説明

連結構造

【課題】
二本の棒材を直線状につなぐ際、金具と棒材との緩みを解消して、剛性の低下を抑制できる連結構造を提供すること。
【解決手段】
端面同士が接触する二本の棒材21、31と、二枚の側面板14とこれを一体化する中央板13とからなるH形状の金具11と、金具11と棒材21、31とを一体化するドリフトピンなどの固定具28、38と、を備え、棒材21、31の端部には、側面板14を差し込む二列のスリット22、32を設けて、また棒材21、31の端面には、中央板13を収容する段差部23、33を設ける連結構造において、中央板13と棒材21、31端面が対向する空間二箇所のうち、少なくとも一箇所に介挿具41を挟み込む。介挿具41によって金具11と棒材21、31が密着して緩みが解消され、連結部の剛性の低下を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種木構造において、二本の棒材を直線状につなぐための連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建築を始めとする各種木構造において、棒材同士を連結するため、金具を用いることがある。この金具の形状は、用途や目的に応じて様々だが、柱と横架材など、二本の棒材を丁字状に連結する場合、コの字状のものを使用することが多い。コの字状の金具は、鋼板を二箇所で折り曲げたもので、中央に位置する中央板と、中央板の左右両側から直角に突出する側面板と、で構成されている。中央板は、ボルトなどを介して棒材に引き寄せられるが、側面板は、棒材の端部に加工された二列の溝に差し込まれる。なお、この金具の具体例としては、特許文献1が挙げられる。
【0003】
そのほか、二本の棒材の端面同士を接触させて、直線状に連結するための金具も開発されている。その具体例としては、特許文献2や特許文献3のほか、非特許文献1が挙げられる。特許文献2で開示されている金具は、二本の棒材を跨ぐように差し込み、ピンなどで棒材と一体化する構成である。なお棒材には、金具を差し込むための溝のほか、ピンなどを差し込むための孔をあらかじめ加工しておく。また特許文献3で開示されている金具は、それぞれの棒材に対向するように配置して、これをボルトで引き寄せる構成で、連結部にプレストレスを与えることができる。さらに非特許文献1では、コの字状の金具二個を背中合わせで接合したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−331260号公報
【特許文献2】特開2000−54488号公報
【特許文献3】特開2007−217949号公報
【非特許文献1】意匠登録第1163374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
棒材同士の連結部は、構造物の強度を確保する上で極めて重要であり、そこに組み込まれる金具は、強度のほか、棒材の経年変形や施工性など、様々な要因を考慮して選定する必要がある。連結部の強度を確保するには、金具と棒材を不動状態で固定することが好ましく、特許文献1などのように、金具をボルトで引き寄せる方法が優れている。対して、ドリフトピンなどで金具と棒材を一体化する場合、加工精度や施工時の作業性を考慮して、ドリフトピンなどを差し込む丸孔の直径に余裕を持たせることが多く、強度上、不利な面がある。
【0006】
特許文献2や非特許文献1で開示されている金具は、連結される二本の棒材のいずれとも、ドリフトピンなどで一体化する構成である。そのため前記のように、ドリフトピンなどを差し込む丸孔の直径に余裕を持たせることが多い。また金具を差し込むための溝なども、費用や加工設備との兼ね合いで、必要以上に大きく削り込むことが多い。これらの要因が重なることで、施工後の連結部に緩みが発生して、構造物の強度が低下する恐れもある。
【0007】
特許文献3で開示されている金具は、連結部にプレストレスを与えることができ、緩みが発生することはない。そのため強度には優れているものの、金具を対向配置することで部品点数が増えるほか、施工時にプレストレスを発生させる作業を伴うなど、費用や手間に関しては不利な面がある。
【0008】
本発明はこうした実情を基に開発されたもので、二本の棒材を直線状につなぐ際、金具と棒材との緩みを解消して、剛性の低下を抑制できる連結構造の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するための請求項1記載の発明は、端面同士が接触する二本の棒材と、平行に並ぶ二枚の側面板と該側面板を一体化する中央板とからなるH形状の金具と、該金具と前記棒材とを一体化する固定具と、を備え、各棒材の端部には、前記側面板を差し込むため二列のスリットを設け、また棒材の端面には、前記中央板を収容するための段差部を設け、前記中央板と前記棒材端面が対向する空間二箇所のうち、少なくとも一箇所には、介挿具を組み込んでいることを特徴とする連結構造である。
【0010】
本発明は、二本の棒材を直線状につなぐ連結構造において、金具と棒材との緩みをできるだけ抑制して、連結部の剛性を確保することを目的としており、棒材は、集成材を含む木製であることを前提とする。また金具は、平行に並ぶ二枚の側面板と、この二枚の側面板のほぼ真ん中で双方を一体化する中央板と、で構成されるH形状である。各棒材の端部には、側面板を差し込む二列のスリットを加工しておくほか、中央板を収容するため、端面中央を削り落とした段差部を加工しておく。なお段差部は、二列のスリットを結ぶ範囲だけに加工するが、一方の棒材だけに加工する場合と、両方の棒材に加工する場合がある。
