説明

金型再生用シート

【課題】クリーニング性が高く、かつ、金型クリーニング材料の組成物の混合状態を識別することができる金型再生用シートを提供する。
【解決手段】紙製シートまたは布帛シートからなる基材シート1の少なくとも片面に、未加硫ゴム系組成物または熱硬化性樹脂系組成物からなる金型クリーニング材料が、帯状パターンに形成されている。その帯状パターンの構成要素である各突条2Aは、互いに隙間をあけて平行に形成されており、その隙間は、金型をクリーニングする際のエア抜き用空隙となっている。また、そのエア抜き用空隙部分に位置する基材シート1の表面部分に、上記組成物からなる薄膜3が形成されている。この薄膜3は、それ自体の色合いや表面の状態で上記組成物の混合状態を識別できるものとなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形金型の型面をクリーニングする際に用いられる金型再生用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子をトランスファー成形によって樹脂封止する工程では、通常、金型を用いた樹脂成形が繰り返し行われる。そして、その繰り返し数(ショット数)が多くなるにつれて、金型の型面、特にキャビティ表面に、樹脂から滲出した成分,ばり,塵埃等の汚れが蓄積する。このような汚れは、成形品を金型から取り出す際の離型性を低下させ、また、成形品の表面に肌荒れ等を生じさせる。そこで、一定の成形繰り返し数(ショット数)毎に、金型の型面(キャビティ表面)がクリーニングされる。
【0003】
このクリーニング方法として、シート状に形成された金型クリーニング材料を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法は、上金型と下金型の間に上記金型クリーニング材料を挟んだ状態で型締めすることにより、その金型クリーニング材料をキャビティ内に充填し、その状態で加熱成形することにより、上記金型クリーニング材料に上記汚れを付着させ、その後、その金型クリーニング材料を脱型し、上記汚れを金型クリーニング材料と共に金型の型面(キャビティ表面)から取り除く方法である。
【0004】
また、本出願人は、クリーニング性をより高めた金型再生用シートを提案している(例えば、特許文献2,3参照)。この金型再生用シートは、紙製シートまたは布帛シートの少なくとも片面に、金型クリーニング材料が、エア抜き用空隙を有する所定のパターンに突設されたものとなっている。この金型再生用シートを用いると、キャビティ内のエアが、上記エア抜き用空隙から抜け易くなって、キャビティ内にエア溜まりができなくなり、上記金型クリーニング材料がキャビティ内の隅々まで充填されるようになる。その結果、キャビティ内の隅々までクリーニングできるようになり、クリーニング性が高まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−130819号公報
【特許文献2】特開2007−196586号公報
【特許文献3】特開2008−132759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記クリーニング性を高めた金型再生用シートを用いても、場合によって、汚れが充分に除去されないことがあった。そこで、本発明者がその原因を追求した結果、その原因は、金型クリーニング材料の組成物の混合状態が不均一になっていることにあり、そのような場合、金型クリーニング材料のキャビティ内への充填性が低下することがわかった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、クリーニング性が高く、かつ、金型クリーニング材料の組成物の混合状態を識別することができる金型再生用シートの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の金型再生用シートは、紙製シートまたは布帛シートの少なくとも片面に、未加硫ゴム系組成物または熱硬化性樹脂系組成物からなる金型クリーニング材料が、エア抜き用空隙を有する所定のパターンに突設されているとともに、上記エア抜き用空隙部分に位置する上記紙製シートまたは布帛シートの表面部分に、上記組成物からなる薄膜が形成され、この薄膜の形成状態で上記パターンを形成する上記組成物の混合状態を識別可能にしたという構成をとる。
【0009】
