説明

運搬補助具及びその製造方法

【課題】ラベルの位置ずれをより確実に防止することのできる運搬補助具及びその製造方法を提供する。
【解決手段】箱型容器1は、箱型容器1を成形する金型装置21のうち、長辺側側壁部8の外面を成形する成形面に対して、表面に所定の情報が印刷されたラベル11を設置するとともに、当該ラベル11を、成形面において枠状に形成されたスリット26を介して吸引装置で吸引保持してから、キャビティ25に対して溶融樹脂を充填し、固化させることで形成される。また、箱型容器1の成形に際して、ラベル11は、その外周側の部位がスリット26から外周側へ2.0mm程度はみ出すようにして設置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の運搬等に使用される箱型容器やパレット等の運搬補助具及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の物品をまとめて、或いは、姿勢の安定し難い物品や壊れ易い物品を安定状態で運搬等する場合に、箱型容器やパレット等の運搬補助具が使用される。また、このような運搬補助具に対して所定の情報(会社名や商品名等)を付す場合において、運搬補助具を成形する金型装置のキャビティに対して、表面に前記所定の情報が印刷されたラベル(インモールドラベル)を設置してから、溶融状態の熱可塑性樹脂を充填・固化させることで、前記所定の情報が付された表示面を運搬補助具と同時に形成するといった技術がある。
【0003】
ところで、キャビティに溶融樹脂を充填する際に、キャビティに注入された溶融樹脂がラベルの端縁に勢いよくぶつかることに起因して、ラベルが捲れたり、ラベルが位置ずれしたり、ラベルに皺が発生したりしてしまうといったおそれがある。
【0004】
これに対し、キャビティに注入された溶融樹脂が、先ず、ラベルのうち外周縁よりも内周側の表面に当たってから、ラベルの表面に沿ってラベルの外周縁へと広がっていくように構成された技術がある(例えば、特許文献1、2等参照。)。
【0005】
より具体的には、特許文献1では、キャビティのうち、ラベルの設置される側壁部の成形部位(以下、「側壁成形部」)と、ゲートが設けられた底壁部の成形部位(以下、「底壁成形部」)とが断面略T字状に交わっており、ラベルが底壁成形部の端部に対向して底壁成形部を上下に跨ぐようにして設置されている。この場合、底壁成形部から側壁成形部へと流入する溶融樹脂によってラベルが側壁成形部の成形面に押さえ付けられるとともに、キャビティを流動する溶融樹脂がラベルの端縁に対して勢いよく正面からぶつかることを回避することができ、ラベルの捲れ等の上記不具合の抑制が図られる。
【0006】
また、特許文献2では、キャビティに注入された溶融樹脂を、ラベルの外周縁よりも内周側の表面部位へと案内するための溝部(整流路及び先行湯路)を設けるといった技術が開示されている。当該溝部を形成する技術によっても、上記特許文献1と同様にして、ラベルの捲れ等の抑制を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−132477号公報
【特許文献2】特公昭43−3986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、側壁成形部と底壁成形部とが断面略T字状に交わらないように構成する場合や、前記所定の情報が表示される表示面を、側壁部のうち底壁部よりも上方部位にのみ存在するように構成したい場合には、上記特許文献1のようにラベルを、底壁成形部を上下に跨ぐようにして設置すること自体が不可能となってしまう。
【0009】
また、上記特許文献2のように、前記溝部を形成した場合には、運搬補助具において、前記溝部を成形面とした凸部が、不要であるにもかかわらず形成されてしまう。そして、これに起因して、運搬補助具の機能性の低下を招く(例えば、箱型容器の収容空間を画定する底面や内側面が凸凹してしまう)等の各種不具合を招くおそれがある。加えて、上記特許文献1には、底壁成形部の端部の幅を広げることで、溶融樹脂の側壁成形部への流入速度を下げてラベルの捲れを抑制するといった技術についても開示されているが、当該技術を採用する場合においても、幅を広げた部位において運搬補助具の肉厚が不要にも厚くなってしまい、成形歪み(ヒケ)等の各種不具合を招くことが懸念される。
【0010】
本発明は上記例示した問題点等を解決するためになされたものであって、その目的は、ラベルの位置ずれをより確実に防止することのできる運搬補助具及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、上記目的等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0012】
手段1.物品を載置可能な載置部を備えるとともに、所定の情報を表示する表示面を有する運搬補助具の製造方法であって、
前記運搬補助具を成形するためのキャビティを形成する複数の金型を備える金型装置と、前記キャビティに対して溶融状態の熱可塑性樹脂を注入する射出装置と、前記キャビティ内の空気を吸引可能な吸引装置とを用い、
前記キャビティを画定する前記金型の成形面のうち、前記表示面を成形することとなる部位に対して、ラベルを前記金型の成形面に密着するようにして設置する設置工程と、
前記ラベルが設置された前記キャビティに対して溶融樹脂を充填し、固化させる充填・固化工程とを経ることで、
前記載置部を備えるとともに、前記ラベルによって前記所定の情報が表示された前記表示面を有する運搬補助具が一体的に形成され、
前記金型には、前記キャビティを画定する成形面において、前記射出装置から供給される溶融樹脂を前記キャビティへ導入するためのゲートが形成されるとともに、前記表示面を成形する金型には、前記キャビティと前記吸引装置とを連通させて前記吸引装置により前記キャビティ内の空気を吸引可能とするためのスリットが形成され、
