説明

遮断弁電力供給装置及び遮断システム

【課題】利便性を低下させることなく安全性を向上し且つバックアップ電源の無駄な消費を回避する。
【解決手段】駆動電力供給手段11a1と、停電検出手段14と、バックアップ電源15と、を有する遮断弁電力供給装置10において、前記検出した停電が瞬時停電であるか否かを判定する瞬時停電判定手段11a2と、遮断弁26を遮断駆動させるか否かを設定する設定手段16と、前記瞬時停電ではないと判定したときはバックアップ電源15の遮断電力を遮断弁ユニット20に供給し且つ前記瞬時停電であると判定したときはバックアップ電源15の遮断電力を遮断弁ユニット20に供給しない遮断電力供給制御手段11a3と、を有し、遮断電力供給制御手段11a3が、設定手段16に遮断弁26を遮断させないと設定されているときは、前記瞬時停電ではないと判定しても、バックアップ電源15の遮断電力を遮断弁ユニット20に供給しない手段である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部電源の停電のときに遮断弁を弁閉させるための遮断電力を発生するバックアップ電源を内蔵し、停電のときはその遮断電力によって遮断弁を弁閉させる遮断弁電力供給装置及び当該遮断弁電力供給装置を有する遮断システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1等に示すガス遮断制御装置は、商用電源を電源として動作し、商用電源が供給されてから一定時間後にガス漏れ状態を感知する動作を開始し、ガス漏れ状態を感知している間継続してガス漏れ警報を発するとともに、ガス漏れ検知信号を生成して出力するガス警報器と、ガス供給路に設けられガス遮断命令信号を受けてガス供給路に流れるガスの流れを遮断する遮断弁とともにガス遮断システムを構成するために使用され、ガス警報器から入力するガス漏れ検知信号に基づいてガス遮断命令信号を遮断弁に対して出力して弁閉させ、ガス供給路を流れるガスを遮断駆動させる制御を行うことが知られている。
【0003】
このようなガス遮断制御装置は、停電時のバックアップ用電源(具体的には、大容量のコンデンサーや電池によって実現された24V等の直流電源)を内蔵しており、商用電源に停電を検知した場合に、該バックアップ用電源からの電力によってガス遮断命令信号を遮断弁に対して出力して弁閉させている。
【特許文献1】特開2003−279026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、停電については、大別すると、停電時間の短い瞬時停電とそれ以外の停電との2種類に分類されることが知られている。そして、これまでは瞬時停電の場合、ガスを遮断しなくても安全が確保できると考えられてきたが、安全性の向上を考慮すると、瞬時停電のときもガスを遮断するのが望ましい。しかしながら、その遮断には上述したバックアップ用電源の電力によって遮断弁を駆動させる必要があるため、瞬時停電が頻発する環境下ではバックアップ電源を無駄に消費してしまうという問題があった。特に、遮断弁がモータ駆動方式の場合はソレノイド方式よりも駆動に要する駆動時間が長いため、その分バックアップ用電源を消費することになり、容量の大きなバックアップ用電源を内蔵する必要があり、コストアップの問題が生じてしまう。
【0005】
また、瞬時停電の検知の度に遮断弁を弁閉させる場合、ガス供給設備におけるガスの流れも遮断されることから、業務用などのガス供給設備では業務に支障を来すため、利便性を低下させてしまうという問題が生じていた。
【0006】
よって本発明は、上述した問題点に鑑み、利便性を低下させることなく安全性を向上し且つバックアップ電源の無駄な消費を回避することができる遮断弁電力供給装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項1記載の遮断弁電力供給装置は、図1の基本構成図に示すように、遮断弁26を駆動する駆動手段25を有する遮断弁ユニット20と電気的に接続され且つ前記遮断弁ユニット20の遮断弁26を駆動させるために外部電源2からの電力を供給する駆動電力供給手段11a1と、前記外部電源2の停電を検出する停電検出手段14と、前記停電検出手段14による停電の検出に応じて前記遮断弁26を遮断駆動させるための遮断電力を発生するバックアップ電源15と、を有する遮断弁電力供給装置10において、前記停電検出手段14が検出した停電が瞬間的な瞬時停電であるか否かを判定する瞬時停電判定手段11a2と、前記遮断弁ユニット20の遮断弁26を遮断駆動させるか否かを設定する設定手段16と、前記瞬時停電判定手段11a2が瞬時停電ではないと判定したときは前記バックアップ電源15の遮断電力を前記遮断弁ユニット20に供給し且つ前記瞬時停電判定手段11a2が瞬時停電であると判定したときは前記バックアップ電源15の遮断電力を前記遮断弁ユニット20に供給しない遮断電力供給制御手段11a3と、を有し、前記遮断電力供給制御手段11a3が、前記設定手段16に遮断弁26を遮断させないと設定されているときは、前記瞬時停電判定手段11a2が瞬時停電ではないと判定しても、前記バックアップ電源15の遮断電力を前記遮断弁ユニット20に供給しない手段であることを特徴とする。
