説明

酸性水中油型乳化食品およびその用途

【課題】 マヨネーズ様食品や乳化液状ドレッシングのような酸性水中油型乳化食品において、熱風乾燥、及び油ちょうを施してもマヨネーズ特有のマイルドな酸味を有する酸性水中油型乳化食品およびその用途を提供する。
【解決手段】 粘度が100〜5,000mPa・sである酸性水中油型乳化食品において、製品に対し有機酸(乳酸を含む)を3.0〜5.0%、乳酸を0.5〜5.0%、乳酸発酵卵白を固形分換算で0.01〜5%含有することを特徴とする酸性水中油型乳化食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱風乾燥、及び油ちょうを施してもマヨネーズ特有のマイルドな酸味を有する酸性水中油型乳化食品およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
酸性水中油型乳化食品とは、pHを4.6以下にすることで常温流通を可能にした乳化食品であり、代表的なものとして、マヨネーズ様食品などの半固体状ドレッシング、乳化液状ドレッシングなどが挙げられる。
【0003】
マヨネーズなどの酸性水中油型乳化食品は、サラダにかける、または野菜と和えるなどの用途が一般的であるが、近年その用途が拡大している。具体的には、せんべいなどの米菓、ポテトチップスなどのスナック菓子、及びチキンカツなどのフライ食品など、従来マヨネーズを使用しなかった業態においてマヨネーズ味を付した加工食品の開発が進んでいる。
【0004】
しかしながら、米菓の製造工程において、マヨネーズをからめた後、熱風乾燥を行ったり、フライ食品の製造工程において、バッター液としてマヨネーズを付着させた後、油ちょうを行うと、加熱によってマヨネーズ特有のマイルドな酸味が消失してしまうという問題があった。
【0005】
加工食品にマヨネーズ味を付す方法としては、米菓や、フライ食品の製造工程において、熱風乾燥や油ちょうを行った後、粉末マヨネーズ(特許文献1)を振りかける方法が知られている。しかしながら、これらの方法でマヨネーズ味を付した加工食品は、酸味は残るものの、マヨネーズ特有のマイルドな酸味とは異なる酸味であった。
【0006】
【特許文献1】特開平8−56608号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、米菓やフライ食品用バッター液などに使い易い低粘度の酸性水中油型乳化食品において、熱風乾燥、及び油ちょうを施してもマヨネーズ特有のマイルドな酸味を有する、酸性水中油型乳化食品およびその用途を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記目的を達成すべく酸性水中油型乳化食品に使用されている様々な配合原料、及び製造工程について鋭意研究を重ねた。その結果、特定量の有機酸、乳酸、及び乳酸発酵卵白を配合するならば、意外にも熱風乾燥、及び油ちょうを施してもマヨネーズ特有のマイルドな酸味を有することを見出し本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)粘度が100〜5,000mPa・sである酸性水中油型乳化食品において、製品に対し有機酸(乳酸を含む)を3.0〜5.0%、乳酸を0.5〜5.0%含量し、乳酸発酵卵白を含有する酸性水中油型乳化食品、
(2)製品に対し乳酸発酵卵白の含有量(固形分換算)が0.01〜5%である(1)記載の酸性水中油型乳化食品、
(3)(1)または(2)に記載の酸性水中油型乳化食品を用いた米菓、
(4)(1)または(2)に記載の酸性水中油型乳化食品をバッター液に用いたフライ食品、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熱風乾燥、及び油ちょうを施してもマヨネーズ特有のマイルドな酸味を有する酸性水中油型乳化食品を提供することが出来る。したがって、酸性水中油型乳化食品を従来使用できなかった加工食品に使用が可能となり、酸性水中油型乳化食品の更なる需要拡大が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」をそれぞれ意味する。