本発明者は、先に述べた本出願人が提案した、金型クリーニング材料がエア抜き用空隙を有する所定のパターンに突設されている金型再生用シートの高いクリーニング性を生かし、金型クリーニング材料の組成物の混合状態を識別できるようにすべく、研究を重ねた。その結果、上記エア抜き用空隙部分に位置する上記紙製シートまたは布帛シートの表面部分に、上記金型クリーニング材料からなる薄膜を形成すると、その薄膜の形成状態から、上記金型クリーニング材料の混合状態を識別できることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、上記金型クリーニング材料は、未加硫ゴム系組成物または熱硬化性樹脂系組成物からなるが、その組成物には、シリカ粉末や酸化チタン等の無機質充填剤が未溶解状態で分散している。その無機質充填剤の分散が不均一であると、先に述べたように、金型クリーニング材料のキャビティ内への充填性が低下し、クリーニング性が低下する。上記無機質充填剤の分散が不均一であることは、上記突設されたパターン部分では、金型クリーニング材料の厚みが厚いため、識別できない。しかし、上記組成物で薄膜を形成すると、上記無機質充填剤の分散が均一である場合、上記薄膜の色合いも均一になり、その薄膜の表面が平滑になる。上記無機質充填剤の分散が不均一である場合、上記薄膜の色合いも不均一になり、また、上記無機質充填剤が分散されず凝集状態であると、その凝集部分が上記薄膜の表面に凸部として現れる。このような薄膜の形成状態を、目視にて識別することができるようになる。
【0011】
上記のように薄膜の色合いで識別する場合、上記薄膜(金型クリーニング材料)の組成物の主成分(生地)の色に対し、上記無機質充填剤の色を目立たせることが好ましい。例えば、上記組成物の主成分が無色の透明のときは、上記無機質充填剤として白色等の有色のものを使用し、上記組成物の主成分が白色等の淡色系のときは、上記無機質充填剤として黒色等の濃色系のものを使用し、上記組成物の主成分が褐色ないし灰色のような濃色系のときは、上記無機質充填剤として白色等の淡色系のものを使用すること等が好ましい。すなわち、上記組成物の主成分の色と上記無機質充填剤の色とが、互いに反対色や明暗色の関係であることが、識別が容易になる点で、好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の金型再生用シートは、紙製シートまたは布帛シートの少なくとも片面に、未加硫ゴム系組成物または熱硬化性樹脂系組成物からなる金型クリーニング材料が、エア抜き用空隙を有する所定のパターンに突設されている。このため、本発明の金型再生用シートを用いて金型をクリーニングする際には、キャビティ内のエアを上記エア抜き用空隙から抜きながら、金型クリーニング材料をキャビティ内に充填することができる。これにより、キャビティ内にエア溜まりができなくなり、その結果、金型クリーニング材料のキャビティ内への充填性が向上し、キャビティ内の隅々までクリーニングすることができるようになる。また、本発明の金型再生用シートは、上記エア抜き用空隙部分に位置する上記紙製シートまたは布帛シートの表面部分に、上記組成物からなる薄膜が形成されている。この薄膜の色合いや表面の状態は、上記組成物の混合状態を現し、そのため、上記薄膜の形成状態で上記パターンを形成する上記組成物の混合状態を識別することができる。これにより、その混合状態が不均一のものは、金型のクリーニングに適さないものとして、用いないようにすることができる。すなわち、上記薄膜は、本発明の金型再生用シートの品質検査に利用することができる。
【0013】
特に、上記薄膜の厚みが、500μm以下である場合には、上記組成物の混合状態が上記薄膜に現れ易くなり、上記組成物の混合状態をより簡単に識別することができる。
【0014】
また、上記パターンの頂部が、非平坦状に形成されている場合には、キャビティの開口部が小さくても、その開口部を部分的に、金型クリーニング材料の頂部が塞ぐようになるため、キャビティ内のエアをより抜き易くすることができる。その結果、金型クリーニング材料の充填性がより向上し、キャビティ内のクリーニング性もより向上する。
【0015】
さらに、上記パターンの頂部の非平坦状部が、曲率半径0.2〜3.0mmの範囲内の凸状部からなる場合には、金型クリーニング材料の充填性がさらに向上し、キャビティ内のクリーニング性もさらに向上する。
【0016】
そして、上記パターンが、複数の帯または複数の斑点で形成されている場合には、上記パターンおよびエア抜き用空隙の形状および寸法が設定し易く、上記金型クリーニング材料を、キャビティ内への充填に適正なパターンに簡単に設定することができる。
【0017】
なかでも、上記帯または斑点の幅および厚みが、1〜5mmの範囲内に設定され、隣り合う上記帯または斑点の隙間が、1〜5mmの範囲内に設定されている場合には、半導体素子を樹脂封止する際に用いるトランスファー成形用金型のクリーニングに適正な寸法となり、そのトランスファー成形用金型を適正にクリーニングすることができる。
【0018】
