説明

運動靴用鋲

【課題】 鋲と、該鋲本体を靴底に取付けるための取付け用ネジとを分離させ、ネジを一般的なものにすることにより、取付けが簡単で、特殊工具を使用しなくても、確実に取付けを行なうことができ、運動中においてもネジがはずれたりしないような運動靴用の鋲を提供すること。
【解決手段】 本発明の運動靴用鋲は、エラストマー性プラスチック樹脂から形成されており、フランジ状部分と、該フランジ状部分に対し垂直方向に延びるネジ軸受け部と、フランジ状部分とネジ軸受け部とを接続するように、フランジ状部分の一面から延びる円筒状部分とを備えており、別体に形成された取付け用ネジにより運動靴の底に取付けられるようになっている。フランジ状部分は、該フランジ状部分の外周周辺に向かって低くなるような湾曲形状であり、該外周周辺には、複数のスパイク突起が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばゴルフ靴のような運動用靴の鋲に関する。特に本発明は、運動用靴の金属製スパイクの代替となる運動用靴の鋲に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばゴルフ靴においては、従来は、靴底に金属製の鋲をネジ込んで固定する構造を有するものが多かった。この種の靴では、金属製の鋲がゴルフ場のグリーンを傷めるという問題があることが指摘されている。このため、靴底にプラスチック材料製の突起を一体に形成したスパイクレスシューズが使用される傾向にある。しかし、靴底に突起を一体に形成した構造では、該突起が磨耗したとき、靴底全体を交換することが必要になる。
この問題を解決するため、靴底にプラスチック材料製の鋲をネジと一体化させ特殊な工具を使ってネジ止めするようになった靴底用鋲がある(例えば特許文献1参照)。また、鋲本体とネジが一体化された鋲を、一体化されたネジにより靴底に埋め込むようになった運動靴用鋲がある(例えば、特許文献2、3参照)。さらに、ピンと座板の着脱作業を容易にしたスポーツ靴用鋲もある(例えば特許文献4参照)。
【0003】
【特許文献1】実用新案出願公開実開平5−65207号公報
【特許文献2】特許出願公開番号特開2001−189907号公報
【特許文献3】特許出願公開番号特開2001−25401号公報
【特許文献4】特許出願公開番号特開2001−197906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のような鋲とネジが一体形成され、靴底に取付けられるようになった鋲では、図5に図示するような孔30に特殊な工具を差し込んで靴に鋲をネジ止めするようになっているが、このような取付けでは、確実に締め付けて取付けることが困難で、場合によってはネジが緩んでしまい、鋲が靴から外れてしまうこともある。また、特許文献2、3、4の発明においては、鋲とネジとが一体成形されているため製造工程も複雑になるし、取付けられるべき靴底の内部の、鋲を受け入れる部材の製造工程も複雑になる可能性がある。
従って、本発明は、従来の運動靴用の鋲とは異なり、鋲と、該鋲本体を靴底に取付けるための取付け用ネジとを分離させ、取付け用ネジを一般的なものにすることにより、取付けが簡単で、特殊工具を使用しなくても、確実に取付けを行なうことができ、運動中においてもネジがはずれたりしないような運動靴用の鋲を提供することを課題とする。
さらに、本願は、鋲本体をエラストマー性のプラスチック樹脂材料から形成し、さらに取付け用ネジを金属製に限らずABS樹脂、ポリカーボネートなどのプラスチック樹脂を採用することにより、雨などの水に強く、従来の金属製の鋲のように、錆びたりしにくく、耐久性があって長期間使用できるような運動靴用鋲を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の運動靴用鋲は、エラストマー性プラスチック樹脂材料から形成されており、フランジ状部分と、該フランジ状部分に対し垂直方向に延びるネジ軸受け部と、フランジ状部分とネジ軸受け部とを接続するように、フランジ状部分の一面から延びる円筒状部分とを備えており、別体に形成された取付け用ネジにより運動靴の底に取付けられるようになっている。フランジ状部分は中央部が高く、該フランジ状部分の外周周辺に向かって低くなるような湾曲形状であり、該外周周辺には、複数のスパイク突起が形成されている。ネジ軸受け部の内部は中空であり、ネジ軸受け部以外の領域の鋲の内側はフランジ状部分側が最も拡径された状態でほぼテーパー形状に開口している。取付け時には、取付けネジを鋲の内部開口側から挿入し、取付けネジの軸部を前記ネジ軸受け部に嵌めるようにして運動靴の底にねじ込むことで、鋲を靴底に固定して取付けるようになっている。
本発明において、取付けネジは皿ネジであることが好ましく、金属製であればよい。
本発明の別の態様において、取付けネジは、ABS樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニールを含むプラスチック性樹脂から形成されていることが好ましい。
本発明の他の態様において、円筒形状部分の外側表面には凹凸部が形成されており、鋲を靴底に取付けた場合には、この凹凸部が靴底に当接し、これにより、鋲が弾性変形して,鋲の靴底からより外れにくくしている。
