説明

金型の切削加工方法及び装置

【課題】 金型の成形面に、R値、面精度、ピッチ間等が高精度で均一な凹球面を切削加工で形成できるようにする。
【解決手段】 凹球面3の曲率半径18よりも小さな曲率半径の切刃16を有しているRバイト14における切刃16の回転半径が凹球面3の曲率半径18となるようにRバイト14を旋回させながら、凹球面3の中心断面を走査して金型1の成形面を切削するフライカット加工によって、当該成形面に凹球面3を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削技術に関し、特に、多数の凹球形状で形成される、レンズアレイ用金型の作製に好適な、均一R値にて高精度に加工する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
多数のレンズが配列されているレンズアレイ素子の成形に用いられる成形型を加工する方法として、(1)ポンチによる圧力転写による方法、(2)主軸の回転軸に直交する2方向に移動して位置決め可能なスライドテーブルを加工機主軸端面に取り付け、ワークの加工原点を任意に移動させながら主軸の回転軸に位置決めして加工することを繰り返すという方法、(3)三次元加工機を用いて工具を個々の凹球形状に沿って成形面の全面を走査させる方法、(4)個々の棒材の先端面に凹球形状を加工しておき、この棒材を複数本束ねて一体化して金型とする方法、等が提案されている。
【0003】
また、この他にも、例えば特許文献1には、同一曲率半径の凹球面が複数配列している成形面を有する金型の加工方法が開示されている。この加工方法は、凹球面の曲率半径と同一曲率半径の切刃を持った先丸バイトを用い、この先丸バイトの切刃の曲率中心を通る軸線回りに当該先丸バイトを旋回し、フライカットにより金型の成形面に凹球面を切削加工し、先丸バイトの切刃の曲率中心と金型の成形面との相対位置をずらして凹球面を複数加工するようにしてレンズアレイ用の金型を得るというものである。
【特許文献1】特開平11−19815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の(1)から(4)の各加工法には、下記のような問題点を各々有している。
上記(1)の方法では、ポンチに用いられる圧子の先端形状が理想的な球面とはなっておらず、実際には歪んでいる。
【0005】
上記(2)の方法では、加工機主軸端面に取付けたスライドテーブルの位置決め精度がレンズアレイの各アレイ(球形状)のピッチ間隔の誤差を支配してしまう。また、加工時には加工機主軸を回転させるため、スライドテーブルの移動位置によっては主軸の回転バランスが崩れてしまい、加工面精度へ影響を及ぼすことがある。
【0006】
上記(3)の方法では、個々の凹球形状に沿って成形面の全面を走査させるため、膨大な加工時間を要することとなる。
上記(4)の方法では、個々の棒材を必要個数加工するために膨大な加工時間を要することに加え、棒材を束ねて一体化するため、位置精度が低下し、また必要個数や棒材に大きさの制限を受けることになる。
【0007】
このように、上述した各加工法は、形状精度、位置精度、加工時間について各々課題を抱えている。
また、上掲した特許文献1で開示されている記載されている加工法では、切刃の回転半径は所望の凹球形状のR値に調整することが可能である。しかしながら、切刃の曲率半径の調整は再研磨等で調整することしかできない。そのため、高精度な凹球形状を加工することは困難である。また、形状精度には切刃形状がそのまま転写することになるため、真円度の良好な高精度のバイトが必要になるが、このようなバイトは高価なものである。
【0008】
本発明は上述した問題に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、金型の成形面に、R値、面精度、ピッチ間等が高精度で均一な凹球面を切削加工で形成できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様のひとつである金型の切削加工方法は、凹球面の曲率半径よりも小さな曲率半径の切刃を有しているRバイトにおける当該切刃の回転半径が当該凹球面の曲率半径となるように当該Rバイトを旋回させながら、当該凹球面の中心断面を走査して金型の成形面を切削するフライカット加工によって、当該成形面に当該凹球面を形成することを特徴とするものであり、この特徴によって前述した課題を解決する。
【0010】
