説明

部品の固定構造及び電子機器

【課題】樹脂製の部品をネジ等で固定してもクリープが生じず、ネジ弛みを防ぐことができる部品の固定構造を提供する。
【解決手段】樹脂を用いて形成される第1の部品40と、樹脂を用いて形成される第2の部品50と、第1の部品40と第2の部品50とを固定する固定具60とからなる部品の固定構造である。第1の部品40は、樹脂よりも硬質な材料からなる固定部42を備え、第2の部品50には、樹脂よりも硬質な材料からなり、取付孔54が設けられた補強部材52を備え、固定具60は、一端に取付孔54の内径よりも大きい外径の頭部62を備えるとともに、他端に取付孔54の内径よりも小さい外径の定着部61とを備え、固定具60を定着部61側の端部から取付孔54に挿入し、定着部61を固定部42に定着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品の固定構造及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機等の電子機器には、外部からの衝撃を吸収する樹脂の内部に、シールドやグラウンドとして機能する金属製プレートを一体となるようにインサート成形したモールドケースを筐体に用いているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなモールドケースを固定するには、一方のケースにネジのネジ部を挿通させる取付孔を設け、他方のケースにインサートナットを設け、ネジのネジ部を取付孔に挿入した状態でインサートナットに螺合させることで固定する方法がある。
【特許文献1】特開2007−281069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、モールドケースの樹脂部分をネジの頭部とインサートナットとで挟持して固定する場合には、長期間の荷重により変形(クリープ)が生じ、樹脂部分がつぶれてネジ弛みが生ずるおそれがある。
【0005】
本発明の課題は、このような樹脂製の部品をネジ等で固定してもクリープが生じず、ネジ弛みを防ぐことができる部品の固定構造及び電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、樹脂を用いて形成される第1の部品と、樹脂を用いて形成される第2の部品と、第1の部品と第2の部品とを固定する固定具とからなる部品の固定構造であって、第1の部品は、樹脂よりも硬質な材料からなる固定部を備え、第2の部品には、樹脂よりも硬質な材料からなり、取付孔が設けられた補強部材を備え、固定具は、一端に取付孔の内径よりも大きい外径の頭部を備えるとともに、他端に取付孔の内径よりも小さい外径の定着部とを備え、固定具を定着部側の端部から取付孔に挿入し、定着部を固定部に定着させることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の部品の固定構造であって、前記補強部材は、第2の部品と一体成型された金属板であることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の部品の固定構造であって、前記固定具は、ネジであることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の部品の固定構造であって、前記固定部は、金属製のインサートナットであることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の部品の固定構造であって、前記固定部は、第1の部品と第2の部品とを接続するヒンジ金具であることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、電子機器であって、請求項1〜5のいずれか一項に記載の部品の固定構造を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、樹脂製の部品をネジ等で固定してもクリープが生じず、ネジ弛みを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の第1の実施の形態として、携帯電話機について詳細に説明する。図1は本実施の形態に係る携帯電話機1の一部を分解した分解斜視図である。この携帯電話機1は2軸ヒンジを有する折り畳み式である。携帯電話機1は、操作部筐体2と、表示部筐体4と、操作部筐体2と表示部筐体4との端部を接続する支持筐体3と、等から概略構成されている。
【0014】
支持筐体3は、操作部筐体2の一端と左右2箇所で接続され、操作部筐体2に対して回転可能に設けられている。このため、表示部筐体4及び支持筐体3を操作部筐体2に対して重ね合わせることができ、携帯電話機1を折り畳み可能としている。
【0015】
また、支持筐体3の左右方向の中央部には、支持筐体3と表示部筐体4と接続するヒンジ32が設けられている。ヒンジ32は、表示部筐体4と、支持筐体3とを回転可能とするとともに、表示部筐体4と、支持筐体3が180度回転した位置において面一となるような状態で安定するように保持する。
【0016】