【0008】
上記請求項1に記載した本発明の遮断弁電力供給装置によれば、停電検出手段14によって外部電源2の停電が検出されると、その電力供給の状態を継続して監視して該停電が瞬時停電であるか否かが瞬時停電判定手段11a2によって判定される。そして、遮断弁26を遮断駆動させると設定手段16に設定されている場合、瞬時停電判定手段11a2によって瞬時停電ではないと判定されたときは、遮断電力供給制御手段11a3によってバックアップ電源15の遮断電力が遮断弁ユニット20に供給されることで、遮断弁26によって遮断される。また、瞬時停電判定手段11a2によって瞬時停電であると判定されたときは、遮断電力供給制御手段11a3によってバックアップ電源15の遮断電力は遮断弁ユニット20には供給されず、遮断弁26が開放されたままとなる。さらに、遮断弁26を遮断させないと設定手段16に設定されている場合、瞬時停電判定手段11a2によって瞬時停電ではないと判定されたときは、遮断電力供給制御手段11a3によってバックアップ電源15の遮断電力は遮断弁ユニット20には供給されず、遮断弁26が開放されたままとなる。
【0009】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項2記載の遮断システムは、図1の基本構成図に示すように、請求項1記載の遮断弁電力供給装置10と、電源線3によって接続された前記遮断弁電力供給装置10からの電力によって駆動する遮断弁ユニット20と、を有することを特徴とする。
【0010】
上記請求項2に記載した本発明の遮断システムによれば、遮断弁ユニット20は遮断弁電力供給装置10から供給される外部電源2からの電力によって動作する。そして、遮断弁電力供給装置10は外部電源2の停電を検出すると、当該停電が瞬時停電か否かを判定し、瞬時停電ではない場合はバックアップ電源15の電力を遮断電力として遮断弁ユニット20に供給する。これにより、遮断弁ユニット20は遮断電力によって駆動手段27が遮断弁26を遮断駆動させる。また、遮断弁電力供給装置10は、設定手段16に遮断弁26を遮断させないと設定されている場合、バックアップ電源15の遮断電力は遮断弁ユニット20には供給されず、遮断弁26が開放されたままとなる。
【0011】
請求項3記載の発明は、図1の基本構成図に示すように、請求項2に記載の遮断システムにおいて、前記遮断弁ユニット20が、前記遮断弁電力供給装置10との間で通信を行うユニット側通信手段23と、前記遮断弁電力供給装置10からの電力供給の停止を検出する供給停止検出手段24と、前記供給停止検出手段24による停止の検出に応じて、前記ユニット側通信手段23を介して停電情報を前記遮断弁電力供給装置10に送信する停電情報送信手段21aと、を有し、前記遮断弁電力供給装置10が、前記ユニット側通信手段23との間で通信を行う装置側通信手段13と、前記装置側通信手段13が受信した前記停電情報と前記停電検出手段14の検出状態とに基づいて、電源系の異常箇所を推測する異常箇所推測手段11a4と、前記異常箇所推測手段11a4が推測した異常箇所を通知する通知手段11a5と、を有することを特徴とする。
【0012】
上記請求項3に記載した本発明の遮断システムによれば、遮断弁ユニット20は供給停止検出手段24によって遮断弁電力供給装置10からの電力供給の停止を検出すると、停電情報送信手段21aによってユニット側通信手段23を介して停電情報を遮断弁電力供給装置10に送信する。そして、遮断弁電力供給装置10は、停電を検出していない状態でその停電情報を受信すると、異常箇所推測手段11a4によって停電情報と停電検出手段14の検出状態とに基づいて電源線3、電力供給手段11、バックアップ電源15等の電源系の異常箇所を推測し、その異常箇所を通知手段11a5によって通知する。