説明

酸性鉄塩溶液からの酸化鉄の沈殿

冶金組成物を処理するための改良方法は、冶金組成物を硝酸水溶液と反応させる工程を含む。反応は、ある圧力、または、少なくとも約220psigで、少なくとも100℃の温度で行われる。冶金組成物は、鉄および1またはそれよりも多くの非鉄金属を含む。反応によって、非鉄金属組成物の少なくとも一部は、固体酸化鉄(III)と接触した状態の溶液中に溶解する。反応は、単離された固体に対して反復され、固体中の酸化鉄(III)の純度を増加させてもよい。亜鉛は、炉ダストから得られる混合金属溶液から、塩基を添加して水酸化亜鉛を沈殿させることによって除去され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2004年4月29日に出願された米国出願第10/834,522号の一部係属であり、その利益を権利主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は湿式冶金化学に関する。より詳細には、本発明は、鉄塩の酸浸出、ならびに、選択されたヘマタイトの鉄塩溶液からの沈殿に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
電気アーク炉(EAF)を用いて、スクラップ金属を良質の鋼にリサイクルすることができる。EAFにおいて、スクラップ金属へと形成される電気アークを用いてスクラップ金属を融解する。スクラップ金属は少量の非鉄金属などを含んでいてもよい。EAFプロセスは、溶鋼のバッチを生じるバッチ融解プロセスとして働く。EAFは非常に効果的な融解装置である。米国で製造される大部分の鋼が電気アーク炉で製造される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、鋼のEAF製法の欠点は、EAF冶金ダスト廃棄副生物が生じることである。EAFダストは、様々なメカニズム(乱流融解(turbulent melt)からの液滴噴出および気化を含む)によって、製鋼過程の間で生じる。気化のメカニズムは、主に、ダスト中の非鉄金属(亜鉛、鉛、スズ、クロム、銅およびカドミウムなど)の割合が比較的に高いことの原因である。気化した金属は、酸化物およびフェライトとして濃縮し、一般に、バグハウス(baghouse)および/または電気集塵器において下流で回収される。ダスト中の非鉄金属の存在に起因して、炉ダストは直接リサイクルできない。1トンの鋼の製造によって、約34ポンド(15.4kg)の廃棄EAF冶金ダストが生じ得る。
【0005】
EAF鋼プロセスの急速な増加によって、EAF冶金ダストが最も急速に増加するものの1つとなっており、また、世界的な最重要環境問題の1つとなっている。現在、米国において、年間約600,000メートルトンのEAF廃棄物が生じ、世界の残りの国において、さらに年間600,000メートルトンが生じる。また、他の主要な製鋼プロセス、転炉(Basic Oxygen Furnace (BOF))に由来する、同量の冶金ダストが低レベルの混入物で存在する。カドミウム、鉛および亜鉛などの有毒金属のレベルはBOF冶金ダストにおいて低い方なので、BOFダストは、現在、EPAによって有害と分類されていない。しかし、BOF冶金ダストは非鉄混入物を含み、この混入物のために、現在の製鋼法ではダストを利用することが困難となる。従って、BOF冶金ダストは、結局、未使用の廃棄物になるのかもしれない。
【0006】
EAF冶金ダストは、高濃度の鉄(約25%)、亜鉛(約25%)、鉛(約5%)、ならびに少量のスズ、カドミウム、クロムおよび銅を含有し得る。このダストの残りは、シリカ、石灰およびアルミナである。価値ある非鉄(nonferrous values)は、価値ある金属(metal value)の潜在的に豊富な資源を示す。鉛、クロムおよびカドミウムなどの潜在的に有害な金属の存在のために、EAFダストは、ゴミ投棄場に廃棄することができない。なぜなら、有害金属は、雨水または地下水によって浸出し、近隣の流域(water sheds)を汚染し得るからである。従って、ダストの処理は、商業および環境上の重要な問題である。EAFダストの3つのサンプルに関する金属含有量のいくつかの具体例を表1に示す。
【0007】
表1 3つの異なるサンプルに関する、サンプルプラントEAFダスト成分
【0008】
【表1−1】