【0012】
本発明において酸性水中油型乳化食品とは、卵黄または全卵、食用油脂を含有し、食用油脂が油滴として水相中に略均一に分散して水中油型の乳化状態が維持され、常温流通を可能ならしめるためにpHを4.6以下に調整された酸性乳化食品である。
【0013】
本発明は、上記酸性水中油型乳化食品の中でも特に、粘度が100〜5,000mPa・sである酸性水中油型乳化食品において、特定量の有機酸、乳酸、及び乳酸発酵卵白を含有することを特徴としており、これにより、熱風乾燥、及び油ちょうを施してもマヨネーズ特有のマイルドな酸味を有する酸性水中油型乳化食品となる。
【0014】
本発明の酸性水中油型乳化食品の粘度は100〜5,000mPa・sであり、好ましくは100〜3,000mPa・sである。酸性水中油型乳化食品の粘度が前記値よりも高いと、せんべいなどの米菓への噴霧による付着が困難となり、また、チキンカツなどのフライ食品用バッター液としても使用し難いものとなるため好ましくない。なお、粘度は、品温20℃のときの粘度であり、BH形粘度計を用いローター:No.2、回転数:10rpmの条件で測定し、2回転後の示度により算出した値である。
【0015】
本発明で用いる有機酸は、構造内に少なくとも1個以上のカルボキシル基を有し、酸性を呈し、食用の酸材として用いられている有機化合物をいう。本発明で用いる有機酸としては、食用として供されるものであれば特に限定するものではないが、例えば、1個のカルボキシル基を有する有機酸としては、酢酸、乳酸、プロピオン酸、グルコン酸などが挙げられ、2個以上のカルボキシル基を有する有機酸としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸などが挙げられ、本発明ではこれらの1種または2種以上を用いるとよい。また、本発明では、これらの有機酸を直接用いてもよいが、有機酸を含有した液状の食材である、例えば、リンゴ酢、ワインビネガー、モルトビネガー、米酢、粕酢などの醸造酢、レモン、かぼすなどの柑橘果汁又はこれらの濃縮物などを用いてもよい。
【0016】
また、本発明で使用する乳酸としては、天然の乳酸、あるいは合成の乳酸のいずれであっても良いが、一般的に食品に用いられる天然の乳酸、例えば発酵乳酸を用いると良い。市販されている50%発酵乳酸、あるいは乳酸に賦形材を添加して乾燥させた粉末乳酸などを使用しても良い。
【0017】
酸性水中油型乳化食品に対する有機酸の含有量は、3.0〜5.0%であり、好ましくは3.2〜4.0%である。製品に対する有機酸の含有量が前記値より少ないと、たとえ後述の乳酸、及び乳酸発酵卵白を特定量含有したとしても、酸性水中油型乳化食品に熱風乾燥や油ちょうを施した際、マヨネーズ特有のマイルドな酸味が消失してしまうためである。また、製品に対する有機酸の含有量が前記値よりも多いと、マヨネーズ特有のマイルドな酸味とは異なる酸味となる場合があるためである。なお、有機酸の含有量とは、後述の乳酸の含有量を合算した数値のことをいう。
【0018】
また、酸性水中油型乳化食品に対する乳酸の含有量は、0.5〜5.0%であり、好ましくは1.0〜4.0%である。製品に対する乳酸の含有量が前記値より少ないと、たとえ前述の有機酸、及び後述の乳酸発酵卵白を特定量含有したとしても、酸性水中油型乳化食品に熱風乾燥や油ちょうを施した際、マヨネーズ特有のマイルドな酸味が消失してしまうためである。また、製品に対する乳酸の含有量が前記値よりも多いと、マヨネーズ特有のマイルドな酸味とは異なる酸味となるためである。
【0019】
