説明

配線構造の形成方法

【目的】 導体部41とその側面を覆う絶縁部33a とを有する配線構造であって導体部および絶縁部41,33aの密着性が良い配線構造を形成する方法を提供する。
【構成】 下地31上に絶縁部形成用の絶縁層例えばポリイミド層を形成し、次にこの絶縁層の導体部形成予定領域を選択的に除去して絶縁部33a を形成する。該絶縁部33a の形成が済んだ下地上全面に、前記絶縁部と後に形成される導体部との密着性を確保でき、かつ、電解めっきの際の電流供給用薄膜として使用される薄膜37例えばチタン膜および白金膜をこの順に積層し薄膜37を形成する。該薄膜37の、導体部形成予定領域に対応する部分以外の部分を、絶縁性材料例えばホトマスク39で覆う。絶縁性材料39による被覆が済んだ試料にめっき例えば金めっきを施して導体部41を形成する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、配線構造の形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】半導体装置やプリント配線基板などでは、導体部とこれを他の導体部等から電気的に絶縁する絶縁部とで構成される配線構造が、多用される。このような配線構造を形成する一つの方法として、電解めっき法がある。そして、電解めっき法により上記配線構造を形成する場合の従来の一般的な方法は、以下に図3を参照して説明するようなものであった。ここで、図3は断面図によって示した工程図である。
【0003】先ず、配線構造を形成したい下地11上に電解めっきの際の電流供給用薄膜(以下、カレントフィルムともいう。)13が形成される。次に、カレントフィルム13の、めっきを行ないたくない部分上に絶縁性材料例えばホトレジスト等で構成したマスク15が形成される。次に、この試料を電解めっき浴(図示せず)に入れ、そしてカレントフィルム13に電流を流しめっきを行なって、配線構造における導体部(配線)17が形成される(図3(A))。次に、マスク15と、カレントフィルム13の不要部分とが除去される(図3(B))。次に、この試料上全面に例えば層間絶縁膜形成材料として例えばポリイミド前駆体が塗布され、次にこれが硬化されて絶縁部19が形成される(図3(C))。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の方法では導体部17を形成した後に絶縁部19を形成していたために、次のような問題が生じ易かった。
【0005】■:導体部に対し絶縁部を密着性良く形成するのが困難な場合がある。例えば、導体部が金(Au)で構成されたものの場合はその表面は酸化物が形成されないので、この導体部に対する後に形成する絶縁部の密着性は満足のゆくものとならない。
【0006】■:また、絶縁部を例えば上記例のように熱硬化を必要とする材料で構成した場合は、熱硬化時に絶縁部が熱収縮するので、導電部と絶縁部との密着性が低下し易い。
【0007】■:上記■、■いずれの場合も、導電部と絶縁部との間に図3(C)に示したように空隙21が生じる危険性が高かった。
【0008】このような空隙が生じると、この空隙には予期せぬ液体や気体がその後の製造工程で入り込む危険性が高く、それが原因で種々の問題を引き起こす。例えば、導体部17上の絶縁部部分にスルーホール(ビヤホール)を形成した場合は、空隙21内にたとえばエッチング液や洗浄液などの液体、およびまたは空気や工程雰囲気の気体が入り込む可能性が高い。空隙21内に一旦入り込んだ液体や気体は除去が不可能であるので例えば配線構造の信頼性を損ねることになる。また、その後の製造工程での真空排気や加熱プロセスにおいて空隙21が破壊するという事態に発展してしまう。
【0009】
【課題を解決するための手段】そこで、この発明によれば、導体部と該導体部の少なくとも側面を覆うよう設けられ該導体部の電気的な絶縁を図るための絶縁部とを有する配線構造を、下地上に形成する方法において、以下の(a)〜(e)の工程を含むことを特徴とする。
【0010】(a)下地上に絶縁部形成用の絶縁層を形成する工程。
【0011】(b)この絶縁層の導体部形成予定領域を選択的に除去して絶縁部を形成する工程。
【0012】(c)絶縁部の形成が済んだ下地上全面に、この絶縁部と後に形成される導体部との密着性を確保でき、かつ、電解めっきの際の電流供給用薄膜として使用される薄膜を形成する工程。
【0013】(d)この薄膜の、導体部形成予定領域に対応する部分以外の部分を、絶縁性材料で覆う工程。
【0014】(e)絶縁性材料による被覆が済んだ試料にめっきを施して導体部を形成する工程。