【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の要旨
本発明は、有害冶金ダストを取り扱い可能な化学品(無毒廃棄物および/または売買可能な化学品など)に変換するための方法および装置を提供する。本明細書中に記載の方法は、硝酸を用いた、昇圧および昇温における冶金ダストの浸出、ならびに、酸化鉄(III)(ferric oxide)の回収を基礎とし得る。得られる酸化鉄(III)固体をさらに精製するため、浸出工程が反復され得る。また、1またはそれよりも多くの予備精製工程が行われ得る。亜鉛は、炉ダストから得られる混合金属溶液から、塩基を添加して水酸化亜鉛を沈殿させることによって除去され得る。
【0010】
第1の局面において、本発明は、冶金組成物を硝酸水溶液と反応させる方法に関する。反応は、少なくとも約220psigの圧力で、少なくとも100℃の温度で行われる。冶金組成物は、鉄および1またはそれよりも多くの非鉄金属を含む。反応によって、少なくとも一部の非鉄金属組成物は、固体酸化鉄(III)と接触した状態の溶液中に溶解する。
【0011】
別の局面において、本発明は、硝酸鉄(III)(ferric nitrate)水溶液を少なくとも約100℃の温度に、少なくとも約220psigの圧力で付す工程を包含する、酸化鉄(III)の沈殿方法に関する。
【0012】
さらなる局面において、本発明は、冶金ダストを処理するための装置に関し、当該装置は、少なくとも約220psigの圧力において密閉圧力容器を備え、該容器は、少なくとも鉄を含む冶金組成物および硝酸溶液の混合物を収容する。
【0013】
更なる局面において、本発明は、炉ダストから得られる混合金属溶液から亜鉛を単離する方法に関し、当該方法は、塩基を添加して水酸化亜鉛を沈殿させる工程を包含する。
【0014】
上記で概説したように、昇温および昇圧において、溶液中の鉄は、加水分解し、酸化鉄として沈殿する。EAFダストは、高温および高圧において、硝酸中で浸出され、次いで、固体酸化鉄(III)として再沈殿する。EAFダストからの非鉄金属は、酸化鉄(III)として鉄を含む固体沈殿を残して、溶液中に溶解している。このプロセスは、「非鉄」金属からの鉄の分離に有効であることが実証された。しかし、ダスト中の不溶化合物(すなわち、ケイ酸塩)は、酸化鉄(III)とともに残存し、このプロセスによって得られた酸化鉄(III)固体のカラープロパティ(colour properties)を変更する可能性がある。
【0015】
あるいは、予想外にも、上記プロセスの変更によって、結果として、顔料グレードの酸化鉄(III)が生じることが分かった。不溶成分が系から除去され得るように、上記に概説したプロセスを変更して、鉄および他の金属を完全に可溶化した。この溶液を高温および高圧に付し、顔料グレードの酸化鉄(III)を沈殿させる。
【0016】
変更されたプロセスの1つの実施態様において、酸化鉄(III)固体は、昇温および昇圧に付した鉄含有金属硝酸塩溶液から沈殿する。この変更されたプロセスから得られる沈殿は、直径約20〜30ミクロンの黒色固体である。X線回折解析によって、これらの固体はヘマタイト(酸化鉄(III))と同定される。ヘマタイトは、合成ベンガラ顔料(synthetic red iron oxide pigments)に含まれる同一の化合物である。走査電子顕微鏡で調べたところ、黒色沈殿の粒子は、(ベンガラ顔料で生じるような)球状の外観ではなく、その代わり、互いに繋がった多数のより小さな粒子からなるブドウの房のような外観である。この房状粒子が有する異なる結晶構造は、光を異なって反射し、その外観が暗色となり、その用途はベンガラ顔料とはならない。
【0017】
あるいは、既に変更されたプロセスのさらなる変更が利用され得る。別の実施態様において、シード固体を鉄塩溶液に添加し、昇温および昇圧に付し、鉄を加水分解して、顔料グレードの酸化鉄(III)固体を得る。顔料グレードのヘマタイトは、概して、平均の大きさが2ミクロン未満の微粒子で構成され、色は赤色である。シード添加(seeding)は、冶金分野で一般に用いられ、沈殿生成物を成長させ、サイズをより大きくさせる。予想外にも、酸化鉄(III)(ヘマタイト)のシードを鉄塩溶液に添加した後、沈殿した粒子は、シード未添加の反応で得られる黒色沈殿よりも微細であることが分かった。また、予想外にも、シード物質をより多く使用するほど、沈殿はより微細であることが分かった。シード添加プロセスによって得られる沈殿は、概して、(より粗大な生成物も可能であるが)大きさが2ミクロン未満である。シード添加プロセスからの沈殿の走査電子顕微鏡写真は、沈殿が概して本質的に球状であることを示す。これは、変更された(ただし、シード未添加の)プロセスで得られるヘマタイト粒子を含む沈殿と対照的である。予想外にも、シード添加プロセスは、鉄の固体沈殿、酸化鉄の製造をもたらし、これらは大きさおよび色に特徴があり、この特徴によって、沈殿は合成酸化鉄顔料としての用途に望ましいものとなる。
【0018】
様々な実施態様において、選択された粒径を有する酸化鉄(III)沈殿の製造方法が提供され、当該方法は、温度およびシード添加比(seeding ratio)の組み合わせを選択する工程、および、大気圧より高い圧力で当該方法を行い、選択された粒径の酸化鉄(III)沈殿を得る工程を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
詳細な説明
本明細書中に記載されるように、改良された冶金ダストの処理プロセスは、昇圧条件、かつ、一般に、昇温条件での硝酸による冶金ダストの浸出工程であって、酸化鉄(III)の残渣を残しつつ、ダストの1またはそれよりも多くの金属成分を溶解する工程を包含する。このプロセスは、適切な圧力および温度条件において、硝酸/硝酸塩溶液中、鉄が固体酸化鉄、詳細には酸化鉄(III)を形成するという原理に成り立つ。酸化鉄(III)が沈殿である条件下で多くの他の金属混入物が硝酸中に可溶化されるので、酸化鉄(III)は、他の金属成分から分離され得る。高圧浸出プロセスは、ある加圧浸出工程からの残渣/沈殿に対して反復され、向上した純度レベルの酸化鉄(III)を得ることができる。また、初期低圧浸出が任意に行われてもよく、ダストを初期に処理して、鉄が固体形態で残存するpH条件下で有意量の非鉄金属を除去できることが発見されている。高圧浸出アプローチを使用し、ほぼ全ての鉄を元のダストから非常に純粋な形態で回収することができる。
【0020】
本明細書で使用する冶金ダストは、有意な割合の鉄組成物を含む任意の未精製金属組成物である。適切な金属ダストとしては、例えば、製鋼プロセスからの冶金ダスト(EAFダストなど)、ならびに、鉄スクラップ、鋼洗浄ラインから回収される鉄ルージュ(iron rouge)、ミルスケール(mill scale)、鉱物を含む鉄および低級鉄ベース顔料が挙げられる。冶金ダストは不純であるので、冶金ダストは、概して、処理前に少なくとも約10モルパーセントの非鉄金属を含む。
【0021】
本明細書中、改良されたプロセスにおいて、酸化鉄(III)固体の形成によって、対応する硝酸が放出され、この硝酸によって周囲圧力条件で硝酸鉄(III)溶液が形成され得る。酸化鉄(III)からの非鉄金属のさらに良好な分離は、高圧浸出の間に存在する過剰の硝酸を用いて達成される。いくつかの実施態様において、過剰の硝酸は、水を蒸発させることなく再使用のために直接回収され得る。なぜなら、可能性としてさらに多くの酸を添加し、濾液中の硝酸が転用され、浸出プロセスに戻され得るからである。あるいは、この濾液を転用して溶液中の他の金属成分を回収することができる。本明細書中に記載の高圧浸出プロセスを使用し、容易に取り扱い可能な物質を用いた効率的なプロセスで非常に高純度の酸化鉄(III)を得ることができる。
【0022】
EAF冶金ダスト中、高い割合の亜鉛がフェライト(ZnO・Fe)の形で存在し、これは浸出プロセスに対する抵抗を証明している。浸出技術のいくつかは、周囲温度および周囲圧力下での2段階浸出を使用しており、かなり純粋な沈殿生成物および硝酸塩からの硝酸再生プロセス(本明細書中に参考として援用される、米国特許第5,912,402号および同第6,264,909号に記載のプロセスなど)を得る。大気圧下で処理を行う場合、塩基性組成物を添加して水酸化鉄(III)(ferric hydroxide)を沈殿させる。
【0023】
対照的に、本明細書中に記載する通り、冶金ダストから価値ある金属を再生する技術によって、加圧条件下で冶金ダストの硝酸との反応が行われ、金属硝酸塩溶液から酸化鉄(III)が形成される。圧力下での浸出プロセスによって、精製酸化鉄(III)沈殿が生じ、十分な量の他の金属は、得られる物質が有毒廃棄物とならないように除去される。概して、この処理を通して全ての物質は取り扱いが容易である。
【0024】
本明細書中に記載の改良されたプロセスは、冶金ダストの初期水洗を包含してもよく、それによって、数種のクロリド化合物、および、おそらく、ダスト中に含まれる他の混入物を除去する。硝酸を用いたダストの任意の予備浸出を、一般的には加圧浸出を行う前に大気条件下で行ってもよい。鉄は不溶であるが多くの非鉄金属がある程度可溶するpHで予備硝酸浸出を行う。濾液の除去によって、第1精製レベルで固体残渣を得る。
【0025】
加圧浸出用の処理物質は固体であり、これは、未処理の冶金ダストであっても、1またはそれよりも多くの初期精製工程(洗浄または大気条件下での酸浸出など)後に得られる固体であってもよい。処理固体を加圧条件、および、概して、加温条件で、硝酸と反応させる。酸を加圧条件下または周囲条件で固体に添加してもよいが、一般に、圧力は酸の添加後に上昇され得る。酸化鉄(III)は、昇圧および昇温条件下、硝酸中で形成される。従って、固体中の有意量の鉄が酸化鉄(III)として回収され得る。他方、有意な割合の他の金属が昇圧条件で硝酸によって溶液中に溶解される。多くの非鉄金属が溶解されるので、回収された酸化鉄(III)は、出発の冶金廃棄物に対して、有意に精製される。従って、本明細書中に記載のプロセスは、概して、現在のEPAの有毒廃棄物制限を十分に下回る汚染レベルで酸化鉄(III)固体生成物を生産する。この工程の間に発生するあらゆるNOガスが回収され、続いて硝酸にリサイクルされてもよい。加圧浸出工程は、1回またはそれよりも多くの回数で反復されてもよく、酸化鉄(III)の純度を向上させる。詳細には、第2加圧浸出でのある加圧浸出からの固体を用いることによって、残存する非鉄金属は、後続の処理工程の間に溶液中に溶解される。いくつかの実施態様において、生じる酸化鉄(III)は、価値の高い適用を含む様々な用途(顔料、磁気テープ、研磨化合物、および様々な他の用途においてなど)にとって十分に純粋となり得る。
【0026】
圧力および温度がその目標値に達すると、鉄は加圧浸出工程で溶解しないので、硝酸は硝酸鉄(III)として消費されない。従って、硝酸中に鉄を溶解し、続いて、pHを調整することによって溶液から鉄を沈殿させるアプローチと比較すると、より少ない硝酸が消費される。一般に、過剰の硝酸を加圧浸出工程において添加する。従って、各酸浸出からの濾液は残留硝酸を含み得る。この残留硝酸は、可能性として硝酸を添加して、濾液を別の酸浸出工程に戻すことによって使用されてもよい。一度濾液が過剰量の非鉄金属を含むと、濾液は、任意の過剰の酸を使用する浸出工程にではなく、他の金属を回収するための他の処理工程に転用されてもよい。また、様々な部分の濾液を様々な用途に転用してもよい。例えば、一部は、その硝酸含有量のために回収されてもよいし、他方、別の部分は、非鉄金属の回収に転用される。
【0027】
酸化鉄(III)沈殿のために改良されたプロセスは、昇温および昇圧下で反応を生じさせる圧力容器またはオートクレーブの使用を包含する。適切な高温および高圧下での操作に適した圧力容器は、様々な供給者から入手可能であるか、または、適切に組み立てられ得る。例えば、適切な耐圧性を有するチタン反応器が使用されてもよい。例えば、所望量の冶金ダストを取り扱い、所定時間で処理するために、圧力容器の大きさを設計してもよい。圧力容器はパイピングされ、物質をこの容器の内外に移動させてもよく、あるいは、他の容器内の物質が、この圧力容器の内外に手動で移動されてもよい。いくつかの実施態様において、容器はパイピングされ、NOガスを窒素リサイクルプロセスに移してもよい。溶液と接触する特定の容器は、概して、濃縮された酸(例えば、硝酸)との接触に耐えるように設計された内部表面を有する。このような圧力容器に適する可能性のある内部表面としては、チタン、セラミック、ガラスなどが挙げられる。容器は、処理過程で物質の攪拌を提供してもしなくてもよい。
【0028】
一般に、冶金ダスト処理は、EAF設備、BOF設備または他のダスト発生設備の周辺で行われてもよく、あるいは、ダストは、集中回収設備に移送されてもよい。本明細書に記載の再生プロセスが、個々のダスト発生箇所の近隣で実施される場合、有害廃棄物の移送、ならびに、有害かつ有毒な廃棄物の輸送に係る潜在的な負担を減少または排除することができる。また、このような有害廃棄物の保存の必要が減少され、潜在的に排除され得る。
【0029】
本明細書中に記載の冶金ダストの処理および使用済み化学品の回収の改良方法は、昇温および昇圧下での硝酸溶液中の金属化合物の異なる溶解度に基づく。特に、不溶酸化鉄(III)は、硝酸/金属硝酸塩水溶液中、高圧下で形成する。例えば、硝酸鉄は、昇温および昇圧下で加水分解し、沈殿する。酸化鉄(III)形成の反応は以下の通りである。
2Fe(NO + 3HO → Fe + 6HNO
当該反応において、硝酸鉄がこのプロセスにおいて形式的な中間体であるか否かを考慮する必要はないが、処理の最終結果は、酸化鉄(III)が形成されることである。従って、当該プロセスは、冶金ダストまたはその部分的に精製された形態を加温および加圧下で硝酸溶液と反応させる工程を包含し、これによって、冶金ダスト中に存在する非鉄金属組成物(亜鉛、マンガン、カドミウムおよび鉛の組成物など)の完全またはほぼ完全な溶解が生じ得る。固体の濾過によって、結果、溶解した非鉄金属を一般に含む濾液から、固体酸化鉄(III)が分離される。次いで、他の価値ある金属は、さらなる処理によって濾液から回復されてもよく、濾液中の未反応の硝酸はすべて所望により再使用されてもよい。
【0030】
