説明

通信機および通信方法

【課題】予め固定的に設定された優先チャネルをスキャンしていたので、実際の着信状態に対応せず、優先スキャンの効果に乏しい欠点があり、しかも、チャネルの登録や変更は、受信機をケーブルを介してPCに接続して行うため、不便であった。
【解決手段】所定時間内、又は所定回数のスキャニング・サイクル中に受信チャネル毎の着信回数や着信時間を計数し、受信履歴を参照して優先度を評価して、優先チャネルを自動的に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線通信機のスキャニング機能に関し、詳しくはスキャニング受信履歴に基づいてスキャニングの優先度を変更可能にしたスキャニング機能付き無線通信機及びスキャニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の無線通信チャネルが設定された通信システムにおいて、各無線通信チャネルを順次切り替えながら受信するスキャニング受信機能が利用されることが多い。スキャニング受信機能は、防災、警察、警備、運輸等に供する業務用無線通信システムに限らず、アマチュア無線やパーソナル無線等のレジャー用無線通信システムにおいても多用されている。
【0003】
図7は、従来の無線通信機の基本的なスキャニング受信処理(ノーマルスキャン:Normal Scan)を示すスキャニング・シーケンスである。無線通信チャネルとしてCh1乃至Ch4の四つの受信チャネルを備えたシステムを例にすれば、図7(a)に示すように、CH1→CH2→CH3→CH4→CH1→CH2→CH3→CH4→・・・・・と、単純にCH1乃至CH4を繰り返しスキャンし、着信の有無を瞬間的に検出しながら順次切替える。スキャニング受信中に、いずれかのチャネルで着信が検出されると、そのチャネルで着信が継続する間はスキャンを停止するとともに受信を継続し、着信が一定時間途絶えると、次のチャネルに移行してスキャニング受信を再開する。
【0004】
なお、着信が検出されるチャネルでの受信時間を、予め定めた一定時間に限定しておき、その時間内に受信継続を指示する操作がなされれば、連続して受信を継続するが、継続スキャンの指示がない場合は、設定時間経過後に、着信が継続していても次のチャネルからのスキャニング受信を再開するように制御することもある。
また、特定のチャネルを優先チャネルに設定して、一回のスキャン中に優先チャネルを他のチャネルより多くの回数呼出してモニタ受信する優先スキャニング受信の方法も知られている。図7(b)は、従来の優先スキャニング受信の一例を示す受信シーケンスを示す図であり、この例では一つのチャネルCH3を優先チャネル(PRI:プライオリティ・チャネル)として登録した場合を示しており、CH1→PRI(CH3)→CH2→PRI(CH3)→CH4→PRI(CH3)→CH1→PRI(CH3)→CH2→PRI(CH3)→CH4→PRI(CH3)→・・・・の順で、スキャニング受信を行う。
【0005】
しかし、スキャニング受信チャネルが多数にのぼり、注目すべきチャネルのモニタ受信が間遠くなって、稀にしか送信されない無線局の受信を逃してしまうことになる。また、スキャニングすべき対象チャネルが判然としない場合には、優先チャネルとして予め設定することができないことは当然のことで、使い勝手に問題があった。
そこで、例えば特許文献1に開示されているように、スキャニング受信対象として設定した第一のグループをスキャニングしても着信が検出されない場合、応答の可能性があるものとして設定した第二のグループの無線通信機に対してチェック信号を送信するとともに、それに対して応答のあった無線通信機を検出して、スキャニング・チャネルに加える操作を備えたものが提案されている。
また、特許文献2に開示されているように、多数のスキャニング対象チャネルから所定数のチャネルを任意にランダムに選択しながらスキャニングを行い、所定数のスキャニング・サイクルにおいて、全ての対象チャネルがスキャニングされるようにランダムスキャン制御する方法等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平5−63132号公報
【特許文献2】特開昭58−179018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したような従来のスキャニング受信機あるいはスキャニング受信方法では、予め設定した優先チャネルのみが優先的にスキャニングされることになるので、例えば、比較的頻繁に着信が発生する可能性があるチャネルを優先チャネルに設定する際、どのチャネルがそれに該当するか判然としない場合は、かえって逆効果となることがあった。即ち、比較的頻繁に着信があることが分からず優先チャネルから除外した場合は、モニタ受信するチャンスが減少するから、着信を見逃す可能性が高くなってしまうことになる。特に、広い地域を広範囲に移動する場合等はこのような不具合が発生し易い。更には、スキャニング対象チャネルが膨大にのぼる場合、スキャニング対象を予め設定しておくこと自体が困難な場合もあり、そのような場合の効率的なスキャニング受信手段が望まれていた。