さらに、本発明の別の態様において、この凹凸部は、波形形状の、例えばぎざぎざなパターンを有するようになっていてもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の運動靴用鋲は、該鋲とは別個となった皿ネジのような取付けネジを介し、運動靴の底に取付けられるようになっているため、特殊な工具等を要することなく、通常のドライバのような工具を用いることにより、容易に取付けが可能である。また、従来のように鋲とネジが一体になった従来の鋲を靴底に取り付けると、鋲自体が弾性変形する程締め付けが困難となりネジが緩みやすかったが、これとは逆に、本発明のようにネジと鋲を別体とすることにより、鋲が弾性変形する程締め付けが行いやすく、取付け用ネジを介し鋲を靴底にしっかりと締め付け固定することができる。また、万が一、使用時に緩むようなことがあっても、特殊な工具がなくても、ドライバといった通常の工具或いは適当な部材を使って取付けができることも可能である。
また、本発明の鋲は、ウレタン系エラストマー、ポリエチレン系エラストマーといったプラスチック樹脂材料により形成されており、取付け用ネジをABS樹脂やポリアセタール等を含む樹脂から形成した場合、いずれの材料も金属のように錆びるといった危険性がなく、軽量であるとともに長期にわたり使用できるといった効果を有する。
さらに、鋲本体とは、別個になった取付け用ネジは皿ネジを採用するため、取付け後でも厚みが小さい。従って、取付けネジによる不要な厚みが減少されることになり、使用時における着用感もすぐれたものになる。さらに、取付けネジとしての皿ネジの頭部表面は平坦であるため、使用時において、接地側となるネジの頭部の表面が地表の状態の影響を受けることが少なく、ひいては緩みも減少することになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施例を図に示す運動靴用鋲について説明する。
図1の(a)は本発明に係る運動靴用鋲1の第1実施形態の平面図であり、(b)は、(a)の線X−Xに沿った断面図であり、(c)は上面図である。さらに、図3は、本発明の鋲1の斜視図である。図1(a)、(b)、(c)及び図3を参照すると、鋲1は、円盤状のフランジ状部分4と、該フランジ状部分4の片側の面から直角方向に延びるネジ軸受け部5を有する。鋲1は、さらに、フランジ状部分4とネジ軸受け部5との間にネジ軸受け部5の径よりも大きくフランジ状部分4の径よりも小さい、フランジ状部分4とネジ軸受け部5を接続するように形成された円筒状部分3を有する。鋲1は、ネジ軸受け部5以外の領域を除いて、段が付いたほぼテーパー形状になった内側面12を有しており、鋲1の内側は、フランジ状部分4側において最も拡径された開口部を有する中空である。すなわち、鋲1の内側において、円筒状部分3の内側がフランジ状部分4の表面側にテーパー形状に開口し、これに続いて、フランジ状部分の内側の面もテーパー形状に開口していることになる。ネジ軸受け部5は円筒状であり内部は中空であり、後に説明するネジ部材7の軸部9を受け入れるためにネジ軸部9がぴったりと嵌る程度の大きさの径6を有する。ネジ軸受け部5と円筒状部分3との接続部分からフランジ状部分4に向かう内側面12の形状の一部はネジ部材7の頭部8の形状に一致し、ネジ部材7の頭部が鋲1の内側面12にぴったりと嵌るようになっている。
【0008】
フランジ状部分4は中央部が高く周辺に向かって低くなるような湾曲形状に形成される。図1(a)と図3を参照するとわかるように、フランジ状部分4の湾曲形状の表面の外周周辺には、複数のスパイク突起2が形成されている。
【0009】
本発明の運動靴用の鋲1は、ウレタン系エラストマー、ポリエチレン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン材料等などプラスチック樹脂の材料から形成される。
【0010】
図2の(b)は、鋲本体2を靴底に固定させるためのネジ部材7の側面図である。ネジ部材7は、一般的な皿ネジであればよく、表面11が平坦で、側面がテーパー形状の頭部8と、外周にネジが形成され雄ネジとなるネジ軸部9とから構成される。頭部8の表面11は中央にプラス凹部を有する。
ネジ部材7は、一般的なネジの材料として使用される通常の金属から形成されていればよいが、ネジ部材7は、ABS樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニールなどのプラスチック樹脂から形成されていてもよい。
【0011】
図2の(a)は、ネジ部材7を使用して、本発明に係る運動靴用鋲1を運動靴底20に取付けた状態を表す断面図である。靴底20には予め鋲1を受け入れるための受け入れ部材21が挿入されており、受け入れ部材21には、ネジ部材7の軸部9と螺合するように内周面が雌ネジに形成されたナット22が設置されている。ナット22は金属性であることが好ましい。
【0012】