再生プロセスを図1にまとめる。再生プロセスは、冶金ダストを水で洗浄(100)する任意の工程を含んでいてもよい。洗浄されたダストを濾過(102)し、洗浄水から残渣固体を分離する。また、このプロセスは、周囲圧力で行われる、硝酸を用いた予備浸出(preliminary leach)即ち前浸出(pre-leach)(104)を任意に含む。前浸出スラリーを濾過(106)し、残渣固体をさらなる浸出に転用し、そして、濾液をさらなる処理に転用して非鉄金属を回収する。また、さらなる予備処理を所望により実施してもよい。1またはそれよりも多くの予備処理からの残渣を加圧硝酸浸出(108)に付す。硝酸浸出からのスラリーを濾過する(110)。加圧硝酸浸出からの固体は精製された酸化鉄(III)であり、これを精製形態で使用するか、あるいは、必要に応じてさらなる加圧浸出に付し、さらに以下に記載の通り、さらにこの物質を精製する。様々な浸出工程からの濾液を、残留硝酸の再使用、あるいは、非鉄金属成分の回収のためのさらなる処理に転用してもよい。濾液のさらなる処理を以下にさらに記載する。また、残渣固体を以下にさらに記載の通り、1またはそれよりも多くの追加の加圧浸出工程に付してもよい。各工程は別個に、あるいは工程の群が集合的に、バッチ様式またあるいは連続操作で実施されてもよい。
【0031】
いくつかの実施態様において、硝酸の添加前に冶金ダストを水で洗浄(100)するこの初期工程を行うことが有益となり得る。特に、水洗によって、固体から、望ましくない金属ハライドおよび他の可溶組成物が、それらが後の処理工程に存在しないように、除去され得る。一般に、所望の化合物を除去するために、十分な水を金属廃棄物に添加してもよい。一般に、混合物を攪拌して、可溶化プロセスを促進する。この洗浄は、任意の適切な容器中で行われてもよい。
【0032】
水洗混合物を固液分離(102)に付して、濾液から、洗浄された冶金ダスト残渣を分離してもよい。加圧濾過、減圧濾過、重力濾過によって、ならびに、必要に応じて遠心分離の後、固体から液体をデカントすることによって、分離プロセス(102)を行ってもよい。濾過アプローチに関して、標準的な市販のフィルター媒体(例えば、ポリマー織布フィルター媒体、紙フィルター媒体、多孔性セラミックフィルター媒体など)を使用してもよい。分離アプローチに関係なく、簡便のために、分離された液体を濾液と呼び、分離された固体を沈殿と呼ぶ。次いで、濾液は、処理のために水処理システムに送られ得る。残渣固体を酸浸出でさらに処理してもよく、これは、前浸出(104)または直接的に加圧酸浸出(108)であってもよい。
【0033】
洗浄または未洗浄の冶金ダストのいずれかを、大気圧で硝酸溶液と任意に反応、すなわち、浸出(104)させてもよい。十分な硝酸を一般に添加し、酸溶液中に有意量の鉄化合物が溶解せずに有意量の非鉄金属が溶解する値に、pHを下げる。pHを約0.25と約2.5との間、他の実施態様では約0.35〜約2.0、そしてさらなる実施態様では約0.5〜約1.5に調整してもよい。固体残渣中に残存する鉄の量は、一般に少なくとも約95重量%、さらなる実施態様では少なくとも約97重量%、そして更なる実施態様では少なくとも約99重量%である。当業者は、さらなる範囲のpHおよび鉄含有量が意図され、なおかつ本願の開示内であることを理解する。
【0034】
原理上、高圧酸浸出工程を行う前に、1またはそれよりも多くの追加の処理工程を行って、固体金属廃棄物を調製してもよい。同様に、任意の水浸出および/または前浸出を行っても、行わなくてもよい。しかし、次いで、選択された固体を高圧硝酸浸出工程(108)に付す。また、一般に、物質をこの工程の間に昇温に付す。この工程の間、混合物は、硝酸溶液および金属ダスト廃棄物からのペーストまたはスラリーとして形成される。所望の結果を達成するために、水および/または酸を高圧および高温条件で添加しても、添加しなくてもよい。さらに、水および/または酸の一部を周囲圧力で添加してもよく、追加部分を昇圧で添加してもよい。この工程を行う順番は、この処理を行うために選択された装置に依存し得る。なぜなら、物質を加圧容器に添加することが多かれ少なかれ困難となり得るからである。混合物を攪拌して非鉄金属の可溶化を促進してもよい。
【0035】
添加される硝酸の量は、酸の濃度および酸溶液の容量の関数である。原理上、純粋な硝酸を使用してもよいが、取り扱いが困難、また、未希釈の硝酸を使用することは高価となり得る。一般に、冶金ダストは、約10重量%〜約75重量%の硝酸溶液、いくつかの実施態様では約20重量%〜約70重量%、そしてさらなる実施態様では約25重量%〜約65重量%の硝酸溶液の濃度範囲を有する硝酸溶液と反応させる。硝酸は硝酸供給から供給されてもよく、供給は、リサイクルされた硝酸および/または硝酸の新たな供給を含み得る。組成物に対する相対量に関して、硝酸および金属廃棄物の相対重量は、一般に、硝酸溶液の濃度に依存する。また、より高濃度の硝酸溶液を添加してパルプを形成する場合、追加の水もまた添加してもよい。より希薄な硝酸溶液の場合、硝酸:冶金ダストの重量比は、例えば、約3対1(3:1)の比、あるいは、乾燥冶金ダストに対する酸溶液の重量が大きくてもよい。より高い酸濃度を用いる他の実施態様では、重量比は、1対1(1:1)を使用しても、あるいは、乾燥冶金ダストに対する酸溶液が少なくてもよい。一般に、添加される酸の所望量は、また、金属ダストの組成に依存し得る。酸の量は、得られる混合物中の酸を調べることによって評価され得る。得られる混合物中の酸の濃度を選択して、非鉄金属の濾液への所望の可溶化を達成してもよい。容認可能な浸出は、混合物中に遊離酸を含まずに達成され得る。しかし、一般的により高純度の酸化鉄(III)は、混合物が遊離硝酸を含む場合に得られる。遊離硝酸の濃度は、少なくとも5グラム/リットル(g/L)、いくつかの実施態様では少なくとも約15g/L、さらなる実施態様では少なくとも約30g/L、そして更なる実施態様では少なくとも約50g/Lであってもよい。遊離酸は、昇圧下での可溶化プロセスで何回も測定されてもよいが、これらの値は、濃度がもはや顕著に変化しない十分な期間の後に平衡値とみなされ得る。上記に明示の比の範囲内で、反応物の酸濃度、固体量に対する酸の重量比および遊離酸濃度のさらなる範囲が意図され、これらが本願の開示内であることを当業者は理解する。
【0036】
添加する酸の量は、費用および結果に関するトレードオフを含んでいてもよい。より多くの酸の添加は、酸の費用を増加させるが、より多くの酸の添加は、結果、非鉄金属のより良好な可溶化を生じ得る。非鉄金属のより良好な可溶化によって、より多くの純粋な酸化鉄(III)生成物が生じる。特に、鉛および亜鉛のさらに完全な溶解を得るために、硝酸浸出(108)の間およびその後の遊離硝酸の存在が望まれる可能性がある。より少量の硝酸を使用する場合、未溶解のフェライトが固体中に残存し得る。しかし、フェライトの形態であろうがなかろうが、非鉄金属を溶解し、純粋な酸化鉄(III)沈殿を回収するために、複数回の硝酸浸出が行われてもよい。
【0037】
高圧硝酸浸出プロセスは、このプロセス内に1またはそれよりも多くの工程を含んでいてもよい。例えば、高圧浸出を行うために、冶金ダストおよび硝酸を周囲の温度および圧力で合わせ、スラリーまたはパルプを形成してもよい。混合物は圧力容器中で行われてもよく、あるいは、混合物は、別の容器中で形成されてもよく、その後、高圧浸出を行う圧力容器に移されてもよい。いくつかの実施態様において、冶金ダストおよび硝酸は、昇温および/または昇圧において、例えば、酸化鉄(III)を沈殿させるのに用いる温度および圧力で合わされてもよい。
【0038】
特定の実施態様において、一般に、まず、硝酸および金属ダストを周囲圧力で混合する。この混合を圧力容器内で行っても、行わなくてもよい。この混合をまず圧力容器の外部で行う場合、混合物を圧力容器に移す。圧力容器を閉め、温度を上げることによって、圧力を上昇させてもよい。蒸気を注入して温度および圧力の両方の上昇を行ってもよい。あるいは、または、さらに、加熱マントルなどを用いて反応器を加熱してもよいし、そして/あるいは、スラリーを反応容器に移す間に加熱してもよい。
【0039】
ダストおよび酸の混合物を形成する際、いくつかの実施態様では少なくとも約1/4時間、さらなる実施態様では約半時間〜約5時間、そして更なる実施態様では約1時間〜約2時間、混合物を周囲圧力で混合してもよい。また、昇圧下での反応時間を選択して、非鉄金属の硝酸溶液への所望の可溶化を達成すべきである。一般に、十分な期間の後、混合物は平衡に達し、さらに時間が経過しても、その組成が顕著に変化しないようになる。以下の実施例において、組成は、一般に、約2〜約2 1/2時間後に変化を止める。概して、少なくとも約30分間、さらなる実施態様では少なくとも約1時間、更なる実施態様では少なくとも約2時間、そして他の実施態様では約2 1/2時間〜約5時間、選択された圧力および温度の範囲内での浸出が行われる。明示の反応時間の範囲内で追加の反応時間が意図され、それらが本願の開示内であることを当業者は理解する。メカニカルインペラまたは他の混合装置がスラリーを混合するのに使用されてもよい。
【0040】
さらに、高圧硝酸浸出(108)工程の間で使用される昇温および昇圧によって、亜鉛、鉛および他の非鉄金属の溶解が増大する。また、圧力および温度は、溶解の速度に影響を与えてもよい。圧力容器内の硝酸溶液の昇温および昇圧の適切な範囲を超えると、酸化鉄(III)はほぼ完全に不溶であり、ほぼ全ての鉄が酸化鉄(III)として回収されるようになる。従って、酸化鉄(III)は、溶液中に残存する非鉄金属から分離され得る。例えば、固体内に非鉄金属を保持する固体フェライトから不純物が生じ得る。いくつかの実施態様において、高圧浸出反応は、一般に、少なくとも約150℃、さらなる実施態様では約200℃〜約500℃、他の実施態様では約225℃〜約400℃、さらなる実施態様では約250℃〜約350℃の範囲の温度で進行する。さらに、圧力容器の圧力は、一般に、少なくとも約225psig、さらなる実施態様では約250psig〜約800psig、他の実施態様では約275〜約600psig、そしていくつかの実施態様では約300psig〜約500psigの値で維持されてもよい。psig(ポンド パー スクエア インチ ゲージ(pounds per square inch gauge))は圧力の単位であり、示した値は大気圧を超える量である。バッチ処理に関して、上記値は、潜在的に、温度および圧力が平均処理条件付近に上昇する一過的な期間の後の平均値であってもよい。明示の範囲内における温度および圧力のさらなる範囲が意図され、それらが本願の開示内であることを当業者は理解する。
【0041】
高圧硝酸浸出工程(108)は、ガス、NOを発生し得る。ガスは、回収場所への移送のために、および、ガスの水との混合による窒素(nitric)の回収のために、排出されてもよい。あらゆる窒素酸化物ガスの排出は、圧力容器内の圧力を所望のレベルで維持するために、注意して行われなければならない。同様に、回収された窒素酸化物ガスは、例えば、従来の圧力バルブを用いて、回収用の圧力容器から単離されてもよい。NOで表される窒素を含むガスは、例えば、本明細書中に参考として援用される Drinkard, Jr.に付与された米国特許第6,264,909号、「Nitric Acid Production And Recycle」に記載の手順に従って、再使用のために硝酸に変換され得る。
【0042】
主に酸化鉄(III)を含む残渣固体は、濾液から分離される(110)。さらに、分離工程の間に固体に付着する可溶化した非鉄金属を除去するために、残渣固体を洗浄してもよい。一般に、洗浄は任意の適切なアプローチで行われてもよい。1つの実施態様において、1またはそれよりも多くの洗浄工程を使用し、ここで各洗浄工程は、水中に固体を懸濁させる工程、および、固体を濾過する工程を包含した。各工程で懸濁を行うために十分な水を使用してもよい。洗浄水が所望のレベルの純度を有するまで洗浄工程を反復してもよい。洗浄水を最初の濾液に添加してもよく、別途処理して金属成分を除去するか、あるいは、さもなくば廃棄のために処理してもよい。
【0043】
高圧浸出からの濾液は、一般に、遊離硝酸ならびに有意量の溶解した非鉄金属を含む。この溶液は代替的に、周囲の圧力または昇圧でさらなる浸出工程を行うために戻して、遊離硝酸を使用してもよい。硝酸供給から、追加の硝酸を添加し、浸出に望ましいレベルの酸を得てもよい。さらに、または、あるいは、一部または全部の濾液をさらなる処理に向かわせ、下記にさらに記載するように、溶液から非鉄金属を再生してもよい。図1は、濾液の代替処理経路を示す。
【0044】
図2は、別の加圧硝酸浸出工程(112)の追加を示すことによって、図1に示した改良再生プロセスを発展させる。この工程において、第1の加圧硝酸浸出工程からの酸化鉄(III)固体を追加の硝酸と接触させ、一般に加熱を伴う昇圧に付す。追加の浸出工程(112)において、硝酸を昇圧下で酸化鉄(III)沈殿に添加してもよいし、あるいは、周囲圧力で添加し、続いて、圧力下で反応させてもよい。追加の硝酸浸出工程(112)は、一般に、上記の最初の硝酸浸出工程(108)と同様に行われる。一般に、加圧硝酸浸出を遊離硝酸存在下で行う。遊離硝酸レベルは、浸出工程(108)について上記の硝酸レベルと同程度であってもよい。生成物が既に精製されているので、より少量の酸が加圧浸出(112)に必要とされ得る。さらなるフェライトがこの第2浸出で溶解してもよく、純粋な酸化鉄(III)生成物を生じる。この段階で発生する全てのNOガスが硝酸回収に従ってリサイクルされてもよい。
【0045】
十分な時間が経過した後、第2加圧浸出からの物質を濾過(114)に付す。また、濾過工程(110)に関して上記したように、様々な量の水で固体を洗浄してもよい。濾過からの固体/沈殿は精製酸化鉄(III)である。この第2浸出からの濾液は先の浸出工程からの濾液と合わせても合わせなくてもよく、そして、それぞれの濾液または合わせた濾液を、必要に応じてさらなる硝酸を添加して、別の浸出工程で再使用してもよいし、あるいは、非鉄金属の回収のためにさらに処理してもよい。濾液の一部を所望に応じて別々に処理してもよい。また、1またはそれよりも多くの追加の加圧浸出工程を行って、酸化鉄(III)固体生成物の純度をさらに向上させてもよい。
【0046】