【0008】
本発明は、このような従来のスキャニング受信手段の問題点に鑑みてなされたものであって、過去のスキャニング受信において実際に着信信号が検出された状況に基づいて、必要なものを自動的に優先チャネルとして設定することを可能にしたスキャニング受信機能付き無線通信機及びその制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、上記目的を達成するために、請求項1記載のスキャニング機能付き無線通信機は、複数の受信チャネルを予め設定した順序で受信し着信の有無を検出するとともに、着信があるチャネルでは受信動作を行うスキャニング機能付き無線通信機において、所定時間内又は所定回数のスキャニング・サイクル中に受信チャネル毎に着信があった回数を計数する着信回数計数手段と、該着信回数計数の結果に基づいて優先順位を設定する優先順位設定手段と、該優先順位設定手段によって設定した順序に従ってスキャニング受信を行うスキャニング受信制御手段と、を備えたことを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載のスキャニング機能付き無線通信機において、前記優先順位設定手段は、直前のスキャニングにおける着信がより優先度が高くなるように過去の着信に時系列的な重み付けを行う手段を備えたことを特徴としている。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載のスキャニング機能付き無線通信機において、前記優先順位設定手段は、予め設定したスキャニング・サイクル数又はスキャニング時間内における着信回数が少ないチャネルをスキャニング対象から排除する機能を備えたことを特徴としている。
請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3の何れか一項記載のスキャニング機能付き無線通信機において、更に、送信手段と、前記優先順位設定手段によって設定された優先順位に従って該当するチャネルにて送信する優先送信手段を備えたことを特徴としている。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4の何れか一項記載のスキャニング機能付き無線通信機において、前記優先チャネル設定手段によって設定される優先チャネルは優先度に対応して、一つのスキャニング・サイクル中において行われる受信動作の回数を多く又はスキャン停止のモニタ時間を長く設定したことを特徴としている。
請求項6記載の発明は、無線通信機のスキャニング方法に関するもので、複数の受信チャネルを予め設定した順序で受信し着信の有無を検出するとともに、着信があるチャネルでは受信動作を行うスキャニング機能付き無線通信機のスキャニング方法において、所定時間内又は所定回数のスキャニング・サイクル中に受信チャネル毎に着信があった回数を計数する着信回数計数処理と、該着信回数計数処理の結果に基づいて優先順位を設定する優先順位設定処理と、該優先順位設定処理によって設定した順序に従ってスキャニング受信を行うスキャニング受信処理と、を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明は以上のように構成するので夫々以下のような効果が得られる。請求項1記載のスキャニング機能付き無線通信機は、複数の受信チャネルをスキャニング受信するスキャニング機能付き無線通信機において、所定時間内又は所定回数のスキャニング・サイクル中に受信チャネル毎に着信があった回数を計数し、この着信回数計数に基づいて優先順位を設定するとともに、優先順位設定手段によって設定した順序に従ってスキャニング受信を行うように構成したので、予め設定した固定的なチャネルを優先チャネルとする場合と異なり、直前にスキャンした結果実際に着信のあるチャネルを優先的にスキャンすることが可能となり、優先スキャニング受信の効果を向上することができる。しかも、これらの設定を自動的に行うこともできるので、従来のようにPCを必要とせず、運用上の利便性が極めて高いものとなる。
【0013】
請求項2記載のスキャニング機能付き無線通信機では、請求項1記載のスキャニング機能付き無線通信機において、直前のスキャニングにおける着信がより優先度が高くなるように過去の着信に時系列的な重み付けを行うように構成したので、更に一層、実際の着信状態を反映した優先チャネル設定が可能となり、優先スキャニング受信の効果を更に向上することができる。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載のスキャニング機能付き無線通信機において、予め設定したスキャニング・サイクル数又はスキャニング時間内における着信回数が少ないチャネルをスキャニング対象から排除する機能を備えたので、注目度を高めるべき優先チャネルのスキャニングが短時間により多く可能となるので、優先スキャニング受信の効果を更に向上することができる。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3の何れか一項記載のスキャニング機能付き無線通信機において、更に、送信手段と、優先順位設定手段によって設定された優先順位に従って送信する優先送信機能を設けたので、緊急通信等における連絡確保の可能性を著しく高めることが可能となる。
