパケット判定部にて用いられる前記第1の判定条件および前記第2のパケット判定部にて用いられる前記第2の判定条件のいずれか一方または双方を更新することを特徴とする請求項9記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記通信制御部は、前記パケット判定部にて取り込むと判定された前記パケットを記憶する記憶部をさらに備えたことを特徴とする請求項9記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−49699(P2009−49699A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−213796(P2007−213796)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】