1回、2回またはそれよりも多くの加圧浸出工程を用いると、得られる酸化鉄(III)は、所望の値にまで低く減少した多くの金属混入物のレベルを有していてもよい。2回の加圧処理工程を用いると、非鉄金属をほとんど含まない酸化鉄(III)を得ることができる。クロムは、明らかに、酸化鉄(III)から分離するのが非常に困難であり、酸化鉄(III)とともに共沈する。しかし、他の重金属は、一般に、酸化鉄(III)を精製するための加圧硝酸浸出において除去される。純粋な酸化鉄(III)(Fe)は、69.94重量%の鉄および30.06重量%の酸素を有する。
【0047】
加圧硝酸浸出に供給された冶金廃棄物中の最初の鉄のうち、少なくとも約95%、いくつかの実施態様では少なくとも約97.5%、そしてさらなる実施態様では少なくとも約99%が精製酸化鉄(III)として回収され得る、溶解度の差が十分である。一般に、少なくとも約70重量%、さらなる実施態様では少なくとも約80重量%の酸化鉄(III)、そして他の実施態様では約85〜約95重量%の酸化鉄(III)を含む固体生成物を得ることが可能である。いくつかの精製酸化鉄(III)物質では、残存する不純物の大半が、ケイ酸塩からなる。同時に、亜鉛レベルを非常に低い値(例えば、最初の亜鉛の約5%以下のレベル)に下げることが可能である。詳細には、酸化鉄(III)固体中の亜鉛金属濃度を約10重量%以下、さらなる実施態様では約2重量%以下の値に下げることができる。他の実施態様では約0.5重量%以下、さらなる実施態様では約0.1重量%以下。明記の範囲内において、組成のさらなる範囲が意図され、それらが本願の開示内であることを当業者は理解する。
【0048】
同様に、鉛、カドミウムおよびマンガンを低濃度に下げることができる。特に、有毒な鉛のレベルは、約0.1重量%以下、他の実施態様では約0.05重量%以下、そしてさらなる実施態様では約0.04重量%以下に減少され得る。他の金属レベル、例えば、ヒ素、カドミウム、マンガンも同様に減少され得る。追加の濃度の範囲が意図され、それらが本願の開示内であることを当業者は理解する。重金属の濃度が精製酸化鉄(III)固体において有意に減少され得るので、固体生成物を取り扱うための多くの選択肢がある(普通廃棄物としての固体の廃棄、生成物の製鋼操作への回帰、あるいは生成物のより価値の高い用途(顔料用途など)への使用が挙げられる)。顔料としての用途に関して、精製酸化鉄(III)は、例えば、酸化鉄(III)を適切なキャリアリキッドと合わせることによって、コーティング組成物中に含ませてもよい。あるいは、または、さらに、精製酸化鉄(III)を成形組成物と合わせて、顔料として酸化鉄(III)を含む固体目的物に成形してもよい。成形組成物としては、例えば、ポリマーまたはコンクリートが挙げられ得る。固体目的物の形成は、任意の様々なアプローチ(例えば、任意の様々な成形アプローチ、押し出しアプローチなどが挙げられる)に基づいていてもよい。
【0049】
当該プロセスの有意な結果は以下の通りである。すなわち、生成物のダストは、本明細書中に参考として援用される the Code of Federal Regulations. 40 C.F.R.§ 261.24 (Toxicity Characteristics) に現在見受けられるような、ゴミ投棄場に関する the Toxicity Characteristic Leach Procedure based Toxicity Characteristic metal waste limits(金属廃棄物制限)のもと、the Environmental Protection Agency (EPA) の現在の基準において、有毒廃棄物としてもはや分類されなくてもよい。本明細書中で記載されるような単回の加圧硝酸浸出によって十分な量の重金属が除去され得ること、得られる固体は、本明細書中に参考として援用される2004 EPA 固体廃棄物基準において、もはや有毒廃棄物でないことが、特に実証されている。詳細には、十分な量のヒ素、バリウム、クロム、水銀、ニッケルおよび鉛が除去される。ダストを処理して有害廃棄物でない固体を形成する能力は、当該プロセスの重要な結果である。勿論、適切な処理を用いることによって、本明細書に記載のプロセスは、有害廃棄物でないだけでなく、顔料などの所望の用途に適した物質になるように、得られる酸化鉄(III)の純度をさらに向上させてもよい。特に、本明細書に記載のプロセスから、精製酸化鉄(III)の結晶性からさらに利益を得る顔料など様々な用途に係る所望の特徴を有する、結晶性酸化鉄(III)が製造され得る。実質的な結晶性は生成物質のX線回折解析を用いて証明され得る。
【0050】
酸化鉄(III)の除去後の濾液は硝酸および溶解した非鉄金属化合物を含むが、溶液中に残渣鉄がいくらか残存する(これは、ダスト中の元々の鉄の小さい割合に過ぎないとしても、無視できない量である)。一般に、有意量の残存金属は亜鉛である。残存金属を回収して有用な物質を生産してもよい。
【0051】
さらなる金属が金属硝酸塩濾液から再生され得る。1つの経路において、鉄回収からの濾液Fを一般に熱を付与することによってエバポレート(140)して溶液を濃縮する。一般に、亜鉛以外の金属の大半が硝酸亜鉛の前に沈殿する。従って、濃縮液を回収し、他の金属を回収するためのさらなる処理に使用してもよい。あるいは、または、さらに、溶液を乾固するまでエバポレートし、分解して金属酸化物、酸素および窒素酸化物ガス(NO)を発生させてもよく、このガスを回収し、水に添加して硝酸を形成してもよい。金属酸化物をさらに処理して所望の金属を回収してもよい。非鉄金属を回収するアプローチは、本明細書中に参考として援用される Drinkard, Jr.らに付与された米国特許第5,912,402号、「Metallurgical Dust Recycle Process」にさらに記載される。
【0052】
装置
一般に、金属回収プロセスの様々な工程を市販の入手可能な反応器および容器を用いて行ってもよい。加圧硝酸浸出工程は、様々な反応物と、酸化鉄(III)精製を達成するための機器とを組み合わせる。冶金ダストを処理するための加圧硝酸浸出を行うための装置の実施態様は、当該プロセスの間に達する圧力に耐え得る密閉反応容器中に、冶金ダストおよび硝酸水を含んでいてもよい。再生プロセスの他の工程のいくつかにおいて使用される容器は必ずしも圧力容器である必要はない。
【0053】
冶金ダストは、電気アーク炉(Electric Arc Furnace (EAF))、転炉(Basic Oxygen Furnace(BOF))あるいは廃棄冶金ダストを生じるいくつかの他のプロセスから供給され得る。冶金ダストを洗浄するための装置で使用する水は、水道水、脱イオン水、いくつかの他の処理水またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0054】
図3を参照すると、概略図は、加圧硝酸浸出を行うのに適した反応器を示す。反応システム(200)は、圧力容器/反応器(202)、硝酸水および冶金ダストのペーストもしくはパルプ(204)、加熱要素(206)、ならびに反応混合物/パルプを攪拌するためのインペラ(208)を備える。適切な反応システムは、市販の反応器から適合されてもよいし、あるいは、容易に入手可能な材料から組み立てられてもよい。例えば、適切な反応器としては、例えば、Parr Instrument Co., Moline, IL. から入手可能な圧力反応器が挙げられる。
【0055】
硝酸供給から硝酸溶液が提供されてもよく、これは、市販の供給源、加水分解されて硝酸を形成する窒素酸化物ガスを回収する硝酸リサイクルシステム、遊離硝酸を含む浸出工程からの濾液、あるいはそれらの組み合わせから提供されてもよい。
【0056】
シード添加沈殿プロセス
図7に示すようなシード添加沈殿プロセスの1つの実施態様において、鉄は、酸浸出段階で酸に溶解して鉄塩溶液を形成する。適切な酸としては、硝酸、硫酸および塩酸が挙げられる。鉄は、可溶化してもよく、硫酸鉄(III)塩または塩化鉄溶液から沈殿させてもよい。例えば、「Formation of Pure Hematite by Hydrolysis of Iron (III) Salt Solutions under Hydrothermal Conditions」、B. Voigt および A. Gobler, Crystal Research Technology, Vol. 21, 1986, pp.1177-1183) を参照のこと。シード固体を圧力鉄沈殿段階に添加し、選択された粒径の沈殿を得るのに十分な期間、その混合物を昇温および昇圧に付す。
【0057】
他の実施態様において、磁鉄鉱などの鉄固体を酸(例えば、硝酸)と合わせ、そして攪拌反応器内で浸出して鉄を可溶化し、鉄塩溶液(400)を形成する。正確な浸出段階の配列は、使用される鉄固体の特徴に依存する。浸出を単回段階、あるいは「連続」もしくは「平行」で配列された複数回段階で行ってもよい。浸出段階の供給端(feed end)に戻る浸出段階生成物ストリームからの部分的に浸出された固体のリサイクルは、鉄可溶化を増大させるのに利点を有していてもよい。
【0058】
様々な実施態様において、酸浸出用のフィード溶液と組み合せた、鉄シード固体としての磁鉄鉱の用途が提供される。また、酸浸出は他の鉄含有シード固体を用いて達成されてもよい。それらとしては、スクラップ鉄および他の物質(冶金廃棄物または採掘濃縮物(mine concentrates)など)が挙げられ得る。例えば、鋼製品の酸洗浄からの廃液。また、必要に応じて、硝酸塩、硫酸塩および塩化物の鉄塩溶液を使用してもよい。利用するシード固体に応じて、正確な浸出回路の配列を適宜変更してもよい。
【0059】
特定の割合の不溶物質がシード固体中に含まれていてもよい。酸浸出(400)の後、鉄塩溶液を液体/固体分離段階に付してもよい。これを多数の従来技術(濾過(減圧および加圧)、沈降、または両方の技術の組み合せが挙げられる)を用いて達成してもよい。高温脱硝段階(401)において任意の不溶固体を処理して残存する水分および硝酸塩を除去してもよい。脱硝に必要な温度は、容認される残存硝酸塩の程度に依存し、一般には、約400℃〜約700℃の範囲である。(401)の間に除去される水分および硝酸塩ガスは、従来の濃縮およびスクラブ技術を用いて再使用のために回収されてもよい。
【0060】
次いで、浸出段階(400)からの鉄塩溶液を圧力鉄沈殿段階(402)へのフィード溶液として利用してもよい。沈殿の前に、酸化鉄シード固体を混合容器中で鉄塩フィード溶液と組み合わせて、フィード溶液/シード固体スラリーを形成してもよい。利用するシード固体の量および/またはシード添加比(seeding ratio)を調整し、生成物スラリー中の沈殿酸化鉄の粒径を制御してもよい。シード添加比とは、選択された沈殿条件下で既知のフィード溶液を用いるシード未添加の圧力沈殿反応から得られると期待される酸化鉄沈殿の重量に対するシード固体の重量の比をいう。シード添加比は、シード未添加の試験的な圧力沈殿反応からの沈殿生成物の重量に基づいて計算される。例えば、所定の温度および圧力において、既知濃度の溶解鉄を含む既知容量のフィード溶液を用いて、シード未添加の圧力沈殿反応を行い、反応の生じた酸化鉄(III)沈殿を秤量し、沈殿の効率(すなわち、これら選択したシード未添加の条件下で沈殿する溶解鉄の割合)を決定する。次いで、生成物の重量に基づいて、選択されたシード添加比が後続のシード添加圧力沈殿反応のために選択され得る。シード添加比は、例えば、沈殿する新たな酸化鉄の約20%〜約2000%の範囲であってもよい。別の実施態様では、シード添加沈殿プロセスを約50%〜約500%のシード添加比を用いて行ってもよい。あるいは、全部もしくは一部のシード物質を沈殿プロセスの間に圧力沈殿反応器に直接導入してもよい。別の実施態様において、沈殿する生成物の粒径の制御を改善するため、圧力沈殿段階への添加前に、ほぼ、2ミクロン未満、または、2ミクロンに等しい顔料グレードの大きさにシード固体を粉砕してもよい。
【0061】
代替の実施態様において、任意の最小値(約20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990または1000%)〜それより大きな任意の最大値(約1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900または2000%)から選択される範囲のシード添加比を用いて、シード添加沈殿プロセスを行ってもよい。
【0062】
様々な実施態様において、圧力鉄沈殿段階(402)をバッチ法(batch-wise)または連続様式(continuous manner)のいずれかで行ってもよい。様々な実施態様において、攪拌圧力沈殿反応器を利用し、沈殿処理の間、懸濁液中でシード固体を維持する。別の実施態様において、連続操作沈殿プロセスを用いて、反応器を内部堰を備えた構成にし、容器を多数の一連の区画に分割してもよく、各区画を別個に攪拌する。あるいは、任意数の別個に攪拌される容器を並べて配置してもよい。連続沈殿プロセスを達成するために、他の反応器の配列もまた意図されることを当業者は理解する。
【0063】
様々な実施態様において、沈殿反応器に入れる前、および/または、沈殿が進行する間、鉄塩フィード溶液/シード固体スラリーを加熱してもよい。直接または間接的のいずれかで加熱を行ってもよい。いくつかの実施態様において、熱を沈殿生成物スラリー(402)から回収してもよく、次のフィード/シードスラリーの加熱に使用してもよい。鉄沈殿の程度は、沈殿の間に利用される温度ならびにフィードスラリー中の鉄および遊離酸の濃度に依存し得る。溶解した鉄および遊離酸の濃度が増加するにつれて、同程度の沈殿を得るのに必要な温度もまた上昇する。1つの実施態様において、従来の処理容器設計の経済的側面は、典型的に、約5g/lから鉄(III)塩(ferric salt)の結晶化の開始までのどこかで溶解した鉄を含むフィード/シードスラリーでは、約100℃〜約300℃の温度を命じる。また、同量の遊離酸をいくつかの実施態様で使用してもよい。これらの条件は、大気圧超〜約1300psigの圧力を要する。他の反応容器の設計によって、より高濃度の鉄および遊離酸ならびに対応のより高温を利用することが可能となり得る。一般に、シード添加プロセスは迅速な反応である。沈殿反応が極めて迅速に完全に進行する。1時間未満の反応時間を要する場合もある。いくつかの実施態様において、より高い沈殿温度によって、反応時間を減少させてもよい。様々な実施態様において、シード添加沈殿プロセスは、約1分〜約6時間の保持時間を有していてもよい。様々な実施態様において、シード添加沈殿プロセスは、約30分〜約1時間の保持時間を有していてもよい。
【0064】
