説明

連結具

【課題】
梁を据え付ける際の施工性に優れ、しかも製品価格も抑制可能な連結具を提供をすること。
【解決手段】
柱41の側面にねじ込まれる柱側ラグスクリュー15と、これと同心で梁51の端部にねじ込まれる梁側ラグスクリュー25と、柱41の側面に固定する受け金具11と、これと対になり梁51の端部に固定する掛け金具21と、両ラグスクリュー15、25の中に差し込まれて梁51を柱41に引き寄せる長尺ボルト36などで連結具を構成して、受け金具11と掛け金具21のいずれか一方または両方には、掛け金具21の落下を防止するためのアゴ部12、22を設ける。これによって基礎などから直立する柱41に梁51を仮置きすることができ、施工性に優れている。また梁51が仮置きされた段階で、両ラグスクリュー15、25の高さがそろい、無理なく長尺ボルト36を差し込むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱に梁を据え付けるための連結具に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅などの木造建築物の施工方法は様々だが、国内では柱や梁などの棒材を組み上げた木造軸組構法が広く普及しており、他にも、一般にツーバイフォー工法と呼ばれている木造枠組壁構法も普及が進んでいる。また近年は、接着剤などの技術開発に伴い、大断面の集成材が容易に製造できるようになり、これを門形に組み上げた門形フレーム構法も開発され、三階建ての木造住宅など、大型の建築物での利用が期待されている。門形フレーム構法は、内部の柱を省略できるため、広大な室内空間を確保できるなどの利点がある。
【0003】
門形フレーム構法において、柱と梁を連結する手段として、下記特許文献のような技術が開発されている。この技術は、縦材(柱)または横材(梁)のいずれか一方に基本金物を取り付けて、他方に付属金物を取り付けて、各金物の一端側にテーパ部を設けて、他端側に受部を設けて、双方のテーパ部を相手方の受部に嵌め込むことで縦材と横材を一体化するものである。なお両金物を取り付けるため、縦材や横材の内部にはラグスクリューを埋め込んでいる。この技術は、施工の際、基本金物に付属金物を差し込むだけで横材の仮置きが完了するため、重機などの使用時間を短縮でき、しかも金物の一端にテーパ部を設けることで、連結部の隙間をなくすことができ剛性の面でも優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−132168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献の図3などには、付属金物を横材に固定するため、横材の側面から留め具(ドリフトピン)を打ち込んでいることが開示されている。この留め具を打ち込むため、付属金物には複数の抜孔を形成する必要があり、その製造コストが増加するほか、留め具を打ち込む作業に手間が掛かるといった指摘を受けることがあった。また両金物を製造する際は、テーパ部の加工や受部の溶接やこれらの精度確保といった工程が必要になり、製品価格の引き下げが難しい。そのため荷重などの制限が比較的緩い場合などには、より安価な製品を使用したいという要望があった。
【0006】
本発明はこうした実情を基に開発されたもので、梁を据え付ける際の施工性に優れ、しかも製品価格も抑制可能な連結具の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するための請求項1記載の発明は、柱の側面を貫通する側孔にねじ込まれる柱側ラグスクリューと、梁の端部に設けた横穴にねじ込まれ且つ前記柱側ラグスクリューと同心に配置する梁側ラグスクリューと、前記柱の側面に固定する受け金具と、前記梁の端部に固定して且つ前記受け金具と対になる掛け金具と、前記梁を前記柱に引き寄せる長尺ボルトと、前記受け金具および前記掛け金具を固定するための固定手段と、からなり、前記柱側ラグスクリューには、前記長尺ボルトを挿通可能な中孔を設け、前記梁側ラグスクリューの一端面には、前記長尺ボルトと螺合する雌ネジを設け、前記受け金具および前記掛け金具には、前記長尺ボルトおよび前記固定手段を挿通可能な丸孔を設け、前記受け金具と前記掛け金具のいずれか一方または両方には、略水平方向に突出して前記掛け金具の落下を拘束するアゴ部を設けていることを特徴とする連結具である。