なお、上述した本発明に係る金型の切削加工方法において、当該成形面と当該Rバイトとの相対位置を変更しながら当該切削加工を繰り返して当該凹球面を当該成形面に複数形成するようにしてもよい。
【0011】
また、前述した本発明に係る金型の切削加工方法において、当該Rバイトの旋回中心軸と、当該旋回中心軸に直交し当該Rバイトの曲率中心を通る軸との交点を中心として、当該Rバイトを回動させることにより当該中心断面の走査を行うようにしてもよい。
【0012】
また、前述した本発明に係る金型の切削加工方法において、当該Rバイトの切刃の先端と当該Rバイトの曲率中心とを通る軸であって当該Rバイトの旋回中心軸に直交する当該軸が、当該凹球面の面形状に対して常に法線方向になり、且つ当該切刃の先端が常に一点で加工面へ作用するように、当該Rバイトの当該成形面に対する相対位置を制御するようにしてもよい。
【0013】
また、前述した本発明に係る金型の切削加工方法において、当該凹球面の面形状に対し、当該Rバイトの切刃の曲率中心を基準として当該Rバイトの曲率半径の分だけオフセットした軌跡にて移動するように、当該Rバイトの当該成形面に対する相対位置を制御するようにしてもよい。
【0014】
本発明の別の態様のひとつである金型の切削加工装置は、凹球面の曲率半径よりも小さな曲率半径の切刃を有しているRバイトと、当該切刃の回転半径が当該凹球面の曲率半径となるように当該Rバイトを旋回させるRバイト旋回手段と、当該Rバイトで当該凹球面の中心断面の走査をさせる走査手段と、を有し、当該Rバイト旋回手段によって旋回しているRバイトで当該走査をさせて金型の成形面を切削するフライカット加工によって、当該成形面に当該凹球面を形成する、ことを特徴とするものであり、この特徴によって前述した課題を解決する。
【0015】
なお、上述した本発明に係る金型の切削加工装置において、当該成形面と当該Rバイトとの相対位置を変更させる変更手段を更に有するように構成してもよい。
また、前述した本発明に係る金型の切削加工装置において、当該Rバイト旋回手段を、当該Rバイトの切刃の先端及び曲率中心を通る軸に直交する軸を回転軸とする回転スピンドルとしてもよい。
【0016】
なお、このとき、当該走査手段を、当該回転スピンドルが載置されている回転テーブルであって、当該Rバイトの切刃の先端及び曲率中心を通る軸と回転スピンドルの回転軸との両者に直交する軸を中心に回転する当該回転テーブルとしてもよい。
【0017】
また、前述した本発明に係る金型の切削加工装置において、当該Rバイトの切刃の先端と当該Rバイトの曲率中心とを通る軸であって当該Rバイトの旋回中心軸に直交する当該軸が、当該凹球面の面形状に対して常に法線方向になり、且つ当該切刃の先端が常に一点で加工面へ作用するように、当該Rバイトの当該成形面に対する相対位置を制御する制御手段を更に有するように構成してもよい。
【0018】
また、前述した本発明に係る金型の切削加工装置において、当該凹球面の面形状に対し、当該Rバイトの切刃の曲率中心を基準として当該Rバイトの曲率半径の分だけオフセットした軌跡にて移動するように、当該Rバイトの当該成形面に対する相対位置を制御する制御手段を更に有するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、以上のようにすることにより、金型の成形面に、R値、面精度、ピッチ間等が高精度で均一な凹球面を切削加工で形成できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は被加工物であるレンズアレイ成形用の金型1の最終仕上がり形状を示す斜視図であり、図2は金型1の成形面2の正面図である。
金型1は母材であるSUS(ステンレス鋼)材に無電解ニッケルメッキを施したものである。成形面2には、本実施例における対象形状とする凹球面3が、X軸方向にはピッチ(間隔)ΔXで3個ずつ、またY軸方向にはピッチΔYで3列に、それぞれ並べられており、X軸方向3個×Y軸方向3列の方形状に計9個配列されている。
【0022】
図3は、金型1に凹球面3を加工する超精密加工機の構成を示す斜視図であり、図4は本実施例における金型1の加工の様子を示す図である。なお、図4は、図3に示した超精密加工機を上方から見たものである。
【0023】
この加工機は互いに直交するX軸、Y軸、及びZ軸の3軸の各方向にそれぞれスライドさせることのできるX軸テーブル4、Y軸テーブル5、及びZ軸テーブル6を有しており、3軸方向への移動制御を伴いながら運転することが可能なものである。なお、X軸テーブル4とZ軸テーブル6とは加工機ベース11上に重ねて配置されており、Y軸テーブル5は、加工機ベース11上のX軸テーブル4及びZ軸テーブル6の傍らに配置されている。