本発明の酸性水中油型乳化食品は、上述した有機酸、及び乳酸に加え乳酸発酵卵白を含有したものである。本発明の酸性水中油型乳化食品に含有される乳酸発酵卵白とは、液状の卵白に乳酸菌を添加して発酵させることにより得られるものである。このような乳酸発酵は、一般的に栄養源として乳酸菌資化性糖類を添加し、更に必要に応じ酵母エキス等の発酵促進物質、及び乳酸発酵卵白のコク味付与を目的とした食用油脂を添加し、乳酸菌を1mLあたり好ましくは10〜10、さらに好ましくは10〜10供し発酵されており、本発明も同様な方法で得られたものを用いるとよい。
【0020】
上記乳酸発酵卵白に用いる卵白としては、例えば、鶏等の鳥類の卵を割卵し卵黄を分離したものであり工業的に得られるもの、またこれを殺菌、凍結したもの、濃縮または希釈したもの、特定の成分(リゾチームやアビジン等)を除去したもの、乾燥させたものを水戻ししたもの等が挙げられる。また効果に影響を及ぼさない程度に卵黄やその他の卵由来の成分を含んでいても差し支えない。
【0021】
上記乳酸発酵卵白に用いる乳酸菌としては、一般的にヨーグルトやチーズの製造に利用される、例えば、ラクトバチルス属(Lactobacillus bulgaricus等)、ストレプトコッカス属(Streptococcus thermophilus、Streptococcus diacetylactis等)、ラクトコッカス属(Lactococcus lactis等)、ロイコノストック属(Leuconostoc cremoris等)、エンテロコッカス属(Enterococcus faecalis)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium Bbifidum等)等が挙げられる。
【0022】
上記乳酸発酵卵白に用いる乳酸菌資化性糖類としては、例えば、単糖類(グルコース、ガラクトース、フルクトース、マンノース、N−アセチルグルコサミン等)、二糖類(ラクトース、マルトース、スクロース、セルビオース、トレハロース等)、オリゴ糖類(特に3〜5個の単糖類が結合しているもの)、ブドウ糖果糖液糖等が挙げられ、1種又は2種以上を組み合わせて液状の卵白に添加することができる。
【0023】
上記乳酸発酵卵白に用いる発酵促進物質としては、本発明の効果を損なわない範囲で発酵を促進するものであれば、特に限定するものではない。例えば、アミノ酸やペプチド等の蛋白質分解物、酵母エキス、ビタミン類、ミネラル類等が挙げられる。
【0024】
本発明の有効成分である乳酸発酵卵白の形態は、種々の形態(例えば、液状、粉末状、マイクロコロイド状、クリーム状、ペースト状、ゼリー状)を有することができる。すなわち、配合する食品の性状に応じて、適切な形態に加工し使用することができる。乾燥処理は、上記乳酸発酵卵白に必要に応じデキストリン等の賦形材や清水等の水系媒体を添加後、スプレードライ、フリーズドライ、パンドライ等、任意の方法を採用し乾燥させることが出来る。
【0025】
上記乳酸発酵卵白の代表的な製造方法を以下に示す。卵白蛋白質2〜8%、乳酸菌資化性糖類1〜15%、及び発酵促進物質0.5〜10%を水に加え、乳酸、塩酸等の酸材を用いてpH5〜7.5にpH調整し仕込み液を調製する。なお、酸材としては風味の面から乳酸を用いるのが好ましい。得られた仕込み液を60〜110℃で5〜120分間加熱した後、乳酸菌スターターを1mLあたり10〜10になるように添加する。25〜50℃で8〜48時間発酵し乳酸発酵卵白が得られる。また、必要に応じて上記乳酸発酵卵白を加熱殺菌し、高圧下で均質化処理を施してもよく、あるいは、フリーズドライ、スプレードライ等の乾燥処理を施して粉末状にしてもよい。
【0026】
本発明の酸性水中油型乳化食品における乳酸発酵卵白の配合量は、固形分換算で0.01〜5%が好ましく、0.05〜5%がより好ましい。乳酸発酵卵白の配合量が前記範囲より少ないと、たとえ前述の有機酸、及び乳酸を特定量含有したとしても、酸性水中油型乳化食品に熱風乾燥や油ちょうを施した際、マヨネーズ特有のマイルドな酸味が消失し易くなるため好ましくない。一方、乳酸発酵卵白の配合量を前記範囲より多くしたとしても、配合量に応じた効果が期待し難く経済的でない。なお、本発明において乳酸発酵卵白の固形分換算とは、乳酸発酵卵白にあらかじめ添加した食用油脂を除いたものである。また、粉末状にした乳酸発酵卵白の固形分換算とは、必要に応じ添加したデキストリン等の賦形材を除いたものである。