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように請求項1,2に記載した本発明によれば、遮断弁電力供給装置が停電を検出したときに遮断弁に遮断電力を供給するか否かを設定手段で設定できるようにしたことから、瞬時停電であるか否かを判定したときに遮断弁ユニットの遮断弁を駆動させることができるため、安全性の向上を図ることができる。しかも、瞬時停電が頻発する場合は、瞬時停電の検出に応じた遮断弁の駆動を停止させることができるので、遮断弁電力供給装置におけるバックアップ電源の電力を無駄に消費することを防止できる。従って、利便性を低下させることなく安全性を向上し且つバックアップ電源の無駄な消費を回避することができる遮断弁電力供給装置及び遮断システムを提供できる。
【0014】
請求項3に記載した本発明によれば、上述した効果に加え、遮断弁ユニットが遮断弁電力供給装置からの電力が断たれたことを検出したときに、停電情報を遮断弁電力供給装置に送信し、遮断弁電力供給装置がその停電情報の受信に応じて電源系の異常箇所を推測して通知するようにしたことから、電源系の異常箇所を速やかに修理することができるため、瞬時停電ではないとの判定に応じて確実に遮断弁を遮断駆動させることができ、安全性をより一層向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る遮断弁電力供給装置を有する遮断システムをガス保安システムに適用する場合の一実施形態を、図1〜図5の図面を参照して以下に説明する。
【0016】
図2において、ガス保安システム1は、図1に示す遮断システムに相当し、宅内等に設けられる操作装置10と、ガス供給路の配管5に組み込まれ且つ操作装置10の制御等によって配管5を遮断する遮断弁ユニット20と、を有して構成している。そして、操作装置10は、外部電源2及び遮断弁ユニット20と電気的に接続されており、当該外部電源2から供給される電力によって動作すると共に、その電力を遮断弁ユニット20に供給している。
【0017】
なお、本実施形態では、操作装置10を本発明の遮断弁電力供給装置として機能させる場合について説明するが、本発明はこれに限定するものではなく、遮断弁ユニット20で実現する、操作装置10とは別の専用の装置としてシステムに組み込むなど種々異なる実施形態とすることができる。また、外部電源2が、商用電源の場合について説明するが、実施形態に応じたバッテリー置等の各種電源を用いることができる。
【0018】
操作装置10は、図1に示す請求項中の遮断弁電力供給装置に相当し、予め定められたプログラムに従って動作するマイクロプロセッサ(MPU)11を有している。MPU11は、周知のように、予め定めたプログラムに従って各種の処理や制御などを行う中央演算処理装置(CPU)11a、CPU11aのためのプログラム等を格納した読み出し専用のメモリであるROM11b、各種のデータを格納するとともにCPU11aの処理作業に必要なエリアを有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM11c等を有して構成している。
【0019】
ROM11bは、CPU11aを図1に示す請求項中の駆動電力供給手段11a1、瞬時停電判定手段11a2、遮断電力供給制御手段11a3、異常箇所推測手段11a4、及び、通知手段11a5として機能させるための停電時電力供給処理プログラム等の各種プログラムを記憶している。そして、CPU11aが停電時電力供給処理プログラムを実行することで、上述した瞬時停電判定手段11a2、遮断電力供給制御手段11a3、異常箇所推測手段11a4、及び、通知手段11a5として機能することになる。
【0020】
操作装置10はさらに、メモリ部12と、通信部13と、停電検出部14、バックアップ電源15、設定部16、表示部17と、操作部18と、を有しており、MPU11と電気的に接続されている。
【0021】
メモリ部12は、電力供給が断たれた場合でも、格納された各種データの保持が可能であり、CPU11aの処理作業に必要な各種格納エリアを有する電気的消去/書き換え可能なメモリ(EEPROM)等が用いられる。このメモリ部12には、瞬時停電と判定するための判定条件情報等の各種情報を記憶する。
【0022】
通信部13は、電源線3と信号線4とを有するケーブルと電気的に接続されると共に、MPU11と電気的に接続されている。通信部13は、前記電源線3を介して遮断弁ユニット20に、MPU11を介した外部電源2又はバックアップ電源15からの電力を供給する。通信部13は、前記信号線4を介してMPU11から入力される各種電文を示す信号を遮断弁ユニット20に送信すると共に、前記信号線4を介して遮断弁ユニット20から受信した信号が示す電文をMPU11に出力する。