前記設置工程においては、前記ラベルのうち前記ゲート側の部位が、前記スリットを跨いで前記ゲート側にはみ出すよう前記ラベルを設置するとともに、前記スリットからのはみ出し長さが、1.0mm以上、5.0mm以下となるようにしたことを特徴とする運搬補助具の製造方法。
【0013】
手段1によれば、ラベルのゲート側の部位は、スリットを跨いでゲート側に1.0mm〜5.0mmだけはみ出すようにして設置されることとなる。これにより、ラベルのうち少なくともゲート側の部位を吸引装置の吸引力で確実に保持することができるとともに、ラベルのうち少なくともゲート側の外縁部にも十分に保持力を及ばせることができる。従って、ゲートからキャビティに流入した溶融樹脂が、ラベルのうちゲート側の外縁部にぶつかったとしても、ラベルが金型の成形面に密着した状態を維持することができ、ラベルの浮き上がり、位置ずれ、皺の発生等を防止することができる。
【0014】
尚、ラベルのスリットからのはみ出し長さが5.0mmを超える場合には、ラベルのはみ出した外縁部に対して吸引装置の吸引による保持力が及び難くなってしまい、溶融樹脂が該外縁部に勢いよくぶつかると、ラベルの外縁部が浮き上がって、ラベルと金型の成形面との間に溶融樹脂が入り込んでしまう等の不具合を招くおそれがある。その一方で、ラベルのスリットからのはみ出し長さが1.0mm未満の場合には、ラベルのうちスリットに吸引された部位がスリット側に若干引き込まれること等に起因して、ラベルが好適に吸着されずに(成形面のスリットの周縁部とラベルとの間に隙間ができて、そこからスリットに空気が流入するようになってしまい)保持が不十分になるおそれがあり、好ましくない。
【0015】
尚、「前記ラベルの外縁部のうち前記ゲート側の部位」とは、「ゲートと、設置されたラベルとを同一平面に展開した場合に、ラベルの外縁部のうち、ゲート及びラベルの2つの共通外接線の接点間におけるゲート側の部位」といった意味が含まれる。また、「所定の情報」とは、運搬補助具で運搬される物品に関わる情報(物品の製造・販売元の会社名や物品の商品名等)や、運搬等に関わる情報(運搬する会社名等)や、運搬補助具に関係する情報(運搬補助具の製造・販売元の会社名や商品名等)や、意匠性を向上させるようなイラストレーション等のラベル表面の印刷によって表示される情報だけでなく、ラベルの形状や設置位置によって認識できるような情報(運搬補助具の向きを把握できる等)についても含まれる趣旨である。
【0016】
手段2.前記ゲートは、運搬補助具の下面を成形する金型に形成され、
前記表示面は、運搬補助具の側面に形成され、
前記ラベルは、運搬補助具の側面に沿ってほぼ鉛直に延びる左右一対の縦辺部を備え、
前記スリットは、少なくとも前記ラベルの下辺部及び左右の縦辺部に対応して略U字状又は略ロ字状に形成され、
前記設置工程においては、前記ラベルの下部及び左右の側部が、前記スリットを跨いで前記スリットの外周側にはみ出すよう前記ラベルを設置するとともに、前記スリットからのはみ出し長さが、1.0mm以上、5.0mm以下となるようにしたことを特徴とする手段1に記載の運搬補助具の製造方法。
【0017】
手段2によれば、ラベルが、運搬補助具の側面に沿ってほぼ鉛直に延びる左右一対の縦辺部を備える構成において、当該運搬補助具の製造の充填・固化工程に際し、ラベルをより確実に保持することができる。また、ラベルと金型の成形面との間に溶融樹脂が侵入してしまうといった事態をより確実に防止することができる。尚、ラベルがより確実に保持されていることから、溶融樹脂のキャビティへの充填速度を上げることもでき、この場合には、生産性の向上を図ることができる。
【0018】
尚、前記縦辺部を備えるラベルの形状としては、長方形や正方形が挙げられるが、これらに限られるものではなく、下辺部や上辺部が湾曲していたり屈曲していたりしてもよい(四角形状でなくてもよい)。
【0019】
手段3.前記ラベルは、その外周縁から内周側へ1.0mm〜5.0mmだけ変位した部位の少なくとも一部が、透明又は半透明な透視部によって構成され、
前記設置工程において、前記透視部を介して、前記スリットを視認可能に構成されていることを特徴とする手段1又は2に記載の運搬補助具の製造方法。
【0020】
手段3によれば、透視部においてラベル越しにスリットの位置を確認することができる。このため、設置工程において、スリットが、ラベルの外縁部から内周側へ1.0mm〜5.0mm程度変位した所望の位置に相対配置されているか否かを比較的容易に把握することができる。従って、作業性の向上を図りつつ、ラベルとスリットとをより正確に相対配置することができる。さらに、スリットとラベルとが重なった状態から、再度、スリットの位置を確認するべく、ラベルをめくる必要がなく、ラベルが変形してしまうといった事態を回避することができる。
【0021】
手段4.前記透視部は、前記ラベルの外周縁に沿って形成され、
前記設置工程において、前記ラベルは、前記透視部と、その他の一般部との境界部が、前記スリットと一致するように設置されることを特徴とする手段3に記載の運搬補助具の製造方法。
【0022】
手段4によれば、透視部がラベルの外周縁に沿って形成されているため、上記手段3の作用効果がより確実に奏される。また、ラベルは、その透視部と一般部との境界部が、スリットと一致するように設置されるようになっている。すなわち、透視部と一般部との境界部がラベルの好適な設置位置への目印となることから、ラベルをより正確に設置することができる。さらに、ラベルのうちスリットを介して吸引装置に吸引される部位については、吸引に起因してスリットの跡が付く(突条が形成される)おそれがある。この点、本手段4のように、ラベルの透視部と一般部との境界部と、スリットとを位置合わせすることによって、スリットの跡が前記境界部に沿って形成されることとなり、かかるスリットの跡がラベルのその他の部位に形成されるような場合に比べて目立たなくすることができる。
