説明

通信装置及び通信方法

【課題】マルチパスの影響を抑えると共に、基板上に複数の平面アンテナを自由に配置することができるようにする。
【解決手段】電波吸収体層で構成された基板101と、前記基板101の一方の面の中央に設置されるアンテナパターン103と、前記アンテナパターン103の周縁との間に間隙102をあけて形成される導体層109とから構成される平面アンテナ100である。そして、間隙102の外周端から前記基板の外周端までの距離を前記平面アンテナ100で送信又は受信に用いる通信波長をλとした場合にλ/4以上とした平面アンテナ100で、パルス信号を直接に給電するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接非接触通信機能を有している一対のアンテナ間で、マルチパスノイズを適切に排除した送受信が行える通信装置及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アンテナは携帯性を必要とする電子機器や、通信ケーブルを配線し難い宅内、構内及びビルといった遠隔間の通信機器等に使用されることを想定して設計開発される場合が多い。つまり、如何に効率的に電波を遠方へ放射するかを目的にしてアンテナ開発設計される場合が多く、基本的な設計では、遠方界への電波の放射を考えるものである。このようなアンテナ開発の中で、広帯域性を有する設計として広い周波数に渡って定インピーダンス性を示すものが広帯域性を有したアンテナとなることがあり、自己相似アンテナや自己補対アンテナ等が開発されるに至っている。
なお、自己補対アンテナとは、無限に広い完全導体板の2分の1で構成された任意形状のアンテナである。その構造の穴に相当する部分の形状が、板の部分の形状と完全に同形であるようなアンテナのことを言い、使用周波数およびその形状に無関係に入力インピーダンスが一定である。
【0003】
一般に、平面アンテナは、誘電体多層基板上に、接地層(GND層)をアンテナ背面に持つので、狭帯域性を有するようになる。従って、大量の広帯域情報を送受信できる広帯域性を確保するためには、GND層をアンテナ背面に持たない構造が一般的に採られる。
【0004】
図15は、一般的な多層基板上に構成される平面アンテナの構成例を示す上面図である。この平面アンテナは長方形で左右が対称である。図15に示す平面アンテナ10は、図示しない接地層(以下GND層という)及び絶縁体が積層された基板2上に長方形状のアンテナパターン1を有して構成される。平面アンテナ10は、アンテナパターン1の下層に絶縁層を介してGND層を有しているので、狭帯域性を示すものである。アンテナパターン1は、使用周波数の波長をλとしたとき、長手方向の長さがλ/2を有している。給電線5の中心を基準にして左右λ/4に区分したとき、左側のλ/4の形状と、右側のλ/4の形状とが同じになるものである。
【0005】
この平面アンテナを用いて2つの電子機器間で信号処理では、平面アンテナ同士を対面近接させ、近傍にて無線通信を行っている。例えば、図16に示すように、アンテナパターン4aを備えた基板3a及びアンテナパターン4bを備えた基板3bを離隔距離d1で保持、かつ、面対称となるように配置する。つまり、アンテナパターン4aは基板3aの上面に備えられており、アンテナパターン4bは基板3bの下面に備えられている。なお、平面アンテナ11aはアンテナパターン4aと基板3aとで構成しており、平面アンテナ11bはアンテナパターン4bと基板3bとで構成している。そして、平面アンテナ11a及び11bの大きさは、所定の奥行きa1、所定の横幅b1である。
【0006】
そして、一方の平面アンテナ11bに任意の使用周波数(例えば、3GHz〜7GHz)の搬送波を給電して信号を送信し、他方の平面アンテナ11aでその信号を受信することができる。
【0007】
ところで、同一基板上に複数台の平面アンテナを装備している基板同士が対面に配置され、その基板間での無線通信が行われる場合、複数個の平面アンテナから放射された電波は二つの基板間で電波の多重反射を引き起こし、マルチパスを形成している。このようなマルチパスにおいて入力される電波と直接到来する電波とを受信アンテナで見れば、その波形がどの波形が所望のものかわからないために、信号品質を劣化させる要因となっている。
【0008】
その問題解決の従来の手段として、同一基板上に装備されている平面アンテナ同士との間に、所定の幅をもつ金属層を設ける手段がある。
【0009】
この金属層を設けた構成例について、図17及び図18を用いて説明する。図17が示すように、離隔距離d1で保持、かつ、面対称となるように配置している2つの基板40a及び40bがある。一方の基板40aには、アンテナパターン4c〜4gのそれぞれを備えた各平面アンテナ11c〜11gと4個の金属層41a〜41dを交互に隙間なく配置している。他方の基板40bには、基板11c〜11g及び金属層41a〜41dと対面になる位置に、アンテナパターン4h〜4k及び4mのそれぞれを備えた各平面アンテナ11h〜11k及び11mと4個の金属層41e〜41hを交互に隙間なく配置している。なお、平面アンテナを備えた基板の横幅を所定の横幅b1とし、金属層の横幅を所定の横幅c1としており、所定の横幅c1は横幅b1の4倍以上の幅をもっていることとする。図18は、図17のA−A線に沿う断面図である。