【0027】
また、本発明の酸性水中油型乳化食品における食用油脂の含有量は、上述の粘度の酸性水中油型乳化食品を製造するため、好ましくは10〜50%、より好ましくは10〜40%である。ここで、本発明に用いる食用油脂は、食用に供されるものであれば特に限定されるものではない。例えば、菜種油、コーン油、綿実油、サフラワー油、オリーブ油、紅花油、大豆油、パーム油、ゴマ油、魚油、卵黄油等の動植物油及びこれらの精製油、並びにMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリドなどのように化学的あるいは酵素的処理を施して得られる油脂などが挙げられる。
【0028】
更に、本発明の酸性水中油型乳化食品は、卵黄または全卵を含有するものである。通常、含有された卵黄および全卵に含まれる卵黄部分が乳化材として機能するが、その他の乳化材を配合してもよい。本発明の酸性水中油型乳化食品における卵黄の含有量は、通常、酸性水中油型乳化食品に用いられている量を含有すればよいが、乳化安定性の観点から、生卵黄換算で好ましくは1〜30%、より好ましくは3〜20%である。また、その他の乳化材としては、レシチン、リゾレシチン、ラクトアルブミン、カゼインナトリウム、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、オクテニルコハク酸化澱粉などがあげられる。
【0029】
本発明の酸性水中油型乳化食品は、上述の有機酸、乳酸、乳酸発酵卵白、食用油脂、及び卵黄を配合する他に本発明の効果を損なわない範囲で酸性水中油型乳化食品に通常用いられている各種原料を適宜選択し含有させることができる。例えば、グルタミン酸ナトリウム、食塩、砂糖、醤油、味噌などの各種調味料、各種エキス、キサンタンガム、タマリンド種子ガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、グアーガム、アラビアガム、サイリュームシードガムなどのガム質、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、これらの澱粉をアルファ化、架橋などの処理を施した加工澱粉、並びに湿熱処理澱粉などの澱粉類、澱粉分解物、デキストリン、デキストリンアルコール、オリゴ糖、オリゴ糖アルコールなどの糖類、全卵、液卵白アスコルビン酸又はその塩、ビタミンEなどの酸化防止剤、からし粉、胡椒などの香辛料、各種蛋白質やこれらの分解物などが挙げられる。
【0030】
本発明の酸性水中油型乳化食品の製造方法は、上述の有機酸、乳酸、乳酸発酵卵白、食用油脂、及び卵黄を配合させる以外は、酸性水中油型乳化食品の常法に則り製造すればよく、例えば、上述の有機酸、乳酸、乳酸発酵卵白、及び卵黄を含む水相原料を均一に混合し、ミキサー等で攪拌させながら、油相原料を注加して粗乳化し、次にコロイドミル、高圧ホモゲナイザーなどで仕上げ乳化をした後、ボトル容器やガラス容器などに充填密封する。
【0031】
また、本発明の米菓、及びフライ食品の製造方法は、本発明の酸性水中油型乳化食品を用いる以外は、米菓、及びフライ食品の常法に則り製造すればよい。なお、本発明のフライ食品は、油ちょう前の加工食品も含む。
【0032】
以下、本発明の酸性水中油型乳化食品について、実施例、比較例並びに試験例に基づき具体的に説明する。なお、本発明は、これらに限定するものではない。
【実施例】
【0033】
[実施例1]
<乳酸発酵卵白1の製造方法>