代替の実施態様において、シード添加沈殿プロセスは、任意の最小値(約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30分)〜それより長い任意の最大時間(約30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350または360分)から選択される保持時間を有していてもよい。
【0065】
様々な実施態様において、シード添加沈殿プロセスは、約100℃〜約300℃の温度を利用してもよい。他の実施態様では、約175℃〜約250℃の温度を利用してもよい。他の実施態様では、特に、より低い鉄濃度を有する溶液を使用する場合、約130℃〜約175℃のより低い温度を使用してもよい。代替の実施態様において、シード添加沈殿プロセスは、ある温度、あるいは任意の最小値(約100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170または175℃)〜それより大きな任意の最大値(約175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295または300℃)から選択される温度範囲で行われ得る。様々な実施態様において、175℃〜250℃の範囲の温度に関する圧力は、約100psig〜約600psigである。
【0066】
代替の実施態様では、シード添加沈殿プロセスは、ある圧力、あるいは、任意の最小値(約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295または300psig)〜それより大きな任意の最大値(約300、305、310、315、320、325、330、335、340、345、350、355、360、365、370、375、380、385、390、395、400、405、410、415、420、425、430、435、440、445、450、455、460、465、470、475、480、485、490、495、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000、1010、1020、1030、1040、1050、1060、1070、1080、1090、1100、1120、1130、1140、1150、1160、1170、1180、1190、1200、1210、1220、1230、1240、1250、1260、1270、1280、1290または1300psig)から選択される圧力範囲で行われてもよい。
【0067】
他の実施態様において、温度を調節して粒径および外観を制御することができる。例えば、概して、温度が高いほど、より平滑な表面テクスチャー(smoother surface textures)を有するより大きな粒子を生じ、他方、温度が低い程、より粗い表面を有する粒子を生じ得る。いくつかの実施態様において、所定のシード添加比では、温度が低いほど、対応するより高温と比較して、より小さな粒子を生じ得る。
【0068】
様々な実施態様において、圧力沈殿段階(402)の後、冷却され大気圧に戻され得る反応器から、生成物のスラリーを取り出してもよい。冷却は、間接手段、直接注入またはその圧力が解放される際の蒸気フラッシングによって行われ得る。次いで、生成物スラリーストリームを固体/液体分離プロセスに付してもよい。これは、濾過(減圧および加圧)、沈降または両方の技術の組み合わせを含む多数の従来技術を用いて達成されてもよい。別の実施態様において、沈殿した固体の一部を圧力沈殿用のシード固体として転用およびリサイクルしてもよい。別の実施態様において、最終生成物固体を脱硝/か焼(403)し、残存する水および硝酸塩を全て除去してもよい。脱硝に要する温度は、許容できる残存硝酸塩の程度に依存する。脱硝/か焼の温度は、概して、約400℃〜約700℃を超過してもよい。この段階(403)の間に除去される水分および硝酸塩ガスは、従来の濃縮およびスクラブ技術を用いて再使用のために回収されてもよい。別の実施態様において、乾燥した固体を、次いで、顔料物質として従来通り処理してもよい。
【0069】
この圧力沈殿プロセスの間、溶液中の鉄を加水分解して酸化鉄(III)固体を形成してもよい。1つの実施態様において、この種の酸成分は、溶液中に、例えば、硝酸の形態で回収または再生されてもよい。液体/固体分離の後、この溶液の大半が酸浸出段階(400)にリサイクルされ、さらなる顔料製造のための新たな硝酸鉄(III)溶液を生じてもよい。いくつかの実施態様において、ブリードストリームを利用し、再生した酸溶液の一部を除去してもよい。このブリードの目的は、酸浸出段階(400)で可溶化し得る他の非鉄微量不純物の許容レベルを維持することである。リサイクルされる溶液の容量に対するブリード容量の比は、溶液中のこれらの不純物の量に依存し得る。不純物は、利用されている鉄供給物質の供給源に依存し、また、不純物としては、典型的には、例えば、マンガン、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、ナトリウムなどの元素が挙げられ得る。
【0070】
様々な実施態様において、硝酸塩溶液のブリードストリームに利用可能な潜在的な処理プロセスがいくつか存在する。1つの実施態様において、ストリームを蒸留プロセス(404)に付し、水/微量(weak)硝酸塩のオーバーヘッドストリーム(overhead stream)を除去することによって、酸および可溶金属硝酸塩を濃縮してもよい。次いで、蒸留残渣(distillation bottoms)を直接スプレー乾燥プロセス(405)に付してもよい。このプロセスは、残存する硝酸塩および水分をいくらか含む金属酸化物の固体生成物を残して、大半の硝酸および水をフラッシュして除く。スプレードライヤーオーバーヘッド(spray dryer overheads)を濃縮およびスクラバーによって処理し、硝酸を回収してもよく、次いで、硝酸をこのプロセスの酸浸出段階(400)にリサイクルしてもよい。別の実施態様において、スプレー乾燥プロセスからの固体をさらに処理し、脱硝(401)によって、残存硝酸塩/水分を除去してもよい。
【0071】
あるいは、別の実施態様において、硝酸塩ブリードストリームをアルカリ(すなわち、石灰)沈殿によって処理し、大半の金属不純物を沈殿させてもよい(406)。沈殿からのスラリーを固体/液体分離によって処理し、沈殿した固体を除去してもよい。次いで、この固体を脱硝段階(401)に付して、残存する硝酸塩および水分を排除してもよい。固体/液体分離からの溶液(濾液)をエバポレーション(407)によって濃縮し、市販グレードの硝酸カルシウム溶液を生産してもよく、それを販売してもよい。沈殿のためのアルカリの選択に依存して、さまざまな最終生成物の溶液が調製され得る。硝酸塩ブリード溶液に対する処理溶液の選択は、プロジェクトに特異の多数のパラメータに依存する。処理の目的は、含まれる硝酸塩の価値を回復すること、ならびに、経済価値を有する生成物を生産することである。
【0072】
様々な実施態様において、シード添加比および温度の両方を変更し、沈殿で得られる粒子の特徴を目的に合わせてもよい。シード添加比および温度の変更の結果、顔料の色および大きさの広い範囲が生じる。例えば、「イエロー・シェード(yellow-shade)」レッド(微粒子)から「ブルー・シェード(blue-shade)」レッド(それよりも粗い粒子)までのレッドシェードが得られ得る。粒子が形成されている場合、シード添加沈殿プロセスによって、沈殿の大きさおよび色の直接制御が可能となる。別の実施態様において、さらなる変更が必要な場合、沈殿は後続のか焼および/または摩砕によって従来通り処理され得る。
【0073】
様々な実施態様において、シード添加沈殿プロセスによって得られる沈殿は、約0.1ミクロン〜約10ミクロンの平均粒径(直径)を有する。様々な実施態様において、シード添加沈殿プロセスによって得られる沈殿は、約0.15ミクロン〜約2.5ミクロンの粒径(直径)を有する。代替の実施態様において、シード添加沈殿プロセスによって得られる酸化鉄(III)沈殿粒子の平均粒径(直径)(d50)は、任意の最小値(約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4または2.5ミクロン)〜それよりも大きい任意の最大値(約2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5または10ミクロン)から選択される。
【0074】
様々な実施態様において、溶解した鉄の塩溶液を得るために、磁鉄鉱を硝酸中に溶解させてもよい。別の実施態様において、ヘマタイトまたは廃棄物酸洗浄鋼製品などの鉄固体を特許請求の方法とともに使用してもよい。別の実施態様において、硝酸鉄(III)以外の塩を使用してもよく、また、例えば、硫酸塩および塩化物を用いてもよい。
【0075】
別の実施態様において、塩溶液中に溶解した鉄の濃度は、約5g/Lから鉄(III)塩(ferric salt)の結晶化の開始までの範囲であってもよい。別の実施態様において、塩溶液中に溶解した鉄の濃度は、約10g/L〜約100g/Lの範囲であってもよい。別の実施態様において、塩溶液中に溶解した鉄の濃度は、約30g/L〜約60g/Lの範囲であってもよい。代替の実施態様において、溶解した鉄の濃度は、任意の最小値(約5、10、15、20または30g/L)〜任意の最大値(約30、40、50、60、70、80、90、100g/Lまたは結晶化の開始まで)から選択される。
【0076】
1つの実施態様において、鉄塩溶液中の遊離酸の濃度は、約0〜約150g/Lの範囲であってもよい。1つの実施態様において、鉄塩溶液中の遊離酸の濃度は、約30〜約70g/Lの範囲であってもよい。より高濃度の遊離酸を使用してもよいが、より高圧に耐え得る特別な反応容器が必要であることを当業者は理解する。代替の実施態様において、遊離酸の濃度は、任意の最小値(約0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70または75g/L)〜任意の最大値(約75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145または150g/L)から選択される。
【0077】
適切なシード物質は、所望の特徴を有する沈殿の回収を許容する任意の物質であってもよい。1つの実施態様において、市販のBayferroxTM 105Mまたは130M(Lanxess)酸化鉄顔料を使用してもよい。様々な実施態様において、シード物質は当該プロセス内でリサイクルされてもよいので、外部から購入する物質は必要なくなる。このシード物質は、圧力沈殿段階(402)からの生成物ストリームから転用され、必要に応じてリサイクルされる。リサイクルされたシードを研削に付し、沈殿した生成物の所望の特性をさらに向上させてもよい。一般に、シード比とは、シード固体の量 対 新たな酸化鉄沈殿の量をいう。様々な実施態様において、このプロセスは、約20%〜約2000%のシード比を利用する。
【0078】
この大きさの範囲は、顔料グレードの酸化鉄の特徴である。当該プロセスの様々な実施態様において、シード添加比および温度を調整するので、沈殿の粒径が変更されてもよい。粒径が増大するにつれて、沈殿のカラーシェード(colour shade)は、細かい「イエロー・シェード(yellow-shade)」レッドから粗い「ブルー・シェード(blue-shade)」レッドに徐々に変化した。選択される粒径は、所望であれば任意である。いくつかの実施態様では、選択される粒径は、より微細かつ高シード添加比であってもよく、またあるいは、より低温をこのプロセスで使用してもよい。より粗い粒径が所望の場合、より低いシード添加比、またあるいは、より高い温度をこのプロセスで使用してもよい。
【0079】
様々な実施態様において、シード添加沈殿プロセスから得られる酸化鉄(III)沈殿は、約40〜約60のLを有する。様々な実施態様において、シード添加沈殿プロセスから得られる酸化鉄(III)沈殿は、約49〜約55のLを有する。代替の実施態様において、酸化鉄(III)沈殿は、任意の最小値(約40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50)〜任意の最大値(約50、51、52、53、54、55、56、57、58、59または60)から選択されるLを有していてもよい。様々な実施態様において、シード添加沈殿プロセスから得られる酸化鉄(III)沈殿は、約10〜約40のaを有する。様々な実施態様において、シード添加沈殿プロセスから得られる酸化鉄(III)沈殿は、約19〜約33のaを有する。代替の実施態様において、酸化鉄(III)沈殿は、任意の最小値(約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25)〜任意の最大値(約25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40)から選択されるaを有していてもよい。様々な実施態様において、シード添加沈殿プロセスから得られる酸化鉄(III)沈殿は、約5〜約35のbを有する。様々な実施態様において、シード添加沈殿プロセスから得られる酸化鉄(III)沈殿は、約12〜約28のbを有する。代替の実施態様において、酸化鉄(III)沈殿は、任意の最小値(約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20)〜任意の最大値(約20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34または35)から選択されるbを有していてもよい。
【実施例】
【0080】
実施例
以下の試験で使用した冶金ダストは、製鋼作業の結果として生じた、EAFダストであった。EAFダストを様々な試験に提供した。
【0081】
実施例1−冶金ダスト圧力硝酸浸出試験
これらの実施例は、冶金ダストおよび硝酸のスラリーからの酸化鉄(III)の沈殿および他の金属の可溶化の実現可能性を実証する。酸化鉄(III)固体の良好な分離が得られるように選択した条件を用い、熱を付与した加圧容器内で処理を行った。この試験における浸出温度および遊離酸のレベルを変動させ、様々な条件下での結果を調べた。これらの試験では、以下の成分を含むEAFダストサンプルを利用した(元素分析によって決定)。
【0082】
【表1−2】