また、隣り合う上記帯または斑点の隙間が、上記帯または斑点の幅の0.5〜2.0倍に設定されている場合には、エア抜き用空隙の容積と金型クリーニング材料の量とのバランスが好適となり、キャビティ内のエア抜きおよび金型クリーニング材料の充填をより適正にできるようになる。
【0019】
他方、上記帯または斑点の幅が、その厚みの0.8〜1.2倍の範囲内に設定されている上記パターンの形状安定性に優れ、金型クリーニング材料の充填性がより向上する。
【0020】
さらに、上記布帛シートが、不織布である場合には、その布帛シート表面が粗面となるため、上記金型クリーニング材料のアンカー効果が向上し、これら布帛シートと金型クリーニング材料との密着力を強力にすることができる。
【0021】
なかでも、上記不織布が、スパンボンド不織布である場合には、比較的引張強度に方向性がなく、また、加熱成形時に加わる応力を吸収緩和し易いため、加熱成形時にシート破断が生じ難い。しかも、金型からの剥離(脱型)時もシート破断しないため、剥離(脱型)操作が簡便になる。
【0022】
また、上記布帛シートが、エンボス処理されている場合にも、その布帛シート表面が粗面となるため、上記金型クリーニング材料のアンカー効果が向上し、これら布帛シートと金型クリーニング材料との密着力を強力にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の金型再生用シートの第1の実施の形態を示す斜視図である。
【図2】本発明の金型再生用シートの第2の実施の形態を示す斜視図である。
【図3】本発明の金型再生用シートの第3の実施の形態を示す斜視図である。
【図4】(a)〜(g)は、上記金型再生用シートの突条の変形例を示す断面図である。
【図5】本発明の金型再生用シートの第4の実施の形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0025】
図1は、本発明の金型再生用シートの第1の実施の形態を示している。この実施の形態の金型再生用シートは、紙製シートまたは布帛シートからなる基材シート1の両面に、未加硫ゴム系組成物または熱硬化性樹脂系組成物からなる金型クリーニング材料が、帯状パターンに形成されている。すなわち、その帯状パターンの構成要素である各突条(帯)2Aは、互いに隙間をあけて平行に形成されており、その隙間は、金型をクリーニングする際のエア抜き用空隙となっている。また、そのエア抜き用空隙部分に位置する上記基材シート1の表面部分に、上記組成物からなる薄膜3が、上記突条2Aと一体的に形成されている。この薄膜3は、それ自体の色合いや表面の状態で上記組成物の混合状態を識別できるものとなっている。このように、上記金型クリーニング材料の組成物の混合状態を識別可能とする上記薄膜3を形成したことが、本発明の大きな特徴である。
【0026】
すなわち、上記金型クリーニング材料および薄膜3の上記組成物(未加硫ゴム系組成物または熱硬化性樹脂系組成物)は、未加硫ゴムまたは熱硬化性樹脂(主成分)に、シリカ粉末や酸化チタン等の無機質充填剤が混合されたものとなっている。その無機質充填剤は、未溶解状態で分散しているが、その分散が均一であると、上記薄膜3の色合いも均一になり、その薄膜3の表面が平滑になる。しかし、上記無機質充填剤の分散が不均一であると、上記薄膜3の色合いも不均一になり、また、上記無機質充填剤が分散されず凝集状態であると、その凝集部分が上記薄膜3の表面に凸部として現れる。例えば、上記熱硬化性樹脂系組成物の場合、上記熱硬化性樹脂(主成分)は、一般に無色の透明ないし半透明であり、それに上記無機質充填剤を混合すると白色の不透明になるが、上記無機質充填剤の分散(混合状態)が不均一であると、薄膜3に、主成分の透明ないし半透明の部分を確認することができる。このような薄膜3の形成状態を、目視にて識別することができる。
【0027】
そして、上記薄膜3の形成状態から、上記組成物の混合状態が均一であると識別されたものは、上記突条2Aの金型クリーニング材料がキャビティ内の隅々まで充填性され、キャビティ内の隅々までクリーニングすることができる。一方、上記組成物の混合状態が不均一であると識別されたものは、金型のクリーニングに適さないものとして、金型のクリーニングに用いないようにする。
【0028】
より詳しく説明すると、上記薄膜3の厚みは、上記組成物の混合状態が上記薄膜3に現れ易くなる観点から、500μm以下であることが好ましく、より好ましくは、20〜150μmの範囲内である。上記厚みが20μmを下回ると、薄すぎて上記組成物の混合状態を識別できないおそれがある。
【0029】
上記組成物は、先に述べたように、未加硫ゴムまたは熱硬化性樹脂に、シリカ粉末や酸化チタン等の無機質充填剤を混合したものであり、その配合割合は、上記未加硫ゴムまたは熱硬化性樹脂100重量部に対し、シリカ粉末40〜50重量部程度、酸化チタン5重量部程度である。なお、必要に応じて、他の成分も適宜混合される。