【0023】
停電検出部14は、図1に示す請求項中の停電検出手段に相当し、トランジスタ、フォトカプラ、リレー等が任意に用いられ、本実施形態では、トランジスタを用いた場合について説明する。そして、停電検出部14は、図3に示すように、トランジスタ14aのベースに外部電源2が抵抗R1を介して電気的に接続され、コレクタにバックアップ電源15がプルアップ抵抗R2を介して電気的に接続され、エミッタは回路のグランドに接続されている。また、停電検出部14のコレクタとプルアップ抵抗R2との間には、MPU11の停電検出ポート11eが電気的に接続されている。
【0024】
停電検出部14は、外部電源2からの電力供給がある場合、当該電力はトランス等で適切な電圧まで落とされてベースに印加される。また、バックアップ電源15が充電される。よって、外部電源2から電力が供給されている通常時は、トランジスタ14aがONしてMPU11の停電検出ポート11eがLO状態となる。
【0025】
また、停電検出部14は、停電時に外部電源2からの電力供給が断たれた場合、ベースの電圧が0Vになり、トランジスタ14aはOFFして、プルアップ抵抗R2によって停電検出ポート11eがLO状態からHI状態に変化する。このように停電検出部14を構成することで、MPU11は停電検出ポート11eの状態変化によって停電発生状況が判断できるようになっている。そして、MPU11は、停電を検出した後、該停電が0.1秒から2秒程度の瞬時停電であるか否かを判別するために、予め定められた監視時間である5秒間にわたって停電検出部14の状態を監視する。
【0026】
バックアップ電源15は、図1に示す請求項中のバックアップ電源に相当し、大容量のコンデンサーや電池によって実現された直流電源となっている。バックアップ電源15は、例えば100秒などの停電時にMPU11を動作させるのに必要な電力を考慮した容量となっている。MPU11は、そのバックアップ電力によって停電時に遮断弁ユニット20に対して遮断要求信号を送信する。
【0027】
設定部16は、図1に示す請求項中の設定手段に相当し、MPU11が瞬時停電であると判定したときに前記遮断弁ユニット20の遮断弁26を遮断駆動させるか否かが作業者等によって設定される。設定部16は、操作装置10のケース本体で隠され且つ作業者によってのみ操作が可能な設定用のディップスイッチを有している。設定部16は、前記ディップスイッチが操作装置10の設置時等に作業者等によって設定され、MPU11によってディップスイッチの設定状態(ON/OFF等)が検出される。なお、前記設定手段としては、ジャンパーの有無等で実現するなど種々異なる実施形態とすることができる。
【0028】
表示部17は、MPU11と電気的に接続されており、MPU11からの要求に応じて表示が可能な構成となっている。表示部17は、図示しないが、停電検知、故障検知、ガス使用可、ガス停止中等の各々に対応したLEDの点灯によって表示状態となり、LEDの消灯によって非表示状態となる。
【0029】
操作部18は、MPU11と電気的に接続されており、後述する遮断弁26の弁閉/弁開を要求するための遮断弁開閉スイッチを有している。そして、MPU11は、その操作に応じて遮断要求信号/開放要求を遮断弁ユニット20に送信する。
【0030】
上述した構成の操作装置10のCPU11aは、外部電源2からの電力供給によって起動されると、所定のプログラムを実行することで、その電力の一部を通信部13の電源線3を介して遮断弁ユニット20に供給する。これにより、遮断弁ユニット20は起動されて動作可能状態となる。よって、本実施形態では、CPU11aが、図1に示す請求項中のステップS17が駆動電力供給手段11a1として機能する場合について説明するが、本発明はこれに限定するものではなく、例えばMPU11とは別体の電力制御回路等を用いて電力を供給するなど種々異なる実施形態とすることができる。
【0031】
次に、上述したCPU11aが実行する停電時制御処理の一例を、図4に示すフローチャートを参照して以下に説明する。
【0032】
CPU11aによってROM11bの停電時電力供給処理プログラムが実行されると、ステップS11において、通信部13を介して遮断弁ユニット20から停電情報を受信したか否かが判定される。停電情報を受信していないと判定された場合(S11でN)、この判定処理を繰り返すことで、停電情報の受信を待つ。一方、停電情報を受信していると判定された場合(S11でY)、ステップS12に進む。
【0033】