図17が示すような配置構成において、基板40bから基板40aへの送信が行われる。つまり、基板の面対称の位置にある平行アンテナ11cから11hへ、11dから11iへ、11eから11jへ、11fから11kへ、11gから11mへとの間で送信が行われる。
【0010】
この金属層の設置により、基板上にある平面アンテナの間に基板の横幅b1の4倍以上の幅c1をもつ金属層を設けることにより、平面アンテナからの電波が反射や回折を起こしてくる複数の電波から構成されるマルチパスを軽減することができる。
【0011】
特許文献1には、通信アンテナの周囲に誘電体で形成された凸状を設けると共に、さらにその周囲に電波吸収体を配置しているという記載がある。
【0012】
特許文献2には、近接配置してある平面アンテナ間の無線通信の例として、SIP(System In Package)実装を念頭に、数10μm程度に薄く研磨したICチップを複数枚積層し、それらのチップ間でデータ転送を行なう技術について記載がある。つまり、ICチップ上に半導体プロセスを用いて、近接した送受信回路とアンテナ及びコイルからなるチャネルを50μm間隔で複数レイアウトする。そして、直径48μmのアンテナ・コイルを使用した場合、1チャネル当たりの特性として、43μm離れたアンテナ間で1.0Gbpsのデータ転送を実現することができる構成についての記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2005−94537号公報
【特許文献2】特開2005−228981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献2については、SIP(System In Package)実装を念頭に考案されたものである。そのため、図17が示す金属層41a〜41hを設けたとしても、本特許を適用しようとする通信距離0.5mm以上の場合には、複数アンテナ間でのマルチパスによる混信を十分に軽減出来ない。例えば、平面アンテナ11j及び11e間の通信と平面アンテナ11i及び11d間の通信を同時に行った場合、平面アンテナ11j及び11e間の通信は、平面アンテナ11i及び11d間の通信からの反射、回折、透過されてくる信号に影響を受けることになる。その信号は、図18が示すような、平面アンテナ11iから回折されてくる信号e1と、平面アンテナ11iからの信号が平面アンテナ11dと金属層41fで反射されてくる信号e2がある。さらに、平面アンテナ11dが受けた信号が基板40a内を通して透過されてくる信号e3がある。
【0015】
図19は、図17で示す従来の平面アンテナの複数個間での構成で通信を行った場合の状態を示したものである。これは、図18に示すアンテナパターン11eが、図18に示すアンテナパターン11iからアンテナパターン11dへの送信からの影響を受けた場合の波形を示している。
【0016】
また、このようなマルチパスの軽減手段では平面アンテナとの間に必ず金属層を設ける必要があるため、平面アンテナを実装するときの制約となってしまう問題がある。例えば、複数の平面アンテナを実装する場合、複数の平面アンテナと共に金属層をも隣接して設けるために実装する領域を大きくなることである。さらに、平面アンテナのレイアウトの自由度が、制限されてしまうことである。
また、基板に金属層を設ける工程があるために、コスト高になってしまう問題がある。
【0017】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、マルチパスの影響を抑えると共に、基板上に複数の平面アンテナを自由に配置することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するための本発明は、電波吸収体層で構成された基板と、基板の一方の面の中央に設置されるアンテナパターンと、アンテナパターンの周縁との間に間隙をあけて形成される導体層とから構成される平面アンテナである。そして、間隙の外周端から基板の外周端までの距離が平面アンテナで送信又は受信に用いる通信波長をλとした場合にλ/4以上とした平面アンテナで、パルス信号を直接に給電するものである。
【0019】
このようにしたことで、パルス信号は、反射、回折、透過の影響を受けずに、無線通信を行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、電波吸収体層上にアンテナパターンを形成することで、自身が送信する信号又は他のアンテナからの信号で反射、回折、透過することで発生するマルチパスを軽減させる効果をより得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施の形態の例の通信装置が備えている平面アンテナの構造を示す斜面図である。