【0024】
また、この加工機は、主軸7を回転させるC軸モータ8と、工具回転スピンドル9を回動させるB軸回転テーブル10とを有しており、上述の3軸を加えて計5軸の制御が可能である。但し、本実施形態において、C軸モータ8を回転させることはない。
【0025】
金型1は、加工機ベース11上に重ねて配置されているX軸テーブル4及びZ軸テーブル6の上に設置されている主軸7へ固定される。ここで、Z軸は主軸7の回転軸12と平行な軸であり、X軸は当該回転軸12に対して垂直な軸である。
【0026】
工具回転スピンドル9は工具回転スピンドルホルダー13に固定されており、工具回転スピンドルホルダー13はB軸回転テーブル10上に設置されている。このB軸回転テーブル10は、加工機ベース11上でY軸テーブル5の上に重ねて配置されている。ここで、Y軸はX軸とZ軸との両者に対して垂直な軸であり、B軸回転テーブル10の回転軸であるB軸回転軸中心21はY軸に平行である。つまり、工具回転スピンドル9は、B軸回転テーブル10を回動させることにより、X軸とZ軸とにより張られる平面についての平行面上で回動可能である。
【0027】
工具回転スピンドル9にはRバイトホルダー15を介してRバイト14が取り付けられている。Rバイト14の切刃16は凹球面3の所望の曲率半径より小さな曲率半径を有している。
【0028】
工具回転スピンドル9の回転軸である工具回転スピンドル回転中心軸17と切刃16の先端との距離は、凹球面3の曲率半径18にセッティングされる。従って、Rバイト旋回手段である工具回転スピンドル9を動作させると、工具回転スピンドル9は、X軸とZ軸とにより張られる平面についての垂直面上で、切刃16の回転半径が曲率半径18となるようにRバイト14を旋回させる。ここで、工具回転スピンドル回転中心軸17は、工具回転スピンドル9がRバイト14を旋回させたときのRバイト14の旋回中心軸に相当する。
【0029】
また、工具回転スピンドル回転中心軸17(すなわちRバイト14の旋回中心軸)と、工具回転スピンドル回転中心軸17に直交し切刃16の先端及び曲率中心22を通る軸19との交点20が、B軸回転テーブル10の回転軸中心21を通るようにセッティングされる。ここで、回転軸中心21は、交点20において、軸19と工具回転スピンドル回転中心軸17との両者に直交する。従って、B軸回転テーブル10を回動させると、Rバイト14は、交点20を中心として、X軸とZ軸とにより張られる平面についての平行面上で回動する。
【0030】
以下、本実施例における金型1の切削加工の流れを説明する。
図5及び図6は、金型1の成形面2を切削加工して凹球面3を形成している状態を示しており、図5は図3に示した超精密加工機の上方から見た図、図6は図3に示した超精密加工機の右横から見た図である。
【0031】
まず、所望の凹球面3に対するRバイト14の位置決めを行う。具体的には、X軸方向については、凹球面3の加工原点23とB軸回転テーブル10の回転軸中心21とを合わせ、Y軸方向は加工原点23と工具回転スピンドル9の工具回転スピンドル回転中心軸17とを合わせる。なお、Z軸方向の位置は、Rバイト14の切刃16による、成形面2の平面部からの切り込み深さ分を予め設定しておく。
【0032】
この位置決めを行った状態で、工具回転スピンドル9でRバイト14を旋回させながら、交点20を中心としてB軸回転テーブル10を回動させる。すると、Rバイト14は、凹球面3の中心断面の走査をすることになる。図5の(1)から(2)への遷移がこの走査の様子を表している。つまり、走査手段であるB軸回転テーブル10によって凹球面3の中心断面の走査をRバイト14にさせることにより、金型1の成形面2がフライカット加工され、所望の位置に凹球面3が1つ形成される。
【0033】
以降、変更手段であるX軸テーブル4及びY軸テーブル5の位置を移動させて金型1に対するRバイト14の相対的なX軸方向位置及びY軸方向位置を所望量ずつ移動して変更し、同様の加工を行う。以上を繰り返すことにより成形面2に凹球面3が複数形成されて金型1が完成する。
【0034】
次に本実施例の加工事例を説明する。
対象とする形状は図2に示す成形面2である。凹球面3の配列のピッチはΔX=1mm、ΔY=1mmとし、凹球面3の曲率半径を10mm(R10)とする。このときに、Rバイト14の切刃16は、曲率半径がR5のものを使用した。
