説明

通信端末

本発明の課題は、本体の大きさやデザインを変更する必要なく、金属板上に寝かせた状態で置いても受信感度を良好に保つことのできる通信端末を提供することである。下側筺体(105)の内側にはアンテナ(107)が接続された基板(125)が設けられている。基板(125)にはGND面が設けられており放射素子(121)が接続されている。また、放射素子(121)にはこれと略垂直な方向に補助地板(123)が結合して設けられている。放射素子(121)も補助地板(123)も共に導体である。基板(125)には高周波電流(131)が流れるが、通信端末を金属板(141)上に置いた状態では、鏡像効果によって逆相の高周波電流(133)が金属板(141)を流れるため、高周波電流(131)は打ち消され、アンテナ(107)の放射は弱められる。ただ、鏡像効果によって金属板(141)に垂直な成分は打ち消し合わないため、放射素子(121)は金属板(141)に対して対称にダイポールアンテナを構成することとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は通信端末に係り、特に、当該通信端末をスチール机等の金属板上に寝かせた状態で置いても受信感度を良好に保つことのできる通信端末に関する。
【背景技術】
通常、携帯電話やPHS等の通信端末にはアンテナが設けられている。当該通信端末をスチール机等の金属板上に寝かせて置くとアンテナが金属板に近接した状態になるため、相互結合が生じてアンテナを流れる電流と逆位相の電流が金属面に流れ、アンテナの放射指向特性が変化すると共にインピーダンス特性が大きく変化してしまう。このため整合状態が崩れ、アンテナ利得が劣化してしまうという問題があった。
この問題を解決するため、特開平10−126304号公報(特許文献1)に記載の小型無線機では、ホイップアンテナが背面上部に設けられているため、図9に示すように、小型無線機本体を横に寝かせて置いたときに当該小型無線機本体上部側が浮くようバランスされた位置に、ホイップアンテナの感度特性を調整するためのリブを設置している。こうすることによって、小型無線機を金属板上に置いてもアンテナ利得は劣化せず、良好な受信感度を実現することができる。
また、他の方法としては、アンテナエレメントや整合回路をスイッチング素子で切り替えて金属板上でのインピーダンス整合をとる手法や、サブアンテナを設けて金属板上でも放射するようにする手法があった。
(特許文献1)特開平10−126304号公報
しかしながら、上記説明した小型無線機の背面にリブを設ける手法にあっては、リブの分だけ本体の厚さが増してしまうため薄型化できず、かつ、リブがデザインの面で大きなインパクトを与えてしまうため外形を損ねてしまうという問題点があった。また、アンテナエレメントや整合回路をスイッチング素子で切り替える手法やサブアンテナを設ける手法にあっては、回路構成および制御が複雑となり、コストが高くなってしまうだけでなく小型化にもとって望ましくない。このため、端末自体の大きさやデザイン等を変更する必要なく、本体を金属板上に寝かせて置いた際であってもアンテナ利得が劣化することのない通信端末が望まれていた。
本発明は、上記従来の問題点および要望に鑑みてなされたものであって、本体の大きさやデザインを変更する必要なく、金属板上に寝かせた状態で置いても受信感度を良好に保つことのできる通信端末を提供することを目的としている。
【発明の開示】
上記目的を達成するために、本発明に係る通信端末は、GND面を有しアンテナが接続された基板を筐体の内側に備えた通信端末であって、導体によって形成され、前記筺体の背面から露出するようまたは前記筐体の背面に沿うよう前記筐体の内側に配置された第1導体部と、導体によって形成され、前記筐体の底面若しくは側面から露出するようまたは前記筐体の底面若しくは側面に沿うよう前記筐体の内側に配置された第2導体部と、を備え、前記第2導体部は、前記第1導体部との垂直成分を構成し、前記基板のGND面および前記第1導体部と電気的に接続されている。
アンテナから基板にかけては高周波電流が流れるが、筐体の背面を下に当該通信端末を金属板上に置いた状態では、鏡像効果によって逆相の高周波電流が金属板を流れるため、通信端末の基板を流れる高周波電流は打ち消され、このためアンテナの放射は弱められることとなる。しかし、当該状態にあっては、第1導体部は金属板に電気的に接続または高周波的に短絡されており、第2導体部は基板のGND面に接続されているが、鏡像効果によって金属板に垂直な成分は強めあうため、第2導体部に基板上を流れる高周波電流が基板の延長として流れ、金属板に対して垂直な電界が生じることになる。このため、アンテナ利得は劣化せず、受信感度を良好に保つことができる。また、通信端末自体の大きさやデザインを変更する必要はほとんどなく第1導体部および第2導体部を設置することができる。
また、本発明に係る通信端末は、前記第2導体部と前記基板のGND面との間に受動素子を備え、前記第2導体部は、前記受動素子を介して前記基板のGND面と電気的に接続されている。