【0008】
本発明は、大断面の木材を門形に組み上げていく門形フレーム構法において、柱と梁をL字状につなぐ箇所で使用する。なお柱の側面に梁の端面を接触させることを前提としており、柱の側面と梁の端部との間に受け金具と掛け金具を挟み込む。さらに柱と梁は、長尺ボルトで一体化するが、これを実現するため、柱と梁にラグスクリューをねじ込んでいる。また受け金具と掛け金具を柱や梁に固定するため、何らかの固定手段を用いている。
【0009】
柱側ラグスクリューと梁側ラグスクリューは、長尺ボルトを差し込むため、柱と梁にねじ込むものである。ラグスクリューは金属製の円柱状で、側周面から凸条が突出しており、これが螺旋状に延びている。凸条が木材の中に食い込むことで、ラグスクリューは木材と強固に一体化するほか、木材の経年変形を拘束することもできる。さらにラグスクリューに軸線方向の荷重が作用した場合、これを凸条全体で木材に伝達するため、木材の割れを防止できる。
【0010】
柱側ラグスクリューは、柱の側面を貫通する側孔にねじ込まれ、また梁側ラグスクリューは、梁の端部を基点とする横穴にねじ込まれるが、柱と梁を連結した際、両ラグスクリューが同心になるように側孔や横穴を加工する。さらに柱側ラグスクリューには、長尺ボルトの軸部を挿通できるよう、両端面を貫通する中孔を設けてあり、対する梁側ラグスクリューには、長尺ボルトと螺合できるよう、一端面の中心に雌ネジを設けてある。
【0011】
長尺ボルトは、梁を柱に引き寄せて、柱の側面に梁の端面を密着させるためのものである。柱側ラグスクリューと梁側ラグスクリューをそれぞれ柱と梁にねじ込んだ後、長尺ボルトを柱側ラグスクリューの中孔に差し込み、その先端を梁側ラグスクリューの雌ネジに螺合させて締め上げると、梁が柱に引き寄せられて一体化する。このように、ラグスクリューを介して長尺ボルトを差し込むことで、長尺ボルトに発生する軸力は、両ラグスクリューで受け止められ、木材に作用する圧力を緩和できる。なお長尺ボルトは、一組の連結具で二本以上使用することを前提としており、さらに曲げモーメントに対抗するため、梁の上下面近傍に配置することが好ましい。
【0012】
受け金具と掛け金具は、鋼材を帯状に切り出した形状で、対になって柱と梁との境界に挟み込まれて、梁に作用する下向きの荷重を柱に伝達する機能を担う。なお受け金具は、柱の側面に固定されるもので、掛け金具は、梁の端部に固定されるものだが、両金具ともほぼ梁の高さと同等の延長として、上下方向に配置することを前提としている。ただし両金具の横幅は、梁の横幅よりも小さくして、さらに梁の端面の中央に縦溝を加工して、その内部に両金具を埋め込むことが多い。そのほか両金具の背面は、柱や梁にねじ込まれたラグスクリューの端面と接触させることを前提としている。そのため両金具には、所定の位置に丸孔を設けてあり、長尺ボルトを挿通させることができる。
【0013】
アゴ部は、受け金具や掛け金具からほぼ水平方向に突出した部位であり、受け金具と掛け金具が対になった際、相手方の金具に接触することで、掛け金具の落下を防止して、さらに掛け金具に作用する下向きの荷重を受け金具に伝達する機能を担っている。なおアゴ部は、受け金具だけに設ける場合と、掛け金具だけに設ける場合のほか、両方に設ける場合もある。仮に掛け金具だけにアゴ部を設ける場合、その上端部を水平に突出させてアゴ部として、これを受け金具の上端面に接触させる。そのほかアゴ部にある程度の傾斜を持たせて、相手方の金具を密着方向に誘導可能な構成とすることもできる。
【0014】
固定手段は、受け金具や掛け金具を柱や梁に取り付けるためのもので、その具体例としては、ボルトやネジ釘が挙げられる。この固定手段は、単に金具を固定できればよい訳ではなく、金具に作用する垂直荷重を受け止め可能な強度が必要で、一個の金具に複数を使用することが多い。仮に固定手段としてボルトを用いる場合、これと螺合する埋設具を柱や梁に埋め込む。埋設具は、円柱状の金属棒やラグスクリューの一端に雌ネジを設けたものである。なおボルトなどの固定手段を差し込むため、両金具には所定の位置に丸孔を設けておく。
【0015】