【0083】
ある量(240g)のEAFダストを400mLの脱イオン水を用いてパルプ化し、反応容器中でメカニカルミキサーを用いて混合した。反応容器は、攪拌を伴うParr圧力反応器(Parr Instrument Co., Moline, JL)であった。混合しながら、69%硝酸を混合物にゆっくりと(30分間かけて)添加した。酸を添加し、総酸添加比(overall acid addition ratio)1175g(69%の酸)/Kg(乾燥ダスト)を得た。最後の酸添加時から60分間スラリーを混合した。混合時間の最後に25mLのパルプサンプルを容器から取り出し、濾過した。サンプル溶液(濾液)を回収し、分析に提出した。サンプルのフィルターケーキ残渣を脱イオン水で洗浄し、乾燥し、そして秤量した。フィルターケーキの一部を組成について分析した。
【0084】
追加量の69%硝酸を予備混合ダストスラリーに添加し、その後、スラリーを反応容器に導入した。反応容器内の物質をさらに30分間混合し、次いでそのオートクレーブ容器を密閉した。
【0085】
オートクレーブ容器内の物質を外部容器加熱によって3時間180〜220℃に加熱した。容器内の圧力が500psigに近づいた場合に容器を排気するように、容器内の圧力をモニターした。オートクレーブ物質の動力学サンプル(kinetic samples)(すなわち、中間体サンプル)を、物質が温度に到達した時点から、1時間および2時間で採取した。動力学パルプサンプル(kinetic pulp samples)を濾過し、そして圧力浸出溶液サンプル(濾液)を回収し、分析した。フィルターケーキ残渣サンプルを脱イオン水で洗浄し、乾燥し、秤量し、そして分析した。
【0086】
3時間の終りにオートクレーブを冷却し、圧力を解放した。濾液を回収し、分析した。フィルターケーキ残渣は、新たな水で3回洗浄された浸出濾過(displacement)であった。洗浄液を合わせ、分析した。洗浄したフィルターケーキ残渣を乾燥し、秤量し、そして分析した。
【0087】
初期浸出(大気圧)および圧力酸浸出の条件を以下にまとめる:
【0088】
初期混合 圧力酸浸出のために初期混合物に添加したもの
フィード重量(g) 240 脱イオン水(g) 200
脱イオン水(g) 400 69%硝酸(g) 可変
69%硝酸(g) 282 パルプ密度 15〜20
時間(分) 60 (%固体 w/w)
パルプ密度 26.0 温度(℃) 180〜220
(%固体 w/w) (温度での)時間(分) 180
【0089】
表2は、オートクレーブ浸出試験の重要な操作条件を示す。反応器が温度まで上昇したときまでに、反応器内の圧力は、通常、反応器が約220℃であった場合には360psigと500psigとの間の範囲であり、浸出を180℃で行った場合には100psigを超過した。表3は、浸出プロセスの間および終了時に採取したサンプルの分析の結果を示す。
【0090】
【表2】