【図2】本発明の一実施の形態の例の通信装置が備えている平面アンテナを対向して配置した構成を示した斜視図である。
【図3】本発明の一実施の形態の例の通信装置の内部構成を示したブロック図である。
【図4】本発明の一実施の形態の例の通信装置間の各部位での信号波形の例を示した波形図である。
【図5】本発明の一実施の形態の例の従来の通信装置の複数台同士を対向配置した構成例を示した斜視図である。
【図6】図5で示す本発明の一実施の形態の例の通信装置の構成において、受信する波形の例を示す図である。
【図7】本発明の一実施の形態の例の通信装置を適用した親モジュール及び子モジュールの例を示した斜視図(a)と、親モジュール及び子モジュールが接続している状態の例を示した斜視図(b)である。
【図8】本発明の一実施の形態の例の通信装置を適用した子モジュールの変形例を示した斜視図(例1)である。
【図9】本発明の一実施の形態の例の通信装置を適用した子モジュールの変形例を示した斜視図(例2)である。
【図10】本発明の一実施の形態の例の通信装置を適用した親モジュール及び子モジュール2台の例を示した斜視図(a)と、親モジュール及び子モジュール2台が接続している状態の例を示した斜視図(b)である。
【図11】本発明の一実施の形態の例の通信装置が備える平面アンテナの複数台を同一基板上に並べた場合の例を示した斜視図である。
【図12】本発明の一実施の形態の例の通信装置が備える平面アンテナを多層基板に実装した場合の例を示した斜視図である。
【図13】本発明の一実施の形態の通信装置が備える平面アンテナの変形例を示す斜視図(例1)である。
【図14】本発明の一実施の形態の通信装置が備える平面アンテナの変形例を示す斜視図(例2)である。
【図15】従来の通信装置が備える平面アンテナの構造例を示す上面図である。
【図16】従来の通信装置が備える平面アンテナ同士を対向して配置した構成例を示した斜視図である。
【図17】従来の通信装置の複数台同士を対向配置した構成例を示した斜視図である。
【図18】図17のA−A線に沿う断面図である。
【図19】図17で示す従来の通信装置の構成において、受信する波形の例を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施の形態の例の通信装置について、図1〜14を参照して、以下の順序で説明する。
1.平面アンテナの構成(図1−2)
2.通信装置の内部構成例(図3)
3.通信装置の各部位の波形例(図4)
4.複数の通信装置の対向構成(図5−6)
5.通信装置を適用したモジュールの実装例及び接続例(図7−10)
6.通信装置の平面アンテナを同一基板上に複数台配置した配置例(図11−12)
7.一実施の形態の外形形状の変形例(図13−14)
【0023】
<1.平面アンテナの構成>
以下、本発明の一実施の形態の例の通信装置に備えられている平面アンテナの構成を、図1及び図2を用いて説明する。図1は、平面アンテナの構造を示した斜面図で、図2は図1で示す平面アンテナを対向配置し、無線通信を行う形での構成を示した斜視図である。
【0024】
図1に示す平面アンテナ100は、近距離にて単一指向性かつ広帯域性を有し、遠距離にて狭帯域性を有する2周波の共振型アンテナ動作をするものである。
【0025】
平面アンテナ100は、一方の面に接地導体層としての導体層109が形成されており、他方の面に基板としての電波吸収体層101が形成されている。そして、他方の面上には、通信IC105などの回路コンポーネントが実装されている。なお、この場合の電波吸収体層とは、20[dB]以上の電波吸収がある層であり、例えばフェライトなどで構成される。
【0026】
電波吸収体層101の導体層109が重ね合わされる面の中央にはアンテナパターン103が配置されており、導体層109にはアンテナパターン103を露出させる貫通孔が設けられている。導体層109とアンテナパターン103の周縁との間には、間隙として環状スロット102が形成されている。アンテナパターン103の形状としては、図示のように正八角形である他、正六角形などの正多角形や円形であることが好ましい。
図1に示す平面アンテナ100においては、アンテナパターン103の直径をaとし、環状スロット102の溝幅(間隙の幅)をbとし、環状スロット102の外周端から電波吸収体層101の外周端(外縁)までの距離をcとしている。なお、所定の距離cは、通信波長をλとした場合にλ/4以上であればよい。そして、本発明の一実施の形態の例における電波吸収体層101及び導体層109の形状は、縦横の所定の幅eをもつ正方形としている。しかしながら、電波吸収体層101の形状は、環状スロット102の外周端から電波吸収体層101の外周端(外縁)までの距離がc以上であればよいため、例えば、その形状が正八角形や正六角形などの正多角形や円形であってもよい。