【0011】
固定具は、金具と棒材を一体化するため、金具と棒材を貫通する棒状のもので、棒材の側面から差し込む。固定具の具体例としては、ドリフトピンやボルトが挙げられ、ドリフトピンの場合、差し込みの後、棒材との摩擦で保持される。またボルトの場合、抜け止めのため、先端側にナットを取り付ける。固定具を差し込むため、金具の側面板には、製造段階でピン孔などを形成しておくほか、棒材には、ピン孔などと同心となる位置に横孔を加工しておく。なお固定具は、一本だけでは曲げモーメントに対抗できない。そのため、片方の棒材について複数本の使用を前提とする。
【0012】
介挿具は、金具の中央板と棒材の端面が対向する空間に組み込み、中央板と棒材の双方に接触して、当該空間を埋めるものである。中央板を収容するため、棒材の端面には、前記のように段差部を加工する必要がある。連結部の強度といった点からは、段差部を精度良く加工して、中央板と棒材を密着させることが好ましい。しかし実際には、費用や加工設備との兼ね合いで、段差部を必要以上に深くすることが多い。そのため、中央板の両面が棒材の端面と接触するとは限らず、この箇所にある程度の空間が発生して、金具が棒材に対して変位しやすくなる。
【0013】
この空間に介挿具で組み込むことで、金具と棒材が一体化して剛性が向上するほか、中央板と棒材との境界面に作用する圧力が広範囲に分散して、棒材の経年変形が抑制され、金具の緩みを解消できる。なお介挿具の具体例としては、空間に入り込む金属板や、ネジ釘の頭部などが挙げられる。また介挿具は、中心板の両面に組み込む場合と、片面だけに組み込む場合がある。
【0014】
介挿具として金属板を用いる場合、その大きさや厚さは自在に調整できるため、空間の形状に応じた最適な物を無理なく選択可能で、施工性に影響を与えることなく、確実に連結部の緩みを解消できる。なお金属板を中央板と同等の大きさとして、空間のほぼ全域を埋めることもできるが、条件によっては下半分だけなど、一部に限定しても構わない。そのほか、金属板を組み込む際は、接着剤で貼り付けることもできるが、皿ビスなどを用いることもできる。
【0015】
介挿具としてネジ釘を用いる場合、そのねじ込み量を調整することで、空間の厚さの変化に無理なく対応できる。なお一個のネジ釘だけでは、荷重が局地的に大きくなり棒材の変形などが予想される。そのため同一空間について複数本使用することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明のように、金具の中央板と棒材の端面が対向する空間に介挿具を組み込むことで、介挿具を挟んで金具と棒材が密着して、金具と棒材との緩みが解消され、連結部の剛性低下を抑制できる。また金具と棒材との間に伝達する荷重は、介挿具によって広範囲に分散されるため、棒材の端面に作用する応力が局地的に大きくなることもない。そのため、棒材の経年変形を防止でき、連結部の剛性が低下することもない。しかも本発明は簡素な構成で、コスト面でも有利である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による連結構造の具体例を示す斜視図である。
【図2】図1の各要素を組み上げていく途中段階を示す斜視図である。
【図3】図1の最終段階で、二本の横架材を連結した状態を示す斜視図である。
【図4】図3の連結構造の縦断面図と、A−A断面図と、B−B断面図である。
【図5】図1とは異なる連結構造を示す斜視図である。
【図6】介挿具としてネジ釘を用いた場合を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明による連結構造の具体例を示している。本発明による連結構造は、二本の棒材を直線状に連結するためのもので、この図では、水平に敷設される二本の横架材21、31を棒材としている。図の左側の横架材31は、柱51によって支持されており、対する右側の横架材21は、金具11を介して左側の横架材31で支持されている。金具11は、鋼板を折り曲げてコの字状にしたものを背中合わせに配置して、溶接で一体化したもので、二列の側面板14と、その真ん中を結ぶ中央板13と、で構成され、上または下から見てH形状である。
【0019】
金具11の側面板14を差し込むため、各横架材21、31の端部には、二列のスリット22、32を加工してある。スリット22、32は、横架材21、31の上下面を貫通しており、さらに側面板14全体を差し込めるだけの奥行きを確保してある。また中央板13を収容するため、各横架材21、31の端面には段差部23、33を加工してある。段差部23、33は、二列のスリット22、32の間だけを削り込んだものだが、施工性を考慮して、その削り込み深さの合計は、中央板13の厚さよりも大きくなっている。
【0020】
金具11と横架材21、31を一体化する固定具については、ドリフトピン28、38を使用している。ドリフトピン28、38を挿通できるよう、金具11の側面板14には、上下二組のピン溝16と計四組のピン孔18を点対称形に配置してある。また横架材21、31の側面には、ピン溝16やピン孔18と同心となる位置に横孔24、34を加工してある。横孔24、34は反対面に達しており、それぞれ上下に三個並んでいる。