このように、受動素子を第2導体部と基板のGND面との間に挿入することにより、第2導体部の電流分布を変えることができる。したがって、第2導体部の共振周波数を受動素子によって所望の周波数に調整することができる。
さらに、本発明に係る通信端末は、筐体の背面側にシールドケースが取り付けられアンテナが接続された基板を前記筺体の内側に備えた通信端末であって、導体によって形成され、前記筐体の背面から露出するようまたは前記筐体の背面に沿うよう前記筐体の内側に配置された第1導体部と、導体によって形成され、前記筐体の内側に配置された第2導体部と、を備え、前記第1導体部および前記第2導体部は、前記筺体の背面側と前記基板との間に配置され、前記第2導体部は、前記第1導体部との垂直成分を構成し、前記基板に取り付けられたシールドケースおよび前記第1導体部と電気的に接続されている。
アンテナから基板にかけては高周波電流が流れるが、筺体の背面を下に当該通信端末を金属板上に置いた状態では、鏡像効果によって逆相の高周波電流が金属板を流れるため、通信端末の基板を流れる高周波電流は打ち消され、このためアンテナの放射は弱められることとなる。しかし、当該状態にあっては、第1導体部は金属板に電気的に接続または高周波的に短絡されており、第2導体部は基板に取り付けられたシールドケースに接続されているが、鏡像効果によって金属板に垂直な成分は強めあうため、第2導体部に基板上を流れる高周波電流が基板の延長として流れ、金属板に対して垂直な電界が生じることになる。このため、アンテナ利得は劣化せず、受信感度を良好に保つことができる。また、他の部品との位置関係から基板の長さを筐体の底面付近までとることができなくても、第1導体部および第2導体部を構成することができる。また、通信端末自体の大きさやデザインを変更する必要はほとんどなく第1導体部および第2導体部を設置することができる。
さらに、本発明に係る通信端末は、前記第1導体部と前記第2導体部は一体に成形されていることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
図1は、第1の実施形態の通信端末を示す外観図であり、
図2は、第1の実施形態の通信端末が有する主要部を横側から模式的に示した説明図であり、
図3は、他の実施形態の通信端末が有する主要部を横側から模式的に示した説明図であり、
図4は、他の実施形態の通信端末を示す外観図であり、
図5は、第2の実施形態の通信端末が有する主要部を底面側から模式的に示した説明図であり、
図6は、第2の実施形態の通信端末を横側(a)および背面側(b)から模式的に示した説明図であり、
図7は、第3の実施形態の通信端末が有する下側筺体の背面側のカバーを取り外した状態を背面側から示した外観図であり、
図8は、第3の実施形態の通信端末が有する主要部を横側から模式的に示した説明図であり、
図9は、特開平10−126304号公報に記載の小型無線機の構成を示す側面図であり、
図10は、(a)従来の通信端末、(b)図9の小型無線機、及び(c)本実施形態の通信端末のそれぞれから得られるVSWR特性図であり、
図11は、(a)従来の通信端末、及び(b)本実施形態の通信端末のそれぞれから得られる水平偏波と垂直偏波の指向性図である。
なお、図中の符号、101はヒンジ、103は上側筐体、105は下側筐体、107はアンテナ、121,153,203,305は放射素子、123,155,205,307は補助地板、201は金属金具、303はシールドケースである。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明に係る通信端末の実施の形態について、(第1の実施形態)、(第2の実施形態)、(第3の実施形態)の順に図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する通信端末は、アンテナを備えた折り畳み型の携帯電話やPHS等の通信機器である。但し、折り畳み型に限らずストレート型やフリップ型であっても良い。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の通信端末を示す外観図である。同図に示すように、本実施形態の通信端末は、ヒンジ101によって結合された2つの筐体(上側筐体103および下側筐体105)が折り畳み可能に構成されており、下側筐体105にはアンテナ107が設けられている。また、下側筐体105の図1に符号109で示した底面と符号111で示した背面とは略直角に形成されている。また、請求の範囲の第2導体部に該当する放射素子121は下側筐体105の底面109と面一に露出するよう設けられ、第1導体部に該当する補助地板123は下側筐体105の背面111と面一に露出するよう設けられており、互いに略直角に結合されている。なお、放射素子121および補助地板123はいずれも導体である。
以下、図2を参照して、本実施形態の通信端末の主要部について詳細に説明する。図2は、第1の実施形態の通信端末が有する主要部を横側から模式的に示した説明図である。同図に示すように、本実施形態の通信端末を構成する下側筐体105の内側には、アンテナ107が接続された基板125が設けられている。基板125には、本実施形態の通信端末を通信機として動作させるために必要なICや素子等の部品が搭載されていると共に、GND面(以下、単に「GND」という。)が設けられている。また、放射素子121は基板125のGNDに接続されている。
