遠心送風機
【課題】Nz音を効果的に低減できる遠心送風機を提供する。
【解決手段】遠心送風機51は、回転軸Aの周りに配列された複数の羽根21を有する羽根車23を備えている。複数の羽根21は、形、大きさ及び出口角の少なくとも一つが異なる二種の羽根211,212により構成されている。羽根21の枚数は、奇数である。前記二種の羽根211,212の枚数差は、1である。
【解決手段】遠心送風機51は、回転軸Aの周りに配列された複数の羽根21を有する羽根車23を備えている。複数の羽根21は、形、大きさ及び出口角の少なくとも一つが異なる二種の羽根211,212により構成されている。羽根21の枚数は、奇数である。前記二種の羽根211,212の枚数差は、1である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機用の遠心送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和機の送風機として遠心送風機が用いられている。遠心送風機は、複数の羽根を有する羽根車を備えている。この羽根車がファンモータによって回転すると、空気調和機の内部に空気が吸い込まれる。吸い込まれた空気は、ベルマウスによって羽根車の空気吸込口(シュラウドの空気吸込口)に案内される。この空気吸込口から羽根車内に流入した空気は、羽根同士の隙間を通って羽根車から吹き出される。
【0003】
このような空気調和機においては、回転軸を中心とする複数の羽根の回転に伴う周期的な圧力変化に起因して周期的な騒音(Nz音)が生じる。このNz音は、特に、空気調和機の内部において、遠心送風機の周囲を囲むように配置された熱交換器と羽根とが近接する領域において顕著に生じる。特許文献1には、Nz音を低減するための整流板が設けられた空気調和機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-269738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年、空気調和機では、省エネルギー及び小型化が求められており、遠心送風機と熱交換器との隙間がより小さくなる傾向にある。したがって、従来の対策では、Nz音を必ずしも十分に低減できない場合がある。
【0006】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、Nz音を効果的に低減できる遠心送風機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の遠心送風機は、回転軸(A)の周りに配列された複数の羽根(21)を有する羽根車(23)を備え、前記複数の羽根(21)は、形、大きさ及び出口角の少なくとも一つが異なる二種の羽根(211,212)により構成されており、羽根の枚数(21)が奇数であり、前記二種の羽根(211,212)の枚数差が1である。
【0008】
この構成では、複数の羽根(21)には、形、大きさ及び出口角の少なくとも一つが異なる二種の羽根(211,212)が含まれているので、周期的な圧力変化の発生が抑制され、Nz音が効果的に低減される。また、羽根(21)の枚数が奇数であるので、偶数である場合に比べて圧力変化の周期性をより乱すことができ、Nz音を効果的に低減できる。
【0009】
さらに、この構成では、複数の羽根(21)が二種の羽根(211,212)により構成されており、二種の羽根(211,212)の枚数差が最小値である1に設定されているので、枚数差が2以上である場合に比べて、重量バランスのよい配置設計が容易になる。これにより、羽根車(23)においてアンバランスが生じるのを抑制しやすく、その結果、アンバランスに起因する回転時の振動が抑制される。
【0010】
前記遠心送風機において、前記複数の羽根(21)が前記回転軸(A)の周りに不等ピッチで配列されている場合には、周期性をさらに乱すことができるので、周期的な圧力変化が生じるのをさらに抑制することができる。
【0011】
前記遠心送風機において、羽根(21)の形を異ならせる手段としては、例えば、前記複数の羽根(21)のうち一部の羽根(211)の後縁(62)に、前縁(61)側に向かって凹む凹部(71)を設ける形態が例示できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、Nz音を効果的に低減できる遠心送風機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る遠心送風機を備えた室内機を示す断面図である。
【図2】前記室内機における羽根車、熱交換器及び吹出口の位置関係を示す底面図である。
【図3】前記遠心送風機の羽根車を示す斜視図である。
【図4】(A)は、前記羽根車の第1羽根を示す斜視図であり、(B)は、(A)のIVB−IVB線断面図である。(C)は、前記羽根車の第2羽根を示す斜視図である。
【図5】前記回転軸を含む仮想平面(子午面)に描かれた羽根の形状を説明するための図である。
【図6】前記羽根の後縁の一部を拡大した斜視図である。
【図7】複数の羽根の具体的な配置例について説明するための図である。
【図8】(A)は、本実施形態に係る遠心送風機における空気の流れ及び風速分布を示す概略図であり、(B)は、従来の遠心送風機における空気の流れ及び風速分布を示す概略図である。
【図9】前記羽根車の羽根と前記熱交換器の一部を示す概略図である。
【図10】前記羽根の変形例1を示す図である。
【図11】前記羽根の変形例2を示す図である。
【図12】前記変形例2における複数の羽根の配置例を示す図である。
【図13】複数の羽根が不等ピッチで配列された状態を説明するための図である。
【図14】2つの遠心送風機が設けられた室内機を示す概略図である。
【図15】第2実施形態に係る遠心送風機を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る遠心送風機51及びこれを備えた室内機31について図面を参照して説明する。
【0015】
図1に示すように、室内機31は、天井埋込型のカセット室内機である。この室内機31は、天井35に設けられた開口に埋め込まれる略直方体の筐体33と、筐体33の下部に取り付けられた化粧パネル47とを備えている。化粧パネル47は、平面視の形状が筐体33よりも一回り大きく、天井の開口を覆った状態で室内に露出している。化粧パネル47は、その中央部に設けられた矩形状の吸込グリル39と、この吸込グリル39の各辺に沿って設けられた細長い矩形状の4つの吹出口37とを有している。
【0016】
室内機31は、筐体33内に、遠心送風機(ターボファン)51、ファンモータ11、熱交換器43、ドレンパン45、エアフィルタ41などを備えている。遠心送風機51は、羽根車23とベルマウス25とを含む。ファンモータ11は、筐体33の天板の略中央に固定されている。ファンモータ11のシャフト13は上下方向に延びている。
【0017】
図1及び図2に示すように、熱交換器43は、厚みの小さな扁平な形状を有している。熱交換器43は、その下端部に沿って延設された皿状のドレンパン45から上方に起立した状態で羽根車23の周囲を囲むように配置されている。ドレンパン45は、熱交換器43において生じる水滴を収容する。収容された水は図略の排水経路を通じて排出される。
【0018】
エアフィルタ41は、ベルマウス25の入口を覆う大きさを有し、ベルマウス25と吸込グリル39との間に吸込グリル39に沿って設けられている。エアフィルタ41は、吸込グリル39から筐体33内に吸い込まれた空気がエアフィルタ41を通過する際に空気中の塵埃を捕捉する。
【0019】
図1〜図3に示すように、羽根車23は、ハブ(主板)15と、シュラウド(側板)19と、複数の羽根21とを含む。ハブ15は、ファンモータ11のシャフト13の下端部に固定されている。ハブ15は、平面視で回転軸Aを中心とする円形状を有している。羽根車23は、回転軸Aを中心に回転する。
【0020】
シュラウド19は、ハブ15に対してシャフト13の回転軸A方向の正面側Fに対向配置されている。シュラウド19は、回転軸Aを中心として円形に開口する空気吸込口19aを有している。シュラウド19の外径は、背面側Rに向かうにつれて大きくなっている。
【0021】
図1に示すように、ベルマウス25は、シュラウド19に対して回転軸A方向の正面側Fに対向配置されている。ベルマウス25は、前後方向に貫通する貫通口25aを有している。ベルマウス25の背面側Rの一部は、空気吸込口19aの周縁部19eとの間に所定の隙間を設けた状態で空気吸込口19aからシュラウド19内に挿入されている。これにより、ベルマウス25は、貫通口25aを通じて背面側Rに向かって吸い込まれる空気をシュラウド19の空気吸込口19aに案内することができる。