液卵白50%(蛋白質含有量6%)、グラニュ糖4%、酵母エキス0.05%、50%乳酸0.15%及び清水45.8%からなる卵白水溶液を攪拌、調製した。得られた卵白水溶液を70〜90℃で5分間加熱した後、乳酸菌スターター0.02%(Lactococcus lactis subsp. lactis、Leuconostoc mesenteroides subsp.cremoris、Streptococcus diacetylactis、Lactococcus lactis subsp.cremoris)を添加し、30℃で24時間発酵を行った後、70〜90℃で10分間加熱殺菌し、次いで高圧ホモゲナイザーを用いて10MPaの圧力で処理し、本発明で用いる乳酸発酵卵白1(固形分含有量10%)を製した。
【0034】
<マヨネーズ様食品の製造方法>
下記に示す配合割合でマヨネーズ様食品を製した。つまり、上述の乳酸発酵卵白1を食酢、発酵乳酸、生卵黄、食塩、グルタミン酸ソーダ、清水と混合し、ミキサーで均一に攪拌しながら植物油を徐々に添加して粗乳化し、更にコロイドミルに通して仕上げ乳化を施した。次に、得られた乳化物を容量300gの三層のラミネート容器に充填することにより本発明品のマヨネーズ様食品を製した。なお、得られたマヨネーズ様食品は、製品に対し有機酸を3.2%、乳酸を1.8%、乳酸発酵卵白(固形分換算)を0.2%含有するものである。また、得られたマヨネーズ様食品の粘度は1,000mPa・sであった。
【0035】
<マヨネーズ様食品の配合割合>
(油相)
植物油 20%
(水相)
食酢(酸度10%) 14%
発酵乳酸(酸度50%) 3.6%
生卵黄 4%
食塩 3%
乳酸発酵卵白1(固形分含有量10%)2%
グルタミン酸ソーダ 0.3%
清水 残余
―――――――――――――――――――――――
合計 100%
【0036】
[実施例2]
<揚げせんべいの製造>
精米したもち米を水に4時間浸漬した後、当該吸水米をセイロに移し蒸煮した。蒸煮の途中で打ち水で加水しながら芯が残らないまで蒸煮し約46%の水分とした。得られた蒸煮米をもち搗き機で搗き練り処理を行い、冷蔵庫(4℃)で一晩冷却した後、直径4cm、厚さ0.3cmに大きさに切断して成形し、次いで15〜16%の水分となるまで乾燥させた。次いで、当該乾燥物を油温約240℃の油で1分間揚げた後、油切りし、当該揚げ処理物に実施例1で得られたマヨネーズ様食品を揚げ処理物100部に対し20部となるように噴霧して付着させ、次いで80℃の熱風で60分間乾燥させて揚げせんべいを得た。得られた揚げせんべいを喫食したところ、マヨネーズ特有のマイルドな酸味が十分に残っていた。
【0037】
[実施例3]
<チキンカツの製造>
鶏胸肉を一口大にカットし、塩、胡椒で調味した。実施例1で得られたマヨネーズ様食品をバッター液として用い、調味した鶏胸肉100部に対しマヨネーズ様食品20部となるように付着させ、パン粉を付けた後、170℃の植物油で4分間油ちょうした。得られたチキンカツを喫食したところ、マヨネーズ特有のマイルドな酸味が十分に残っていた。
【0038】
[試験例1]
酸性水中油型乳化食品に用いる有機酸の種類の違いによる、酸性水中油型乳化食品を熱風乾燥した際の、マヨネーズ特有のマイルドな酸味の残存効果への影響を調べた。具体的には、実施例1において、配合原料の発酵乳酸(酸度50%)全量を、表1に示す有機酸に変更し、マヨネーズ様食品全体の有機酸の含有量が3.2%となるように調整して各有機酸を配合した以外は、実施例1と同様の方法でマヨネーズ様食品を製した。次いで、得られたマヨネーズ様食品を用いて、実施例2と同様の方法で揚げせんべいを製造し、得られた揚げせんべいを喫食し、マヨネーズ特有のマイルドな酸味の残存効果を評価した。なお、得られた各マヨネーズ様食品の粘度は5,000mPa・s以下であった。
【0039】
「マヨネーズ特有のマイルドな酸味の残存効果」の評価
ランク:基準
A :マヨネーズ特有のマイルドな酸味が十分に残っている。
B−1:マヨネーズ特有のマイルドな酸味が若干弱いが、問題とならない程度である。
B−2:マヨネーズ特有のマイルドな酸味とやや異なるが、問題とならない程度である。
C−1:マヨネーズ特有のマイルドな酸味がほとんど感じられない。