【0023】
手段5.上記手段1乃至4のいずれかに記載の製造方法によって形成され、
物品を載置可能な載置部を備えるとともに、所定の情報を表示する表示面を有する運搬補助具であって、
前記表示面は、前記所定の情報が印刷されたラベルを印刷面が露出するようにしてインサート成形することで形成され、
前記ラベルのうち、その外周縁から内周側へ1.0mm〜5.0mm程度変位した部位において、前記ラベルをインサート成形する際に前記ラベルを吸引によって保持していた跡が形成されていることを特徴とする運搬補助具。
【0024】
手段5に記載の運搬補助具の製造に際して、上記手段1等に記載されているように作業性の向上等を図ることができる。また、特に手段4に対応しては、成形に際してラベルを吸着保持することでラベルに形成されるスリットの跡(突条)と、ラベルの透視部と一般部との境界部とが一致することから、スリットの跡が目立ってしまうといった事態を防止することができるとともに、ラベルの透視部と一般部との境界部をよりくっきりと視認させることができ、意匠性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】箱型容器の正面図である。
【図2】(a)は、図1のA−A線断面図であり、(b)は、(a)のJ部を示す拡大図である。
【図3】金型装置を示す断面模式図である。
【図4】長辺側スライド型等を示す断面図である。
【図5】(a)は、長辺側スライド型等を示す断面図であり、(b)は、(a)のK部を示す拡大図である。
【図6】長辺側スライド型の成形面の一部を示す部分正面図である。
【図7】(a)入れ子の基底面側を示す背面図であり、(b)は入れ子の側面図である。
【図8】別の実施形態における入れ子の背面図である。
【図9】別の実施形態における入れ子を示し、(a)は背面図、(b)は側面図である。
【図10】別の実施形態における入れ子を示し、(a)は背面図、(b)は側面図である。
【図11】パレットへの適用例を示す正面図である。
【図12】別の実施形態における長辺側スライド型等を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、一実施形態について図面を参照して説明する。図1、図2に示すように、運搬補助具としての箱型容器1は、相対する一対の長辺部と相対する一対の短辺部とを有する略矩形板状の底壁部2と、底壁部2の外周縁から上方に延出する略四角筒状の周壁部3と、周壁部3の上縁部から周壁部3の外周方向に突出する上フランジ4と、周壁部3の下縁部に沿って、該下縁部よりも若干上方位置から周壁部3の外周方向に突出する下フランジ5と、上フランジ4と下フランジ5との間を連結する縦フランジ6とを備え、これらが型成形により一体的に形成されている。本実施形態の箱型容器1はポリプロピレンにより構成されている。
【0027】
周壁部3は、底壁部2の各長辺部からそれぞれ上方に延出する一対の長辺側側壁部8と、底壁部2の各短辺部からそれぞれ上方に延出し、一対の長辺側側壁部8の側縁部間を連結する一対の短辺側側壁部9(図2参照)とから構成されている。また、周壁部3は上方に向けて外周側に若干傾斜して延びている。本実施形態では、箱型容器1同士を上下に積み重ねることで、上側の箱型容器1の下フランジ5の下面が下側の箱型容器1の上フランジ4の上面に当接して支持されるとともに、上側の箱型容器1の底壁部2が下側の箱型容器1の周壁部3の内周側に収容されるようになっている。これにより、下側の箱型容器1に対する上側の箱型容器1の水平方向における位置ずれを防止しつつ、箱型容器1を上下に積み重ねる(スタッキングする)ことができる。
【0028】
さて、本実施形態では、各長辺側側壁部8の外面の中央部を含む範囲において、所定の情報(会社名や商品名等)が表示されている。詳しくは後述するが、本実施形態では、表面に前記所定の情報が印刷されたラベル11(インモールドラベル)を、その表面が長辺側側壁部8の外面において露出するようにしてインサート成形することによって前記所定の情報を表示している。
【0029】
図1、図6に示すように、ラベル11は、左右に長い矩形状をなし、表面において図示しない所定の情報が印刷された情報表示領域12と、情報表示領域12の外周縁全域を囲むようにして四角枠状をなす空き代領域13とから構成されている。ラベル11はポリプロピレンによって構成され、特に本実施形態では、空き代領域13が透明(着色可)で、情報表示領域12が不透明となっている。また、空き代領域13の幅、すなわち、ラベル11の外周縁と情報表示領域12との間の距離は、いずれの部位でも2.0mmとなっている。尚、本実施形態では、長辺側側壁部8の外面が表示面を構成し、底壁部2(底壁部2の上面)が載置部を構成する。また、空き代領域13が透視部を構成し、情報表示領域12がラベルの一般部を構成する。
【0030】
次に、箱型容器1を成形する金型装置21について、図3〜図7等を参照して説明する。尚、図3では、便宜上、左側半分で長辺側側壁部8の長手方向中央部を形成する部位における断面を示し、右側半分で長辺側側壁部の長手方向一端部近傍を形成する部位における断面を示している。
【0031】
図3に示すように、金型装置21は、底壁部2の下面等を成形する雌型22と、底壁部2の上面や周壁部3の内周面等を成形する雄型23と、長辺側側壁部8の外面等を成形する長辺側スライド型24と、短辺側側壁部9の外面等を成形する図示しない短辺側スライド型とを備えている。これらの金型22〜24には、箱型容器1の表面形状に対応した成形面がそれぞれ形成されており、これら成形面によって、箱型容器1を成形するキャビティ25が形成される。
【0032】