【0027】
環状スロット102からなるアンテナパターン103には、環状スロット102の中央を挟むように2つの給電点106及び107が設けられている。給電線及びアンテナパターンは、例えば金、銀、銅、黄銅、青銅、白銅等の金属箔又は金属板、これらの金属層から構成される。
【0028】
一方の給電点106は、スルーホールを介して平面アンテナ100の他方の面で、通信IC105から出る給電線104に接続されている。給電線104は、平面アンテナ100の他方の面に形成された線状の導体パターンからなるマイクロストリップ伝送線路として構成される。マイクロストリップ伝送線路の特性インピーダンスは、その線路幅と平面アンテナ100の厚さにより調整することができる。
【0029】
また、他方の給電点107は、アンテナパターン103の中央を挟んで給電点106とはほぼ反対側となる場所に配置されているが、スルーホールを介して平面アンテナ100の他方の面で、終端抵抗108に接続されている。図示するように、給電点106及び107間のスロット線路長は時計回りと反時計回りでほぼ等しく、送受信アンテナ間の信号伝送にとって等しい役割を果たしている。
【0030】
なお、平面アンテナ100を受信アンテナ側として使用する場合では、終端抵抗108の値は0Ωに設定することも可能である。この場合、給電点107において、スルーホールを介さず、アンテナパターン103を接地導体層(この場合、導体層109となる)に直接ショートする構成としてもよい。
【0031】
図2には、図1で示す平面アンテナ100を対向で近接対向して配置させ、無線通信を行う構成と示している。即ち、平面アンテナ110a並びに110bは、離隔距離dで、かつ、面対称となるように配置されている。なお、離隔距離dは、通信波長より短い距離であれば、よいものとする。
【0032】
平面アンテナ110a並びに110bはともに、一方の面には導体層119a及び119b、他方の面に電波吸収体層111a及び111bが形成されている。なお、両方の平面アンテナ110a及び110bの他方の面である電波吸収体層111a及び111bには、図1が示す平面アンテナ100と同様に回路コンポーネントが実装されているが、ここでは省略している。
【0033】
平面アンテナ110aは、平面アンテナ110bと向き合う一方の面である導体層119aの面の中央に、周縁の導体層119aの間に形設された環状スロット112aを有するアンテナパターン113aを備えている。
【0034】
同様に、平面アンテナ110bは、平面アンテナ110aと向き合う一方の面である導体層119bの面の中央に、アンテナパターン113aと導体層119bの間に形設された環状スロット112bを有するアンテナパターン113bを備えている。
【0035】
そして、平面アンテナ110a及び110bは、一方を受信用とし、他の一方を送信用として、アンテナ間での無線通信が行われている。
【0036】
<2.通信装置の内部構成例>
以下、本発明の一実施の形態の例の通信装置の内部構成例を、図3を用いて説明する。
【0037】
このシステムは、搬送波を用いずに、パルスにより無線通信するシステムであり、送信部120と受信部130とから構成される。
【0038】
送信部120は、送信データ部124と、エンコーダ123と、アンプ122と、送信アンテナ121とで構成される。
【0039】
送信データ部124で不図示の内部機器から送信対象のデータを受けて、その受けたデータをエンコーダ123へ出力する。そして、エンコーダ123で符号化を行い、アンプ122で全長1n秒以下のパルス(インパルス)信号を生成する。そのパルス信号は、送信アンテナ121で出力している。
【0040】
一方の受信部130は、受信アンテナ131と、コンパレータ132と、デコーダ133と、受信データ部134とで構成されている。
【0041】
受信アンテナ131は、対面にある送信アンテナ121から送信されるパルス波を受信する。受信したパルス波は、信号はコンパレータ132に入力される。コンパレータ132は、AGC(Automatic Gain Control)回路を備えて、最適な振幅になるように増幅され、その増幅された信号は所定の閾値とで比較して、パルスの有無を判定する。この判定により、HighレベルとLowレベルの信号で出力されて、パルス波が復元される。次に、復元されたパルス波は、デコーダ133で複合化を行うことで、元のデータとなって受信データ部134に入力される。
【0042】
なお、送信アンテナ121は、図2で示す平面アンテナ110a及び110bのいずれか一方とし、残った他方の平面アンテナを受信アンテナ131とする。
【0043】
<3.通信装置の各部位の波形例>
ここで、本発明の一実施の形態の例の通信装置において、図3における各部位における波形の例を図4に示す。