図2に示すように、アンテナ107から基板125にかけては高周波電流131が流れるが、下側筺体105を下にして本実施形態の通信端末をスチール机等の金属板141上に置いた状態では、鏡像効果によって逆相の高周波電流133が金属板141を流れるため、基板125を流れる高周波電流131は打ち消される。このため、アンテナ107本来の放射は弱められることとなる。ただ、当該状態にあっては、補助地板123は金属板141に電気的に接続されており、放射素子121は基板125のGNDに接続されているが、鏡像効果によって金属板141に垂直な成分は強めあうため、放射素子121に基板125上を流れる高周波電流131が基板の延長として流れ、金属板141に対して垂直な電界が生じることになる。
すなわち、金属板141と補助地板123は電気的に接触した状態であるため同電位であるが、放射素子121は基板125のGNDに接続されており、基板125のGNDにはアンテナ107からの高周波電流131が流れているため、放射素子121には基板125の延長として高周波電流131が流れることにより、放射素子121は金属板141に対して垂直な偏波成分の電界を発生させ、放射に寄与するようになる。補助地板123がない場合には、放射素子121の金属板141に面する端子は金属板141に対して高周波的に短絡することができず、十分な鏡像効果が得られないため金属板141に垂直な成分を強めあわず、放射素子121は放射に寄与することがない。
なお、本実施形態の通信端末を金属板141に置いていない状態では、補助地板123と共に基板125のGNDの一部にすぎないため、アンテナ107の特性に悪影響を及ぼすことはない。
以上説明したように、本実施形態の通信端末では、基板125のGNDに接続された放射素子121、および放射素子121と略直角に結合された補助地板123を備えているため、通信端末を金属板141上に寝かせて置いた状態にあっては、補助地板123が金属板141に対して電気的に接続され、放射素子121が金属板141に垂直な電界を放射することとなる。このため、アンテナ利得は劣化せず、受信感度を良好に保つことができる。
なお、本実施形態では、放射素子121および補助地板123が下側筺体105の表面と面一に露出しているが、図3に示すように、同様の位置関係を保ちつつ、これらを下側筐体105の内側に設けても良い。この場合、放射素子121および補助地板123は露出しないため、通信端末のデザインを損ねず、かつ、下側筐体105の形状の複雑化を防ぐことができる。また、通信端末を金属板141上に置いたとき、補助地板123は金属板141とコンデンサを構成することになるため、高周波的には短絡された状態となる。したがって、放射素子121は、鏡像効果により金属板141に対して垂直な偏波成分の電界を放射することになる。
また、図4に示すように、下側筐体105の底面109にコネクタやジャック等の部品151が設けられる場合は、放射素子153が当該部品151の周辺部分から露出するような形状とすれば良い。また、本実施形態では、放射素子153と補助地板155が別体として形成され結合されているが、一体として形成されていても良い。
但し、図2及び図3に示す補助地板123、図4に示す補助地板155の各面積は、金属板141と高周波的に短絡するために最低限必要な面積として20平方mm以上であることが好ましい。
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態の通信端末が有する主要部を底面側から模式的に示した説明図である。また、図6は、第2の実施形態の通信端末を横側(a)および背面側(b)から模式的に示した説明図である。なお、同図において、図1および図2(第1の実施形態)と重複する部分には同一の符号が付されている。
第2の実施形態の通信端末は、図5および図6に示すように、下側筐体105内側に基板125、金属金具201、放射素子203および補助地板205が設けられている。なお、放射素子203と補助地板205は一体に形成されている。また、金属金具201はコネクタやジャック等の部品207を基板125に固定するための金具であり、電気的には基板125のGNDに接続されている。さらに、放射素子203には金属金具201と接触するための屋根型のバネ部209が設けられており、放射素子203および補助地板205は金属金具201を介して基板125のGNDに電気的に接続されている。但し、バネ部209による接触に限らず、金属金具201と放射素子203および補助地板205とを一体化した構成にしても良い。