また、図4、図5に示すように、長辺側スライド型24は、キャビティ25を画定する成形面において左右に長い長方形状の凹部32が形成された本体部31と、前記凹部32に嵌入される入れ子41とを備えている。本体部31には、凹部32の底面と、凹部32が形成された面とは反対側の面との間を連通させる連通孔33が形成されている。
【0033】
入れ子41は、基本的に、本体部31の凹部32に丁度収まるような直方体形状をなしており、入れ子41のうち、キャビティ25を形成する成形面42は、ラベル11よりも一回り小さな略相似形状をなしている。また、図7に示すように、入れ子41のうち、凹部32の底面に対向する基底面43には、格子状に案内溝44が形成されている。案内溝44は、基底面43のうち連通孔33と対向する部位(図7(a)二点鎖線参照)から基底面43の端縁にかけて延びている。さらに、入れ子41のうち、凹部32の内周面に対向する外周面には、案内溝44の端縁から入れ子41の成形面42の近傍部位にかけて延び延長溝45と、延長溝45の先端部間を連結するようにして、入れ子41の外周面の周方向全域にわたって延在する周回溝46とが形成されている。
【0034】
入れ子41の基底面43が凹部32の底面に当接するまで、入れ子41を凹部32に収容した場合には、入れ子41の成形面42が本体部31の成形面とほぼ面一とされる。さらに、入れ子41の成形面42を囲む本体部31の成形面に関しても、詳しくは後述するラベル11が設置される設置領域と、その周りの一般領域との間に段差はなく、面一となっている。但し、本実施形態では、入れ子41のうち周回溝46と成形面42との間の外周面の全周域と、凹部32の内周面との間において、0.02mm〜0.05mm程度の隙間が形成されている。すなわち、長辺側スライド型24の成形面には、図6に示すように、入れ子41と本体部31との間において、連通孔33に連通するスリット26が、略ロ字状に延在するようにして形成されることとなる。
【0035】
加えて、図5、図7(b)に示すように、入れ子の周回溝46と基底面43との間の外周面については、入れ子41を凹部32に収容した際に、凹部32の内周面に当接するようになっている。これにより、入れ子41のガタツキが防止されることとなる。尚、入れ子41は、図示しない取付手段によって本体部31に着脱自在に取付固定されている。
【0036】
また、本体部31の連通孔33には、図示しない真空ポンプ等の吸引装置が接続(連通)されている。そして、吸引装置が駆動することによって、連通孔33、溝44、45,46、及びスリット26を介してキャビティ25内の空気が吸引されることとなる。尚、スリット26の幅は0.02mm〜0.05mm程度であるため、空気は当該スリット26を通過可能であるが、溶融状態の熱可塑性樹脂(本例では、ポリプロピレン)はスリット26を通過不可能となっている。また、吸引装置による吸引の減圧力は、−0.01Mpa〜−0.2Mpaとなっている。
【0037】
さらに、図3に示すように、雌型22には、キャビティ25に連通するゲート27と、前記ゲート27に連通するとともに、図示しない射出装置のノズル先端が係合されるスプルー28とが形成されている。また、雌型22には、各長辺側スライド型24をそれぞれ変位させるための油圧シリンダ29が設けられている。
【0038】
次に、箱型容器1の製造方法について説明する。まず、金型装置21を型開きした状態で、吸引装置を駆動させるとともに、長辺側スライド型24の成形面に対して、入れ子41の成形面42の全体を覆うようにしてラベル11を印刷面が長辺側スライド型24の成形面に接するように設置する。これにより、ラベル11がスリット26、溝44、45,46、及び、連通孔33等を介して吸引装置に吸引され、ラベル11が成形面に密着した状態で保持されることとなる。
【0039】
特に、本実施形態では、ラベル11の情報表示領域12の形状と、入れ子41の成形面42の形状とがほぼ同じ形状をなしており、当該ラベル11の設置工程においては、透明な空き代領域13越しにスリット26の位置を確認しながら、情報表示領域12の外周縁、すなわち、情報表示領域12と空き代領域13との境界線と、長辺側スライド型24のスリット26とを一致させるようにしてラベル11(図6の二点鎖線参照)を設置する。上記のように、空き代領域13の幅は2.0mmであり、情報表示領域12と空き代領域13との境界線と、長辺側スライド型24のスリット26とを揃えることによって、ラベル11がその全周域にわたってスリット26から外周側に基本的に2.0mm程度はみ出すこととなる。
【0040】
尚、本実施形態では、入れ子41の成形面42のコーナー部がR形状をなしている一方で、ラベル11のコーナー部についてはR形状ではなく、ほぼ直角に交差している。このため、設置工程において、ラベル11のコーナー部においては、ラベル11の外周縁とスリット26との間の距離が、その他の部位よりも大きくなるものの、本実施形態では、その距離が5.0mm以内に収まるように構成されている。
【0041】
そして、ラベル11が吸引装置によって吸引された状態のまま型締めするとともに、射出装置によって溶融状態にあるポリプロピレンを、雌型22に形成されたスプルー28及びゲート27を介してキャビティ25に充填し、固化させる。固化完了後、型開きして成形された箱型容器1を金型装置21から取外す。以上のようにして、上記した底壁部2、周壁部3、フランジ4、5、6等を具備するとともに、長辺側側壁部8の外面に露出したラベル11によって、長辺側側壁部8の外面において前記所定の情報が表示された箱型容器1が得られることとなる。尚、本実施形態では、箱型容器1の成形に際して、スリット26を介してラベル11を吸引装置で吸引してラベル11を保持するため、製造された箱型容器1には、ラベル11のうちスリット26によって吸引されていた部分、すなわち、ラベル11の情報表示領域12と空き代領域13との境界部に沿って突条の跡が形成されることとなる。
【0042】