【0022】
図3に示すように、複数の羽根21は、ハブ15とシュラウド19との間において、回転軸Aの周りに配列されている。羽根21の枚数は、羽根車23の回転時における周期的な圧力変化に起因するNz音を低減する観点から、奇数枚(例えば5枚、7枚、9枚、11枚、13枚など)とするのが好ましい。本実施形態では、羽根21の枚数は7枚である。
【0023】
各羽根21は、ハブ15の半径方向に対して回転方向の反対向き(後ろ向き)に傾斜した後ろ向き羽根である。本実施形態における各羽根21は、ハブ15とシュラウド19の間において捩れながら回転軸A方向に延びる三次元形状を有している。なお、各羽根21は、上記のような捩れを有していないものであってもよい。
【0024】
図3及び図4(A)〜(C)に示すように、各羽根21は、羽根車23において半径方向内側に向く羽根内面21Aと、半径方向外側に向く羽根外面21Bと、羽根車23の回転時における前側の縁である前縁61と、後側の縁である後縁62とを有している。また、各羽根21における正面側Fの端縁21Fは、シュラウド19の内面に接合されている。各羽根21における背面側Rの端縁21Rは、ハブ15の内面に接合されている。
【0025】
複数の羽根21は、周方向に等間隔又は不等間隔に配列されている。羽根車23の回転時における周期的な圧力変化に起因するNz音を低減する観点から、複数の羽根21は、等ピッチではなく不等ピッチで配列されているのが好ましい。ここで、不等ピッチの配列とは、複数の羽根21が回転軸A周りに均等でない角度で配置されていることをいう。図13に示すように、隣り合う羽根21同士の間の中心角は、回転軸Aに直交する平面で複数の羽根21を切った断面において、回転軸Aと一方の羽根21の前縁61とを結ぶ直線と、回転軸Aと他方の羽根21の前縁61とを結ぶ直線とがなす角度θ1〜θ7によりそれぞれ規定することができる。したがって、隣り合ういずれかの羽根21同士の間の中心角が他と異なっている場合に不等ピッチの配列であるということができる。
【0026】
複数の羽根21は、形の異なる二種の羽根21により構成されている。具体的に、複数の羽根21は、複数の第1羽根211と、複数の第2羽根212とにより構成されている。第1羽根211と第2羽根212とは形が異なっている。本実施形態では、第1羽根211は後述する第1凹部71を有している一方で、第2羽根212は第1凹部71を有していない点で両者の形は相違している。
【0027】
第1羽根211の枚数と第2羽根212の枚数との差は最小値である1とされている。第1羽根211の枚数は、羽根21の総数の半分以下であるのが好ましい。図2及び図3に示すように、本実施形態では、複数の羽根21は、3枚の第1羽根211と4枚の第2羽根212により構成されている。そして、周方向において、第1羽根211と第1羽根211との間には、少なくとも1枚の第2羽根212が介在している。
【0028】
図3、図4(A),(B)及び図5に示すように、各第1羽根211の後縁62には、一つの第1凹部71と、複数の第2凹部72とが設けられている。これに対し、図3及び図4(C)に示すように、各第2羽根212の後縁62には、複数の第2凹部72が設けられているが、第1凹部71は設けられていない。
【0029】
第1凹部71は、後縁62におけるハブ15側の領域(空気吸込口19aとは反対側の領域)に設けられている。第1凹部71は、前縁61側に向かって凹んでおり、羽根21の後縁62の一部が切り欠かれたような形状を有している。図4(A)及び図5に示すように、第1凹部71は、円弧状に滑らかに湾曲している。第1凹部71は、ハブ15側の端部711と、最も前縁61側に位置する底部712(前縁61方向の底部712)と、シュラウド19側の端部713とを有している。なお、第1羽根211において、ハブ15から回転軸A方向に少し離れた位置に第1凹部71が設けられているのは、第1羽根211とハブ15との接続面接を確保し、羽根車23の強度を維持するためである。
【0030】
図6に示すように、第1凹部71は、羽根21の羽根内面21Aと羽根外面21Bとをつなぐ凹面を有している。この凹面の幅は、ハブ15側の端部711から底部712又はその近傍まで次第に大きくなり、底部712又はその近傍からシュラウド19側の端部713まで次第に小さくなっている。すなわち、この凹面は、ハブ15側(背面側R)に位置する凹面部71Aと、シュラウド19側(正面側F)に位置する凹面部71Cと、これらの間に位置する凹面部71Bとを含み、この凹面部71Bの幅は、凹面部71Aの幅及び凹面部71Cの幅よりも大きい。
【0031】
ここで、第1凹部71がハブ15側の領域(空気吸込口19aとは反対側の領域)に設けられているとは、次のことを意味する。すなわち、第1凹部71がハブ15側の領域に設けられているとは、図5に示す羽根21の形状において、第1凹部71の底部712が、回転軸A方向における後縁62の長さHの1/2の位置よりもハブ15側に位置していることをいう。なお、ハブ15側の気流の速度をより重点的に低減させるという観点から、第1凹部71の全体が後縁62の長さHの1/2の位置よりもハブ15側に位置しているのがより好ましい。
【0032】
図5について具体的に説明すると次のようになる。図5は、以下のような方法によって回転軸Aを含む仮想平面(子午面)Pに描き出される第1羽根211の形状を表している。まず、回転軸Aを含む任意の平面(仮想平面)Pが一つ決められるとともに、対象となる羽根21が一つ決められる。ついで、回転軸Aを中心に羽根車23を回転させて対象の羽根21が仮想平面Pを通過することを想定する。このとき、羽根21の各部位は、仮想平面P上のいずれかの部位を通過する。図5に示す羽根21の形状は、このようにして羽根21が仮想平面P上を通過した全ての部位により仮想平面P上に描き出される形状である。図5に示す第1羽根211の形状は、第1羽根211の前縁61、後縁62、端縁21F及び端縁21Rの形状を示している。
【0033】
図5に示すように、回転軸A方向において、後縁62の長さHに対する第1凹部71の長さh1の比(h1/H)は、0.25〜0.5の範囲にあるのが好ましく、0.35〜0.46の範囲にあるのがより好ましい。
【0034】
また、図4(B)及び図5に示すように、羽根21の翼弦長Lと、第1凹部71における前縁61に向かう方向の深さCとの比(C/L)は、0.10〜0.30であるのが好ましく、0.15〜0.25であるのがより好ましく、0.15〜0.20であるのがさらに好ましい。比(C/L)が0.10〜0.30の範囲にあることにより、風量の低減を抑制しつつ、Nz音を効果的に低減することができる。
【0035】
なお、第1凹部71の深さCとは、図5において、第1凹部71におけるハブ15側の端部711とシュラウド19側の端部713とを結ぶ直線(仮想直線)と、底部712との距離をいう。また、翼弦長Lとは、回転軸Aに直交し底部712を通る平面で第1羽根211を切ったときの断面において、前縁61と前記仮想直線との距離をいう。
【0036】
さらに、図5に示すように、底部712と第1羽根211におけるハブ15側の端部714との回転軸A方向の距離h2は、後縁62の回転軸A方向の長さHの0.18〜0.28倍の範囲にあるのが好ましい。
【0037】
図5に示す第1凹部71の形状は、仮想平面P内において回転軸Aに直交する直線Sに対して線対称となる形状であるのが好ましい。本実施形態では、仮想平面Pに描かれる第1凹部71の形状は、円弧形状又は円弧形状に近い形状である。仮想平面Pに描かれる第1凹部71の形状は、例えば、楕円弧形状や弓形状などであってもよい。
【0038】
図4(A)、図5及び図6に示すように、第1羽根211に設けられている複数の第2凹部72は、後縁62における第1凹部71よりもシュラウド19側(空気吸込口19a側)の領域に設けられている。各第2凹部72は、前縁61側に向かって凹んでいる。各第2凹部72は、第1凹部71よりも回転軸A方向の長さ及び前縁61方向の深さが小さく、後縁62に沿って鋸歯状に並んでいる。
【0039】
また、図4(C)に示すように、各第2羽根212における複数の第2凹部72は、後縁62のほぼ全体に設けられている。第2羽根212における各第2凹部72は、第1羽根211における各第2凹部72と同様の形及び大きさを有している。
【0040】