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4の何れか一項記載のスキャニング機能付き無線通信機において、優先チャネル設定手段によって設定される優先チャネルは優先度に対応して、一つのスキャニング・サイクル中において行われる受信動作の回数を多く又はスキャン停止のモニタ時間を長く設定したので、優先スキャンニング手段が複数設定可能であり、適宜、状況に応じて使い分ければ、一層、利便性に優れた優先スキャニング受信が可能となる。
【0015】
請求項6記載の発明は、無線通信機のスキャニング方法に関するもので、上述した請求項1乃至5記載の発明をステップ処理としたので、それらの処理を実行するようにプログラムを作成すれば、CPU等を搭載する電子機において本発明をソフトウエア的に実現することが可能となり、上述した請求項1乃至5記載のスキャニング機能付き無線通信機と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るスキャニング機能付き無線通信機の一例を示す概要ブロック図である。
【図2】本発明のスキャニング機能付き無線通信機及びスキャニング方法の一例を示すフローチャートである。
【図3】本発明のスキャニング方法の一例を示すシーケンス図である。
【図4】本発明のスキャニング方法の他の一例を示すシーケンス図である。
【図5】本発明のスキャニング方法の他の更に他の一例を示すシーケンス図であり、(a)は優先度に応じて受信モニタ時間を長くする例を示す図、(b)は優先度の低いチャネルを削除する例を示す図である。
【図6】本発明に係るスキャニング機能付き無線通信機の他の例を示す概要ブロック図である。
【図7】従来のスキャニング受信方法を説明するシーケンス図であり、(a)はノーマルスキャンを示す図、(b)は優先スキャンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を図に示した実施形態例を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される技術用語、構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0018】
図1は本発明に係るスキャニング機能を備えた無線通信機の概要ブロック構成図である。図1において1は受信回路であって、アンテナ2により到来電波を電気信号に変換して供給を受ける。また、この受信回路1はCPU3により種々の制御を受けるが、制御の一つとしてスキャニング受信制御や優先チャネル設定も含まれる。更に、本発明の各処理ステップやスキャニング受信機能として制御するために、CPU3には、時間計数、着信回数計数、着信時間計数等の各種の計数を行うカウンタ4と、本発明を実施する上で必要なプログラム等を記憶した書き込み専用記憶装置ROM5と、同様に本発明の実施に必要なデータや設定した優先チャネル情報を記憶する読み書き可能な記憶装置RAM6と、スキャニング受信オン・オフ用設定スイッチ(SW)7と、を備えている。
これらの構成によって、以下具体的に説明するように、複数の受信チャネルを予め設定した順序で受信し着信の有無を検出し、着信があるチャネルでは受信動作を行うスキャニング受信機を実現し、更に、所定時間内又は所定回数のスキャニング・サイクル中に受信チャネル毎に着信があった回数、時間、着信頻度等を計数する手段や処理と、これらの計数結果に基づいて優先順位を設定する優先順位設定処理と、設定した順序に従ってスキャニング受信を行うスキャニング受信制御処理と、を実現するものである。なお、受信回路そのものをソフトウエアラジオとして構成する場合も含むものとする。
【0019】
図2は本発明のスキャニング機能付き無線通信機及びスキャニング方法の一例を示すフローチャートであり、従来例において説明した場合と同じようにCh1乃至Ch4の四つの受信チャネルを備えたシステムを例にする。この例に示す処理では、フローが開始されると先ずスイッチ(図1)7が操作を確認し、このスイッチによってスキャニング受信が指示されているときは(S1)、スキャン処理を開始し(S2)、スキャニング処理S3を開始する。スキャニング処理S3内部は、上記スイッチ7(スキャンキー)のオン・オフを確認し、スイッチ7が操作されていないとき(スイッチがオンのままのとき:S3-1 No)、Ch1乃至Ch4を順次スキャンして各チャネルへの着信の有無を確認する(S3-2乃至S3-5)。このとき、最初のスキャンで未だ優先チャネルの設定が行われていない場合は、図2のS3に示した順番のノーマルスキャンを行う。このとき、S3のスキャニング処理内部フローにおいて、スイッチ7(スキャンキー)が操作されて、スキャニング受信が解除され、通常受信の指示がなされている場合は(S3 Yes)、スキャニング受信処理を終了する(S4)。
