説明

通気部材

【課題】筐体内に水やオイルなどが侵入する可能性を低くすることができる通気部材を提供する。
【解決手段】通気部材1Aは、筐体10の開口11を形成する筒状のネジ軸12に取り付けられるものであり、ネジ軸12に螺合するネジ穴21が設けられた支持体2と、開口11に面するように支持体2に支持された防水通気膜3と、開口11の周囲で筐体10と支持体2との間のギャップをシールするシール部材4と、を備えている。この構成によれば、支持体2がネジ軸12の外側に広がる形状を有しているために、ネジ軸12に締め付けられたときの揺れが小さくなる。しかも、筐体10に設けられたネジ軸12自身が筐体10の表面上から開口11への水やオイルなどの流入を食い止める防護壁の役割を果たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体に取り付けられる通気部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車用ランプやECU(Electrical Control Unit)などの自動車電装部品、OA(オフィスオートメーション)機器、家電製品、医療機器などでは、電子部品や制御基板などを収容する筐体に、温度変化による筐体内の圧力変動を緩和したり筐体内を換気したりする目的で開口が設けられ、この開口に通気部材が取り付けられることが行われている。この通気部材は、筐体の内外での通気を確保しつつ筐体内への塵や水などの異物の侵入を防ぐものである。
【0003】
例えば特許文献1には、図6に示すような通気部材100が開示されている。この通気部材100は、筐体150の開口151を形成するネジ穴152に取り付けられるものであり、支持体110、通気膜120、シール部材130およびカバー140を備えている。支持体110は、ネジ穴152と螺合するネジ軸112および頭部113を有している。また、支持体110には、ネジ穴152の中心軸に沿って通気路111が設けられている。通気膜120は通気路111を塞ぐように支持体110に支持されており、カバー140は通気膜120を覆っている。シール部材130は、支持体110のネジ軸112の根元部分に装着され、支持体110の頭部113によってネジ穴152の開口側に設けられたテーパー面153に押圧されることにより筐体150と支持体110との間のギャップをシールする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−185156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図6に示すような通気部材100では、支持体110がネジ穴152内に挿入される断面略T字状の形状を有するために、ネジ穴152に締め付けられたときに揺れやすく、その揺れによってシール部材130によるシールが不十分になることがある。それ故に、筐体150内に水やオイルなどが侵入する可能性が高い。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、筐体内に水やオイルなどが侵入する可能性を低くすることができる通気部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、筐体の開口を形成する筒状のネジ軸に取り付けられる通気部材であって、前記ネジ軸に螺合するネジ穴が設けられた支持体と、前記開口に面するように前記支持体に支持された防水通気膜と、前記開口の周囲で前記筐体と前記支持体との間のギャップをシールするシール部材と、を備える、通気部材を提供する。
【発明の効果】
【0008】
上記の構成によれば、支持体がネジ軸の外側に広がる形状を有しているために、ネジ軸に締め付けられたときの揺れが小さくなる。しかも、筐体に設けられたネジ軸自身が筐体の表面上から開口への水やオイルなどの流入を食い止める防護壁の役割を果たす。従って、筐体内に水やオイルなどが侵入する可能性を低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係る通気部材の斜視図
【図2】図1に示す通気部材の断面図
【図3】本発明の第2実施形態に係る通気部材の断面図
【図4】本発明の第3実施形態に係る通気部材の斜視図
【図5】図4に示す通気部材の断面図
【図6】従来の通気部材の断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明は本発明の一例に関するものであり、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0011】