次に、複数の羽根21の具体的な配置例について図7及び表1を参照して説明する。表1において、パターン1〜パターン7は、本実施形態における羽根車23の7枚の羽根21の配列例をそれぞれ示している。パターン0は、参考例における羽根車の7枚の羽根の配列例を示している。
【0041】
以下では、パターン1〜パターン7において、7枚の羽根21のうち、3枚が第1羽根211であり、残り4枚が第2羽根212である場合を例に挙げて説明する。また、パターン0では、7枚の羽根21のすべてが第2羽根212であり、各羽根21に第1凹部71は設けられていない。なお、表1の「不釣合量比」とは、パターン0の不釣合量を1としたときに各パターン(パターン1〜7)の不釣合量がパターン0の不釣合量の何倍に相当するかを示したものである。不釣合量とは、次の式で表される量をいう。
【0042】
不釣合い量[mm・g]=偏重心距離[mm]×偏荷重量[g]
【0043】
【表1】
【0044】
パターン0では、7枚の羽根21が不等ピッチで配列されている。これにより、羽根車23の重心は、回転軸Aから径方向に偏心している。
【0045】
次に、パターン1〜7について説明する。パターン1〜7では、図7に示す位置[1]〜[7]の各羽根21は、パターン0と同じ不等ピッチで配列されている。
【0046】
そして、上述したように、パターン1〜7では、7枚の羽根21のうちの3枚が第1羽根211である。パターン1〜7のそれぞれでは、3枚の第1羽根211は、表1に示す3箇所に配置されている。
【0047】
具体的に、パターン1では、表1に示すように、3枚の第1羽根211は、図7における位置[1],[3],[6]の3箇所に配置されている。したがって、残りの4枚の第2羽根212は、上記位置以外の位置[2],[4],[5],[7]に配置されている。パターン2では、3枚の第1羽根211は、図7における位置[2],[4],[7]の3箇所に配置されている。したがって、残りの4枚の第2羽根212は、位置[1],[3],[5],[6]に配置されている。同様に、パターン3〜パターン7についても表1及び図7に示す通りであるので、説明を省略する。
【0048】
表1に示されているように、羽根車23の重心位置は、3枚の第1羽根211の配置によってパターン0に比べて回転軸Aに近づけられることがわかる。すなわち、パターン0において不等ピッチで複数の羽根21を配置することに起因する偏心を、本実施形態における第1羽根211の配置によって抑制することが可能になる。
【0049】
具体的に、パターン3及びパターン6の配置は、パターン0の状態よりも不釣合量比が小さくなって偏心が抑制されており、重量バランスのよい配置(重量モーメント力の合成ベクトルが小さい配置)となっている。これらのパターン3及びパターン6では、不等ピッチに起因する羽根車23のアンバランスを低減できるので、羽根車23の回転時における振動が顕著に抑制される。なお、例えば各羽根21の重量の微調整、ハブ15の厚さの調整などによって羽根車23のアンバランスをさらに低減することもできる。
【0050】
次に、遠心送風機51における空気の流れについて説明する。図8(A)は、本実施形態に係る遠心送風機51における空気の流れ及び風速分布を示す概略図である。遠心送風機51のモータ11が動作して羽根車23が回転すると、図8(A)に示すようにベルマウス25に沿って空気がシュラウド19の空気吸込口19aに案内される。空気吸込口19aに案内された気流は、羽根車23内を回転軸A方向に沿って背面側Rに流れる。この気流は、背面側Rに流れながら次第に半径方向外側に向きを変え、羽根21同士の間から羽根車23の外に吹き出される。
【0051】
図8(B)は、従来の遠心送風機における空気の流れ及び風速分布を示す概略図である。図8(B)に示す従来の遠心送風機においても同様に、空気吸込口19aに案内された気流は、背面側Rに流れながら次第に半径方向外側に向きを変え、羽根121同士の間から羽根車の外に吹き出される。従来の遠心送風機では、羽根121同士の隙間から吹き出される気流の速度は、図8(B)における速度分布V2に矢印で示されているように、シュラウド19側を流れる気流よりもハブ15側を流れる気流の方が大きい傾向にある。
【0052】
一方、本実施形態では、第1羽根211の後縁62におけるハブ15側の領域に、第1凹部71が設けられているので、図8(A)における速度分布V1に示されているように、図8(B)における速度分布V2に比べて、ハブ15側を流れる気流の速度を局所的に低減することができる。これにより、本実施形態では、従来の遠心送風機に比べて最大風速を低減することができる。速度分布V1は、速度分布V2に比べて偏りが抑制されている。言い換えると、ハブ15側を流れる気流の速度と、シュラウド19側を流れる気流の速度との差が小さくなることにより、ハブ15側の圧力と、シュラウド19側の圧力との差が小さくなっている。
【0053】
空気調和機の内部には、遠心送風機51の他に熱交換器43などの種々の構造物が配設されている。したがって、図9に示すように羽根車23が回転方向RDに回転して羽根車23から吹き出される気流は、例えば羽根21(121)の近傍に位置する熱交換器43などの構造物と干渉する。そして、同じ形で同じ大きさの複数の羽根が回転軸A周りに等ピッチで配列されている羽根車の場合には、複数の羽根の回転に伴う周期的な圧力変化に起因して周期的な騒音(Nz音)が生じる。Nz音の発生周波数F[Hz]は、次式で表される。
【0054】
F[Hz]=1/T=NZ/60
T:圧力波形の周期[s]
Z:羽根の枚数[枚]
N:羽根車23の回転数[rpm]
【0055】
このようなNz音は、複数の羽根21を不等ピッチで配列することによって低減される。また、Nz音は、複数の羽根21が形及び大きさの少なくとも一方が異なる二種の羽根(211,212)により構成されており、羽根21の枚数が奇数であることによってより顕著に低減される。本実施形態では、各羽根21の仕事により吹き出される風速の分布をあえて乱すことによってNz音を低減している。
【0056】
また、図8(A)に示す第1羽根211では、第1凹部71が設けられているため、第1羽根211によって得られる風量が減少する傾向にある。仮に、すべての羽根21のうちの多くを第1羽根211が占めることになると、風量を確保するために回転数を上げる必要が生じるため、Nz音の低減効果が十分に得られない場合がある。本実施形態では、第1羽根211と第2羽根212との枚数差を最小値である1にすることにより、風量の低減を小さく抑えつつ、Nz音を効果的に低減することができる。特に、本実施形態では、第1羽根211の枚数を第2羽根212の枚数よりも少なくし、かつ枚数差を1としているので、風量の低減をより小さく抑えつつ、Nz音をより効果的に低減することができる。
【0057】
表2は、7枚の羽根21が3枚の第1羽根211と4枚の第2羽根212により構成された本実施形態に係る遠心送風機51と、7枚の羽根21のすべてが第1羽根211により構成された参考例1の遠心送風機と、7枚の羽根21のすべてが第2羽根212により構成された参考例2の遠心送風機とを比較したものである。
【0058】
表2では、所定の回転数のときのNz音低減効果を示している。Nz音低減効果を示す表2の各値(dB)は、参考例2のNz音から低減された値を示している。すなわち、表2に示すように、本実施形態では、同じ回転数で比較したときに、参考例2に比べてNz音が3.0dB低減している。また、本実施形態は、参考例1に比べてNz音の低減効果が高いことがわかる。
【0059】
【表2】
【0060】
表3は、本実施形態に係る遠心送風機51と、参考例2の遠心送風機とを比較したものである。Nz音低減効果を示す表3の値(dB)は、参考例2のNz音から低減された値を示している。なお、表3のデータは、図14に示すような2つの遠心送風機51が設けられた空気調和機において、両方の遠心送風機51を同時に運転したときのNz音のデータを示している。
【0061】
表3に示すように、本実施形態では、同じ回転数で比較したときに、参考例2に比べてNz音が2.6dB低減している。
【0062】
【表3】
【0063】
以上説明したように、本実施形態では、複数の羽根21には、形が異なる二種の羽根211,212が含まれているので、周期的な圧力変化が生じるのが抑制され、Nz音が低減される。また、羽根21の枚数が奇数であるので、偶数である場合に比べて周期性をより乱すことができる。さらに、複数の羽根21が二種の羽根211,212により構成されており、二種の羽根211,212の枚数差が最小値である1に設定されているので、枚数差が2以上である場合に比べて、重量バランスのよい配置設計が容易になる。これにより、羽根車23においてアンバランスが生じるのを抑制しやすく、その結果、アンバランスに起因する回転時の振動が抑制される。