C−2:マヨネーズ特有のマイルドな酸味とは異なる酸味である。
【0040】
【表1】

【0041】
表1より、酸性水中油型乳化食品に配合する乳酸に代えて酢酸、クエン酸、リンゴ酸、及びグルコン酸を用いた場合は、マヨネーズ特有のマイルドな酸味がほとんど感じられないか、もしくは、マヨネーズ特有のマイルドな酸味とは異なる酸味となっており、乳酸がマヨネーズ特有のマイルドな酸味の残存効果に優れていることが理解される。
【0042】
[試験例2]
有機酸、及び乳酸の含有量の違いによる、酸性水中油型乳化食品を熱風乾燥した際の、マヨネーズ特有のマイルドな酸味の残存効果への影響を調べた。具体的には、実施例1において、食酢由来の酢酸、及び発酵乳酸由来の乳酸の含有量を表2に示す割合に変更した以外は、実施例1と同様の方法でマヨネーズ様食品を製した。次いで、得られたマヨネーズ様食品を用いて、実施例2と同様の方法で揚げせんべいを製造し、得られた揚げせんべいを喫食し、マヨネーズ特有のマイルドな酸味の残存効果を評価した。なお、得られた各マヨネーズ様食品の粘度は5,000mPa・s以下であった。また、マヨネーズ特有のマイルドな酸味の残存効果の評価基準は試験例1と同様とする。
【0043】
【表2】

【0044】
表2より、有機酸の含有量が、製品に対し3.0〜5.0%であり、かつ乳酸の含有量が、製品に対し0.5〜5.0%である酸性水中油型乳化食品(No.2〜5、No.7、8)は、マヨネーズ特有のマイルドな酸味の残存効果に優れており、特に、乳酸の含有量が、製品に対し3.2〜4.0%であり、かつ乳酸の含有量が、製品に対し1.0〜4.0%である酸性水中油型乳化食品(No.3、4、7)は、よりマヨネーズ特有のマイルドな酸味の残存効果に優れていることが理解される。
【0045】
[実施例4]
<乳酸発酵卵白2の製造方法>
液卵白34%(卵白固形分換算4%)、菜種油10%、グラニュ糖4%、酵母エキス0.05%、50%乳酸0.15%及び清水51.8%からなる卵白水溶液を攪拌、調製した。得られた卵白水溶液を70〜90℃で5分間加熱した後、乳酸菌スターター0.02%(Lactococcus lactis subsp. lactis、Leuconostoc mesenteroides subsp.cremoris、Streptococcus diacetylactis、Lactococcus lactis subsp.cremoris)を添加し、30℃で24時間発酵を行った後、70〜90℃で10分間加熱殺菌し、次いで高圧ホモゲナイザーを用いて10MPaの圧力で処理し、本発明で用いる乳酸発酵卵白2(固形分含有量8%。但し、上記仕込み液調製時に添加した菜種油10部を除く。)を製した。
【0046】
<マヨネーズ様食品の製造方法>
実施例1のマヨネーズ様食品の製造方法において、配合原料の乳酸発酵卵白1(配合量2%)を、乳酸発酵卵白2(配合量2.5%)に置換した以外は、実施例1と同様にマヨネーズ様食品を製した。なお、得られたマヨネーズ様食品は乳酸発酵卵白を固形分換算で0.2%含むものである。
【0047】
[実施例5]
<乳酸発酵卵白3の製造方法>
実施例1の方法により得られた乳酸発酵卵白1を、フリーズドライヤー(東京理化器械株式会社製)を用いて、送風温度160℃、排風温度65℃の条件でフリーズドライし、粉末状の乳酸発酵卵白3(固形分含有量95%)を調製した。
【0048】
<マヨネーズ様食品の製造方法>
実施例1のマヨネーズ様食品の製造方法において、配合原料の乳酸発酵卵白1(配合量2%)を、乳酸発酵卵白3(配合量0.21%)に置換した以外は、実施例1と同様にマヨネーズ様食品を製した。なお、得られたマヨネーズ様食品は乳酸発酵卵白を固形分換算で約0.2%含むものである。
【0049】
[比較例1]
<卵白加工品の製造方法>
実施例1の乳酸発酵卵白1の製造方法において、乳酸発酵卵白1と同様の配合で、乳酸菌を添加する前までの工程を行った後、50%乳酸でpHを4.2に調整し、次いで高圧ホモゲナイザーを用いて10MPaの圧力で処理し、冷水により10℃に冷却し卵白加工品(固形分含有量10%)を製した。
