説明

道路標識柱

【課題】電気自動車の充電拠点として、現在、街頭に多数設置されている道路標識柱に着目し、充電拠点として機能し得る道路標識柱を提供する。
【解決手段】円柱状に形成される中心柱10と、この中心柱10の下部に設けられる基台部とを備えた道路標識柱であって、中心柱10の上部に電気自動車へ給電するための充電部が設けられている。好ましくは、充電部には、電気自動車へ給電するための充電コード102を収容するコード収容部103と、このコード収容部103を開閉する開閉カバー100が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中心柱と、この中心柱の下部に設けられる設置部とを備えた道路標識柱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路標識柱(以下、標識柱と称することもある)は、上下車道の中央分離線や、車道と自転車道及び歩行者専用道路との境界線標示用、公園や街路等の車止め仕切り等の標示用として使用されるものである(例えば、下記特許文献1)。
【0003】
一方、ガソリン自動車に代わるものとして、電気自動車が将来的に普及が進んでいくことが予想される。電気自動車は、温室効果ガスを排出せず環境にやさしい、という長所はあるが、充電拠点が少なくインフラ整備が十分ではないという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−168897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、電気自動車の充電拠点として、現在、街頭に多数設置されている道路標識柱に着目し、充電拠点として機能し得る道路標識柱を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明に係る道路標識柱は、
中心柱と、この中心柱の下部に設けられる設置部とを備えた道路標識柱であって、
前記中心柱の上部に電気自動車へ給電するための充電部が設けられていることを特徴とするものである。
【0007】
かかる構成を有する道路標識柱の作用・効果を説明する。この道路標識柱は、中心柱と設置部により構成されているが、中心柱の上部に電気自動車へ給電するための充電部が設けられている。この充電部を利用して電気自動車に備えられている電池を充電させることができる。道路標識柱自体は、それほど配置スペースを必要とせず、街中や道路周辺のいろいろな場所に設置されており、充電拠点として好適である。このように、充電部を備えさせることで、充電拠点として機能し得る道路標識柱を提供することができる。
【0008】
本発明に係る前記充電部には、電気自動車へ給電するための充電コードを収容するコード収容部と、このコード収容部を開閉する開閉カバーが設けられていることが好ましい。
【0009】
充電部に充電コードを収容させておき、給電するときは、開閉カバーを開けて、コード収容部から充電コードを引き出して、電気自動車の充電端子に接続すればよい。このように簡単な操作により、電気自動車へ給電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】道路標識柱の外観を示す図
【図2】中心柱の上部の内部構成を示す断面図
【図3】電気自動車に充電する時の様子を示す図
【図4】道路標識柱の下部の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る道路標識柱の好適な実施形態を図面を用いて説明する。図1は、道路標識柱の外観を示す図である。
【0012】
<道路標識柱の構成>
図1は、本発明の道路標識柱の好適な実施形態を例示した外観構成図である。道路標識柱1は、円柱状の中心柱10、略円錐台状の基台部20(設置部に相当)から構成されており、中心柱10は基台部20の中央部に立設されている。中心柱10の上部には、反射シート14(反射部に相当)が巻回装着されており、夜間の視認性を高めている。中心柱10の断面形状は特に限定されるものではないが、全方向からの視認性と製造の簡便性より円柱状であることが好ましい。
【0013】
本発明に係る道路標識柱は、道路標識柱としての本来の機能に加えて、電気自動車への給電(充電)を行う機能が付加されている。電気自動車に設けられた二次電池を充電するためのインフラ(充電拠点)は、現在においては十分とはいえず、電気自動車の普及には充電拠点を充実させることが必要不可欠である。そこで、本発明は、道路標識柱に着目し、簡易な構成で充電を可能にする充電拠点として構成したものである。
【0014】