以上詳述したように、本実施形態によれば、箱型容器1の成形において、ラベル11を金型装置21の長辺側スライド型24の成形面に設置する際に、略矩形状をなすラベル11は、その外周縁全域にわたって、略矩形枠状をなすスリット26を跨いで外周側に2.0mm程度はみ出すようにして設置される。これにより、ラベル11とスリット26の周縁部との間からスリット26に隙間風が入ることもなく、ラベル11を吸引装置の吸引力で確実に保持することができるとともに、ラベル11の外周縁にも十分に保持力を及ばせることができる。従って、ゲート27からキャビティ25に流入した溶融樹脂(本例ではポリプロピレン)がラベル11の外周縁にぶつかったとしても、ラベル11が長辺側スライド型24の成形面に密着した状態を維持することができ、ラベル11の浮き上がり、位置ずれ、皺の発生等を防止することができる。特に、本実施形態では、ラベル11の外周縁に対応して形成された四角枠状のスリット26の全体を覆うようにしてラベル11が設置されているため、ラベル11の全周にわたってラベル11をより強力に吸引することができ、上記作用効果が一層確実に奏される上、ラベル11と長辺側スライド型24の成形面との間に溶融樹脂が侵入するといった事態を回避しつつ、溶融樹脂のキャビティ25への充填速度を上げることもできる。
【0043】
尚、ラベル11のスリット26からのはみ出し長さが5.0mmを超える場合には、ラベル11のはみ出した外周縁に対して吸引装置の吸引による保持力が及び難くなってしまい、溶融樹脂が該外周縁に勢いよくぶつかると、ラベル11の外周縁が浮き上がって、ラベル11と長辺側スライド型24の成形面との間に溶融樹脂が入り込んでしまう等の不具合を招くおそれがある。その一方で、ラベル11のスリット26からのはみ出し長さが1.0mm未満の場合には、ラベル11のうちスリット26に吸引された部位がスリット26側に若干引き込まれること等に起因して、ラベル11が好適に吸着されずに(スリット26の周縁部とラベル11との間に隙間ができて、そこからスリット26に空気が流入するようになってしまい)保持が不十分になるおそれがあり、好ましくない。
【0044】
また、ラベル11には、その外周縁に沿って透明な空き代領域13が形成されている。このため、ラベル11をキャビティ25に設置する工程において、空き代領域13越しにスリット26の位置を視認しながらラベル11を設置することができる。特に、本実施形態では、空き代領域13の幅は、いずれの部位においても2.0mm程度となっているため、情報表示領域12と空き代領域13との境界部と、スリット26とを位置合わせしながらラベル11を設置することにより、ラベル11の外縁部がスリット26よりも外周側に2.0mm程度はみ出した好適な位置にラベル11を相対配置することができる。従って、作業性の向上を図りつつ、ラベル11とスリット26とをより正確に相対配置することができる。さらに、スリット26とラベル11とが重なった状態から、再度、スリット26の位置を確認するべく、ラベル11をめくる必要がなく、ラベル11が変形してしまうといった事態を回避することができる。
【0045】
その上、ラベル11のうちスリット26を介して吸引装置に吸引された部位に形成されるスリット26の跡(突条)が、ラベル11の情報表示領域12と空き代領域13との境界部に沿って形成されることとなる。従って、スリット26の跡がラベル11のその他の部位に形成されるような場合に比べて目立たなくすることができ、外観品質の低下を抑制することができる。さらには、ラベル11の情報表示領域12と空き代領域13との境界部をよりくっきりと視認させることができ、意匠性の向上を図ることができる。
【0046】
加えて、本実施形態では、ラベル11の表面が長辺側側壁部8の外面と面一となるように形成されている。このため、箱型容器1を運搬等する際に、ラベル11がその他の部材や床面等に擦れて損傷してしまうといった事態を抑制することができる。
【0047】
また、本実施形態では、連通孔33に連通する凹部32に対して入れ子41を嵌入させることで、入れ子41の成形面と凹部32の開口周縁部との間にスリット26が形成されるとともに、入れ子41には、基底面43に形成された案内溝44、外周面に形成された延長溝45、及び周回溝46が形成されている。案内溝44の存在により、たとえ、入れ子41の基底面43と、凹部32の底面とを当接させたとしても、吸引装置によるラベル11吸引のための空気通路を、凹部32の内周面に至るまでの確保することができる。このため、吸引装置の吸引力自体を高めることなく、ラベル11を吸引する吸引力を向上させることができる。さらに、入れ子41の基底面43と、凹部32の底面とを当接させることで、入れ子41のガタツキを抑制することができ、取付状態の安定化や、入れ子41の取付けに関する構成の簡素化等を図ることができる。
【0048】
さらに、延長溝45の存在により、吸引装置によるラベル11吸引のための空気通路を、案内溝44の端部から成形面42側に延長させることができる。従って、入れ子41の外周面と、凹部32の内周面との間の隙間が僅かである場合でも、吸引装置の吸引力自体を高めることなく、ラベル11を吸引する吸引力を向上させることができる。特に、延長溝45の形成範囲(周回溝46と基底面43との間の部位)においては、入れ子41の外周面と、凹部32の内周面とを当接させたとしても、延長溝45を介して、吸引装置によるラベル11吸引のための空気通路が、成形面42側に連通するため、入れ子41の外周面と、凹部32の内周面とを当接させて、入れ子41のガタツキを抑制することができる。
【0049】
加えて、周回溝46の存在により、入れ子41の外周面の周方向において、吸引装置によるラベル11吸引のための空気通路を拡張することができ、スリット26の延在方向において部分的に吸引力が強かったり弱かったりするといった事態を抑制することができる。従って、吸引装置によって長辺側スライド型24の成形面に吸着保持されたラベル11の安定感を向上させたり、ラベル11の部分的な浮き上がりの発生を防止したりすることができる。