【0064】
本実施形態では、第1羽根211において、ハブ15側に第1凹部71を設けているので、ハブ15側を流れる気流の速度を局所的に低減することができる。すなわち、風速が高い傾向にあるハブ15側から吹き出される気流の速度が低減されることにより、圧力変化がより効果的に低減されるので、より効果的にNz音が低減される。
【0065】
本実施形態では、羽根21の後縁62におけるハブ15側の領域に、後縁62の長さHに対する凹部71の長さh1の比(h1/H)が0.25〜0.5の範囲にある第1凹部71を設けることにより、効果的に騒音を低減することができる。
【0066】
本実施形態では、羽根21の後縁62に複数の第1凹部71を設けるのではなく単一の第1凹部71を設けることに留めることによって、風量が過度に低減するのを抑制し、羽根車を回転させるモータの回転数の増大を抑制している。
【0067】
本実施形態では、仮想平面Pに描かれる第1凹部71の形状が円弧形状であるので、羽根車の羽根21から外側に送られる空気の風速分布をなだらかに変化させることができる。これにより、騒音低減効果を高めることができる。
【0068】
本実施形態では、羽根21の翼弦長Lに対する第1凹部71における前縁方向の深さCの比(C/L)が0.10〜0.30であることにより、風量の低減を抑制しつつ、Nz音を効果的に低減することができる。
【0069】
本実施形態では、気流の速度が大きい領域に大きな第1凹部71を設けることによって当該領域の気流の速度を低減することによる騒音低減効果に加え、さらに、後縁62において第1凹部71よりも空気吸込口19a側の領域に複数の第2凹部72を設けることにより、次のような効果が得られる。すなわち、羽根21の内面21Aに沿って流れる空気と外面21Bに沿って流れる空気は、複数の第2凹部72においてそれぞれ細分化されるので、これらが後縁62の近傍において合流する際の気流の乱れが抑制される。これにより、羽根21の後縁62の近傍において生じる送風音を低減することができる。
【0070】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。
【0071】
例えば、前記実施形態では、各羽根21の後縁62には、後縁62に沿って鋸歯状に並ぶ複数の第2凹部72が設けられている場合を例示したが、これに限定されない。例えば、図10に示す変形例1のように第1羽根211の後縁62には、第1凹部71が設けられている一方で、第2凹部72は設けられていなくてもよい。第2羽根212についても第2凹部72が設けられていなくてもよい。
【0072】
前記実施形態では、複数の羽根21が回転軸Aの周りに不等ピッチで配列されている場合を例示したが、複数の羽根21が回転軸Aの周りに等ピッチで配列されていてもよい。
【0073】
前記実施形態では、第1凹部71の有無によって第1羽根211と第2羽根212との形を異ならせる場合を例示したが、これに限定されない。形を異ならせる変形例2として、図11及び図12に示すように、前縁61から後縁62までの長さが互いに異なる第1羽根211と第2羽根212を採用することもできる。図12に示すように、複数の羽根21は、前縁61から後縁62までの長さL1を有する複数の第1羽根211と、前縁61から後縁62までの長さL2を有する複数の第2羽根212とを含む。この変形例2では、7枚の羽根21は、4枚の第1羽根211と、3枚の第2羽根212とからなる。長さL2は、長さL1よりも小さい(L2=a×L1)。係数aは、例えば0.5〜0.7程度の範囲にあるのが好ましい。図12では、係数aは、0.6に設定されている。
【0074】
前記実施形態では、複数の羽根21が形の異なる二種の羽根21により構成されている場合を例示したが、複数の羽根21は、同じ形で大きさの異なる二種の羽根により構成されていてもよい。すなわち、二種の羽根は、互いに相似形であってもよい。
【0075】
また、図15に示す第2実施形態に係る遠心送風機では、複数の羽根21は、次のような特徴を有している。すなわち、複数の羽根21は、同じ形、同じ大きさを有している。複数の羽根21は、出口角α(α1,α2)が互いに異なる二種の羽根21を有している。二種の羽根21は、出口角α1を有する複数の第1羽根211と、出口角α2を有する複数の第2羽根212とを有している。具体的に、図15に示す第2実施形態では、二種の羽根21は、合計7枚であり、4枚の第1羽根211と、3枚の第2羽根212とからなる。図15では、出口角α1と出口角α2とは、各羽根21の後縁62におけるハブ15側の端部において比較されている。
【0076】
この第2実施形態のメリットは次の通りである。すなわち、羽根分割式の遠心送風機の場合、同じ形、同じ大きさの複数の羽根(図15の場合、7枚の羽根21)を、例えば図15に示すように出口角αを異ならせるだけでNz音を低減することができる。これにより、異なる形状の羽根を作製する必要がなくなり、コストダウンを図ることができる。前記羽根分割式とは、羽根21とハブ15、羽根21とシュラウド19をレーザー溶着などの接合手段を用いて接合するタイプをいう。
【0077】
なお、この第2実施形態においては、複数の羽根21は、必ずしも同じ形、同じ大きさでなくてもよく、第1実施形態の特徴、各変形例の特徴などを適宜組み合わせてもよい。
【0078】
上記した第1実施形態及びその変形例、並びに第2実施形態においては、複数の羽根21は、形、大きさ及び出口角の少なくとも一つが異なる二種の羽根211,212により構成されている。これにより、上述した方法によって仮想平面P(子午面)に描き出される羽根21の面積を、第1羽根211と第2羽根212との間で異ならせることができる。これにより、二種の羽根21間で仕事量、速度分布、ピーク速度などに差をつけることができるので、Nz音を効果的に低減することができる。
【0079】
前記実施形態では、遠心送風機51を天井埋込型の室内機に適用する場合を例示したが、これに限定されない。本発明の遠心送風機は、天吊り型やエアハンドリングユニット、ルーフトップなどの高所設置型、床置き型などの他のタイプの室内機にも適用できる。
【0080】
前記実施形態では、第1凹部71の全体が後縁62の長さHの1/2の位置よりもハブ15側に位置している場合を例示したが、第1凹部71の一部が後縁62の長さHの1/2の位置よりもシュラウド19側に位置していてもよい。
【0081】
前記実施形態では、各第1羽根211の後縁62に設けられている第1凹部71の個数が一つである場合を例示したが、これに限定されない。各第1羽根211の後縁62には、ハブ15側の領域に複数(例えば2つ)の第1凹部71を設けてもよい。
【0082】
前記実施形態では、仮想平面Pに描かれる第1凹部71の形状は、仮想平面P内において回転軸Aに直交する直線に対して線対称となる形状である場合を例示したが、これに限定されない。例えば、仮想平面Pに描かれる第1凹部71の形状は、仮想平面P内において回転軸Aに交わる直線に対して線対称となる形状であればよい。具体的に、回転軸Aに交わる直線としては、図5において、回転軸Aに直交する直線(図5における水平方向の直線)に対して例えば数度〜十数度程度傾斜した直線が例示できる。また、第1凹部71の形状は、仮想平面P内において回転軸Aに直交する直線に対して線対称でなくてもよい。
【0083】
前記実施形態では、仮想平面Pに描かれる凹部71の形状は、円弧形状である場合を例示したが、これに限定されない。上述したように、仮想平面Pに描かれる凹部71の形状は、楕円弧形状や弓形状などであってもよく、また、直線又は平面の部分を有していてもよい。
【符号の説明】
【0084】
19 シュラウド
19a 空気吸込口
21 羽根
211 第1羽根
212 第2羽根
23 羽根車
25 ベルマウス
31 室内機
51 遠心送風機
61 前縁
62 後縁
71 第1凹部
72 第2凹部
A 回転軸
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機用の遠心送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和機の送風機として遠心送風機が用いられている。遠心送風機は、複数の羽根を有する羽根車を備えている。この羽根車がファンモータによって回転すると、空気調和機の内部に空気が吸い込まれる。吸い込まれた空気は、ベルマウスによって羽根車の空気吸込口(シュラウドの空気吸込口)に案内される。この空気吸込口から羽根車内に流入した空気は、羽根同士の隙間を通って羽根車から吹き出される。