ステップS12において、停電検出部14に接続された停電検出ポート11eの状態を参照して、外部電源2が停電中であるか否かが判定される。停電中であると判定された場合(S12でY)、ステップS13において、設定部16の設定状態がONであるか否かが判定される。設定状態がONであると判定された場合(S13でY)、ステップS14に進む。
【0034】
ステップS14において、タイマー等を用いて外部電源2の停電を検出してから5秒が経過したか否かが判定される。なお、前記5秒は、瞬時停電を判定するために任意に設定される上述した監視時間の値となっている。そして、5秒が経過していると判定された場合(S14でY)、ステップS17に進む。一方、5秒が経過していないと判定された場合(S14でN)、ステップS15に進む。
【0035】
ステップS15において、停電検出部14に接続された停電検出ポート11eの状態を参照して、外部電源2が復電したか否かが判定される。復電していると判定された場合(S15でY)、処理を終了する。一方、復電していないと判定された場合(S15でN)、ステップS16において、通信部13や図示しない接続端子等を介して外部から遮断要求信号が入力されたか否かが判定される。遮断要求信号の入力なしと判定された場合(S16でN)、ステップS14に戻り、一連の処理が繰り返される。一方、遮断要求信号の入力ありと判定された場合(S16でY)、ステップS17に進む。
【0036】
ステップS17において、通信部13の電源線3を介してバックアップ電源15の電力を遮断電力として遮断弁ユニット20に供給されるとともに、遮断命令が通信部13の信号線を介して遮断弁ユニット20に送信され、ステップS18において、通信部13の信号線を参照して、遮断弁ユニット20から遮断完了情報を受信したか否かが判定される。遮断完了情報を受信したと判定された場合(S18でY)、ステップS19において、電源線3を介したバックアップ電源15からの遮断電力の供給が停止され、ステップS20において、復電後、遮断弁26の弁閉状態の表示が表示部17に要求されることで、表示部17に「ガス停止中」を表示させ、その後処理を終了する。
【0037】
また、ステップS18で遮断完了情報を受信していないと判定された場合(S18でN)、ステップS21において、遮断電力の供給を開始してから遮断弁26の予め定められた遮断完了時間が経過したか否かが判定される。経過していないと判定された場合(S21でN)、ステップS18に戻り、一連の処理が繰り返される。一方、遮断完了時間が経過したと判定された場合(S21でY)、ステップS22において、通信部13の電源線3を介したバックアップ電源15からの遮断電力が停止され、ステップS23において、復電後、遮断弁26の故障の表示が表示部17に要求されることで、表示部17に「故障検知」を表示させ、その後処理を終了する。
【0038】
また、ステップS13で設定部16の設定状態がONではない、つまりOFFであると判定された場合(S13でN)、ステップS23において、通信部13や図示しない接続端子等を介して外部から遮断要求信号が入力されたか否かが判定される。遮断要求信号の入力ありと判定された場合(S23でY)、上記ステップS17に進む。一方、遮断要求信号の入力なしと判定された場合(S23でN)、ステップS24に進む。
【0039】
ステップS24において、遮断要求信号の監視時間を示す所定時間が経過したか否かが判定される。所定時間が経過したと判定された場合(S24でY)、ステップS25において、遮断要求信号の監視が停止され、その後処理を終了する。一方、ステップS24において、所定時間が経過していないと判定された場合(S24でN)、ステップS26において、停電検出部14に接続された停電検出ポート11eの状態を参照して、外部電源2が復電したか否かが判定される。復電していると判定された場合(S26でY)、処理を終了する。一方、復電していないと判定された場合(S26でN)、ステップS23に戻り、一連の処理が繰り返される。
【0040】
また、ステップS12で停電中でないと判定された場合(S12でN)、ステップS27において、上記駆動電力供給手段11a1に相当する電源系等の故障を検知しているか否かが判定される。電源故障を検知していると判定された場合(S27でY)、ステップS28において、電源故障の表示が表示部17に要求されることで、表示部17に「故障検知」を表示させ、その後処理を終了する。一方、電源故障を検知していないと判定された場合(S27でN)、ステップS29において、電源線断線の表示が表示部17に要求されることで、表示部17に「電源線断線」を表示させ、その後処理を終了する。