【0035】
図7は、本加工事例における凹球面3の加工順を示す図である。同図に示す凹球面3−1を最初に加工した。
始めに、凹球面3−1の加工原点3−1aに対するX、Y、Zの各軸をそれぞれ位置決めし、Rバイト14を旋回させながらB軸回転テーブル10を回動させる。このとき、切刃16の先端を、B軸回転軸中心21を中心に半径10mmで回動させる。すると、切刃16の軌跡は半径10mmの球形状となり、成形面2にR10の凹球面3−1が形成された。
【0036】
なお、Rバイト14のセッティング誤差や加工状態等により、形成された凹球面3−1が設計のR値にならないことがある。その場合には、形成された凹球面3−1の形状精度を測定し、得られた測定結果をフィードバックする。本事例においては、凹球面3−1の測定したR値が9.99mmであった場合に、Rバイトホルダー15において、回転スピンドル9の工具回転スピンドル回転中心軸17から切刃16先端までの距離を0.01mm補正して、R値が10mmになるようにしてから、再度切削加工を行った。
【0037】
こうして凹球面3−1が形成された後、凹球面3−2の形成を行う。そのために、X軸方向位置及びY軸方向位置を1mmずつ移動して凹球面3−2の加工原点3−2aにRバイト14を位置決めし、その上で凹球面3−1と同様の切削加工を行う。これにより、凹球面3−2が形成された。
【0038】
以降、同様にして凹球面3を計9個形成することにより、レンズアレイ成形用の金型1を作製した。
以上のように、本実施例では、所望の凹球面の曲率半径より小さな曲率半径の切刃を用い、当該切刃の先端の回転半径が当該凹球面の曲率半径と同一にセッティングされた工具で凹球面の中心断面を走査して金型の成形面を切削するフライカット加工を行う。こうすることにより、当該成形面に形成される凹球面に良好な面粗さ、真球度、R値を得ることができ、また、成形面全体に渡って高精度で均一なRをもつ凹球面を短い加工時間で得ることができる。しかも、この加工においては、超精密加工機の軸移動のみで位置決めされるので、各々の凹球面の間隔についても高精度である金型を作製することができる。
【0039】
なお、本実施例の加工事例においては、一番目の凹球面3を加工した後に、その測定結果をフィードバックして補正加工を行ってから全ての凹球面3を加工したが、全ての凹球面3を加工してから補正を加え、その後に全てを再加工するというように、粗加工後の仕上げ加工という手順でも高精度の加工が可能である。
【0040】
また、本実施例においては、被加工物として無電解ニッケルメッキを施した母材を用いたが、切削加工の可能な金型材料であれば本実施例に係る加工方法により金型を作製することが可能であり、更には、鉄系の材料に対する切削加工の可能なcBN(cubic Boron Nitride :立方晶窒化ホウ素)工具を用いれば、このような材料であっても本実施例に係る加工方法により金型を作製することは可能である。
【0041】
また、本実施例において、凹球面3の加工原点23に対する位置決めを、超精密加工機が装備している、C軸モータ8の割り出し機能を利用して行うようにしてもよい。
【実施例2】
【0042】
本実施例においても、図1及び図2に示したレンズアレイ成形用の金型1の作製を行う。ここで、金型1への凹球面3の加工には、図3に示した超精密加工機を本実施例においても使用する。
【0043】
図8について説明する。同図は、本実施例における金型1の加工の様子を示す図であり、図3に示した超精密加工機を上方から見たものである。
工具回転スピンドル9にはRバイトホルダー15を介してRバイト14が取り付けられている。Rバイト14の切刃16は所望の凹球面3の曲率半径よりも小さな曲率半径を有している。
【0044】
工具回転スピンドル9の工具回転スピンドル回転中心軸17から切刃16の先端までの距離は、凹球面3の曲率半径18にセッティングされる。従って、工具回転スピンドル9を動作させることにより、切刃16の先端の回転半径が曲率半径18に相当する距離を保ちながら、Rバイト14を旋回させる。このセッティングまでは実施例1と同様である。
【0045】
次に、本実施例においては、切刃16の曲率中心22を通り工具回転スピンドル回転中心軸17に対して垂直な軸19と、Rバイト14の切刃16先端との交点24が、B軸回転テーブル10の回転軸中心21を通るようにセッティングされる点が実施例1と異なっている。
【0046】
以下、本実施例における金型1の切削加工の流れを説明する。