中心柱10の上部には、開閉可能な開閉カバー100が一体形成されており、ヒンジ部100a周りに回動可能に構成されている(図1の想像線参照)。図2は、中心柱10の上部の内部構成を示す断面図であり、(a)は開閉カバー100を開いた状態を示し、(b)は開閉カバー100を閉じた状態を示す。開閉カバー100には、係合爪100bが一体成型されており、閉じたときに、中心柱10の内壁面に形成された係合凹部101に係合する。
【0015】
中心柱100の上部には、コード収容部103(充電部に相当)が形成されており、電気自動車へ給電するための充電コード102が収容されている。充電コード102の先端部には充電端子102aが設けられている。コード収容部103を空間的に仕切るための底面壁104が設けられており、その底面壁104に形成された孔104aから、電源コード102bが下方へ引き出される。
【0016】
コード収容部103への充電コード102の収容形態は、例えば、図示のように円筒形の巻き付け体105の外周面に巻きつける形で収容し、先端部の充電端子102aを引き出すと、巻き付け体105が回転して、充電コード102が引き出されていく形態が考えられる。収容形態は、上記に限定されるものではなく、例えば、電気掃除機でコードを巻き取る機構を採用してもよい。例えば、収納ボタンを押すことで、引き出した充電コード102を巻き取る構成を採用することができる。
【0017】
図3は、実際に電気自動車に充電する時の様子を示す図である。充電する時は、道路標識柱1の近くに電気自動車を駐車し、道路標識柱1の開閉カバー100を開いて、充電コード102をコード収容部103から引き出す。そして、充電コード102の充電端子102aを電気自動車の接続端子Aに接続することで充電が行われる。
【0018】
図4は、図1に例示した道路標識柱1の下部の縦断面図であり、中心柱10を基台部20に組み付けた状態を示した図である。中心柱10の内部は中空に形成される。また、中心柱10は、熱可塑性エラストマーにより形成され、容易に弾性変形することができる。基台部20は、円板状部材21と環状部材22とから構成されており、複数本の固定ボルト30により固定して一体化することにより形成されている。
【0019】
中心柱10の下部の外周面には、リング部材12が接着されている。中心柱10の外径とリング部材12の内径は略同一であり、中心柱10の外周面とリング部材12の内周面とは嵌合状態にある。
【0020】
リング部材12は、熱可塑性エラストマーにより形成される。リング部材12、および上述の中心柱10を構成する熱可塑性エラストマー(TPE)としては、公知の熱可塑性エラストマーは特に限定なく使用できる。リング部材12を構成する熱可塑性エラストマーとしては特に限定されないが、衝撃吸収性の観点からポリウレタン系TPE(TPU)が好ましい。
【0021】
中心柱10に使用する熱可塑性エラストマーは、硬度がJIS−A硬度にて98以下であることが好ましく、95以下であることがより好ましい。硬度が高すぎると繰返しの屈曲により破損する場合が生じる。また、リング部材12に使用する熱可塑性エラストマーは、硬度がJIS−D硬度にて75以下であることが好ましく、68前後であることがより好ましい。この硬度によれば、衝撃吸収性を維持しながら、リングの変形を抑制することができる。熱可塑性エラストマーの硬度は、通常JIS−A硬度にて50以上である。
【0022】
また、中心柱10とリング部材12の接着には、例えばウレタン系接着剤が用いられる。
【0023】
基台部20を構成する円板状部材21は、路面等の設置面と反対側の上部に、中心柱10の下端部10aが当接するように構成される。円板状部材21の中心には、道路標識柱1を路面等に固定するためのアンカーボルト40を装着するボルト穴21aを備えている。
【0024】
基台部20を構成する環状部材22は、中央に中心柱10の外周面と略同形状の貫通孔22aを有し、円板状部材21との固定のための固定ボルト30の固定ナット部22bを備えている。環状部材22には、リング部材12と嵌合するリング状の凹部22cが設けられており、凹部22cは、水平方向の係止部22dと垂直方向の嵌合面22eとから構成されている。リング部材12の上部が、係止部22dに係止することで、中心柱10は環状部材22から抜けないように構成されている。また、円板状部材21には電源コード102bを通すための貫通孔21bが形成されている。電源コード102bは不図示の給電設備に接続される。
【0025】
基台部20を構成する円板状部材21および環状部材22は、例えば熱可塑性樹脂により形成されており、公知の熱可塑性樹脂を限定なく使用可能である。
【0026】