【0003】
このような空気調和機においては、回転軸を中心とする複数の羽根の回転に伴う周期的な圧力変化に起因して周期的な騒音(Nz音)が生じる。このNz音は、特に、空気調和機の内部において、遠心送風機の周囲を囲むように配置された熱交換器と羽根とが近接する領域において顕著に生じる。特許文献1には、Nz音を低減するための整流板が設けられた空気調和機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-269738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年、空気調和機では、省エネルギー及び小型化が求められており、遠心送風機と熱交換器との隙間がより小さくなる傾向にある。したがって、従来の対策では、Nz音を必ずしも十分に低減できない場合がある。
【0006】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、Nz音を効果的に低減できる遠心送風機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の遠心送風機は、回転軸(A)の周りに配列された複数の羽根(21)を有する羽根車(23)を備え、前記複数の羽根(21)は、形、大きさ及び出口角の少なくとも一つが異なる二種の羽根(211,212)により構成されており、羽根の枚数(21)が奇数であり、前記二種の羽根(211,212)の枚数差が1である。
【0008】
この構成では、複数の羽根(21)には、形、大きさ及び出口角の少なくとも一つが異なる二種の羽根(211,212)が含まれているので、周期的な圧力変化の発生が抑制され、Nz音が効果的に低減される。また、羽根(21)の枚数が奇数であるので、偶数である場合に比べて圧力変化の周期性をより乱すことができ、Nz音を効果的に低減できる。
【0009】
さらに、この構成では、複数の羽根(21)が二種の羽根(211,212)により構成されており、二種の羽根(211,212)の枚数差が最小値である1に設定されているので、枚数差が2以上である場合に比べて、重量バランスのよい配置設計が容易になる。これにより、羽根車(23)においてアンバランスが生じるのを抑制しやすく、その結果、アンバランスに起因する回転時の振動が抑制される。
【0010】
前記遠心送風機において、前記複数の羽根(21)が前記回転軸(A)の周りに不等ピッチで配列されている場合には、周期性をさらに乱すことができるので、周期的な圧力変化が生じるのをさらに抑制することができる。
【0011】
前記遠心送風機において、羽根(21)の形を異ならせる手段としては、例えば、前記複数の羽根(21)のうち一部の羽根(211)の後縁(62)に、前縁(61)側に向かって凹む凹部(71)を設ける形態が例示できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、Nz音を効果的に低減できる遠心送風機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る遠心送風機を備えた室内機を示す断面図である。
【図2】前記室内機における羽根車、熱交換器及び吹出口の位置関係を示す底面図である。
【図3】前記遠心送風機の羽根車を示す斜視図である。
【図4】(A)は、前記羽根車の第1羽根を示す斜視図であり、(B)は、(A)のIVB−IVB線断面図である。(C)は、前記羽根車の第2羽根を示す斜視図である。
【図5】前記回転軸を含む仮想平面(子午面)に描かれた羽根の形状を説明するための図である。
【図6】前記羽根の後縁の一部を拡大した斜視図である。
【図7】複数の羽根の具体的な配置例について説明するための図である。
【図8】(A)は、本実施形態に係る遠心送風機における空気の流れ及び風速分布を示す概略図であり、(B)は、従来の遠心送風機における空気の流れ及び風速分布を示す概略図である。
【図9】前記羽根車の羽根と前記熱交換器の一部を示す概略図である。
【図10】前記羽根の変形例1を示す図である。
【図11】前記羽根の変形例2を示す図である。
【図12】前記変形例2における複数の羽根の配置例を示す図である。
【図13】複数の羽根が不等ピッチで配列された状態を説明するための図である。
【図14】2つの遠心送風機が設けられた室内機を示す概略図である。
【図15】第2実施形態に係る遠心送風機を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る遠心送風機51及びこれを備えた室内機31について図面を参照して説明する。
【0015】
図1に示すように、室内機31は、天井埋込型のカセット室内機である。この室内機31は、天井35に設けられた開口に埋め込まれる略直方体の筐体33と、筐体33の下部に取り付けられた化粧パネル47とを備えている。化粧パネル47は、平面視の形状が筐体33よりも一回り大きく、天井の開口を覆った状態で室内に露出している。化粧パネル47は、その中央部に設けられた矩形状の吸込グリル39と、この吸込グリル39の各辺に沿って設けられた細長い矩形状の4つの吹出口37とを有している。
【0016】
室内機31は、筐体33内に、遠心送風機(ターボファン)51、ファンモータ11、熱交換器43、ドレンパン45、エアフィルタ41などを備えている。遠心送風機51は、羽根車23とベルマウス25とを含む。ファンモータ11は、筐体33の天板の略中央に固定されている。ファンモータ11のシャフト13は上下方向に延びている。
【0017】
図1及び図2に示すように、熱交換器43は、厚みの小さな扁平な形状を有している。熱交換器43は、その下端部に沿って延設された皿状のドレンパン45から上方に起立した状態で羽根車23の周囲を囲むように配置されている。ドレンパン45は、熱交換器43において生じる水滴を収容する。収容された水は図略の排水経路を通じて排出される。
【0018】
エアフィルタ41は、ベルマウス25の入口を覆う大きさを有し、ベルマウス25と吸込グリル39との間に吸込グリル39に沿って設けられている。エアフィルタ41は、吸込グリル39から筐体33内に吸い込まれた空気がエアフィルタ41を通過する際に空気中の塵埃を捕捉する。
【0019】
図1〜図3に示すように、羽根車23は、ハブ(主板)15と、シュラウド(側板)19と、複数の羽根21とを含む。ハブ15は、ファンモータ11のシャフト13の下端部に固定されている。ハブ15は、平面視で回転軸Aを中心とする円形状を有している。羽根車23は、回転軸Aを中心に回転する。
【0020】
シュラウド19は、ハブ15に対してシャフト13の回転軸A方向の正面側Fに対向配置されている。シュラウド19は、回転軸Aを中心として円形に開口する空気吸込口19aを有している。シュラウド19の外径は、背面側Rに向かうにつれて大きくなっている。
【0021】
図1に示すように、ベルマウス25は、シュラウド19に対して回転軸A方向の正面側Fに対向配置されている。ベルマウス25は、前後方向に貫通する貫通口25aを有している。ベルマウス25の背面側Rの一部は、空気吸込口19aの周縁部19eとの間に所定の隙間を設けた状態で空気吸込口19aからシュラウド19内に挿入されている。これにより、ベルマウス25は、貫通口25aを通じて背面側Rに向かって吸い込まれる空気をシュラウド19の空気吸込口19aに案内することができる。
【0022】
図3に示すように、複数の羽根21は、ハブ15とシュラウド19との間において、回転軸Aの周りに配列されている。羽根21の枚数は、羽根車23の回転時における周期的な圧力変化に起因するNz音を低減する観点から、奇数枚(例えば5枚、7枚、9枚、11枚、13枚など)とするのが好ましい。本実施形態では、羽根21の枚数は7枚である。
【0023】
各羽根21は、ハブ15の半径方向に対して回転方向の反対向き(後ろ向き)に傾斜した後ろ向き羽根である。本実施形態における各羽根21は、ハブ15とシュラウド19の間において捩れながら回転軸A方向に延びる三次元形状を有している。なお、各羽根21は、上記のような捩れを有していないものであってもよい。
【0024】
図3及び図4(A)〜(C)に示すように、各羽根21は、羽根車23において半径方向内側に向く羽根内面21Aと、半径方向外側に向く羽根外面21Bと、羽根車23の回転時における前側の縁である前縁61と、後側の縁である後縁62とを有している。また、各羽根21における正面側Fの端縁21Fは、シュラウド19の内面に接合されている。各羽根21における背面側Rの端縁21Rは、ハブ15の内面に接合されている。
【0025】