【0041】
以上説明したように、CPU11aは図4に示す停電時電力供給処理を実行することで、CPU14aが図1に示す請求項中の瞬時停電判定手段11a2、遮断電力供給制御手段11a3、異常箇所推測手段11a4、及び、通知手段11a5として機能することになる。そして、図4中のステップS14が瞬時停電判定手段11a2、ステップS13〜S22の一連の処理が遮断電力供給制御手段11a3、ステップS11〜S12及びステップS27が異常箇所推測手段11a4、ステップS28及びS29が通知手段11a5に相当している。
【0042】
次に、上述した操作装置10から供給される電力によって動作する遮断弁ユニット20の概略構成の一例を、図2の図面を参照して以下に説明する。
【0043】
遮断弁ユニット20は、上述した操作装置10から電源線3等を介して供給された電力によって駆動され、予め定められたプログラムに従って動作するマイクロプロセッサ(MPU)21と、メモリ部22と、通信部23と、停電検出回路24と、バックアップ電源25と、遮断弁26と、駆動部27と、を有して構成しており、それらは電気的に接続されている。
【0044】
MPU21は、上述したように、CPU21aとROM21bとRAM21cとを有している。ROM21bは、CPU21aを図1に示す請求項中の停電情報送信手段として機能させ且つ停電検出時の処理を行うための停電時駆動処理プログラム等を記憶している。そして、CPU21aが停電時駆動処理プログラムを実行することで、上述した停電情報送信手段として機能することになる。また、メモリ部22は、EEPROM等が用いられ、操作装置10から受信した各種情報を記憶する。
【0045】
通信部23は、上述した電源線3と信号線4と電気的に接続されると共に、MPU21と電気的に接続されている。通信部23は、前記電源線3を介して操作装置10から外部電源2又はバックアップ電源15からの電力が供給され、その電力をMPU21に出力することで、MPU21が動作する構成となっている。通信部23は、前記信号線4を介してMPU21から入力される各種電文を示す信号を操作装置10に送信すると共に、前記信号線4を介して操作装置10から受信した信号が示す電文をMPU21に出力する。
【0046】
停電検出部24は、図1に示す請求項中の供給停止手段24に相当し、トランジスタ、フォトカプラ、リレー等が任意に用いられ、本実施形態では、トランジスタを用いた場合について説明する。なお、停電検出部24は、上述した操作装置10の停電検出部14と同一の構成となっているため、詳細な説明は省略するが、トランジスタのベースが通信部23の電源線3と電気的に接続され、MPU21との接続形態は同一となる。停電検出部24は、操作装置10からの電力供給の停止を停電として検出している。
【0047】
バックアップ電源25は、大容量のコンデンサーや電池によって実現された直流電源となっている。バックアップ電源25は、モータ駆動方式の遮断弁26を遮断駆動させるなど、停電時に所定の時間にわたってMPU21を動作させるのに必要な電力を考慮した十分な容量となっている。なお、通常は操作装置10から供給される電力で充電される。
【0048】
遮断弁26は、駆動部27を介してMPU21に電気的に接続されており、モータ駆動方式遮断弁、ソレノイド方式遮断弁等が任意に用いられる。本実施形態では、遮断弁24としてモータ駆動方式遮断弁を用いる場合について説明する。そして、遮断弁24は、MPU21によって弁閉されると、配管5におけるガスの供給を遮断し、また、弁開されると、配管5におけるガスの供給を可能とする。駆動部27は、図1に示す請求項中の駆動手段27に相当し、MPU21からの弁閉要求に応じて遮断弁26に弁閉駆動信号を出力し、または、弁開要求に応じて遮断弁26に弁開駆動信号を出力することで、遮断弁26が回動される。
【0049】
次に、CPU21aが実行する停電時駆動処理の一例を、図5に示すフローチャートを参照して以下に説明する。
【0050】
CPU21aによってROM21bの停電時駆動処理プログラムが実行されると、ステップT51において、停電検出部24に接続された各ポートの状態を参照して、停電が発生しているか否かが判定される。停電が発生していないと判定された場合(T51でN)、この判定処理を繰り返すことで、停電の発生が監視される。一方、停電が発生していると判定された、つまり操作装置10から電力が供給されていない場合(T51でY)、ステップT52に進む。
【0051】