本発明の道路標識柱1においては、図4に示されているように、中心柱10の内部に、中空の内部支柱11が配設されていることが好ましい。中心柱10が長い場合において車両の踏みつけによって折れ曲がった場合、上部の重量が大きくて元の形状に復帰できない場合があるが、内部支柱11は、このような場合に中心柱10の原形状復元性を確保する作用を有する。中心柱10の長さが700mm以上の場合に内部支柱11を配設することが好ましい。内部支柱11は中心柱10と同様に円柱状であり、長さは200mm前後であることが好ましい。内部支柱11は下端が円板状部材21に接着されていることが好ましいが、接着せずに円板状部材21に嵌合するだけでもよい。また、内部支柱11に使用する熱可塑性エラストマーも、中心柱10と同様に、硬度がJIS−A硬度にて98以下であることが好ましく、95以下であることがより好ましい。
【0027】
以上のように、道路標識柱1は、内部が中空であって、弾性変形可能な熱可塑性エラストマーからなる中心柱10と内部支柱11により構成され、道路標識柱1の根元部から弾性変形することができる。そして、内部支柱11を設けることで、より大きな復元力を備えることができる。また、根元部から変形できるので、非常時において緊急車両が道路標識柱を乗り越えることができる。
【0028】
さらに、道路標識柱1は、中心柱10の上部に電気自動車へ給電するための充電部が設けられている。この充電部を利用して電気自動車に備えられている電池を充電させることができる。道路標識柱自体は、それほど配置スペースを必要とせず、街中や道路周辺のいろいろな場所に設置されており、充電拠点として好適である。
【0029】
<別実施形態>
本実施形態において、開閉カバー100は、中心柱10と樹脂成型で一体にヒンジ部100aで連結されているが、これに限定されるものではない。また、開閉カバー100を中心柱10とは別部品とし、これをヒンジ機構により開閉可能に連結してもよい。開閉カバー100を中心柱10の上部から取り外し可能なカバーとしてもよい。例えば、開閉カバー100は、ネジにより中心柱10の上部に着脱可能に取り付けてもよい。
【0030】
本実施形態において、中心柱10は円柱状であるがこれに限定されるものではなく、四角柱や任意の断面形状の柱としてもよい。棒状に形成されていればよい。
【0031】
中心柱の設置部の具体的な構成として本実施形態では基台部20をあげたが、本発明に係る設置部が上記に限定されるものではない。例えば、中心柱の内部に設けられるパイプを用いて、アンカーにより基礎(コンクリート等)に固定する構造であってもよく、種々の変形例が考えられる。
【0032】
本実施形態の道路標識柱は、中心柱10の内部に、中空の内部支柱11が配設されおり、全体的に柔軟性を有しているが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、特開2003−41538号公報に開示される構造であってもよい。また、柔軟性がない道路標識柱であってもよく、多数の変形例が考えられる。
【0033】
本実施形態において、道路標識柱1から充電コードを引き出す構成を説明したが、これに限定されるものではない。逆に、電気自動車の方から充電コードを引き出して、道路標識柱1の充電部に設けられたコンセントに充電コードの端子を差し込んで充電するタイプでもよい。
【0034】
本実施形態では、課金システムについては説明していないが、充電量に応じた課金システムを付加させてもよい。例えば、カード決済や携帯端末による決済を行う仕組みを設けてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 道路標識柱
10 中心柱
20 基台部
100 開閉カバー
100a ヒンジ部
100b 係合爪
101 係合凹部
102 充電コード
102a 充電端子
102b 電源コード
103 コード収容部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心柱と、この中心柱の下部に設けられる設置部とを備えた道路標識柱であって、
前記中心柱の上部に電気自動車へ給電するための充電部が設けられていることを特徴とする道路標識柱。
【請求項2】
前記充電部には、電気自動車へ給電するための充電コードを収容するコード収容部と、このコード収容部を開閉する開閉カバーが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の道路標識柱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−117299(P2012−117299A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268455(P2010−268455)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】