(第1実施形態)
図1および図2に、本発明の第1実施形態に係る通気部材1Aを示す。この通気部材1Aは、筐体10の開口11を形成する筒状のネジ軸12に取り付けられるものであり、ネジ軸12に螺合するネジ穴21が設けられた支持体2を備えている。すなわち、ネジ軸12の外周面には雄ネジが形成されており、ネジ穴21の内周面には雌ネジが形成されている。さらに、通気部材1Aは、開口11に面するように支持体2に支持された防水通気膜3と、開口11の周囲で筐体10と支持体2との間のギャップをシールするシール部材4とを備えている。
【0012】
防水通気膜3は、気体の透過を許容し、液体の透過を阻止する膜(樹脂または金属からなる、職布、不織布、メッシュ、ネットなど)であれば、構造や材料は特に限定されない。例えば、防水通気膜3は、樹脂多孔質膜に補強層が積層された構成を有していてもよい。補強層を設けることにより、高強度の防水通気膜3を得ることができる。
【0013】
樹脂多孔質膜の材料には、公知の延伸法、抽出法によって製造することができるフッ素樹脂多孔質体やポリオレフィン多孔体を用いることができる。フッ素樹脂としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体等が挙げられる。ポリオレフィンを構成するモノマーとしては、エチレン、プロピレン、4−メチルペンテン−1,1ブテン等が挙げられ、これらのモノマーを単体で重合した、または共重合して得たポリオレフィンを使用することができる。また、ポリアクリロニトリル、ナイロン、ポリ乳酸を用いたナノファイバーフィルム多孔体等を用いることもできる。中でも、小面積で通気性が確保でき、筐体内部への異物の侵入を阻止する機能の高いPTFE多孔質体が好ましい。
【0014】
なお、樹脂多孔質膜には、筐体10の使用環境に応じて撥液処理を施してもよい。撥液処理は、表面張力の小さな物質を樹脂多孔質膜に塗布し、乾燥後、キュアすることにより行うことができる。撥液処理に用いる撥液剤は、樹脂多孔質膜より低い表面張力の被膜を形成できればよく、例えば、パーフルオロアルキル基を有する高分子を含む撥液剤が好適である。撥液剤の塗布は、含浸、スプレー等で行うことができる。また十分な防水性を確保するという観点から、樹脂多孔質膜の平均孔径は、0.01μm以上10μm以下であることが望ましい。
【0015】
補強層の材料としては、樹脂多孔質膜よりも通気性に優れるものを用いることが好ましい。具体的には、樹脂または金属からなる、職布、不織布、メッシュ、ネット、スポンジ、フォーム、多孔体などを用いることができる。樹脂多孔質膜と補強層とを接合する方法としては、接着剤ラミネート、熱ラミネート、加熱溶着、超音波溶着、接着剤による接着などの方法がある。
【0016】
防水通気膜3の厚さは、強度および支持体2への固定しやすさを考慮して、例えば、1μm〜5mmの範囲で調整するとよい。樹脂多孔質膜または防水通気膜3の通気度は、ガーレー値にて0.1〜300sec/100mLであることが好ましい。
【0017】
支持体2は、ナット状の構造を有し、ネジ軸21に締め付けられることによりシール部材4を押圧する。シール部材4は、本実施形態ではネジ穴21の外側に配置されている。
【0018】
支持体2は、工具で締め付け可能なように、少なくとも一対の互いに平行な平行面を持つ外周面を有することが好ましい。例えば、支持体2の輪郭は、ネジ穴21の軸方向から見たときに小判型であってもよい。ただし、作業性の観点からは、ネジ穴21の軸方向から見たときの支持体2の輪郭は多角形(本実施形態では、六角形)であることが好ましい。
【0019】
支持体2の筐体10と反対側の表面2aには、防水通気膜3の周縁部が接合される環状の接合部24と、この接合部24で囲まれた凹部25とが設けられている。本実施形態では、ネジ穴21が支持体2の裏面からの深さが規定されるように底を有している。すなわち、支持体2は、ネジ穴21の底と凹部25の底との間に介在する隔壁26を有している。隔壁26には、ネジ穴21の底と凹部25の底とに開口する貫通穴26aが形成されている。貫通穴26aは、凹部25と共に、ネジ穴21の底から防水通気膜3に至る通気路を構成する。
【0020】
貫通穴26aの形状は特に限定されるものではなく、円柱状であってもよいし多角形状であってもよい。また、貫通穴26aは、必ずしも1つである必要はなく、複数であってもよい。
【0021】
さらに、支持体2は、シール部材4を径方向内側から保持する保持部22と、シール部材4を取り囲む周壁23とを有している。換言すれば、保持部22およびシール部材23と、これらの間にある環状面は、シール部材4を収容する溝を形成する。