【0021】
段差部23、33に組み込む介挿具については、金属板41を使用している。この図では、右側の横架材21に下向きの荷重が作用することを考慮して、この段差部23の下方にのみ金属板41を配置している。金属板41によって、中央板13と段差部23との空間が埋められて、双方が実質的に一体化する。そのため、連結部の微小な緩みが解消され、剛性の低下を抑制でき、両横架材21、31をまたぐ荷重は直接的に伝達されていく。なお金属板41の組み込みには、皿ビス45を用いている。皿ビス45の頭部は、金属板41の中に埋まり、金具11と干渉することはない。
【0022】
図2は、図1の各要素を組み上げていく途中段階を示している。左側の横架材31のスリット32に側面板14を差し込んだ後、横孔34からドリフトピン38を打ち込み、金具11と横架材31を一体化している。また右側の横架材21については、一番上の横孔24に限ってドリフトピン28を打ち込んでいるほか、段差部23の下方には、皿ビス45で金属板41を取り付けている。この後、右側の横架材21を吊り上げて、その端面を金具11の上方に移動して徐々に下降させていくと、側面板14がスリット22に差し込まれて、やがて打ち込み済みのドリフトピン28がピン溝16で受け止められ、横架材21の仮置きが完了する。
【0023】
図3は、図1の最終段階で、二本の横架材21、31を連結した状態を示している。金具11全体は、スリット22、32や段差部23、33に埋め込まれており、またドリフトピン28、38全体も横孔24、34に埋め込まれており、これらの端部だけが外部から視認できる。なお金属板41は、両横架材21、31の間に挟み込まれているため、外部からはほとんど視認できない。以降、右側の横架材21に作用する下向きの荷重は、金具11を介して左側の横架材31に伝達され、最終的には柱51によって受け止められる。
【0024】
図4は、図3の連結構造の各断面を示している。中央部の縦断面図のように、金具11の中央板13は、二枚の鋼板が段違いで重なった形状になっている。また段差部23、33の削り込みが深いことから、中央板13は、横架材21、31の端面と接触しておらず、一定の空間が形成されている。仮に中央板13の全域が横架材21、31と接触していないと、荷重の伝達がドリフトピン28、38に集中するため、金具11や横架材21、31が変形する恐れがある。しかし、この連結構造では、空間の下方に一枚の金属板41を挟み込んでおり、金具11の移動を拘束できるほか、圧縮荷重の伝達を担っている。
【0025】
図5は、図1とは異なる連結構造を示している。図1では段差部23、33を各横架材21、31に加工している。しかし本図では、左側の横架材31の段差部33を深く加工することで、右側の横架材21の段差部をなくしている。このような場合でも、横架材21の端面に金属板41を取り付けることは可能である。なお金属板41は、本図のように両方の横架材21、31に取り付けることもでき、しかもその大きさは自在であり、横架材21、31の高さと同等としても構わない。
【0026】
図6は、介挿具としてネジ釘43を用いた場合を示している。介挿具については、これまでの各図で用いた金属板41のほか、本図のようにネジ釘43を用いることもできる。ネジ釘43の頭部が金具11の中央板13に接触することで、金具11の変位を防止でき、さらに荷重の伝達も担う。なお、ネジ釘43のねじ込み量を調整することで、施工性に影響を与えることなく、中央板13と接触させることができる。また、介挿具として適切に機能するよう、ネジ釘43は、できるだけ高密度に配置することが好ましく、本図では右側の横架材21の段差部23に計三個をねじ込んでいる。
【符号の説明】
【0027】
11 金具
13 中央板
14 側面板
16 ピン溝
18 ピン孔
21 横架材(棒材)
22 スリット
23 段差部
24 横孔
28 ドリフトピン(固定具)
31 横架材(棒材)
32 スリット
33 段差部
34 横孔
38 ドリフトピン(固定具)
41 金属板(介挿具)
43 ネジ釘(介挿具)
45 皿ビス
51 柱


【特許請求の範囲】
【請求項1】
端面同士が接触する二本の棒材(21、31)と、平行に並ぶ二枚の側面板(14)と該側面板(14)を一体化する中央板(13)とからなるH形状の金具(11)と、該金具(11)と前記棒材(21、31)とを一体化する固定具(28、38)と、を備え、各棒材(21、31)の端部には、前記側面板(14)を差し込むため二列のスリット(22、32)を設け、また棒材(21、31)の端面には、前記中央板(13)を収容するための段差部(23、33)を設け、前記中央板(13)と前記棒材(21、31)端面が対向する空間二箇所のうち、少なくとも一箇所には、介挿具(41または43)を組み込んでいることを特徴とする連結構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−237104(P2012−237104A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105268(P2011−105268)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(501138161)
【Fターム(参考)】