このように柱と梁の連結具について、受け金具と掛け金具のいずれか一方または両方にアゴ部を設けることで、基礎などから直立する柱に梁を据え付ける際、アゴ部によって梁を仮置きすることができる。さらに梁が仮置きされた際、アゴ部によって柱側ラグスクリューと梁側ラグスクリューの高さが必然的に一致するため、柱側ラグスクリューの中孔と梁側ラグスクリューの雌ネジを容易に同心とすることができ、無理なく長尺ボルトを差し込んで柱と梁を連結できる。
【0016】
請求項2記載の発明は、受け金具と掛け金具の形状に関するもので、受け金具と掛け金具のいずれか一方または両方には、アゴ部の両側面を塞ぎ且つ対になる掛け金具または受け金具を誘導可能な側リブを設けていることを特徴とする。側リブは、L字状に突出するアゴ部の側面とその近傍を短絡するように結ぶ三角形状の鋼板であり、金具の両側面に溶接で取り付けられる。
【0017】
側リブを左右両側面に設けることで、受け金具と掛け金具を対にする際、相手方の金具が側リブの間に挟み込まれる。そのため両金具の水平方向の変位を解消でき、必然的に柱側ラグスクリューと梁側ラグスクリューが同心にそろい、無理なく長尺ボルトを差し込むことができる。なお側リブは、梁に作用する下向きの荷重を受け止めるものではなく、あくまでも施工時のガイドとして機能するもので、高度の品質管理は不要である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の発明のように、ボルトなどの固定手段を用いて受け金具を柱に取り付けて、同様に掛け金具を梁に取り付けて、さらに柱に柱側ラグスクリューをねじ込み、梁に梁側ラグスクリューをねじ込み、双方を長尺ボルトで一体化する連結具において、受け金具と掛け金具のいずれか一方または両方にアゴ部を設けることで、梁の仮置きが可能になり、施工性に優れている。また梁が仮置きされた際、柱側ラグスクリューと梁側ラグスクリューの高さが必然的に一致する。そのため柱側ラグスクリューの中孔と梁側ラグスクリューの雌ネジを容易に同心にそろえることができ、無理なく長尺ボルトを差し込むことができ、この点でも施工性に優れている。
【0019】
さらに両ラグスクリューや長尺ボルトは、汎用品の流用も可能で製品価格を抑制でき、また受け金具や掛け金具も、厚鋼板を切り出して一端を曲げてアゴ部を形成して、側面に丸孔を形成するだけで製造可能で、溶接や切削といった作業を簡素化でき、この点でも製品価格を抑制できる。そのほか本発明は、梁に作用する曲げモーメントを長尺ボルトで受け止めて、梁に作用する下向きの荷重を両金具で受け止めており、連結部に作用する荷重を広範囲に分散することが可能で、柱や梁の経年変形を抑制できる。
【0020】
請求項2記載の発明のように、アゴ部の両側面を塞ぐように側リブを設けることで、受け金具と掛け金具を対にする際、相手方の金具が側リブの内側に誘導される。そのため、受け金具と掛け金具の水平方向の変位が解消され、支障なく長尺ボルトを差し込むことができ、作業時間の短縮を期待できる。なお側リブの取り付けには溶接作業が必要になるが、側リブ自体に垂直荷重が作用することはなく、高度の品質管理は不要で、製造費用の増加も抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による連結具の構成例とその使用状態を示す斜視図である。
【図2】図1の各構成要素を取り付けた後、梁を柱に据え付ける直前の状態を示す斜視図である。
【図3】図1の柱と梁を連結した後の中央部の縦断面図である。
【図4】受け金具を単純な板状とした形態を示す斜視図である。
【図5】固定手段としてネジ釘を用いた形態を示す斜視図である。
【図6】受け金具と掛け金具のアゴ部に側リブを設けた形態を示す斜視図である。
【図7】受け金具と掛け金具のアゴ部とその周辺の形状例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明による連結具の構成例とその使用状態を示している。この図では、柱41の上部の側面と梁51の端面をL字状に連結しており、長尺ボルト36で梁51を柱41に引き寄せているほか、受け金具11と掛け金具21が接触することで下向きの伝達している。また受け金具11と掛け金具21を取り付けるため、柱41と梁51には埋設具30を埋め込んでいる。
【0023】