【0030】
上記未加硫ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR),クロロプレンゴム(CR),ブタジエンゴム(BR),ニトリルゴム(NBR),エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM),エチレンプロピレンゴム(EPM),スチレンブタジエンゴム(SBR),ポリイソプレンゴム(IR),ブチルゴム(IIR),シリコーンゴム(Q),フッ素ゴム(FKM)等があげられる。
【0031】
上記熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン樹脂等があげられる。
【0032】
上記金型再生用シートの製法は、例えば、まず、上記組成物を連続式またはバッチ式の混練り機で混練りした後、上記基材シート1の両面に配置する。ついで、それを、金型クリーニング材料の帯状パターンおよび薄膜3に対応した凹部が形成された2つの金型で挟み圧接する。これにより、上記基材シート1の両面に、上記帯状パターンと薄膜3とが一体的に形成される。そして、それを巻き取るか、または適宜の寸法に切断する。このようにして、上記金型再生用シートを作製することができる。
【0033】
なお、上記実施の形態では、帯状パターンの突条2Aの間に位置する基材シート1の表面部分の全体に、薄膜3を形成したが、その薄膜3は、先に述べたように、金型クリーニング材料の組成物の混合状態を識別するためのものであるため、上記突条2Aの間の基材シート1の表面部分の一部分に形成してもよい。
【0034】
また、上記実施の形態では、帯状パターンと薄膜3とを型成形により同時に形成したが、帯状パターンのみを型成形した後、薄膜3を塗布等により形成してもよい。
【0035】
そして、上記実施の形態では、帯状パターンの突条2Aの長手方向を、基材シート1の表面と裏面とで同じ方向としたが、図2に示すように、異なるようにしてもよい(図2では90°異なっている)。また、図3に示すように、基材シート1の片面のみに、帯状パターンおよび薄膜3を形成してもよい。
【0036】
さらに、上記実施の形態では、帯状パターンの突条2Aを、その長手方向に直角な断面形状が長方形に形成されたものとしたが、その断面形状は、他でもよく、例えば、図4(a)に示すように、台形でもよいし、図4(b)に示すように、三角形でもよいし、図4(c)に示すように、半円でもよい。また、上記断面形状は、図4(d)に示すように、頂部がドーム形に形成され、その下部が長方形に形成されたものでもよいし、図4(e)に示すように、頂部がドーム形に形成され、その下部が台形に形成されたものでもよいし、図4(f)に示すように、頂部が曲面に形成された断面五角形に形成されたものでもよいし、図4(g)に示すように、図4(d)のドーム形の幅が小さく形成されたものであってもよい。
【0037】
なかでも、図4(b)〜(g)に示すものは、帯状パターンの突条2Aの頂部が非平坦状に形成されているため、キャビティの開口部が小さくても、その開口部を部分的に、金型クリーニング材料の頂部が塞ぐようになり、キャビティ内のエアをより抜き易くすることができる。その結果、金型クリーニング材料の充填性がより向上し、キャビティ内のクリーニング性もより向上する。特に、図4(d)〜(g)に示すものは、上記金型クリーニング材料の充填性およびキャビティ内のクリーニング性をさらに向上させる観点から、上記非平坦状の頂部の曲率半径を0.2〜3.0mmの範囲内に設定することが好ましい。
【0038】
また、上記実施の形態では、金型クリーニング材料を帯状パターンおよび薄膜3に形成したが、図5に示すように、斑点状パターンおよび薄膜3に形成してもよい。この斑点状パターンの斑点2Bの形状としては、図5に示す円柱の他に、円錐,円錐台,円筒,角柱,角錐,角錐台,角筒があげられる。なお、図5では、基材シート1の片面のみに、斑点状パターンおよび薄膜3を形成しているが、基材シート1の両面に形成してもよい。
【0039】
さらに、図1,図2の実施の形態では、基材シート1の両面に同じパターンでクリーニング材料を形成したが、そのパターンは、基材シート1の両面で異なっていてもよい。例えば、基材シート1の表面を帯状パターンとし、裏面を斑点状パターンとしてもよい。
【0040】
そして、上記帯状パターンの突条2Aおよび斑点状パターンの斑点2Bの寸法は、金型のキャビティの大きさや配置等によって適宜設定されるが、半導体素子を樹脂封止する際に用いるトランスファー成形用金型のクリーニングに用いるものは、突条2Aおよび斑点2Bの幅および厚みが、1〜5mmの範囲内に設定され、互いに隣り合う(対向し合う)突条2Aおよび斑点2Bの隙間が、1〜5mmの範囲内に設定されることが好ましい。
【0041】