【0020】
一方、S3のスキャニング処理において、ノーマルスキャン中にいずれかのチャネルに着信があると、その受信チャネルでスキャンを停止し(S5)、そのチャネルの着信検出回数を計数するとともに、予め設定した数値を超えている否かの判断、あるいは既に最も優先度の高いチャネルであるか否か等の判断を行うことにより、優先順位の変更が必要か否かを判断する(S6)。この判断の結果、優先順位の変更が必要ない場合は(S6 No)、着信継続の有無を判断しながら着信が継続する間は受信を継続するが(S7)、一定時間以上の無着信状態を確認したときは(ディレイ時間経過を確認して:S7 No)上記S3に戻ってスキャニング処理を行う(S8 No)。一方、上記S6において、優先順位の変更が必要と判断された場合は(S6 Yes)、優先チャネルスキャン変更処理を行い、その結果を必要に応じてRAM6等に記憶させるとともに、S3のスキャニング処理に反映させ、新たな優先チャネルに基づいたスキャニング順序を設定する(S9)。
【0021】
なお、上記例では着信回数をカウントしたが、この例に限らず種々の方法が考えられる。例えば、所定スキャニング・サイクル回数又は所定時間内における、各チャネルの受信時間(着信時間)の積算値によって、優先順位を決定すること、あるいは直近の着信履歴に優先度を高くするような時系列的な重み付けを施すこと、更には、これらを組み合わせて総合的に優先順位を設定する等、適宜選択することができる。また、優先チャネルスキャン変更処理は、スキャニング毎に行うものでもよいが、所定時間や所定スキャニング・サイクル経過する毎に変更することでもよい。
【0022】
図3乃至図5は、このようにして優先チャネルが設定される場合の、スキャニングの例を示すシーケンス図である。例えば図3に示す優先スキャニング受信処理は、所定スキャニング・サイクルにおける各チャネルの着信回数が、CH1=2回、CH2=5回、CH3=0回、CH4=10回と仮定した場合に、その回数に応じて優先度を設定し、CH4>CH2>CH1>CH3とした場合のスキャニング・シーケンスは図3のとおりとなる。即ち、一スキャン内のスキャン順番をCH4→CH2→CH1→CH3→・・・・の繰り返しとしたものである。なお、この例では各チャネルに優先度を設けたとしても、一スキャンにおけるモニタ受信回数が同一となるので、更に、実質的なスキャン効果を持たせる必要がある場合は、図4に示すように、直前のスキャニング受信において着信があったCH2の優先度を高くするために、次回のスキャニング受信の際に、最初にCH2を「優先的付加」したシーケンスにすることも有用であろう。これによれば、直前に着信があったチャネルは引き続き通信中である可能性が高いので、継続して通信内容を傍受するチャンスを設けることが可能となる。
【0023】
図5は、本発明に係るスキャニング受信方法の他の実施例を示すスキャニング・シーケンス図である。先ず、図5(a)に示す例では、図3、図4の例と同じようにCH1乃至CH4に着信履歴が有る場合、第一優先度のCHを4回連続して受信し、以下同様に着信回数が多い順に、CH2を3回、CH1を2回、CH3を1回スキャニング受信するように設定したものである。なお、連続してスキャンするということは、一回のスキャン時間が例えば100msである場合、4回連続スキャニングでは400ms、3回では300ms受信することを意味する。連続して受信する時間が多くなれば、その分着信を捕捉するチャンスが増えることになるので、優先スキャニングの効果が得られる。
【0024】
また、相対的に着信が多いチャネルの優先度を高める方法として、直近の着信履歴に応じて、着信の少ないチャネルをスキャニング処理から排除することも有用である。例えば、図5(b)に示すように、第一回目のスキャニング受信ではCH4→CH2→CH1→CH3のシーケンスで受信するが、第二回目のスキャンでは、着信が最も少ないCH3を除去し、更に第三回目のスキャンでは次に着信実績が少なかったCH1を、また更に次の第四回目のスキャンではCH2も削除するように組んだものである。このシーケンスを一回のスキャニング受信シーケンスとして繰返すことによって、着信実績が多いチャネルについて実施的に優先度を高めたスキャニング受信を行うことになる。
また、従来、無線通信機に新たなスキャニング・チャネルを登録し、又は更新する場合、パーソナル・コンピュータ(PC)にケーブルを介して接続した上で、PCを操作する必要があったが、本発明によれば、全ての処理を自動的に実行できるので、操作が簡便になるという大きな効果も得られる。
【0025】