ステップT52において、停電の発生を示す停電情報の送信が通信部23に要求されることで、該停電情報が通信部23の信号線を介して操作装置10に送信され、ステップT53において、通信部の信号線を介して操作装置10から遮断命令を受信したか否かが判定される。受信していないと判定された場合(T53でN)、この判定処理を繰り返すことで、遮断命令の監視が継続される。一方、遮断命令を受信したと判定された場合(T53でY)、ステップT54に進む。
【0052】
ステップT54において、通信部23の電源線3を介して供給された遮断電力が駆動部27に供給されると共に、弁閉が要求されることで、駆動部27によって遮断弁26が弁閉位置まで駆動され、ステップT55において、遮断弁26の回動位置、駆動時間等に基づいて、遮断弁26の遮断が完了したか否かが判定される。遮断が完了したと判定された場合(T55でN)、ステップT56において、遮断の完了を示す遮断完了情報の送信が通信部23に要求されることで、該遮断完了情報が通信部23の信号線を介して操作装置10に送信され、その後処理を終了する。
【0053】
また、ステップT55で遮断が完了していないと判定された場合(T55でN)、ステップT57において、タイマー、時計IC等によって遮断弁26の駆動を開始してから完了時間が経過したか否かが判定される。完了時間が経過していないと判定された場合(T57でN)、ステップT55に戻り、一連の処理が繰り返される。一方、完了時間が経過していると判定された場合(T57でY)、ステップT58において、駆動部27に停止が要求され、通信部23の電源線3を介して供給された駆動電力の駆動部27への供給が停止されることで、駆動部27の駆動が停止され、その後処理を終了する。このように電力の供給を強制的に停止することで、操作装置15のバックアップ電源15の無駄な消費を防止している。
【0054】
以上説明したように、CPU11aは図5に示す停電時電力供給処理を実行することで、CPU14aが図1に示す請求項中の停電情報送信手段として機能することになる。そして、図5中のステップT52が停電情報送信手段に相当している。
【0055】
次に、上述した構成のガス保安システム1における遮断弁電力供給に相当する操作装置10及び遮断弁ユニット20の動作(作用)の一例を以下に説明する。
【0056】
外部電源2からの電力供給によって起動された操作装置10は、その電力を遮断弁ユニット20に供給すると共に、停電検出部14の状態変化に基づいて外部電源2の瞬時停電及び停電の発生を監視する。そして、操作装置10は、設定部16がON状態に設定されている場合、外部電源2の予め定められた瞬時停電(例えば5秒以内)を検出したときは、遮断弁ユニット20を遮断せず、また、瞬時停電よりも長い停電を検出すると、停電発生時の安全確保のための復旧動作の1つとして、バックアップ電源15の電力を遮断電力として遮断弁ユニット20として供給すると共に、遮断弁ユニット20に遮断命令信号を送信する。これより、遮断弁ユニット20は、遮断弁26を弁閉させることで、ガス供給路を遮断するため、停電によるガス漏れ事故の発生を防止することができる。また、操作装置10は、設定部16がOFF状態に設定されている場合、外部電源2の予め定められた瞬時停電のを検出したとき、及び、瞬時停電でないと判定しても、バックアップ電源15の電力を遮断電力として遮断弁ユニット20として供給しない。
【0057】
従って、操作装置(遮断弁電力供給装置)10が停電を検出したときに遮断弁ユニット20に遮断電力を供給するか否かを設定部16で設定できるようにしたことから、瞬時停電であるか否かを判定したときに遮断弁ユニット20の遮断弁26を駆動させることができるため、安全性の向上を図ることができる。しかも、瞬時停電が頻発する場合は、瞬時停電の検出に応じた遮断弁の駆動を停止させることができるので、操作装置10におけるバックアップ電源15の電力を無駄に消費することを防止できる。従って、利便性を低下させることなく安全性を向上し且つバックアップ電源の無駄な消費を回避することができる操作装置10を有するガス保安システム1を提供できる。
【0058】
また、操作装置10が外部電源2からの電力を遮断弁ユニット20に供給している状態で、遮断弁ユニット20は停電、つまり操作装置10から電力供給が停止したことを検出すると、停電情報を通信線4を介して操作装置10に送信する。そして、操作装置10は、受信した停電情報と前記駆動電力供給手段11a1等の予め定められた確認ポイントを参照して電源系の故障箇所を推測し、その異常箇所を表示部17に表示することで通知する。
【0059】