図9は、金型1の成形面2の凹球面3にRバイト14が作用している状態を示している。
【0047】
まず、所望の凹球面3に対するRバイト14の位置決めを行うが、この位置決めの手順は実施例1におけるものと同様である。
次に、Rバイト14が位置決めされた状態にて、工具回転スピンドル9でRバイト14を旋回させながら、X軸テーブル4及びZ軸テーブル6の位置、並びにB軸回転テーブル10の回転の数値制御(NC制御)を行う。この数値制御はNCプログラムの実行により行われ、X/Z/Bの3軸に対する同時制御である。具体的には、Rバイト14の切刃16の先端と曲率中心22とを通り工具回転スピンドル回転中心軸17(すなわちRバイト14の旋回中心軸)に直交する軸19が、所望の凹球面3の面形状(R形状)に対して常に法線方向になり、且つ切刃16の先端が常に一点で加工面へ作用するように、Rバイト14の成形面2に対する相対位置を制御する。この制御手段による制御により、Rバイト14の切刃16の軌跡が、所望の凹球面3に相当するR形状を描き、凹球面3の切削加工が行われる。
【0048】
以降、X軸テーブル4及びY軸テーブル5の位置を移動させて金型1に対するRバイト14の相対的なX軸方向位置及びY軸方向位置を所望量ずつ移動し、同様の加工を行う。以上を繰り返すことにより金型1を製作する。
【0049】
以上のように、本実施例では、実施例1と同様、高精度の凹球面3を形成した金型1を作製することができる。更に、NCプログラムによる数値制御を行うので、Rバイト14の軌跡に自由度を付加することが可能となる。例えば、断面方向にて異なるR形状を有する凹球面3の形成、更には、非球面形状の凹球面3の形成にも柔軟に対応できるので、金型1を用いて形成する光学素子の機能や性能を向上させることができる。
【実施例3】
【0050】
本実施例においても、図1及び図2に示したレンズアレイ成形用の金型1の作製を行う。ここで、金型1への凹球面3の加工には、図3に示した超精密加工機を本実施例においても使用する。
【0051】
以下、本実施例における金型1の切削加工の流れを説明する。
まず、所望の凹球面3に対するRバイト14の位置決めを行うが、この位置決めの手順は実施例1におけるものと同様である。
【0052】
次に、Rバイト14が位置決めされた状態にて、工具回転スピンドル9でRバイト14を旋回させながら、X軸テーブル4及びZ軸テーブル6の位置の数値制御(NC制御)を行う。この数値制御はNCプログラムの実行により行われ、X/Zの2軸に対する同時制御である。この制御手段による制御をより具体的に説明すると、所望の凹球面3の面形状(R形状)に対し、Rバイト14の切刃16の曲率中心22を基準として切刃16の曲率半径分だけオフセットした軌跡にて移動するように予めNCプログラムされたX/Zの2軸同時制御により加工される。
【0053】
以降、X軸テーブル4及びY軸テーブル5の位置を移動させて金型1に対するRバイト14の相対的なX軸方向位置及びY軸方向位置を所望量ずつ移動し、同様の加工を行う。以上を繰り返すことにより金型1を製作する。
【0054】
以上のように、本実施例では、工具のセッティングが容易であり、実施例1と同様、高精度の凹球面3を形成した金型1を作製することができる。更に、実施例2と同様、断面方向にて異なるR形状を有する凹球面3の形成に柔軟に対応でき、特に、シリンドリカル面の形成に関しては、高精度の加工が可能である。
【0055】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上述した各実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】被加工物であるレンズアレイ成形用の金型の最終仕上がり形状を示す斜視図である。
【図2】図1に示した金型の成形面の正面図である。
【図3】金型に凹球面を加工する超精密加工機の構成を示す斜視図である。
【図4】実施例1における金型の加工の様子を示す図である。
【図5】金型の成形面を切削加工して凹球面を形成している状態を示す図(その1)である。
【図6】金型の成形面を切削加工して凹球面を形成している状態を示す図(その2)である。
【図7】実施例1の加工事例における凹球面の加工順を示す図である。
【図8】実施例2における金型の加工の様子を示す図である。
【図9】実施例2において金型の成形面の凹球面にRバイトが作用している状態を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