【0050】
<マヨネーズ様食品の製造方法>
実施例1のマヨネーズ様食品の製造方法において、配合原料の乳酸発酵卵白1を、卵白加工品に置換した以外は、実施例1と同様にマヨネーズ様食品を製した。なお、得られたマヨネーズ様食品は卵白加工品を固形分換算で約0.2%含むものである。
【0051】
[比較例2]
実施例1において、マヨネーズ様食品の配合原料の乳酸発酵卵白1を市販の液状殺菌ヨーグルト(固形分含有量12%)に置換した以外は、実施例1と同様の方法でマヨネーズ様食品を製した。
【0052】
[試験例3]
配合する乳酸発酵卵白、液状殺菌ヨーグルトなどの蛋白質加工品の違いによる、酸性水中油型乳化食品を熱風乾燥した際の、マヨネーズ特有のマイルドな酸味の残存効果への影響を調べた。具体的には、実施例1、4、及び5、比較例1、及び2で得られたマヨネーズ様食品を用いて、実施例2と同様の方法で揚げせんべいを製造し、得られた揚げせんべいを喫食し、マヨネーズ特有のマイルドな酸味の残存効果を評価した。なお、得られた各マヨネーズ様食品の粘度は5,000mPa・s以下であった。また、マヨネーズ特有のマイルドな酸味の残存効果の評価基準は試験例1と同様とする。
【0053】
【表3】

<乳酸発酵>
○:蛋白質加工品が乳酸発酵している。
×:蛋白質加工品が乳酸発酵していない。
【0054】
表3より、乳酸発酵をしていない卵白加工品を配合したマヨネーズ様食品、及び乳酸発酵をしている液状殺菌ヨーグルトを配合したマヨネーズ様食品は、マヨネーズ特有のマイルドな酸味とは異なる酸味となっていた。これに対し、卵白を乳酸発酵させた乳酸発酵卵白1〜3を配合したマヨネーズ様食品は、マヨネーズ特有のマイルドな酸味が十分に残っていた。
【0055】
[試験例4]
乳酸発酵卵白の含有量の違いによる、酸性水中油型乳化食品を熱風乾燥した際の、マヨネーズ特有のマイルドな酸味の残存効果への影響を調べた。具体的には、実施例1において、乳酸発酵卵白の含有量(固形分換算)を表4に示す割合に変更した以外は実施例1と同様の方法でマヨネーズ様食品を製した。次いで、得られたマヨネーズ様食品を用いて、実施例2と同様の方法で揚げせんべいを製造し、得られた揚げせんべいを喫食し、マヨネーズ特有のマイルドな酸味の残存効果を評価した。なお、得られた各マヨネーズ様食品の粘度は5,000mPa・s以下であった。また、マヨネーズ特有のマイルドな酸味の残存効果の評価基準は試験例1と同様とする。
【0056】
【表4】

【0057】
表4より、乳酸発酵卵白の含有量(固形分換算)が製品に対し0.01〜5%である酸性水中油型乳化食品は、マヨネーズ特有のマイルドな酸味の残存効果に優れており、特に、乳酸発酵卵白の含有量(固形分換算)が製品に対し0.05〜4%である酸性水中油型乳化食品は、よりマヨネーズ特有のマイルドな酸味の残存効果に優れていることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘度が100〜5,000mPa・sである酸性水中油型乳化食品において、製品に対し有機酸(乳酸を含む)を3.0〜5.0%、乳酸を0.5〜5.0%含有し、乳酸発酵卵白を含有することを特徴とする酸性水中油型乳化食品。
【請求項2】
製品に対し乳酸発酵卵白の含有量(固形分換算)が0.01〜5%である請求項1記載の酸性水中油型乳化食品。
【請求項3】
請求項1または2に記載の酸性水中油型乳化食品を用いた米菓。
【請求項4】
請求項1または2に記載の酸性水中油型乳化食品をバッター液に用いたフライ食品。

【公開番号】特開2010−51191(P2010−51191A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−217140(P2008−217140)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【Fターム(参考)】