長尺ボルト36を差し込むため、柱41には二個の柱側ラグスクリュー15をねじ込んでいる。そのため柱41の側面には、両面を貫通する側孔43を上下二箇所に加工してある。柱側ラグスクリュー15は、金属製の円柱状で、その側周面には螺旋状に延びる凸条16が突出しており、これが柱41の中に食い込むことで、柱側ラグスクリュー15が柱41に固定される。なお柱側ラグスクリュー15は、ねじ込みの際に工具を掛けるため一端面を六角形にしてあり、さらに中心には両端を貫通する中孔17を形成してある。
【0024】
柱41の側面には、柱側ラグスクリュー15のほか、二個の埋設具30を埋め込んでいる。埋設具30は、上下の柱側ラグスクリュー15の間に並んで配置され、受け金具11に作用する垂直荷重を受け止めるためのもので、金属製で単純な円柱状だが、一端面を六角形にしてあり、その中心にネジ穴31を形成してある。なお埋設具30を埋め込むため、柱41の側面には、埋設具30と同径で有底の保持穴44を上下に二個加工してある。
【0025】
梁51の端面の中央には縦溝52を加工してあり、この中に両金具11、21が収容される。また柱41と同様、梁51の端部には、梁側ラグスクリュー25をねじ込み、さらに埋設具30を埋め込んでおり、縦溝52の奥に横穴53と保持穴54を加工してある。なお横穴53と保持穴54のいずれも有底である。そのほか梁側ラグスクリュー25は、長尺ボルト36を螺合できるよう一端の中心に雌ネジ27を形成してある。
【0026】
受け金具11と掛け金具21は、帯状の厚鋼板の一端を突出させてアゴ部12、22を形成したもので、L字状の外観となっており、この図の受け金具11と掛け金具21は同一形状で、上下を反転して使用している。個々のアゴ部12、22が相手方の金具21、11の端面に接触することで、掛け金具21の落下を防止することができる。さらに両金具11、21は、固定手段であるボルト33を介して埋設具30に固定され、その背面が柱41の側面や縦溝52の奥に接触する。
【0027】
図のように、受け金具11と掛け金具21は、縦長の状態で柱41と梁51の境界に組み込まれ、その全長は、梁51の高さよりもわずかに短くしている。そのほか、長尺ボルト36やボルト33を挿通できるよう、両金具11、21には丸孔13、14、23、24を設けている。なお、ボルト33を差し込むための丸孔14、24は、ボルト33の頭部を収容できるよう、内径が途中で変化している。
【0028】
柱側ラグスクリュー15と梁側ラグスクリュー25は、柱41と梁51を連結した状態で同心となる必要があり、これらをねじ込むための側孔43や横穴53は、精度良く加工する必要がある。また受け金具11と掛け金具21を取り付けるための保持穴44、54も、梁51の架設高さに誤差が生じないよう、精度良く加工する必要がある。なお埋設具30は、柱41側と梁51側で同心にそろえる必要はないが、この図では同心としている。
【0029】
図2は、図1の各構成要素を取り付けた後、梁51を柱41に据え付ける直前の状態を示している。柱41の内部には柱側ラグスクリュー15がねじ込まれており、さらに埋設具30が埋め込まれている。また受け金具11は、アゴ部12を下にしており、埋設具30と螺合しているボルト33によって、柱41の側面に固定されている。なおこの状態において、受け金具11の丸孔13と柱側ラグスクリュー15は同心になっており、長尺ボルト36を挿通することができる。
【0030】
梁51についても同様、縦溝52の奥には梁側ラグスクリュー25がねじ込まれており、さらに埋設具30が埋め込まれている。また縦溝52の中には、アゴ部22を上にして掛け金具21が固定されている。このように柱41に受け金具11を固定して、梁51に掛け金具21を固定した後、柱41を基礎などに据え付ける。次に、梁51を吊り上げて双方のアゴ部22、12を相手方の金具11、21の端面に接触させると、梁51が両金具11、21を介して仮置きされた状態になる。その後、柱41の側面と梁51の側面との変位を取り除き、柱41から梁51に向けて長尺ボルト36を差し込んで締め上げると、梁51が柱41に引き寄せられ、梁51の据え付けが完了する。
【0031】