【0050】
また、スリット26のどの部位においても吸引力をほぼ一定にすることもでき、この場合、製造された箱型容器1に形成されるスリット26の吸引の跡が凸凹したり、ラベル11がスリット26の延在方向において部分的に異なる吸引力によって吸着されることに起因して変形してしまったりすることを回避することができる。さらに、同じ金型装置21を使用して、比較的小さなラベル11をスリット26の一部にだけ重なるようにして設置して箱型容器等を成形するような場合において、利便性の向上を図ることができる。
【0051】
以上のようにして、入れ子41に案内溝44、延長溝45、及び周回溝46を形成することによって、ラベル11をより強固に長辺側側壁部8の成形面に吸着させることができ、キャビティ25に溶融樹脂を充填する際だけでなく、長辺側スライド型24が開いた状態から閉じた状態へと変位させられる際においても、ラベル11の脱落や位置ずれ等を確実に防止することができる。
【0052】
その一方で、上記のような溝部44〜46は入れ子41の成形面42にかからないように形成されることから、入れ子41の成形面42と、本体部31の凹部32周縁部との間のスリット26の幅が広がってしまうといった事態を回避することができる。従って、スリット26の幅が広くなり過ぎてしまうことに起因して、当該スリット26から溶融樹脂が侵入してしまうといった事態を回避することができる。また、入れ子41の成形面42に溝部が形成されることに起因して、入れ子41の成形面42に密着状態で保持されるラベル11の表面に凹凸が形成されてしまうといった事態を回避することができる。
【0053】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0054】
(a)上記実施形態では、ラベル11の下辺部、上辺部、及び左右の縦辺部の全ての側辺部(外周縁全周域)がスリット26の外周側に位置するようにラベル11が長辺側スライド型24の成形面に設置されるとともに、スリット26からはみ出した長さが基本的に2.0mmとなるように構成されているが、ラベル11のうち少なくともゲート27側の部位(上記実施形態では下辺部側の部位に相当)がスリット26を跨ぐ(上記実施形態では、スリット26を跨いで下方にはみ出す)とともに、ラベル11のうちスリット26をはみ出した長さが1.0mm〜5.0mmの範囲内となっていればよい。すなわち、ゲート27を介してキャビティ25に注入された溶融樹脂は、ラベル11の下縁部に対しては、キャビティ25に注入された勢いをそのままに衝突する可能性があるが、その他の部位に対しては、ラベル11の側方に回り込んだり表面を乗り越えたりして到達するため、それ程の勢いはない。従って、ラベル11のうちゲート27側の部位のみを保持し、その他の部位を保持しない場合であっても、ラベル11の浮き上がり等を十分に抑制することができる。
【0055】
但し、上記実施形態のラベル11の左右の縦辺部のように、ゲート27からキャビティ25に注入された溶融樹脂が長手方向(延在方向)に沿って流動することとなる側辺部がある場合には、当該側辺部にも対応してスリット26を形成するとともに、ラベル11を該スリット26から1.0mm〜5.0mm程度はみ出させるように構成することが望ましい。さらには、上記実施形態のように、ラベル11の全ての側辺部に対応してスリット26を形成することで、ラベル11と長辺側スライド型24との間に溶融樹脂が侵入するといった事態をより確実に防止することができる。また、上記実施形態のように、スリット26の全領域をラベル11で塞ぐことにより、ラベル11を成形面に設置した状態でスリット26に空気が流入するといったことを回避することができ、ラベル11をより強固に保持することができる。
【0056】
(b)上記実施形態では、ラベル11の外周縁全域に沿って透明な空き代領域13が形成されているが、ラベル11の外周縁よりも1.0mm〜5.0mm内周側に変位した部位において、ラベル11越しにスリット26を視認可能になっていればよく、例えば、空き代領域13が外周縁に沿って所定間隔毎に設けられていてもよいし、空き代領域13よりも外周側において不透明な部位が形成されていてもよい。また、例えば、スリット26が対応して設けられている側辺部において、外周縁から内周側に向けて5.0mm〜10mm程度延びる透明な部位が少なくとも1カ所に設けられていることとしてもよい。さらに、空き代領域13は、当該空き代領域13越しにスリット26を視認可能であればよく、半透明であってもよい。加えて、空き代領域13を省略することも可能である。
【0057】
(c)また、上記実施形態では、ラベル11が矩形状をなすとともに、長手方向が水平方向に沿って延びるように配置されているが、ラベル11の形状、大きさ、設置の向き等は特に限定されるものではなく、例えば、側辺部が屈曲したり湾曲したり(ラベル11が円形)していてもよいし、ラベル11の各側辺部が長辺側側壁部8の上辺部や下辺部に対していずれも傾斜するようにして配置されてもよい。但し、少なくともラベル11のゲート27側に配置される側辺部に関しては、ラベル11のスリット26からのはみ出し長さを1.0mm〜5.0mmの範囲に収めることとする。
【0058】
尚、当該(c)の構成を採用する場合においても、ラベル11のゲート27側の部位がスリット26を跨いでゲート27側に位置するとともに、ラベル11のうちスリット26からはみ出した長さが1.0mm〜5.0mmの範囲内となっていればよい。尚、「ラベル11の外縁部のうちゲート27側の部位」とは、「ゲート27と、設置されたラベル11とを同一平面に展開した場合に、ラベル11の外縁部のうち、ゲート27及びラベル11の2つの共通外接線の接点間におけるゲート27側の部位」といった意味が含まれる。
【0059】