【0015】
【作用】この発明の構成によれば、下地上に先ず絶縁部を形成する。これは、絶縁部を例え熱硬化を必要とする材料で構成した場合であっても、その熱硬化処理を、導電部を形成する前に済ませることが出来ることを意味する。このため、絶縁部が熱収縮した場合でもこれが絶縁部及び導電部間の密着性に悪影響することはない。また、絶縁部の形成が済んだ下地全面に所定の薄膜を形成した後に、導電部形成のためのめっきがなされる。絶縁部上に形成されるこの薄膜は絶縁部と導電部との密着強度を高める。
【0016】
【実施例】以下、図1および図2を参照してこの発明の配線構造の形成方法の実施例について説明する。ここで、これら図は実施例の形成工程中の主な工程での試料の様子を断面図によって示した工程図である。ただし、いずれの図もこの発明を理解出来る程度に各構成成分の寸法、形状及び配置関係を概略的に示してある。また、以下の説明中で述べる、使用材料及び時間、温度、膜厚等の数値的条件は、この発明の範囲内の好適例にすぎない。従って、この発明がこれら条件にのみ限定されるものでないことは理解されたい。
【0017】先ず、下地31上に、絶縁部形成用の絶縁層33を形成する。ここで、下地31は、配線構造を形成したい種々のものであることが出来、特に限定されない。例えば、導体基板、半導体基板、絶縁性基板いずれの場合も下地の対象となり得る。また、絶縁層33の構成材料も特に限定されないが、この実施例ではポリイミド前駆体を塗布しかつ熱硬化させて得たポリイミド層で絶縁層33を構成する。このポリイミド層33は、ここではポリイミド前駆体としてのデュポン(Dupont)社製のパイラリンを用い、これを下地31上に塗布しさらに350℃の温度で熱硬化することで、形成する。またポリイミド層33の膜厚を、これに限られないが、1〜2μmとする。
【0018】次に、このポリイミド層33の導体部形成予定領域を選択的に除去し該絶縁層33の残存部分で絶縁部33aを形成する。これをこの実施例では次のように行なう。すなわち、ポリイミド層33上にホトレジスト(ここでは東京応化工業製のOFPR800)を塗布し、これに所定の露光、現像を施し、ポリイミド層33の、導体部形成予定領域以外の領域を覆うマスク35を形成する。次に、ポリイミド層33のマスク35で覆われていない部分を、エッチングする。このエッチングは、例えばエッチングガスとして酸素ガスを用い、高周波パワーを100Wとし、かつ、エッチング室の圧力を30Paとした条件のドライエッチングにより行なう。このエッチングではマスク35もエッチングされるがマスク35の厚さをポリイミド層33のエッチングが終了するまでなくならない程度の厚さとしておけば問題はない。ここではマスク35の厚さを3μm程度とする。このエッチング後に残存しているポリイミド層33の部分が配線構造における絶縁部33aとなる(図1(B))。
【0019】次に、マスク35を除去する。その後、この絶縁部33aの形成が済んだ下地上全面に、絶縁部33aと後に形成される導体部との密着性を確保でき、かつ、電解めっきの際の電流供給用薄膜として使用される薄膜(以下、「所定の薄膜」とも言う。)37を形成する(図1(C))。ここでは、厚さが500Åのチタン(Ti)の薄膜と、厚さが500Åの白金(Pt)の薄膜とをこの順で積層した薄膜を、所定の薄膜37としている。ただし、図1(C)ではチタンの薄膜と白金の薄膜とは特に区別して図示はしていない。これら薄膜は例えばスパッタ法により形成出来る。ここで、チタンの薄膜は、絶縁部と導体部との密着性向上に主に寄与する部分である。また、白金の薄膜は、チタンの薄膜のみではその表面が酸化してしまうのでこれを防止するため及び、Tiと後に形成される金との相互拡散を防止するためのものである。
【0020】次に、所定の薄膜37の、導体部形成予定領域に対応する部分以外の部分を、絶縁性の材料、ここではレジスト(例えば上記OFPR−800)39で、覆う(図1(D))。このレジスト39の厚みはここでは1〜2μmとする。
【0021】レジスト39の形成が済んだ試料を電解めっき浴、ここでは金(Au)めっき浴に入れた後、カレントフィルムの機能をも有している所定の薄膜37に電流を流す。所定の薄膜37のレジスト39で覆われていない部分上にめっきがなされ導体部41(配線となる部分)が形成される(図2(A))。導体部41の厚さは、設計に応じ任意とできる。ここでは、導体部41の厚さが絶縁部33aの厚さと同程度となるまで、めっきをした例を示している。