【0022】
本実施形態では、ネジ軸12に支持体2が締め付けられたときには、上述した隔壁26がネジ穴21の底でネジ軸12の端面に当接するとともに、保持部22および周壁23がネジ穴21の外側で筐体10の表面に当接する。これにより、シール部材4の変形量が規制される。すなわち、隔壁26は本発明の内側当接部に相当し、保持部22および周壁23は本発明の外側当接部に相当する。ただし、シール部材4の変形量を規制する部分は少なくとも1つあればよく、隔壁26、保持部22および周壁23のいずれか1つまたは2つが対象面に当接したときには、残りは対象面から離間していてもよい。
【0023】
支持体2を構成する材料としては、成型性および溶着の観点からPA(ポリアミド)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PP(ポリプロピレン)、PPE(ポリフェニレンエーテル)等の熱可塑性の樹脂を用いることが好ましい。
【0024】
シール部材4としては、Oリング、Xリング、パッキンなど一般的な製品を用いることができる。また、シール部材4は、インサート成型や二色成型により支持体2に一体的に形成されていてもよい。
【0025】
以上説明した本実施形態の通気部材1Aでは、支持体2がネジ軸12の外側に広がる形状を有しているために、ネジ軸12に締め付けられたときの揺れが小さくなる。しかも、筐体10に設けられたネジ軸12自身が筐体10の表面上から開口11への水やオイルなどの流入を食い止める防護壁の役割を果たす。従って、筐体10内に水やオイルなどが侵入する可能性を低くすることができる。
【0026】
さらに、本実施形態では、シール部材4を取り囲む周壁23が筐体10の表面に当接するので、シール部材4を外圧から保護することができるとともに、シールが行われる位置での筐体10の塩水などによる腐食を防止することができる。
【0027】
なお、通気部材1Aは、支持体2に取り付けられて防水通気膜3を覆うカバーを備えていてもよい。
【0028】
また、ネジ穴21は必ずしも底を有している必要はなく、支持体2を貫通していてもよい。この場合は、凹部25をも省略することが可能である。ただし、本実施形態のようにネジ穴21の底と凹部25の底の間に隔壁26が設けられていれば、ネジ軸12が防水通気膜3に当たって防水通気膜3が破損することを確実に防止することができる。
【0029】
(第2実施形態)
次に、図3を参照して、本発明の第2実施形態に係る通気部材1Bを説明する。なお、本実施形態では、第1実施形態で説明した構成と同一部分には同一符号を付して、その説明を省略することがある。この点は、後述する第3実施形態でも同様である。
【0030】
本実施形態の通気部材1Bでは、シール部材4がネジ穴21の底に配置されている。具体的には、ネジ穴21の底と凹部25の底との間に介在する隔壁26のネジ軸12側の面にシール部材4を収容する溝29が設けられている。すなわち、本実施形態では、底壁26における溝29よりも内側部分が、シール部材を径方向内側から保持する保持部22として機能する。
【0031】
また、支持体2は、ネジ穴21の外側に外壁27を有している。本実施形態では、ネジ軸12に支持体2が締め付けられたときには、保持部22がネジ穴21の底でネジ軸12の端面に当接するとともに、外壁27がネジ穴21の外側で筐体10の表面に当接する。これにより、シール部材4の変形量が規制される。すなわち、保持部22は本発明の内側当接部に相当し、外壁27は本発明の外側当接部に相当する。ただし、シール部材4の変形量を規制する部分は少なくとも1つあればよく、保持部22および外壁27のどちらかが対象面に当接したときには、他方は対象面から離間していてもよい。
【0032】
本実施形態でも、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0033】
(第3実施形態)
次に、図4および図5を参照して、本発明の第3実施形態に係る通気部材1Cを説明する。本実施形態の通気部材1Cでは、シール部材4がネジ穴21の外側に配置されているとともに、防水通気膜3がネジ穴21の底に配置されている。また、支持体2には、防水通気膜3を外部に開放する通気路28が形成されている。
【0034】
ネジ穴21の深さは、支持体2がネジ軸12に締め付けられたときにジ軸12の端面と防水通気膜3との間にスペースが確保されるように、筐体10の表面からネジ軸12の端面までの高さよりも十分に大きく設定されている。