また、エア抜き用空隙の容積と金型クリーニング材料の量とのバランスを好適化し、キャビティ内のエア抜きおよび金型クリーニング材料の充填をより適正化する観点からは、互いに隣り合う(対向し合う)突条2Aおよび斑点2Bの隙間を、突条2Aおよび斑点2Bの幅の0.5〜2.0倍に設定することが好ましい。上記突条2Aおよび斑点2Bの隙間を突条2Aの幅の0.5倍より狭くすると、金型をクリーニングする際に、キャビティの開口部が突条2Aまたは斑点2Bで塞がれる傾向にあり、その結果、キャビティ内のエア抜きが悪化し、金型クリーニング材料の未充填が発生するおそれがあるからであり、上記突条2Aの隙間を突条2Aの幅の2.0倍より広くすると、金型再生用シートにおける金型クリーニング材料の分布密度が小さくなり、金型クリーニング材料の未充填が発生するおそれがあるからである。なかでも、互いに隣り合う(対向し合う)突条2Aおよび斑点2Bの隙間の断面積を、突条2Aおよび斑点2Bの断面積の0.5〜5倍に設定することがより好ましい。
【0042】
さらに、上記突条2Aおよび斑点2Bの形状を安定化させ、金型クリーニング材料の充填性をより向上させる観点からは、突条2Aおよび斑点2Bの幅を厚みの0.8〜1.2倍の範囲内に設定することが好ましい。上記突条2Aおよび斑点2Bの幅を厚みの0.8倍より狭くすると、突条2Aおよび斑点2Bが変形し易くなり、金型をクリーニングする際に、エア抜き用空隙を保ち難くなり、その結果、キャビティ内のエア抜きが悪化し、金型クリーニング材料の未充填が発生するおそれがあるからであり、上記突条2Aおよび斑点2Bの幅を厚みの1.2倍より広くすると、金型クリーニング材料がキャビティ内に完全に充填される前にキャビティの開口部を塞ぐおそれがあり、その結果、キャビティ内のエア抜きが不充分となり、金型クリーニング材料の未充填が発生するおそれがあるからである。
【0043】
そして、上記基材シート1の布帛シートとしては、織布,不織布,編布等があげられ、なかでも、長繊維を用いた織布および不織布は、表面が適正な粗面となっているため、上記突条2Aおよび斑点2Bならびに薄膜3のアンカー効果が向上し、それら突条2A等との密着力を強力にする(グリップ性を有する)ことができる。この観点から上記長繊維を用いた織布および不織布が好ましく、均一なグリップ性の観点から不織布がより好ましい。特に、不織布としては、機械的強度,均一性,加工性の観点から、スパンボンド不織布が好ましい。また、エンボス処理された布帛シートも、表面が粗面に形成され、上記突条2A等のアンカー効果が向上するため、好ましい。上記基材シート1の厚みは、通常、0.1〜0.8mmの範囲内に設定される。
【0044】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。但し、本発明は、実施例に限定されるわけではない。
【実施例】
【0045】
〔布帛シート〕
基材シートとして、ポリエステル製長繊維からなるスパンボンド不織布(旭化成社製、エルタスE01070)を準備した。この不織布は、引き裂き強度8.5N、厚み0.35mm、坪量70g/m2 であった。
【0046】
〔金型クリーニング材料〕
エチレンプロピレンゴム100重量部、シリカパウダー50重量部、酸化チタン5重量部、有機過酸化物〔n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート〕2重量部、イミダゾール{2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジン}10重量部、モンタンワックス5重量部を準備した。
【0047】
ついで、上記各成分を混合し、混練機で混練した。そして、この混練を充分に行って調製した金型クリーニング材料と、上記混練を不充分に行って調製した金型クリーニング材料とを得た。
【0048】
〔金型再生用シートの作製〕
上記基材シートを2枚準備し、その一方の基材シートの両面に、上記混練を充分に行って調製した金型クリーニング材料を、他方の基材シートの両面に、上記混練を不充分に行って調製した金型クリーニング材料を、それぞれ、断面長方形(幅5mm×高さ3mm)の帯状パターン(突条の間隔5mm)および薄膜(厚み100μm)に形成し、2枚の金型再生用シートを得た。
【0049】
〔金型再生用シートの識別〕
上記2枚の金型再生用シートの薄膜の形成状態を目視にて検査した。その結果、上記混練を充分に行って調製した金型クリーニング材料を用いたものは、上記薄膜の色合いが均一であった。それに対し、上記混練を不充分に行って調製した金型クリーニング材料を用いたものは、上記薄膜の色合いが不均一であった。
【0050】
このことから、上記混練を充分に行って調製した金型クリーニング材料は、その組成物の混合状態が均一であり、上記混練を不充分に行って調製した金型クリーニング材料は、その組成物の混合状態が不均一であることがわかる。