【0022】次に、ホトレジスト39を除去する(図2(B))。さらに所定の薄膜37の不要部分(Auめっきをしなかった部分)を除去する(図2(C))。カレントフィルム37の不要部分の除去は、例えばイオンミリング法により行なえる。
【0023】ホトレジスト39の除去および所定の薄膜37の不要部分の除去が済んだ試料上に、ここではポリイミド前駆体を塗布しかつこれを熱硬化させて上側の絶縁部43(以下、「上側絶縁部43」ともいう。)を形成する。これにより実施例の配線構造45が得られる(図2(D))。
【0024】上述においてはこの発明の配線構造の形成方法の実施例について説明したがこの発明は上述の実施例に限られない。
【0025】例えば上述の実施例では上側絶縁部43を設ける例を説明したがこれは必須というものではない。
【0026】また、上述の実施例では絶縁部33aを熱硬化性の樹脂で構成する例を示したがこの発明は他の絶縁性材料で絶縁部を構成する場合にも適用でき、その場合にも実施例と同様な効果を得ることが出来る。絶縁部を構成する他の材料として、これに限られないが、例えばスピンオングラス、CVD法やスパッタ法で形成されるSiO2 膜やSiN膜などを挙げることが出来る。ただし、この発明は熱収縮の問題が生じ易い熱硬化性の絶縁性材料を用いる場合に特に好適である。
【0027】また、上述の実施例では電解めっきの対象をAuめっきとしていたが、めっきの対象はAuに限られず任意好適なものとできる。その場合も、絶縁部を熱収縮し易い材料で構成した場合の絶縁部と導体部(めっき)との密着性悪化を緩和若しくは防止できるからである。ただし、Auのように絶縁物との直接の密着性が悪い材料をめっきする場合にこの発明の方法は特に好適である。
【0028】また、上述の実施例では、一層の配線構造の例を説明したがこの発明は多層配線構造を形成する場合にも適用できることは明らかである。
【0029】
【発明の効果】上述した説明からも明らかなように、この発明の配線構造の形成方法によれば、導体部と該導体部の少なくとも側面を覆うための絶縁部とを有する配線構造を下地上に形成する際に、(a) 下地上に絶縁部形成用の絶縁層を形成し、(b) 該絶縁層の導体部形成予定領域を選択的に除去して絶縁部を形成し、(c) 該絶縁部の形成が済んだ下地上全面に所定の薄膜を形成し、(d) 該所定の薄膜の、導体部形成予定領域に対応する部分以外の部分を、絶縁性材料で覆い、(e) その後試料にめっきを施して導体部を形成する。したがって、絶縁部が形成された後に導体部が形成され、然も、導体部は、絶縁部との密着性の向上が図れる所定の薄膜を介して絶縁部上に形成される。このため、導体部と導体部側面の絶縁部との間に空隙が生じることを防止出来るので、良好な配線構造が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)〜(D)は、実施例の説明に供する工程図である。
【図2】(A)〜(D)は、実施例の説明に供する図1に続く工程図である。
【図3】(A)〜(C)は、従来技術及びその問題点の説明に供する図である。
【符号の説明】
31:下地 33:絶縁部形成用の絶縁層
33a:絶縁部 35:マスク
37:所定の薄膜
39:絶縁性材料(ホトレジスト)
41:導体部(配線)
43:上側の絶縁部
45:実施例の配線構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】 導体部と、該導体部の少なくとも側面を覆うよう設けられ該導体部の電気的な絶縁を図るための絶縁部とを有する配線構造を、下地上に形成する方法において、下地上に絶縁部形成用の絶縁層を形成する工程と、該絶縁層の導体部形成予定領域を選択的に除去して絶縁部を形成する工程と、該絶縁部の形成が済んだ下地上全面に、前記絶縁部と後に形成される導体部との密着性を確保でき、かつ、電解めっきの際の電流供給用薄膜として使用される薄膜を形成する工程と、該薄膜の、導体部形成予定領域に対応する部分以外の部分を、絶縁性材料で覆う工程と、該絶縁性材料による被覆が済んだ試料にめっきを施して導体部を形成する工程とを含むことを特徴とする配線構造の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開平7−321109
【公開日】平成7年(1995)12月8日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−109236
【出願日】平成6年(1994)5月24日
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)