複数の羽根21は、周方向に等間隔又は不等間隔に配列されている。羽根車23の回転時における周期的な圧力変化に起因するNz音を低減する観点から、複数の羽根21は、等ピッチではなく不等ピッチで配列されているのが好ましい。ここで、不等ピッチの配列とは、複数の羽根21が回転軸A周りに均等でない角度で配置されていることをいう。図13に示すように、隣り合う羽根21同士の間の中心角は、回転軸Aに直交する平面で複数の羽根21を切った断面において、回転軸Aと一方の羽根21の前縁61とを結ぶ直線と、回転軸Aと他方の羽根21の前縁61とを結ぶ直線とがなす角度θ1〜θ7によりそれぞれ規定することができる。したがって、隣り合ういずれかの羽根21同士の間の中心角が他と異なっている場合に不等ピッチの配列であるということができる。
【0026】
複数の羽根21は、形の異なる二種の羽根21により構成されている。具体的に、複数の羽根21は、複数の第1羽根211と、複数の第2羽根212とにより構成されている。第1羽根211と第2羽根212とは形が異なっている。本実施形態では、第1羽根211は後述する第1凹部71を有している一方で、第2羽根212は第1凹部71を有していない点で両者の形は相違している。
【0027】
第1羽根211の枚数と第2羽根212の枚数との差は最小値である1とされている。第1羽根211の枚数は、羽根21の総数の半分以下であるのが好ましい。図2及び図3に示すように、本実施形態では、複数の羽根21は、3枚の第1羽根211と4枚の第2羽根212により構成されている。そして、周方向において、第1羽根211と第1羽根211との間には、少なくとも1枚の第2羽根212が介在している。
【0028】
図3、図4(A),(B)及び図5に示すように、各第1羽根211の後縁62には、一つの第1凹部71と、複数の第2凹部72とが設けられている。これに対し、図3及び図4(C)に示すように、各第2羽根212の後縁62には、複数の第2凹部72が設けられているが、第1凹部71は設けられていない。
【0029】
第1凹部71は、後縁62におけるハブ15側の領域(空気吸込口19aとは反対側の領域)に設けられている。第1凹部71は、前縁61側に向かって凹んでおり、羽根21の後縁62の一部が切り欠かれたような形状を有している。図4(A)及び図5に示すように、第1凹部71は、円弧状に滑らかに湾曲している。第1凹部71は、ハブ15側の端部711と、最も前縁61側に位置する底部712(前縁61方向の底部712)と、シュラウド19側の端部713とを有している。なお、第1羽根211において、ハブ15から回転軸A方向に少し離れた位置に第1凹部71が設けられているのは、第1羽根211とハブ15との接続面接を確保し、羽根車23の強度を維持するためである。
【0030】
図6に示すように、第1凹部71は、羽根21の羽根内面21Aと羽根外面21Bとをつなぐ凹面を有している。この凹面の幅は、ハブ15側の端部711から底部712又はその近傍まで次第に大きくなり、底部712又はその近傍からシュラウド19側の端部713まで次第に小さくなっている。すなわち、この凹面は、ハブ15側(背面側R)に位置する凹面部71Aと、シュラウド19側(正面側F)に位置する凹面部71Cと、これらの間に位置する凹面部71Bとを含み、この凹面部71Bの幅は、凹面部71Aの幅及び凹面部71Cの幅よりも大きい。
【0031】
ここで、第1凹部71がハブ15側の領域(空気吸込口19aとは反対側の領域)に設けられているとは、次のことを意味する。すなわち、第1凹部71がハブ15側の領域に設けられているとは、図5に示す羽根21の形状において、第1凹部71の底部712が、回転軸A方向における後縁62の長さHの1/2の位置よりもハブ15側に位置していることをいう。なお、ハブ15側の気流の速度をより重点的に低減させるという観点から、第1凹部71の全体が後縁62の長さHの1/2の位置よりもハブ15側に位置しているのがより好ましい。
【0032】
図5について具体的に説明すると次のようになる。図5は、以下のような方法によって回転軸Aを含む仮想平面(子午面)Pに描き出される第1羽根211の形状を表している。まず、回転軸Aを含む任意の平面(仮想平面)Pが一つ決められるとともに、対象となる羽根21が一つ決められる。ついで、回転軸Aを中心に羽根車23を回転させて対象の羽根21が仮想平面Pを通過することを想定する。このとき、羽根21の各部位は、仮想平面P上のいずれかの部位を通過する。図5に示す羽根21の形状は、このようにして羽根21が仮想平面P上を通過した全ての部位により仮想平面P上に描き出される形状である。図5に示す第1羽根211の形状は、第1羽根211の前縁61、後縁62、端縁21F及び端縁21Rの形状を示している。
【0033】
図5に示すように、回転軸A方向において、後縁62の長さHに対する第1凹部71の長さh1の比(h1/H)は、0.25〜0.5の範囲にあるのが好ましく、0.35〜0.46の範囲にあるのがより好ましい。
【0034】
また、図4(B)及び図5に示すように、羽根21の翼弦長Lと、第1凹部71における前縁61に向かう方向の深さCとの比(C/L)は、0.10〜0.30であるのが好ましく、0.15〜0.25であるのがより好ましく、0.15〜0.20であるのがさらに好ましい。比(C/L)が0.10〜0.30の範囲にあることにより、風量の低減を抑制しつつ、Nz音を効果的に低減することができる。
【0035】
なお、第1凹部71の深さCとは、図5において、第1凹部71におけるハブ15側の端部711とシュラウド19側の端部713とを結ぶ直線(仮想直線)と、底部712との距離をいう。また、翼弦長Lとは、回転軸Aに直交し底部712を通る平面で第1羽根211を切ったときの断面において、前縁61と前記仮想直線との距離をいう。
【0036】
さらに、図5に示すように、底部712と第1羽根211におけるハブ15側の端部714との回転軸A方向の距離h2は、後縁62の回転軸A方向の長さHの0.18〜0.28倍の範囲にあるのが好ましい。
【0037】
図5に示す第1凹部71の形状は、仮想平面P内において回転軸Aに直交する直線Sに対して線対称となる形状であるのが好ましい。本実施形態では、仮想平面Pに描かれる第1凹部71の形状は、円弧形状又は円弧形状に近い形状である。仮想平面Pに描かれる第1凹部71の形状は、例えば、楕円弧形状や弓形状などであってもよい。
【0038】
図4(A)、図5及び図6に示すように、第1羽根211に設けられている複数の第2凹部72は、後縁62における第1凹部71よりもシュラウド19側(空気吸込口19a側)の領域に設けられている。各第2凹部72は、前縁61側に向かって凹んでいる。各第2凹部72は、第1凹部71よりも回転軸A方向の長さ及び前縁61方向の深さが小さく、後縁62に沿って鋸歯状に並んでいる。
【0039】
また、図4(C)に示すように、各第2羽根212における複数の第2凹部72は、後縁62のほぼ全体に設けられている。第2羽根212における各第2凹部72は、第1羽根211における各第2凹部72と同様の形及び大きさを有している。
【0040】
次に、複数の羽根21の具体的な配置例について図7及び表1を参照して説明する。表1において、パターン1〜パターン7は、本実施形態における羽根車23の7枚の羽根21の配列例をそれぞれ示している。パターン0は、参考例における羽根車の7枚の羽根の配列例を示している。
【0041】
以下では、パターン1〜パターン7において、7枚の羽根21のうち、3枚が第1羽根211であり、残り4枚が第2羽根212である場合を例に挙げて説明する。また、パターン0では、7枚の羽根21のすべてが第2羽根212であり、各羽根21に第1凹部71は設けられていない。なお、表1の「不釣合量比」とは、パターン0の不釣合量を1としたときに各パターン(パターン1〜7)の不釣合量がパターン0の不釣合量の何倍に相当するかを示したものである。不釣合量とは、次の式で表される量をいう。
【0042】
不釣合い量[mm・g]=偏重心距離[mm]×偏荷重量[g]
【0043】
【表1】
【0044】
パターン0では、7枚の羽根21が不等ピッチで配列されている。これにより、羽根車23の重心は、回転軸Aから径方向に偏心している。
【0045】
次に、パターン1〜7について説明する。パターン1〜7では、図7に示す位置[1]〜[7]の各羽根21は、パターン0と同じ不等ピッチで配列されている。
【0046】
そして、上述したように、パターン1〜7では、7枚の羽根21のうちの3枚が第1羽根211である。パターン1〜7のそれぞれでは、3枚の第1羽根211は、表1に示す3箇所に配置されている。