【0044】
図4(a)では、不図示の内部機器から送信対象のデータを受けて、送信データ部124が送信するデータを示している。この場合の例として、デジタル信号「1010」としている。
【0045】
図4(b)では、図4(a)の信号を、エンコーダ123及びアンプ122を介して、送信アンテナ121で出力する2つの信号を示している。なお、この場合の2つの信号は、差動信号としているが、シングルエンド信号であってもよい。
【0046】
図4(c)では、受信アンテナ131が、送信アンテナ121からの信号を受信した場合の信号を示している。つまり、デジタル信号の立ち上がりまたは立下り部分で微分されたパルス信号になっている。
【0047】
図4(d)では、コンパレータ132において、図4(c)が示すデジタル信号の立ち上がりまたは立下り部分で微分された信号が、不図示のAGC回路で最適な振幅になるように増幅された波形を示している。この増幅された波形は、コンパレータ132で所定の閾値d1及びd2と比較され、パルスの有無が判定される。その判定によって、HighレベルとLowレベルのパルス波に変換される。
【0048】
図4(e)では、図4(d)で示す波形がコンパレータ132及びデコーダ133を介して、元の波形に復元されている波形を示している。
【0049】
<4.複数の通信装置の対向構成>
ここで、図1が示す平面アンテナ100を同一基板上に複数個を配置した基板同士を近接対向させた場合の構成例について、図5に用いて説明する。
【0050】
例えば、図5が示すように、離隔距離dで、かつ、面対称となるように配置されている長方形型の基板140a及び140bがある。基板140a及び140bはともに、一方の面には導体層149a及び149b、他方の面に電波吸収体層141a及び141bが形成されている。なお、両方の基板140a及び140bの他方の面である電波吸収体層141a及び141bには、図1が示す平面アンテナ100と同様に回路コンポーネントが実装されているが、ここでは省略している。なお、離隔距離dは、通信波長より短い距離であれば、よいものとする。
【0051】
基板140aは、基板140bと向き合う一方の面である面の中央に、周縁の導体層149aの間に形設された環状スロット142a〜142eを持つアンテナパターン143a〜143eが、所定の距離cを離して備えられている。そして、アンテナパターン143aから基板140aの端までの幅と、アンテナパターン143eから基板140aの端までの幅は、所定の距離cとしている。なお、通信波長をλとした場合、所定の距離cはλ/4以上であればよいものとする。
【0052】
ところで、このアンテナパターン143aから基板140aの端までの幅の基板部分と、アンテナパターン143eから基板140aの端までの幅の基板部分はなくてもよい。つまり、基板140aの両端にあるアンテナパターン143a及び143eの隣に所定の距離c以内にアンテナパターンを設置しなければ、電波吸収体層を備えた基板は必要がないということである。
【0053】
同様に、基板140bは、基板140あと向き合う一方の面である面の中央に周縁の導体層149bの間に形設された環状スロット142f〜142jを持つアンテナパターン143f〜143jが、所定の距離cを離して備えられている。なお、通信波長をλとした場合、所定の距離cはλ/4以上であればよい。
【0054】
ところで、このアンテナパターン143fから基板140bの端までの幅の基板部分と、アンテナパターン143jから基板140bの端までの幅の基板部分はなくてもよい。つまり、基板140bの両端にあるアンテナパターン143f及び143jの隣に所定の距離c以内にアンテナパターンを設置しなければ、電波吸収体層を備えた基板は必要がないということである。
【0055】
このような構成において、基板140b及び基板140aとの間で送受信が行われる。つまり、基板の面対称の位置にあるアンテナパターン間、143a及び143fと、143b及び143gと、143c及び143hと、143d及び143iと、143e及び143jとのそれぞれで、送信又は受信が行われる。
【0056】
このように本実施の形態によると、他の平面アンテナもしくは自身の平面アンテナから回析、反射、透過してくる信号を電波吸収体層で吸収することとなり、マルチパス発生をより軽減させることができる。
【0057】
図5に示す本発明の一実施の形態の通信装置が備える平面アンテナを用いた構成で、通信を行った場合の状態について、図6を用いて説明する。
【0058】
図6は、図5で示す本発明の一実施の形態を用いて複数個での構成での波形を示している。これは、図5が示すアンテナパターン143cが、図5が示すアンテナパターン143gからアンテナパターン143bへの送信からの影響を受けた場合の波形を示している。
【0059】