【0051】
〔クリーニング性〕
上記2枚の金型再生用シートを用いて、半導体素子を樹脂封止する際に用いるトランスファー成形用金型のクリーニングを行った。その結果、上記混練を充分に行って調製した金型クリーニング材料を用いたものでは、キャビティの隅々までクリーニングができた。それに対し、上記混練を不充分に行って調製した金型クリーニング材料を用いたものでは、キャビティの隅部にクリーニングされていない部分があった。
【0052】
このことから、上記混練を充分に行って調製した金型クリーニング材料は、キャビティ内への充填性(クリーニング性)に優れ、上記混練を不充分に行って調製した金型クリーニング材料は、充填性(クリーニング性)に劣ることがわかる。
【0053】
〔比較例〕
上記実施例と同様にして、混練状態が異なる金型クリーニング材料を用いて、2枚の金型再生用シートを得た。ただし、この比較例では、上記薄膜を形成せず、帯状パターンのみとした。上記帯状パターンの突条の間は、上記基材シートが露呈していた。
【0054】
上記比較例の帯状パターンの突条を目視にて検査したが、上記混練状態を識別することはできなかった。
【0055】
上記実施例および比較例の結果から、上記実施例の薄膜は、金型クリーニング材料の組成物の混合状態を識別するのに有効であることがわかる。
【0056】
なお、上記実施例では、薄膜の厚みを100μmとしたが、その薄膜の厚みを20μm,150μm,500μmとしても、上記と同様の傾向を示す結果を得た。
【0057】
また、上記実施例では、金型クリーニング材料として未加硫ゴム系組成物を用いたが、メラミン樹脂を主成分とする熱硬化性樹脂系組成物を用いても、上記と同様の傾向を示す結果を得た。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の金型再生用シートは、目視にて金型クリーニング材料の混合状態を識別することができ、良品のみを成形金型の型面のクリーニングに用いるようにすることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 基材シート
2A 突条
3 薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙製シートまたは布帛シートの少なくとも片面に、未加硫ゴム系組成物または熱硬化性樹脂系組成物からなる金型クリーニング材料が、エア抜き用空隙を有する所定のパターンに突設されているとともに、上記エア抜き用空隙部分に位置する上記紙製シートまたは布帛シートの表面部分に、上記組成物からなる薄膜が形成され、この薄膜の形成状態で上記パターンを形成する上記組成物の混合状態を識別可能にしたことを特徴とする金型再生用シート。
【請求項2】
上記薄膜の厚みが、500μm以下である請求項1記載の金型再生用シート。
【請求項3】
上記パターンの頂部が、非平坦状に形成されている請求項1または2記載の金型再生用シート。
【請求項4】
上記パターンの頂部の非平坦状部が、曲率半径0.2〜3.0mmの範囲内の凸状部からなる請求項3記載の金型再生用シート。
【請求項5】
上記パターンが、複数の帯または複数の斑点で形成されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の金型再生用シート。
【請求項6】
上記帯または斑点の幅および厚みが、1〜5mmの範囲内に設定され、隣り合う上記帯または斑点の隙間が、1〜5mmの範囲内に設定されている請求項5記載の金型再生用シート。
【請求項7】
隣り合う上記帯または斑点の隙間が、上記帯または斑点の幅の0.5〜2.0倍に設定されている請求項5記載の金型再生用シート。
【請求項8】
上記帯または斑点の幅が、その厚みの0.8〜1.2倍の範囲内に設定されている請求項5記載の金型再生用シート。
【請求項9】
上記布帛シートが、不織布である請求項1〜8のいずれか一項に記載の金型再生用シート。
【請求項10】
上記不織布が、スパンボンド不織布である請求項9記載の金型再生用シート。
【請求項11】
上記布帛シートが、エンボス処理されている請求項1〜10のいずれか一項に記載の金型再生用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−39773(P2013−39773A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178946(P2011−178946)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【出願人】(506008962)日東エレクトロニクス九州株式会社 (17)
【Fターム(参考)】