【0091】
注:PAL7は、微細研削したPAL5の反復である。
【0092】
【表3】

【0093】
PAL1〜PAL7の結果のまとめ
概して、上昇した温度および増加した遊離酸レベルによって、EAFダストのフェライト含有物のより完全な溶解、従って、より低い残渣固体不純物レベルが得られるようである。
【0094】
表4は、サンプルPAL1およびPAL4のTCLP(Toxicity Characteristic Leaching Procedure)の結果をまとめ、また、有害廃棄物から生じる物質をリストから削除するためのEPA制限を含む。
【0095】
【表4】

【0096】
これらの結果は、クロム以外の非鉄金属の誘引が非常に高く、概して、99+のレベルに達したことを実証する。最終鉄生成物は、概して、初期ダストのクロム含有量を含んでいた。しかし、より高い酸レベルの使用は、概して、非鉄金属のより大きな除去、ならびに、対応するより低い不純物レベルをもたらした。60%近い鉄含有量は、ある量(10〜15重量%)のダスト不溶物(ケイ酸塩)を含む結晶性ヘマタイトの形態で鉄が存在したことを示す。鉄の回収は95重量%を超過した。亜鉛、マンガンおよび鉛のレベルは、遊離酸量の増加に伴い減少した。非鉄金属の溶液への抽出は、概して、約2〜2.5時間後に完了するようだった。
【0097】
実施例2−第2実験セットアップを用いた加圧浸出結果
これらの実施例は、冶金ダストおよび硝酸のスラリーからの酸化鉄(III)の沈殿および他の金属の可溶化の実現可能性を実証する。酸化鉄(III)固体の良好な分離が得られるように選択した条件を用い、熱を付与した加圧容器内でこの処理を行った。この試験における浸出温度および遊離酸のレベルを変動させ、様々な条件下での結果を調べた。これらの試験を代替の試験セットアップを用いて実施例1での試験と同様に行った。これらの試験では、以下の成分を含むEAFダストサンプルを利用した(元素分析によって決定)。
【0098】
【表5】

【0099】
ある量のEAFダスト(310g湿重量/249g乾燥重量)を748gの44.2重量%硝酸との30分混合を用いてパルプ化し、25重量%固体を含む重量997gのスラリーを得た。この初期混合を加熱の前に行った。また、これらの試験を120分間、220℃の温度で加圧反応器内で行った。これらの実験の最大圧力は、ブリードを伴わず、620psigであった。表6に示す通り、この試験は、EPA制限を下回る、物質がもはや有害廃棄物ではない酸化鉄(III)純度を得る、加圧浸出プロセスの能力を再度実証する。
【0100】
【表6】

【0101】
実施例3−試験残渣の第2浸出
第1加圧浸出からの生成物を第2加圧浸出に付し、混入物レベルのさらなる減少を実証した。これらの試験の1つを実施例1からの生成物を用いて行い、第2の試験を実施例2からの生成物を用いて行った。
【0102】
単回浸出プロセスから得られたフィルターケーキ残渣のサンプル(35g乾燥重量)(残渣は実施例1のPAL6由来)を706gの脱イオン水および40gの59重量%の新たな硝酸溶液を用いて再パルプ化し、再浸出した。反応器への混合物の導入前に硝酸を残渣に添加した。浸出スラリーは約20%固体であった。攪拌Parr圧力容器を約317psigの蒸気圧で利用した。第1段階の浸出試験と同じ方法で「第2段階」の圧力浸出試験を行った。概して、第2浸出工程によって、1段階浸出の鉄残渣生成物における不純物レベルをさらに減少できた。表7は第2浸出からの結果を示す。
【0103】
【表7】

【0104】
また、以下に記載の硝酸の量を用いて、実施例2に記載の加圧浸出プロセスからの生成物を基に第2の2段階浸出試験を行った。720gの27%硝酸に300gの水洗済ダストフィルターケーキ(240g固体乾燥重量)を添加することによって、初期残渣を調製した。スラリーを20分間混合した後、Parr圧力反応器に添加した。次いで、反応器の温度を220℃に上昇し、この温度で3時間維持した。圧力浸出段階によって、低い最終残存遊離硝酸レベル(15g/L)が得られ、これによって不完全なダスト溶解が生じた。第2の加圧浸出試験において、この第1試験からの80gの乾燥残渣を320gの20%硝酸と合わせ、220℃で1.5時間オートクレーブ内で反応させた(2868−8)。最終残渣は、表8に示す通り、低い残存不純物レベルを有した。
【0105】
【表8】

【0106】
クロム以外の非鉄金属に関しては、第2浸出によって、酸化鉄(III)の純度を有意に向上できる。これは、より低い遊離酸レベルの条件下で第1浸出を行った場合(不完全な溶解)でさえも、あてはまる。
【0107】
実施例4−前浸出試験
この実験は、大気圧での第1浸出工程の実施によって、さらなる処理の実施の前に、不純物のレベルが有効に減少し得ることを実証する。
【0108】
スラリーのpHを制御して、この大気圧浸出からの生成物の純度を調整してもよい。約30重量%固体を含むスラリーを用いてこの試験を行った。240g量の固体を400gの水と合わせた。次いで、69重量%硝酸を添加し、所望の試験pHを得た。4回実施の試験条件を表9に示す。
【0109】
【表9】

【0110】
Aは酸溶液に添加したフィードを示す。
【0111】
この試験からの固体残渣をさらに分析した。分析の結果を表10に示す。
【0112】
【表10】

【0113】
これらの結果は、pHを調整して、固体中に鉄の大半を残したまま、有意量の非鉄金属を溶解させることができることを示す。従って、さらに精製された固体が、生じた加圧浸出で使用されてもよい。
【0114】
実施例5−XRF(結晶性)データ
この実施例は、回収したFeが結晶性ヘマタイト形態であることを示すX線データを表す。
【0115】
図4および5を参照すると、上記実施例からのサンプルPal6および2868−12に関するX線回折データを示す。Co照射を使用するSiemens D5000回折計でX線回折データを得た。これらの回折図(diffractograms)から、主な結晶性成分はヘマタイトFeである。比較のために、浸出を行う前の物質のX線回折図を図6に示す。この物質は、大部分の位相(majority phase)の紅亜鉛鉱(ZnO)および小部分の位相(minor phases)の石膏(CaSO・2HO)、磁鉄鉱(Fe)、黄鉄鉱(FeS)および磁硫鉄鉱(Fe(1−X)S)ならびに微量の他の結晶形態を明示する。
【0116】
以下の実施例は改良法に関する。
【0117】
実施例6−シード添加プロセスのバッチ試験
試薬グレードの硝酸鉄(III)塩を脱イオン水と混合し、所望の初期溶解鉄濃度を得ることによって、試験用の塩溶液を調製した。別の実施態様において、鉄固体を硝酸または硫酸(sulphuric acid)に可溶化する。69%硝酸溶液を添加し、硝酸と鉄固体(磁鉄鉱など)との間の反応によって得られる溶液を示す残存遊離酸レベルを得た。様々な反応条件を利用して以下の一連の試験を行った。試験されたいくつかの実験パラメータとしては、鉄濃度、遊離酸濃度、シード比(初期塩溶液中に溶解した鉄に対するシード固体における鉄の比)、温度および反応時間が挙げられる。
【0118】
全ての試験において、2リットルのParr加熱圧力反応容器を使用した。この容器は、攪拌のためのメカニカルミキサーを備えていた。各試験において、約1000mLのフィード溶液を所望量のシード固体とともに反応器に添加した。BayferroxTM105M(Lanxess)酸化鉄顔料物質をこの試験のシードとして使用した。反応器を密閉し、関連の圧力で標的温度に加熱した。例えば、175℃で約155psig〜240℃で約500psigの溶液温度および圧力で50g/Lの初期鉄を使用してもよい。反応時間の完了後、反応器を冷却し、圧力を解放した。このスラリーを濾過し、濾液を回収し、そして分析した。多くの従来の固体/液体分離技術をこの段階で使用してもよい(例えば、沈降、濾過、遠心分離など)。フィルターケーキ残渣は、新たな水で洗浄した浸出濾過であり、洗浄液を合わせ、そして分析した。洗浄済フィルターケーキ残渣を乾燥し、秤量し、そして分析した。
【0119】
ICPによる金属決定ならびにMicromeretics SediGraphTM 5100分析器を使用するサイズ分析などのいくつかの試験を行って沈殿固体を分析した。粒子の直径をd50として示す(d50は、固体の50%がそれよりも小さい径である)。これらの分析の結果を表11にまとめる。さらに、CIELABシステムを使用し、固体をカラープロパティ(colour properties)について分析する。表12にまとめ、そして図8にも示す色のデータは、Datacolor SpectragraphTMSF450を用いて得た。
【0120】
表11.シード添加沈殿試験で用いた様々な操作条件を示す。
【0121】
【表11】

【0122】
表12.表11にまとめた様々な試験条件から得られた沈殿の大きさと比較したカラー分析のまとめ
【0123】
【表12】

【0124】
試験沈殿のLパラメータを測定するため、約500gのジルコニウム媒体(zirconium media)を備えたU.S.Stoneware ジャー ミルを使用した。2.5gの顔料および25gの「ベース2」白色ペイントの混合物を1時間ロールした。混合物をピペットでLeneta 不透明チャート上に載せ、ここで顔料混合物を#52ステンレス鋼ロッドを用いて延ばした。層状にした顔料混合物が乾燥すると、DatacolorTM450機器を使用してこれを分析した。表12に示したDataColorTMの結果は、沈殿の色の実際のLパラメータである。
【0125】
「イエロー・シェード(yellow-shade)」レッド顔料〜「ブルー・シェード(blue-shade)」レッド顔料のカラーシェードの範囲で合成酸化鉄顔料を商業生産する。参照を目的として、表11および12にBayferroxTM105Mおよび130M(Lanxess)の分析データを含めている。これらの顔料は、より一般に使用される現在入手可能な合成酸化鉄製品の2つである。表12に示すPPTサンプルは、BayferroxTM105Mおよび130Mと同一の、一般的な範囲内のカラーパラメータを有する。
【0126】
80mlの50%グリセリンに添加した約2.5gの顔料固体を用いて、粒径分析用のサンプルを調製した。次いで、顔料およびグリセリンを磁気攪拌子を用いてビーカー内で混合した。5〜10分後、振幅40、20%のパワーで混合物をソニケーションした。凝集粒子が破壊したら、顔料/グリセリン混合物をSedigraph 5100TM分析器の混合チャンバーに添加した。
【0127】
表11および12にまとめた試験は、シード添加比の変化による、粒径および沈殿の色の特徴の制御能を実証する。シード添加比を300〜400%から50%に減少させることによって、沈殿の粒径(d50)が、0.37ミクロンから1.34ミクロン超まで増加した。この大きさの範囲は、Pennimanスタイルプロセスから従来通り製造される顔料グレードの合成酸化鉄物質の特徴である。また、より高い沈殿温度の使用は、粒径をさらに増大させる方法と確認された。
【0128】
シード添加比が減少し、粒径が増大するにつれて、沈殿のカラーシェードは、「イエロー・シェード(yellow-shade)」レッド(PPT18およびPPT20)から「ブルー・シェード(blue-shade)」レッド(PPT22)に徐々に変化する。表12において、「a」および「b」パラメータが、高シード比でのBayferroxTM105Mと同様の値(PPT18およびPPT20)から、低シード比でのBayferroxTM 130Mと同様の値(PPT22)まで変化するといった、カラーシフトを見ることができる。顔料グレードのシェードの範囲を与えるこの能力によって、当該プロセスは、より多くの従来技術の実行可能な代替となり得る。
【0129】
一連の追加試験を行い、昇温/昇圧での酸化鉄固体の沈殿に対するプロセスパラメータの影響を決定した。試験されたいくつかのプロセスパラメータとしては、沈殿温度、沈殿フィード溶液中の鉄および遊離硝酸の濃度、ならびに反応時間が含まれた。これらの試験の結果を表13〜16にまとめる。これらの試験のための機器および手順は、表11にその結果をまとめた試験について概説したものと同一であった。
【0130】
表13.溶液からの鉄の沈殿に対する温度の影響
【0131】
【表13】