(d)上記実施形態において、入れ子41の形状については特に限定されるものではなく、少なくともキャビティ25を構成する成形面42(ラベル11が密着状態で設置される面)が、ラベル11の外周形状に対応した形状となっていればよい。例えば、図8に示すように、案内溝44としてより多くの溝を交差させてもよい。また、図8に示すように、複数のパーツ(図8では3つのパーツ)を組合わせることにより入れ子41を形成することとしてもよい。尚、案内溝44の数を減らすことも可能であるが、案内溝44は、少なくとも入れ子41の基底面43のうち連通孔33に対向する部位を通り、基底面43の端部にまで延びていることが望ましい。また、入れ子41の外周面に形成された周回溝46は、入れ子41の外周面の全周にわたって形成されていなくてもよく、周回溝46を形成することで、吸引装置によるラベル11吸引のための空気通路が入れ子41の外周面の周方向において少しでも広げられるようになっていればよい。さらに、図9(a)、(b)に示すように、周回溝46を省略してもよい。
【0060】
尚、上記のように、ラベル11の外周縁全体と、スリット26の全体のラインとが必ずしも一致していなくてもよいが、例えば、案内溝44や延長溝45が形成された部位と形成されていない部位とでは吸引力に差ができることが考えられ、案内溝44が形成されていない部位のみに対応してラベル11が設置される場合には、ラベル11を保持する力が著しく低下してしまうことが懸念される。この点、図8に示すように、案内溝44が形成される領域を増やしたり、上記実施形態のように周回溝46を形成したりすることで、図8の二点鎖線で示すように比較的小さいラベル11が設置される場合でも当該ラベル11を安定して保持することができる。特に、スリット26の全領域から比較的均等な力でラベル11を吸引して隙間の発生を抑制したい場合には、上記実施形態のように周回溝46を形成することが望ましい。
【0061】
さらに、図10に示すように、入れ子41の成形面42側の外寸を基底面43側の部位よりも大きく構成する等して、入れ子41の成形面42側の部位と凹部32との間の隙間よりも、基底面43側の部位と凹部32との間の隙間の方が大きくなるように構成することとしてもよい。この場合、吸引装置自体の吸引力を高めずとも、スリット26を介してラベル11を吸引する吸引力を強めることができるといった作用効果が一層確実に奏される。尚、入れ子41の成形面42側の部位は、スリット26の幅が0.02mm〜0.05mm程度となるように、長辺側スライド型24の凹部32の開口周縁部に対応して形成されていることとする。加えて、案内溝44、延長溝45、及び周回溝46を省略して、入れ子41の全ての表面を平坦面にすることも可能である。但し、これらの溝44、45,46を設けることで、吸引装置自体の吸引力を高めることなく、ラベル11を吸引する力を高めることができる。さらに、このように吸引力を高めつつも、入れ子41の外周面のうち周回溝46と基底面43との間の部位を凹部32の内周面に当接させて、入れ子41の位置決めを行うことができる。
【0062】
(e)上記実施形態では、長辺側スライド型24に形成された凹部32に入れ子41を嵌入させることで、入れ子41と凹部32の開口周縁部との間に四角枠状のスリット26が形成されているが、特にこのような構成に限定されるものではない。例えば、入れ子41を省略してもよいし、スリット26は、ラベル11のうちゲート27側に設置される下辺部にのみ対応して直線状に構成されていることとしてもよいし、下辺部及び左右の側辺部に対応してU字状に構成されていることとしてもよい。
【0063】
さらに、図3等では、箱型容器1が上方に開口する向きで、金型装置21によって成形されるようになっているが、例えば、箱型容器1が側方に開口するような向き(底壁部2が上下に延びるような向き)で成形されるように構成してもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、金型装置21において、箱型容器1の底壁部2(の下面)を成形する位置にゲート27が形成されているが、特にこのような構成に限定されるものではない。例えば、ゲート27が形成された成形面においてスリット26を形成しラベル11を設置することも可能である。さらに、上記実施形態では、ラベル11は長辺側側壁部8の外面に対応して設けられているが、特にこのような構成に限定されるものではなく、長辺側側壁部8の内面、短辺側側壁部9の外面・内面、底壁部2の上面・下面等に設けることも可能である。加えて、箱型容器1に設けられるラベル11の枚数や、ラベル11が露出状態で設けられる壁部の数についても特に限定されるものではなく、例えば、各長辺側側壁部8及び各短辺側側壁部9の外面全てにラベル11を設けることとしてもよい。
【0065】
(f)上記実施形態では、箱型容器1に具体化されているが、物品の運搬・保管に際して使用される運搬補助具に適用されていればよく、例えば、底の浅いトレー及び有底円筒状の容器等の載置面を囲うようにして周壁部3が設けられる容器の他、図11に示すような周壁部3のないパレット51等にも適用することができる。
【0066】
また、上記実施形態において下フランジ5を省略するとともに、箱型容器1同士をネスティング可能に構成してもよい。さらに、上記実施形態において、図12に示すように、長辺側スライド型24のラベル11が設置される部位をその他の部位よりもキャビティ25の内側に突出させた金型装置21を用いて、長辺側側壁部8の外面のうちラベル11が露出している部位をその外周側の部位よりも長辺側側壁部8に没入させるようにして形成してもよい。この場合、箱型容器1の運搬等に際してラベル11の損傷等を抑制することができる。また、箱型容器1同士のネスティングが行える構成においては、ネスティング時にラベル11が擦れてしまうといった事態を回避することができる。
【0067】