【0047】
具体的に、パターン1では、表1に示すように、3枚の第1羽根211は、図7における位置[1],[3],[6]の3箇所に配置されている。したがって、残りの4枚の第2羽根212は、上記位置以外の位置[2],[4],[5],[7]に配置されている。パターン2では、3枚の第1羽根211は、図7における位置[2],[4],[7]の3箇所に配置されている。したがって、残りの4枚の第2羽根212は、位置[1],[3],[5],[6]に配置されている。同様に、パターン3〜パターン7についても表1及び図7に示す通りであるので、説明を省略する。
【0048】
表1に示されているように、羽根車23の重心位置は、3枚の第1羽根211の配置によってパターン0に比べて回転軸Aに近づけられることがわかる。すなわち、パターン0において不等ピッチで複数の羽根21を配置することに起因する偏心を、本実施形態における第1羽根211の配置によって抑制することが可能になる。
【0049】
具体的に、パターン3及びパターン6の配置は、パターン0の状態よりも不釣合量比が小さくなって偏心が抑制されており、重量バランスのよい配置(重量モーメント力の合成ベクトルが小さい配置)となっている。これらのパターン3及びパターン6では、不等ピッチに起因する羽根車23のアンバランスを低減できるので、羽根車23の回転時における振動が顕著に抑制される。なお、例えば各羽根21の重量の微調整、ハブ15の厚さの調整などによって羽根車23のアンバランスをさらに低減することもできる。
【0050】
次に、遠心送風機51における空気の流れについて説明する。図8(A)は、本実施形態に係る遠心送風機51における空気の流れ及び風速分布を示す概略図である。遠心送風機51のモータ11が動作して羽根車23が回転すると、図8(A)に示すようにベルマウス25に沿って空気がシュラウド19の空気吸込口19aに案内される。空気吸込口19aに案内された気流は、羽根車23内を回転軸A方向に沿って背面側Rに流れる。この気流は、背面側Rに流れながら次第に半径方向外側に向きを変え、羽根21同士の間から羽根車23の外に吹き出される。
【0051】
図8(B)は、従来の遠心送風機における空気の流れ及び風速分布を示す概略図である。図8(B)に示す従来の遠心送風機においても同様に、空気吸込口19aに案内された気流は、背面側Rに流れながら次第に半径方向外側に向きを変え、羽根121同士の間から羽根車の外に吹き出される。従来の遠心送風機では、羽根121同士の隙間から吹き出される気流の速度は、図8(B)における速度分布V2に矢印で示されているように、シュラウド19側を流れる気流よりもハブ15側を流れる気流の方が大きい傾向にある。
【0052】
一方、本実施形態では、第1羽根211の後縁62におけるハブ15側の領域に、第1凹部71が設けられているので、図8(A)における速度分布V1に示されているように、図8(B)における速度分布V2に比べて、ハブ15側を流れる気流の速度を局所的に低減することができる。これにより、本実施形態では、従来の遠心送風機に比べて最大風速を低減することができる。速度分布V1は、速度分布V2に比べて偏りが抑制されている。言い換えると、ハブ15側を流れる気流の速度と、シュラウド19側を流れる気流の速度との差が小さくなることにより、ハブ15側の圧力と、シュラウド19側の圧力との差が小さくなっている。
【0053】
空気調和機の内部には、遠心送風機51の他に熱交換器43などの種々の構造物が配設されている。したがって、図9に示すように羽根車23が回転方向RDに回転して羽根車23から吹き出される気流は、例えば羽根21(121)の近傍に位置する熱交換器43などの構造物と干渉する。そして、同じ形で同じ大きさの複数の羽根が回転軸A周りに等ピッチで配列されている羽根車の場合には、複数の羽根の回転に伴う周期的な圧力変化に起因して周期的な騒音(Nz音)が生じる。Nz音の発生周波数F[Hz]は、次式で表される。
【0054】
F[Hz]=1/T=NZ/60
T:圧力波形の周期[s]
Z:羽根の枚数[枚]
N:羽根車23の回転数[rpm]
【0055】
このようなNz音は、複数の羽根21を不等ピッチで配列することによって低減される。また、Nz音は、複数の羽根21が形及び大きさの少なくとも一方が異なる二種の羽根(211,212)により構成されており、羽根21の枚数が奇数であることによってより顕著に低減される。本実施形態では、各羽根21の仕事により吹き出される風速の分布をあえて乱すことによってNz音を低減している。
【0056】
また、図8(A)に示す第1羽根211では、第1凹部71が設けられているため、第1羽根211によって得られる風量が減少する傾向にある。仮に、すべての羽根21のうちの多くを第1羽根211が占めることになると、風量を確保するために回転数を上げる必要が生じるため、Nz音の低減効果が十分に得られない場合がある。本実施形態では、第1羽根211と第2羽根212との枚数差を最小値である1にすることにより、風量の低減を小さく抑えつつ、Nz音を効果的に低減することができる。特に、本実施形態では、第1羽根211の枚数を第2羽根212の枚数よりも少なくし、かつ枚数差を1としているので、風量の低減をより小さく抑えつつ、Nz音をより効果的に低減することができる。
【0057】
表2は、7枚の羽根21が3枚の第1羽根211と4枚の第2羽根212により構成された本実施形態に係る遠心送風機51と、7枚の羽根21のすべてが第1羽根211により構成された参考例1の遠心送風機と、7枚の羽根21のすべてが第2羽根212により構成された参考例2の遠心送風機とを比較したものである。
【0058】
表2では、所定の回転数のときのNz音低減効果を示している。Nz音低減効果を示す表2の各値(dB)は、参考例2のNz音から低減された値を示している。すなわち、表2に示すように、本実施形態では、同じ回転数で比較したときに、参考例2に比べてNz音が3.0dB低減している。また、本実施形態は、参考例1に比べてNz音の低減効果が高いことがわかる。
【0059】
【表2】
【0060】
表3は、本実施形態に係る遠心送風機51と、参考例2の遠心送風機とを比較したものである。Nz音低減効果を示す表3の値(dB)は、参考例2のNz音から低減された値を示している。なお、表3のデータは、図14に示すような2つの遠心送風機51が設けられた空気調和機において、両方の遠心送風機51を同時に運転したときのNz音のデータを示している。
【0061】
表3に示すように、本実施形態では、同じ回転数で比較したときに、参考例2に比べてNz音が2.6dB低減している。
【0062】
【表3】
【0063】
以上説明したように、本実施形態では、複数の羽根21には、形が異なる二種の羽根211,212が含まれているので、周期的な圧力変化が生じるのが抑制され、Nz音が低減される。また、羽根21の枚数が奇数であるので、偶数である場合に比べて周期性をより乱すことができる。さらに、複数の羽根21が二種の羽根211,212により構成されており、二種の羽根211,212の枚数差が最小値である1に設定されているので、枚数差が2以上である場合に比べて、重量バランスのよい配置設計が容易になる。これにより、羽根車23においてアンバランスが生じるのを抑制しやすく、その結果、アンバランスに起因する回転時の振動が抑制される。
【0064】
本実施形態では、第1羽根211において、ハブ15側に第1凹部71を設けているので、ハブ15側を流れる気流の速度を局所的に低減することができる。すなわち、風速が高い傾向にあるハブ15側から吹き出される気流の速度が低減されることにより、圧力変化がより効果的に低減されるので、より効果的にNz音が低減される。
【0065】
本実施形態では、羽根21の後縁62におけるハブ15側の領域に、後縁62の長さHに対する凹部71の長さh1の比(h1/H)が0.25〜0.5の範囲にある第1凹部71を設けることにより、効果的に騒音を低減することができる。
【0066】
本実施形態では、羽根21の後縁62に複数の第1凹部71を設けるのではなく単一の第1凹部71を設けることに留めることによって、風量が過度に低減するのを抑制し、羽根車を回転させるモータの回転数の増大を抑制している。
【0067】
本実施形態では、仮想平面Pに描かれる第1凹部71の形状が円弧形状であるので、羽根車の羽根21から外側に送られる空気の風速分布をなだらかに変化させることができる。これにより、騒音低減効果を高めることができる。
【0068】
本実施形態では、羽根21の翼弦長Lに対する第1凹部71における前縁方向の深さCの比(C/L)が0.10〜0.30であることにより、風量の低減を抑制しつつ、Nz音を効果的に低減することができる。