【0035】
通気路28は、横穴28bと縦穴28aで構成されている。横穴28bは、支持体2をネジ穴21の軸方向と直交する方向に貫通しており、縦穴28aは、横穴28bの中央からネジ穴21の底に開口して防水通気膜3に塞がれている。横穴28bは、支持体2の6つの側面のうちの互いに反対方向を向く2つの側面同士を結ぶように延びており、その断面形状は防水通気膜3に平行な長方形状をなしている。縦穴28aは、ネジ穴21の直径よりも小さくかつ横穴28bの幅よりも大きな直径を有している。
【0036】
さらに、本実施形態では、第1実施形態で説明した周壁23が設けられておらず、シール部材4が外部に露出している。そして、ネジ軸12に支持体2が締め付けられたときには、保持部22がネジ穴21の外側で筐体10の表面に当接し、シール部材4の変形量を規制する。すなわち、保持部22は本発明の外側当接部に相当する。
【0037】
本実施形態でも、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施形態では、支持体2に防水通気膜3を保護する部分が設けられているので、従来の通気部材のようなカバーが不要であり、コストを低減させることができる。
【0038】
なお、本実施形態では、ネジ穴21の軸方向から見たときの支持体2の輪郭が円形であり、支持体2の表面2aにドライバーに係合可能な一本または十字の溝が形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1A〜1C 通気部材
2 支持体
21 ネジ穴
22 保持部
23 周壁
24 接合部
25 凹部
26 隔壁
26a 貫通穴
28 通気路
28a 縦穴
28b 横穴
3 通気膜
4 シール部材
10 筐体
11 開口
12 ネジ軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の開口を形成する筒状のネジ軸に取り付けられる通気部材であって、
前記ネジ軸に螺合するネジ穴が設けられた支持体と、
前記開口に面するように前記支持体に支持された防水通気膜と、
前記開口の周囲で前記筐体と前記支持体との間のギャップをシールするシール部材と、を備える、通気部材。
【請求項2】
前記支持体は、前記ネジ穴の外側で前記筐体の表面に当接して前記シール部材の変形量を規制する外側当接部と前記ネジ穴の底で前記ネジ軸の端面に当接して前記シール部材の変形量を規制する内側当接部の少なくとも一方を含む、請求項1に記載の通気部材。
【請求項3】
前記外側当接部と前記内側当接部のどちらかは、前記シール部材を径方向内側から保持する保持部である、請求項2に記載の通気部材。
【請求項4】
前記シール部材は、前記ネジ穴の外側に配置されており、
前記外側当接部は、前記シール部材を取り囲む周壁である、請求項2に記載の通気部材。
【請求項5】
前記支持体は、少なくとも一対の互いに平行な平行面を持つ外周面を有している、請求項1〜4のいずれか一項に記載の通気部材。
【請求項6】
前記ネジ穴の軸方向から見たときに、前記支持体の輪郭は多角形である、請求項5に記載の通気部材。
【請求項7】
前記ネジ穴は、底を有しており、
前記支持体における前記筐体と反対側の表面には、前記防水通気膜の周縁部が接合される環状の接合部と、前記接合部で囲まれた凹部とが設けられており、
前記ネジ穴の底と前記凹部の底との間に介在する隔壁には、前記ネジ穴の底と前記凹部の底とに開口する貫通穴が形成されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の通気部材。
【請求項8】
前記ネジ穴は、底を有し、前記防水通気膜は、前記ネジ穴の底に配置されており、
前記支持体には、前記防水通気膜を外部に開放する通気路が形成されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の通気部材。
【請求項9】
前記通気路は、前記支持体を前記ネジ穴の軸方向と直交する方向に貫通する横穴と、前記横穴から前記ネジ穴の底に開口して前記防水通気膜に塞がれる縦穴とで構成されている、請求項8に記載の通気部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−230983(P2012−230983A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97749(P2011−97749)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】