【0132】
表14.溶液からの鉄の沈殿に対する溶液の鉄濃度の影響
【0133】
【表14】

【0134】
表15.溶液からの鉄の沈殿に対する溶液の遊離酸濃度の影響
【0135】
【表15】

【0136】
表16.溶液からの鉄の沈殿に対する反応時間の影響
【0137】
【表16】

【0138】
また、CIELABカラー分析は、カラー強度(「L」パラメータ)がBayferroxTM 105M/130Mスタンダードの強度と類似であることを実証する。カラー強度は顔料物質のサイズ分布に影響を受ける。より大量の微粒子を伴う広範な分布の存在によって、より弱いカラー強度(減少した「L」強度パラメータ)が得られる。以下の表17は、圧力沈殿サンプルの粒径分布の勾配係数(slope factors) 対 BayferroxTM 105M/130Mスタンダードの勾配係数を示す。この分布勾配係数(distribution slope factors)は1/(d80−d50)として計算した。d80で示される粒子の直径は、固体の80%がそれよりも小さい径である。より急な勾配(より大きな1/(d80−d50)の値)は、より狭いサイズ分布を示し、従って微細粒子はより少ない。圧力沈殿サンプルは、BayferroxTM105M/130Mスタンダードによって表される合成酸化鉄顔料の範囲と比較して、典型的(またはより良好)な勾配の値およびカラー強度(「L」パラメータ)を有する。
【0139】
表17.沈殿した酸化鉄のサイズ分布カーブの勾配
【0140】
【表17】

【0141】
表13〜17にまとめたデータは、昇圧沈殿反応への以下の洞察を提供する。沈殿温度を上げると、鉄沈殿反応の平衡点が移動し、溶液から酸化鉄固体への鉄の回収が向上する。溶液中の溶解した鉄および遊離硝酸の増大したレベルによって、沈殿反応の平衡が反対方向に移動するので、鉄の沈殿固体への回収が減少する。溶液濃度変化の影響は、鉄が沈殿する場合、溶解した鉄の各モルが3モルの遊離硝酸を生じるという事実に起因して、溶解鉄レベルにとって最大である。
【0142】
より低い沈殿温度(150〜175℃)では、反応時間が0.5時間から1.0時間に増加する場合、鉄沈殿回収に顕著な改善がある。沈殿温度を上昇する場合(200℃)、反応速度(reaction kinetics)は、0.5時間後に沈殿反応が本質的に完了する点に上昇する。温度のさらなる上昇は、さらなる反応時間の減少を可能にするはずである。
【0143】
実施例7 シード添加プロセスの模擬連続サイクル
模擬連続試験(simulated continuous tests)またはロックド・サイクル実験(locked-cycle experiments)を行った。これらの試験用の浸出溶液を25%硝酸溶液に磁鉄鉱濃縮物(Iron Ore Company, Canada)を溶解することによって調製した。次いで、得られた溶液を蒸留水で希釈し、溶解鉄含有量が42〜45g/Lの最終溶液を得た。得られた希釈溶液は約45g/Lの遊離硝酸を含有していた。
【0144】
ロックド・サイクル試験を使用して一連のバッチ反応の使用による連続プロセスをシミュレーションした。バッチ試験に関して上記した同一装置をロックド・サイクル研究に使用した。各サイクルにおける初期試験に関して、BayferroxTM105M(Lanxess)を初期シード物質として使用した。第1の沈殿が完了した後、沈殿した固体を除去する。その時点で、次いで、これらの固体の一部を分離し、このシリーズの第2の沈殿用のシード物質として使用する。このプロセスを複数回、この試験シリーズを通じて同一のシード添加比を維持しながら、反復する。このサイクルの試験の総数を選択し、最終試験からの沈殿顔料固体が、連続操作プロセスから期待されるものを代表することを確実にする。各試験からの固体だけがこのシリーズの次の試験にリサイクルされる。試験濾液を分析し、次いで、廃棄する。
【0145】
数回の反復(典型的には5〜10回)の後、第1の沈殿でシードとして用いられた元々のBayferroxTM105M(Lanxess)固体をこのシステムから本質的に除去し、新たな沈殿生成物と置き換える。使用されるシード比が高い程、このシリーズにおいてより多くの反復が、元々のシード物質を効果的に除去するために必要である。各試験からの生成物(固体/液体)をバッチ試験手順に適用したのと同一の手順に従って分析した。これらの結果を表18および19に示す。
【0146】
表18.連続結果のまとめ
【0147】
【表18】

【0148】
表19.表18の「ロックド・サイクル」試験シリーズから得られた沈殿のカラー分析および大きさのまとめ
【0149】
【表19】

【0150】
シード比を80%〜350%に変化させてロックド・サイクル試験シリーズを200℃で行った。表19は、各試験シリーズで製造された最終沈殿に関する大きさおよびカラー分析を示す。再度、BayferroxTM105m/130m(Lanxess)顔料を参考として含めた。溶液から沈殿固体への鉄の回収は、各ロックド・サイクル試験シリーズ中の各々の試験の全てについて約80〜90%変化した。
【0151】
磁鉄鉱浸出溶液を用いるロックド・サイクル試験シリーズによって製造される沈殿は、同様の沈殿パラメータを利用した場合、単回バッチ浸出試験から製造されたものよりも粗大であった。また、模擬連続反応の結果は、粒径およびカラーパラメータがシード比を変化させることによって制御され、顔料グレードの沈殿固体を生じ得るという事実を示す。ロックド・サイクル試験で用いた最も高いシード比によって最も微細な沈殿(d50=0.90ミクロン)が得られた。シード比を減少させたところ、沈殿のd50粒径が増加した(200%シードで0.96、80%シードで4.5ミクロン)。沈殿の大きさの変化には、高いシード比でのより多くの「イエロー・レッド」物質(より微細な粒子)と、低いシード比でのより多くの「ブルー・レッド」(より粗大な粒子)との間での対応するカラーシフトが伴った。これらの傾向は、バッチプロセスで示されたものと同一である。
【0152】
当業者によって理解されるように、本発明の本願の開示の範囲内および趣旨において、さらなる実施態様が実施されてもよい。上記実施態様は例示を意図し、限定を意図しない。追加の実施態様は特許請求の範囲内である。特定の実施態様を参照して本発明を記載しているが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、変更が形式的かつ詳細に行われ得ることを当業者は理解する。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】図1は、濾液および酸化鉄(III)を含む固体を製造するための、EAFダストなどの冶金組成物の処理プロセスのフローチャートである。
【図2】図2は、図1の発展したフローチャートであり、酸化鉄(III)を得るプロセスに第2の浸出工程を追加する。
【図3】図3は、圧力下で冶金組成物の硝酸浸出を行うための装置を示す概略図である。
【図4】図4は、加圧浸出処理後のあるサンプルのX線回折図である。
【図5】図5は、加圧浸出処理後の別のサンプルのX線回折図である。
【図6】図6は、硝酸処理前のEAFダストサンプルのX線回折図である。
【図7】図7は、シード添加沈殿プロセスに関するプロセスフローダイアグラムである。
【図8】図8は、シード添加プロセスの種々の反応条件下で得られる沈殿の大きさおよび色を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択された粒径を有する酸化鉄(III)沈殿の製造方法であって、温度およびシード添加比の組み合わせを選択する工程、および、大気圧より高い圧力で当該方法を行い、選択された粒径の酸化鉄(III)沈殿を得る工程を包含する、方法。
【請求項2】
シード添加比が、期待されるシード未添加の沈殿生成物の重量に対する、シード固体の重量の比である、請求項1の方法。
【請求項3】
温度が、約100℃〜約300℃である、請求項1の方法。
【請求項4】
温度が、約175℃〜約240℃である、請求項1の方法。
【請求項5】
シード添加比が、約20%〜約2000%である、請求項1の方法。
【請求項6】
シード添加比が、約50%〜約500%である、請求項1の方法。
【請求項7】
選択された粒径が、約0.1〜約10ミクロンである、請求項1の方法。
【請求項8】
選択された粒径が、約0.15〜約2.5ミクロンである、請求項1の方法。
【請求項9】
酸化鉄(III)沈殿が、約1分〜約6時間で得られる、請求項1の方法。
【請求項10】
酸化鉄(III)沈殿が、約30分〜約1時間で得られる、請求項1の方法。
【請求項11】
当該方法が、約10〜約1300psigの圧力で行われる、請求項1の方法。
【請求項12】
当該方法が、約100〜約500psigの圧力で行われる、請求項1の方法。
【請求項13】
酸化鉄(III)沈殿が、硝酸、硫酸および塩酸の1つの中に可溶化した鉄を含むフィード溶液から得られる、請求項1の方法。
【請求項14】
酸化鉄(III)沈殿が、硝酸中に可溶化した鉄を含むフィード溶液から得られる、請求項1の方法。
【請求項15】
フィード溶液が、約5g/Lから、鉄(III)塩の結晶化の開始までの鉄濃度を有する、請求項13の方法。
【請求項16】
フィード溶液が、約10g/L〜約100g/Lの鉄濃度を有する、請求項13の方法。
【請求項17】
フィード溶液が、約30g/L〜約60g/Lの鉄濃度を有する、請求項13の方法。
【請求項18】
フィード溶液が、約0g/L〜約150g/Lの遊離酸濃度を有する、請求項13の方法。
【請求項19】
フィード溶液が、約30g/L〜約70g/Lの遊離酸濃度を有する、請求項13の方法。
【請求項20】
酸化鉄(III)沈殿が、約40〜約60のLを有する、請求項1の方法。
【請求項21】
酸化鉄(III)沈殿が、約49〜約55のLを有する、請求項1の方法。
【請求項22】
酸化鉄(III)沈殿が、約10〜約40のaを有する、請求項1の方法。
【請求項23】
酸化鉄(III)沈殿が、約19〜約33のaを有する、請求項1の方法。
【請求項24】
酸化鉄(III)沈殿が、約5〜約35のbを有する、請求項1の方法。
【請求項25】
酸化鉄(III)沈殿が、約12〜約28のbを有する、請求項1の方法。
【請求項26】
バッチまたは連続様式で行われる、請求項1の方法。
【請求項27】
酸化鉄(III)沈殿が平滑な表面テクスチャーを有する、請求項1の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2007−534841(P2007−534841A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509841(P2007−509841)
【出願日】平成17年4月29日(2005.4.29)
【国際出願番号】PCT/CA2005/000654
【国際公開番号】WO2005/106053
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(506281004)メタロックス インターナショナル (1)
【Fターム(参考)】