図6及び図19の波形の比較によって、従来例としての図19の波形のノイズ量に比べて、本実施の形態での図6の波形では、ノイズ量が減少しているのがわかる。このことにより、アンテナパターンを電波吸収体層上に形成することはマルチパスの軽減に対して良好な特性をもつことが判る。
【0060】
また、アンテナパターンを電波吸収体層上に形成することは、従来の手法で必要だった金属層が不必要となり、平面アンテナのレイアウトが自由に行うことができる。さらに、金属層を設ける工程が必要でなくなったため。その分がコスト安になる効果を有する。
【0061】
なお、この本発明の一実施の形態においてマルチパスの軽減の効果を得るのに、対面する基板の両方に電波吸収体層を備わっていることとしたが、片面であっても同様な効果が得られる。
<5.通信装置を適用したモジュールの実装例及び接続例>
本発明の一実施の形態の例の通信装置を適用した実施例として、親モジュール及び子モジュールの実装例及び接続例について、図7−10を用いて説明する。
【0062】
図7(a)は、親モジュール210と子モジュール220に平面アンテナを実装した例を示す斜視図で、図7(b)は親モジュール210と子モジュール220が無線接続した例を示す斜視図である。この実施例は、親モジュール210の一面の所定の位置に設置してある平面アンテナ211と、子モジュール220の一面の所定の位置に設置してある平面アンテナ221とをあわせることで、モジュール間の無線通信ができることを示している。なお、平面アンテナ211及び221は、本実施の形態の例の通信装置が備える平面アンテナを適用したものである。
【0063】
図8及び図9は、子モジュールの別形態を示した斜視図である。図8は、三角錐の形をした子モジュール230であり、その底面を平面アンテナのアンテナ設置面231としている。図9は、円柱の形をした子モジュール240であり、その上面を平面アンテナのアンテナ設置面241としている。なお、アンテナ設置面231とアンテナ設置面241とは、本実施の形態の例の通信装置が備える平面アンテナが設置できる箇所である。
【0064】
図10(a)は、親モジュール310と子モジュール320と子モジュール330に平面アンテナを実装した例を示す斜視図である。そして、図10(b)には、親モジュール310の上に子モジュール320と子モジュール330をひな壇のように重ねることで、無線接続ができることを示した例の斜視図である。親モジュール310には、モジュールの上面の所定の位置に平面アンテナ311が設置してある。平面アンテナ322には、下面の所定の位置に平面アンテナ321と、上面の所定の位置に平面アンテナ322が設置してある。子モジュール330には、下面の所定の位置に平面アンテナ331が設置してある。
【0065】
まず、平面アンテナ311と平面アンテナ321が合わさるように親モジュール310の上に子モジュール320を設置する。次に、子モジュール320の上に平面アンテナ322と平面アンテナ331が合わさるように子モジュール330を設置する。つまり、親モジュール310は子モジュール320を介して、子モジュール330と接続できることを示している。なお、平面アンテナ311、321、322、331は、本実施の形態の例の通信装置が備える平面アンテナを適用したものである。
【0066】
このように、図7−10のようなモジュールの形態であっても、本実施の形態の例の通信装置が備える平面アンテナを使って、モジュール間の無線接続を行うことができる。
【0067】
なお、このモジュールの形態は図7−10のような6面体以外の多面体であってもよく、並びに、その多面体の一面以上に平面アンテナを設置してもよい。そのようにすることで、多段に積み重ねや平行に並べることのような様々な無線接続を行うことが可能となる。
【0068】
<6.通信装置の平面アンテナを同一基板上に複数台配置した配置例>
本発明の一実施の形態の例の通信装置が備える平面アンテナの設置手段の例として、図11及び図12を用いて説明する。
【0069】
図11は、図5が示すアンテナパターン5個を横一列に並べた構成を、縦に2列とし、計10個のアンテナパターンを配置した構成の斜視図を示している。つまり、基板410の同一面上に、下の列に環状スロット412a〜412eを有するアンテナパターン413a〜413eが配置され、上の列に環状スロット412f〜412jを有するアンテナパターン413f〜413jが配置してある。ただし、アンテナパターン412a〜412jのそれぞれの間は、所定の距離c以上の距離がある。なお、通信波長をλとした場合、所定の距離cはλ/4以上であればよいものとする。
【0070】
図11のような構成にしても、アンテナパターン同士の距離が所定の距離c以上の距離にあることで、同様にマルチパスの軽減の効果を得られる。
【0071】
また、図11が示すような配置構成は一例であり、同一基板上に複数の平面アンテナをどのような配置構成にしてもよい。
【0072】