加えて、長辺側スライド型24のラベル11が設置される部位をその他の部位よりも没入させた金型装置21を用いて、ラベル11の少なくとも表面側の部位を長辺側側壁部8の外面から突出するようにして形成してもよい。
【0068】
(g)また、ラベル11を視認することで得られる情報としては特に限定されるものではなく、適宜変更可能である。例えば、箱型容器1で運搬される物品に関わる情報(物品の製造・販売元の会社名や物品の商品名等)や、運搬等に関わる情報(運搬する会社名等)や、箱型容器1に関係する情報(箱型容器1の製造・販売元の会社名や箱型容器1の商品名等)や、意匠性を向上させるようなイラストレーション等が挙げられる。また、ラベル11の表面の印刷によって表示される情報だけでなく、ラベル11の形状や設置位置によって認識できるような情報(箱型容器1の向きを把握できる等)についても含まれる趣旨である。
【0069】
(h)上記実施形態では、箱型容器1はポリプロピレンによって構成されているが、ポリエチレン、PET、ポリアミド等その他の樹脂材料(熱可塑性樹脂)によって構成されることとしてもよい。また、ラベル11はポリプロピレンフィルムによって構成されているが、ポリエチレンフィルム、ナイロンフィルム等のその他の樹脂材料によって構成されることとしてもよい。尚、上記実施形態では、箱型容器1本体とラベル11との構成材料が同じであることから、リサイクル性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0070】
1…箱型容器、2…底壁部、8…長辺側側壁部、11…ラベル、12…情報表示領域、13…空き代領域、21…金型装置、22…雌型、23…雄型、24…長辺側スライド型、25…キャビティ、26…スリット、27…ゲート、31…本体部、32…凹部、33…連通孔、41…入れ子、42…成形面、43…基底面、44…案内溝、45…延長溝、46…周回溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を載置可能な載置部を備えるとともに、所定の情報を表示する表示面を有する運搬補助具の製造方法であって、
前記運搬補助具を成形するためのキャビティを形成する複数の金型を備える金型装置と、前記キャビティに対して溶融状態の熱可塑性樹脂を注入する射出装置と、前記キャビティ内の空気を吸引可能な吸引装置とを用い、
前記キャビティを画定する前記金型の成形面のうち、前記表示面を成形することとなる部位に対して、ラベルを前記金型の成形面に密着するようにして設置する設置工程と、
前記ラベルが設置された前記キャビティに対して溶融樹脂を充填し、固化させる充填・固化工程とを経ることで、
前記載置部を備えるとともに、前記ラベルによって前記所定の情報が表示された前記表示面を有する運搬補助具が一体的に形成され、
前記金型には、前記キャビティを画定する成形面において、前記射出装置から供給される溶融樹脂を前記キャビティへ導入するためのゲートが形成されるとともに、前記表示面を成形する金型には、前記キャビティと前記吸引装置とを連通させて前記吸引装置により前記キャビティ内の空気を吸引可能とするためのスリットが形成され、
前記設置工程においては、前記ラベルのうち前記ゲート側の部位が、前記スリットを跨いで前記ゲート側にはみ出すよう前記ラベルを設置するとともに、前記スリットからのはみ出し長さが、1.0mm以上、5.0mm以下となるようにしたことを特徴とする運搬補助具の製造方法。
【請求項2】
前記ゲートは、運搬補助具の下面を成形する金型に形成され、
前記表示面は、運搬補助具の側面に形成され、
前記ラベルは、運搬補助具の側面に沿ってほぼ鉛直に延びる左右一対の縦辺部を備え、
前記スリットは、少なくとも前記ラベルの下辺部及び左右の縦辺部に対応して略U字状又は略ロ字状に形成され、
前記設置工程においては、前記ラベルの下部及び左右の側部が、前記スリットを跨いで前記スリットの外周側にはみ出すよう前記ラベルを設置するとともに、前記スリットからのはみ出し長さが、1.0mm以上、5.0mm以下となるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の運搬補助具の製造方法。
【請求項3】
前記ラベルは、その外周縁から内周側へ1.0mm〜5.0mmだけ変位した部位の少なくとも一部が、透明又は半透明な透視部によって構成され、
前記設置工程において、前記透視部を介して、前記スリットを視認可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の運搬補助具の製造方法。
【請求項4】
前記透視部は、前記ラベルの外周縁に沿って形成され、
前記設置工程において、前記ラベルは、前記透視部と、その他の一般部との境界部が、前記スリットと一致するように設置されることを特徴とする請求項3に記載の運搬補助具の製造方法。
【請求項5】
上記請求項1乃至4のいずれかに記載の製造方法によって形成され、
物品を載置可能な載置部を備えるとともに、所定の情報を表示する表示面を有する運搬補助具であって、
前記表示面は、前記所定の情報が印刷されたラベルを印刷面が露出するようにしてインサート成形することで形成され、
前記ラベルのうち、その外周縁から内周側へ1.0mm〜5.0mm程度変位した部位において、前記ラベルをインサート成形する際に前記ラベルを吸引によって保持していた跡が形成されていることを特徴とする運搬補助具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−67077(P2013−67077A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207177(P2011−207177)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(591006944)三甲株式会社 (380)
【Fターム(参考)】