このため、金属金具201によって基板125に固定されるコネクタ207が設けられる通信端末であっても、部品207下部の狭いスペースに放射素子203および補助地板205を設置することができ、かつ、金属金具201を介して基板125のGNDと電気的に接続することができるため、第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。すなわち、通信端末を金属板上に置いた状態であっても、鏡像効果により金属板に対して垂直な電流成分が強めあうため、基板125上を流れる高周波電流が基板の延長として放射素子203および金属金具201に高周波電流が流れ、金属板に対して垂直な偏波成分の電界を放射するようになる。このため、アンテナ利得は劣化せず、受信感度を良好に保つことができる。
なお、図5に示すように、金属金具201は部品207の両側に2つ設けられているため、一方の金属金具201aは基板125のGNDに直接接続し、他方の金属金具201bは受動素子(例えばL成分を持った素子)211を介して基板125のGNDに接続しても良い。このように、いずれか一方の金属金具201と放射素子203との間に受動素子211を挿入することによって、放射素子203および金属金具201の電流分布を変えることができる。
したがって、下側筺体105の背面のスペースの都合上、補助地板205が金属板と高周波的に短絡するために必要な面積を確保できない場合であっても、放射素子203と金属金具201とによって実現される放射素子203の共振周波数を受動素子211によって所望の周波数に調整することができる。この結果、当該ダイポールアンテナは所望周波数の電磁波を放射することができる。但し、補助地板205の面積は、金属板と高周波的に短絡するために最低限必要な面積として20平方mm以上であることが好ましい。
(第3の実施形態)
図7は、第3の実施形態の通信端末が有する下側筺体の背面側のカバーを取り外した状態を背面側から示した外観図である。また、図8は、第3の実施形態の通信端末が有する主要部を横側から模式的に示した説明図である。なお、同図において、図1および図2(第1の実施形態)と重複する部分には同一の符号が付されている。
第3の実施形態の通信端末は、図7および図8に示すように、下側筐体105内側に基板301、基板301の背面側に取り付けられたシールドケース303、放射素子305および補助地板307が設けられている。なお、放射素子305と補助地板307は一体となっており、基板301の下側筺体105の背面側に構成されている。また、放射素子305は、補助地板307の一部を背面側から持ち上げてシールドケース303に押し当てるように形成されている。したがって、下側筐体105内側に、シールドケース303付きの基板301、放射素子305および補助地板307を設置した状態では、シールドケース303と放射素子305とが電気的に接続された状態になる。
したがって、本実施形態の通信端末を金属板上に置いたとき、補助地板307は金属板とコンデンサを構成することになるため、高周波的には短絡された状態となる。したがって、放射素子305は、鏡像効果により基板301上を流れる高周波電流が基板301の延長として流れ、金属板に対して垂直な偏波成分の電界を放射する。このため、通信端末を金属板上に置いたことによりアンテナ107本来の放射は弱まるが、放射素子305が放射に寄与するためにアンテナ利得は劣化せず、受信感度を良好に保つことができる。
なお、基板301を流れる高周波電流の振幅は基板301上の位置によっても変わるため、放射素子305がシールドケース303と接する点の位置を適切に選ぶことで、放射素子305の電流分布を変えることができる。したがって、放射素子305の共振周波数を所望の周波数にすることができるため、当該放射素子305は所望周波数の電磁波を放射することができる。
以上説明したように、本実施形態の通信端末では、電池等の位置関係から基板301の長さを下側筐体105の底面109付近までとることができなくても、放射素子305および補助地板307を構成することができる。したがって、通信端末を金属板上に寝かせて置いた状態にあっては、補助地板305が金属板と高周波的に短絡され、放射素子305に基板301上の高周波電流が基板301の延長として流れ、金属板に垂直な偏波成分の電界を放射するため、アンテナ利得は劣化せず受信感度を良好に保つことができる。また、放射素子305とシールドケース303との接触点を基板301上の適当な位置とすることにより、放射素子305からの放射を所望の周波数で実現することができる。
なお、本実施形態では、補助地板307が下側筐体105の内側に設けられているが、下側筺体105の背面111と面一に露出するよう設けられていても良い。また、放射素子305の形状は図示した例に限らず、補助地板307との垂直成分が構成されていれば良い。但し、補助地板307の面積は、金属板と高周波的に短絡するために最低限必要な面積として20平方mm以上であることが好ましい。
【実施例】
以下、図面を参照し、上記第1から第3の実施形態に係る通信端末により得られる効果を従来の通信端末により得られる効果と比較して説明する。なお、以下に説明する通信端末は、アンテナを備えた折り畳み型の携帯電話やPHS等の通信機器である。但し、折り畳み型に限らずストレート型やフリップ型であっても良い。