本発明は上記実施例に限ることなく、種々変形が可能である。例えば、特許文献1に開示されているように、無線通信機に電源は投入されているが送信動作をすることなく受信待ち受け中の無線通信機の存在を検出して、それらの無線通信機もスキャニング受信チャネルに登録する手段を併用することも有用である。そのために、図6に示すように送信機能を付加する。即ち、図6は本発明に係るスキャニング機能付き無線通信機の他の実施例を示すブロック図である。この例が上記図1に示した構成と異なるところは、受信回路1を、送信機能を備えた送受信回路10に置き換えるとともに、送信制御用の第二のスイッチ8を備えた点である。このように送信機能を付加するとともに、検索対象周波数帯のチャネルにおいて、例えば特許文献1に倣って700msチェック信号を送信し、受信チャネルに戻して、相手方からの応答を待つ。これに応答がある場合は、そのチャネルをスキャニング・チャネルのリストに登録する。このようなチェック送信処理を対象とするチャネルについて順次行い応答のあるチャネル、即ち、通信発生の可能性のあるチャネルとして登録しておく。この方法によれば、送信動作は行わないが、スタンバイ状態の無線通信機が存在するチャネルを検出してスキャニング・チャネルとして登録しておくことが可能となる。なお、スタンバイ状態(受信待ち受け状態)の無線通信機が、チェック送信に応答するようなシステムになっていればこの方法を利用できるが、その他の場合、例えば、レピータ装置や無線基地局において、通信範囲内に存在する移動無線局の存在情報等を管理保有している場合は、これらの情報を何等かの手段で入手できるようにしておけば、チェック送信を必ずしも実行する必要なく、本発明を実施することが可能となる。スタンバイ状態の無線局が存在するチャネルについては、他の受信チャネルとは別にスキャニング・グループとして登録しておくことも有用であろう。なお、無線通信システムが、同時送受信方式で、送信チャネルと受信チャネルとが異なる場合は、その関係に基づいた着信検出を行う必要があることは云うまでもない。
【0026】
更に、このようにして存在を確認したチャネルについても優先チャネルの評価判断を行って、優先度を付加しておいてもよい。このようなスタンバイ状態の無線局の存在チャネルを把握しておけば、例えば、緊急通信の場合に大いに有用である。緊急通信の際に、通信相手が存在するか否か、そして、存在する場合、的確に情報を伝達することが重要であるが、極めて多数のチャネルのなかから、連絡可能な数少ない無線局を迅速に探し出すのは非常に困難であるし、時間を要する。そこで、上述したようにチェック送信を行い、それに応答する無線局の存在を把握しておけば、緊急通信の際、これらの情報も含めて緊急連絡を行うことが可能となる。このような緊急通信に備えて、常に、最新の着信が得られるチャネル情報及びスタンバイ状態の無線局が存在するチャネル情報を保有しておくことは極めて有用である。
【0027】
以上説明したように本発明では、過去の受信履歴に基づいて優先チャネルを設定するように構成したので、そのとき時の状況に即した優先チャネル受信が可能であり、しかも、設定チャネルを自動的に行うことができるので、従来のようにパーソナルコンピュータとケーブルで接続する手間や設備が不要であり、利便性を著しく向上することができる。
なお、以上本発明のいくつかの実施例について説明したが、本発明はこれらの例に限定する必要はなく、種々の変形が可能である。先ず、本発明を適用する無線通信機としては図1や図6に示したものの他、種々変形が可能である。
また、優先チャネルを複数設定する場合を説明したが、一つだけ選択して、その繰り返しスキャン回数やモニタ受信時間の長短を、その優先度に応じて設定するように構成しても構わない。例えば、直前のスキャニング受信において着信のあったチャネルを、次のスキャンでは5回連続モニタ受信し、そのスキャン中に着信が無い場合は、次のスキャンでは4回に減らし、無着信が続く場合は更に回数を減ずるように制御することや、着信があると、再び5回に戻して同様のスキャニング受信処理を繰返す等、種々バリエーションに富んだ制御を行えば、利便性に優れたスキャニング受信処理が可能となる。
【0028】
また、本発明に従って着信履歴を参照して設定した優先チャネルのみを編集したリストをスキャニング情報として記憶するとともに、それを呼出して優先チャネルのみをスキャニング受信することも有用であろう。あるいは、実施例では、一回のスキャニング・サイクル毎に優先チャネルを設定するように構成したが、処理が煩雑過ぎる場合や、頻繁に優先チャネルが変更されて不都合な場合は、予め設定した比較的長い周期の所定スキャニング・サイクル毎に、蓄積した履歴情報に基づいて優先度を評価し、スキャニング受信の順序に反映させることも効果的であろう。
【0029】
なお、以上説明した各制御や判断設定等は、CPU3を中心として、ROM5、RAM6によって行い、カウンタ4の機能も、これらのCPUとROM等で実現できることは云うまでもないが、CPUの補助回路としてFPU(Floating-Point-number-Processing-Unit)を備え、優先チャネルの判断、設定、更新等の処理を行えば、CPUの稼働付加を軽減し、しかも迅速な処理が可能となる。
また、本発明は以上説明した処理を、コンピュータが処理可能なプログラムとして構成すれば、必要なCPUやメモリを搭載した電子機器にそれらのソフトウエアをインストールすることによって、本発明を実現することが可能である。特に近年は、デジタル処理するものが多くなり、その処理のためにCPUやDSPを備えることが多いので、ソフトウエアでの実施が容易であろう。