ネジ部材7を使用して鋲1を靴底20に取付ける際には、鋲1の軸受け部5が靴底に取付ける側となり、スパイク突起2側が接地側である。鋲1の軸受け部5を靴底20内に予め設置されている鋲受け入れ部材21のナット22に嵌めるように配置し、ネジ部材7を鋲1の中空内部の開口部側からネジ軸受け部5を介しネジ込む。この際、ネジ軸受け部5は、ネジ部材7を靴底20の受け入れ部材21へのガイドのような役目を果たす。取付けの際には、ネジ部材7は、一般的な皿ネジであるから、通常のドライバのような工具を使用して取付けることが可能である。このように、ネジ軸受け部材5の内部とナット22内にネジ部材7の軸部9がしっかり収まるまでネジ部材を鋲1の開口部にネジ込み、鋲1を靴底20に固定する。鋲1の内部はネジ部材7の頭部8の形状に合ったテーパー形状の開口部を有しているので、ネジ部材7の軸部9はナット22と螺合するとともに、ネジ部材7は、鋲1のネジ軸受け部5内に固定されるようになる。最終的に、鋲1がネジ部材7を介し靴底に取付けられると、ネジ部材7の頭部8の外周面が鋲1のテーパー形状の内周面と一致し嵌るようになる。また、円筒状部分3の外側表面23が全体にわたり靴底の表面に圧接することになるので、鋲の取付け後の安定感がすぐれたものとなる。さらに、ネジ部材7の頭部8の表面11は、平坦であるから、取付け後において、鋲1を靴底に取付けた後でも、靴底に対し平行な状態を保つようになっており、取付け用ネジ7は地面の状態の影響を受けることも少ない。
【0013】
図4は、本発明の第2の実施形態を示す鋲1の断面図である。第2の実施形態において、鋲1の円筒状部分3の表面23の少なくとも一部に凹凸が形成されている。この凹凸部は表面23上全体にわたり形成されていてもよい。この凹凸は、きざきざな波形形状であってもよい。円筒状部分3の表面23に凹凸が形成されることを除いては、第1の実施形態と同様の構成を有するのでこれ以上説明しない。
円筒状部分3の表面23は、鋲1を靴底20に取付けると、表面23の全体が靴底の面に当接することになる。第2実施形態のように、表面23上に凹凸またはぎざぎざ形状の波形を形成することにより、エラストマー性樹脂から形成される鋲1が靴底と接する面において弾性変形しやすくなる。従って、ネジ留めされた鋲1は、この鋲1の表面23の弾性変形のために靴底からさらにはずれにくいものとなる。
さらに、本発明の実施形態では、ネジ部材7を一般的な皿ネジとして説明してきたが、セルフタップネジとし、靴底内にネジの受け入れ部を形成することなく取付けるようにんなっていてもよい。
本発明の運動靴用鋲は、エラストマープラスチック材料製であり、また鋲を靴底に取付けるためのネジもプラスチック材料製であるため、軽量であり、さらに錆びるといった恐れもなく耐久性にもすぐれる。さらに、鋲と取付け用ネジとを別体とすることにより確実に鋲を靴底に取付けることができ、鋲の緩みも少なくなる。また、鋲を交換する際にも取り替えが容易で、ネジを再利用することも可能である。
以上、本発明を一実施形態に沿って図面を参照し説明してきたが、本発明は、この実施形態の構造の詳細に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1の(a)は、本発明に係る運動靴用鋲の平面図であり、(b)は(a)のX−X線に沿った断面図であり、(c)は上面図である。
【図2】図2の(a)は、取付け用ネジ部材を使用して本発明に係る鋲を靴底に取付けたときの断面図であり、(b)は取付け用ネジ部材の側面図である。
【図3】本発明に係る運動靴用鋲の斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態による運動靴用鋲を靴底に取付けたときの状態を表す断面図である。
【図5】従来技術の運動靴用鋲を示す平面図である。
【符号の説明】
【0015】
1 鋲
2 スパイク突起
3 円筒状部分
4 フランジ部分
5 ネジ軸受け部
7 取付け用ネジ部材
8 ネジ部材頭部
9 ネジ部材軸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランジ状部分と、該フランジ状部分に対し垂直方向に延びるネジ軸受け部と、前記フランジ状部分と前記ネジ軸受け部とを接続するように前記フランジ状部分の一面から延びる円筒状部分とを備え、別体に形成された取付け用ネジを介し運動靴の底に取付けられるようになったエラストマー性のプラスチック樹脂材料からなる運動靴用鋲であって、
前記フランジ状部分は中央部が高く、該フランジ状部分の外周周辺に向かって低くなるような湾曲形状であり、該外周周辺には複数のスパイク突起が形成されており、
前記ネジ軸受け部の内部は中空であり、前記鋲の、前記ネジ軸受け部以外の領域の内側は前記フランジ状部分側が最も拡径された状態でほぼテーパー形状に開口しており、
前記取付けネジを前記鋲の内部開口側から挿入し、前記取付けネジの軸部を前記ネジ軸受け部に嵌めるようにして運動靴の底にねじ込むことで前記鋲を前記靴底に取付けるものであることを特徴とする運動靴用鋲。
【請求項2】
請求項1に記載した運動靴用鋲であって、前記取付けネジは皿ネジであり、ABS樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニールを含むプラスチック性樹脂から形成されていることを特徴とする運動靴用鋲。
【請求項3】
請求項1に記載に記載した運動靴用鋲であって、前記円筒形状部分の外側表面には凹凸部が形成されるようになっていることを特徴とする運動靴用鋲。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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