図3は、図1の柱41と梁51を連結した後の中央部の縦断面を示している。このように柱41と梁51の中央部では、縦溝52の中に受け金具11と掛け金具21が収容されている。しかし縦溝52よりも外側では、梁51の端面が柱41の側面に接触している。また掛け金具21の下端面は、受け金具11のアゴ部12に接触しており、さらに掛け金具21のアゴ部22は、受け金具11の上端面に接触しており、梁51に作用する下向きの荷重は、両アゴ部12、22を介して柱41に伝達される。
【0032】
受け金具11と掛け金具21は、ボルト33と埋設具30によって柱41や梁51に固定されており、両金具11、21に作用する垂直荷重は、埋設具30が受け止めている。なお埋設具30は、保持穴44、54との摩擦だけで柱41や梁51の中に固定されているが、施工後は軸線方向に荷重が作用することはなく、強度上の問題はない。
【0033】
柱側ラグスクリュー15と梁側ラグスクリュー25は、その中心に差し込まれた長尺ボルト36で一体化されている。長尺ボルト36を締め上げることで、受け金具11と掛け金具21を挟んで両ラグスクリュー15、25が引き寄せ合い、これら金属部品の接触によって連結部の剛性を維持している。また両ラグスクリュー15、25に作用する引張荷重は、凸条16、26を介して柱41や梁51に伝達していく。そのため柱41や梁51に過大な圧力が作用することを防止でき、その経年変形が抑制される。
【0034】
図4は、受け金具11を単純な板状とした形態を示している。この図の構成は図1とほぼ同じだが、受け金具11は単純な板状として、アゴ部22は掛け金具21の上端だけに設けてある。梁51を仮置きする際は、このアゴ部22が受け金具11の上端面に接触する。また埋設具32は、図1のような単純な円柱状ではなく、側周面に凸条34を形成したラグスクリュー状として、ボルト33を差し込む際、保持穴44、54からの引き抜けを防止している。なお埋設具32に過大な引張荷重が作用することはなく、その全長は柱側ラグスクリュー15などよりも抑制してある。
【0035】
図5は、固定手段としてネジ釘35を用いた形態を示している。受け金具11や掛け金具21に作用する垂直荷重を受け止めるには、図1のような円柱状の埋設具30を柱41や梁51に埋め込んで、荷重を広範囲に分散させることが多い。しかし梁51に作用する荷重が比較的小さい場合などには、構造を簡素化するため、固定手段としてネジ釘35などを使用することもある。この図では垂直荷重に対抗できるよう、それぞれの側に三本のネジ釘35を使用している。また両金具11、21には、ネジ釘35を挿通できるよう丸孔14、24を形成してある。丸孔14、24は、途中で内径が変化しており、ネジ釘35の頭部を埋め込むことができる。
【0036】
そのほか、この図の掛け金具21は単純な板状としてあり、アゴ部12は受け金具11の下端だけに設けてある。なお柱41には二個の柱側ラグスクリュー15をねじ込み、梁51にも二個の梁側ラグスクリュー25をねじ込み、長尺ボルト36でこれらを引き寄せる点は、図1などと全く同じである。この図のように、固定手段としてネジ釘35を用いることで、埋設具30などが不要になり、より一段とコストダウンが実現する。
【0037】
図6は、受け金具11と掛け金具21のアゴ部12、22に側リブ19、29を設けた形態を示している。アゴ部12、22を利用して梁51を仮置きした後、長尺ボルト36を差し込む際は、受け金具11と掛け金具21との水平方向の変位を除去する作業が必要になる。この作業を簡素化するため、アゴ部12、22の両側面に板状の側リブ19、29を取り付けて、対になる金具21、11の先端がこの中に入り込むことで、両金具11、21の水平方向の変位を解消できる。なお側リブ19、29の間に相手が入り込む際を考慮して、両金具11、21とも、アゴ部12、22の反対側には、側部を斜めに削った斜面18、28を設けて、先端をクサビ状としている。
【0038】
側リブ19、29は、溶接で取り付けられているが、これに垂直荷重が作用することはなく、柱41と梁51が連結された後は、何らの機能も発揮しない。そのため側リブ19、29は、施工時に斜面18、28を誘導可能な強度を有していればよい。なお柱41と梁51にラグスクリュー15、25をねじ込み、二本の長尺ボルト36で柱41と梁51を連結している点や、柱41と梁51の双方に二個の埋設具30を埋め込んでいる点は、図1などと同じである。
【0039】