よって、遮断弁ユニット20が操作装置10からの電力が断たれたことを検出したときに、停電情報を操作装置10に送信し、操作装置10がその停電情報の受信に応じて電源系の異常箇所を推測して通知するようにしたことから、電源系の異常箇所を速やかに修理することができるため、瞬時停電ではないとの判定に応じて確実に遮断弁を遮断駆動させることができ、安全性をより一層向上させることができる。
【0060】
このように上述した実施例は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る遮断弁電力供給装置及び遮断システムの基本構成を示す構成図である。
【図2】本発明を適用したガス保安システムの概略構成を示すシステム構成図である。
【図3】図2中の停電検出部の概略構成の一例を示す構成図である。
【図4】図2中の操作装置のCPUが実行する本発明に係る停電時電力供給処理の一例を示すフローチャートである。
【図5】図2中の遮断弁ユニットのCPUが実行する本発明に係る停電時駆動処理の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0062】
1 遮断システム(ガス保安システム)
2 外部電源
3 電源線
4 信号線
5 配管
10 遮断弁電力供給装置(操作装置)
11a1 駆動電力供給手段(操作装置のCPU)
11a2 瞬時停電判定手段(操作装置のCPU)
11a3 遮断電力供給制御手段(操作装置のCPU)
11a4 異常箇所推測手段(操作装置のCPU)
11a5 通知手段(操作装置のCPU)
13 装置側通信手段
14 停電検出手段
15 バックアップ電源
16 設定手段
20 遮断弁ユニット
21a 停電情報送信手段(遮断弁ユニットのCPU)
23 ユニット側通信手段
26 遮断弁
27 駆動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮断弁を駆動する駆動手段を有する遮断弁ユニットと電気的に接続され且つ前記遮断弁ユニットの遮断弁を駆動させるために外部電源からの電力を供給する駆動電力供給手段と、前記外部電源の停電を検出する停電検出手段と、前記停電検出手段による停電の検出に応じて前記遮断弁を遮断駆動させるための遮断電力を発生するバックアップ電源と、を有する遮断弁電力供給装置において、
前記停電検出手段が検出した停電が瞬間的な瞬時停電であるか否かを判定する瞬時停電判定手段と、
前記遮断弁ユニットの遮断弁を遮断駆動させるか否かを設定する設定手段と、
前記瞬時停電判定手段が瞬時停電ではないと判定したときは前記バックアップ電源の遮断電力を前記遮断弁ユニットに供給し且つ前記瞬時停電判定手段が瞬時停電であると判定したときは前記バックアップ電源の遮断電力を前記遮断弁ユニットに供給しない遮断電力供給制御手段と、
を有し、
前記遮断電力供給制御手段が、前記設定手段に遮断弁を遮断させないと設定されているときは、前記瞬時停電判定手段が瞬時停電ではないと判定しても、前記バックアップ電源の遮断電力を前記遮断弁ユニットに供給しない手段であることを特徴とする遮断弁電力供給装置。
【請求項2】
請求項1記載の遮断弁電力供給装置と、電源線によって接続された前記遮断弁電力供給装置からの電力によって駆動する遮断弁ユニットと、を有することを特徴とする遮断システム。
【請求項3】
前記遮断弁ユニットが、前記遮断弁電力供給装置との間で通信を行うユニット側通信手段と、前記遮断弁電力供給装置からの電力供給の停止を検出する供給停止検出手段と、前記供給停止検出手段による停止の検出に応じて、前記ユニット側通信手段を介して停電情報を前記遮断弁電力供給装置に送信する停電情報送信手段と、を有し、
前記遮断弁電力供給装置が、前記ユニット側通信手段との間で通信を行う装置側通信手段と、前記装置側通信手段が受信した前記停電情報と前記停電検出手段の検出状態とに基づいて、電源系の異常箇所を推測する異常箇所推測手段と、前記異常箇所推測手段が推測した異常箇所を通知する通知手段と、を有することを特徴とする請求項2記載の遮断システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−276006(P2009−276006A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−128600(P2008−128600)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000221834)東邦瓦斯株式会社 (440)
【Fターム(参考)】