【0069】
本実施形態では、気流の速度が大きい領域に大きな第1凹部71を設けることによって当該領域の気流の速度を低減することによる騒音低減効果に加え、さらに、後縁62において第1凹部71よりも空気吸込口19a側の領域に複数の第2凹部72を設けることにより、次のような効果が得られる。すなわち、羽根21の内面21Aに沿って流れる空気と外面21Bに沿って流れる空気は、複数の第2凹部72においてそれぞれ細分化されるので、これらが後縁62の近傍において合流する際の気流の乱れが抑制される。これにより、羽根21の後縁62の近傍において生じる送風音を低減することができる。
【0070】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。
【0071】
例えば、前記実施形態では、各羽根21の後縁62には、後縁62に沿って鋸歯状に並ぶ複数の第2凹部72が設けられている場合を例示したが、これに限定されない。例えば、図10に示す変形例1のように第1羽根211の後縁62には、第1凹部71が設けられている一方で、第2凹部72は設けられていなくてもよい。第2羽根212についても第2凹部72が設けられていなくてもよい。
【0072】
前記実施形態では、複数の羽根21が回転軸Aの周りに不等ピッチで配列されている場合を例示したが、複数の羽根21が回転軸Aの周りに等ピッチで配列されていてもよい。
【0073】
前記実施形態では、第1凹部71の有無によって第1羽根211と第2羽根212との形を異ならせる場合を例示したが、これに限定されない。形を異ならせる変形例2として、図11及び図12に示すように、前縁61から後縁62までの長さが互いに異なる第1羽根211と第2羽根212を採用することもできる。図12に示すように、複数の羽根21は、前縁61から後縁62までの長さL1を有する複数の第1羽根211と、前縁61から後縁62までの長さL2を有する複数の第2羽根212とを含む。この変形例2では、7枚の羽根21は、4枚の第1羽根211と、3枚の第2羽根212とからなる。長さL2は、長さL1よりも小さい(L2=a×L1)。係数aは、例えば0.5〜0.7程度の範囲にあるのが好ましい。図12では、係数aは、0.6に設定されている。
【0074】
前記実施形態では、複数の羽根21が形の異なる二種の羽根21により構成されている場合を例示したが、複数の羽根21は、同じ形で大きさの異なる二種の羽根により構成されていてもよい。すなわち、二種の羽根は、互いに相似形であってもよい。
【0075】
また、図15に示す第2実施形態に係る遠心送風機では、複数の羽根21は、次のような特徴を有している。すなわち、複数の羽根21は、同じ形、同じ大きさを有している。複数の羽根21は、出口角α(α1,α2)が互いに異なる二種の羽根21を有している。二種の羽根21は、出口角α1を有する複数の第1羽根211と、出口角α2を有する複数の第2羽根212とを有している。具体的に、図15に示す第2実施形態では、二種の羽根21は、合計7枚であり、4枚の第1羽根211と、3枚の第2羽根212とからなる。図15では、出口角α1と出口角α2とは、各羽根21の後縁62におけるハブ15側の端部において比較されている。
【0076】
この第2実施形態のメリットは次の通りである。すなわち、羽根分割式の遠心送風機の場合、同じ形、同じ大きさの複数の羽根(図15の場合、7枚の羽根21)を、例えば図15に示すように出口角αを異ならせるだけでNz音を低減することができる。これにより、異なる形状の羽根を作製する必要がなくなり、コストダウンを図ることができる。前記羽根分割式とは、羽根21とハブ15、羽根21とシュラウド19をレーザー溶着などの接合手段を用いて接合するタイプをいう。
【0077】
なお、この第2実施形態においては、複数の羽根21は、必ずしも同じ形、同じ大きさでなくてもよく、第1実施形態の特徴、各変形例の特徴などを適宜組み合わせてもよい。
【0078】
上記した第1実施形態及びその変形例、並びに第2実施形態においては、複数の羽根21は、形、大きさ及び出口角の少なくとも一つが異なる二種の羽根211,212により構成されている。これにより、上述した方法によって仮想平面P(子午面)に描き出される羽根21の面積を、第1羽根211と第2羽根212との間で異ならせることができる。これにより、二種の羽根21間で仕事量、速度分布、ピーク速度などに差をつけることができるので、Nz音を効果的に低減することができる。
【0079】
前記実施形態では、遠心送風機51を天井埋込型の室内機に適用する場合を例示したが、これに限定されない。本発明の遠心送風機は、天吊り型やエアハンドリングユニット、ルーフトップなどの高所設置型、床置き型などの他のタイプの室内機にも適用できる。
【0080】
前記実施形態では、第1凹部71の全体が後縁62の長さHの1/2の位置よりもハブ15側に位置している場合を例示したが、第1凹部71の一部が後縁62の長さHの1/2の位置よりもシュラウド19側に位置していてもよい。
【0081】
前記実施形態では、各第1羽根211の後縁62に設けられている第1凹部71の個数が一つである場合を例示したが、これに限定されない。各第1羽根211の後縁62には、ハブ15側の領域に複数(例えば2つ)の第1凹部71を設けてもよい。
【0082】
前記実施形態では、仮想平面Pに描かれる第1凹部71の形状は、仮想平面P内において回転軸Aに直交する直線に対して線対称となる形状である場合を例示したが、これに限定されない。例えば、仮想平面Pに描かれる第1凹部71の形状は、仮想平面P内において回転軸Aに交わる直線に対して線対称となる形状であればよい。具体的に、回転軸Aに交わる直線としては、図5において、回転軸Aに直交する直線(図5における水平方向の直線)に対して例えば数度〜十数度程度傾斜した直線が例示できる。また、第1凹部71の形状は、仮想平面P内において回転軸Aに直交する直線に対して線対称でなくてもよい。
【0083】
前記実施形態では、仮想平面Pに描かれる凹部71の形状は、円弧形状である場合を例示したが、これに限定されない。上述したように、仮想平面Pに描かれる凹部71の形状は、楕円弧形状や弓形状などであってもよく、また、直線又は平面の部分を有していてもよい。
【符号の説明】
【0084】
19 シュラウド
19a 空気吸込口
21 羽根
211 第1羽根
212 第2羽根
23 羽根車
25 ベルマウス
31 室内機
51 遠心送風機
61 前縁
62 後縁
71 第1凹部
72 第2凹部
A 回転軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(A)の周りに配列された複数の羽根(21)を有する羽根車(23)を備え、
前記複数の羽根(21)は、形、大きさ及び出口角の少なくとも一つが異なる二種の羽根(211,212)により構成されており、羽根(21)の枚数が奇数であり、前記二種の羽根(211,212)の枚数差が1である、遠心送風機。
【請求項2】
前記複数の羽根(21)は、前記回転軸(A)の周りに不等ピッチで配列されている、請求項1に記載の遠心送風機。
【請求項3】
前記複数の羽根(21)のうち一部の羽根(211)の後縁(62)には、前縁(61)側に向かって凹む凹部(71)が設けられている、請求項1又は2に記載の遠心送風機。
【請求項1】
回転軸(A)の周りに配列された複数の羽根(21)を有する羽根車(23)を備え、
前記複数の羽根(21)は、形、大きさ及び出口角の少なくとも一つが異なる二種の羽根(211,212)により構成されており、羽根(21)の枚数が奇数であり、前記二種の羽根(211,212)の枚数差が1である、遠心送風機。
【請求項2】
前記複数の羽根(21)は、前記回転軸(A)の周りに不等ピッチで配列されている、請求項1に記載の遠心送風機。
【請求項3】
前記複数の羽根(21)のうち一部の羽根(211)の後縁(62)には、前縁(61)側に向かって凹む凹部(71)が設けられている、請求項1又は2に記載の遠心送風機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−96379(P2013−96379A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242700(P2011−242700)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
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