図12は、図5が示すアンテナパターン5個を横一列に並べた構成の積層例を示す斜視図である。図12に示す多層基板420は、上部から、誘電体層436、環状スロット422a〜422eを持つアンテナパターン423a〜423eをある層435、電波吸収体層434、絶縁層433、接地層(以下GND層という)432、絶縁層431で構成される。電波吸収体層434より下の下層は金属層433、誘電体層432、金属層431としているが、これらは通常の電子機器において用いられる多層基板の材料が用いられる。なお、アンテナパターン422a〜422eのそれぞれの間は、所定の距離c以上の距離がある。なお、通信波長をλとした場合、所定の距離cはλ/4以上であればよいものとする。
【0073】
この積層例で、電波吸収体層434の下層には金属層433が設けられ、その絶縁層433の下層には更に大面積のGND層432が設けられる。GND層432の面積は、アンテナパターン421a〜421eが形成している層435よりも十分大きいものである。これは、アンテナパターン421a〜421eが単一指向性を示すようにするためである。また、最上層の誘電体層436は、レジスト層やシルク層等が使用され、この他に空気(誘電率=1)が代用できる。
【0074】
図14が示すような多層基板であっても、アンテナパターン同士の距離が所定の距離c以上の距離にあることで、同様にマルチパスの軽減の効果を得られる。
【0075】
<7.一実施の形態の外形形状の変形例>
本発明の一実施の形態の例の通信装置で使用する平面アンテナの変形例について、図13−14を用いて説明する。
【0076】
図13の平面アンテナ510と図14の平面アンテナ520はともに、一方の面には導体層519及び529が、他方の面には電波吸収体層511及び521が形成されている。そして、他方の面上には、通信IC515若しくは通信IC525などの回路コンポーネントが実装されている。図1に示した平面アンテナ100と同様にデジタル・データ転送を行なうが、差動伝送を行なう点で相違する。
【0077】
まず、図13の平面アンテナ510について説明する。図13に示す平面アンテナ510では、導体層519のほぼ中央部分においてスロットで分離されたアンテナパターンが配置されている。しかし、平面アンテナ510の一方の面に、アンテナパターンの中央を挟むように設けられた2つの給電点516、517を結ぶ線を直交する線にほぼ沿って分割された2つのアンテナパターン513a及び513bを備えている。そして、各アンテナパターン513a、513bを分割した間隙の両端部分において、アンテナパターン513a、513b間は終端抵抗518a、518bで接続されている。
【0078】
なお、各アンテナパターン513a、513bの終端方法は図13に限定されるものではない。例えば、各アンテナパターン513a及び513bと導体層519との間、若しくは電源端子との間に、4つの終端抵抗を配置するという変形例も考えられる。
【0079】
また、平面アンテナ510の他方の面には、通信IC515を始めとする回路コンポーネントが実装されている。通信IC515からは、デジタル・ベースバンド信号がLVDSやCMLなどの差動電気信号として2つに分岐された差動伝送線路514a、514bに出力される。各差動伝送線路514a、514bは、マイクロストリップ伝送線路からなるが、スルーホールを介してそれぞれ給電点516、517において各アンテナパターン513a、513bに接続されている。
【0080】
通信IC515から出力された電気信号は、インピーダンス整合された、マイクロストリップ伝送線路514a及び514b、スルーホール、及びアンテナパターン513a及び513bを通る。この経路を通ったあとに、そのほとんどが、終端抵抗において熱変換されるので、反射の少ない良好な伝送特性を得ることができる。
【0081】
次に、図14の平面アンテナ520について説明する。平面アンテナ520は、一方の面に、導体層529の間に形成された環状スロット522からなるアンテナパターン523を備えている。そして、アンテナパターン523には、その中央を挟むように2つの給電点526、527が配設され、それぞれスルーホールを介して他方の面のマイクロストリップ伝送線路524a、524bに接続されている。2本のマイクロストリップ伝送線路524a、524bはアンテナの近くで交わり、差動伝送線路524として通信IC525に接続されている。
【0082】
図13及び図14に示すような平面アンテナの外形形状であっても、電波吸収体層上にアンテナパターンを形成することで、同様にマルチパスの軽減の効果を得られる。
【符号の説明】
【0083】