図1では、表示部筐体4が分解されている。表示部筐体4は、ヒンジ32が固定される背面ケース40と、背面ケース40に固定される前面ケース50と、前面ケース50を背面ケース40に固定するネジ60と、等を備える。なお、前面ケース50は枠状の樹脂ケース53の背面側にプレート52が一体となるように設けられ、図示しない表示装置が収納される収納凹部51が形成されている。プレート52は図2に示すように、ネジ60が挿入される取付孔54の位置まで延在し、樹脂ケース53に設けられた孔55から露出されている。
背面ケース40には表示装置と操作部筐体2内の電子回路とを接続する図示しないFPC等が収納される。
【0017】
図2は図1のII−II矢視断面図である。前面ケース50は、樹脂ケース53と内部の金属製のプレート52とが一体となるようにインサート成形してなるモールドケースである。プレート52は前面ケース50の強度を保つとともに、電磁的なシールド、さらに電気的なグラウンドとしても機能する。樹脂ケース53は外部からの衝撃を吸収する役割を果たす。
【0018】
図1、図2に示すように、プレート52には、ネジ60が挿通される取付孔54が設けられている。樹脂ケース53には、取付孔54よりも内径が大きく、取付孔54の周囲においてプレート52を露出させる孔55が設けられている。
【0019】
図3はネジ60による前面ケース50と背面ケース40との接合部の断面図である。図3に示すように、背面ケース40は、樹脂ケース43の内部にインサートナット42が一体となるように設けられている。
【0020】
前面ケース50と背面ケース40とをネジ60により接合するには、ネジ60のネジ部61を取付孔54に挿通し、インサートナット42に螺合させる。このとき、図3に示すように、ネジ60の頭部62とインサートナット42との間にプレート52が挟持される。プレート52は金属製であるため、ネジ60の頭部62とインサートナット42とで長期間挟持されても、クリープが生じない。このため、ネジ弛みを防ぐことができる。
【0021】
なお、本実施の形態においては、インサートナット42にモールドケースを固定する場合について説明したが、例えば、図4に示すように、金属製のヒンジ32に前面ケース50を固定する場合に、ネジ60の頭部62とヒンジ32との間でプレート52を挟持させてもよい。また、ネジの代わりにリベットやE形止め輪を用いてもよい。
【0022】
また、上記実施形態においては、携帯電話機について説明したが、本発明はこれに限らず、カメラ、PDA、ノートパソコン、ウェアラブルパソコン、電卓、電子辞書等の電子機器の筐体にも適用可能である。さらに、自動車等に用いられるパネルの固定にも応用することができる。この場合には、プッシュリベットにより固定する構造としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施の形態に係る携帯電話機1の一部を分解した分解斜視図である。
【図2】図1のII−II矢視断面図である。
【図3】ネジ60による前面ケース50と背面ケース40との接合部の断面図である。
【図4】ネジ60による前面ケース50とヒンジ32との接合部の断面図である。
【符号の説明】
【0024】
40 背面ケース(第1の部品)
42 インサートナット(固定部)
50 前面ケース(第2の部品)
52 プレート(補強部材)
54 取付孔
60 ネジ(固定具)
61 ネジ部(定着部)
62 頭部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を用いて形成される第1の部品と、樹脂を用いて形成される第2の部品と、第1の部品と第2の部品とを固定する固定具とからなる部品の固定構造であって、
第1の部品は、樹脂よりも硬質な材料からなる固定部を備え、
第2の部品には、樹脂よりも硬質な材料からなり、取付孔が設けられた補強部材を備え、
固定具は、一端に取付孔の内径よりも大きい外径の頭部を備えるとともに、他端に取付孔の内径よりも小さい外径の定着部とを備え、
固定具を定着部側の端部から取付孔に挿入し、定着部を固定部に定着させることを特徴とする部品の固定構造。
【請求項2】
前記補強部材は、第2の部品と一体成型された金属板であることを特徴とする請求項1に記載の部品の固定構造。
【請求項3】
前記固定具は、ネジであることを特徴とする請求項1または2に記載の部品の固定構造。
【請求項4】
前記固定部は、金属製のインサートナットであることを特徴とする請求項3に記載の部品の固定構造。
【請求項5】
前記固定部は、第1の部品と第2の部品とを接続するヒンジ金具であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の部品の固定構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の部品の固定構造を有することを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−135548(P2010−135548A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309680(P2008−309680)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(504149100)株式会社カシオ日立モバイルコミュニケーションズ (893)
【Fターム(参考)】