図10は、(a)従来の通信端末、(b)図9の小型無線機、及び(c)本実施形態の通信端末のそれぞれから得られるVSWR特性図である。VSWR(Voltage Standing Wave Ratio:電圧定在波比)は、お互いが干渉して定在波を発生させる進行波と反射波の電圧振幅分布の山と谷の比を表す。図10(a)は、第1の実施形態の通信端末から放射素子121と補助地板123を取り除いた従来の通信端末のVSWR特性図である。また、図10(b)は、図9で示した小型無線機のVSWR特性図である。また、図10(c)は、第1、2及び3の実施形態の通信端末のVSWR特性図である。
図10(b)のVSWR特性図は、図10(a)のVSWR特性図と比較すると、図中の2直線で挟まれた880MHz〜960MHzの帯域でVSWR値が少し減少した程度である。一方、図10(c)のVSWR特性図は、図10(a)、(b)のVSWR特性図と比較すると、880MHz〜960MHzの帯域でVSWR値が大きく減少し、また、VSWR値のピークがあることからアンテナとしての共振を見ることができ、大きく改善されていることがわかる。
また、図11は、(a)従来の通信端末、及び(b)本実施形態の通信端末のそれぞれから得られる水平偏波と垂直偏波の指向性図である。水平偏波の指向性図は、アンテナが水平面と平行になるよう通信端末を配置した際の水平面の指向性を示している。また、垂直偏波の指向性図は、アンテナが水平面と垂直になるよう通信端末を配置した際の水平面の指向性を示している。図11(b)の本発明の通信端末の指向性は、図11(a)の従来の通信端末の指向性と比較すると、水平偏波の指向性はアンテナに垂直な方向に、垂直偏波の指向性は全方位的に、ともに大きく改善されていることが分かる。
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2002年11月7日出願の日本特許出願No.2002−324084に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
以上説明したように、アンテナから基板にかけては高周波電流が流れるが、筐体の背面を下に当該通信端末を金属板上に置いた状態では、鏡像効果によって逆相の高周波電流が金属板を流れるため、通信端末の基板を流れる高周波電流は打ち消され、このためアンテナの放射は弱められることとなる。しかし、本発明に係る通信端末によれば、当該状態にあっては、第1導体部は金属板に電気的に接続または高周波的に短絡されており、第2導体部は基板のGND面に接続されているが、鏡像効果によって金属板に垂直な成分は強めあうため、第2導体部に基板上を流れる高周波電流が基板の延長として流れ、金属板に対して垂直な電界が生じることになる。このため、アンテナ利得は劣化せず、受信感度を良好に保つことができる。また、通信端末自体の大きさやデザインを変更する必要はほとんどなく第1導体部および第2導体部を設置することができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
GND面を有しアンテナが接続された基板を筐体の内側に備えた通信端末であって、
導体によって形成され、前記筐体の背面から露出するようまたは前記筐体の背面に沿うよう前記筐体の内側に配置された第1導体部と、
導体によって形成され、前記筐体の底面若しくは側面から露出するようまたは前記筐体の底面若しくは側面に沿うよう前記筐体の内側に配置された第2導体部と、を備え、
前記第2導体部は、前記第1導体部との垂直成分を構成し、前記基板のGND面および前記第1導体部と電気的に接続されていることを特徴とする通信端末。
【請求項2】
前記第2導体部と前記基板のGND面との間に受動素子を備え、
前記第2導体部は、前記受動素子を介して前記基板のGND面と電気的に接続されていることを特徴とする請求の範囲第1項記載の通信端末。
【請求項3】
筐体の背面側にシールドケースが取り付けられアンテナが接続された基板を前記筐体の内側に備えた通信端末であって、
導体によって形成され、前記筐体の背面から露出するようまたは前記筐体の背面に沿うよう前記筺体の内側に配置された第1導体部と、
導体によって形成され、前記筺体の内側に配置された第2導体部と、を備え、
前記第1導体部および前記第2導体部は、前記筐体の背面側と前記基板との間に配置され、
前記第2導体部は、前記第1導体部との垂直成分を構成し、前記基板に取り付けられたシールドケースおよび前記第1導体部と電気的に接続されていることを特徴とする通信端末。
【請求項4】
前記第1導体部と前記第2導体部は一体に成形されていることを特徴とする請求の範囲第1項、第2項または第3項記載の通信端末。

【国際公開番号】WO2004/042947
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【発行日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−549647(P2004−549647)
【国際出願番号】PCT/JP2003/014223
【国際出願日】平成15年11月7日(2003.11.7)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】