図7は、受け金具11と掛け金具21のアゴ部12、22とその周辺の形状例を示している。受け金具11のアゴ部12は、曲げ角度を大きくして上向きに突出させている。このアゴ部12に接触する掛け金具21の下端面は、単純な水平面ではなく斜面38としてあり、これがアゴ部12に接触した際、両金具11、21を密着させることができる。次に掛け金具21のアゴ部22は、上端の中央部だけを水平方向に突出させており、また受け金具11の上面には、このアゴ部22が嵌まり込む凹部37を形成してある。凹部37は、アゴ部22を円滑に受け入れるため、上方が大きく開いた形状になっており、アゴ部22が凹部37に嵌まり込む際、必然的に両金具11、21の水平方向の変位をなくすことができる。
【0040】
この図では、柱41と梁51のいずれとも、埋設具30を一個だけ埋め込んでいる。そのため施工時には、各金具11、21が埋設具30を原点として回転する恐れがある。これを防止するため、固定手段としてボルト33のほか、単純な釘39を併用している。な丸孔14は、用途によって形状が異なる。そのほか柱41と梁51を二本の長尺ボルト36で連結している点は、図1などと同じである。
【符号の説明】
【0041】
11 受け金具
12 アゴ部(受け金具)
13 丸孔(受け金具、長尺ボルト用)
14 丸孔(受け金具、固定手段用)
15 柱側ラグスクリュー
16 凸条(柱側ラグスクリュー)
17 中孔(柱側ラグスクリュー)
18 斜面(受け金具)
19 側リブ(受け金具)
21 掛け金具
22 アゴ部(掛け金具)
23 丸孔(掛け金具、長尺ボルト用)
24 丸孔(掛け金具、固定手段用)
25 梁側ラグスクリュー
26 凸条(梁側ラグスクリュー)
27 雌ネジ(梁側ラグスクリュー)
28 斜面(掛け金具)
29 側リブ(掛け金具)
30 埋設具(円柱状)
31 ネジ穴(埋設具)
32 埋設具(ラグスクリュー状)
33 ボルト(固定手段)
34 凸条(埋設具)
35 ネジ釘(固定手段)
36 長尺ボルト
37 凹部
38 斜面(掛け金具の下面)
39 釘(固定手段)
41 柱
43 側孔
44 保持穴(柱)
51 梁
52 縦溝
53 横穴
54 保持穴(梁)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱(41)の側面を貫通する側孔(43)にねじ込まれる柱側ラグスクリュー(15)と、
梁(51)の端部に設けた横穴(53)にねじ込まれ且つ前記柱側ラグスクリュー(15)と同心に配置する梁側ラグスクリュー(25)と、
前記柱(41)の側面に固定する受け金具(11)と、
前記梁(51)の端部に固定して且つ前記受け金具(11)と対になる掛け金具(21)と、
前記梁(51)を前記柱(41)に引き寄せる長尺ボルト(36)と、
前記受け金具(11)および前記掛け金具(21)を固定するための固定手段(33、35、39)と、
からなり、
前記柱側ラグスクリュー(15)には、前記長尺ボルト(36)を挿通可能な中孔(17)を設け、
前記梁側ラグスクリュー(25)の一端面には、前記長尺ボルト(36)と螺合する雌ネジ(27)を設け、
前記受け金具(11)および前記掛け金具(21)には、前記長尺ボルト(36)および前記固定手段(33、35、39)を挿通可能な丸孔(13、14、23、24)を設け、
前記受け金具(11)と前記掛け金具(21)のいずれか一方または両方には、略水平方向に突出して前記掛け金具(21)の落下を防止するアゴ部(12、22)を設けていることを特徴とする連結具。
【請求項2】
前記受け金具(11)と前記掛け金具(21)のいずれか一方または両方には、前記アゴ部(12、22)の両側面を塞ぎ且つ対になる前記掛け金具(21)または前記受け金具(11)を誘導可能な側リブ(19、29)を設けていることを特徴とする請求項1記載の連結具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−117271(P2012−117271A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267424(P2010−267424)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(501138161)
【Fターム(参考)】