1 レンズアレイ成形用金型
2 成形面
3、3−1、3−2 凹球面
3−1a、3−2a 加工原点
4 X軸テーブル
5 Y軸テーブル
6 Z軸テーブル
7 主軸
8 C軸モータ
9 工具回転スピンドル
10 B軸回転テーブル
11 加工機ベース
12 主軸の回転軸
13 工具回転スピンドルホルダー
14 Rバイト
15 Rバイトホルダー
16 切刃
17 工具回転スピンドル回転中心軸
18 曲率半径
19 軸
20 交点
21 回転軸中心
22 曲率中心
23 加工原点
24 交点


【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹球面の曲率半径よりも小さな曲率半径の切刃を有しているRバイトにおける当該切刃の回転半径が当該凹球面の曲率半径となるように当該Rバイトを旋回させながら、当該凹球面の中心断面を走査して金型の成形面を切削するフライカット加工によって、当該成形面に当該凹球面を形成することを特徴とする金型の切削加工方法。
【請求項2】
前記成形面と前記Rバイトとの相対位置を変更しながら前記切削加工を繰り返して前記凹球面を当該成形面に複数形成することを特徴とする請求項1に記載の金型の切削加工方法。
【請求項3】
前記Rバイトの旋回中心軸と、当該旋回中心軸に直交し当該Rバイトの曲率中心を通る軸との交点を中心として、当該Rバイトを回動させることにより前記中心断面の走査を行うことを特徴とする請求項1に記載の金型の切削加工方法。
【請求項4】
前記Rバイトの切刃の先端と当該Rバイトの曲率中心とを通る軸であって当該Rバイトの旋回中心軸に直交する当該軸が、前記凹球面の面形状に対して常に法線方向になり、且つ当該切刃の先端が常に一点で加工面へ作用するように、当該Rバイトの前記成形面に対する相対位置を制御することを特徴とする請求項1に記載の金型の切削加工方法。
【請求項5】
前記凹球面の面形状に対し、前記Rバイトの切刃の曲率中心を基準として当該Rバイトの曲率半径の分だけオフセットした軌跡にて移動するように、当該Rバイトの前記成形面に対する相対位置を制御することを特徴とする請求項1に記載の金型の切削加工方法。
【請求項6】
凹球面の曲率半径よりも小さな曲率半径の切刃を有しているRバイトと、
前記切刃の回転半径が前記凹球面の曲率半径となるように前記Rバイトを旋回させるRバイト旋回手段と、
前記Rバイトで前記凹球面の中心断面の走査をさせる走査手段と、
を有し、
前記Rバイト旋回手段によって旋回しているRバイトで前記走査をさせて金型の成形面を切削するフライカット加工によって、当該成形面に前記凹球面を形成する、
ことを特徴とする金型の切削加工装置。
【請求項7】
前記成形面と前記Rバイトとの相対位置を変更させる変更手段を更に有することを特徴とする請求項6に記載の金型の切削加工装置。
【請求項8】
前記Rバイト旋回手段は、前記Rバイトの切刃の先端及び曲率中心を通る軸に直交する軸を回転軸とする回転スピンドルであることを特徴とする請求項6に記載の金型の切削加工装置。
【請求項9】
前記走査手段は、前記回転スピンドルが載置されている回転テーブルであって、前記Rバイトの切刃の先端及び曲率中心を通る軸と回転スピンドルの回転軸との両者に直交する軸を中心に回転する当該回転テーブルであることを特徴とする請求項8に記載の金型の切削加工装置。
【請求項10】
前記Rバイトの切刃の先端と当該Rバイトの曲率中心とを通る軸であって当該Rバイトの旋回中心軸に直交する当該軸が、前記凹球面の面形状に対して常に法線方向になり、且つ当該切刃の先端が常に一点で加工面へ作用するように、当該Rバイトの前記成形面に対する相対位置を制御する制御手段を更に有することを特徴とする請求項6に記載の金型の切削加工装置。
【請求項11】
前記凹球面の面形状に対し、前記Rバイトの切刃の曲率中心を基準として当該Rバイトの曲率半径の分だけオフセットした軌跡にて移動するように、当該Rバイトの前記成形面に対する相対位置を制御する制御手段を更に有することを特徴とする請求項6に記載の金型の切削加工装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−90489(P2007−90489A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−283347(P2005−283347)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】