1…アンテナパターン、2…基板、3a,3b…基板、4a〜4k,4m…アンテナパターン、5…給電線、10…平面アンテナ、11a〜11k,11m…平面アンテナ、40a,40b…基板、41a〜41h…金属層、100…平面アンテナ、101…電波吸収体層、102…環状スロット、103…アンテナパターン、104…給電線、105…通信IC、106…給電点、107…給電点、108…終端抵抗、109…導体層、110a,110b…平面アンテナ、111a,111b…電波吸収体層、112a,112b…環状スロット、113a,113b…アンテナパターン、119a,119b…導体層、120…送信部、121…送信アンテナ、122…アンプ、123…エンコーダ、124…送信データ部、130…受信部、131…受信アンテナ、132…コンパレータ、133…デコーダ、134…受信データ部、140a,140b…基板、141a,141b〜電波吸収体層、142a〜142j…環状スロット、143a〜143j…アンテナパターン、149a,149b〜導体層、210…親モジュール、211…平面アンテナ、220…子モジュール、221…平面アンテナ、230…子モジュール、231…アンテナ設置面、240…子モジュール、241…アンテナ設置面、310…親モジュール、311…平面アンテナ、320…子モジュール、321,322…平面アンテナ、330…子モジュール、331…平面アンテナ、410…基板、412a〜412j…環状スロット、413a〜413j…アンテナパターン、510…平面アンテナ、511…電波吸収体層、513a,513b…アンテナパターン、514a,514b…差動伝送線路、515…通信IC、516,517…給電点、518a,518b…終端抵抗、519…導体層、520…平面アンテナ、521…電波吸収体層、522…環状スロット、523…アンテナパターン、524…差動伝送線路、524a,524b…マイクロストリップ伝送線路、525…通信IC、526,527…給電点、529…導体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波吸収体層で構成された基板と、前記基板の一方の面の中央に設置されるアンテナパターンと、前記アンテナパターンの周縁との間に間隙をあけて形成される導体層とから構成される平面アンテナを備え、
前記間隙の外周端から前記基板の外周端までの距離は、前記平面アンテナで送信又は受信に用いる通信波長をλとした場合にλ/4以上である
通信装置。
【請求項2】
前記アンテナパターンの形状が、円形、若しくは正多角形である
請求項1記載の通信装置。
【請求項3】
前記アンテナパターンの中央を挟むように2つの給電点が配設される
請求項1記載の通信装置。
【請求項4】
前記アンテナパターンは、前記の各給電点においてスルーホールを介して前記基板の他方の面に通じ、前記他方の面上に実装された通信回路チップに繋がる給電線に接続されている
請求項1記載の通信装置。
【請求項5】
前記平面アンテナを送信アンテナとして用いられ、
前記通信回路チップは、前記給電点の一方に対して、送信信号としてパルス信号を直接に給電する
請求項1記載の通信装置。
【請求項6】
前記平面アンテナの他方の面である電波吸収体層側に、絶縁層、誘電体層及びGND層の金属層が積層してある
請求項1記載の通信装置。
【請求項7】
前記アンテナパターンを通信アンテナとして用いられ、
前記アンテナパターンは、前記2つの給電点を結ぶ線を直交する線にほぼ沿って2つに分割され、且つ、分割した間隙の両端部分の2箇所において各アンテナパターンは終端され、差動伝送信号が前記2つの給電点にそれぞれ供給される
請求項3記載の通信装置。
【請求項8】
前記アンテナパターンを通信アンテナとして用いられ、
前記アンテナパターンに配設された前記2つの給電点から差動信号が取り出される
請求項3記載の通信装置。
【請求項9】
第1の平面アンテナと前記第1の平面アンテナに対向する第2の平面アンテナを備え、
前記第1の平面アンテナ及び前記第2の平面アンテナは、基板と、前記基板の一方の面の中央に設置されたアンテナパターンと、前記アンテナパターンの周縁との間に間隙をあけて形成される導体層とを有し、
前記間隙の外周端から前記基板の外周端までの距離が、前記平面アンテナで送信又は受信に用いる通信波長をλとした場合にλ/4以上であり、
前記第1の平面アンテナ及び前記第2の平面アンテナの少なくともいずれか一方の基板が、電波吸収体層で構成される
通信装置。
【請求項10】
電波吸収体層で構成された基板と、前記基板の一方の面の中央に設置されるアンテナパターンと、前記アンテナパターンの周縁との間に間隙をあけて形成される導体層とから構成される平面アンテナを備え、
前記間隙の外周端から前記基板の外周端までの距離を前記平面アンテナで送信又は受信に用いる通信波長をλとした場合にλ/4以上とした前記平面アンテナで、パルス信号を直接に給電する通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−45035(P2011−45035A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193604(P2009−193604)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】