【0030】
即ち、本発明をスキャニング受信方法として実現する場合は、例えば図1に示した構成図のうち少なくとも、受信回路1、アンテナ2、CPU3、ROM5、RAM6を備え、ROM5には、複数の受信チャネルを予め設定した順序で受信し着信の有無を検出するとともに、着信があるチャネルでは受信動作を行うようにしたプログラムをインストールするとともに、CPUとカウンタにより、所定時間内又は所定回数のスキャニング・サイクル中に受信チャネル毎に着信があった回数を計数する着信回数計数処理と、該着信回数計数処理の結果に基づいて優先順位を設定する優先順位設定処理を行い、更に、この優先順位設定処理によって設定した順序に従って受信回路をスキャニング受信するように制御する。そして、優先チャネルとして設定されたリスト等をRAM6に適宜記憶しておき、プログラムとともに実行することにより、上記各実施例と同様に機能させれば、夫々の実施例と同様の効果を得ることができる。また、本発明において説明した各機能・方法を、それぞれプログラム化し、あらかじめCD−ROM等の記録媒体に書き込んでおき、コンピュータに搭載したCD−ROMドライブのような媒体駆動装置に、このCD−ROM等を装着して、これらのプログラムをコンピュータのメモリあるいは記憶装置に格納し実行することによって、本発明の目的が達成されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 受信回路、2 アンテナ、3 CPU、4 カウンタ、5 ROM、6 RAM、
7 スキャンキー、8 操作キー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の受信チャネルを予め設定した順序で受信し着信の有無を検出するとともに、着信があるチャネルでは受信動作を行うスキャニング機能付き無線通信機において、所定時間内又は所定回数のスキャニング・サイクル中に受信チャネル毎に着信があった回数を計数する着信回数計数手段と、該着信回数計数の結果に基づいて優先順位を設定する優先順位設定手段と、該優先順位設定手段によって設定した順序に従ってスキャニング受信を行うスキャニング受信制御手段と、を備えたことを特徴とするスキャニング機能付き無線通信機。
【請求項2】
請求項1記載のスキャニング機能付き無線通信機において、前記優先順位設定手段は、時系列的に直近のスキャニングにおける着信チャネルの優先度が高くなるように重み付けを行う手段を備えたことを特徴とするスキャニング機能付き無線通信機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のスキャニング機能付き無線通信機において、前記優先順位設定手段は、予め設定したスキャニング・サイクル数又はスキャニング時間内における着信回数が少ないチャネルをスキャニング対象から排除する機能を備えたことを特徴とするスキャニング機能付き無線通信機。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項記載のスキャニング機能付き無線通信機において、更に、送信手段と、前記優先順位設定手段によって設定された優先順位に従って該当するチャネルにて送信する優先送信手段を備えたことを特徴とするスキャニング機能付き無線通信機。
【請求項5】
前記優先チャネル設定手段によって設定される優先チャネルは優先度に対応して、一つのスキャニング・サイクル中において行われる受信動作の回数を多く又はスキャン停止のモニタ時間を長く設定されることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項記載のスキャニング機能付き無線通信機。
【請求項6】
複数の受信チャネルを予め設定した順序で受信し着信の有無を検出するとともに、着信があるチャネルでは受信動作を行うスキャニング機能付き無線通信機のスキャニング方法において、所定時間内又は所定回数のスキャニング・サイクル中に受信チャネル毎に着信があった回数を計数する着信回数計数処理と、該着信回数計数処理の結果に基づいて優先順位を設定する優先順位設定処理と、該優先順位設定処理によって設定した順序に従ってスキャニング受信を行うスキャニング受信処理と、を含むことを特徴とする無線通信機のスキャニング方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−193541(P2011−193541A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142236(P2011−142236)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【分割の表示】特願2006−322535(P2006−322535)の分割
【原出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】